(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1開口における気流の流速が最も速い領域に対向する位置には、前記第1整流板と前記前板との間に形成された間隙を覆う第2整流板が前記第1開口から所定間隔を有して設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のスピーカーシステム。
前記バスレフポートは、前記管状体から前記第1開口に向けて、指数関数値に準じて、または所定の曲率半径を有して前記第1軸方向に垂直な方向の幅が徐々に広がる形状の空気整流部を有しており、
前記第1整流板の一辺の形状は、前記空気整流部の前記形状に対応して、前記指数関数値に準じた、または前記所定の曲率半径を有する円弧形状である、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスピーカーシステム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
【0017】
本発明の第1実施形態に係るスピーカーシステムについて図を参照して説明する。
図1(A)は本実施形態のスピーカーシステム1の平面図である。
図1(B)は本実施形態のスピーカーシステム1の側面図である。
【0018】
図1(A)および
図1(B)に示すように、スピーカーシステム1は、位相反転型エンクロージャー10と、スピーカーユニットSPと、バスレフポート20と、第1整流板30と、支持板40と、第2整流板50と、整流部材60,61とを備えている。
エンクロージャー10は、前面板12と、背面板13と、天面板14と、底面板15と、一対の側面板16A,16Bとにより形成される。前面板12と背面板13、天面板14と底面板15、および一対の側面板16A,16Bは、互いに主面が平行になるように取り付けられている。本実施形態のエンクロージャー10は、天面板14と底面板15との間隔が他の板面同士の間隔より長い直方体形状を有している。本実施形態では、天面板14と底面板15とを結ぶ方向を長手方向(
図1(A),(B)においてX方向)とし、側面板16A,16Bを結ぶ方向を短手方向(
図1(A)においてY方向)とする。また、前面板12と背面板13を結ぶ方向を奥行き方向(
図1(B)においてZ方向)と称する。
【0019】
前面板12は、スピーカーユニットSPが設置されるとともに、バスレフポート用開口部17が形成されており、バッフル板として機能する。本実施形態では、一例として、スピーカーユニットSPは、前面板12の天面板14付近に設置されており、バスレフポート用開口部17は、前面板12の底面板15付近に形成されている。
【0020】
バスレフポート20は、エンクロージャー10の内部に設置され、エンクロージャー10の内部と外部とを連通させる管状体である。本実施形態においては、バスレフポート20は、前面板12の内壁面に取り付けられている。バスレフポート20は、スピーカーユニットSPからエンクロージャー10の背面側に放射された音響のうち低音域の音響成分を共鳴(ヘルムホルツ共鳴)により増強して放射する。すなわち、エンクロージャー10およびバスレフポート20は、スピーカーユニットSPからエンクロージャー10の前面側に放射される音響の下限周波数の近傍の周波数を共鳴周波数とするヘルムホルツ共振器を構成する。
【0021】
バスレフポート20は、
図1(B)に示すように、奥行き方向(Z方向)の長さが、スピーカーユニットSP側の開口20bからバスレフポート用開口部17側の開口20aに至るまで、長手方向(X方向)に沿って一定になっている。しかし、バスレフポート20は、
図1(A)に示すように、短手方向(Y方向)の長さが、開口20bからバスレフポート20の中央部に向かって、長手方向(X方向)に沿って徐々に短くなる形状を有している。また、バスレフポート20は、
図1(A)に示すように、短手方向(Y方向)の長さが、バスレフポート20の中央部から開口20aに向かって、長手方向(X方向)に沿って徐々に長くなる形状を有している。
【0022】
バスレフポート20のバスレフポート用開口部17側の開口20aは、接続用空間部18を介してバスレフポート用開口部17に接続する。バスレフポート20のスピーカーユニットSP側の開口20bの近くには、第1整流板30が設けられている。
