(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の電力系統を有し、前記電力系統のそれぞれが連系線を介して他の一つ以上の前記電力系統に接続されるように構成される電力網における前記連系線の利用計画を作成する連系線利用計画作成装置であって、
それぞれの前記連系線の許容送電量を記憶する許容送電量記憶部と、
前記各電力系統における所定時間内の発電量の見込み値及び電力需要の見込み値を取得する需給見込み取得部と、
前記発電量の見込み値及び前記電力需要の見込み値に基づいて、前記各電力系統の前記所定時間内の電力の過不足量を算定する過不足算定部と、
前記電力系統間で電力を融通するために前記所定時間内に前記各連系線に流すべき送電量を計画値として定めた連系線利用計画を策定する連系線利用計画策定部と、
を備え、
前記連系線利用計画策定部は、前記各連系線の送電量が前記許容送電量を超えないように、前記連系線利用計画を策定する
ことを特徴とする連系線利用計画作成装置。
複数の電力系統を有し、前記電力系統のそれぞれが連系線を介して他の一つ以上の前記電力系統に接続されるように構成される電力網における前記連系線の利用計画を作成する連系線利用計画作成装置の制御方法であって、
前記連系線利用計画作成装置が、それぞれの前記連系線の許容送電量を記憶し、
前記連系線利用計画作成装置が、前記各電力系統における所定時間内の発電量の見込み値及び電力需要の見込み値を取得し、
前記連系線利用計画作成装置が、前記発電量の見込み値及び前記電力需要の見込み値に基づいて、前記各電力系統の前記所定時間内の電力の過不足量を算定し、
前記連系線利用計画作成装置が、前記電力系統間で電力を融通するために前記各連系線の送電量が前記許容送電量を超えないように、前記所定時間内に前記各連系線に流すべき送電量を計画値として定めた連系線利用計画を策定する
ことを特徴とする連系線利用計画作成装置の制御方法。
複数の電力系統を有し、前記電力系統のそれぞれが連系線を介して他の一つ以上の前記電力系統に接続されるように構成される電力網における前記連系線の利用計画を作成する連系線利用計画作成装置に、
それぞれの前記連系線の許容送電量を記憶する手順と、
前記各電力系統における所定時間内の発電量の見込み値及び電力需要の見込み値を取得する手順と、
前記発電量の見込み値及び前記電力需要の見込み値に基づいて、前記各電力系統の前記所定時間内の電力の過不足量を算定する手順と、
前記電力系統間で電力を融通するために前記各連系線の送電量が前記許容送電量を超えないように、前記所定時間内に前記各連系線に流すべき送電量を計画値として定めた連系線利用計画を策定する手順と、
を実行させるためのプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0014】
===第1実施形態===
==電力網==
図1に一例として示すように、本実施形態に係る電力網1000は、複数の電力エリア10(
図1では4つの電力エリア10)を有し、電力エリア10のそれぞれが連系線11を介して他の一つ以上の電力エリア10に接続されるように構成される。
【0015】
各電力エリア10は、例えば一般電気事業者が電力供給事業を行うために運用している電力系統である。
【0016】
連系線11は、電力エリア10の間で電力を融通する際に用いる送電設備である。このため
図1に示す電力網1000では、例えば電力エリア1(10A)は、連系線11aを介することで電力エリア2(10B)との間で電力を融通することができるし、連系線11a及び連系線11bを介することで電力エリア3(10C)との間でも電力を融通することができるし、また、連系線11a、連系線11b及び連系線11cを介することで電力エリア4(10D)との間でも電力を融通することができる。
【0017】
電力エリア2(10B)、電力エリア3(10C)、及び電力エリア4(10D)についても同様に、連系線11を介することで、他の電力エリア10との間で電力を融通することができる。
【0018】
このため、例えば電力が余る電力エリア10及び電力が不足する電力エリア10があった場合に、電力が余る電力エリア10から電力が不足する電力エリア10に連系線11を介して電力の融通を行うことにより、これらの電力エリア10における電力の過不足量を低減することが可能となる。
【0019】
==電力エリア==
次に、電力エリア10について
図2を参照しながら説明する。電力エリア10は、上述したように、例えば一般電気事業者が電力供給事業を行うために運用している電力系統である。
【0020】
そして各電力エリア10には、PPS(Power Producer and Supplier)が擁する発電設備Gや、特定規模需要を持つPPSの顧客の負荷設備Lが、一般電気事業者の設備である送配電線Tに接続されている。
【0021】
発電設備Gは、電力エネルギーを生成する電力源であり、PPSが自社契約あるいは自主運用している火力発電設備や太陽光発電設備、風力発電設備、地熱発電設備、水力発電設備、原子力発電設備などである。
【0022】
負荷設備Lは、発電設備Gから供給される電力を利用して動作するPPSの顧客である工場や家庭等における電気機器である。
【0023】
送配電線Tは、発電設備Gによって発電された電力を負荷設備Lに供給する送電設備であり、一般電気事業者によって運用される。
【0024】
また
図2には示していないが、電力エリア10は、その他、一般電気事業者によって運用されている発電設備や、一般電気事業者の顧客の負荷設備、調相設備、変電設備、開閉器などの様々な設備を有して構成されている。
【0025】
==連系線利用計画作成装置==
次に、
図3〜
図12を参照しながら、本実施形態に係る連系線利用計画作成装置100について説明する。
【0026】
連系線利用計画作成装置100は、計画値同時同量制度においてPPSに義務付けられる連系線11の利用計画を作成する装置である。連系線11の利用計画は、電力エリア10間で電力の融通を行おうとする際に、所定時間毎(例えば30分毎)に各連系線11を流れる送電量を予め算定し、計画値として定めた情報である。
【0027】
本実施形態に係る連系線利用計画作成装置100の全体構成を
図3及び
図4に示す。
図3は、連系線利用計画作成装置100の機能構成を説明するための図であり、
図4は、連系線利用計画作成装置100のハードウェア構成を説明するための図である。
【0028】
まず
図4に示すように、連系線利用計画作成装置100は、CPU(Central Processing Unit)110、メモリ120、通信装置130、記憶装置140、入力装置150、出力装置160及び記録媒体読取装置170を有して構成されるコンピュータである。
【0029】
CPU110は連系線利用計画作成装置100の全体の制御を司るもので、記憶装置140に記憶される本実施形態に係る各種の動作を行うためのコードから構成されるプログラム600をメモリ120に読み出して実行することにより、連系線利用計画作成装置100としての各種機能を実現する。
【0030】
例えば、詳細は後述するが、CPU110によりプログラム600が実行され、メモリ120や通信装置130、記憶装置140等のハードウェア機器と協働することにより、
図3に示した電力需要予測部101、需給計画策定部102、連系線利用計画策定部103、電力需要実績データベース(以下DBとも記す)700、気象実績DB710、運用制約DB720、連系線制約DB730の各機能が実現される。
【0031】
メモリ120は例えば半導体記憶装置により構成することができる。
【0032】
通信装置130は、ネットワークカードなどのネットワークインタフェースである。通信装置130は、インターネットやLAN(Local Area Network)などのネットワークを介して他のコンピュータからデータを受信し、受信したデータを記憶装置140やメモリ120に記憶する。また通信装置130は、記憶装置140やメモリ120に記憶されているデータを、ネットワークを介して他のコンピュータへ送信する。
【0033】
