特許第6812718号(P6812718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6812718
(24)【登録日】2020年12月21日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】エンコーダ装置、ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20201228BHJP
   G01B 21/22 20060101ALI20201228BHJP
   G01D 5/347 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   B25J13/00 Z
   G01B21/22
   G01D5/347
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-189606(P2016-189606)
(22)【出願日】2016年9月28日
(65)【公開番号】特開2018-51675(P2018-51675A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白取 寛章
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 大介
(72)【発明者】
【氏名】福岡 貴史
(72)【発明者】
【氏名】河地 勇登
【審査官】 樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−201093(JP,A)
【文献】 特開2013−211958(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/050130(WO,A1)
【文献】 特開平07−124884(JP,A)
【文献】 実開昭62−015488(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/00
G01B 21/22
G01D 5/347
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のアームに収容されているモータの回転角度を検出する第1のエンコーダと、
前記第1アームに対する第2のアームの回転角度を検出する第2のエンコーダと、を備え、
前記第2のアームは、前記モータと、前記モータに接続されて当該モータの回転軸を入力軸とするとともに出力軸に第2のアームが接続されている伝達機構とを、前記モータの回転軸の延長線上における両側から覆う形状に形成されており、
前記第2のエンコーダは、前記モータと前記伝達機構との連結位置よりも前記モータ側に位置して設けられており、
前記第2のエンコーダは、回転板および検出器を有する光学式のものであり、
前記第2のエンコーダの回転板は、前記モータの回転軸と同軸となる位置において前記第1のアームに固定されている軸部材に、回転軸と垂直な状態で、且つ、前記第2のアームの内部に位置して固定されており、
前記第2のエンコーダの検出器は、前記第2のエンコーダの回転板と対向する位置において前記第2のアーム内に固定されているエンコーダ装置。
【請求項2】
第1のアームに収容されているモータの回転角度を検出する第1のエンコーダと、
前記第1アームに対する第2のアームの回転角度を検出する第2のエンコーダと、を備え、
前記第2のアームは、前記モータと、前記モータに接続されて当該モータの回転軸を入力軸とするとともに出力軸に第2のアームが接続されている伝達機構とを、前記モータの回転軸の延長線上における両側から覆う形状に形成されており、
前記第2のエンコーダは、前記モータと前記伝達機構との連結位置よりも前記モータ側に位置して設けられており、
前記第1のエンコーダおよび前記第2のエンコーダは、検出器および回転板で構成される光学式のものであり、
前記第2のエンコーダの回転板として前記第1のエンコーダの回転板を共用し、
前記第1のアームには、前記第1のエンコーダの回転板と水平に、且つ、当該回転板に対向する位置まで窪んだ溝部が形成されており、
前記第2のエンコーダの検出器は、前記溝部内を前記第2のアームから前記第1のエンコーダの回転板と水平に、且つ、当該回転板に対向する位置まで延びている支持部材に固定されているエンコーダ装置。
【請求項3】
第1のアームに収容されているモータの回転角度を検出する第1のエンコーダと、
前記第1アームに対する第2のアームの回転角度を検出する第2のエンコーダと、を備え、
前記第2のアームは、前記モータと、前記モータに接続されて当該モータの回転軸を入力軸とするとともに出力軸に第2のアームが接続されている伝達機構とを、前記モータの回転軸の延長線上における両側から覆う形状に形成されており、
前記第2のエンコーダは、前記モータと前記伝達機構との連結位置よりも前記モータ側に位置して設けられており、
前記第1のエンコーダおよび前記第2のエンコーダは、検出器および回転板で構成される光学式のものであり、
前記第1のエンコーダの回転板は、前記モータの外形よりも大きな直径に形成されており、
前記第2のエンコーダの回転板として、前記第1のエンコーダの回転板を共用し、
前記第1のアームには、前記モータの側方において前記第1のエンコーダの回転板と水
平に、且つ、当該回転板に対向する位置まで窪んだ溝部が形成されており、
前記第2のエンコーダの検出器は、前記溝部内を前記第2のアームから前記第1のエンコーダの回転板と水平に、且つ、当該回転板に対向する位置まで延びている支持部材に固定されているエンコーダ装置。
【請求項4】
前記第1のアームから前記第2のアームに渡される配線部材を、前記伝達機構とは反対側となる前記第1のアームと前記第2のアームとの対向面において、前記モータの回転軸と同軸となる中空部を通して配線した請求項1から3のいずれか一項記載のエンコーダ装置。
【請求項5】
第1のアームに収容されているモータの回転角度を検出する第1のエンコーダと、
前記第1アームに対する前記第2のアームの回転角度を検出する第2のエンコーダと、を備え、
