(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、排気ガスの有する熱量を一旦蓄熱材で蓄熱する。すなわち、排気ガスが蓄熱材を通った後に触媒に流入するので、蓄熱材と触媒との間の配管に排気ガスから放熱され、触媒の温度を所定範囲に維持することが難しい場合がある。
【0007】
引用文献2に記載の技術では、排熱回収部への熱伝達が排気から直接的に行われず、排熱回収部の排熱回収は、触媒ケースからの熱伝達が支配的である。触媒ケースの熱伝導率が低い場合には、排熱回収部への熱伝達に時間を要するため、触媒の温度を有効温度域に維持することは難しい。
【0008】
特許文献3に記載の技術では、触媒担持体が蓄熱体を含んで一体化されているため、触媒担持体の実質的な熱容量が、蓄熱材が一体化されない構造と比較して大きい。このため、触媒担持体を短時間で昇温させることが難しい。
【0009】
このように、いずれの特許文献に記載の技術も、触媒を適切な温度域に維持する点において改善の余地がある。
【0010】
本発明は上記事実を考慮し、触媒を適切な温度域に維持する効果を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第一の態様では、排気管内に設けられ排気を浄化する触媒を担持する触媒担持体と、前記触媒担持体よりも前記排気の上流側の分流部で前記排気管から分岐し、前記触媒担持体の周囲を経て、前記分流部と前記触媒担持体の間の合流部で前記排気管に合流する副流路と、前記触媒担持体の周囲の位置で前記副流路に設けられる蓄熱部材と、前記排気管における前記排気の流れを前記副流路へ切り替える切替部材と、前記切替部材を制御する制御装置と、を有する。
【0012】
この排気浄化装置では、排気管内を流れた排気が、触媒担持体で担持された触媒により浄化される。
【0013】
触媒担持体よりも上流側の分流部では、副流路が分岐している。制御装置によって切替部材が切り替えられることで、排気を副流路に流すことができる。副流路には蓄熱部材が設けられているので、排気の熱の一部を蓄熱部材に蓄熱することで、排気の温度を低下させることができる。たとえば、排気温度を、触媒を劣化させる温度に達しない程度に低下させることで、触媒の劣化を抑制し、触媒を保護できる。
【0014】
副流路は、触媒担持体の周囲を経るように設けられている。そして、この副流路において、触媒担持体の周囲の位置に蓄熱部材が設けられている。触媒担持体が、その周囲で保温されるので、エンジン停止時であっても、触媒の温度低下を抑制できる。そして、エンジンの始動直後等、排気の温度が低い場合でも、触媒を、活性温度に維持する(若しくは短時間で活性温度に昇温させる)ことで、高い排気浄化性能が得られる。
【0015】
第二の態様では、第一の態様において、前記制御装置で制御され、前記触媒担持体よりも前記排気の下流側で前記排気管を開閉する下流開閉部材を有する。
【0016】
下流開閉部材を開状態とすることで、排気管を排気が流れる状態を実現できる。下流開閉部材を閉状態とすることで、下流側からの空気が触媒に達することを抑制でき、触媒の温度低下を抑制できる。
【0017】
第三の態様では、第二の態様において、前記制御装置で制御され、前記分流部よりも前記排気の上流側で前記排気管を開閉する上流開閉部材を有する。
【0018】
上流開閉部材を開状態とすることで、排気管を排気が流れる状態を実現できる。上流開閉部材を閉状態とすることで、上流側からの気体が触媒に達することを抑制でき、触媒の温度低下を抑制できる。
【0019】
第四の態様では、第三の態様において、エンジンの作動及び停止を検出して前記制御装置に伝えるエンジン作動センサを有し、前記制御装置は、エンジン停止時には前記下流開閉部材及び前記上流開閉部材を閉状態とし、エンジン作動時には前記下流開閉部材及び前記上流開閉部材を開状態とする。
【0020】
エンジン作動時には、下流開閉部材及び上流開閉部材を開状態とするので、エンジンからの排気が排気管を流れる。エンジン停止時には、下流開閉部材及び上流開閉部材を閉状態とするので、下流側及び上流側からの空気が触媒に達することを抑制できる。