【0023】
第1整流板30は、
図1(A)に示すように、平面視において一辺が直線で、他辺が所定の曲率半径を有する円弧状または指数関数値に準じた曲線形状を有する。第1整流板30は、直線の一辺を有する端部が、エンクロージャー10の背面板13の側におけるバスレフポート20の表面に重なるように取り付けられる。第1整流板30に対して奥行き方向(Z方向)において対向する位置には、矩形の支持板40が設けられている。第1整流板30と支持板40との間には、第2整流板50が開口20bから長手方向(X方向)に所定間隔を有して設けられる。第2整流板50の両側の縁辺部には、円柱形状の一部が切り欠かれた整流部材60,61が設けられる。
【0024】
次に、
図2および
図3を参照して本実施形態のバスレフポート20について詳しく説明する。
図2はバスレフポート20を示す平面図であり、
図3はバスレフポート20を示す斜視図である。
図2および
図3に示すように、バスレフポート20は、上面板20cと、下面板20dと、一対の側面板20e,20fとを備えている。バスレフポート20は、一方の開口20aから他方の開口20bまで連続する中空部が形成された管状体であり、主管部100と、該主管部100の長手方向(X方向)の両端に接続された空気整流部101,102とを備えている。
【0025】
図3に示すように、主管部100、および空気整流部101,102の中空部は、長手方向(X方向)における中心軸A1に垂直な方向の断面の形状が、いずれも矩形となっている。主管部100は、中心軸A1に垂直な方向の中空部の断面積が、中心軸A1の方向に沿って一定である直方体形状を有している。主管部100の長手方向の長さおよび中空部の断面の大きさは、エンクロージャー10として増強したい低音の周波数に基づいて設定される値を有している。
【0026】
また、空気整流部101は、中心軸A1に垂直な方向の中空部の断面積が、開口20aの側から、バスレフポート20の内側に位置する主管部100に向かう第1の軸方向である中心軸A1の方向に沿って、徐々に小さくなる形状を有している。また、空気整流部102は、中心軸A1に垂直な方向の中空部の断面積が、開口20bの側から、バスレフポート20の内側に位置する主管部100に向かう第1の軸方向である中心軸A1の方向に沿って、徐々に小さくなる形状を有している。空気整流部101,102のこのような形状を実現するために、一対の側面板20e,20fは、
図2に示すように、平面視において所定の曲率半径を有する円弧状または指数関数値に準じた曲線を有するように形成されている。
【0027】
バスレフポート20は、
図3に示すように、上面板20cに垂直で、前記中空部の断面に平行な第2の軸方向における前記断面の長さhが、第1の軸方向である中心軸A1に沿って一定となっている。つまり、本実施形態においては、上面板20cの内壁面と下面板20dの内壁面との間隔が一定となっている。
【0028】
このような構造とすることで、開口20bから中空部に取り込まれた気流は、空気整流部102、主管部100、および空気整流部101を通って開口20aから排気される時、間隔が一定の上面板20cの内壁面および下面板20dの内壁面から圧力を受け続ける。したがって、上面板20cの内壁面の方向および下面板20dの内壁面の方向への気流の拡散が抑圧され、気流は、互いの間隔が中央部から開口20bに向かって徐々に広がる一対の側面板20e,20fの内壁面方向に拡散される。中心軸A1に垂直な方向における中空部の断面積は、主管部100から、開口20bに向かって徐々に大きくなる。その結果、一対の側面板20e,20fの内壁面方向に拡散される気流の流速は、開口20bに向かって徐々に低下する。前記拡散によって、開口20bから排気される空気の圧力が減少すると共に、開口20bにおける乱流が殆ど発生しない。したがって、乱流の発生に基づく雑音の発生を抑えることができる。このように雑音の発生が抑えられる効果は、開口20aから中空部に取り込まれた気流が、空気整流部101、主管部100、および空気整流部102を通って開口20bから排気される際も同様に発揮される。
【0029】
