(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のタービン発電機では、分岐した油路からのオイルがロータの外周面に吹き付けられているが、ステータコイルの冷却が不十分となる可能性がある。また特許文献2に記載の回転電機の冷却構造体では、ステータコイルを充分に冷却するために、複数の吐出孔を有する円弧状のカバー内流路や、当該カバー内流路に冷媒を供給するパイプ等が必要であり、構造が複雑化するので、あまり好ましくない。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、よりシンプルな構造にて、ステータコイルを適切に冷却することができる電動過給機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、シャフトと一体とされたロータと、前記ロータの周囲に配置されたステータコイルと、前記ロータと前記ステータコイルを収容するモータハウジングと、前記モータハウジングに対して前記シャフトを回転自在に支持する軸受と、前記シャフトの一端の側に固定されて前記シャフトと一体となって回転することにより流体を過給するコンプレッサインペラと、前記コンプレッサインペラを収容するコンプレッサハウジングと、を有する電動過給機であって、前記モータハウジングには、供給されたオイルを前記軸受へと導く軸受用油路が設けられており、前記軸受用油路の途中に、供給されたオイルの一部を、前記ステータコイルの外周面と前記モータハウジングとの間の隙間に吐出する分岐油路が設けられている、電動過給機である。
【0009】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る電動過給機であって、前記軸受用油路は、前記モータハウジングに設けられた給油配管と、前記給油配管における前記軸受の近傍に設けられた軸受用吐出孔と、にて形成されており、前記分岐油路は、前記給油配管における前記ステータコイルの外周面と前記モータハウジングとの間の隙間の近傍に設けられた分岐吐出孔にて形成されている、電動過給機である。
【0010】
本発明の第3の発明は、上記第1の発明または第2の発明に係る電動過給機であって、前記分岐油路は、前記モータハウジング内において上方に配置された前記ステータコイルである上方ステータコイルの外周面と、当該上方ステータコイルの外周面に対向している前記モータハウジングとの間の隙間に、供給されたオイルの一部を吐出する位置に設けられている、電動過給機である。
【0011】
本発明の第4の発明は、上記第1の発明〜第3の発明のいずれか1つに係る電動過給機であって、前記ステータコイルの外周面と前記モータハウジングとの間の隙間は、前記ステータコイルの外周面に沿って周方向に連続するように形成された空間であるコイル外周空間であり、前記モータハウジングの下方には、前記コイル外周空間に連通する排油口が設けられている、電動過給機である。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、軸受の冷却や潤滑に利用するために供給されるオイル及び当該オイルの経路である軸受用油路を利用して分岐油路を設けるだけでよいので、シンプルな構造で実現することができる。そして、供給されたオイルの一部をステータコイルに直接吹き付けるので、ステータコイルを適切かつ充分に冷却することができる。
【0013】
第2の発明によれば、軸受用油路を非常にシンプルな構造で実現することができる。さらに、分岐油路は、軸受用油路を形成している給油配管の途中に分岐吐出孔を設けるだけで実現されるので、構造が非常にシンプルである。
【0014】
第3の発明によれば、上方に配置された上方ステータコイルにオイルを吹き付けて、重力を利用して他のステータコイルへとオイルを循環させることで、すべてのステータコイルを適切に冷却することができる。
【0015】
第4の発明によれば、排油口を適切な位置に設けることで、ステータコイルの冷却に用いたオイルを適切に回収し、ステータコイルの冷却に利用するオイルを適切に循環させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
●[内燃機関の制御システムの概略全体構成(
図1)]
以下に本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。まず