前記第2のアームは、前記モータと、前記モータに接続されて当該モータの回転軸を入力軸とするとともに出力軸に第2のアームが接続されている伝達機構とを、前記モータの回転軸の延長線上における両側から覆う形状に形成されており、
前記第2のエンコーダは、検出器および回転板を有する光学式のものであり、検出器および回転板のうち一方が前記第1のアーム側に固定され、他方が前記第2のアーム側に固定されているとともに、検出器および回転板の双方が前記伝達機構よりも前記モータ側に位置して設けられているエンコーダ装置を備え、
前記第2のエンコーダは、回転板および検出器を有する光学式のものであり、
前記第2のエンコーダの回転板は、前記モータの回転軸と同軸となる位置において前記第1のアームに固定されている軸部材に、回転軸と垂直な状態で、且つ、前記第2のアームの内部に位置して固定されており、
前記第2のエンコーダの検出器は、前記第2のエンコーダの回転板と対向する位置において前記第2のアーム内に固定されているロボット。
【請求項6】
第1のアームに収容されているモータの回転角度を検出する第1のエンコーダと、
前記第1アームに対する前記第2のアームの回転角度を検出する第2のエンコーダと、を備え、
前記第2のアームは、前記モータと、前記モータに接続されて当該モータの回転軸を入力軸とするとともに出力軸に第2のアームが接続されている伝達機構とを、前記モータの回転軸の延長線上における両側から覆う形状に形成されており、
前記第2のエンコーダは、検出器および回転板を有する光学式のものであり、検出器および回転板のうち一方が前記第1のアーム側に固定され、他方が前記第2のアーム側に固定されているとともに、検出器および回転板の双方が前記伝達機構よりも前記モータ側に位置して設けられているエンコーダ装置を備え、
前記第1のエンコーダおよび前記第2のエンコーダは、検出器および回転板で構成される光学式のものであり、
前記第2のエンコーダの回転板として前記第1のエンコーダの回転板を共用し、
前記第1のアームには、前記第1のエンコーダの回転板と水平に、且つ、当該回転板に対向する位置まで窪んだ溝部が形成されており、
前記第2のエンコーダの検出器は、前記溝部内を前記第2のアームから前記第1のエンコーダの回転板と水平に、且つ、当該回転板に対向する位置まで延びている支持部材に固定されているロボット。
【請求項7】
第1のアームに収容されているモータの回転角度を検出する第1のエンコーダと、
前記第1アームに対する前記第2のアームの回転角度を検出する第2のエンコーダと、を備え、
前記第2のアームは、前記モータと、前記モータに接続されて当該モータの回転軸を入力軸とするとともに出力軸に第2のアームが接続されている伝達機構とを、前記モータの回転軸の延長線上における両側から覆う形状に形成されており、
前記第2のエンコーダは、検出器および回転板を有する光学式のものであり、検出器および回転板のうち一方が前記第1のアーム側に固定され、他方が前記第2のアーム側に固定されているとともに、検出器および回転板の双方が前記伝達機構よりも前記モータ側に位置して設けられているエンコーダ装置を備え、
前記第1のエンコーダおよび前記第2のエンコーダは、検出器および回転板で構成される光学式のものであり、
前記第1のエンコーダの回転板は、前記モータの外形よりも大きな直径に形成されており、
前記第2のエンコーダの回転板として、前記第1のエンコーダの回転板を共用し、
前記第1のアームには、前記モータの側方において前記第1のエンコーダの回転板と水
平に、且つ、当該回転板に対向する位置まで窪んだ溝部が形成されており、
前記第2のエンコーダの検出器は、前記溝部内を前記第2のアームから前記第1のエンコーダの回転板と水平に、且つ、当該回転板に対向する位置まで延びている支持部材に固定されているロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角度を検出するエンコーダ装置、ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットの高速化等を目的として、モータの回転軸の一方の端部側にアームを接続するのではなく、回転軸を両端から挟み込むような形状のアームを用いることがある。この場合、アームが言わば両持ち状態で支持されることから、始動時や制動時におけるアームのぶれが抑制されて高速化を図ることができるとともに、アームの剛性が相対的に高くなることから、位置決め精度も向上すると考えられる。
【0003】
そして、近年では、位置決めをより高精度で行うために、モータの回転軸等の入力軸側だけでなく、モータによって駆動される伝達機構の出力段等の出力軸側にもエンコーダを設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−51141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、一般的に用いられる光学式のエンコーダは、熱耐性が比較的低いことから、駆動しているモータからの影響を抑えるために、検出器をカバーで覆う等の対策が必要となる。そして、入力軸側のエンコーダは、従来から採用されているものであるので、熱対策が施されていると考えられる。
【0006】
しかしながら、従来では、エンコーダを耐熱カバー等で覆うこと等により熱対策が行われており、そのような熱対策を出力軸側のエンコーダにも適用すると、必要なスペースが増加し、例えばロボットであれば大型化を招くおそれがある。また、両持ち状態のアームを採用している場合には、バランスを取ることやデザイン性等を考慮してアームを対称形状に形成することが多いため、さらに大型化してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、入力軸と出力軸の双方にエンコーダを設ける場合において小型化することができるエンコーダ装置、ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のエンコーダ装置は、第1のアームに収容されているモータの回転角度を検出する第1のエンコーダと、第1アームに対する第2のアームの回転角度を検出する第2のエンコーダと、を備えている。これにより、まず、アームの位置決め精度を高めることができる。
