(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二系統のエキゾーストマニホールドがツインスクロールタービンの各スクロールに接続された態様の場合、各系統での排気抵抗差が大きいとエンジン排圧のばらつきが大きくなり、過給性能を低下させる可能性がある。しかしながら、従来において、エンジン排圧のばらつきを低減するという観点で、エキゾーストマニホールドとスクロールとの接続関係に着目した技術は無かった。
【0005】
本発明は、エンジン排圧のばらつきを低減して過給性能の低下を低減する過給機システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、内燃機関と過給機とに接続された二系統の排気マニホールドを備えた過給機システムであって、インペラの周囲に配置されると共に、流路断面の面積が異なる二つのスクロールを備え、二つのスクロールのうち、流路断面の面積が大きいスクロールは、大スクロールであり、流路断面の面積が小さいスクロールは、小スクロールであり、二系統の排気マニホールドのうち、流路長の長い経路は、大スクロールに接続されており、流路長の短い経路は、小スクロールに接続されている。
【0007】
従来、二つのスクロールの流路断面の面積差に配慮して二系統の排気マニホールドの各経路を接続し、その結果、過給性能の低下を抑制するという着想は無かった。ここで、本発明の一態様における大スクロールは、小スクロールに比べて排気抵抗は小さく、また、流路長の長い排気マニホールドは、流路長の短い排気マニホールドに比べて排気抵抗は大きい。そして、排気抵抗の大きい側の排気マニホールドは、排気抵抗の小さい側の大スクロールに接続され、排気抵抗の小さい側の排気マニホールドは、排気抵抗の大きい側の小スクロールに接続されているので、両方の系統でのエンジン排圧のばらつきは減り、過給性能の低下を低減できる。
【0008】
いくつかの態様において、大スクロールは、シュラウド側スクロールであり、小スクロールは、ハブ側スクロールとすることができる。インペラの回転軸を支持する軸受ハウジング等との関係を考慮すると、ハブ側スクロールよりもシュラウド側スクロールの方が流路面積を拡大させ易く、比較的設計の自由度が増す。
【0009】
上記の態様において、ハブ側スクロールは、シュラウド側スクロールよりもインペラの回転軸線回りの流路長が短い態様とすることができる。ハブ側スクロールは小スクロールであり、設計上、ハブ側スクロールの排気抵抗は、シュラウド側スクロールの排気抵抗よりも大きくなる。ここで、ハブ側スクロールの流路長がシュラウド側スクロールの流路長よりも短ければ、程度にもよるが、ハブ側スクロールとシュラウド側スクロールとの間で生じる排気抵抗差は小さくなる。つまり、排気マニホールドの流路長の異なる二系統の経路間で生じる排気抵抗差が小さい場合に、この排気抵抗差を吸収して過給性能の低下を低減する上で最適化を図り易くなる。
【0010】
上記の態様において、シュラウド側スクロールは、ハブ側スクロールよりもインペラの回転軸線回りの流路長が短い態様とすることができる。シュラウド側スクロールは大スクロールであり、設計上は、シュラウド側スクロールの排気抵抗は、ハブ側スクロールの排気抵抗よりも小さくなる。ここで、シュラウド側スクロールの流路長がハブ側スクロールの流路長よりも短ければ、程度にもよるが、ハブ側スクロールとシュラウド側スクロールとの間で生じる排気抵抗差は大きくなる。つまり、排気マニホールドの流路長の異なる二系統の経路間で生じる排気抵抗差が大きい場合に、この排気抵抗差を吸収して過給性能の低下を低減する上で最適化を図り易くなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のいくつかの態様によれば、エンジン排圧のばらつきを低減して過給性能の低下を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
過給機2は、例えば、船舶や車両等の過給機システム1に組み込まれて適用される。
図1に示されるように、例えば、4気筒(多気筒)のエンジン(内燃機関)Eの過給機システム1は、エンジンEの各気筒Ea,Eb,Ec,Edに吸入空気を分配するためのインテークマニホールド3と、各気筒Ea〜Edの排気ポートに接続され、各排気ポートから排出された排ガスGを二系統に集約して排出するエキゾーストマニホールド(排気マニホールド)4と、を備えている。また、過給機2は、吸入経路1aを介してインテークマニホールド3に接続されたコンプレッサ5と、エキゾーストマニホールド4に接続されたツインスクロールタービン6とを備えている。コンプレッサ5とインテークマニホールド3とを接続する吸入経路1aには、インタークーラーやスロットルバルブ等が配置されている。