【0021】
第五の態様では、第一〜第四のいずれか1つの態様において、前記排気管内を流れる排気の温度を検出する排気温度センサと、前記蓄熱部材の温度を検出する蓄熱部材温度センサと、前記触媒担持体の温度を検出する触媒担持体温度センサと、を有し、前記制御装置は、前記排気の温度、前記蓄熱部材の温度及び、前記触媒担持体の温度に基づいて前記切替部材を制御する。
【0022】
排気の温度、蓄熱部材の温度及び、触媒担持体の温度に基づいて、切替部材が制御されることで、排気から蓄熱部材や触媒担持体(触媒)への熱の授受や、蓄熱部材と触媒担持体(触媒)への熱の授受を適切に制御できる。
【0023】
第六の態様では、第一〜第五のいずれか1つの態様において、前記蓄熱部材が、蓄熱材が収容される収容部材と、前記収容部材から延出されるフィンと、を有する熱交換器である。
【0024】
蓄熱部材が収容部材に収容された蓄熱材を有するので、この蓄熱材への熱の授受により、蓄熱及び放熱を確実に行うことができる。蓄熱材は収容部材に収容されているので漏れ出すことはない。
【0025】
収容部材からはフィンが延出されており、実質的な収容部材の表面積が広くなっているので、蓄熱材への熱の授受を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は上記構成としたので、触媒を適切な温度域に維持する効果が高い。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して第一実施形態の排気浄化装置12を説明する。
【0029】
図1及び
図2に示すように、排気浄化装置12は、排気管14の内部に取り付けられる触媒担持体16を有している。本実施形態では、排気管14は略円筒形であるが、長手方向の一部分は他の部分よりも径が太い太径配管14Bである。触媒担持体16は太径配管14Bに配置されている。
【0030】
以下において、単に「上流側」及び「下流側」というときは、排気管14内での排気の流れ方向(矢印F1方向)における上流側及び下流側をそれぞれいうものとする。
【0031】
排気管14において、太径配管14Bよりも上流側の部分は上流配管14Aであり、下流側の部分は下流配管14Cである。そして、上流配管14Aから太径配管14Bを経て下流配管14Cに至る部分が、エンジンからの排気が流れる主流路22である。太径配管14Bと下流配管14Cとの間は径が徐々に変化するテーパー配管14Dにより連続しているが、太径配管14Bと上流配管14Aの間は不連続であり、後述する分流部26及び合流部28が設けられている。
【0032】
触媒担持体16は、薄板を、たとえば波状あるいはハニカム状とすることで、表面積が増大された構造であり、この表面に、触媒が担持されている。触媒は、排気管14内を流れる排気中の物質(炭化水素等)を浄化する作用を有している。このような作用を奏する触媒としては、白金、パラジウム、ロジウム等を挙げることができる。なお、触媒担持体16の表面積を増大させる構造は、上記した波状やハニカム状に限定されない。
【0033】
触媒担持体16は、排気管14の内部に収容されるように、全体として円柱状あるいは円筒状に形成されている。
【0034】
排気管14の太径配管14Bと、この太径配管14Bの上流側及び下流側を含む所定範囲は、太径配管よりもさらに太径の外筒18で覆われている。
図2に示すように、第一実施形態の外筒18は、太径配管14Bを周方向に取り囲む円筒状である。
【0035】
外筒18の上流端部18Aは、径が上流側へと漸減する上流テーパー部18Bにより上流配管14Aに接続され、下流端部18Eは、径が下流側へと漸減する下流テーパー部18Dにより下流配管14Cに接続されている。
【0036】
