(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2のLC共振回路は、第10のインダクタンス、第11のインダクタンス、第12のインダクタンス、第7のキャパシタンスおよび第8のキャパシタンスを内部に含み、
前記第10のインダクタンスおよび前記第7のキャパシタンスの直列回路と前記第11のインダクタンスとは、この順で、前記2つの直流入力端子のうちの一方の直流入力端子と前記スイッチング素子の両端のうちの一端との間に直列に接続され、
前記2つの直流入力端子のうちの他方の直流入力端子と前記スイッチング素子の両端のうちの他端とが直接接続され、
前記第12のインダクタンスは、前記直列回路に並列接続され、
前記第8のキャパシタンスは、前記直列回路および前記第11のインダクタンスの接続点と前記スイッチング素子の前記他端との間に接続されている請求項1記載の電力変換装置。
前記第1のLC共振回路に含まれている前記キャパシタンスおよび前記インダクタンスは、前記スイッチング素子の一端と前記2つの交流出力端子のうちの一方の交流出力端子との間の第1経路内、および当該スイッチング素子の他端と当該2つの交流出力端子のうちの他方の交流出力端子との間の第2経路内に分散して配設された第9のキャパシタンスおよび第13のインダクタンスで構成されている請求項1から7のいずれかに記載の電力変換装置。
【背景技術】
【0002】
高周波帯域で動作するRFパワーアンプ、電力変換回路として、高変換効率の共振インバータまたは共振コンバータ回路がよく知られている(下記特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1には、
図10に示すように、シングルエンドスイッチング素子105と負荷ネットワークとによって構成されて、直流入力端子102a,102b間に入力される直流入力電圧V1を交流出力電圧V2に変換して出力端子103a,103bから負荷抵抗108に出力する共振インバータ101aの技術が開示されている。この場合、負荷ネットワークは、直流入力端子102a,102bのうちの高電位側の直流入力端子102aとスイッチング素子105の一端との間に接続された単一部品としてのインダクタ104と、スイッチング素子105の両端間に接続されたキャパシタンスと、出力端子103a,103bのうちの出力端子103aとスイッチング素子105の一端との間に接続されたLC共振回路(キャパシタンス106とインダクタンス107の直列回路)とを含んで構成されている。また、スイッチング素子105の他端、低電位側の直流入力端子102bおよび出力端子103bは、共通グランドGに接続されている。この共振インバータ101aでは、このスイッチング素子105の電圧V3はスイッチング素子105に接続した負荷ネットワークの応答特性によって決定される。スイッチング素子105のOFF期間にスイッチング素子105の両端間に印加される電圧V3は、スイッチング素子105のOFF直後から緩やかに上昇し、スイッチング素子105のONの直前には、電圧値及び時間に対する電圧変化率も略零となる動作をする。
【0004】
よって、特許文献1の共振インバータ101aでは、スイッチング素子105のスイッチングによるスイッチング素子105の両端間に接続されたキャパシタンスに蓄積されているエネルギーの放電損失が無いため、高周波スイッチング動作が可能になる。この利点により、特許文献1の共振インバータ101aは、通信システムのRFパワーアンプや、後段に整流平滑回路を付ける高周波スイッチング電源まで幅広く使われている。しかし、特許文献1の共振インバータ101aでは、スイッチング素子105のOFF期間中にスイッチング素子105の両端間に印加される電圧ピーク値が電圧共振によって直流入力電圧V1の略3.6倍まで上昇する。
【0005】
一方、特許文献2には、
図11に示すように、特許文献1のインバータ特性を維持すると同時に、スイッチング素子105の両端にスイッチング周波数の2次高調波成分を抑えるLC共振回路(インダクタンス113とキャパシタンス114の直列回路)を付けることによって、スイッチング素子105の両端間に印加される電圧ピーク値を直流入力電圧V1の略2倍まで抑えることを可能とする共振コンバータ101bの技術が開示されている。この共振コンバータ101bの負荷ネットワークは、上記した共振インバータ101aの負荷ネットワークの構成に加えて、上記したインダクタンス113およびキャパシタンス114と共に、共振インバータ101aのLC共振回路(キャパシタンス106とインダクタンス107の直列回路)と出力端子103a,103bとの間に配設された交直変換回路(並列接続されたインダクタンス109およびキャパシタンス110で構成されるLC共振回路と、キャパシタンス111および接合容量を含むダイオード112で構成される整流平滑回路とを含む回路)を有して、直流入力端子102a,102b間に入力される直流入力電圧V1を直流出力電圧V4に変換して出力端子103a,103bから負荷抵抗108に出力する。