しかしながら、上述のように一対の側面板20e,20fの内壁面方向に拡散されずに、中心軸A1に沿って中空部の中央部分を流れる気流については、流速が低下することなく、開口20aまたは開口20bから排気される。同様に、中心軸A1に沿って中空部の中央部分を流れる気流については、流速が低下することなく、開口20aまたは開口20bに吸気される。その結果、スピーカーユニットSP側の開口20bから流速が低下することなく排気された気流と、エンクロージャー10の前面板12の内壁面との摩擦により、風切り音が発生する場合があった。このような現象は、開口20bから吸気される場合も同様であった。
そこで、本実施形態においては、開口20bを上面板20c側から覆うように庇状の第1整流板30を設ける。また、第1整流板30と前面板12の内壁面との間に形成された間隙を覆う第2整流板50を、開口20bから長手方向(X方向)に所定間隔を有して設けて。また、第2整流板50の縁辺部には、円柱形状の整流部材60,61を設けている。
【0030】
次に、
図4から
図7を参照して、第1整流板30、第2整流板50、および整流部材60,61について説明する。
図4(A)は第1整流板30を示す平面図である。
図4(B)は支持板40を示す平面図である。
図4(C)は第2整流板50および整流部材60,61を示す平面図である。
図4(D)は第1整流板30、第2整流板50、および整流部材60,61を組み立てた状態を示す平面図である。
図4(E)は第1整流板30、第2整流板50、および整流部材60,61を組み立てた状態を示す側面図である。
図5は、第1整流板30の形状と、開口20bから排気される気流の流速との関係を説明する図である。
図6は、第1整流板30、第2整流板50、および整流部材60,61を組み立てた状態を示す斜視図である。
図7は、第1整流板30、第2整流板50、および整流部材60,61を組み立て、バスレフポート20に取り付けた状態を示す斜視図である。
【0031】
図4(A)および
図6に示すように、第1整流板30は、平面視において一辺30aが直線で、他辺30bが所定の曲率半径を有する円弧状または指数関数値に準じた曲線形状を有する。第1整流板30は、第1整流板30上を流れる気流の流速に応じた形状となっている。
図5に示すように、バスレフポート20の開口20bから排気される気流の流速は、中心軸A1に沿った中央部分が最も速く、一対の側面板20e,20fの内壁面に近くなる程遅くなる。
図5における矢印の方向は、気流の排気方向を示しており、矢印の長さは排気される気流の流速を示している。
【0032】
本実施形態においては、
図5に示すように、流速が遅い箇所に対応する箇所ほど、第1整流板30と気流との接触する距離が短く、流速が速い箇所に対応する箇所ほど、第1整流板30と気流との接触する距離が長くなるように第1整流板30を形成する。第1整流板30は、このような形状を実現するために、他辺30bが所定の曲率半径を有する円弧状または指数関数値に準じた曲線形状となっている。
【0033】
第1整流板30が以上のような形状を有する結果、開口20bからの気流の流速は、第1整流板30と接触することにより均一化される。開口20bに吸気される気流の流速も、第1整流板30と接触することにより中央部分と周辺部分で流速が変わる。つまり、一対の側面板20e,20fの内壁面方向に拡散されずに、中心軸A1に沿って中空部の中央部分を流れる気流についても、第1整流板30と接触することにより、流速が低下することとなる。
【0034】
図4(B)および
図6に示すように、支持板40は平面視において矩形の形状となっている。本実施形態においては、支持板40は、第2整流板50を第1整流板30に対して取り付けるために用いているが、例えば、第1整流板30と第2整流板50とを樹脂等により一体成型する場合には、支持板40を省略することも可能である。
【0035】
図4(C)、
図4(D)、
図6、および
図7に示すように、第2整流板50は、奥行き方向(Z方向)に沿った平面視において、曲線形状を有する板状体である。また、第2整流板50は、
図4(E)に示すように、長手方向(X方向)に沿った側面視において矩形の板状体である。
図4(D)、
図6、および