【0009】
このとき、第2のアームは、モータと、モータに接続されて当該モータの回転軸を入力軸とするとともに出力軸に第2のアームが接続されている伝達機構とを、モータの回転軸の延長線上における両側から覆う形状に形成されている。つまり、第2のアームは、回転軸において、両持ち状態のアームとなっている。そして、第2のエンコーダは、モータと伝達機構との連結位置よりもモータ側の位置に設けられている。
【0010】
このような構成とすることにより、第2のエンコーダ(出力軸エンコーダ)を、伝達機構から離間した位置に設けることが可能となる。これにより、モータを回転駆動した際の発熱が伝達機構に伝わったとしても、伝達機構からの輻射熱や、第2のアームを経由する伝熱が、第2のエンコーダまで到達することが抑制される。すなわち、モータで発生した熱が第2のエンコーダに影響を与えることが抑制される。
【0011】
このため、第2のエンコーダに対して耐熱カバーといった従来用いられていた耐熱構造物が不要となり、第2のエンコーダを設ける場合であっても、大きな設置スペースを必要としない。したがって、入力軸と出力軸の双方にエンコーダを設ける場合において、エンコーダ装置を小型化することができる。
また、入力軸と出力軸の双方にエンコーダを設けていることから、位置決め精度を向上させることができる。
【0016】
請求項2記載のエンコーダ装置では、第1のエンコーダおよび第2のエンコーダは、検出器および回転板で構成される光学式のものであり、第2のエンコーダの回転板として第1のエンコーダの回転板を共用し、第1のアームには、前記第1のエンコーダの回転板と水平に、且つ、当該回転板に対向する位置まで窪んだ溝部が形成されており、第2のエンコーダの検出器は、溝部内を第2のアームから第1のエンコーダの回転板と水平に、且つ、当該回転板に対向する第1のアーム内の位置まで延びている支持部材に固定されている。
これにより、検出器に対して回転板を相対的に回転させることが可能となり、第1のアームに対する第2のアームの回転角度を検出することができる。
また、回転板を共通化することができ、部品点数の削減によるコストダウンと、設置スペースの削減により小型化とを両立させることができる。
【0017】
請求項3記載のエンコーダ装置では、第1のエンコーダおよび第2のエンコーダは、検出器および回転板で構成される光学式のものであり、第1のエンコーダの回転板はモータの外形よりも大きな直径に形成されており、第2のエンコーダの回転板として第1のエンコーダの回転板を共用し、第2のエンコーダの検出器は、溝部内を第2のアームから第1のエンコーダの回転板と水平に、且つ、当該回転板に対向する第1のアーム内の位置まで延びている支持部材に固定されている。
これにより、検出器に対して回転板を相対的に回転させることが可能となり、第1のアームに対する第2のアームの回転角度を検出することができる。
また、回転板を共通化することができ、部品点数の削減によるコストダウンと、設置スペースの削減により小型化とを両立させることができる。
【0018】
請求項4記載のエンコーダ装置では、第1のアームから第2のアームに渡される配線部材を、伝達機構とは反対側となる第1のアームと第2のアームとの対向面において、モータの回転軸と同軸となる中空部を通して配線している。
相対的に回転するアーム間に配線を行う場合、配線部材の保護や関節部の省スペース化のために、回転軸を中空とし、その中空部を通すことが多い。しかし、モータと伝達機構の中空部に出力軸と配線の両方を通さなければならないため、関節部が大型化してしまうことが多かった。
【0019】
これに対して、伝達機構とは反対側つまりは機械的構造が比較的単純な位置から配線することにより、モータの回転軸や伝達機構の主軸を中空にすることなく、第1のアームと第2のアームとの間で配線を行うことができる。これにより、複雑な配線構造を新たに設ける必要なく、第2のエンコーダ等への配線を行うことができ、関節部が大型化してしまうことを防止できる。
【0020】
また、第1のアームと第2のアームとは、モータの回転軸とは異なり概ね1回転程度しか相対的に回転しないため、アームの回転に伴って配線部材が振り回されるおそれが少なく、配線の損傷を抑えることができ、耐久性を向上させることができる。
また、回転軸等を中空にする必要が無いことから、回転軸を中空にできないような小型のモータや小型の伝達機構を有するものにおいても、第2のエンコーダを設けることができ、位置決め精度の向上を図ることができる。
【0021】
請求項5から7に記載したロボットは、請求項1から3に記載したエンコーダ装置を備えている。これにより、上記したようにエンコーダ装置を小型化することができることから、ロボットの大型化を招くことがない。
また、入力軸と出力軸の双方にエンコーダを設けていることから、位置決め精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態のロボットの構成を模式的に示す図
図2】エンコーダ装置の構成を模式的に示す図
図3】第2実施形態のエンコーダ装置の構成を模式的に示す図
図4】第3実施形態のエンコーダ装置の構成を模式的に示す図
図5】第4実施形態のエンコーダ装置の構成を模式的に示す図
図6】第5実施形態のエンコーダ装置の構成を模式的に示す図その1
図7】エンコーダ装置の構成を模式的に示す図その2
図8】その他の実施形態のロボットの構成を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態において実質的に共通する部位には同一符号を付して説明する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について、図1および図2を参照しながら説明する。
【0024】
図1に示すように、ロボット1は、いわゆる垂直多関節型ロボットとして周知の構成を備えており、図示は省略するが制御部であるコントローラに接続されており、コントローラで実行される制御プログラムに従って動作する。
【0025】