入力装置150は、操作スイッチやキーボード、マウス、マイク等の装置であり、連系線利用計画作成装置100の操作者による情報の入力を受け付けるための装置である。出力装置160は、LCD(Liquid Crystal Display)や表示ランプ、各種表示メータ、プリンタ、スピーカ等の装置であり、情報を出力するための装置である。
【0034】
記憶装置140は、例えばハードディスク装置や半導体記憶装置等により構成することができる。記憶装置140は、各種プログラムやデータ、テーブル等を記憶するための記憶領域を提供する装置である。
図5に、記憶装置140にプログラム600、電力需要実績DB700、気象実績DB710、運用制約DB720、連系線制約DB730が記憶されている様子を示す。
【0035】
なお、連系線利用計画作成装置100は、これらのプログラム600や電力需要実績DB700、気象実績DB710、運用制約DB720、連系線制約DB730を、記録媒体読取装置170を用いて各種の記録媒体(各種の光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリ等)800から読み出すことで、記憶装置140に格納するようにすることもできるし、入力装置150から、あるいは通信装置130を介して通信可能に接続される他のコンピュータから取得することもできる。
【0036】
次に、連系線利用計画作成装置100が有する各機能について、
図3を参照しながら説明する。
図3に示すように、連系線利用計画作成装置100は、電力需要予測部101、需給計画策定部102、連系線利用計画策定部103、電力需要実績DB700、気象実績DB710、運用制約DB720、連系線制約DB730の各機能を有して構成されている。
【0037】
電力需要実績DB700は、PPSの顧客が各電力エリア10において過去の所定時間毎に消費した電力需要量を日時情報と対応付けて記録したデータベースである。
【0038】
電力需要実績DB700の一例を
図6に示す。
図6に示す電力需要実績DB700には、各電力エリア10の30分毎の電力需要量が記録されている。例えば2014年8月3日の10時から10時30分の間に電力エリア1(10A)で消費された電力は平均で458kWであったことが記録されている。
【0039】
気象実績DB710は、各電力エリア10において観測された過去の所定時間毎の気象データを日時情報と対応付けて記録したデータベースである。
【0040】
気象実績DB710の一例を
図7に示す。
図7に示す気象実績DB710には、各電力エリア10において30分毎に観測された気温の実績値が記録されている。例えば2014年8月3日の10時から10時30分の間に電力エリア1(10A)で観測された気温は、平均で31.5℃であったことが記録されている。
【0041】
なお、気象実績DB710に記録される気象データは、気温以外であっても良く、例えば、湿度、気圧、雲量、天気(晴れ、曇り、雨、雪、台風等)、風の強さ、風向、雨量、さらにはこれらの各気象データの組み合わせを含んでも良い。
【0042】
<電力需要予測部>
電力需要予測部101は、各電力エリア10において所定時間毎に発生するPPSの顧客による電力需要の見込み値を求める。例えば電力需要予測部101は、当日、翌日、あるいは翌々日等の所定時間毎(例えば30分毎)の電力需要の見込み値を求める。
【0043】
このために電力需要予測部101は、例えば電力需要実績DB700に記憶されている過去の電力需要の実績値と、気象実績DB710に記憶されている過去の気象データの実績値と、の相関式を電力エリア10毎に求めておき、電力需要の見込み値を求める電力エリア10における予測対象日時の気象予報をその電力エリア10の相関式に適用することで、予測対象日時における電力需要の見込み値を算出する。
【0044】
あるいは電力需要予測部101は、例えば、予測対象日時と同じ曜日あるいは同じ時間帯の過去の電力需要の実績値及び気象データの実績値を用いて相関式を作成し、予測対象日時の気象予報から電力需要の見込み値を算出するようにしても良い。あるいは電力需要予測部101は、当日の予測を行う場合には、前日の同時間帯の電力需要実績値を電力需要の見込み値として算出しても良い。
【0045】
また電力需要予測部101は、過去の電力需要の実績値や気象データの実績値等の電力需要に影響を与える需要要因と電力需要との関係をニューラルネットワークを用いてモデル化しておき、予測対象日時における電力需要の見込み値を算出するようにしても良い。
【0046】
<需給計画策定部>
次に需給計画策定部102について説明する。
【0047】
需給計画策定部102は、運用制約DB720に記憶されている各電力エリア10内の発電設備Gに関するデータを用いて、各電力エリア10における所定時間内の発電設備Gによる発電量の見込み値を求める。そして需給計画策定部102は、これらの各電力エリア10の発電量の見込み値と、電力需要予測部101によって算出された各電力エリア10の電力需要の見込み値と、の差分から、各電力エリア10の所定時間内の電力の過不足量を算定する。
【0049】
運用制約DB720は、各電力エリア10内の発電設備Gの種類や出力上限値、出力下限値、燃料費特性、起動費特性、出力変化率上限、出力変化率下限、最小連続停止時間、最小連続運転時間等の発電設備Gの制約条件を含む、発電設備Gに関するデータを記録したデータベースである(不図示)。
【0050】
そして需給計画策定部102は、運用制約DB720に記録されているこれらの発電設備Gに関するデータを用いて、各電力エリア10において所定時間内に見込まれる発電設備Gによる発電量を求める。
【0051】
例えば需給計画策定部102は、各発電設備Gの制約条件を満たしつつ発電コストを最小化するような発電設備Gの稼働計画を電力エリア10ごとに策定することによって、各電力エリア10における発電量の見込み値P(t)を求める。
【0052】
具体的には需給計画策定部102は、各電力エリア10毎に、各発電設備Gの制約条件(式(3)〜式(7))を満たす範囲で、発電コストを算出するための目的関数(式(1))を最小化するような最適解を求める。そして需給計画策定部102は、式(2)により、各電力エリア10における発電量の見込み値P(t)を取得する。
【0053】
まず本実施形態の目的関数は、式(1)のように示される。
【0054】
【数1】
ここで、Giは発電設備の番号、Gnは発電設備の数(Gnの値は、電力エリア10によって異なる)、P
Gi(t)は時刻tにおける発電設備Giの発電出力、a
Gi、b
Gi、c
Giは発電設備Giの発電出力と発電コストの関係を示す係数である。発電コストは発電設備Giの発電出力の二次関数で近似されるため、このような定式化が行われる。また時刻tは、所定時間(例えば30分間)を単位とする時間枠を表す。
【0055】
そして各電力エリア10における発電量の見込み値P(t)は、式(2)で表される。
【0056】
【数2】
一方、制約条件は、式(3)〜式(7)のように示される。
【0057】
まず式(3)は、需給バランス制約を示す。
【0058】
【数3】
ここで、D(t)は時刻tにおける電力需要の見込み値である。またC(t)は、時刻tにおける電力需要の見込み値D(t)が、電力エリア10内の各発電設備Giの制約条件を満たす範囲での合計最大出力(P(t) の最大値)を超える場合に、それらの差分を埋め合わせるための修正項である。つまり修正項C(t)は、その電力エリア10内で、電力需要の見込み値D(t)を満たせるだけの発電量を得ることができない場合であっても式(3)の等号を成立させるための項である。そのためC(t)≧0である。
【0059】
具体的には、修正項C(t)の値が0である場合には、その電力エリア10内の電力需要は、その電力エリア10内の発電設備Giによる発電量で賄うことが可能であることを意味し、修正項C(t)が正の値になった場合には、その電力エリア10内の発電設備Giによっては電力需要を賄うことができないことを意味する。
【0060】
式(4)は、発電機出力上下限制約を示す。
【0061】
【数4】