太径配管14Bと外筒18の間には、中間筒20が配置されている。中間筒20と太径配管14B及び外筒18とは離間している。中間筒20の上流側は、上流テーパー部20Bにより、径が上流側へ漸減している。そして、中間筒20の上流端部20Aは、排気管14及び外筒18と非接触である。これに対し、中間筒20の下流側には径が漸減する部分は形成されておらず、下流端部20Cは排気管14及び外筒18と非接触である。
【0037】
このような外筒18及び中間筒20を設けたことで、触媒担持体16の上流側には、分流部26によって主流路22から分岐し、主流路22の外側で触媒担持体16の周囲を経て、合流部28により主流路22に合流する副流路24が形成されている。具体的には、副流路24は、外筒18の上流テーパー部18Bと中間筒20の上流テーパー部20Bの間の分流部26で主流路22から分岐する。そして、外筒18と中間筒20の間を下流側に至り、中間筒20の下流端部20Cで折り返して、中間筒20と太径配管14Bの間を上流側に至る。さらに、中間筒20の上流テーパー部20Bと太径配管14Bの上流端の間の合流部28から、主流路22に合流する。
【0038】
中間筒20の上流端部20Aは、切替弁30が設けられている。切替弁30は切替部材の一例である。
【0039】
本実施形態の切替弁30は、排気の流れ方向と直交する軸32を中心として回転可能な弁体34を有している。弁体34の回転角度は、制御装置36によって制御される。そして、切替弁30は、弁体34の回転角度により、
図1に実線で示す閉状態HSと、二点鎖線で示す開状態KSとを採り得る。
【0040】
制御装置36には、エンジンの作動及び停止を検知するエンジン作動センサ38が接続されている。なお、制御装置36が、エンジンの状態を制御することも可能な構成としてもよく、この場合は、制御装置が、エンジン作動センサを兼ねる。
【0041】
切替弁30が開状態KSにあるときは、上流配管14Aを流れた排気は、太径配管14Bと副流路24の両方に流れることが可能である。ただし、主流路22の方が副流路24よりも流路抵抗が小さいので、排気の多くは、副流路24を経ることなく、直接的に太径配管14Bへ流れる。これに対し、切替弁30が閉状態HSにあるときは、上流配管14Aを流れた排気は直接的には太径配管14Bに流れないので、副流路24を流れる。そして、副流路24を排気が流れた後、合流部28を通って太径配管14Bへ流れる。
【0042】
副流路24には、蓄熱部材40が配置されている。
図3に詳細に示すように、蓄熱部材40は、外筒18の内周面、中間筒20の外周面及び内周面、太径配管14Bの外周面に接触配置される収容部材42を有している。収容部材42は中空状であり、内部に蓄熱材が収容されている。副流路24を流れる排気と、収容部材42内の蓄熱材とで熱交換がなされる。たとえば、副流路24を流れる排気が収容部材42内の蓄熱材より高温である場合は、排気の熱が蓄熱材に移動し、蓄熱材に蓄熱されると共に、排気の温度が低下する。これとは逆に、副流路24を流れる排気が収容部材42内の蓄熱材より低温である場合は、蓄熱材の熱が排気に移動し、排気の温度が上昇する。
【0043】
収容部材42からは、副流路24に向けて、複数のフィン44が延出されている。フィン44により、収容部材42の実質的な表面積が増大されている。すなわち、蓄熱部材40は、収容部材42とフィン44とを有し、内部の蓄熱材に対して外部と熱交換を行う熱交換器である。
【0045】
第一実施形態の排気浄化装置12では、切替弁30が開状態KS(
図1に二点鎖線で示す)にあるとき、上流配管14Aを流れる排気の多くは、副流路24ではなく太径配管14Bへ、すなわち主流路22へ直接的に流れる。また、副流路24へ流れた排気も、合流部28から主流路22に合流する。そして、触媒担持体16に担持された触媒によって排気が浄化され、浄化された排気は、下流配管14Cからさらに下流へ流れる。
【0046】
切替弁30が開状態KSにあるとき、排気の多くは直接的に触媒担持体16に導入されるので、たとえば、排気の多くが副流路24を流れる構造と比較して、排気の熱を触媒に作用させて、短時間で昇温する(昇温速度を向上させる)ことが可能である。
【0047】