このロボット1は、ベース2上に、Z方向の軸心を持つ第1軸(J1)を介してショルダ3が水平方向に回転可能に連結されている。ショルダ3には、Y方向の軸心を持つ第2軸(J2)を介して上方に延びる下アーム4の下端部が垂直方向に回転可能に連結されている。この下アーム4は、ショルダ3を両側から挟む態様で設けられている一対の腕部4aと、これら腕部4a間を高剛性に接続する接続部4bとを有している。
【0026】
このため、各腕部4aは、下アーム4が回転するとき、それぞれ同時に且つ一体的に回転する。換言すると、一方の腕部4aの回転は、他方の腕部4aの回転と同じである。以下、下アーム4や後述する第一上アーム5や第二上アーム6など、回転中心となる軸線上において両側から挟み込む形状に形成されているアームを、両持ち状態とも称する。
【0027】
下アーム4の先端部には、Y方向の軸心を持つ第3軸(J3)を介して第一上アーム5が垂直方向に回転可能に連結されている。この第一上アーム5は、2つの腕部4aの間に挟まれている。つまり、第一上アーム5は、両持ち状態で下アーム4に支持されている。この第一上アーム5の先端部には、X方向の軸心を持つ第4軸(J4)を介して第二上アーム6が捻り回転可能に連結されている。第二上アーム6の先端部は、二股となっており、Y方向の軸心を持つ第5軸(J5)を介して手首7が垂直方向に回転可能に連結されている。
【0028】
つまり、手首7は、第二上アーム6の先端部によって両持ち状態で支持されている。手首7には、X方向の軸心を持つ第6軸(J6)を介してフランジ8が捻り回転可能に連結されている。これらベース2、ショルダ3、下アーム4、第一上アーム5、第二上アーム6、手首7およびフランジ8は、ロボット1のアームとして機能する。そして、ロボット1におけるアームの最先端となるフランジ8には、図示は省略するがハンドやエンドエフェクタと称される治具が取り付けられる。この治具は、例えば図示しないワークを把持する把持部や、ワークを加工する工具等である。
【0029】
このロボット1の各軸には、駆動源となるモータ10(図2等参照)がそれぞれ設けられている。各モータ10は、コントローラによって制御されており、回転することによりアームの角度つまりはロボット1の姿勢を変化させる。このとき、各モータ10には、回転角度を検出するエンコーダや、モータ10の回転を他のアームに伝達する伝達機構が設けられている。
【0030】
例えば、第2軸には、図2に示すように、ショルダ3内には、モータ10、入力軸エンコーダ11、伝達機構としての減速機12が設けられている。なお、図2も含めて、説明の簡略化のために断面を示すハッチングは省略している。
【0031】
入力軸エンコーダ11は、本実施形態における第1のエンコーダに相当し、モータ10の回転軸10aに接続されて回転軸10aと同軸に、回転軸10aに垂直な平面内で回転する第1回転板11aと、第1回転板11aに光を照射するとともにその反射光を受光する第1検出器11bとを有している。なお、本実施形態では光源と受光素子とを単一パッケージに組み込んだ反射型のエンコーダを採用しているが、透過型のエンコーダを採用することもできる。
【0032】
第1回転板11aは、周知のように複数のスリットが設けられており、第1検出器11bにおいてスリットに遮られる光を検出することにより、第1回転板11aの回転角度つまりはモータ10の回転角度を検出する。つまり、本実施形態の入力軸エンコーダ11は、光学式ものである。また、入力軸エンコーダ11としては、いわゆるインクリメント型やアブソリュート型のものを採用できる。
【0033】
これら第1回転板11aおよび第1検出器11bは、カバー13により覆われている。このカバー13は、耐熱性を高めるために設けられている耐熱構造物である。つまり、入力軸エンコーダ11は、熱対策やノイズ対策が施されている。
【0034】
第1検出器11bは、カバー13の内壁において第1回転板11aと対向する位置に設けられている。ここで、第1回転板11aと対向する位置とは、第1回転板11aに設けられているスリットに対向する位置を意味している。これにより、モータ10を回転駆動することによって第1回転板11aが第1検出器11bに対して相対的に回転し、モータ10の回転角度が検出される。
【0035】
減速機12は、モータ10の回転軸10aの回転を減速して出力段つまりは出力軸に伝達する。つまり、減速機12は、モータ10に連結されている。本実施形態では、減速機12として波動歯車装置を採用している。なお、伝達機構としては、減速機12に限らず、モータ10の回転力を伝達するものであれば他の構造のものを採用することができる。また、減速機12としては、波動歯車装置に限らず、他の構造のものを採用することができる。
【0036】
減速機12の出力軸には、本実施形態における第2のアームとしての下アーム4が、ショルダ3に対して相対的に回転可能に接続されている。この下アーム4は、図2の場合にはJ2で示されているモータ10の回転軸10aを通る平面視において、回転軸10aの延長線上に位置する形状、つまりは、モータ10および減速機12を両側から覆う形状に形成されている。つまり、下アーム4は、ショルダ3を両側から挟み込む両持ち状態で、図示しない支持機構によって支持されてショルダ3に連結されている。
【0037】
この下アーム4は、剛性を高めるために金属材料により形成されており、ショルダ3を両側から挟み込むようにある程度大きく形成されていることから、その比熱や熱容量が比較的大きくなっている。なお、ショルダ3や第一上アーム5や第二上アーム6等の他のアームも、金属材料により形成されており、比熱や熱容量が比較的大きくなっている。
【0038】
この下アーム4には、出力軸エンコーダ14は、モータ10と減速機12とが接続されている部位である連結部位よりもモータ10側に位置して、出力軸エンコーダ14が設けられている。つまり、本実施形態の出力軸エンコーダ14は、モータ10を挟んで減速機12とは反対側となる位置に設けられている。
【0039】
この出力軸エンコーダ14は、入力軸エンコーダ11と同様に光学式のものであり、第2回転板14aと第2検出器14bとを有している。つまり、出力軸エンコーダ14の第2回転板14aおよび第2検出器14bは、双方が減速機12よりもモータ10側に位置して設けられている。この出力軸エンコーダ14は、入力軸エンコーダ11とともにエンコーダ装置9を構成している。