ここで、P
Giminは、発電設備Giの出力下限値を示し、P
Gimaxは、発電設備Giの出力上限値を示す。
【0062】
式(5)は、発電機出力変化率上下限制約を示す。
【0063】
【数5】
ただし、ΔP
Gidownmaxは、発電設備Giの下降側最大変化率を示し、ΔP
Giupmaxは、発電設備Giの上昇側最大変化率を示す。
【0064】
式(6)は、発電機最小連続停止制約を示す。
【0065】
【数6】
ただし、u
i,tは、発電設備Giの時刻tにおける起動停止変数(0:停止,1:運転)を表し、mint
iは、発電設備Giの最小連続停止時間を表す。
【0066】
式(7)は、発電機最小連続運転制約を示す。
【0067】
【数7】
ただし、minr
iは、発電設備Giの最小連続運転時間を表す。
【0068】
以上のようにして、需給計画策定部102は、電力エリア10ごとに、所定時間内に見込まれる発電設備Gによる発電量P(t)を得る。
【0069】
このとき、式(3)におけるC(t)が正の値になった電力エリア10では、その電力エリア10内の発電設備Giによる発電量P(t)によっては電力需要D(t)を賄うことができないことを意味する。そのため、この電力エリア10は、他の電力エリア10から電力の融通を受ける必要がある。
【0070】
そして需給計画策定部102は、式(8)を用いて、この電力エリア10における電力の過不足量E(t)を算出する。電力が不足している場合、E(t)は負の値となる。
【0071】
【数8】
一方、式(3)においてC(t)が0となった電力エリア10では、その電力エリア10内の電力需要D(t)は、その電力エリア10内の発電設備Giによる発電量P(t)で賄うことが可能であることを意味する。そしてその場合、その電力エリア10内の発電設備Gはまだ発電余力を有している可能性があることにもなる。
そこで需給計画策定部102は、C(t)が0となった電力エリア10内の発電設備Giに対しては、式(3)〜式(7)を満たす範囲で発電量P
Gi(t)をさらに増していくことにより、その電力エリア10の余力を含めた発電量(例えば発電量の最大値や、定格に対して80%出力時の発電量など、適宜定める)を発電量の見込み値P(t)として求める。
【0072】
このようにして求めた発電量の見込み値P(t)は、電力需要の見込み値D(t)以上となるため、式(8)を用いて算出される電力の過不足量E(t)は、0以上の値となる。
【0073】
以上のようにして、需給計画策定部102は、各電力エリア10の発電量の見込み値P(t)と、電力需要予測部101によって算出された各電力エリア10の電力需要の見込み値D(t)と、の差分から、各電力エリア10の所定時間内の電力の過不足量E(t)を算定する。
【0074】
なお本実施形態では、式(1)に示したような発電コストを最小化する目的関数を用いて発電量P(t)を求めたが、最適化方法としては目的関数および制約条件の形態により様々な手法を用いることができる。例えば、線形計画法、二次計画法、各種メタヒューリスティック手法を用いることができる。
【0075】
<連系線利用計画策定部>
そして続いて、連系線利用計画策定部103は、電力が余る電力エリア10(E(t)>0となった電力エリア10)から、電力が不足する電力エリア10(E(t)<0となった電力エリア10)に連系線11を介して電力を融通することにより、各電力エリア10の過不足量E(t)を小さくするべく、所定時間内に各連系線11に流すべき送電量を計画値として定めた連系線11の利用計画を策定する。なおこの時、連系線利用計画策定部103は、以下に述べるように、連系線制約DB730に記憶されている許容送電量を超えないように、連系線11の利用計画を策定する。許容送電量は、各連系線11に流すことができる送電量の上限値である。
【0076】
連系線制約DB730は、電力網1000を構成する各連系線11に許容されている送電量の上限値である許容送電量を記憶するデータベースである。
【0077】
連系線制約DB730において、各連系線11の許容送電量は、式(9)のように規定されている。
【0078】
【数9】
ここで、T
nm(t)は、電力エリアn(10)と電力エリアm(10)とを接続する連系線11において、時刻tのタイミングで電力エリアn(10)から電力エリアm(10)に電力を送電する場合の託送量(送電量)であり、T
nmmaxは、電力エリアn(10)と電力エリアm(10)とを接続する連系線11において、電力エリアn(10)から電力エリアm(10)に送電可能な託送量の上限値(線路容量上限値すなわち許容送電量)である。
【0079】
そして連系線利用計画策定部103は、連系線制約DB730に記録されているこれらの許容送電量を超えないように、連系線11の利用計画を策定する。
【0080】
次に、
図9及び
図10に示す具体的な例を用いて、連系線利用計画策定部103が連系線11の利用計画を策定する際の処理の内容を説明する。
【0081】
まず
図9に、電力網1000の構成と、電力網1000を構成する電力エリアA(10)〜電力エリアD(10)のそれぞれについて式(1)〜式(8)により求めた電力の過不足量E(t)を示す。各電力エリア10の過不足量E(t)は、電力エリアA(10)では「+150」であり、電力エリアB(10)では「+100」であり、電力エリアC(10)では「−50」であり、電力エリアD(10)では「−200」であるものとする。また連系線A11、連系線B11、連系線C11のいずれも許容送電量は「300」であるものとする。
【0082】
次に
図10Aに、各電力エリア10の過不足量E(t)を視覚的に表現した図を示す。
【0083】
なお
図10Aにおいて、電力エリアA(10)にはP=1、電力エリアB(10)にはP=2と記載されているが、Pの値は、電力エリア10の間で電力を融通する場合に、電力の送電元と送電先とのペアを作る際の優先順位を表す。つまり、
図10Aに示す例では、電力が余る2つの電力エリアA(10)及び電力エリアB(10)のうち、まず優先順位第1位(P=1)の電力エリアA(10)に対して送電先となる電力エリア10を割り当てる処理を行い、その後、優先順位第2位(P=2)の電力エリアB(10)に対して送電先となる電力エリア10を割り当てる処理を行う。優先順位は、電力が余る電力エリア10のうち、電力の余剰量が相対的に多い電力エリア10がより高くなるように定められる。
【0084】
このような態様によって、電力がより多く余っている電力エリア10から先に電力の融通先を決めていくことができるので、各電力エリア10の電力の過不足量E(t)を効果的に小さくすることが可能となる。
【0085】
また
図10Aにおいて、L=1と記載されているが、Lの値は、送電元の電力エリア10から送電先の電力エリア10へ電力を融通する場合に経由する連系線11の数を示す。
【0086】
つまり、
図10AではL=1とされているため、送電元となる電力エリア(10)と送電先となる電力エリア(10)とのペアを策定する際に、連系線11を一つ経由して繋がっている隣同士の電力エリア10をペアとすることになる。
【0087】
図10Aに示す例では、電力の送電元となる電力エリアA(10)及び電力エリアB(10)は、いずれも連系線11を一つ経由して繋がっている隣の電力エリア10を送電先として割り当てられることになる。
【0088】
この状態で、連系線利用計画策定部103は、まず優先順位第1位(P=1)の電力エリアA(10)について、電力の送電先となる電力エリア(10)を割り当てを試みる。上述したように、L=1であるため、電力エリアA(10)の余剰電力の送電先になり得るのは電力エリアB(10)である。
【0089】
しかしながら、電力エリアB(10)も「100」の電力が余っている。そのため、電力エリアB(10)は電力の送電先とはされない。そのため連系線利用計画策定部103は、この時点では、電力エリアA(10)に対する余剰電力の送電先の割り当てを行わない。
【0090】