図1を用いて、内燃機関の制御システムの概略全体構成について説明する。本実施の形態の説明では、車両に搭載された内燃機関の例として、4気筒のエンジン10(例えばディーゼルエンジン)を用いて説明する。エンジン10には、エンジン10の各気筒45A〜45Dへの吸入空気を導入する吸気通路11が接続されている。またエンジン10には、各気筒45A〜45Dからの排気ガスが吐出される排気通路12が接続されている。各気筒45A〜45Dには、燃料配管42A〜42Dを介してコモンレール41に接続されたインジェクタ43A〜43Dが設けられている。また吸気経路である吸気通路11にはターボチャージャ30のターボコンプレッサ35と電動過給機60のコンプレッサインペラ60Wが設けられており、排気経路である排気通路12にはターボチャージャ30のタービン36と排気浄化装置38が設けられている。吸気通路11は、上流側から順に、吸気通路11A、吸気通路11B、吸気通路11Cを有し、吸気通路11Cの下流側はエンジン10に接続されている。
【0018】
吸気通路11Aの上流側には流量検出手段21が設けられており、吸気通路11Aの下流側はターボチャージャ30のターボコンプレッサ35の流入口に接続されている。流量検出手段21は、例えば吸入空気の流量を検出可能な流量センサである。制御手段51は、流量検出手段21からの検出信号に基づいて、エンジン10が吸入した吸入空気の流量である吸入空気流量(吸気量)を検出することが可能である。また吸気通路11Aには、圧力検出手段24A(例えば、圧力センサ)が設けられている。制御手段51は、圧力検出手段24Aからの検出信号に基づいて、ターボコンプレッサ35の上流側の吸入空気の圧力であるターボコンプレッサ上流吸気圧力を検出可能である。
【0019】
吸気通路11Bの上流側はターボチャージャ30のターボコンプレッサ35の吐出口に接続され、吸気通路11Bの下流側は電動過給機60のコンプレッサインペラ60Wの流入口に接続されている。ターボコンプレッサ35はタービン36によって回転駆動され、吸気通路11Aから吸気通路11Bへと流れる吸気を過給する。吸気通路11Bには、インタークーラ16とスロットル装置47が設けられている。インタークーラ16は、吸気通路11内を流れる吸気(ターボコンプレッサ35にて過給されて温度が上昇した吸気)を冷却して吸気の体積を減少させ、吸気中の酸素密度を高める。
【0020】
スロットル装置47は、スロットルモータ47Mとスロットル開度検出手段47S(例えばスロットルバルブの回転角度を検出する角度検出センサ)を有している。制御手段51は、アクセルペダル踏込量検出手段25(例えばアクセルペダル踏込角度センサ)を用いて検出した運転者のアクセルペダルの踏込量と、エンジン10の運転状態等に基づいて、スロットルバルブの目標角度を算出する。そして制御手段51は、スロットルバルブの回転角度が目標角度となるように、スロットル開度検出手段47Sを用いてスロットルバルブの回転角度をモニタ(検出)しながらスロットルモータ47Mを制御してスロットルバルブを回転させる。また吸気通路11Bには、圧力検出手段24B(例えば、圧力センサ)が設けられている。制御手段51は、圧力検出手段24Bからの検出信号に基づいて、ターボコンプレッサ35の下流側の吸入空気の圧力であるターボコンプレッサ下流吸気圧力を検出可能である。
【0021】
吸気通路11Bには、一方端の側が排気通路12Aに接続されたEGR通路13Aの他方端が接続されている。EGR通路13Aは、排気通路12A内の排気ガスの一部を吸気通路11Bに戻して排気の浄化に寄与する。排気通路12Aには、EGRクーラ15AとEGR弁14Aが設けられている。EGRクーラ15Aには冷却用のクーラントが供給されており、当該クーラントを用いて、流入された排気ガスを冷却して吐出する。EGR弁14Aは、制御手段51からの制御信号に基づいて駆動され、EGR通路13Aの開度を調整する。また吸気通路11Bには、コンプレッサインペラ60Wをバイパスするバイパス通路11Zの一方端が接続されている。バイパス通路11Zの他方端は、吸気通路11Cの途中に接続されている。またバイパス通路11Zには、バイパス通路11Zの開閉を制御するバルブであるバイパス弁(以下、ABV68と記載する)が設けられている。電動過給機60は制御手段51からの制御信号にて回転駆動され、ABV68は制御手段51からの制御信号にて開閉駆動される。コンプレッサインペラ60Wは電動過給機60の電動モータにて駆動され、吸気通路11Bから吸気通路11Cへと流れる吸気を過給する。なお、電動過給機60が回転駆動されている場合はABV68が閉側に制御され、電動過給機60が回転駆動されていない場合はABV68が開側に制御される。