なお、共振インバータ101aと同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略した。この特許文献2の共振コンバータ101bでも、特許文献1の共振インバータ101aと同じようにRF帯域までの高周波スイッチング動作が可能である。
【0006】
また、本願出願人は、
図12に示すように、上記した共振インバータ101aにおけるインダクタ104に代えて、インダクタ115,116およびキャパシタンス117で構成されるT型のLC共振回路を、直流入力端子102a,102bと、スイッチング素子105の両端との間に接続して構成された共振コンバータ101cを開発した。この共振コンバータ101cでも、スイッチング素子105の両端間に発生する電圧波形に含まれているスイッチング周波数の2次高調波成分を抑えることが可能なため、スイッチング素子105の両端間に印加される電圧ピーク値を直流入力電圧V1の略2倍まで抑えることが可能となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年では、上記した共振インバータ101a,101b,101cなどの電力変換回路の更なる高効率化、およびスイッチング素子105の高信頼性化が望まれている。高効率化のためには、スイッチング素子105の両端間に発生する電圧共振時の電圧ピーク値をさらに低下させ、これにより、より低いON抵抗のスイッチング素子(低いON抵抗のスイッチング素子は一般的に低耐圧である)を使用できるようにすることが有効である。また、このように電圧ピーク値をさらに低下させることは、スイッチング素子105での電圧のディレーティング率を低下させることになり、スイッチング素子105の高信頼性化にも寄与するため、この点でも有効である。しかしながら、背景技術として上記したいずれの技術も、この点で不十分であるという課題がある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、更なる高効率化およびスイッチング素子の高信頼性化を図り得る電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、本発明に係る電力変換装置では、直流電圧が入力される正負2つの直流入力端子と、交流電圧を出力する2つの交流出力端子と、スイッチング素子と、前記スイッチング素子の両端間に接続された第1の共振キャパシタンスと、前記交流出力端子間に前記スイッチング素子と共に直列に接続された第1のLC共振回路と、前記2つの直流入力端子と前記スイッチング素子の両端との間に接続された第2のLC共振回路とを備え、前記第1のLC共振回路は、インダクタンスとキャパシタンスの直列回路を含む電流経路を有し、前記第2のLC共振回路は、前記2つの直流入力端子間が短絡状態のときの前記スイッチング素子の両端側から見たインピーダンスの周波数特性において、低域側から高域側に向けて第1の共振周波数、第2の共振周波数、第3の共振周波数および第4の共振周波数を有して、前記第1の共振周波数が前記スイッチング素子のスイッチング周波数より高くなり、前記第2の共振周波数が当該スイッチング周波数の略2倍の共振周波数となり、かつ前記第4の共振周波数が当該スイッチング周波数の略4倍の共振周波数となると共に、前記インピーダンスが前記第1の共振周波数および前記第3の共振周波数で極大となり、かつ前記第2の共振周波数および前記第4の共振周波数で極小となるように形成されている。
【0011】
この場合、前記第2のLC共振回路は、第1のインダクタンス、第2のインダクタンス、第3のインダクタンス、第1のキャパシタンスおよび第2のキャパシタンスを内部に含み、前記第1のインダクタンス、前記第2のインダクタンスおよび前記第3のインダクタンスは、この順で、前記2つの直流入力端子のうちの一方の直流入力端子と前記スイッチング素子の両端のうちの一端との間に直列に接続され、前記2つの直流入力端子のうちの他方の直流入力端子と前記スイッチング素子の両端のうちの他端とが直接接続され、前記第1のキャパシタンスは、前記第1のインダクタンスおよび前記第2のインダクタンスの接続点と前記スイッチング素子の前記他端との間に接続され、前記第2のキャパシタンスは、前記第2のインダクタンスに並列接続されている。
【0012】