これに対し、切替弁30が閉状態HS(
図1に実線で示す)にあるとき、上流配管14Aを流れた排気は、直接的には太径配管14B、すなわち触媒担持体16には導入されず、副流路24を流れる。副流路24には蓄熱部材40が配置されているので、排気の熱の一部が蓄熱部材40、特に蓄熱材へ移動して蓄熱される。そして、温度が低下した状態の排気が、合流部28から太径配管14B(主流路22)に合流して触媒担持体16に導入される。排気の温度が低下しているので、高温の排気の熱が触媒担持体16に担持された触媒に作用せず、触媒の劣化を抑制できる。
【0048】
副流路24は触媒担持体16の周囲を経るように設けられており、この副流路24に蓄熱部材40が配置されている。そして、蓄熱部材40には、排気から作用した熱が蓄熱されている。すなわち、蓄熱した状態にある蓄熱部材40が、触媒担持体16の周囲に配置されている。したがって、たとえばエンジンが停止し、排気が触媒担持体16に導入されない状態でも、触媒担持体16に担持された触媒を保温でき、触媒の温度低下を抑制できる。特に、蓄熱部材が、たとえば上流配管14Aに配置された構造と比較して、蓄熱部材40からの熱伝導や、蓄熱部材40から副流路24を移動した気体の自然対流等により、触媒担持体16に効果的に蓄熱部材40の熱を作用させることができる。
【0049】
また、蓄熱部材40に蓄熱された状態で、エンジンが始動されたときには、切替弁30を閉状態とすれば、排気は副流路24を経て、触媒担持体16に導入される。エンジンの始動直後は排気の温度が十分に上昇していないことが想定されるが、このような場合でも、副流路24を流れた排気が蓄熱部材40の熱を受けて昇温される。そして、昇温された排気が触媒担持体16に導入されることで、この熱を触媒担持体16に担持された触媒に作用させることができる。これにより、触媒の温度を短時間で所望の温度に向けて上昇させることができる。
【0050】
第一実施形態において、切替弁30の開閉状態の判断基準としては、たとえば、触媒担持体16の温度を温度センサで検出し、この検出温度に基づいて行うことが可能である。さらには、エンジンの始動からの時間によって、切替弁30の開閉を制御してもよい。具体的には、エンジンの始動から所定時間は、排気の温度が低いので、切替弁30を開状態KSとする。そして、エンジンの始動から所定時間経過後は、排気の温度が高くなるので、切替弁30を閉状態HSとして、高温の排気の熱が触媒に直接的に作用することを抑制すると共に、蓄熱部材40に排気の熱を作用させるようにすればよい。
【0051】
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態において、第一実施形態と同様の要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0052】
図4に示すように、第二実施形態の排気浄化装置62では、上流配管14Aに上流開閉弁64が設けられ、下流配管14Cに下流開閉弁66が設けられている。上流開閉弁64及び下流開閉弁66は、制御装置36によって制御される。
【0053】
上流開閉弁64は、分流部26よりも上流側の位置で、排気管14(主流路22)を開閉する弁であり、上流開閉部材の一例である。下流開閉弁66は、触媒担持体16よりも下流側の位置で、排気管14(主流路22)を開閉する部材であり、下流開閉部材の一例である。
【0054】
このような構成とされた第二実施形態の排気浄化装置62では、第一実施形態の排気浄化装置12と同様の作用効果を奏するが、さらに、以下の作用効果を奏する。
【0055】
すなわち、第二実施形態の排気浄化装置62では、たとえば、エンジンの停止時に、制御装置36は、上流開閉弁64及び下流開閉弁66を閉じる。
【0056】