【0022】
吸気通路11Cの上流側は電動過給機60のコンプレッサインペラ60Wの吐出口に接続され、吸気通路11Cの下流側はエンジン10に接続されている。また吸気通路11Cの途中には、バイパス通路11Zの他方端が接続されている。そして吸気通路11Cにおけるバイパス通路11Zとの接続個所よりも下流の側に圧力検出手段27(例えば圧力センサ)が設けられている。制御手段51は、圧力検出手段27からの検出信号に基づいて、エンジン10が吸入する直前の吸入空気の圧力を検出可能である。
【0023】
排気通路12は、上流側から順に、排気通路12A、排気通路12Bを有している。排気通路12Aの上流側はエンジン10に接続されており、排気通路12Aの下流側はターボチャージャ30のタービン36の流入口に接続されている。排気通路12Aには、EGR通路13Aの一方端が接続されている。また排気通路12Aには、圧力検出手段26A(例えば、圧力センサ)が設けられている。制御手段51は、圧力検出手段26Aからの検出信号に基づいて、タービン36の上流側の排気の圧力であるタービン上流排気圧力を検出可能である。
【0024】
排気通路12Bの上流側はターボチャージャ30のタービン36の吐出口に接続され、排気通路12Bの下流側には排気浄化装置38が設けられている。排気浄化装置38は、例えば酸化触媒やDPF(Diesel Particulate Filter)であり、排気通路12B内を流れる排気を浄化する。また排気通路12Bには、圧力検出手段26B(例えば、圧力センサ)が設けられている。制御手段51は、圧力検出手段26Bからの検出信号に基づいて、タービン36の下流側の排気の圧力であるタービン下流排気圧力を検出可能である。タービン36には、タービン36内に導かれた排気ガスの流速を制御可能な可変ノズル33が設けられており、可変ノズル33は、駆動手段31によって開度が調整される。制御手段51は、開度検出手段32(例えば、ノズル開度センサ)からの検出信号と目標ノズル開度に基づいて、駆動手段31に制御信号を出力して可変ノズル33の開度を調整可能である。
【0025】
回転検出手段22は、例えば内燃機関の回転数(例えばクランク軸の回転数)や回転角度(例えば各気筒の圧縮上死点タイミング)等を検出可能な回転角度センサであり、エンジン10のクランクシャフトの近傍に設けられている。制御手段51は、回転検出手段22からの検出信号に基づいて、エンジン10のクランクシャフトの回転数や回転角度等を検出することが可能である。
【0026】
大気圧検出手段23は、例えば大気圧センサであり、制御装置50に設けられている。制御手段51は、大気圧検出手段23からの検出信号に基づいて、大気圧を検出することが可能である。
【0027】
クーラント温度検出手段28は、例えばクーラント温度センサであり、エンジン10のシリンダブロックに設けられ、シリンダブロック内に設けられたウォータジャケットを流れるクーラント(冷却液)の温度に応じた検出信号を出力する。制御手段51は、クーラント温度検出手段28からの検出信号に基づいて、エンジン10の冷却に使用されているクーラントの温度(クーラント温度)を検出可能である。
【0028】
イグニション状態検出手段71は、例えばイグニションスイッチがON状態であるかOFF状態であるかを検出するセンサであり、停止状態のエンジン10を始動する際、または運転状態のエンジン10を停止する際に操作するイグニションの状態(ON状態、OFF状態)に応じた検出信号を出力する。制御手段51は、イグニション状態検出手段71からの検出信号に基づいて、イグニションの状態がON状態であるか、OFF状態であるか、を検出することができる。
【0029】
制御装置50は、制御手段51と記憶手段53とを有している。制御手段51は、例えばCPU(中央処理ユニット)であり、上述したように各種の検出手段等からの検出信号が入力されて、エンジン10の運転状態を検出し、インジェクタ43A〜43D、EGR弁14A、可変ノズル33の駆動手段31、スロットルモータ47M、電動過給機60、ABV68等を駆動する制御信号を出力する。また制御手段51は、自身がインジェクタ43A〜43Dに出力した制御信号(噴射指令信号)によって、各気筒45A〜45Dに供給した燃料量を検出することが可能である。また制御手段51への入力、及び制御手段51からの出力は、
図1の例に限定されず、種々の検出手段(NOx検出手段、排気温度検出手段等)、種々のアクチュエータ(各種バルブ、各種ランプ等)が有る。記憶手段53は、例えばFlash−ROM等の記憶装置であり、種々の処理を実行するためのプログラム等が記憶されている。
