【文献】
ZHANG, R., et al.,Anal. Chem.,2013年,vol.85, no.3,p.1484-1491
【文献】
NOMURA, S., et al.,J. Biochem. Biophys. Methods,2007年,vol.70, issue 5,,p.787-795
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る核酸導入方法、核酸検出方法、生体成分解析方法、生体成分定量用アレイデバイス、及び生体成分解析キットについて説明する。
図1は、本実施形態に係る生体成分解析キットの斜視図である。
図2は、
図1のA−A線における断面図である。
図3及び
図4は、本実施形態に係る生体成分解析キットの作用を説明するための図である。
【0031】
本実施形態に係る生体成分解析キット1は、生体成分を定量するためのアレイデバイス(生体成分定量用アレイデバイス)の一例として、核酸を定量することが可能なアレイデバイス(核酸定量用アレイデバイス2)を備えたキットである。
まず、本実施形態に係る核酸定量用アレイデバイス2を備えた生体成分解析キット1の構成について説明する。
図1に示す本実施形態に係る生体成分解析キット1は、DNA、RNA、miRNA、mRNA、タンパク質、エクソソーム、リポソーム、及び細胞のいずれかが選ばれる物質を解析対象物質とするキットである。具体的には、本実施形態に係る生体成分解析キット1は、生体成分に含まれる解析対象物質の濃度を定量的に測定するキットである。
【0032】
本実施形態に係る生体成分解析キット1は、
図1及び
図2に示す核酸定量用アレイデバイス2と、検出反応試薬11(
図3参照)と、核酸定量用アレイデバイス2とともに使用される油性封止液12(
図4参照)とを備える。
【0033】
図1及び
図2に示すように、核酸定量用アレイデバイス2は、複数のウェル6を有する基材部3と、カバー部7と、注入口部8と、排出口部9と、水性溶液10とを備える。
【0034】
図2に示すように、基材部3は、基板4と、微小孔アレイ層5とを備える。
基板4は、実質的に透明な材料から形成される板状部材である。基板4の材質は、たとえば樹脂やガラスである。具体的には、基板4は、ポリスチレンやポリプロピレンから形成されていてもよい。基板4は、核酸定量用アレイデバイス2を搬送する装置や作業者の手作業による取扱い時に破損しない程度の剛性を持っていればよい。
【0035】
微小孔アレイ層5は、複数の貫通孔5aが並べて形成された層である。微小孔アレイ層5の層厚は3μmで、微小孔アレイ層5とカバー部7との間には100μmの隙間が空けられている。微小孔アレイ層5に形成された各貫通孔5aは、直径が5μm、中心線方向の長さが3μmの円柱形状である。(貫通孔5aの直径が5μm、中心線方向の長さが3μmの場合、1つの貫通孔5aにより形成された微小空間の容量は約100フェムトリットル(fl)となる。)。
各貫通孔5aの容積は適宜設定されてもよいが一例としては、各貫通孔5aの容積は、10ピコリットル以下である。各貫通孔5a同士の中心線間の距離は、各貫通孔5aの直径よりも大きければよい。各貫通孔5aは微小孔アレイ層5に対して三角格子状を形成するように配列されている。なお、各貫通孔5aの配列のされ方は特に限定されない。
微小孔アレイ層5に形成された貫通孔5aと、基板4の表面4aとによって、基材部3には、基板4を底面部6aとする有底筒状のウェル6が構成されている。
【0036】
微小孔アレイ層5の材質は、樹脂やガラス等であってよい。微小孔アレイ層5の材質は、基板4の材質と同じでもよいし基板4の材質と異なっていてもよい。また、微小孔アレイ層5は基板4と同じ材料で一体化されていてもよい。また、微小孔アレイ層5は基板4と同じ材料で一体成型されていてもよい。樹脂からなる微小孔アレイ層5の材質の例としては、シクロオレフィンポリマー、シリコン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、アモルファスフッ素樹脂などが挙げられる。
なお、微小孔アレイ層5の例として示されたこれらの材質はあくまでも例であり、微小孔アレイ層5の材質はこれらの材質には限られない。
例えば、ガラスの基板4上に、疎水性樹脂であるシクロオレフィンポリマーを用いて微小孔アレイ層5を形成してもよい。このような構成においては、ガラス基板4の表面が親水性であるため、インベーダー反応により加熱して試料を分析する際に、親水性の試料をウェル6内に保持しやすい。
また、微小孔アレイ層5が疎水性樹脂のような疎水性材料で形成されていれば、検出対象である生体分子の疎水性部位が疎水性の微小孔アレイ層5に吸着および保持されやすいため、生体分子が微小孔アレイ層5に効率よく捕集され、ウェル6における生体分子の検出が容易となる。
なお、本実施形態における疎水性とは、接触角試験における水との接触角が70°以上の範囲にあることと定義される。
なお、本実施形態において使用される材料の水との接触角の一例としては、シクロオレフィンポリマー(COP)の水との接触角は85°であり、疎水性樹脂であるCYTOPの水との接触角は110°程度である。
なお、接触角試験には、液滴法を用いた。
【0037】
また、微小孔アレイ層5は着色されていてもよい。微小孔アレイ層5が着色されていると、ウェル6内で蛍光、発光、吸光度等の光を用いた測定をする場合に、測定対象となるウェル6に近接する他のウェル6からの光の影響が軽減される。
微小孔アレイ層5は、基板4上に積層されたベタパターンに対してエッチング,エンボス形成,あるいは切削等の加工が施されることによって貫通孔5aが成形される。また、微小孔アレイ層5が基板4と一体成型される場合は、微小孔アレイ層5の貫通孔5aに相当する部分は、基板4にエッチング,エンボス形成、あるいは切削等の加工が施されることによって形成される。
【0038】
カバー部7は、基材部3とカバー部7との間に隙間を有して複数のウェル6の開口部分を覆うように基材部3に重ねられている。基材部3とカバー部7との間は、各種の液体が流れる流路となる。本実施形態では、基材部3とカバー部7との間を、注入口部8から排出口部9へ向かって各種の液体が流れる。
【0039】
図1に示す注入口部8は、基材部3とカバー部7との間の隙間に連通された管路形状を有している。本実施形態では、注入口部8はカバー部7に形成されている。なお、注入口部8は、基材部3に形成されていてもよい。
【0040】
排出口部9は、注入口部8から離れた位置で基材部3とカバー部7との間の隙間に連通する。本実施形態では、基材部3及びカバー部7において注入口部8から液体の流路方向に沿って測ったときに最も離れた部分における基材部3とカバー部7との隙間から液体が漏れ出すように排出口部9が構成されている。
なお、排出口部9は、注入口部8から離れた位置で基材部3とカバー部7との間の隙間に連通された管路形状を有するように基材部3又はカバー部7に形成され、封止可能であってもよい。この場合、基材部3とカバー部7との間に存在する液体が排出口部9を通じて蒸発することを防止できる。排出口部9の封止は、排出口部9を塞ぐシールや栓によって行われてもよい。