そこで連系線利用計画策定部103は、続いて、優先順位第2位(P=2)の電力エリアB(10)について、電力の送電先となる電力エリア(10)を割り当てを試みる。L=1であるため、電力エリアB(10)の余剰電力の送電先になり得るのは電力エリアA(10)及び電力エリアC(10)である。
【0091】
電力エリアA(10)は、上述したように「150」の電力が余っている。そのため、電力エリアA(10)は電力の送電先とはされない。
【0092】
一方、電力エリアC(10)は、「50」の電力が不足している。そのため連系線利用計画策定部103は、電力エリアB(10)に対する余剰電力の送電先として、電力エリアC(10)を割り当てる(ペアを策定する)。そして連系線利用計画策定部103は、電力エリアB(10)から電力エリアC(10)への送電量として、暫定的に、電力エリアB(10)における電力の余剰量である「100」と、電力エリアC(10)における電力の不足量である「50」と、の最小値を定める。この場合、電力の暫定送電量は「50」となる。
【0093】
そして連系線利用計画策定部103は、連系線B(11)が、暫定送電量「50」の電力を送電できるか否かを判定する。上述したように、連系線B11の許容送電量は「300」であるため、連系線利用計画策定部103は、送電可能であると判定する。そして連系線利用計画策定部103は、連系線B(11)に対して、電力の送電量「50」を対応付ける。
【0094】
連系線利用計画策定部103が、電力エリアB(10)及び電力エリアC(10)を電力の送電元及び送電先として割り当てると共に、連系線B(11)に電力の送電量を「50」を対応付けた様子を
図10Bに示す。
【0095】
これにより、電力エリアB(10)の電力の過不足量E(t)は「+100」から「+50」になり、電力エリアC(10)の電力の過不足量E(t)は「−50」から「±0」になる。
【0096】
次に連系線利用計画策定部103は、L=2として、L=1の場合と同様の処理を行う。その様子を
図10Cに示す。この時の優先順位(P)は、過不足量E(t)が「+150」である電力エリアA(10)が第1位であり、過不足量E(t)が「+50」である電力エリアB(10)が第2位である。
【0097】
この状態で、連系線利用計画策定部103は、まず優先順位第1位(P=1)の電力エリアA(10)について、電力の送電先となる電力エリア(10)を割り当てを試みる。上述したように、L=2であるため、電力エリアA(10)の余剰電力の送電先になり得るのは電力エリアC(10)である。
【0098】
しかしながら、電力エリアC(10)は電力の過不足量がすでに「±0」となっており、電力は不足していない。そのため、電力エリアC(10)は電力の送電先とはされない。そのため連系線利用計画策定部103は、この時点では、電力エリアA(10)に対する余剰電力の送電先の割り当てを行わない。
【0099】
そこで連系線利用計画策定部103は、続いて、優先順位第2位(P=2)の電力エリアB(10)について、電力の送電先となる電力エリア(10)を割り当てを試みる。L=2であるため、電力エリアB(10)の余剰電力の送電先になり得るのは電力エリアD(10)である。
【0100】
電力エリアD(10)は、「200」の電力が不足している。そのため連系線利用計画策定部103は、電力エリアB(10)に対する余剰電力の送電先として、電力エリアD(10)を割り当てる(ペアを策定する)。そして連系線利用計画策定部103は、電力エリアB(10)から電力エリアD(10)への電力の送電量として、暫定的に、電力エリアB(10)における電力の余剰量である「50」と、電力エリアD(10)における電力の不足量である「200」と、の最小値を定める。ここでは暫定送電量は「50」となる。
【0101】
ここで、電力エリアB(10)から電力エリアD(10)へ電力を送電するためには、連系線B(11)と連系線C(11)を経由する必要があるが、連系線B(11)は、既に「50」の電力を送電することが割り当て済みである。
【0102】
そのため、連系線利用計画策定部103は、連系線B(11)に、割り当て済みの「50」に加えてさらに上記の暫定送電量「50」(合計「100」)の電力を送電できるか否か、及び連系線C(11)に上記暫定送電量「50」の電力を送電できる否かを判定する。
【0103】
連系線利用計画策定部103は、連系線B(11)については、許容送電量は「300」であるので送電可能であると判定する。同様に、連系線利用計画策定部103は、連系線C(11)についても、許容送電量は「300」であるので送電可能であると判定する。そして連系線利用計画策定部103は、連系線B(11)及び連系線C(11)のそれぞれに対して、上記暫定送電量「50」を対応付ける。
【0104】
連系線利用計画策定部103が、電力エリアB(10)及び電力エリアD(10)を電力の送電元及び送電先として割り当てると共に、連系線B(11)及び連系線C(11)のそれぞれに対して上記暫定送電量「50」を対応付けた様子を
図10Cに示す。
【0105】
これにより、電力エリアB(10)の電力の過不足量E(t)は「+50」から「±0」になり、電力エリアD(10)の電力の過不足量E(t)は「−200」から「−150」になる。
【0106】
次に連系線利用計画策定部103は、L=3として、L=1やL=2の場合と同様の処理を行う。その様子を
図10Dに示す。この時の優先順位(P)は、電力エリアA(10)が第1位である(E(t)=+150)。
【0107】
この状態で、連系線利用計画策定部103は、優先順位第1位(P=1)の電力エリアA(10)について、電力の送電先となる電力エリア(10)を割り当てを試みる。上述したように、L=3であるため、電力エリアA(10)の余剰電力の送電先になり得るのは電力エリアD(10)である。
【0108】
電力エリアD(10)は、「150」の電力が不足している。そのため連系線利用計画策定部103は、電力エリアA(10)に対する余剰電力の送電先として、電力エリアD(10)を割り当てる(ペアを策定する)。そして連系線利用計画策定部103は、電力エリアA(10)から電力エリアD(10)への送電量として、暫定的に、電力エリアA(10)における電力の余剰量「150」と、電力エリアD(10)の電力の不足量である「150」と、の最小値を定める。ここでは暫定融通量は「150」となる。
【0109】
ここで、電力エリアA(10)から電力エリアD(10)への電力を送電するためには、連系線A(11)と連系線B(11)と連系線C(11)を経由する必要があるが、連系線B(11)は、既に「100」の電力を送電することが割り当て済みであり、連系線C(11)は、既に「50」の電力を送電することが割り当て済みである。
【0110】
そのため、連系線利用計画策定部103は、連系線A(11)に上記暫定送電量の「150」の電力を送電できるか否か、連系線B(11)に、割り当て済みの「100」に加えてさらに上記の暫定送電量「150」(合計「250」)の電力を送電できるか否か、及び連系線C(11)に、割り当て済みの「50」に加えてさらに上記の暫定送電量「150」(合計「200」)の電力を送電できるか否か、を判定する。
【0111】
連系線利用計画策定部103は、連系線A(11)については、許容送電量は「300」であるので送電可能であると判定する。また連系線利用計画策定部103は、連系線B(11)についても、許容送電量は「300」であるので送電可能であると判定する。同様に、連系線利用計画策定部103は、連系線C(11)についても、許容送電量は「300」であるので送電可能であると判定する。
【0112】
連系線利用計画策定部103が、電力エリアA(10)及び電力エリアD(10)を電力の送電元及び送電先として割り当てると共に、連系線A(11)、連系線B(11)及び連系線C(11)のそれぞれに対して上記暫定送電量「150」を対応付けた様子を
図10Dに示す。
【0113】
これにより、電力エリアA(10)の電力の過不足量E(t)は「+150」から「±0」になり、電力エリアD(10)の電力の過不足量E(t)は「−150」から「±0」になる。
【0114】