【0015】
コンプレッサ5は、コンプレッサハウジング5aと、コンプレッサハウジング5aに収納されたコンプレッサ翼車5bと、を備え、ツインスクロールタービン6は、タービンハウジング7と、タービンハウジング7に収納されたタービン翼車(インペラ)8とを備えている。タービン翼車8は回転軸21の一方の端部に設けられており、コンプレッサ翼車5bは回転軸21の他方の端部に設けられている。タービンハウジング7とコンプレッサハウジング5aとの間には、軸受ハウジング9が設けられている。回転軸21は、軸受を介して軸受ハウジング9に回転可能に支持されており、回転軸21、コンプレッサ翼車5b及びタービン翼車8が一体の回転体として回転軸線Xを中心に回転する。
【0016】
コンプレッサハウジング5aには、吸入部5c及び排出部5dが設けられている。タービン翼車8が回転すると、回転軸21を介してコンプレッサ翼車5bが回転する。回転するコンプレッサ翼車5bは、吸入部5cを通じて空気等の外部の流体(流体)を吸入し、圧縮して排出部5dから排出する。排出部5dから排出された圧縮流体は、吸入経路1a及びインテークマニホールド3を介してエンジンEに供給される。
【0017】
タービンハウジング7は、エキゾーストマニホールド4の二つの経路41,42のそれぞれに接続された二つの排ガス導入流路7a,7bと、タービン翼車8を通過した排ガスG(流体)が流出する排ガス排出流路7cと、を備えている。エンジンEから排出された排ガスGは、エキゾーストマニホールド4を通過してタービンハウジング7内に流入し、タービン翼車8を回転させ、その後、排ガス排出流路7cを通過してタービンハウジング7外に流出する。なお、タービンハウジング7には、各排ガス導入流路7a,7bと排ガス排出流路7cとをバイパスする二つのバイパス流路、及びバイパス流路の出口を開閉して流量を調整するウエストゲートバルブが設けられている。
【0018】
図1、
図2、及び
図4に示されるように、タービンハウジング7には、タービン翼車8の周囲に配置され、各排ガス導入流路7a,7bに接続された二つのスクロール11,12が設けられている。二つのスクロール11,12は、それぞれノズル13を介してタービン翼車8の収容室内に連通し、タービン翼車8の収容室は排ガス排出流路7cに連通している。二つのスクロール11,12は、回転軸線X方向において、互いに重なるように設けられており、回転軸21の軸受ハウジング9側(コンプレッサ5側)のスクロールは、ハブ側スクロール11であり、反対側のスクロールはシュラウド側スクロール12である。なお、ハブ側スクロールはリア側スクロール、シュラウド側スクロールはフロント側スクロールと呼ばれることもある。
【0019】
ハブ側スクロール11とシュラウド側スクロール12とは、基本的な形態は共通するので、ハブ側スクロール11を代表して説明する。ハブ側スクロール11は、タービン翼車8の回転方向に沿うように略螺旋状の曲線を描き、排ガスGの流れ方向を基準にした場合の上流側から下流側にかけて漸次縮径した流路を形成している。ハブ側スクロール11の下流端は、再び上流側に接続され、排ガスGの再循環流を形成する合流部になっている。本実施形態において、合流部を形成する開口のうち、最も上流側となる一部分は舌部11aである。舌部11aが設けられた部位は、ハブ側スクロール11の入口部分である。
【0020】
ハブ側スクロール11の流路断面のうち、舌部11aを通る仮想の平面で切断した場合の流路断面はハブ側スクロール11の入口部分の流路断面である。より詳細に説明すると、微視的には舌部11aは曲面を有する部位であり、舌部11aに接する接平面を仮定し、その接平面上に投影されるハブ側スクロール11の流路断面を想定した場合に、面積が最も小さくなる流路断面はハブ側スクロール11の入口部分の流路断面である。ハブ側スクロール11の入口部分の流路断面は、ハブ側スクロール11の流路断面を代表する流路断面(ハブ側代表断面)Saである(
図3参照)。
【0021】
シュラウド側スクロール12についても、ハブ側スクロール11と同様に考えることができ、舌部12aに接する接平面を仮定し、その接平面上に投影されるシュラウド側スクロール12の流路断面を想定した場合に、面積が最も小さくなる流路断面はシュラウド側スクロール12の入口部分の流路断面である。シュラウド側スクロール12の入口部分の流路断面は、シュラウド側スクロール12の流路断面を代表する流路断面(シュラウド側代表断面)Sbである(