【0041】
図2に示すように、水性溶液10は、基材部3とカバー部7との間に充填されている。
水性溶液10は、解析対象物質を含む試料と混合可能な組成を有する液体である。本実施形態では、水性溶液10は、核酸を含まない緩衝液である。なお、水性溶液10は、各ウェル6内に満たされていればよい。すなわち、基材部3とカバー部7との間の流路部分の一部又は全部が気体で満たされていてもよい。
【0042】
検出反応試薬11(
図3,4参照)は、解析対象物質に関連する鋳型核酸に対する生化学的反応を行うための試薬である。鋳型核酸に対する生化学的反応は、たとえば、鋳型核酸が存在する条件下でシグナル増幅が起こるような反応である。本実施形態に係る検出反応試薬11は、鋳型核酸に対する酵素反応を生じさせる試薬である。検出反応試薬11は、たとえば核酸を検出可能な方法に応じて選択される。たとえば、インベーダー(登録商標)法や、TaqMan(登録商標)法または、蛍光プローブ法やその他の方法に使用される試薬が本実施形態に係る検出反応試薬11として生体成分解析キット1に含まれる。
【0043】
油性封止液12(
図4参照)は、基材部3とカバー部7との間に注入口部8(
図1参照)から送液可能な溶液である。油性封止液12は、解析対象物質を含む試料と混合しない材料から選ぶことができる。本実施形態に係る油性封止液12はミネラルオイルである。
【0044】
次に、本発明の第1実施形態に係る核酸導入方法、核酸検出方法、及び生体成分解析方法として、本実施形態に係る生体成分解析キット1を用いた核酸導入方法、核酸検出方法、及び生体成分解析方法を、本実施形態に係る生体成分解析キット1の作用とともに示す。
【0045】
本実施形態では、生体成分解析キット1の使用前の状態では、
図2に示すように基材部3とカバー部7との間に水性溶液10があらかじめ充填された状態で、注入口部8(
図1参照)と排出口部9(
図1参照)との両方が水密に封止されている。このため、基材部3とカバー部7との間にある水性溶液10は、注入口部8または排出口部9を開放するまで基材部3とカバー部7との間に閉じ込められている。
本実施形態では各ウェル6の容積が非常に小さいので、核酸定量用アレイデバイス2の製造時に各ウェル6内に水性溶液10が満たされていれば、生体成分解析キット1の使用前に、多少の振動等が核酸定量用アレイデバイス2に伝わっても各ウェル6内の水性溶液10(ウェル充填水性溶液)が空気に置き換わりにくい。
また、本実施形態では、生体成分解析キット1(核酸定量用アレイデバイス2)の製造時にあらかじめ各ウェル6内に水性溶液10を充填しておけば、ユーザーが生体成分解析キット1を用いる際に、生体成分解析キット1から脱気する工程が不要となるため、ユーザーが簡便に生体成分解析キット1を使用することができる。
【0046】
生体成分解析キット1の使用時には、前処理として、解析対象物質を含む試料を、公知の溶媒で適宜希釈する。試料の希釈率は公知のデジタルPCRにおける希釈率を参考にしてよい。また、解析対象物質を含む試料を希釈する溶媒は、各ウェル6内に満たされた水性溶液10(ウェル充填水性溶液)と混合可能な組成であることが好ましい。また、解析対象物質を含む試料を希釈する工程において、検出反応試薬11を規定の濃度で混合する。
以下では、解析対象物質が核酸であり、解析対象物質となる核酸を鋳型核酸としてシグナル増幅反応をインベーダー法により行う例を示す。なお、鋳型核酸は生体が産生した核酸であってもよいし、PCR(ポリメラーゼチェーンリアクション)産物等の人工物であってもよい。また、鋳型核酸は、生体物質を捕捉可能な抗体や抗体を標識したビーズにおける標識核酸でもよい。なお、検出反応試薬11の一部又は全部が水性溶液10中に含まれている場合には、上記の前処理における検出反応試薬11の混合の一部又は全部が不要である。
【0047】
まず、
図1に示す注入口部8及び排出口部9が開放され、鋳型核酸を含む試料とインベーダー反応用の検出反応試薬11との混合液Xが注入口部8を通じて基材部3とカバー部7との間の隙間へと、たとえば分注ピペット等によって送液される。試料と検出反応試薬11との混合液Xは、複数のウェル6の全てを覆うように、基材部3とカバー部7との間の隙間内で広がる(
図3参照)。また、試料と検出反応試薬11との混合液Xが基材部3とカバー部7との間の隙間に送液されることにより、水性溶液10は排出口部9から排出される。なお、このとき、試料と検出反応試薬11との混合液Xが水性溶液10と異なる色であると、試料と検出反応試薬11との混合液Xが基材部3とカバー部7との間のどの部分に送液されたかを容易に把握できる。
【0048】
図3に示すように、基材部3とカバー部7とによって構成される流路には、基板4と微小孔アレイ層5とによって形成された複数のウェル6が配されている。複数のウェル6内に満たされた水性溶液10(ウェル充填水性溶液)は、各ウェル6の内面に保持された状態で維持される。このため、試料と検出反応試薬11との混合液Xは複数のウェル6内に満たされた水性溶液10と置き換わることなく、水性溶液10に混合液Xが重層された状態となる。しかしながら、水性溶液10と混合液Xとは互いに容易に混合可能であるので、水性溶液10に混合液Xが重層された状態となった後、混合液X中の溶質は水性溶液10(ウェル充填水性溶液)中へと拡散する。
【0049】
次に、
図4に示すように、基材部3とカバー部7とによって構成される流路内に、注入口部8(
図1参照)から油性封止液12を送液する。油性封止液12は、混合液Xが水性溶液10に拡散した状態で複数のウェル6内の液体(ウェル充填水性溶液)を封止することにより、複数のウェル6を複数の独立した核酸検出反応容器6Aとする。また、油性封止液12は、基材部3とカバー部7との間の隙間内で複数のウェル6の外部にある液体を排出口部9から押し出す。
上記の前処理における試料の希釈によって、核酸検出反応容器6Aの1つにつき存在する鋳型核酸が1個又は0個となっている。試料の濃度が高すぎる場合には核酸検出反応容器6Aの1つにつき複数の鋳型核酸が入る可能性もある。
【0050】
本実施形態では、インベーダー反応用の検出反応試薬11と、鋳型核酸とが、鋳型核酸の濃度に応じてウェル6内(核酸検出反応容器6A内)に封入されている。この状態で、核酸定量用アレイデバイス2を62℃のオーブンにて所定時間インキュベートする。核酸定量用アレイデバイス2を62℃のオーブンにて所定時間インキュベートすることで、核酸検出反応容器6A内で、インベーダー反応において等温(等温反応)で行われるシグナル増幅が好適に進行する。
【0051】
続いて、インベーダー反応用の検出反応試薬11及び鋳型核酸がウェル6内(核酸検出反応容器6A内)に封入された核酸定量用アレイデバイス2が、あらかじめ定められた時間の後にオーブンから取り出され、蛍光を有する核酸検出反応容器6A数および当該蛍光を有する核酸の蛍光量が計測される。なお、本実施形態では、核酸検出反応容器6Aにおける蛍光の有無は、自家蛍光に対して所定のS/N比を超える蛍光量を閾値としてよい。また、本実施形態では、インベーダー法によるシグナル増幅が好適に進行して各核酸検出反応容器6A内でシグナルが飽和すれば、蛍光を有する核酸検出反応容器6Aにおける蛍光量に大きなばらつきが生じにくい。