あるいは、前記第2のLC共振回路は、第4のインダクタンス、第5のインダクタンス、第6のインダクタンス、第3のキャパシタンスおよび第4のキャパシタンスを内部に含み、前記第4のインダクタンス、前記第5のインダクタンスおよび前記第6のインダクタンスは、この順で、前記2つの直流入力端子のうちの一方の直流入力端子と前記スイッチング素子の両端のうちの一端との間に直列に接続され、前記2つの直流入力端子のうちの他方の直流入力端子と前記スイッチング素子の両端のうちの他端とが直接接続され、前記第3のキャパシタンスは、前記第4のインダクタンスおよび前記第5のインダクタンスの接続点と前記スイッチング素子の前記他端との間に接続され、前記第4のキャパシタンスは、前記第5のインダクタンスおよび前記第6のインダクタンスの接続点と前記スイッチング素子の前記他端との間に接続されている。
【0013】
あるいは、前記第2のLC共振回路は、第7のインダクタンス、第8のインダクタンス、第9のインダクタンス、第5のキャパシタンスおよび第6のキャパシタンスを内部に含み、前記第7のインダクタンス、前記第5のキャパシタンスおよび前記第8のインダクタンスは、この順で、前記2つの直流入力端子のうちの一方の直流入力端子と前記スイッチング素子の両端のうちの一端との間に直列に接続され、前記2つの直流入力端子のうちの他方の直流入力端子と前記スイッチング素子の両端のうちの他端とが直接接続され、前記第9のインダクタンスは、前記第7のインダクタンスおよび前記第5のキャパシタンスの直列回路に並列接続され、前記第6のキャパシタンスは、第7のインダクタンスおよび前記第5のキャパシタンスの接続点と前記スイッチング素子の前記他端との間に接続されている。
【0014】
あるいは、前記第2のLC共振回路は、第10のインダクタンス、第11のインダクタンス、第12のインダクタンス、第7のキャパシタンスおよび第8のキャパシタンスを内部に含み、前記第10のインダクタンスおよび前記第7のキャパシタンスの直列回路と前記第11のインダクタンスとは、この順で、前記2つの直流入力端子のうちの一方の直流入力端子と前記スイッチング素子の両端のうちの一端との間に直列に接続され、前記2つの直流入力端子のうちの他方の直流入力端子と前記スイッチング素子の両端のうちの他端とが直接接続され、前記第12のインダクタンスは、前記直列回路に並列接続され、前記第8のキャパシタンスは、前記直列回路および前記第11のインダクタンスの接続点と前記スイッチング素子の前記他端との間に接続されている。
【0015】
本発明に係る電力変換装置では、前記スイッチング素子は、E級スイッチング動作をする構成としている。
【0016】
本発明に係る電力変換装置では、前記第2のLC共振回路は、内部に磁気結合されているインダクタンスを含んでいる。
【0017】
本発明に係る電力変換装置では、前記第1のLC共振回路に含まれている前記キャパシタンスおよび前記インダクタンスは、前記スイッチング素子の一端と前記2つの交流出力端子のうちの一方の交流出力端子との間の第1経路内、および当該スイッチング素子の他端と当該2つの交流出力端子のうちの他方の交流出力端子との間の第2経路内に分散して配設された第9のキャパシタンスおよび第13のインダクタンスで構成されている。
【0018】
本発明に係る電力変換装置では、上記のいずれかの電力変換装置と、第3のLC共振回路および整流回路を備えて構成されると共に、前記電力変換装置の前記交流出力端子間に接続されて、当該交流出力端子間から出力される前記交流電圧を直流電圧に変換して出力する交直変換回路とを備えている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、共振インバータまたは共振コンバータ等の電力変換装置において、2つの直流入力端子とスイッチング素子の両端との間に第2のLC共振回路を接続すると共に、この第2のLC共振回路を、2つの直流入力端子間が短絡状態のときのスイッチング素子の両端側から見たインピーダンスの周波数特性において、低域側から高域側に向けて第1の共振周波数、第2の共振周波数、第3の共振周波数および第4の共振周波数を有して、第1の共振周波数がスイッチング素子のスイッチング周波数より高くなり、第2の共振周波数がスイッチング周波数の略2倍の共振周波数となり、かつ第4の共振周波数がスイッチング周波数の略4倍の共振周波数となると共に、インピーダンスが第1の共振周波数および第3の共振周波数で極大となり、かつ第2の共振周波数および第4の共振周波数で極小となるように形成したことにより、スイッチング素子のOFF時にその両端間に印加される電圧波形のピーク値をより低くできるため、低耐圧故に低ON抵抗のスイッチング素子の使用が可能となり、その効果として高効率な電力変換装置を提供することができる。また、このようにスイッチング素子に印加される電圧波形のピーク値をより低くできることは、スイッチング素子での電圧のディレーティング率を低下させることができることから、スイッチング素子の高信頼性化を図ることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、本発明の対象は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれると共に、その構成要素は、適宜組み合わせることが可能である。