【0040】
第2回転板14aは、モータ10の回転軸10aと同軸となる位置において、下アーム4の内壁から下アーム4の内側に延びている軸部材15の先端に、回転軸10aに垂直な状態で下アーム4内に固定されている。このため、下アーム4が回転した場合には、第2回転板14aは、回転軸10aを中心として、回転軸10aに垂直な平面内で下アーム4とともに回転する。
【0041】
また、軸部材15は、円筒状に形成されており、その内部が中空になっている。この中空の部分が、中空部に相当する。そして、第2回転板14aは、中空部に対応する位置に開口が形成されている。このため、ショルダ3内部と下アーム4内部とは、軸部材15の中空部および第2回転板14aの開口を経由して連通している。そして、ロボット1では、これら中空部および開口を利用してショルダ3と下アーム4との間で配線部材16が配線されている。
【0042】
第2検出器14bは、ショルダ3において第2回転板14aと対向する位置に固定されている。ここで、第2回転板14aと対向する位置とは、第2回転板14aに設けられているスリットに対向する位置を意味している。このとき、下アーム4には、第2回転板14aと第2検出器14bとが対向する位置に、回転軸10aを中心とし、下アーム4の回転可能範囲に合わせた円弧状の開口が形成されている。このため、下アーム4が回転した場合であっても、第2回転板14aと第2検出器14bとの間が遮られることは無い。
【0043】
なお、図2にはショルダ3の表面に第2検出器14bを設けた例を示しているが、第2検出器14bをショルダ3内に設け、ショルダ3の壁部にも開口を設けて第2回転板14aに対向可能にする構成にすることもできる。
【0044】
次に上記した構成の作用について説明する。
前述のように、入力軸エンコーダ11に加えて、モータ10が回転したときに相対的に移動する出力側に出力軸エンコーダ14を設けることにより、位置決め精度を向上させることができると考えられる。ただし、出力軸エンコーダ14も熱対策を施す必要があることから、入力軸エンコーダ11と同様の耐熱性を確保するためにカバー13等の耐熱構造物を設けると、設置スペースが増大し、その結果、ロボット1が大型化してしまう。
そこで、本実施形態では、以下の様にして、エンコーダ装置9への熱の影響を低減している。
【0045】
さて、モータ10が発熱した場合、その熱は、回転軸10aから減速機12に伝わっていく。そのため、もし仮に減速機12側の位置つまりは図2において減速機12よりも右方側の位置に出力軸エンコーダ14を設けた場合には、耐熱構造物を設けなければ、出力軸エンコーダ14は、減速機12からの輻射熱や下アーム4を経由して伝わる熱の影響を直接的に受けてしまう。
【0046】
これに対して、本実施形態では、出力軸エンコーダ14、より厳密に言えば、出力軸エンコーダ14の第2回転板14aおよび第2検出器14bの双方を、減速機12よりもモータ10側に位置して設けている。この場合、出力軸エンコーダ14は、減速機12との間にモータ10および入力軸エンコーダ11のカバー13が存在していることから、減速機12からの輻射熱の影響を直接的に受けることがない。つまり、出力軸エンコーダ14は、減速機12側からの熱の影響を受け難い位置に設けられている。
【0047】
また、出力軸エンコーダ14は、第2回転板14aが上記したように比熱や熱容量が大きい下アーム4において回転軸10aでみた場合に減速機12とは反対側となる位置に設けられており、第2検出器14bも、上記したように比熱や熱容量が大きいショルダ3において減速機12とは反対側となる位置に設けられておいる。これにより、減速機12からの熱は、ショルダ3や下アーム4によって吸収され、反対側の出力軸エンコーダ14に与える影響が小さくなる。
【0048】
すなわち、出力軸エンコーダ14は、減速機12からの輻射熱や下アーム4を経由して伝わる熱の影響を受け難い位置に設けられている。これにより、出力軸エンコーダ14に対する熱の影響を抑制することができる。
このとき、出力軸エンコーダ14は、熱の影響が抑制されていることから、耐熱構造物を設ける必要がない。これにより、出力軸エンコーダ14を保護するための耐熱構造物等の設置スペースが不要となる。
【0049】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
エンコーダ装置9は、ショルダ3(第1のアーム)に収容されているモータ10の回転角度を検出する入力軸エンコーダ11(第1のエンコーダ)と、ショルダ3に対する下アーム4(第2のアーム)の回転角度を検出する出力軸エンコーダ14(第2のエンコーダ)と、を備えている。このとき、下アーム4(第2のアーム)は、モータ10と減速機12(伝達機構)とを、モータ10の回転軸10aの延長線上における両側から覆う形状に形成されており、出力軸エンコーダ14は、第2回転板14aおよび第2検出器14bを有する光学式のものであり、第2回転板14aおよび第2検出器14bの双方が減速機12よりもモータ10側に位置して設けられている。
【0050】
この場合、出力軸エンコーダ14は、減速機12からの輻射熱や下アーム4を経由して伝わる熱の影響、つまりは、モータ10を回転駆動した際の熱の影響を受けにくくなる。そして、熱の影響を受け難いことから、大きな耐熱構造物を設ける必要がない。これにより、エンコーダ装置9の耐熱性を向上させることができるとともに、耐熱構造物等の設置スペースが不要となり、筐体の大型化、本実施形態で言えばロボット1の大型化を抑制することができる。すなわち、エンコーダ装置9を小型化することができる。
【0051】
また、第2回転板14aおよび第2検出器14bのうち一方がショルダ3側に固定され、他方が下アーム4に固定されていることから、各アームの相対的な回転角度を検出することができる。
【0052】
また、第2回転板14aは、モータ10の回転軸10aと同軸となる位置において下アーム4と一体に回転する軸部材15に固定されており、第2検出器14bは、第2回転板14aと対向する位置においてショルダ3に固定されている。つまり、第2回転板14aは、比熱や熱容量が大きい下アーム4において減速機12とは反対側となる位置に設けられており、第2検出器14bは、比熱や熱容量が大きいショルダ3において減速機12とは反対側となる位置に設けられておいる。これにより、減速機12からの熱がショルダ3や下アーム4によって吸収され、反対側に位置する出力軸エンコーダ14に与える影響が小さくなる。これにより、出力軸エンコーダ14に対する熱の影響を抑制することができる。