【0052】
以上に説明したように、本実施形態に係る核酸導入方法、核酸検出方法、生体成分解析方法、核酸定量用アレイデバイス2、及び生体成分解析キット1では、鋳型核酸を含む液体が注入口部8から基材部3とカバー部7との間の隙間に導入されることで、水性溶液10のうち複数のウェル6外にある余剰溶液は排出口部9から排出され、水性溶液10のうち複数のウェル6内にある水性溶液10(ウェル充填水性溶液10)に鋳型核酸が拡散により移行する。このため、本実施形態に係る核酸導入方法、核酸検出方法、生体成分解析方法、核酸定量用アレイデバイス2、及び生体成分解析キット1によれば、各ウェル6に対する鋳型核酸の移行の際に各ウェル6内に気泡が入りにくい。
【0053】
また、本実施形態では各ウェル6に気泡が入り込む可能性が極めて低いので、本実施形態に係る核酸検出方法、生体成分解析方法、核酸定量用アレイデバイス2、及び生体成分解析キット1では、核酸を検出することが可能な核酸検出反応容器6Aの数が気泡の存在によりばらつく可能性を低く抑えることができる。さらに、各ウェル6の容積がきわめて小さい場合、ウェル6内の気泡の体積を無視できず核酸検出反応の進行がウェル6ごとにばらつく可能性が考えられるが、本実施形態ではウェル6内に気泡が存在する可能性を考慮する必要がないのでウェル6から気泡を除去する操作が不要となり、精度のよい定量分析を簡便な操作で行える。
【0054】
なお、本実施形態において、蛍光の検出以外に、可視光の発光、発色等をシグナルとして検出する検出系を適用してもよい。
また、タンパク質を解析するために本実施形態に係る構成を適用することも可能である。タンパク質を解析する場合には、目的のタンパク質に特異的に結合する分子にDNA鎖などの核酸で修飾しておく。この場合、修飾に用いたDNA鎖などの核酸を鋳型核酸としたインベーダー法のオリゴ設計をすることで、本実施形態におけるシグナル検出手順で目的タンパク質の有無を解析することができる。解析対象物質となる物質は、たとえば、DNA、RNA、miRNA、mRNA、又はタンパク質のいずれかであってよい。この場合、本実施形態に係る核酸定量用アレイデバイス2及び生体成分解析キット1により定量される物質は修飾に用いたDNA鎖などの核酸であり、この核酸によって修飾された物質が間接的に定量される。また、目的のタンパク質に特異的に結合する分子に修飾する物質はDNA鎖に限らず、検出のためのシグナルを発生する物質であればよい。例えば蛍光ビーズや、HPR(ホースラディッシュペルオキシダーゼ)などが挙げられる。
【0055】
さらに、上記の鋳型核酸により修飾された物質が標識物質となって特異的に結合する物質(相手となる物質)を本実施形態に係る核酸検出方法、生体成分解析方法、核酸定量用アレイデバイス2、及び生体成分解析キット1によって解析することも可能である。この場合、上記の鋳型核酸により修飾された物質とは、鋳型核酸とは異なるDNA鎖、酵素、粒子、抗体、及びリポソームのうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0056】
なお、上記の鋳型核酸に代えて、ウェル6内で蛍光,可視光,又は発色の反応を生じる生体由来物質を含む液体が注入口部8から基材部3とカバー部7との間の隙間に導入されることで、この生体由来物質を定量することができる。
たとえば、解析対象物質として定量される生体由来物質の例として、リポソーム,エクソソーム,細胞が挙げられる。これらの生体由来物質に特異的に存在する物質に対して蛍光標識その他の標識をすることで、これらの生体由来物質を定量することができる。このような標識をする標識物質としては、解析対象物質となる生体由来物質に特異的に結合する低分子リガンドや抗体などを構成要素に含む物質が挙げられる。
【0057】
また、鋳型核酸を介して解析対象物質を定量することに代えて、解析対象となる生体由来物質自体が発するシグナルを本実施形態に係る生体成分定量用アレイデバイスを用いて検出することにより、生体由来物質の定量が可能である。
このような生体由来物質の一例として、蛍光蛋白質を発現するためのプロモータ及び目的遺伝子等を含む蛍光蛋白質発現カセットが遺伝子組み換えにより染色体およびその他の遺伝子領域等に組み込まれた細胞や、上記の蛍光蛋白質発現カセットを含むプラスミド等を保持する細胞が挙げられる。
たとえば、蛍光蛋白質発現カセットに対する転写を促進する所定の試薬と上記の細胞とがウェル6内において混合状態とされることによって蛍光蛋白質が発現することにより、蛍光を発する細胞を定量することができる。蛍光蛋白質発現カセットは、蛍光蛋白質以外の遺伝子の発現に対応して発現するレポーター遺伝子の発現カセットとして構築されてもよい。この場合、細胞外リガンドの存在その他のシグナル伝達に対応して所定の遺伝子を発現する細胞内シグナル伝達がウェル6内で起こっている細胞を、レポーター遺伝子由来の蛍光蛋白質からの蛍光を利用して、本実施形態に係る生体成分定量用アレイデバイスを用いて定量できる。
【0058】
このように、油性封止液12により封止されたウェル6は、生体由来物質からのシグナルを検出するための独立したシグナル検出容器となり、生体由来物質の定量をすることができる。
上記のような定量方法を利用することで、生体由来物質として、生体内に存在するウィルスや細胞についても定量することができる。また、存在の有無を定性的に確認することも可能である。
なお、本実施形態に係る生体成分定量用アレイデバイスは、生体成分ではない物質を定量することもできる。たとえば、本実施形態に係る生体成分定量用デバイスを、ウィルス粒子定量用デバイスとして使用することもできる。
【0059】
また、本実施形態に開示されたインベーダー法に代えて、インベーダー法とは異なるシグナル増幅反応試薬を用いた酵素反応によるシグナル増幅が採用されてもよい。このシグナル増幅反応試薬は、上記実施形態と同様に解析対象物質を含む試料に混合されてよい。
【0060】
なお、本実施形態では複数のウェル6の底面部6aとカバー部7との両方が実質的に透明な材料によって形成されている例が開示されているが、複数のウェル6の底面部6aとカバー部7とのうち少なくともいずれか1つが光透過性を有していれば、複数のウェル6内における蛍光、発光、吸光度などの光学的な検出をすることができる。
【0061】
また、本実施形態では鋳型核酸を含む試料が水性(極性)である場合に好適な構成が開示されているが、鋳型核酸を含む試料が油性(非極性)である場合には、水性溶液10に代えて、有機溶媒等を含んだ非極性の封止液が採用されることが好ましい。さらに、鋳型核酸を含む試料が油性(非極性)である場合、ウェル6を封止するためには、本実施形態に示された油性封止液12に代えて、極性の置換液が採用されることが好ましい。これらの溶液の選択には、鋳型核酸を含む試料の溶媒への溶けやすさ並びに鋳型核酸及び解析対象物の安定性に応じて選択される溶媒の種類が考慮される。例えば、鋳型核酸を含む試料が水溶液の場合には封止液としてミネラルオイルを選ぶことができ、鋳型核酸を含む試料がミネラルオイルを溶媒としている場合には封止液は水や水性緩衝液等を選ぶことができる。