【0022】
図面を参照して、発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
まず、
図1を参照して、本発明の好適な実施形態に係る電力変換装置の全体構成について、電力変換装置の一例としてのインバータ装置1aを挙げて説明する。このインバータ装置1aは、負荷ネットワーク4及びスイッチング素子5とを備えている。
【0024】
また、インバータ装置1aは、一対の直流入力端子2a,2b(以下、特に区別しないときには「直流入力端子2」ともいう)、及び一対の交流出力端子3a,3b(以下、特に区別しないときには「交流出力端子3」ともいう)を備えている。
【0025】
具体的には、一対の直流入力端子2a,2bの間には、基準電位(本例では共通グランドG)に接続された直流入力端子2bを低電位側として、直流入力電圧(直流電圧)V1が入力される。一対の交流出力端子3a,3bの間には、基準電位(本例では共通グランドG)に接続された交流出力端子3bを基準として交流出力端子3aの電位が正負に変化する交流出力電圧V2(交流電圧)が出力される。また、このインバータ装置1aには負荷抵抗6が接続される。
【0026】
この場合、負荷抵抗6は交流出力端子3a,3b間に接続されて、この負荷抵抗6には、直流入力端子2に入力された直流入力電圧V1から変換された交流出力電圧V2が供給される。
【0027】
スイッチング素子5は、MOSFETやバイポートランジスタなどで構成されている。このため、後述するスイッチング素子5の両端とは、MOSFETでのドレイン端子およびソース端子であり、バイポーラトランジスタでのコレクタ端子およびエミッタ端子である。インバータ装置1aは、スイッチング素子5のON/OFFにより、直流入力端子2から入力される直流入力電圧V1を交流出力電圧V2に変換して交流出力端子3から出力する。
【0028】
負荷ネットワーク4は、最適化インピーダンス特性Zを有する第2のLC共振回路41と、第1の共振キャパシタンス42(スイッチング素子5の出力容量を含む)と、第1のLC共振回路43とを備えた、スイッチング素子5のON/OFFに対する応答負荷である。
【0029】
第2のLC共振回路41は、4つの外部接続端子(第1接続部41a、第2接続部41b、第3接続部41cおよび第4接続部41d)を有する2端子対回路網(4端子回路網)で構成されている。なお、第2のLC共振回路41は、内部に含むインダクタンスとキャパシタンスを集約化して構成された3端子素子または4端子素子の1つの電子部品としての複合共振インピーダンス素子としてもよい。
【0030】
また、第2のLC共振回路41は、一例として、第1接続部41aが一対の直流入力端子2a,2bのうちの一方の直流入力端子(本例では直流入力端子2a)に接続され、第2接続部41bが一対の直流入力端子2a,2bのうちの他方の直流入力端子(本例では直流入力端子2b)に接続され、第3接続部41cがスイッチング素子5の両端のうちの一端に接続され、かつ第4接続部41dがスイッチング素子5の両端のうちの他端に接続されることで、一対の直流入力端子2a,2bとスイッチング素子5の両端との間に接続されている。また、第2のLC共振回路41では、第2接続部41bおよび第4接続部41dが回路内部で同電位となるように接続される(直接接続される。つまり、配線や導体パターンなどを介して直接的に接続される)ことにより、各接続部41b,41dは共に共通グランドGに接続されている。したがって、各接続部41b,41dのいずれか一方の接続部だけとする構成とすることもできる。
【0031】
また、第2のLC共振回路41は、2つの直流入力端子2a,2b間が短絡状態のとき(例えば、直流入力端子2a,2b間に直流入力電圧V1を出力する不図示の電源の出力インピーダンスが低インピーダンスのとき。つまり、直流入力端子2a,2b間が等価的に短絡状態のとき)に、スイッチング素子5の両端側から見たインピーダンス(つまり、2つの接続部41c,41d間のインピーダンス)の周波数特性として、