図7に示すように、第2整流板50は、開口20bにおける気流の流速が最も速い領域に対向する位置であって、第1整流板30と支持板40との間に形成された間隙を覆う位置に、開口20bから中心軸A1の方向に所定間隔を有して設けられている。第1整流板30と第2整流板50とを一体に成型して支持板40を省略する場合には、第2整流板50は、第1整流板30と前面板12の内壁面との間に形成された間隙を覆う位置に、開口20bから中心軸A1の方向に所定間隔を有して設けられる。
【0036】
第2整流板50は、
図4(C)に示す平面視において、円弧状または指数関数値に準じた曲線形状を有している。
図4(D)に示すように、第2整流板50を第1整流板30に取り付ける場合には、第2整流板50は、第1整流板30と逆の方向に凸状となるように取り付けられる。開口20bにおける流速が最も速い領域からの気流は、第1整流板30との接触によって速度が均一化され、さらに、第2整流板50によってスピーカーユニットSP側への進行が偏向される。また、開口20bに吸気される際には、気流は第2整流板50によって進行を遮られ、第2整流板50の左右の間隙から吸気される。その結果、前面板12の内壁面と、開口20bにおける流速が最も速い領域からの気流との摩擦が起こらないので、当該摩擦に起因する風切り音の発生を防ぐ。また開口20bからの気流は、第2整流板50に沿って第2整流板50の左右の間隙方向に進行方向を変えられるが、第2整流板50は上述のような曲線形状を有しているので、気流が第2整流板50に衝突することによる風切り音の発生を防ぐ。
【0037】
図4(C)に示すように、整流部材60,61は、第2整流板50の前記間隙との境界となる両側の縁辺部に取り付けられる。整流部材60,61は、
図4(C)に示す平面視において、円柱形状の一部が切り欠かれた形状を有している。整流部材60,61を設けることにより、気流が第2整流板50の両側の縁辺部に直接当たる場合に比べて、気流の流れが滑らかになり、風切り音の発生を防ぐ。
【0038】
図4(E)および
図6に示すように、第1整流板30、第2整流板50、整流部材60,61、および支持板40を組み立てた状態では、第1整流板30と支持板40とはほぼ平行となっている。また、第2整流板50は第1整流板30と支持板40に対してほぼ垂直になっている。第1整流板30、第2整流板50、整流部材60,61、および支持板40は、組み立てた状態では一体として取り扱うことが可能である。したがって、バスレフポート20を前面板12の内面壁に取り付けた後、
図7に示すように、バスレフポート20の開口20b側に第1整流板30等を取り付け可能になっている。なお、本実施形態においては、
図1(B)に示すように、バスレフポート20は、バスレフポート20の上面板20cがエンクロージャー10の背面板13と対向するように前面板12の内面壁に取り付けられる。
【0039】
図8は、開口20aから吸気された気流がバスレフポート20の中空部を通り、開口20bから排気される場合の気流の動きを説明する図である。
図9は、開口20bから吸気された気流がバスレフポート20の中空部を通り、開口20aから排気される場合の気流の動きを説明する図である。
図8に示すように、開口20aから中空部に取り込まれた空気は、空気整流部101、主管部100、および空気整流部102を通って開口20bから排気される時、開口20bに向かって徐々に間隔が広がる一対の側面板20e,20fの内壁面方向に拡散される。中心軸A1に垂直な方向における中空部の断面積は、主管部100から、開口20bに向かって徐々に大きくなる。その結果、一対の側面板20e,20fの内壁面方向に拡散される気流の流速は、開口20bに向かって徐々に低下する。また、拡散される気流の流速は、第1整流板30と接触することにより、さらに低下する。そして、拡散される気流は、中心軸A1方向から見て第2整流板50の両側に形成される間隙から排気される。前記拡散によって、開口20bから排気される空気の圧力が減少すると共に、気流の流速が低下し、気流と第1整流板30との接触によりさらに気流の流速が低下するので、第2整流板50の両側に形成される間隙における乱流が殆ど発生しない。したがって、乱流の発生に基づく風切り音の発生を抑えることができる。また、整流部材60,61は円柱形状を有しているので、気流と衝突する角部が存在しない。したがって、気流が角部に衝突する際に発生する風切り音の発生を抑えることができる。
【0040】