【0030】
●[電動過給機60の全体構造(
図2)]
次に
図2を用いて、電動過給機60の全体構造について説明する。電動過給機60は、コンプレッサ60Aと電動モータ60Bにて構成されている。なお、図中にX軸、Y軸、Z軸が記載してある場合、X軸とY軸とZ軸は互いに直交しており、Z軸方向は鉛直上方を示し、X軸方向とY軸方向は水平方向を示している。
【0031】
コンプレッサ60Aは、コンプレッサハウジング62A、シールプレート62B、コンプレッサインペラ60W等を有している。コンプレッサハウジング62Aの流入口60Eは、
図1に示すように吸気通路11Bの下流側に接続され、コンプレッサハウジング62Aの吐出口60Fは、
図1に示すように吸気通路11Cの上流側に接続されている。コンプレッサハウジング62Aとシールプレート62Bとで形成される収容空間にコンプレッサインペラ60Wが収容されている。コンプレッサインペラ60Wは、電動モータ60Bのシャフト63Aと一体となって回転するように、シャフト63Aの一端の側に固定されている。この実施形態では、コンプレッサインペラ60Wにシャフト63Aを貫通させて、ナット等の締結部材63Nによってシャフト63Aにコンプレッサインペラ60Wを固定している。
【0032】
電動モータ60Bは、モータハウジング61A〜61C、軸受スリーブ61S、61T、エンドプレート61E、軸受60G、軸受60H、シャフト63A、ロータ60R、複数のティース60T、複数のステータコイル60C等を有している。モータハウジング61Aは略円筒状であり、モータハウジング61Bは略円環状であり、モータハウジング61Cは板状である。また軸受スリーブ61S、61Tは略円筒状であり、エンドプレート61Eは略円板状である。シャフト63Aには、例えば、永久磁石等を有するロータ60Rが圧入されて一体とされている。シャフト63Aにおけるコンプレッサインペラ60Wの側には軸受60Gの内輪が取り付けられ、軸受60Gの外輪は軸受スリーブ61Sの内周部に取り付けられ、軸受スリーブ61Sはモータハウジング61Aにおけるコンプレッサインペラ60Wの側の開口部に嵌め込まれて固定されている。軸受60Gと軸受60Hは、モータハウジング61A、61Bに対して、ロータ60Rと一体とされたシャフト63Aを回転自在に支持している。
【0033】
また、複数のティース60Tのそれぞれには、ステータコイル60Cが巻回されており、ティース60Tとステータコイル60Cにて構成されたステータ60Sは、円筒状のモータハウジング61Aの内周面に嵌め込まれている。例えばモータハウジング61Aの材質はアルミであり、ティース60Tの材質は鉄である。そしてモータハウジング61Aにおけるコンプレッサインペラ60Wと反対の側の開口部には、円環状のモータハウジング61Bが、開口部を塞ぐように固定されている。また、軸受スリーブ61Tの内周部に外輪が取り付けられた軸受60Hの内輪は、シャフト63Aにおけるコンプレッサインペラ60Wとは反対の側に取り付けらている。そして軸受スリーブ61Tはモータハウジング61Bの開口部に嵌め込まれて固定されている。またシャフト63Aにおけるコンプレッサインペラ60Wとは反対側の端部には、エンドプレート61Eと、軸受60Hの外輪等を付勢して与圧を与える与圧部材63Bが設けられている。例えば軸受60Gと軸受60Hはアンギュラタイプの軸受であり、与圧部材63Bによって適切な与圧が与えられている。エンドプレート61Eは、モータハウジング61B及び軸受スリーブ61Tにおけるコンプレッサインペラ60Wとは反対の側の開口部を塞ぐとともに与圧部材63Bを収容するように固定されている。なおモータハウジング61A〜61Cは、「ハウジング」に相当している。
【0034】
また例えば、電動過給機60は、回転軸線60Jが水平方向となるように、車両内に配置されており、モータハウジング61Aにおける上方となる位置には、オイル貯留空間61Kが形成され、当該オイル貯留空間61Kと電動過給機60の外部とを連通する給油口60Xがモータハウジング61Aの上部に形成されている。給油口60X及びオイル貯留空間61Kには、例えば内燃機関のオイルポンプから圧送されたオイルが供給されている。またモータハウジング61Aの下方となる位置には、モータハウジング61Aの内部と外部とを連通する排油口60Zが形成されている。
【0035】