図2に示すような最適化インピーダンス特性Zを有するように形成されている。
【0032】
具体的に、第2のLC共振回路41のこの周波数特性(最適化インピーダンス特性Z)について説明すると、
図2に示すように、低域側から高域側に向けて順に、第1の共振周波数、第2の共振周波数、第3の共振周波数および第4の共振周波数を有している。また、第1の共振周波数は、スイッチング素子5のスイッチング周波数より高くなり、第2の共振周波数がスイッチング周波数の略2倍の周波数となり、かつ第4の共振周波数がスイッチング周波数の略4倍の周波数となっている。また、インピーダンスは、第1の共振周波数および第3の共振周波数で極大となり、かつ第2の共振周波数および第4の共振周波数で極小となっている。
【0033】
スイッチング素子5の両端間には、OFF期間において、スイッチング周波数と同じ周波数で電圧V3が発生するが、第2のLC共振回路41が上記したようにスイッチング周波数の偶数倍(上記の例では、2倍および4倍)でインピーダンスが極小となり、この結果、スイッチング素子5の両端間に発生する電圧V3の波形を構成する高調波成分のうちの偶数成分(上記の例では、2次高調波成分および4次高調波成分)が第2のLC共振回路41によって減衰させられる。一方、第2のLC共振回路41は、上記したように第1の共振周波数および第3の共振周波数で極大となることから、これに起因して、電圧V3の波形を構成する高調波成分のうちの奇数成分(主として3次高調波成分)は基本波成分(1次高調波成分)と共に減衰させられずに残る。この結果、
図8に示すように、2次高調波成分および4次高調波成分が減衰させられた電圧V3の波形W1(基本波成分と3次高調波成分で形成される波形)は、2次高調波成分だけを減衰させたときの波形W2(基本波成分と、3次および4次高調波成分で形成される波形)と比較して、立ち上がりおよび立ち下がりがより急峻となり、かつ中間部分での振動の振幅が抑えられることで、より矩形波形に近い形状となることから、電圧ピーク値が直流入力電圧V1の略2倍まで抑えられている波形W2よりもさらにその電圧ピーク値が低く抑えられている。したがって、このインバータ装置1aでは、低耐圧故に低ON抵抗のスイッチング素子がスイッチング素子5として使用されている。また、このインバータ装置1aでは、このようにスイッチング素子5の両端間に印加される電圧ピーク値をより低くできるため、スイッチング素子5での電圧のディレーティング率を低下させることができることから、スイッチング素子5の高信頼性化が図られている。
【0034】
次に、この最適化インピーダンス特性Zを有する第2のLC共振回路41の具体的な回路構成の実施例について、
図3から
図6までを用いて説明する。
【0035】
図3は第2のLC共振回路41の第1実施例である。この第2のLC共振回路41は、第1のインダクタンス411、第2のインダクタンス412、第3のインダクタンス413、第1のキャパシタンス431および第2のキャパシタンス432を内部に含んで構成されている。この場合、第1のインダクタンス411、第2のインダクタンス412および第3のインダクタンス413は、この順で、第1接続部41a(直流入力端子2a,2bのうちの一方の直流入力端子2aに接続される接続部)と第3接続部41c(スイッチング素子5の両端のうちの一端に接続される接続部)との間に直列に接続されている。また、第2接続部41b(直流入力端子2a,2bのうちの他方の直流入力端子2bに接続される接続部)と第4接続部41d(スイッチング素子5の両端のうちの他端に接続される接続部)とは直接接続されている。また、第1のキャパシタンス431は、第1のインダクタンス411および第2のインダクタンス412の接続点P1と上記したようにスイッチング素子の他端に接続される第4接続部41dとの間に接続されている。また、第2のキャパシタンス432は、第2のインダクタンス412に並列接続されている。
【0036】
図4は第2のLC共振回路41の第2実施例である。この第2のLC共振回路41は、第4のインダクタンス414、第5のインダクタンス415、第6のインダクタンス416、第3のキャパシタンス433および第4のキャパシタンス434を内部に含んで構成されている。この場合、第4のインダクタンス414、第5のインダクタンス415および第6のインダクタンス416は、この順で、第1接続部41aと第3接続部41cとの間に直列に接続されている。また、第2接続部41bと第4接続部41dとは直接接続されている。また、第3のキャパシタンス433は、第4のインダクタンス414および第5のインダクタンス415の接続点P2と第4接続部41dとの間に接続されている。また、第4のキャパシタンス434は、第5のインダクタンス415および第6のインダクタンス416の接続点P3と第4接続部41dとの間に接続されている。