図3参照)である。
【0022】
ハブ側代表断面Saとシュラウド側代表断面Sbとを比較した場合に、本実施形態では、ハブ側代表断面Saの面積の方が、シュラウド側代表断面Sbの面積よりも小さい。なお、ハブ側代表断面Saとシュラウド側代表断面Sbとを比較して得られる双方の相関性は、他の部分の流路断面同士、例えば、舌部11a,12aを基準にして同じ回転角だけずらした位置での流路断面同士を比較した場合にも同様の結論が導かれる。つまり、本実施形態において、ハブ側スクロール11の流路断面の面積は、シュラウド側スクロール12の流路断面の面積よりも小さい。
【0023】
次に、
図3及び
図4を参照し、ハブ側スクロール11及びシュラウド側スクロール12の回転軸線X回りの流路長について説明する。この流路長とは、回転軸線Xを含む平面でハブ側スクロール11及びシュラウド側スクロール12を切断した場合の流路断面の図心Ca、Cbを、入口部分から回転軸線X回り方向に沿って下流端まで連続的に結んだ曲線の長さを意味する。
【0024】
ここで、本実施形態におけるハブ側スクロール11及びシュラウド側スクロール12の流路長を比較する。ハブ側スクロール11の流路断面の図心Caから回転軸線Xまでの距離Laは、シュラウド側スクロール12の流路断面の図心Cbから回転軸線Xまでの距離Lbよりも短い(
図3参照)。その結果、ハブ側スクロール11の流路長は、シュラウド側スクロール12の流路長よりも短くなっている。
【0025】
ここで、本実施形態に係るハブ側スクロール11とシュラウド側スクロール12との関係について整理する。ハブ側スクロール11は、流路断面の面積が小さい側の小スクロールであり、シュラウド側スクロール12は、流路断面の面積が大きい側の大スクロールである。また、ハブ側スクロール11の流路長は、シュラウド側スクロール12の流路長よりも短くなっている。
【0026】
流路断面の面積差を基準に考えた場合、流路断面の面積が小さい側のハブ側スクロール11(小スクロール)の方が、流路断面の面積が大きい側のシュラウド側スクロール12(大スクロール)に比べて排気抵抗は大きくなる。また、流路長を基準に考えた場合、流路長が短い側のハブ側スクロール11の方が、シュラウド側スクロール12に比べて排気抵抗は小さくなる。しかしながら、排気抵抗への影響、つまり優先的に寄与する機能は、流路長差よりも流路断面の面積差の方が大きいと考えられる。従って、程度の差はあるものの、本実施形態ではハブ側スクロール11(小スクロール)の方が、シュラウド側スクロール12(大スクロール)に比べて排気抵抗は大きくなる。
【0027】
各排ガス導入流路7a,7bは、上述の通り、それぞれハブ側スクロール11またはシュラウド側スクロール12に接続されている。より詳細に説明すると、各排ガス導入流路7a,7bは、実質的に同一の流路断面積からなる入口を備え、この入口が、それぞれエキゾーストマニホールド4の各経路41、42に接続されている。また、各排ガス導入流路7a,7bの出口は、それぞれハブ側スクロール11またはシュラウド側スクロール12に接続されている。なお、各排ガス導入流路7a,7bにおける排気抵抗差は、各経路41、42の流路長差に比べ、無視できる程度に小さいと考えられる。
【0028】
図1及び
図2に示されるように、エキゾーストマニホールド4は、第1系統である経路41と、第2系統である経路42との二つの系統を備えている。経路41は、規則的(略一列)に並ぶ四つ(複数)の気筒Ea〜Edのうち、内側の複数の気筒Eb、Ecの排気ポートに接続され、経路42は、外側の複数の気筒Ea、Edの排気ポートに接続されている。
【0029】
経路41は、気筒Eb、Ecの各排気ポートに接続されたヘッダーパイプ41aと、ヘッダーパイプ41aが合流して一つの管路となるコレクター41bとを備える。コレクター41bは、排ガス導入流路7aを介してハブ側スクロール11に接続されている。経路42は、気筒Ea、Edの各排気ポートに接続されたヘッダーパイプ42aと、ヘッダーパイプ42aが合流して一つの管路となるコレクター42bとを備える。コレクター42bは、排ガス導入流路7bを介してシュラウド側スクロール12に接続されている。経路41の流路長は、経路42の流路長よりも短くなっている。なお、経路41の流路長は、ヘッダーパイプ41aやコレクター41b等の長さの合計長さであり、経路42の流路長は、ヘッダーパイプ42aやコレクター42b等の長さの合計長さである。
【0030】