上流開閉弁64の上流側に存在している気体は、触媒担持体16の近傍の気体よりも低温の場合がある。したがって、上流開閉弁64が閉じられていないと、上流開閉弁64の上流側と下流側との気体の移動(対流)が生じ、触媒担持体16の近傍の空気の温度が低下することがある。しかし、本実施形態では、上流開閉弁64が閉じられるので、上流開閉弁64の上流側と下流側との気体の移動が阻止される。このため、上流開閉弁64の上流側にある低温の気体が触媒担持体16に流入しなくなる。また、触媒担持体16の近傍の空気が上流開閉弁64の上流側へ移動しなくなる。すなわち、触媒担持体16の温度低下を抑制できる。
【0057】
また、下流開閉弁66の下流側に存在している気体は、触媒担持体16の近傍の気体よりも低温の場合がある。したがって、下流開閉弁66が閉じられていないと、下流開閉弁66の上流側と下流側との気体の移動が生じ、触媒担持体16の近傍の空気の温度が低下することがある。しかし、本実施形態では、下流開閉弁66が閉じられるので、下流開閉弁66の上流側と下流側との気体の移動が阻止される。このため、下流開閉弁66の下流側にある低温の気体が触媒担持体16に流入しなくなる。また、触媒担持体16の近傍の空気が下流開閉弁66の下流側へ移動しなくなる。すなわち、触媒担持体16の温度低下を抑制できる。
【0058】
そして、上流開閉弁64と下流開閉弁66とを閉じることで、触媒担持体16及び蓄熱部材40は、上流開閉弁64と下流開閉弁66との間の密閉された空間に位置することになる。触媒担持体16と蓄熱部材40との温度差による気体の対流が生じるが、この対流により、密閉空間の内部の高温の気体が上流配管14A内や下流配管14C内に逃げることが抑制され、触媒担持体16と蓄熱部材40との熱交換を促進できる。
【0059】
なお、たとえば、エンジンから触媒担持体16までの距離(実質的には上流配管14Aの長さ)が短く、上流配管14Aから外部への放熱が少ない場合等は、上流開閉弁64を省略してもよい。上流開閉弁64を省略しても、切替弁30を閉じることで、切替弁30の上流側と下流側との気体の移動を阻止できる。この場合は、切替弁30が上流開閉部材を兼ねる構造である。
【0060】
次に、第三実施形態について説明する。第三実施形態において、第一実施形態又は第二実施形態と同様の要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0061】
図5に示すように、第三実施形態の排気浄化装置72では、排気温度センサ74、蓄熱部材温度センサ76及び触媒担持体温度センサ78を有している。
【0062】
排気温度センサ74は、上流配管14Aに設けられており、排気の温度を検出して制御装置36に送信する。
【0063】
蓄熱部材温度センサ76は、蓄熱部材40に接触配置されており、蓄熱部材40の温度を検出して、制御装置36に送信する。
【0064】
触媒担持体温度センサ78は、触媒担持体16に接触配置されており、触媒担持体16の温度を検出して、制御装置36に送信する。触媒担持体の温度は、実質的に触媒の温度に等しいので、以下では、触媒担持体温度センサ78で検出した温度は、単に触媒温度とする。
【0065】
制御装置36は、エンジンの動作に加えて、排気温度、蓄熱部材温度及び触媒温度に基づき、切替弁30、上流開閉弁64及び下流開閉弁66を制御する。
【0067】
以下では、第三実施形態における切替弁30、上流開閉弁64及び下流開閉弁66の制御の一例を、詳述する。
【0068】
この制御では、排気温度、蓄熱部材温度及び触媒温度に閾値温度が設定されており、これら閾値温度との関係において、それぞれの弁の開閉が制御される。表1において、排気温度、蓄熱部材温度及び触媒温度のそれぞれにつき、設定されている閾値温度よりも高い状態を「高」、低い状態を「低」とする。この閾値温度は、触媒活性温度であり、この閾値温度よりも高い温度であれば、触媒は排気を浄化する能力を高く発揮する。
【0069】
表1の条件(1)は、エンジンが停止している状態である。この場合、切替弁30、上流開閉弁64及び下流開閉弁66はいずれも閉状態とされる。上流配管14A内や下流配管14C内の低温空気の流入が抑制され、また、蓄熱部材40と触媒担持体16との間の対流も抑制される。そして、蓄熱部材40に蓄熱された熱が放熱されて触媒担持体16に作用することで、触媒担持体16の温度低下が抑制される。