【0037】
図5は第2のLC共振回路41の第3実施例である。この第2のLC共振回路41は、第7のインダクタンス417、第8のインダクタンス418、第9のインダクタンス419、第5のキャパシタンス435および第6のキャパシタンス436を内部に含んで構成されている。この場合、第7のインダクタンス417、第5のキャパシタンス435および第8のインダクタンス418は、この順で、第1接続部41aと第3接続部41cとの間に直列に接続されている。また、第2接続部41bと第4接続部41dとは直接接続されている。また、第9のインダクタンス419は、第7のインダクタンス417および第5のキャパシタンス435の直列回路に並列接続されている。また、第6のキャパシタンス436は、第7のインダクタンス417および第5のキャパシタンス435の接続点P4と第4接続部41dとの間に接続されている。
【0038】
図6は第2のLC共振回路41の第4実施例である。この第2のLC共振回路41は、第10のインダクタンス420、第11のインダクタンス421、第12のインダクタンス422、第7のキャパシタンス437および第8のキャパシタンス438を内部に含んで構成されている。この場合、第10のインダクタンス420および第7のキャパシタンス437の直列回路と第11のインダクタンス421とは、この順で、第1接続部41aと第3接続部41cとの間に直列に接続されている。なお、第10のインダクタンス420および第7のキャパシタンス437の直列回路では、
図6に示す構成(第10のインダクタンス420を第1接続部41a側に配置する構成)に限定されず、図示はしないが、第10のインダクタンス420と第7のキャパシタンス437の位置を入れ替えてもよいのは勿論である。また、第2接続部41bと第4接続部41dとは直接接続されている。また、第12のインダクタンス422は、上記の直列回路に並列接続されている。また、第8のキャパシタンス438は、上記の直列回路および第11のインダクタンス421の接続点P5と第4接続部41dとの間に接続されている。
【0039】
また、第2のLC共振回路41は、その内部の複数のインダクタにおいて磁気結合されているインダクタを含んでいてもよい。一例として
図3の回路を例に挙げて説明すると、第1のインダクタンス411、第2のインダクタンス412および第3のインダクタンス413のうちの少なくとも2つが、互いに磁気結合されたインダクタで構成されていてもよい。これにより、簡単な回路構成で4つの共振周波数(第1共振周波数〜第4共振周波数)を有する第2のLC共振回路を実現すると同時に磁気コアの個数を減らして、低コストと最適化が容易となる。また、インダクタのコアのコア特性が変動した時に、個々のインダクタとしての素子特性の変動差を小さく抑える事が可能となり動作の安定性に寄与する。
【0040】
この構成により、スイッチング素子5がONの時には、直流入力端子2a→第2のLC共振回路41内(第1接続部41a→第3接続部41c)→スイッチング素子5→第2のLC共振回路41内(第4接続部41d→第2接続部41b)→直流入力端子2bの直流電流ループが形成される。一方、スイッチング素子5がOFFの時には、直流入力端子2a→第2のLC共振回路41内(第1接続部41a→第3接続部41c)→第1の共振キャパシタンス42→第2のLC共振回路41内(第4接続部41d→第2接続部41b)を経由して直流入力端子2bに戻る電流経路(電流ループ)が形成されると共に、直流入力端子2a→第2のLC共振回路41内(第1接続部41a→第2接続部41bで、例えば、第1のキャパシタンス431などを経由)して直流入力端子2bに戻る電流経路(電流ループ)の2つの電流経路が形成される。
【0041】
第1の共振キャパシタンス42は、
図1に示すように、スイッチング素子5の両端に接続された共振スイッチングのための共振キャパシタンスであるが、スイッチング素子5が半導体素子の場合には、スイッチング素子5が持つ接合部のキャパシタンスを含めても良いし、接合部のキャパシタンスのみで構成しても良い。
【0042】
第1のLC共振回路43は、一例として、
図1に示すように、キャパシタンス43aとインダクタンス43bとを含んで構成されている。この場合、キャパシタンス43aおよびインダクタンス43bは、スイッチング素子5の両端と交流出力端子3a,3bを相互に接続する経路(同図では、スイッチング素子5の一端と交流出力端子3aとを接続する経路、およびスイッチング素子5の他端と交流出力端子3bとを接続する経路の双方で形成される後述の交流電流ループ)内に、直列に接続されている。