本実施形態において、経路41の流路断面の面積と経路42の流路断面の面積との差は、流路長差に比べて小さく、少なくとも流路断面の面積差に起因して生じる排気抵抗差を吸収できる程度の差は無く、両方の流路断面の面積は実質的に同一である。つまり、経路41と経路42との間で生じる排気抵抗差は、主体的に流路長差に起因して生じるため、本実施形態では、経路41で生じる排気抵抗は、経路42で生じる排気抵抗よりも小さくなっている。なお、経路41の流路長が経路42の流路長よりも短くなる形態であれば、エンジンEの各排気ポートとの接続形態として様々な変形形態を含んで構成することができる。
【0031】
本実施形態において、上記の関係を満たすことによって享受できる作用、効果について説明する。まず、エンジンEからの排ガスGは、エキゾーストマニホールド4の各経路41,42を交互に通過し、ツインスクロールタービン6の排ガス導入流路7aまたは排ガス導入流路7bに導入される。排ガス導入流路7a及び排ガス導入流路7bに導入された排ガスGは、それぞれハブ側スクロール11またはシュラウド側スクロール12を交互に流れ、タービン翼車8を回転させた後、排ガス排出流路7cから排出される。
【0032】
ここで、本実施形態では、排気抵抗が大きい側のハブ側スクロール11に、排気抵抗が小さい側のエキゾーストマニホールド4の経路41が接続され、排気抵抗が小さい側のシュラウド側スクロール12に、排気抵抗が大きい側の経路42が接続されている。その結果、両方の排気系統での排気抵抗差は小さくなり、エンジン排圧(「エンジン背圧」ともいう)のばらつきは減り、過給性能の低下を低減できる。
【0033】
また、本実施形態では、ハブ側スクロール11は小スクロールであり、シュラウド側スクロールは大スクロールである。タービン翼車8の回転軸21を支持する軸受ハウジング9等との関係を考慮すると、ハブ側スクロール11よりもシュラウド側スクロール12の方が流路面積を拡大させ易く、比較的設計の自由度が増す。
【0034】
また、小スクロールであるハブ側スクロール11の方が、設計上は、シュラウド側スクロール12の排気抵抗よりも大きくなるが、一方で、ハブ側スクロール11の流路長はシュラウド側スクロール12の流路長よりも短いため、ハブ側スクロール11とシュラウド側スクロール12との間で生じる排気抵抗差は小さくなる。つまり、流路長の異なる二系統の経路41,42で生じる排気抵抗差が小さい場合に、この排気抵抗差を吸収して過給性能の低下を低減する上で最適化を図り易くなる。
【0035】
次に、第2本実施形態に係る過給機システムについて
図5を参照して説明する。なお、第2本実施形態に係る過給機システムは、第1本実施形態と同様の要素や構造を備えているため、同様の要素や構造については同一の符号を付して詳細な説明を省略し、実質的な相違点を中心に説明する。
【0036】
本実施形態において、ハブ側スクロール11Aの流路断面Scの面積は、シュラウド側スクロール12Aの流路断面Sdの面積よりも小さい。また、ハブ側スクロール11Aの流路長は、シュラウド側スクロール12Aの流路長よりも長い。具体的には、ハブ側スクロール11Aの流路断面の図心Ccから回転軸線Xまでの距離Lcは、シュラウド側スクロール12Aの流路断面の図心Cdから回転軸線Xまでの距離Ldよりも長い。その結果、ハブ側スクロール11Aの流路長は、シュラウド側スクロール12Aの流路長よりも長くなっている。
【0037】
ここで、本実施形態では、排気抵抗が大きい側のハブ側スクロール11Aに、排気抵抗が小さい側のエキゾーストマニホールド4の経路41が接続され、排気抵抗が小さい側のシュラウド側スクロール12Aに、排気抵抗が大きい側の経路42が接続されている。その結果、両方の排気系統での排気抵抗差は小さくなり、エンジン排圧のばらつきは減り、過給性能の低下を低減できる。
【0038】
また、本実施形態では、小スクロールであるハブ側スクロール11Aの流路長の方が、大スクロールであるシュラウド側スクロール12Aの流路長よりも長いため、ハブ側スクロール11Aとシュラウド側スクロール12Aとの間で生じる排気抵抗差は大きくなる。つまり、流路長の異なる二系統の経路41,42で生じる排気抵抗差が大きい場合に、この排気抵抗差を吸収して過給性能の低下を低減する上で最適化を図り易くなる。
【0039】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して、各実施例の変形例を構成することも可能である。各実施形態の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0040】
また、本発明は、自動車用過給機に適用されるものに限定されず、船舶その他に適用されてもよい。