【0062】
核酸は極性分子なので非極性溶媒に対しては難溶性であるが、たとえば蛋白質や脂質を解析対象物質とする場合に、解析対象物質の定量のための標識核酸を解析対象物質に結合させた状態では、溶媒に対する標識核酸の溶解性に加えて溶媒に対する解析対象物質の溶解性が考慮されることが好ましい。この場合に、鋳型核酸(標識核酸)を含む試料が非極性溶媒により希釈されることがある。
【0063】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図5は、本実施形態に係る生体成分解析キットにおける核酸定量用アレイデバイスの基材部を示す模式図である。なお、以下の各実施形態において上述の第1実施形態に開示された構成要素と同様の構成要素には、第1実施形態と同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0064】
図5に示す本実施形態に係る生体成分解析キット1Aは、ウェル6内で電気化学的な測定をすることができる核酸定量用アレイデバイス2Aを上記第1実施形態の核酸定量用アレイデバイス2に代えて備えている点で、上記第1実施形態と構成が異なっている。
本実施形態に係る核酸定量用アレイデバイス2Aは、第1実施形態に開示された基材部3、ウェル6、カバー部7、水性溶液10、注入口部8、及び排出口部9を有している。
【0065】
さらに、本実施形態に係る複数のウェル6は、電極20を底面部6aに有する。さらに、本実施形態に係る基材部3は、ウェル6内の電極20に繋がる配線21と、配線21を検出回路に接続するためのコネクタ22とを有している。
【0066】
電極20は、たとえばウェル6内の溶液の電位変化や電気抵抗の変動を検出することができる。
配線21及びコネクタ22は、基材部3に対してたとえば印刷等によって形成されている。一例を挙げると、配線21及びコネクタ22は、基板4と微小孔アレイ層5との間に挟まれるように、基板4の外面にパターン形成される。
電極20、配線21、及びコネクタ22の材質は特に限定されない。
【0067】
本実施形態では、ウェル6の底面部6aの電極20を用いて、鋳型核酸の存在の有無に対応したpH変化や電位変化をシグナルとして核酸の定量をすることができる。
【0068】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図6は、本実施形態に係る生体成分解析キットにおける核酸定量用アレイデバイスの平面図である。
図7は、
図6のB−B線における断面図である。
【0069】
図6に示す本実施形態に係る生体成分解析キット1Bは、第1実施形態に開示された基材部3、ウェルを有する微小孔アレイ層5、カバー部7、水性溶液10、注入口部8、及び排出口部9を有している。さらに、本実施形態に係る生体成分解析キット1Bは、排出口部9と連通する廃液容器部31をさらに備える。
【0070】
廃液容器部31は、基材部3とカバー部7との間の隙間から排出口部9を通じて液体が流入して貯まる空間を有し、カバー部7の外部に配されている。本実施形態では、第1実施形態に開示されたカバー部7に代えて、注入口部8、排出口部9、及び廃液容器部31が形成されたカバー部7Aを有している。
【0071】
また、本実施形態では、第1実施形態に開示された核酸定量用アレイデバイス2に代えて、複数(本実施形態では96個)の独立した核酸定量用アレイデバイス2B1、2B2、・・・B96を有する。核酸定量用アレイデバイス2B1、2B2、・・・B96は、正方格子状に並べて互いに連結されている。複数の独立した核酸定量用アレイデバイス2B1、B2、・・・B96は、基材部3とカバー部7Aとを繋ぐスペーサー部材32によって水密に区切られている。本実施形態に係るスペーサー部材32は、基材部3の微小孔アレイ層5とカバー部7Aとの間の隙間の大きさが100μmとなるように微小孔アレイ層5とカバー部7Aとを保持する。本実施形態に係るスペーサー部材32は、注入口部8と排出口部9とを繋ぎ微小孔アレイ層5の各貫通孔5aを囲む貫通孔32aを有している。
【0072】
本実施形態では、排出口部9から排出される各種の液体が廃液容器部31に貯まるので、廃液処理が容易である。
なお、本実施形態に係る生体成分解析キット1Bは水性溶液10を有していなくてもよい。
なお、排出口部9から各種の液体が注入され、注入口部8から余剰の液体が排出されるようになっていてもよい。
【0073】
(変形例1)
次に、本実施形態に係る変形例1について説明する。
図8は、本変形例の構成を示す断面図である。
図8に示すように、本変形例では、基材部3の厚さ方向において基材部3を下側、カバー部7Aを上側と定義したときに、注入口部8における注入口開口端8aの位置が排出口部9における廃液容器部側開口端9aよりも下にある。さらに、排出口部9における廃液容器部側開口端9aは、廃液容器部31の底面よりも上にある。
本変形例では、排出口部9における廃液容器部側開口端9aから廃液容器部31内に液体が入るまで注入口開口端8aから各種の液体を送液した後、注入口開口端8aが開放されると、注入口部8と排出口部9とのそれぞれの液面の高さが重力により一致する過程で、注入口開口端8aから、排出口部9内にある液量を上限として液体が逆流する。このため、注入口開口端8a近傍に気泡があってもその気泡は液体の逆流により流されて注入口開口端8aから外に押し出される。本変形例では、注入口部8の近傍において、基材部3とカバー部7Aとの間に気泡が留まりにくい。
さらに、本変形例では、排出口部9における廃液容器部側開口端9aが廃液容器部31の底面よりも上にあるので、廃液容器部31内に入った液体が排出口部9を通じて基材部3とカバー部7Aとの間の隙間に逆流しにくい。
【0074】
(変形例2)
次に、本実施形態に係る変形例2について説明する。
図9は、本変形例の構成を示す断面図である。
図9に示すように、本変形例では、基材部3の厚さ方向において基材部3を下側、カバー部7Aを上側と定義したときに、注入口部8における注入口開口端8aの位置が排出口部9における廃液容器部側開口端9aよりも上にある。本変形例では、排出口部9における廃液容器部側開口端9aから廃液容器部31内に液体が入るまで注入口開口端8aから各種の液体を送液した後、注入口開口端8aが開放されると、注入口部8と排出口部9とのそれぞれの液面の高さが重力により一致する過程で、注入口部8にある液体が基材部3とカバー部7Aとの間の隙間にさらに入り込む。また、試料と検出反応試薬11との混合液X及び油性封止液12を基材部3とカバー部7Aとの間の隙間に注入口部8を通じて送液すると、排出口部9から廃液容器部31に押し出された液体の一部は排出口部9から基材部3とカバー部7Aとの間の隙間へ重力により戻ろうとするが、注入口部8内にある液体の質量と拮抗することで廃液容器部31からの液体の逆流が抑えられる。
【0075】
(変形例3)
次に、本実施形態に係る変形例3について説明する。