【0053】
下アーム4は、図2における左右方向において概ね対称に形成されているこが多いため、減速機12と反対側となる図示左方側の内部には、ある程度のスペースが存在していると考えられる。その場合、そのスペースに第2回転板14aを設けることにより、従来構造を大きく変更することなく出力軸エンコーダ14を設置可能になることが期待できる。
【0054】
ショルダ3から下アーム4に渡される配線部材16を、減速機12とは反対側となるショルダ3から下アーム4の対向面において、モータ10の回転軸10aと同軸となる中空部を通して配線している。これにより、回転軸10aや減速機12の主軸を中空にしたりすることなく、また、回転軸10aの回転に対応するための複雑な配線構造を新たに設ける必要なく、第2検出器14bまでの配線等、ショルダ3と下アーム4との間を容易に配線することができる。
【0055】
換言すると、回転軸10aや減速機12の主軸を中空にできない小型モータや小型減速機にも出力軸エンコーダ14を設けることができ、位置決め精度の向上を図ることができる。これは、配線をする場合、配線の保護や関節部の省スペース化のために中空部を通すことが多いが、従来ではモータ10と減速機12の中空部に出力軸と配線の両方を通さなければならないため、関節部が大型化してしまうのに対し、機械的構造が単純な出力軸エンコーダ14側のみ中空にすれば配線を通すことができるためである。
【0056】
また、中空の軸部材15によってショルダ3と下アーム4とが連通していることから、軸部材15が配線の保護部材として機能することから、アームの回転に伴って配線部材16が振り回されることがなく、配線の損傷を抑えることができ、耐久性を向上させることができる。
また、ロボット1は、入力軸エンコーダ11と出力軸エンコーダ14とを有するエンコーダ装置9を備え、出力軸エンコーダ14については耐熱構造物等を設ける必要が無いことから、大型化を招くことなく、位置決め精度を向上させることができる。
【0057】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、図3を参照しながら説明する。第2実施形態では、エンコーダ装置9の構成が第1実施形態と異なっている。なお、第2実施形態の場合も第1実施形態で示したロボット1に適用することを想定しているため、図1も参照しながら説明する。
【0058】
図3(a)に示すように、第2実施形態のエンコーダ装置9では、第2回転板14aは、J2にて示すモータ10の回転軸10aと同軸となる位置において、回転軸10aを中心に下アーム4と一体に回転する中空部を有する軸部材15に、回転軸10aと垂直な状態、且つ、入力軸エンコーダ11の第1回転板11aと対向する状態で固定されている。つまり、第2回転板14aは、ショルダ3内に位置しているものの、下アーム4に固定された状態で設けられている。このため、下アーム4が回転した場合には、第2回転板14aは、回転軸10aを中心として、回転軸10aに垂直な平面内で下アーム4とともに回転する。この第2回転板14aは、第1実施形態と同様に、中空部に対応する位置が開口している。
【0059】
一方、第2検出器14bは、ショルダ3の内壁から第1回転板11aと第2回転板14aとの間まで延びている支持部材17の先端側において、第2回転板14aと対向するショルダ3内の位置に固定されている。この実施形態では、この支持部材17は、検出器用の基板を用いており、第1回転板11aと対向する位置には第1検出器11bが設けられている。つまり、支持部材17は、回路基板であるとともに、第1検出器11bおよび第2検出器14bをショルダ3に対して固定する固定部材として機能している。この支持部材17は、一方の検出器から照射された光が他方の検出器に到達しないように、不透明な金属材料等により、紙面に垂直方向における長さが少なくとも検出器よりも幅広となる寸法に形成されている。
【0060】
このような構成によっても、入力軸エンコーダ11および出力軸エンコーダ14は、減速機12からの輻射熱や下アーム4を経由して伝わる熱の影響、つまりは、モータ10を回転駆動した際の熱の影響を受けにくくなることから、エンコーダ装置9の耐熱性を向上させることができるとともに、耐熱構造物等の設置スペースが不要となり、エンコーダ装置9を小型化することができる。
【0061】
また、ショルダ3内部と下アーム4内部とは軸部材15の中空部および第2回転板14aの開口を経由して連通しているため、これを利用してショルダ3から下アーム4への配線部材16を配線することにより、第2検出器14bまでの配線やさらに先端側のアームまでの配線等を含めて、ショルダ3と下アーム4との間を容易に配線することができる。また、アームの回転に伴って配線部材16が振り回されることがなく、配線の損傷を抑えることができ、耐久性を向上させることができる。
【0062】
また、支持部材17を共通化したことにより、部品点数の増加を抑制できる。すなわち、ショルダ3内に必要なスペースの増加を抑制できる。
この場合、第1回転板11a、第1検出器11b、第2回転板14aおよび第2検出器14bを覆うカバー13(図2参照)を設けることにより、さらに耐熱性を向上させることができるとともに、対ノイズ性も向上させることができる。
【0063】
ところで、第2回転板14aをショルダ3内に位置するように設けた場合には、図3(b)に示すように、入力軸エンコーダ11をカバー13内に設けておき、つまりは、入力軸エンコーダ11については出力軸エンコーダ14を設けない場合と共通の構造としておき、ショルダ3の内壁において第2回転板14aと対向する位置に第2検出器14bを設けてもよい。
【0064】