また、開口20aから中空部に取り込まれた気流のうち、中心軸A1に沿って空気整流部101、主管部100、および空気整流部102の中空部の中央部分を通って開口20bから排気される空気は、その流速が低下しない。しかし、前記中空部の中央部分を通って開口20bから排気される気流は、気流の流速に応じた形状の第1整流板30と接触することによってその流速は低下し、さらに、第2整流板50によって進行が遮られる。その結果、前記中空部の中央部分を通って開口20bから排気される気流と、前面板12の内壁面との摩擦が起こらないので、当該摩擦に起因した風切り音の発生を防ぐことができる。しかも、第2整流板50は円弧形状または指数関数値に準じた曲線形状を有しているので、気流と第2整流板50との衝突による風切り音の発生を抑えることができる。
【0041】
図9に示すように、中心軸A1方向から見て第2整流板50の両側に形成される間隙から取り込まれた気流は、第1整流板30と接触することにより流速が低下するため、風切り音の発生を防ぐことができる。また、整流部材60,61は円柱形状を有しているので、気流と衝突する角部が存在しない。したがって、気流が角部に衝突する際に発生する風切り音の発生を抑えることができる。そして、開口20bから中空部に取り込まれ、空気整流部102、主管部100、および空気整流部101を通って開口20aから排気される。この時、気流は、開口20aに向かって徐々に間隔が広がる一対の側面板20e,20fの内壁面方向に拡散される。中心軸A1に垂直な方向における中空部の断面積は、主管部100から、開口20aに向かって徐々に大きくなる。その結果、一対の側面板20e,20fの内壁面方向に拡散される気流の流速は、開口20aに向かって徐々に低下する。前記拡散によって、開口20aから排気される空気の圧力が減少すると共に、気流の流速が低下し、開口20aの端部における乱流が殆ど発生しない。したがって、乱流の発生に基づく風切り音の発生を抑えることができる。
【0042】
また、第2整流板50によって、中心軸A1に沿った中央部分からの吸気が抑えられるので、最も流速が速くなる中心軸A1に沿った中央部分に取り込まれる気流と、前面板12の内壁面との摩擦が起こらないので、風切り音の発生を防ぐことができる。
【0043】
図10(A)および
図10(B)は本実施形態のスピーカーシステム1における気流の方向と流速を説明するための図であり、
図11(A)、
図11(B)は比較例のスピーカーシステム1における気流の方向と流速を説明するための図である。
本実施形態においては、
図10(A)および
図10(B)に示すように、第1整流板30および第2整流板50と空気との摩擦により気流の流速が抑えられる。
図10(A)および
図10(B)において、矢印は気流の方向と、気流の流速を示している。また、第2整流板50により、エンクロージャー10内の気流は、第2整流板50とスピーカーユニットSPとの間の領域の外側に整流される。その結果、流速の増加に基づく気流の乱れを低減し、気流の乱れによる異音の発生を抑えることができる。また、内壁面との摩擦による風切り音とを低減することができる。さらに、整流部材60,61により気流の乱れを低減することができるので、気流の乱れによる異音の発生を抑えることができる。
【0044】
一方、
図11(A)および
図11(B)に示す比較例では、第1整流板30、第2整流板50、および整流部材60,61が設けられていない。この場合には、
図11(A)に示すように、エンクロージャー10の前面板12の内壁面に沿った気流のうち、バスレフポート20の中心軸A1に沿った中央部の気流の流速が速くなる。
図11(A)および
図11(B)において、矢印は、気流の方向と気流の流速を示している。その結果、
図11(B)に示すように、前面板12の内壁面と空気との摩擦により気流が乱れ、風切り音が発生してしまう。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、第1整流板30、第2整流板50、および整流部材60,61を設けたので、中心軸に垂直な方向の断面の面積が中央部から開口に向けて徐々に大きくなる形状のバスレフポートにおいて発生していた雑音を抑制できる。また、第1整流板30、第2整流板50、および整流部材60,61は構造が簡単であり、このような簡単な構造により、前記バスレフポートにおいて発生していた雑音を抑制できる。さらに、本実施形態によれば、前記バスレフポートの開口の近傍に、エンクロージャー10の内壁面やグリル等の障害物が存在しても、これらと空気との衝突を抑えることができるので、衝突に起因する雑音の発生を抑えることができる。したがって、前記バスレフポートの近傍に、エンクロージャー10を構成する他の要素を配置することができる。これにより、エンクロージャー10の形状を小型化することができる。この結果、低雑音で低音増強された小型のスピーカーシステムを簡素な構成で実現することができる。