【0070】
条件(2)〜(9)は、エンジンが作動している場合であり、上流開閉弁64及び下流開閉弁66はいずれも開状態とされる。
【0071】
条件(2)は、エンジン作動時で、排気温度、触媒温度及び蓄熱部材温度のいずれも、それぞれの閾値温度より低い場合である。この場合、排気温度が蓄熱部材温度より高ければ、切替弁30が開かれ、排気が触媒担持体16に導入されるので、短時間で触媒担持体16を昇温することができる。ただし、排気温度が蓄熱部材温度よりも低い場合は、切替弁30が閉じられる。これにより、排気が直接的には触媒担持体16に導入されず、副流路24において、蓄熱部材40の熱を受けて昇温される。昇温された排気が触媒担持体16に導入されるので、触媒担持体16を昇温することができる。すなわち、蓄熱部材40よりも排気が高温であれば、排気を直接的に触媒担持体16に導入し、蓄熱部材40が排気よりも高温であれば、排気が蓄熱部材40によって昇温された後に触媒担持体16に導入される。
【0072】
条件(3)は、排気温度及び触媒温度はそれぞれ閾値温度よりも低く、蓄熱部材温度は閾値温度よりも高い場合である。この場合は、切替弁30が開かれ、排気が副流路24に流れる。排気は、蓄熱部材40によって昇温され、昇温された排気が触媒担持体16に導入されるので、触媒担持体16を短時間で昇温することができる。低温の排気が直接的に触媒担持体16に導入されることによる触媒の温度低下を抑制できる。
【0073】
条件(4)は、排気温度及び蓄熱部材温度が温度閾値よりも低く、触媒温度が閾値温度よりも高い場合である。この場合、排気温度が蓄熱部材温度よりも高ければ、切替弁30が開かれ、排気が直接的に触媒担持体16に導入される。蓄熱部材40よりも相対的に高温である排気が蓄熱部材40で温度低下されることなく触媒担持体16に導入されることで、触媒の温度低下を抑制できる。これに対し、排気温度が蓄熱部材温度よりも低い場合は、切替弁30が閉じられる。排気が直接的には触媒担持体16に導入されず、副流路24において、蓄熱部材40の熱を受けて昇温される。昇温された排気が触媒担持体16に導入されるので、排気が蓄熱部材40で昇温されない場合と比較して、触媒担持体16の温度低下を抑制できる。
【0074】
条件(5)は、排気温度が閾値温度よりも低く、触媒温度及び蓄熱部材温度が閾値温度よりも高い場合である。この場合、触媒温度が蓄熱部材温度よりも高ければ、切替弁30が開かれ、排気が直接的に触媒担持体16に導入されるので、触媒の過度の昇温を抑制できる。これに対し、触媒温度が蓄熱部材温度よりも低い場合は、切替弁30が閉じられる。副流路24において、蓄熱部材40により昇温された排気が触媒担持体16に導入されるので、触媒担持体16を昇温することができる。
【0075】
条件(6)は、排気温度、触媒温度及び蓄熱部材温度のいずれも、閾値温度よりも高い場合である。この場合、触媒温度が排気温度よりも高く、排気温度が蓄熱部材温度よりも高ければ、切替弁30は閉じられるので、蓄熱部材40によって温度低下された排気が触媒担持体16に導入され、触媒の過度の昇温を抑制できる。触媒温度が蓄熱部材温度よりも高く、蓄熱部材温度が排気温度よりも高ければ、切替弁30は開けられるので、排気により、触媒の過度の昇温を抑制できる。排気温度が蓄熱部材温度よりも高く、蓄熱部材温度が触媒温度よりも高い場合は、切替弁30は開けられ、排気を直接的に触媒担持体16に導入して触媒を昇温できる。排気温度が触媒温度よりも高く、触媒温度が蓄熱部材温度よりも高ければ、切替弁30は閉じられ、蓄熱部材40によって昇温された排気が触媒担持体16に導入されることで、触媒を昇温できる。
【0076】
条件(7)は、排気温度が閾値温度よりも高く、触媒温度及び蓄熱部材温度が閾値温度よりも低い場合である。この場合は、切替弁30が開けられ、排気が直接的に触媒担持体16に導入されることで、触媒を昇温できる。
【0077】