このような構成によっても、入力軸エンコーダ11および出力軸エンコーダ14は、減速機12からの輻射熱や下アーム4を経由して伝わる熱の影響、つまりは、モータ10を回転駆動した際の熱の影響を受けにくくなることから、エンコーダ装置9の耐熱性を向上させることができるとともに、耐熱構造物等の設置スペースが不要となり、エンコーダ装置9を小型化することができる。
【0065】
この場合、第2検出器14bがショルダ3内に位置していることから、第2検出器14bまでの配線のためにショルダ3と下アーム4とを連通させる必要は無いものの、例えば第3軸や第7軸にもエンコーダ装置9を設ける場合には、ショルダ3と下アーム4とを連通させて、減速機12の反対側から配線部材16を配線することもできる。
また、下アーム4の内部にはある程度の空きスペースが存在していると考えられるため、従来構造を大きく変更することなく、また、大型化を招くことなく出力軸エンコーダ14を設置可能になることが期待できる。
【0066】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、図4を参照しながら説明する。第3実施形態では、エンコーダ装置9の構成が第1実施形態と異なっている。なお、第3実施形態の場合も第1実施形態で示したロボット1に適用することを想定しているため、図1も参照しながら説明する。
【0067】
図4に示すように、第3実施形態のエンコーダ装置9では、第2回転板14aは、J2にて示すモータ10の回転軸10aと同軸となる位置において、回転軸10aを中心に下アーム4と一体に回転し、ショルダ3から下アーム4内まで延びる中空部を有する軸部材15に、回転軸10aと垂直な状態で固定されている。この第2回転板14aは、第1実施形態と同様に、中空部に対応する位置が開口している。つまり、第2回転板14aは、下アーム4内に位置しているものの、ショルダ3に固定された状態で設けられている。そして、下アーム4が回転した場合には、第2回転板14aは、回転軸10aを中心として、回転軸10aに垂直な平面内で下アーム4に対して相対的に回転する。
【0068】
一方、第2検出器14bは、下アーム4の内壁において、第2回転板14aと対向する位置に固定されている。
このような構成によっても、入力軸エンコーダ11および出力軸エンコーダ14は、減速機12からの輻射熱や下アーム4を経由して伝わる熱の影響、つまりは、モータ10を回転駆動した際の熱の影響を受けにくくなることから、耐熱構造物等の設置スペースが不要となり、エンコーダ装置9を小型化することができる。
【0069】
この場合、第2回転板14aおよび第2検出器14bは、いずれも下アーム4内に位置しているため、第2回転板14aおよび第2検出器14bとの間にショルダ3と下アーム4の壁部が存在することから、減速機12からの熱だけでなく、モータ10からの熱の影響も低減することができる。したがって、より一層、エンコーダ装置9の耐熱性を向上させることができる。
【0070】
また、ショルダ3内部と下アーム4内部とは軸部材15の中空部および第2回転板14aの開口を経由して連通しているため、これを利用してショルダ3から下アーム4への配線部材16を配線することにより、第2検出器14bまでの配線や先端側のアームまでの配線等を含めて、ショルダ3と下アーム4との間を容易に配線することができる。
【0071】
また、アームの回転に伴って配線部材16が振り回されることがなく、配線の損傷を抑えることができ、耐久性を向上させることができる。
また、下アーム4の内部にはある程度の空きスペースが存在していると考えられるため、従来構造を大きく変更することなく、また、大型化を招くことなく出力軸エンコーダ14を設置可能になることが期待できる。
【0072】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について、図5を参照しながら説明する。第4実施形態では、エンコーダ装置9の構成が第1実施形態と異なっている。なお、第4実施形態の場合も第1実施形態で示したロボット1に適用することを想定しているため、図1も参照しながら説明する。
【0073】
図5に示すように、第4実施形態のエンコーダ装置9では、出力軸エンコーダ14と入力軸エンコーダ11は、回転板を共用している。以下、第1回転板11aを共用しているものとして説明する。
入力軸エンコーダ11の第1検出器11bは、ショルダ3の内壁から第1回転板11aまで延びる支持部材17において、第1回転板11aに対向する位置に設けられている。この支持部材17は、ショルダ3に対して固定されている。また、支持部材17の取り付け位置はこれに限らない。
【0074】
一方、出力軸エンコーダ14の第2検出器14bは、モータ10の回転軸10aと同軸となる位置において下アーム4から第1回転板11aに向かって延びているとともに、先端側において第1回転板11aと平行に延びている軸部材15において、第1回転板11aと対向する位置に固定されている。つまり、軸部材15は、モータ10の回転軸10aと同軸となる位置において下アーム4から第1回転板11aに向かって延びているとともに先端部が第1回転板11aと平行に曲げられている。
【0075】
さて、このような構成の場合、モータ10が回転すると下アーム4も回転することから、第1回転板11aおよび第2検出器14bの双方が同時に動くことになる。ただし、下アーム4は、減速機12を介してモータ10の回転軸10aに接続されていることから、モータ10の一回転に対する下アーム4の回転量はごく僅かである。そのため、回転角度を検出する際には、第1回転板11aに対する第2検出器14bの位置の変化が検出精度に与える影響は十分に無視できる程度であると推測される。
【0076】
そのため、このような構成によっても、入力軸エンコーダ11および出力軸エンコーダ14は、減速機12からの輻射熱や下アーム4を経由して伝わる熱の影響、つまりは、モータ10を回転駆動した際の熱の影響を受けにくくなることから、耐熱構造物等の設置スペースが不要となり、エンコーダ装置9を小型化することができる。
【0077】
また、入力軸エンコーダ11と出力軸エンコーダ14とで回転板を共用しているため、必要スペースも削減することができることに加えて、部品点数が削減できることから、コストダウンを図ることができる。
【0078】