図10は、本変形例の構成を示す断面図である。
図10に示すように、本変形例では、注入口部8の開口面積よりも排出口部9の開口面積の方が小さい。
排出口部9の開口面積は、注入口部8からの送液圧力がかからなければ排出口部9を液体が通過できない程度の管路抵抗を得ることができる面積に設定されている。排出口部9の具体的な開口面積は、排出口部9から排出されることが想定される液体の組成に応じて決められてよい。
本変形例では、注入口部8からの送液時には基材部3とカバー部7Aとの間の隙間から排出口部9を通じて廃液容器部31に液体が移動可能であり、注入口部8から当該隙間への送液の終了後は、排出口部9を通じた液体の流れは起こらない。このため、本変形例では、廃液容器部31から基材部3とカバー部7Aとの間の隙間への液体の逆流が抑えられる。
なお、排出口部9から各種の液体が注入され、注入口部8から余剰の液体が排出されるようになっていてもよい。
【0076】
(変形例4)
次に、本実施形態に係る変形例4について説明する。
図11は、本変形例の構成を示す断面図である。
【0077】
図11に示すように、本変形例では、上記第3実施形態の生体成分解析キット1Bと比較して廃液容器部31の底面31aを構成する部位が厚い。さらに本変形例では、上記の変形例1と同様に、基材部3の厚さ方向において基材部3を下側、カバー部7Aを上側と定義したときに、注入口部8における注入口開口端8aの位置が排出口部9における廃液容器部側開口端9aよりも下にある。本変形例では、注入口部8における注入口開口端8aの位置が排出口部9における廃液容器部側開口端9aよりも下にあることにより、上記の変形例1と同様の効果を奏する。また、注入口部8における注入口開口端8aの位置が排出口部9における廃液容器部側開口端9aよりも上にあってもよい。この場合には、本変形例は上記の変形例2と同様の効果を奏する。
【0078】
本変形例では、基材部3の厚さ方向における下側(下面)(
図11に符号D1に示す方向)から蛍光,発光,又は発色などの検出を行う場合に、廃液容器部31の底面31aを構成する部位が厚いので、廃液容器部31内にたまった廃液からの蛍光や廃液自体の色等の影響を緩和することができる。
なお、排出口部9から各種の液体が注入され、注入口部8から余剰の液体が排出されるようになっていてもよい。
【0079】
(変形例5)
次に、本実施形態に係る変形例5について説明する。
図12は、本変形例の構成を示す平面図である。
図13は、
図12のC−C線における断面図である。
【0080】
本変形例の生体成分解析キット1Cでは、注入口部8と排出口部9との間に設けられ、基材部3の厚さ方向において廃液容器部31と重ならない領域A1において反応及び検出が可能である。この領域A1では、基材部3の厚さ方向における下側(下面)から(
図13に符号D1に示す方向)又は基材部3の厚さ方向における上側(上面)から(
図13に符号D2に示す方向)、蛍光,発光,又は発色などの検出をすることが可能な領域が設けられている。
本変形例では、廃液の有無や廃液の量の影響を受けずに微小孔アレイ層5における蛍光,発光,又は発色などの検出を行うことができる。
なお、排出口部9から各種の液体が注入され、注入口部8から余剰の液体が排出されるようになっていてもよい。
【0081】
(変形例6)
次に、本実施形態に係る変形例6について説明する。
図14は、本変形例の構成を示す平面図である。
図15は、
図14のD−D線における断面図である。
図16は、
図14のD−D線における断面を示す斜視図である。
図17は、本変形例におけるスペーサー部材32を示す平面図である。
図18A,
図18B,及び
図18Cは、スペーサー部材32の他の構成を示す平面図である。
図19は、本変形例の微小孔アレイ層5を備えた基材部3の平面図である。
【0082】
図14から
図16までに示すように、本変形例の生体成分解析キット1Dでは、上記の変形例5と同様に、廃液の有無や廃液の量の影響を受けずに微小孔アレイ層5における蛍光,発光,又は発色などの検出を行うことができるように、注入口部8と排出口部9との間に、基材部3の厚さ方向において廃液容器部31と重ならないように微小孔アレイ層5が配された領域A1を有している。
【0083】
また、本変形例では注入口部8は漏斗状に形成されており、注入口部8に対して液体を注入するためのピペットチップ等をスムーズに案内することができる。注入口部8の位置は、既存の96ウェルプレートにおける各ウェルの中央位置に対応していてもよい。すなわち、本変形例では、96ウェルプレートにおける各ウェルの中央位置(96か所)のうちの48か所に注入口部8が配置されていてもよい。これにより、既存のELISA装置における分注動作に容易に対応させることができる。
【0084】
また、廃液容器部31に繋がる排出口部9は、上記の変形例1と同様に、排出口部9における廃液容器部側開口端9aが、廃液容器部31の底面よりも上にあるように成形されている。
【0085】
図17に示すように、スペーサー部材32は、
図15に示す注入口部8と排出口部9とを繋ぎ、注入口部8と排出口部9との間に試薬等の液体を貯留させることができる隙間を生じさせる。
【0086】
また、
図18A及び
図18Bに示すように、スペーサー部材32は、注入口部8の位置に対応する入口部32x,排出口部9の位置に対応する出口部32z,及び入口部32xと出口部32zとを繋ぐ流路部32yを有していれば、
図17に示す構造には限られない。
【0087】
たとえばスペーサー部材32の他の構成例として
図18Aに示された構成では、廃液容器部31と重ならない領域A1(
図19参照)のうちの2つを繋ぐように流路部32yが設けられている。
【0088】
また、たとえばスペーサー部材32の他の構成例として
図18Bに示された構成では、廃液容器部31と重ならない領域A1(
図19参照)を間に挟んで入口部32xと、入口部32xの反対の位置に流路部32yの一端が設けられ、流路部32yの他端が、入口部32x側まで引き回されて出口部32zが入口部32xの近傍に位置している。
【0089】
また、
図18Cに示すように、スペーサー部材32において注入口部8の近傍に、固体状の試薬を保持するための窪み32Aが形成されていてもよい。この窪みには、検出の直前に混合されるべき各種の試薬が保持されてよい。注入口部8を通じて試薬等の液体が流れることによってこの液体に窪みに配された試薬が溶け出すことにより、反応を生じさせることができる。
【0090】
本変形例では、注入口部8と排出口部9との間に位置する略長方形状の領域A1(
図15参照)内で蛍光,発色,又は発光の反応を検出することができる。
【0091】
図14及び
図19に示すように、本変形例では、微小孔アレイ層5において最大48か所で互いに異なる反応をさせることができる。なお、微小孔アレイ層5において互いに異なる反応をさせることができる上限は48か所には限られない。
【0092】
なお、カバー部7A及びスペーサー部材32の形状は、上記の形状に限られない。
たとえば、
図20から
図22に示すように、注入口部8及び排出口部9がいずれも漏斗状であってよい。