以上のL=1からL=3の各ステップの処理が終了すると、連系線利用計画策定部103は、各連系線11に対応付けられた送電量の合計を連系線11ごとに求め、
図10Dに示されているように、連系線A(11)には電力エリアA(10)から電力エリアB(10)の向きに「150」の電力を流し、連系線B(11)には電力エリアB(10)から電力エリアC(10)の向きに「250(50+50+150)」の電力を流し、連系線C(11)には電力エリアC(10)から電力エリアD(10)の向きに「200(50+150)」の電力を流すという連系線11の利用計画を策定することができる。そしてこのような利用計画により、電力網1000の電力エリアA(10)〜電力エリアD(10)の電力の過不足量を小さくすることができる。
【0115】
このように、連系線利用計画策定部103は、電力の送電元となる電力エリア10と電力の送電先となる電力エリア10との全てのペアについて、送電元から送電先への電力の送電量を、送電元から送電先までの経路上に存在するそれぞれの連系線11に対応付けて記憶し、各連系線11に対応付けられた送電量の合計を連系線11ごとに求め、各連系線11の送電量の合計が許容送電量を超えないようにペアを策定する。
【0116】
このような態様によって、複数の電力エリア10間で電力の融通を行う場合に利用する連系線11の利用計画を策定することが可能となる。また連系線利用計画策定部103は、同様の処理を繰り返し行うことで、所定時間毎(例えば30分毎)の連系線11の利用計画を策定することが可能となる。
【0117】
また本実施形態に係る連系線利用計画策定部103は、電力の送電元の電力エリア10に送電先となる電力エリア10を割り当てる際に、上記L=1、L=2、L=3の各ステップを順に処理したように、送電元から経由する連系線11の数(L)が相対的に少ない電力エリア10を優先的に割り当てるようにしている。
【0118】
このような態様によって、電力の融通がより近くの電力エリア10間で行われるようになるため、電力網1000全体として、連系線11を流れる電力の量を削減することが可能となる。
【0119】
次に、
図8に示すフローチャートを参照しながら、連系線利用計画策定部103が連系線11の利用計画を策定する際の処理の流れを説明する。
【0120】
連系線利用計画策定部103は、
図8に示すフローチャートに従って処理を行うことにより、各連系線11の許容送電量を超えないようにしつつ、余剰電力が生じた電力エリア10から電力が不足している電力エリア10へ電力を託送(融通)する場合に、各連系線11に流れる送電量を算定する。
【0121】
またこのとき、連系線利用計画策定部103は、より近くの電力エリア10(経由する連系線11の数がより少ない電力エリア10)に対する電力の託送(融通)を優先するように、送電元及び送電先のペアを決定する。また連系線利用計画策定部103は、託送距離(経由する連系線11の数)が同じ場合、余剰電力が相対的に多い電力エリア10から優先的に電力の送電先となる電力エリア11を決定する。
【0122】
なお託送距離は、他の電力エリア10へ電力を託送する際に連系線11を通過する回数で定義する。つまり、託送距離が1ならば、連系線11を1回だけ通る電力エリア10への託送(隣接する電力エリア10への託送)を意味する。
【0123】
まず連系線利用計画策定部103は、計画期間点数tを1に設定する(S1000)。計画期間点数tとは、連系線11の利用計画を策定する時間枠(例えば30分間)を特定するための番号を示し、例えば式(1)や式(9)等における「時刻t」に相当する。計画期間点数tの最大値は、例えば、計画期間が30分間隔で1日分であれば48点、60分間隔で1日分であれば24点となる。連系線利用計画策定部103は、計画期間点数tが最大値となるまで以下の処理を繰り返す(S1120、S1130)。
【0124】
次に連系線利用計画策定部103は、連系線11の託送量や託送距離などのデータを0に初期化する(S1010)。なお、一般電気事業者間の相対取引などで電力を託送することが事前に決まっている場合には、この託送スケジュールを託送量の初期値として設定しておく。また託送距離が0とは電力を託送しないことを意味する。
【0125】
次に連系線利用計画策定部103は、託送距離Lを1に設定する(S1020)。そして連系線利用計画策定部103は、託送距離Lが託送距離の最大値となるまで、以下の処理を繰り返す(S1100、S1110)。なお、託送距離Lの最大値は、計画対象系統(電力網1000)の構成により異なる。
【0126】
次に連系線利用計画策定部103は、終了判定を行う(S1030)。具体的には、連系線利用計画策定部103は、全ての電力エリア10で電力の過不足量E(t)が所定値(例えば1MW)以下、もしくは全てが所定値(例えば1MW)以上ならば終了する。
【0127】
全ての電力エリア10で電力の過不足量E(t)が所定値以下となるのは、全ての電力エリア10において電力の需要量と供給量との差が所定値(例えば1MW)の範囲内でバランスしている場合か、あるいは、全ての電力エリア10において電力が不足している場合に該当する。
【0128】
また全ての電力エリア10で電力の過不足量E(t)が所定値以上となるのは、全ての電力エリア10において電力が余っている場合に該当する。
【0129】
なお、この所定値は託送量計算の不感帯として作用し、過不足量E(t)が所定値以内である場合、その電力エリア10から他の電力エリア10への託送を行わないことを意味する。もちろんこの不感帯は1MW以外の値に設定することも可能である。
【0130】
次に連系線利用計画策定部103は、エリア優先順位(P)の算定を行う(S1040)。エリア優先順位とは、電力エリア10の間で電力を融通する場合に、電力の送電元と送電先とのペアを作る際の優先順位を表す。具体的には、連系線利用計画策定部103は、各電力エリア10の過不足量E(t)を降順に並び替え、優先順位を設定する。本実施形態では、連系線利用計画策定部103は、過不足量E(t)が大きい順に優先順位を高く設定する。
【0131】
次に連系線利用計画策定部103は、エリア優先順位Pを1に設定する(S1050)。
【0132】
そして連系線利用計画策定部103は、エリア優先順位Pがエリア優先順位の最大値(すなわち最下位の優先順位)となるまで、以下の処理を繰り返す(S1080、S1090)。なお、エリア優先順位Pの最大値は、電力網1000において電力が余っている電力エリア10の数であるが、電力網1000内の電力エリア10の数としても良い。
【0133】
次に連系線利用計画策定部103は、各連系線11の託送量を計算する(S1060)。
【0134】
具体的には、連系線利用計画策定部103は、ある電力エリア10(送電元)からの託送距離がLとなる他の電力エリア10(送電先)に対する託送量を、式(10)、式(11)のように計算する。また連系線利用計画策定部103は、託送後の送電元及び送電先の電力の過不足量を式(12)のように計算する。
【0135】
なお、式(10)〜式(12)は、
図11に示すように、電力エリアn(10)から電力エリア1(10)に電力を託送する場合の計算式である。
【0138】
【数12】
ここで、T
n1(t)は、電力エリアn(10)から電力エリア1(10)への電力の託送量を示す。
【0139】
e
1old(t)は、電力エリア1(10)における電力の託送前の不足量E(t)を示し、負の値である。またe
nold(t)は、電力エリアn(10)の電力の託送前の余剰量E(t)を示し、正の値である。
【0140】
またTmax21は、電力エリア2(10)から電力エリア1(10)への連系線11における許容送電量である。T21old(t)は、電力エリア2(10)から電力エリア1(10)への連系線11における、上記T
n1(t)の託送を行う前の託送量を示す。
【0141】
またTmax32は、電力エリア3(10)から電力エリア2(10)への連系線11における許容送電量である。T32old(t)は、電力エリア3(10)から電力エリア2(10)への連系線11における、上記T
n1(t)の託送を行う前の託送量を示す。
【0142】