また、ショルダ3内部と下アーム4内部とは軸部材15の中空部および第2回転板14aの開口を経由して連通しているため、これを利用してショルダ3から下アーム4への配線部材16を配線することにより、先端側のアームまでの配線等を含めて、ショルダ3と下アーム4との間を容易に配線することができる。また、アームの回転に伴って配線部材16が振り回されることがなく、配線の損傷を抑えることができ、耐久性を向上させることができる。
【0079】
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について、図6および図7を参照しながら説明する。第5実施形態では、エンコーダ装置9の構成が第1実施形態と異なっている。なお、第5実施形態の場合も第1実施形態で示したロボット1に適用することを想定しているため、図1も参照しながら説明する。
【0080】
図6に示すように、第5実施形態のエンコーダ装置9では、出力軸エンコーダ14と入力軸エンコーダ11は、回転板を共用している。以下、第1回転板11aを共用しているものとして説明する。
入力軸エンコーダ11の第1検出器11bは、ショルダ3の内壁から第1回転板11aに対向する位置まで延びる支持部材18において、第1回転板11aに対向する位置に設けられている。この支持部材18は、ショルダ3に対して固定されている。また、支持部材18の取り付け位置はこれに限らない。
【0081】
一方、出力軸エンコーダ14の第2検出器14bは、下アーム4から第1回転板11aと水平に、且つ、当該第1回転板11aに対向する位置まで延びている支持部材17において、第1回転板11aに対向する位置に固定されている。この支持部材17が設けられるショルダ3と下アーム4との対向面には、下アーム4の回転可能範囲に渡って、ショルダ3の表面から内側に窪む溝部が設けられている。また、溝部の第1回転板11a側の壁部には、検出器と対向する位置に、下アーム4の回転可能範囲に沿った円弧状の開口が形成されている。
【0082】
これにより、回転板の共用が可能となるとともに、ショルダ3と下アーム4との相対的な位置関係が変化した場合であっても、第2検出器14bによる回転角度の検出が可能となる。
この場合、図7に示すように、第1回転板11aをモータ10の外形よりも大きな直径に形成し、溝部をモータ10の側方側に形成することにより、エンコーダ装置9の全長(図示左右方向の長さ)を縮めることができ、小型化することができる。
【0083】
このような構成によっても、入力軸エンコーダ11および出力軸エンコーダ14は、減速機12からの輻射熱や下アーム4を経由して伝わる熱の影響、つまりは、モータ10を回転駆動した際の熱の影響を受けにくくなることから、耐熱構造物等の設置スペースが不要となり、エンコーダ装置9を小型化することができる。
また、回転板を共用していることから、部品点数の削減および省スペース化を図ることができる。
【0084】
また、ショルダ3内部と下アーム4内部とは回転軸10aに対応する部位が開口しており、この開口を経由して連通している。そのため、この開口を利用してショルダ3から下アーム4への配線部材16を配線することにより、第2検出器14bまでの配線やさらに先端側のアームまでの配線等を含めて、ショルダ3と下アーム4との間を容易に配線することができる。また、アームの回転に伴って配線部材16が振り回されることがなく、配線の損傷を抑えることができ、耐久性を向上させることができる。
【0085】
(その他の実施形態)
本発明は上記した、又は図面に記載した実施形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形や拡張あるいは組み合わせを行うことができる。
【0086】
各実施形態ではエンコーダ装置9を垂直多関節型ロボットに適用する例を示したが、図8に示すように、いわゆる水平多関節型ロボット30に適用してもよい。この水平多関節型ロボット30は、ベース31、ベース31に両持ち状態で連結されて第1軸(J10)を中心に回転する第1アーム32、第1アーム32と一体に回転する補助アーム33、第1アーム32および補助アーム33により両持ち状態で連結されて第2軸(J11)を中心に回転する第2アーム34、および、第2アーム34の先端側に当該第2アーム34に対して第3軸(J12)を中心に回転するシャフト35等を備えている。
【0087】
この場合、例えばモータ10が第2アーム34内に設けられており、そのモータ10によって第2アーム34が第1アーム32および補助アーム33に対して相対的に移動する場合には、エンコーダ装置9を第2アーム34の回転中心となる第2軸(J11)に適用することができる。
また、エンコーダ装置9は、垂直多関節型ロボットや水平多関節型ロボット30のような産業用ロボットに限らず、両持ち状態で連結されるアームを有するものに適用することができる。
【0088】
実施形態では第2軸にエンコーダ装置9を適用した例を示したが、第3軸(J3)や第5軸(J5)にエンコーダ装置9を適用することができる。また、実施形態では下アーム4が第2のアームに相当する例を示したが、各アームは、その構造によっては第1のアームにも第2のアームにもなり得る。また、エンコーダ装置9を適用できる軸は各アームの構造によって異なる。
【符号の説明】
【0089】
図面中、1はロボット、3はショルダ(第1のアーム)、4は下アーム(第2のアーム)、5は第一上アーム(第1のアーム)、6は第二上アーム(第2のアーム)、7は手首(第1のアーム)、9はエンコーダ装置、10はモータ、10aは回転軸(モータの回転軸)、11は入力軸エンコーダ(第1のエンコーダ)、11aは第1回転板(第1のエンコーダの回転板)、11bは第1検出器(第1のエンコーダの検出器)、12は減速機(伝達機構)、14は出力軸エンコーダ(第2のエンコーダ)、14aは第2回転板(第2のエンコーダの回転板)、14bは第2検出器(第2のエンコーダの検出器)、15は軸部材、16は配線部材、17は支持部材、18は支持部材、19は溝部、30は水平多関節型ロボット(ロボット)、32は第1アーム(第2のアーム)、33は補助アーム(第2のアーム)、34は第2アーム(第1のアーム)を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8