また、
図23及び
図24に示すように、注入口部8の内面が複数の平面からなり、注入口部8がテーパー状に形成されて基材部3側へ向かって漸次小さく窄まるように(注入口部8の径が小さくなるように)構成されていてもよい。
なお、排出口部9から各種の液体が注入され、注入口部8から余剰の液体が排出されるようになっていてもよい。
【0093】
(変形例7)
次に、本実施形態に係る変形例7について説明する。
図25は、本変形例の構成を示す断面図である。
【0094】
図25に示すように、本変形例では、注入口部8が漏斗状を有している。注入口部8の内部形状は、毛細管現象で注入口部8に液体が留まることがないように、比較的大きく構成されている。本変形例では、注入口部8に試薬等の液体を滴下することにより、試薬等の液体の自重により、試薬等の液体が送液される。
【0095】
たとえば、注入口部8を通じて検出対象物や試薬等を含む液体を当該液体の自重により送液した後、当該液体よりも比重の高いオイルを注入口部8に重層すると、オイルが自重により注入口部8から排出口部9へと流れる過程で、微小孔アレイ層5の各ウェル6(第1実施形態参照)を個別に封止できる。
本変形例では、検出対象物や試薬等を含む液体の比重がほぼ1である場合に、オイルの比重は、例えば1.8程度であってよい。
【0096】
(変形例8)
次に、本実施形態に係る変形例8について説明する。
図26は、本変形例の構成を示す平面図である。
図27は、
図26のE−E線における断面図である。
【0097】
図26及び
図27に示すように、本変形例の生体成分解析キット1Eでは、注入口部8側にも廃液容器部31が構成されている。注入口部8側に構成された廃液容器部31は、排出口部9から注入口部8側へと液体を送液した時に注入口部8からあふれる液体を貯めることができる。
本変形例では、検出対象物や試薬等を含む液体は注入口部8から送液され、その後、排出口部9からオイルが送液されるという使い方が可能である。排出口部9からオイルが送液された場合、注入口部8からあふれた試薬及びオイルは、注入口部8側に設けられた廃液容器部31に貯まる。注入口部8側に設けられた廃液容器部31に貯まった液体は排出口部9側に設けられた廃液容器部31に貯まった液体とは混ざらない。
なお、排出口部9から各種の液体が注入され、注入口部8から余剰の液体が排出されるようになっていてもよい。
【0098】
(変形例9)
次に、本実施形態に係る変形例9について説明する。
図28は、本変形例の構成を示す断面図である。
【0099】
図28に示すように、本変形例は、上記の第3実施形態に開示された生体成分解析キット1Bにおいて、カバー部7Aが光不透過の材料からなる点が異なっている。この場合、基材部3の厚さ方向において、下側から蛍光,発光,又は発色を検出する場合に、廃液容器部31にたまった廃液の影響を受けにくい。
また、本変形例では、カバー部7Aが特定の波長の光を選択的に不透過とする材料からなっていてもよい。本変形例における不透過とは、特定の波長の光を吸収することであってもよいし、特定の波長の光を反射することであってもよい。たとえば、カバー部7Aは、可視光を透過するが紫外線は不透過であるなどの構成を有していてもよい。この場合、カバー部7Aは、蛍光を検出するための励起光は透過するがこの励起光によって生じる蛍光は透過しない。この結果、基材部3の厚さ方向において下側(下面)から励起光を照射して且つ下側(下面)から蛍光を観察する場合に廃液容器部31内の液体の影響を受けにくく、またカバー部7Aを透過する可視光を照明光とする明視野の観察も可能となる。
【0100】
(変形例10)
次に、本実施形態に係る変形例10について説明する。
図29は、本変形例の構成を示す断面図である。
【0101】
図29に示すように、本変形例では、微小孔アレイ層5とカバー部7Aとの間に入った気泡をカバー部7Aの外へと移動させるためのフィルター33をカバー部7Aが有している。フィルター33は、気体を透過させることは可能であるが液体を透過させることができない構造を有している。
また、本変形例では上記の第3実施形態と同様に、注入口部8及び排出口部9が設けられている。
本変形例においてカバー部7Aに設けられたフィルター33は、注入口部8の下流且つ注入口部8の近傍に配置される。これにより、試薬やオイル等に混入した気泡は、微小孔アレイ層5のうち検出に利用される領域に到達する前にフィルター33に捕捉される。
【0102】
(変形例11)
次に、本実施形態に係る変形例11について説明する。
図30は、本変形例の構成を示す断面図である。
【0103】
本変形例では、上記の変形例10に開示されたフィルター33に代えて、気泡を貯めるための窪み33Aがカバー部7Aに形成されている。
カバー部7Aに形成された窪み33Aの位置は、上記の変形例10と同様に、注入口部8の下流且つ注入口部8の近傍であることが好ましい。このような構成であっても上記の変形例10と同様の効果を奏する。
また、本変形例では、上記の変形例10に開示されたフィルター33を備えた場合よりも、大きな気泡を効率よく捕捉することもできる。
【0104】
(変形例12)
次に、本実施形態に係る変形例12について説明する。
図31は、本変形例の構成を示す断面図である。
【0105】
本変形例では、注入口部8の注入口開口端8aに当接し、ピペットチップ40を注入口部8に挿通可能な貫通孔34aが形成されたアダプタ34を有している。
アダプタ34は、試薬やオイルを送液する際に使用されるピペットチップ40と組み合わされた状態で使用される。アダプタ34の外形形状は特に限定されない。本実施形態に係るアダプタ34の外形形状は、アダプタ34にピペットチップ40が取り付けられた際のピペットチップ40の先端に向かって漸次径が小さくなる円錐台状である。
【0106】
本変形例では、たとえば、アダプタ34がピペットチップ40に取り付けられ、ピペットチップ40の先端が注入口部8に挿入されると、アダプタ34が注入口開口端8aに当接する。これにより、カバー部7Aは基材部3側へと押される。その結果、カバー部7Aと基材部3との間の隙間の容積が減少することで、カバー部7Aと基材部3との間にある液体が注入口部8及び排出口部9から僅かに漏れ出る。このときに、注入口部8の注入口開口端8a近傍に気泡があった場合には気泡が注入口開口端8aから押し出されることにより、ピペットチップ40内の試薬やオイルの送液時に、注入口開口端8a近傍に位置する気泡が巻き込まれにくい。
【0107】
(変形例13)
次に、本発明の実施形態に係る変形例13について説明する。
図32Aは、本変形例の生体成分解析キット1Fの構成を示す斜視図である。また、
図32Bには、生体成分解析キット1Fにおける平面
図1F1(カバー部7Aの平面
図7Aaに相当する)、A−A断面における断面
図1F2、B−B断面における断面
図1F3、および側面
図1F4、ならびに、シール部材101の平面図、および、カバー部7Aの底面
図7Abが示されている。
【0108】