条件(8)は、排気温度及び蓄熱部材温度が閾値温度よりも高く、触媒温度が閾値温度よりも低い場合である。この場合、排気温度が蓄熱部材温度よりも低い場合は、切替弁30を閉じられる。排気が直接的には触媒担持体16に導入されず、副流路24において、蓄熱部材40の熱を受けて昇温される。昇温された排気が触媒担持体16に導入されるので、排気が蓄熱部材40で昇温されない場合と比較して、触媒担持体16の温度低下を抑制できる。これに対し、排気温度が蓄熱部材温度よりも高ければ、切替弁30が開かれ、排気が直接的に触媒担持体16に導入される。蓄熱部材40よりも相対的に高温である排気が蓄熱部材40で温度低下されることなく触媒担持体16に導入されることで、触媒の温度低下を抑制できる。
【0078】
条件(9)は、排気温度及び触媒温度が閾値温度よりも高く、蓄熱部材温度が閾値温度よりも低い場合である。この場合、切替弁30は閉じられるので、蓄熱部材40によって温度低下された排気が触媒担持体16に導入され、触媒の過度の昇温を抑制できる。
【0079】
以上説明したように、第三実施形態の排気浄化装置72では、エンジンの動作に加えて、排気温度、蓄熱部材温度及び触媒温度に基づき、切替弁30、上流開閉弁64及び下流開閉弁66を制御することで、触媒の温度を適切に制御できる。
【0080】
第一〜第三実施形態において、副流路24の構造は、上記したものに限定されず、
図6に示す第一変形例や、
図7に示す第二変形例の構造を採り得る。
【0081】
図6に示す第一変形例の排気浄化装置82では、外筒84が、一対の平行な平坦部86を有している。平坦部86の間隔は、太径配管14Bの外径と等しく、平坦部86は幅方向(矢印W1方向)の中央で太径配管14Bに接触している。そして、中間筒88も、平坦部86の間に位置するように、断面にて左右2つの円弧形状に形成されている。
【0082】
第一変形例では、外筒84の高さが、第一実施形態の外筒18の高さよりも低い。したがって、第一変形例では、排気浄化装置82を、その周囲の部材との干渉を避けて配置することができ、配置の自由度が高い。
【0083】
図7に示す第二変形例の排気浄化装置92では、外筒94が、平坦部86に加えて、さらに、一対の平行な平板部96を有しており、外筒94は、流れ方向と直交する断面で見て長方形状である。また、中間筒98も、外筒94の平板部96と平行な平坦部100を有している。さらに、中間筒98と太径配管14Bの間に、平坦部100と平行な隔壁102が形成されている。
【0084】
第二変形例では、このように、外筒94が流れ方向と直交する断面で見て長方形状であり、曲面部分が存在しない。また。中間筒98にも曲線部分が存在しない。したがって、外筒94及び中間筒98の成形が容易であり、排気浄化装置92を低コストで製造できる。
【0085】
上記した各実施形態及び変形例の排気浄化装置において、蓄熱材としては、高温の排気からの熱を受けて蓄熱することができると共に、低温の排気に対して放熱できれば特に限定されない。たとえば、100℃以上600℃以下の範囲に融点がある溶融塩を用いることができる。溶融塩は、常温で固体の塩や酸化物を、加熱により融解して液体にした物質であり、陽イオンと陰イオンとで構成されている。そして、相変化(融解、一次転移又は二次転移)に伴ってエンタルピーが変化し、蓄熱及び放熱する。
【0087】
上記の表2から分かるように、上記各実施形態において実際に蓄熱及び放熱する際の相変化は、固相と液相との相転移を伴う融解であってもよく、相変化時には蓄熱材は潜熱として蓄熱及び放熱する。これに対し、固相と液相との相転移を伴わない相変化で蓄熱及び放熱してもよい。
【0088】
これらの溶融塩において、特に、相変化温度が100℃以上600℃以下の範囲の溶融塩は、排気との熱交換を効率よく行うことができ、各実施形態及び変形例の排気浄化装置に好ましく適用できる。
【0089】
なお、溶融塩の種類によっては、相変化によって体積変化する溶融塩もある。体積変化する溶融塩を用いる場合は、収容部材42において、溶融塩の体積変化を吸収できるように十分な容積を確保しておけばよい。