【0043】
図1のインバータ装置1aでは、一例として、第1のLC共振回路43は、互いに直接接続されたキャパシタンス43aおよびインダクタンス43bの直列回路で構成されて、スイッチング素子5の一端と交流出力端子3aとを接続する経路内に接続されている。同図では一例として、この直列回路を構成するキャパシタンス43aの一端がスイッチング素子5の一端に接続され、かつインダクタンス43bの一端が交流出力端子3aに接続された状態でこの経路内に接続されている。これにより、スイッチング素子5の他端と交流出力端子3bとは直接接続されている。
【0044】
この構成では、スイッチング素子がONの時、交流出力端子3a⇔第1のLC共振回路43⇔スイッチング素子5⇔交流出力端子3bの交流電流ループが形成される。
図1では、上記の直列回路で構成された第1のLC共振回路43が交流出力端子3aに接続されているので、上記の交流電流ループとなるが、この第1のLC共振回路43が、スイッチング素子5の他端と交流出力端子3bとを接続する経路内に接続される構成でもよく、この場合の交流電流ループは、交流出力端子3a⇔スイッチング素子5⇔第1の共振回路43⇔交流出力端子3bとなる。また第1のLC共振回路43を構成するキャパシタンス43aとインダクタンス43bは、この交流電流ループ内で直列に接続されていれば良く、上記したような互いに直接接続(直接的に接続)された状態で経路に接続される構成に代えて、スイッチング素子5の一端と交流出力端子3aとを接続する経路(第1経路)と、スイッチング素子5の他端と交流出力端子3bとを接続する経路(第2経路)とに分散させて接続(配設)される構成でも良い。
【0045】
続いて、
図1に示したインバータ装置1aの基本動作について、
図7の定常動作波形図を参照して、各期間における動作波形について詳細に説明する。
【0046】
各期間における動作波形について、まずは、時間t0から時間t1までの期間での動作について説明する。時間t(=t0)の時、スイッチング素子5のON/OFFを制御する不図示の制御回路から出力される駆動信号電圧Vpは、スイッチング素子5をONとするためハイレベルになり、時間t(=t1)までにハイレベルを維持する。よって、時間t0から時間t1までの期間は、スイッチング素子5がONし、スイッチング素子5の両端間に印加される電圧V3は零であり、第1の共振キャパシタンス42に流れる電流icは零である。スイッチング素子5に流れる電流isは、負荷ネットワーク4の特性によって、零から負値へ遷移し、その後、零を経由して正値のピーク値まで緩やかに上昇する。入力電流として、最適化インピーダンス特性Zを有する第2のLC共振回路41に流れる電流i1は共振電流となるため1つの正の共振ピークを有する。一方、この期間での出力電流i2は、零をはさんだ正負の正弦波電流で、この期間(t0〜t1)内で負のピーク値を有する。
【0047】
次に、
図7の時間t1から時間t2までの期間の動作について説明する。時間t(=t1)でスイッチング素子5への駆動信号電圧Vpは、スイッチング素子5をOFFとするためローレベルになり、時間t(=t2)までローレベルを維持する。したがって、時間t1から時間t2までの間にスイッチング素子5がOFFし、このOFFになった直後からスイッチング素子5の両端間に印加される電圧V3は、負荷ネットワーク4の特性によって、共振して零から直流入力電圧V1の略2倍の振幅電圧まで緩やかに上昇し、5つの共振ピーク(極大となる1回目の共振ピーク、極小となる2回目の共振ピーク、極大となる3回目の共振ピーク、極小となる4回目の共振ピーク、および極大となる5回目の共振ピーク)を経て、降下して、時間t(=t2)で零に戻ると共に、時間に対する導関数(時間に対する電圧変化率)も零となる。つまり、スイッチング素子5は、E級スイッチングで高効率でのスイッチング動作を行う。この場合、電圧V3は、上記したように
図8に示す波形W1(電圧値がより低く抑えられた波形(矩形波形に近い波形))となる。
【0048】
また、この期間内にスイッチング素子5をOFFとさせることで、それまでスイッチング素子5に流れていた電流isは零となり、第1の共振キャパシタンス42に流れるicに切替わる。入力電流として、最適化インピーダンス特性Zを有する第2のLC共振回路41に流れる電流i1は4つの共振ピーク(極小となる1回目の負の共振ピーク、極大となる2回目の正の共振ピーク、極小となる3回目の負の共振ピーク、および極大となる4回目の正の共振ピーク、)を有する共振電流となる。一方、出力電流i2は先の期間(t0〜t1)内で負のピーク値となった直後から上昇する。また、出力電流i2は、零を挟んだ正負の正弦波電流であり、この期間(t1〜t2)内に共振し、正のピーク値を有する。