モータハウジング61A内には、給油配管64と給油配管65が、上方から下方に延びるように設けられている。そして給油配管64の上端と給油配管65の上端のそれぞれは、オイル貯留空間61Kに接続されている。そして給油配管64の下端は、軸受60Gの上方かつ軸受60Gの内輪と外輪の間の隙間に隣り合う位置に配置され、給油配管65の下端は、軸受60Hの上方かつ軸受60Hの内輪と外輪の間の隙間に隣り合う位置に配置されている。
【0036】
電動過給機60が回転駆動された場合、シャフト63Aが10万[rpm]近傍の非常に高い回転数で回転駆動されるので、軸受60Gと軸受60Hには潤滑用かつ冷却用のオイルが必要である。当該オイルは、内燃機関のオイルポンプ(図示省略)から給油口60Xへ供給(圧送)され、供給されたオイルは、オイル貯留空間61Kから給油配管64を介して軸受60Gに供給され、オイル貯留空間61Kから給油配管65を介して軸受60Hに供給されている。そして軸受60Gに供給されたオイル、及び軸受60Hに供給されたオイルは、排油口60Zから排出される。
【0037】
電動過給機60が回転駆動された場合、発熱するのは軸受60Gと軸受60Hだけでなく、ステータコイル60Cも発熱する。軸受60Gと軸受60Hは、寿命の向上等を図るために、オイルによる転動体や保持器の潤滑と冷却が必要である。また、ステータコイル60Cは、コイルの表面をコーティングしている被覆の寿命の向上やエネルギー効率の向上等を図るために冷却が必要であり、軸受60Gと軸受60Hの冷却に用いるオイルを利用することが好ましい。以下、給油配管64と給油配管65を用いて、軸受60Gと軸受60Hの潤滑と冷却を実現するとともに、ステータコイル60Cの冷却を実現する構造、の詳細について説明する。
【0038】
●[軸受用油路と分岐油路の構造と配置位置(
図3〜
図5)]
図3に示すように、給油配管64の上方であるオイル流入口64Aは、オイル貯留空間61K内に配置されている。また給油配管65の上方であるオイル流入口65Aは、オイル貯留空間61K内に配置されている。オイル貯留空間61Kは、給油口60Xから供給されたオイルの脈動等を吸収し、ほぼ均一の圧力とされたオイルを給油配管64及び給油配管65へと、ほぼ均等に供給する。
【0039】
図3に示すように、給油配管64において、上方に配置されたステータコイルである上方ステータコイル60CTの外周面とモータハウジング61Aとの間の隙間66Aの近傍には、分岐吐出孔64C(オイルを噴射するノズルに相当)が形成されている。給油配管64内に供給されたオイルの一部は、分岐吐出孔64Cから隙間66Aへと吐出(噴射)され、吐出(噴射)されたオイルは上方ステータコイル60CTを冷却しながら、重力によって下方に向かって流れ落ちる。同様に、
図3に示すように、給油配管65において、上方ステータコイル60CTの外周面とモータハウジング61Aとの間の隙間66Bの近傍には、分岐吐出孔65Cが形成されている。
【0040】
給油配管65内に供給されたオイルの一部は、分岐吐出孔65Cから隙間66B(上方ステータコイル60CTの外周面とモータハウジング61Aとの間の隙間)へと吐出(噴射)され、吐出(噴射)されたオイルは上方ステータコイル60CTを冷却しながら、重力によって下方に向かって流れ落ちる。なお、複数のステータコイル60Cを、「重ね巻き」で形成した場合、「並み巻き」と比較して、それぞれのステータコイル60Cが分離(独立)した形態とならず、隣り合うステータコイルと連続するように形成される。従って、ステータコイル60Cを「重ね巻き」にて形成することで、分岐吐出孔から吐出された冷却用のオイルが、隣り合うステータコイル60Cの隙間からロータの側へと流れ落ちることが抑制されて、各ステータコイル60Cの外周面を伝って流れ落ちるようになるので、冷却効率が高く、より好ましい。なお、ステータコイル60Cの内周面の面積よりも外周面の面積のほうが大きいので、より効率良くステータコイル60Cを冷却することができる。
【0041】
上方ステータコイル60CTを含むステータコイル60Cの外周面を伝って下方に流れ落ちるオイルは、
図4に一点鎖線矢印にて示す経路KL、KRにて、ロータ60Rの回りに周方向に配置されている各ステータコイル60Cを次々と冷却しながら流れ落ち、排油口60Zから排出される。
図4に示すように、ステータコイル60Cの外周面とモータハウジング61Aとの間の隙間66B(図示省略したが隙間66Aも同様)は、ステータコイル60Cの外周面に沿って周方向に連続するように形成された空間である「コイル外周空間」に相当している。そしてモータハウジング61Aの下方には、このコイル外周空間(周方向に連通した隙間66B)に連通する排油口60Zが形成されている。