図32Aおよび32Bに示すように、本変形例の生体成分解析キット1Fは、上記の変形例6と同様に、廃液の有無や廃液の量の影響を受けずに微小孔アレイ層5における蛍光,発光,又は発色などの検出を行うことができるように、注入口部8と排出口部9との間に、基材部3の厚さ方向において廃液容器部31と重ならないように微小孔アレイ層5が配された領域A1を有している。
【0109】
また、本変形例では注入口部8は漏斗状に形成されており、注入口部8に対して液体を注入するためのピペットチップ等をスムーズに案内することができる。
【0110】
また、本変形例における廃液容器部31に繋がる排出口部9は、
図32Aおよび
図32Bに示すように、注入口部8と同様に排出口部9が漏斗状であり、排出口部9はピペットチップ等をスムーズに案内することができる形状を有している。
本変形例では、変形例8と同様に、検出対象物や試薬等を含む液体は注入口部8から送液され、その後、排出口部9からオイルが送液されるという使い方が可能である。
注入口部8から検出対象物や試薬等を含む液体を注入した後は、排出口部9を通じてカバー部7Aと基材部3の間の隙間より廃液容器部31に液体が流入する。廃液容器部31および排出口部9周辺に液体が存在するので、排出口部9よりピペット等を用いてオイルを注入する際に、カバー部7Aと基材部3の間の隙間の液体に空気が混入しにくい。
すなわち、本変形例によれば、カバー部7Aと基材部3の間の隙間の液体に、オイルを注入する際に、空気が混入することを防ぎやすい。
そのため、本変形例によれば、仮に液体の注液時に、カバー部7Aと、基材部3との間の隙間に充填された液体中に気泡が入る可能性が低減されるため、精度のよい定量分析を簡便な操作で行うことができる。
【0111】
図32Bに示すように、シール部材101は、他の変形例におけるスペーサー部材32と同様に、
図32Bに示す注入口部8と排出口部9とを繋ぎ、注入口部8と排出口部9との間に試薬等の液体を貯留させることができる隙間を生じさせる。
【0112】
また、
図18A及び
図18Bに示されたスペーサー部材32と同様に、シール部材101は、注入口部8の位置に対応する入口部,排出口部9の位置に対応する出口部,及び入口部と出口部とを繋ぐ流路部を有していれば、
図32Bに示す構造には限られない。
【0113】
本変形例では、注入口部8と排出口部9との間に位置する略長方形状の領域A1(
図32B参照)内で蛍光,発色,又は発光の反応を検出することができる。
【0114】
なお、
図32Aおよび
図32Bに示された一列式のキットのうち、「1つの注入口部8、1つの領域A1、1つの排出口部9および1つの廃液容器部31」を1つのユニットとして用いることもできる。すなわち、本変形例に係る生体成分解析キット1Fは、一列式のキットとして用いてもよく、当該一列式のキットより1ユニットごとに切り離して個別の分析キットとして用いてもよい。
【0115】
また、
図32Aには、一列式のキットが示されているが、他の変形例に示したように、本変形例に係る生体成分解析キット1Fは96穴式の形状を有していてもよい。この場合、注入口部8の位置は、既存の96ウェルプレートにおける各ウェルの中央位置に対応していてもよい。すなわち、本変形例では、96ウェルプレートにおける各ウェルの中央位置(96か所)のうちの48か所に注入口部8が配置されていてもよい。これにより、既存のELISA装置における分注動作に容易に対応させることができる。
【0116】
また、
図32Bには、シール部材101が、基板4および微小孔アレイ層5から形成される基材部3と別途設けられる構成を示したが、シール部材101と基材部3とが一体形成された構成を有していてもよい。
【0117】
(変形例14)
次に、本発明の実施形態に係る変形例14について説明する。
図33Aは、本変形例の生体成分解析キット1Gの構成を示す斜視図である。また、
図33Bには、生体成分解析キット1Gにおける平面
図1G1(カバー部7Aの平面
図7Aaに相当する)、A−A断面における断面
図1G2、左側面
図1G3、および右側面
図1G4、シール部材101の平面図、および、カバー部7Aの底面
図7Abが示されている。
【0118】
図33Aおよび33Bに示すように、本変形例の生体成分解析キット1Gは、上記の変形例6と同様に、廃液の有無や廃液の量の影響を受けずに微小孔アレイ層5における蛍光,発光,又は発色などの検出を行うことができるように、注入口部8と排出口部9との間に、基材部3の厚さ方向において廃液容器部31と重ならないように微小孔アレイ層5が配された領域A1を有している。
【0119】
また、本変形例では注入口部8は漏斗状に形成されており、注入口部8に対して液体を注入するためのピペットチップ等をスムーズに案内することができる。
【0120】
図33Bに示すように、本変形例では、基材部3の厚さ方向において基材部3を下側、カバー部7Aを上側と定義したときに、注入口部8における注入口開口端8aの位置が排出口部9における廃液容器部側開口端9aよりも下にある。さらに、排出口部9における廃液容器部側開口端9aは、廃液容器部31の底面よりも上にある。
本変形例では、排出口部9における廃液容器部側開口端9aから廃液容器部31内に液体が入るまで注入口開口端8aから各種の液体を送液した後、注入口開口端8aが開放されると、注入口部8と排出口部9とのそれぞれの液面の高さが重力により一致する過程で、注入口開口端8aから、排出口部9内にある液量を上限として液体が逆流する。このため、注入口開口端8a近傍に気泡があってもその気泡は液体の逆流により流されて注入口開口端8aから外に押し出される。本変形例では、注入口部8の近傍において、基材部3とカバー部7Aとの間に気泡が留まりにくい。
さらに、本変形例では、排出口部9における廃液容器部側開口端9aが廃液容器部31の底面よりも上にあるので、廃液容器部31内に入った液体が排出口部9を通じて基材部3とカバー部7Aとの間の隙間に逆流しにくい。
【0121】
なお、本変形例の生体成分解析キット1Gにおいては、廃液容器部31の容積が試薬およびオイルの注入量の合計よりも大きくなるように廃液容器部31は形成されている。そのため、試薬およびオイルを注入した際に、廃液容器部31から生体成分解析キット1Gの外部に液体が漏れだすおそれがない。
【0122】
図33Bに示すように、シール部材101は、上述の第13変形例と同様に、
図33Bに示す注入口部8と排出口部9とを繋ぎ、注入口部8と排出口部9との間に試薬等の液体を貯留させることができる隙間を生じさせる。
【0123】
また、第13変形例と同様に、シール部材101は、注入口部8の位置に対応する入口部,排出口部9の位置に対応する出口部,及び入口部と出口部とを繋ぐ流路部を有していれば、
図33Bに示す構造には限られない。
【0124】
本変形例では、注入口部8と排出口部9との間に位置する略長方形状の領域A1(
図33B参照)内で蛍光,発色,又は発光の反応を検出することができる。
【0125】
なお、
図33Aおよび
図33Bに示された一列式のキットのうち、「1つの注入口部8、1つの領域A1、1つの排出口部9および1つの廃液容器部31」を1つのユニットとして用いることができる。すなわち、本変形例の生体成分解析キット1Gは、一列式のキットとして用いてもよく、当該一列式のキットより1ユニットごとに切り離して個別の分析キットとして用いてもよい。