またTmaxnn-1は、電力エリアn(10)から電力エリアn−1(10)への連系線11における許容送電量である。Tnn-1old(t)は、電力エリアn(10)から電力エリアn−1(10)への連系線11における、上記T
n1(t)の託送を行う前の託送量を示す。
【0143】
T21new(t)は、電力エリア2(10)から電力エリア1(10)への連系線11における、上記T
n1(t)を含めた託送量を示す。T32new(t)は、電力エリア3(10)から電力エリア2(10)への連系線11における、上記T
n1(t)を含めた託送量を示す。Tnn-1new(t)は、電力エリアn(10)から電力エリアn−1(10)への連系線11における、上記T
n1(t)を含めた託送量を示す。
【0144】
またe
1new(t)は、電力エリア1(10)が電力T
n1(t)の託送を受けた後の過不足量E(t)を示す。またe
nnew(t)は、電力エリアn(10)が電力T
n1(t)を託送した後の過不足量E(t)を示す。
【0145】
次に連系線利用計画策定部103は、終了判定を行う(S1070)。具体的には、連系線利用計画策定部103は、全ての電力エリア10で電力の過不足量E(t)が所定値(例えば1MW)以下、もしくは全てが所定値(例えば1MW)以上ならば終了する。
【0146】
以上のようにして連系線利用計画策定部103は、計画期間点数tが最大値になるまで、S1000〜S1130の処理を繰り返し行うことで、連系線11の利用計画を作成する。
【0147】
このような処理を行うことによって、例えば電力エリア10間のある連系線11が混雑しており(その連系線11の送電量が既に許容送電量に達しており)、その連系線11を経由した電力の託送ができない場合であっても、別のルートの連系線11が再検索されるため、余剰電力をより確実に託送することが可能となる。
【0148】
次に、本実施形態に係る連系線利用計画作成装置100が連系線11の利用計画を策定する際の処理の全体の流れを
図12を参照しながら説明する
まず連系線利用計画作成装置100は、連系線制約DB730に、各連系線11の許容送電量を記憶する(S2000)。連系線利用計画作成装置100は、例えば入力装置150を介して各連系線11の許容送電量を取得することもできるし、あるいは通信装置130を介して通信可能に接続される他のコンピュータから各連系線11の許容送電量を取得することもできる。
【0149】
次に連系線利用計画作成装置100は、各電力エリア10における所定時間内の電力需要の見込み値を取得する(S2010)。例えば連系線利用計画作成装置100は、電力需要予測部101から電力需要の見込み値を取得する。
【0150】
また連系線利用計画作成装置100は、各電力エリア10における所定時間内の発電量の見込み値を取得する(S2020)。例えば連系線利用計画作成装置100は、運用制約DB720に記憶されている各発電設備Gに関するデータと、上記電力需要の見込み値と、に基づいて、需給計画策定部102に式(1)〜式(7)を計算させることにより、発電量の見込み値を取得する。
【0151】
続いて連系線利用計画作成装置は、上記発電量の見込み値と電力需要の見込み値とに基づいて、各電力エリア10の所定時間内の電力の過不足量を算定する(S2030)。例えば連系線利用計画作成装置100は、需給計画策定部102に式(8)を計算させることにより、電力の過不足量を算出する。
【0152】
そして連系線利用計画作成装置100は、例えば
図8に示したフローチャートに従い、電力が余る電力系統から電力が不足する電力系統に連系線11を介して送電することにより各電力エリア10の過不足量を小さくするべく、各連系線11の送電量が許容送電量を超えないように、所定時間内に各連系線11に流すべき送電量を計画値として定めた連系線利用計画を策定する(S2040)。
【0153】
以上、本実施形態について説明したが、このような態様によって、複数の電力エリア10間で電力の融通を行う場合に利用する連系線11の利用計画を策定することが可能となる。このため、例えば計画値同時同量制度によってPPSに報告義務が課される連系線11の利用計画策定を支援することが可能となる。
【0154】
また本実施形態では、電力の送電元と送電先とのペアを策定する際に、電力が余る電力系統のうち、電力の余剰量が相対的に多い電力エリア10から優先的に送電先となる電力エリア10を割り当てるようにしている。このため、電力がより多く余っている電力エリア10から先に電力の融通先を決めていくことができるので、各電力エリア10の電力の過不足量E(t)を効果的に小さくすることが可能となる。
【0155】
また本実施形態では、電力の送電元の電力エリア10に送電先となる電力エリア10を割り当てる際に、電力が不足する電力エリア10のうち、送電元となる電力エリア10から経由する連系線11の数(L)が相対的に少ない電力エリア10を優先的に割り当てるようにしている。
【0156】
このような態様によって、電力の融通がより近くの電力エリア10間で行われるようになるため、電力網1000全体として、連系線11を流れる電力の量を削減することも可能となる。
【0157】
なお上述したように、本実施形態ではC(t)が0となった電力エリア10では、余力も含めた発電量の見込み値P(t)を用いて電力の過不足量E(t)を算出している。そのため、電力エリア10間での電力の融通計画が策定された後に、一部の電力エリア10において電力が余る場合があるが、この場合は、そのような電力が余る電力エリア10においてC(t)が0になるまで発電量を減少させればよい。
【0158】
===第2実施形態===
続いて第2実施形態について説明する。
【0159】
第1実施形態では、連系線利用計画作成装置100が電力の送電元と送電先とのペアを策定する際に、送信元となる電力エリア100から経由する連系線11の数(L)が相対的に少ない電力エリア10を優先的に送電先とするようにしたが、第2実施形態では、特定の電力エリア10が優先的に送電先となるようにする。
【0160】
以下第2実施形態について詳細に説明する。ただし第1実施形態と重複する説明は適宜省略する。
【0161】
まず、本実施形態に係る連系線利用計画作成装置100は、
図14に示すように常時バックアップ利用単価テーブル(常時バックアップ単価記憶部)740を有して構成されている。常時バックアップ利用単価テーブル740は、PPSが各電力エリア10の一般電気事業者から電力の融通を受ける場合の単価が記録されたテーブルである。
【0162】
そして本実施形態に係る連系線利用計画作成装置100は、常時バックアップの利用単価が相対的に高い電力エリア10が優先的に送電先となるように、電力エリア10間で電力の融通を行う。このような態様により、常時バックアップの利用単価が割高な電力エリア10の電力不足を優先的に解消できるため、電力の調達コストを低減することが可能となる。
【0163】
次に本実施形態に係る連系線利用計画策定部103が連系線11の利用計画を策定する際の具体的な処理の流れを、
図13に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0164】
連系線利用計画策定部103は、
図13に示すフローチャートに従って処理を行うことにより、各連系線11の許容送電量を超えないようにしつつ、余剰電力が生じた電力エリア10から電力が不足している電力エリア10へ電力を託送(融通)する場合に、各連系線11に流れる送電量を算定する。
【0165】
このとき、連系線利用計画策定部103は、各電力エリア10の中から選出される特定の電力エリア10(本実施形態では、常時バックアップの利用単価が相対的に高い電力エリア10)に対する電力の託送(融通)が優先して行われるように、送電元及び送電先のペアを決定する。また連系線利用計画策定部103は、より近くの電力エリア10(経由する連系線11の数がより少ない電力エリア10)から優先的に託送が行われるように送電元となる電力エリア10を決定する。
【0166】