【0046】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について
図12を参照しつつ説明する。
図12(A)は本実施形態のスピーカーシステム1の平面図である。
図12(B)は本実施形態のスピーカーシステム1の側面図である。
第1実施形態においては、バスレフポート20、第1整流板30、第2整流板50、および整流部材60,61を、前面板12の内壁面に設けた。しかし、本実施形態では、
図12(A)および
図12(B)に示すように、バスレフポート20、第1整流板30、第2整流板50、および整流部材60,61を、前面板12の外壁面に設ける。
【0047】
本実施形態においても、第1整流板30、第2整流板50、および整流部材60,61により、中心軸に垂直な方向の断面の面積が中央部から開口に向けて徐々に大きくなる形状のバスレフポートにおいて発生していた雑音を抑制できる。また、第1整流板30、第2整流板50、および整流部材60,61は構造が簡単であり、このような簡単な構造により、前記バスレフポートにおいて発生していた雑音を抑制できる。したがって、低雑音で低音増強された小型のスピーカーシステムを簡素な構成で実現することができる。
【0048】
さらに、本実施形態によれば、気流が排気され、あるいは気流が取り入れられる第2整流板50の両側の間隙の周囲に、エンクロージャー10の側面板が存在しないので、空気と側面板との摩擦あるいは衝突による風切り音についても発生を抑えることができる。したがって、第1実施形態よりも低雑音で低音増強された小型のスピーカーシステムを簡素な構成で実現することができる。
【0049】
<変形例>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば次に述べるような各種の変形が可能である。また、次に述べる変形の態様は、任意に選択された一または複数を、適宜に組み合わせることもできる。
【0050】
(変形例1)
上述した実施形態では、バスレフポート20と、第1整流板30等とを別体としたが、
図13に示すように、バスレフポート20の上面板20cと、第1整流板30とを一体に成型してもよい。
図13は、本変形例における第1整流板30が一体に成型されたバスレフポート20の上面板20cを示す平面図である。さらに、これらと第2整流板50および整流部材60,61とを一体に成型してもよい。第1整流板30と第2整流板50および整流部材60,61とを一体に成型する場合には、上述した実施形態で説明した支持板40を省略することができる。
【0051】
(変形例2)
上述した実施形態では、バスレフポート20の中空部における中心軸A1に垂直な方向の断面の形状を矩形としたが、本発明はこのような態様に限定される訳ではなく、多角形状にしたり、円形、楕円、あるいは長円形状にしてもよい。この際、多角形状では、各角部を面取りした形状にするとより効果的である。
【0052】
(変形例3)
上述した実施形態では、バスレフポート用開口部17を、前面板12の底面板15付近に形成したが、本発明はこのような態様に限定される訳ではない。例えば、バスレフポート用開口部17を、スピーカーユニットSP付近に形成してもよい。この場合には、第1整流板30、第2整流板50、および整流部材60,61を底面板15付近に設ければよい。
【0053】
(変形例4)
上記実施形態では、第2整流板50の縁辺部に整流部材60、61を付けたが、本発明はこのような態様に限定される訳ではない。整流部材60、61を付ける代わりに、第2整流板50の縁辺部が角のない丸みをおびた形状であってもよい。この場合も気流の流れが滑らかになり、風切り音の発生を防ぐことが可能となる。