【0126】
また、
図33Aには、一列式のキットが示されているが、他の変形例に示したように、キットは96穴式の形状を有していてもよい。この場合、注入口部8の位置は、既存の96ウェルプレートにおける各ウェルの中央位置に対応していてもよい。すなわち、本変形例では、96ウェルプレートにおける各ウェルの中央位置(96か所)のうちの48か所に注入口部8が配置されていてもよい。これにより、既存のELISA装置における分注動作に容易に対応させることができる。
【0127】
また、
図33Bには、シール部材101が、基板4および微小孔アレイ層5から形成される基材部3と別途設けられる構成を示したが、シール部材101と基材部3とが一体形成された構成を有していてもよい。
【0128】
(変形例15)
次に、本発明の実施形態に係る変形例15について説明する
。
上述の変形例13および14において、一列式のキットを1つのユニットごとに切り出して使うことが可能であることを示したが
、基材部3とシール部材101とを一体形成し、ビーカー状、チューブ状を有する容
器を用いることもできる。
この場合、流路は形成されず、バッチ式の容
器に液体が満たされた状態で、核酸等の生体成
分をウェル6に導入する操作、および、検出操作が可能である。
また、容
器には、ウェル6を複数設けることが可能である
。
バッチ式の容
器を用いた場合にも、製造工程の際にあらかじめ水性溶液10をウェル6に充填しておけば、キットの使用者が現場で分析試験を行う際に、検出対象である核酸等の生体成
分がウェル6内に拡散し、ウェル6内に生体成
分が導入され、検出が可能となる。
一方、製造工程においてあらかじめ水性溶液10をウェル6に充填していない場合には、キットの使用者が現場での分析試験を行う際に、ウェル6内に入り込んだ気泡を脱気することが困難である。
そのため、本変形例においては、製造工程の際にあらかじめ水性溶液10がウェル6に充填されていることが好ましい。
なお、本変形例における核酸等の生体成分の導入操作、検出および観察等の分析操作は、上述した実施形態と同様に実施することができる。
【0129】
なお、上述の実施形態における生体成分の導入方法では、核酸の導入方法を一例として示したが、DNA、RNA、miRNA、mRNA、タンパク質、エクソソーム、リポソーム、及び細胞等を含む生体成分の導入方法であってもよい。
本実施形態に係る生体成分の導入方法は、上述の核酸導入方法と同様に行うことができ、生体成分は核酸のみに限定されない。
また、同様に、上述の実施形態に係る核酸検出方法、生体成分解析方法、生体成分定量用アレイデバイス、及び生体成分解析キットにおいても、DNA、RNA、miRNA、mRNA、タンパク質、エクソソーム、リポソーム、及び細胞等を含む生体成分などを対象としてよく、分析対象は上述の実施形態に限定されない。
【実施例】
【0130】
次に、本発明の上記実施形態に係る核酸導入方法(生体成分導入方法)、生体成分解析方法、核酸定量用アレイデバイス2、及び生体成分解析キット1について、実施例を示して詳細に説明する。なお、下記の実施例は、本発明が適用された具体的な一例であり、本発明を何ら限定しない。
【0131】
<核酸定量用アレイデバイスの作製>
0.5mm厚のガラス製の基板4に、疎水性樹脂であるCYTOP(登録商標)(旭硝子製)をスピンコートし、180℃で3時間熱硬化させ、フォトリソグラフィー技術を使って直径5μmの孔を100万個持つ基材部3を作製した。CYTOP(登録商標)をスピンコートすることにより基板4に形成された層がフォトリソグラフィーにより成形されることにより、上記実施形態に開示された微小孔アレイ層5を形成した。CYTOP(登録商標)をスピンコートすることにより基板4に形成された層の厚さは3μmである。
【0132】
続いて、基材部3との隙間が100μmとなるように、カバー部7としてカバーガラスを基材部3上に設置した。基材部3とカバー部7との間には、粘着テープからなるスペーサーが配された。さらに、基材部3とカバー部7との間に、核酸を含まない水性液体を置換液として送液し、直径5μmの孔と、基材部3とカバー部7との間の隙間との全体に、水性液体を満たした。本実施例では水性液体の組成は20μM MOPS pH7.5、15mM NaCl、6.25mM MgCl
2である。
【0133】
<試料と検出反応試薬との混合液の送液>
インベーダー反応試薬(2μM アレルプローブ、1μM インベーダーオリゴ、1μM FAM標識アーム、20μM MOPS pH7.5、15mM NaCl、6.25mM MgCl
2、50U/μL クリベース(登録商標))と、人工合成DNAとを混合し、この混合液Xを基材部3とカバー部7との間の隙間に送液した。ここで、人工合成DNAの濃度については、基材部3に形成された直径5μmの孔の1つに1分子が入るように、人工合成DNAの濃度が30pMとなるように人工合成DNAを混合液Xに添加した。
直径5μm高さ3μmの円柱の微小孔は59fLの体積となり、ポアソン分布に従うと仮定すると30pMの人工合成DNA濃度では100万個の微小孔のうち65%の微小孔に入ると推定される。インベーダー反応試薬と人工合成DNAとの混合物を送液した後、油性封止液12として、基材部3とカバー部7との間の隙間にFC−40(SIGMA)を送液し、直径5μmの孔を封止することで、100万個の独立した核酸検出反応容器6Aを構成した。
【0134】
<蛍光強度の測定>
次に、100万個の独立した核酸検出反応容器6Aを有する本実施例の核酸定量用アレイデバイス2を、62℃のオーブンにてインキュベートし、15分後に取り出し、蛍光顕微鏡で撮影し各孔の蛍光強度を観察した。ここでは、反応後の核酸検出反応容器6Aは、蛍光顕微鏡(ツァイス社、AX10)、光源(LEJ社、FluoArc001.26A Usable with HBO 10)、センサー(浜松ホトニクス社、EM−CCD C9100)、フィルター(オリンパス社、U−MNIBA2)、解析ソフト(浜松ホトニクス社、AQUACOSMOS 2.6:露光時間 488ms、EMゲイン 120、オフセット 0、ビニング ×1)を用いて撮影され、自家蛍光に対して十分なS/N比を有して蛍光を発する核酸検出反応容器6Aの数が計測された。
【0135】
図34は、本実施例における生体成分解析結果を示す写真である。本実施例では、
図34に示されるように、核酸検出反応容器6Aの全数のうち、おおよそ65%の核酸検出反応容器6Aからインベーダー反応による蛍光発光が観察された。これは、上記のポアソン分布に基づく推定と一致しており、核酸検出反応容器6Aに対して好適にインベーダー反応試薬と人工合成DNAが入ってインベーダー反応が進行し、人工合成DNAの濃度に対応した計測結果が得られたことを示している。
【0136】
以上、本発明の実施形態について図面及び実施例を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。