まず連系線利用計画策定部103は、計画期間点数Tを1に設定する(S3000)。連系線利用計画策定部103は、計画期間点数Tが最大値となるまで以下の処理を繰り返す(S3120、S3130)。
【0167】
次に連系線利用計画策定部103は、連系線11の託送量や託送距離などのデータを0に初期化する(S3010)。
【0168】
そして連系線利用計画策定部103は、ここで終了判定を行う(S3020)。具体的には、連系線利用計画策定部103は、全ての電力エリア10で電力の過不足量E(t)が所定値(例えば1MW)以下、もしくは全てが所定値(例えば1MW)以上ならば終了する。
【0169】
次に連系線利用計画策定部103は、エリア優先順位(P)の算定を行う(S3030)。エリア優先順位とは、電力エリア10の間で電力を融通する場合に、電力の送電元と送電先とのペアを作る際の優先順位を表す。具体的には、連系線利用計画策定部103は、各電力エリア10の過不足量E(t)の算出結果を元に、電力が不足している電力エリア10を抽出し、それらの電力エリア10の常時バックアップの利用単価が高い順に優先順位を設定する。本実施形態では、連系線利用計画策定部103は、常時バックアップの利用単価が高い順に優先順位を高く設定する。
【0170】
次に連系線利用計画策定部103は、エリア優先順位Pを1に設定する(S3040)。
【0171】
そして連系線利用計画策定部103は、エリア優先順位Pがエリア優先順位の最大値(すなわち最下位の優先順位)となるまで、以下の処理を繰り返す(S3100、S3110)。なお、エリア優先順位Pの最大値は、電力網1000において電力が不足している電力エリア10の数であるが、電力網1000内の電力エリア10の数としても良い。
【0172】
次に連系線利用計画策定部103は、託送距離Lを1に設定する(S3050)。そして連系線利用計画策定部103は、託送距離Lが託送距離の最大値となるまで、式(10)〜式(12)を用いて各連系線11の託送量を計算する(S3060、S3080、S3090)。なお、託送距離Lの最大値は、計画対象系統(電力網1000)の構成により異なる。
【0173】
そして連系線利用計画策定部103は、終了判定を行う(S3070)。具体的には、連系線利用計画策定部103は、全ての電力エリア10で電力の過不足量E(t)が所定値(例えば1MW)以下、もしくは全てが所定値(例えば1MW)以上ならば終了する。
【0174】
以上のようにして連系線利用計画策定部103は、計画期間点数Tが最大値になるまで、S3000〜S3130の処理を繰り返し行うことで、連系線11の利用計画を作成する。
【0175】
このようにして、本実施形態によれば、複数の電力エリア10間で電力の融通を行う場合に利用する連系線11の利用計画を策定することが可能となる。このため、例えば計画値同時同量制度によってPPSに報告義務が課される連系線11の利用計画策定を支援することが可能となる。
【0176】
そして本実施形態によれば、常時バックアップの利用単価が相対的に高い電力エリア10が優先的に送電先となるように電力エリア10間での電力の託送が行われるため、常時バックアップの利用単価が割高な電力エリア10の電力不足を優先的に解消でき、電力の調達コストを低減することが可能となる。
【0177】
なお本実施形態においても、例えば電力エリア10間のある連系線11が混雑しており(その連系線11の送電量が既に許容送電量に達しており)、その連系線11を経由した電力の託送ができない場合であっても、別のルートの連系線11が再検索されるため、余剰電力をより確実に託送することが可能となる。
【0178】
===第3実施形態===
続いて第3実施形態について説明する。
【0179】
第2実施形態では、常時バックアップの利用単価が相対的に高い電力エリア10が優先的に送電先となるように電力エリア10間での電力の託送を行うようにしたが、第3実施形態では、電力の需要規模が相対的に小さな電力エリア10が優先的に送電先となるようにする。
【0180】
ここで、電力の需要規模とは、潜在的な電力需要の大きさを意味する。そのため電力の需要規模は、例えばその電力エリア10内の各顧客の過去の最大消費電力を合計することで求めることができる。あるいは各顧客がPPSと締結している契約電力を元に求めても良い。
【0181】
いずれにしても、電力需要規模の小さな電力エリア10の電力不足を解消するために要する電力量は、多くの場合、電力需要規模の大きな電力エリア10の電力不足を解消するために必要な電力量よりも少なくて済む。
【0182】
このため、本実施形態のように、電力の需要規模が相対的に小さな電力エリア10が優先的に送電先となるように送電元と送電先とのペアを策定することにより、常時バックアップを利用しなければならない電力エリア10の数を効果的に減らすことができる。これにより、PPSが常時バックアップを利用するために行わなければならない事務手続きの作業量を減らすことが可能となる。
【0183】
続いて本実施形態に係る連系線利用計画作成装置100について説明する。
【0184】
連系線利用計画作成装置100は、
図15に示すように各電力エリア10の電力需要規模を記録した電力需要規模管理テーブル(需要規模記憶部)750を有して構成される。
【0185】
そして連系線利用計画作成装置100は、
図13に示したフローチャートのS3030においてエリア優先順位(P)の算定を行う際に、まず各電力エリア10の過不足量E(t)の算出結果を元に、電力が不足している電力エリア10を抽出し、それらの電力エリア10の電力需要規模が小さい順に優先順位を設定する。連系線利用計画作成装置100は、電力需要規模が小さい順に優先順位を高く設定するようにする。
【0186】
このような態様によって、電力の需要規模が相対的に小さな電力エリア10が優先的に送電先となるようにすることができる。
【0187】
なお、本実施形態では、電力の需要規模を電力の不足量E(t)と解釈しても、同様に、常時バックアップを利用しなければならない電力エリア10の数を効果的に減らすことができる。
【0188】
この場合は、電力需要規模管理テーブル750は不要である。そして連系線利用計画作成装置100は、
図13に示したフローチャートのS3030においてエリア優先順位(P)の算定を行う際に、各電力エリア10の過不足量E(t)の算出結果を元に、電力の不足量が小さい順に優先順位を高く設定するようにすればよい。
【0189】
===第4実施形態===
続いて第4実施形態について説明する。
【0190】
第1実施形態から第3実施形態では、式(3)においてC(t)≧0であった。しかしながら近年、太陽光発電や風力発電のような自然エネルギーを利用した発電機のような、発電量の制御が困難な発電機による発電量(以下、調整困難発電量と記す)が増加している。
【0191】
このため今後、このような調整困難発電量が電力需要の見込み値D(t)よりも大きくなることも想定される。この場合、火力発電や水力発電のような発電量の調整が可能な発電機による発電量(以下、調整可能発電量と記す)を0にしても、C(t)<0となる。
【0192】
この場合、電力系統を安定して運用するためには、余ってしまう電力(調整困難発電量)を何らかの形で消費しなければならない。
【0193】
そこで本実施形態では、このような調整困難発電量がより多く余っている電力エリア10が優先的に送電元となるようにする。
【0194】
そのため第4実施形態に係る連系線利用計画作成装置100は、C(t)が0以下となった電力エリア10について、余力を含めた発電量を発電量の見込み値P(t)として求める際に、火力発電や水力発電のような発電量の調整が可能な発電機による発電量である調整可能発電量と、上記の調整困難発電量と、を分けて算出する。
【0195】
そして連系線利用計画作成装置100は、電力の託送を行う電力エリア10のペアを策定する際に、まず各電力エリア10の調整困難発電量を託送するようにペアを策定する第1段階の処理を行い、次いで調整可能発電量を託送するようにペアを策定する第2段階の処理を行う。そして第1段階の処理の際に、上述した調整困難発電量がより多く余っている電力エリア10が優先的に送電元となるようにペアを策定する。その後、第2段階の処理を行い、これら2つの段階でそれぞれ算出される各連系線11の送電量の合計が許容送電量を超えないように、所定時間内に各連系線11に流すべき送電量を計画値として定めた連系線利用計画を策定する。