図4に示すコイル外周空間(周方向に連通した隙間66B)における最も高い位置(最も上の位置)に分岐吐出口を形成すると、各ステータコイル60Cに均等にオイルを行き渡らせることができるので、より好ましい。
【0042】
また
図5に示すように、給油配管64に形成する分岐吐出孔を、
図4に示す経路KLを流れるオイル用の分岐吐出孔64CLと、
図4に示す経路KRを流れるオイル用の分岐吐出孔64CRと、の2個の孔(噴射ノズル)としてもよい。同様に、給油配管65に形成する分岐吐出孔を、
図4に示す経路KLを流れるオイル用の分岐吐出孔65CLと、
図4に示す経路KRを流れるオイル用の分岐吐出孔65CRと、の2個の孔(噴射ノズル)としてもよい。
【0043】
また
図3に示すように、給油配管64において、軸受60Gの外輪と内輪との間の隙間における上方の隙間の近傍には、軸受用吐出孔64B(オイルを噴射するノズルに相当)が形成されている。給油配管64内に供給されたオイルのうち、分岐吐出孔64Cから吐出されなかった残りのオイルは、軸受用吐出孔64Bから軸受60Gの外輪と内輪の隙間へと吐出(噴射)される。吐出されたオイルは、軸受60Gの転動体や保持器の潤滑や冷却に使用され、重力や回転によって軸受60Gの隙間(外輪と内輪の間の隙間)内に行き渡った後、下方に流れ落ち、排油口60Zから排出される。同様に、給油配管65において、軸受60Hの外輪と内輪との間の隙間における上方の隙間の近傍には、軸受用吐出孔65Bが形成されている。給油配管65内に供給されたオイルのうち、分岐吐出孔65Cから吐出されなかった残りのオイルは、軸受用吐出孔65Bから軸受60Hの外輪と内輪の隙間へと吐出(噴射)される。吐出されたオイルは、軸受60Hの転動体や保持器の潤滑や冷却に使用され、重力や回転によって軸受60Hの隙間(外輪と内輪の間の隙間)内に行き渡った後、下方に流れ落ち、排油口60Zから排出される。なお、給油配管64と給油配管65の内径は、例えば約2〜4[mm]程度であり、軸受用吐出孔64Bと軸受用吐出孔65B、及び分岐吐出孔64Cと分岐吐出孔65Cの径は、例えば約0.8〜1.2[mm]程度であり、容易に実現することができる。
【0044】
以上に説明したように、軸受用油路の途中(給油配管64の途中)に設けられた分岐吐出孔64Cにて形成された分岐油路にて、給油配管64に供給されたオイルの一部がステータコイル60Cの外周面へと導かれている。また、給油配管64と軸受用吐出孔64Bにて形成された軸受用油路にて、給油配管64に供給された残りのオイル(分岐吐出孔から吐出されずに残ったオイル)が軸受60Gへと導かれている。同様に軸受用油路の途中(給油配管65の途中)に設けられた分岐吐出孔65Cにて形成された分岐油路にて、給油配管65に供給されたオイルの一部がステータコイル60Cの外周面へと導かれている。また、給油配管65と軸受用吐出孔65Bにて形成された軸受用油路にて、給油配管65に供給された残りのオイル(分岐吐出孔から吐出されずに残ったオイル)が軸受60Hへと導かれている。
【0045】
●[本願の効果]
以上、本実施の形態にて説明した給油配管64、65、軸受用吐出孔64B、65B、分岐吐出孔64C、65Cにて、よりシンプルな構造にて、ステータコイル60Cを適切に冷却することができる電動過給機60を実現することができる。また、軸受60G、60Hの潤滑及び冷却と、ステータコイル60Cの冷却を、給油配管64、65にて兼用させることができるので、よりシンプルな構造にて実現することができる。また、上方に配置された上方ステータコイルにオイルを吹き付けて、重力を利用して他のステータコイルへとオイルを循環させることで、すべてのステータコイルを適切に冷却することができる。
【0046】
本発明の電動過給機60は、本実施の形態で説明した構成、構造、形状等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0047】
本実施の形態にて説明した電動過給機60は、ステータコイルを樹脂でモールドして当該樹脂からハウジングに放熱させる構造よりもシンプルかつ安価な構造にて、ステータコイルの冷却を実現することが可能であり、ステータコイルの被覆の寿命をより向上させることができる。
【0048】
本実施の形態にて説明した電動過給機60は、車両に限定されず、種々の機器や種々の用途に適用することができる。また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。