【0196】
なお、調整可能発電量の余力分は、式(4)〜式(7)を用いることで算出することができるが、調整困難発電量は0以上の固定値である。調整困難発電量が0であった場合は、その電力エリア10内で調整困難発電量を自己消費できた場合であり、調整困難発電量が正の値となった場合は、自己消費しきれなかった場合である。
【0197】
次に本実施形態に係る連系線利用計画策定部103が連系線11の利用計画を策定する際の具体的な処理の流れを、
図16に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0198】
連系線利用計画策定部103は、
図16に示すフローチャートに従って処理を行うことにより、各連系線11の許容送電量を超えないようにしつつ、余剰電力が生じた電力エリア10から電力が不足している電力エリア10へ電力を託送(融通)する場合に、各連系線11に流れる送電量を算定する。
【0199】
まず連系線利用計画策定部103は、計画期間点数Tを1に設定する(S4000)。そして連系線利用計画策定部103は、計画期間点数Tが最大値となるまで以下の処理を繰り返す(S4210、S4220)。
【0200】
次に連系線利用計画策定部103は、連系線11の託送量や託送距離などのデータを0に初期化する(S4010)。
【0201】
そして連系線利用計画策定部103は、ここで終了判定を行う(S4020)。具体的には、連系線利用計画策定部103は、全ての電力エリア10で電力の過不足量E(t)が所定値(例えば1MW)以下、もしくは全てが所定値(例えば1MW)以上ならば終了する。
【0202】
ここから連系線利用計画策定部103は第1段階の処理を行う(S4030〜S4110)。
【0203】
まず連系線利用計画策定部103は、エリア優先順位(P)の算定を行う(S4030)。エリア優先順位は、電力エリア10の間で電力を融通する場合に、電力の送電元と送電先とのペアを作る際の優先順位を表す。具体的には、連系線利用計画策定部103は、各電力エリア10の調整困難発電量の算出結果を元に、調整困難発電量が多い順に優先順位を高く設定する。
【0204】
次に連系線利用計画策定部103は、エリア優先順位Pを1に設定する(S4040)。
【0205】
そして連系線利用計画策定部103は、エリア優先順位Pがエリア優先順位の最大値(すなわち最下位の優先順位)となるまで、以下の処理を繰り返す(S4100、S4110)。なお、エリア優先順位Pの最大値は、電力網1000において調整困難発電量が正となった電力エリア10の数であるが、電力網1000内の電力エリア10の数としても良い。
【0206】
次に連系線利用計画策定部103は、託送距離Lを1に設定する(S4050)。そして連系線利用計画策定部103は、託送距離Lが託送距離の最大値となるまで、式(10)〜式(12)を用いて各連系線11の託送量を計算する(S4060、S4080、S4090)。なお、託送距離Lの最大値は、計画対象系統(電力網1000)の構成により異なる。
【0207】
そして連系線利用計画策定部103は、終了判定を行う(S4070)。具体的には、連系線利用計画策定部103は、全ての電力エリア10で電力の過不足量E(t)が所定値(例えば1MW)以下、もしくは全てが所定値(例えば1MW)以上ならば終了する。
【0208】
続いて連系線利用計画策定部103は第2段階の処理を行う(S4120〜S4200)。
【0209】
まず連系線利用計画策定部103は、エリア優先順位(P)の算定を行う(S4120)。連系線利用計画策定部103は、各電力エリア10の調整可能発電量の算出結果を元に、調整可能発電量が多い順に優先順位を高く設定する。
【0210】
次に連系線利用計画策定部103は、エリア優先順位Pを1に設定する(S4130)。
【0211】
そして連系線利用計画策定部103は、エリア優先順位Pがエリア優先順位の最大値(すなわち最下位の優先順位)となるまで、以下の処理を繰り返す(S4190、S4200)。なお、エリア優先順位Pの最大値は、電力網1000において調整可能発電量が正となった電力エリア10の数であるが、電力網1000内の電力エリア10の数としても良い。
【0212】
次に連系線利用計画策定部103は、託送距離Lを1に設定する(S4140)。そして連系線利用計画策定部103は、託送距離Lが託送距離の最大値となるまで、式(10)〜式(12)を用いて各連系線11の託送量を計算する(S4150、S4170、S4180)。託送距離Lの最大値は、計画対象系統(電力網1000)の構成により異なる。
【0213】
そして連系線利用計画策定部103は、終了判定を行う(S4160)。連系線利用計画策定部103は、全ての電力エリア10で電力の過不足量E(t)が所定値(例えば1MW)以下、もしくは全てが所定値(例えば1MW)以上ならば終了する。
【0214】
以上のようにして連系線利用計画策定部103は、計画期間点数Tが最大値になるまで、S4000〜S4220の処理を繰り返し行うことで、連系線11の利用計画を作成する。
【0215】
このようにして、本実施形態によれば、複数の電力エリア10間で電力の融通を行う場合に利用する連系線11の利用計画を策定することが可能となる。このため、例えば計画値同時同量制度によってPPSに報告義務が課される連系線11の利用計画策定を支援することが可能となる。
【0216】
そして本実施形態によれば、発電量の調整が困難な調整困難発電量が消費しきれずに余ってしまった電力エリア10が生じた場合であっても、その調整困難発電量を優先的に他の電力エリア10に融通することが可能となるため、電力を無駄なく有効利用することが可能となる。また電力エリア10内で余剰電力を生じさせないようにできるため、周波数等の電力品質も維持することが可能となる。
【0217】
また上述したように、本実施形態では、C(t)が負となった電力エリア10において調整可能発電量を増加させることで、余力も含めた発電量の見込み値P(t)を用いて電力の過不足量E(t)を算出している。そのため、電力エリア10間での電力の融通計画が策定された後に、電力が余る電力エリア10が生じることがある。しかしながら、余るのは調整可能発電量であるので、そのような電力エリア10ではC(t)が0になるまで発電量の計画値を減少させればよい。
【0218】
また本実施形態においても、例えば電力エリア10間のある連系線11が混雑しており(その連系線11の送電量が既に許容送電量に達しており)、その連系線11を経由した電力の託送ができない場合であっても、別のルートの連系線11が再検索されるため、余剰電力をより確実に託送することが可能となる。
【0219】
上述した実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0220】
例えば上記各実施形態では、電力が余る電力エリア10から電力が不足する電量エリア10に電力を託送する場合について説明したが、電力が余る電力エリア10間での電力の託送や、電力が不足する電力エリア10間での電力の託送を行えるようにしてもよい。
【0221】
この場合、上述した式(10)は、式(13)のように変形される。
【0222】
【数13】
このようにすれば、計画値同時同量制度において義務付けられる連系線11の利用計画をより柔軟に策定することが可能となる。例えば、常時バックアップの利用単価が最も安い電力エリア10のみが電力不足となるように、各電力エリア10の電力の過不足量をバランスさせるように計画することもできる。この場合、常時バックアップの利用単価が最も安い電力エリア10のみで常時バックアップを利用することになるため、電力の調達コストを低減することが可能となる。
【0223】
また上記各実施形態では、連系線11の利用計画をPPSが作成する場合を一例として説明したが、本発明は一般電気事業者を含む電力事業者にも広く適用可能である。