【0049】
その後の期間(t2〜t3)での動作は、前述した期間(t0〜t1)での動作と同様であり、さらにその後の期間(t3〜t4)での動作は、前述した期間(t1〜t2)での動作と同様である。つまり、期間(t0〜t2)での動作が、それ以降の期間においても繰り返される。
【0050】
このように、このインバータ装置1aでは、スイッチング素子5への駆動信号電圧Vpの出力によってスイッチング素子5のON/OFFを繰り返させることで、直流入力電圧V1から交流出力電圧V2への変換が可能である。ここで、最適化インピーダンス特性Zを有する第2のLC共振回路41を用いることで、スイッチング素子5のOFF時においてその両端間に印加される電圧V3の波形を構成する高調波成分のうちの偶数成分(上記の例では、2次高調波成分および4次高調波成分)を減衰させることができる。このため、スイッチング素子5のOFF時においてその両端間に印加されるピーク電圧(電圧V3のピーク電圧値)を、直流入力電圧V1の略2倍の振幅からさらに低くできる。その効果として、スイッチング素子5に使用するスイッチング素子の耐圧を下げ得ることに付随してより低ON抵抗のスイッチング素子を選定できることになる。その結果、スイッチング素子5における導通損失(ON損失)を減らすことを達成でき、電力変換装置の変換効率をさらに高めることが可能となる。また、スイッチング素子5での電圧のディレーティング率を低下させることができることから、スイッチング素子5の高信頼性化を図ることもできる。また、この第2のLC共振回路41を用いることで高周波のスイッチング動作において最適化が容易となる。
【0051】
以上、スイッチング素子5をON/OFF制御する駆動信号電圧VpのON/OFF時間が同じ場合の実施例である。スイッチング素子5のON時間とOFF時間が異なる場合は各部の動作電圧と動作電流ピーク時間が異なる場合もある。
【0052】
また、最適化インピーダンス特性Z有する第2のLC共振回路41を用いた実施例は、
図1に示すインバータ装置1a(入力の直流電圧を交流のAC電圧に変換できるインバータ回路の一例)だけに限定されるものではなくて、例えば
図9に示すコンバータ装置1b(入力直流電圧を出力直流電圧に変換する電力変換装置の一例)への適用も可能である。
【0053】
図9のコンバータ装置1bは、
図1のインバータ装置1aの交流出力端子3a,3bに、この交流出力端子3a,3bから出力される交流出力電圧V2を直流出力電圧V4に変換して直流出力端子7a,7b間から出力する交直変換回路(キャパシタンスおよびインダクタンスを含む第3のLC共振回路45と、整流素子および平滑素子を含んだ整流平滑回路46とを備えた変換回路)を付加したものである。また、負側の直流入力端子2bと負側の直流出力端子7bは、共通グランドGに接続されている。その他の構成は、
図1と同様である。第3のLC共振回路45は、キャパシタンスとインダクタンスとが並列に接続されて構成され、整流平滑回路46は、接合容量を含むダイオード等の整流素子とコンデンサ等の平滑素子とが直列に接続されて構成されている。また、直流出力電圧V4は整流平滑回路46(具体的には、この整流平滑回路46の平滑素子の2つの端子に接続された直流出力端子7a,7b)から出力される。これにより、直流出力端子7a,7bに負荷抵抗6を接続したときに、負荷抵抗6には直流出力電圧V4が供給される。また、
図9の出力電流i3は交流正弦波ではなくて、リップル成分を有する直流電流となっている。
【0054】
なお、電力変換装置としてのコンバータ装置は、上記のコンバータ装置1bの構成に限定されるものではなく、第1のLC共振回路41、第3のLC共振回路45、および整流平滑回路46の組合せによって、降圧形、昇圧形、および昇降圧形のコンバータ装置を構成する事も可能である。また、整流平滑回路46の前段に絶縁トランスを挿入する構成とすることで入力直流電圧と出力直流電圧間を絶縁したコンバータ装置を構成する事も可能である。
【0055】
以上、本発明の電力変換装置について、種々の実施の形態を挙げて説明したが、上記実施の形態の説明に限定されず種々の変形実施が可能である。例えば、
図3〜
図6に示す第2のLC共振回路41の各実施例のように第2接続部41bと第4接続部41dが直接接続されることで、
図1,9に示すように、直流入力端子2bと出力端子(交流出力端子3bや直流出力端子7b)が共通グランドGで繋がる構成を基本構成とする実施の形態について説明したが、グランドを共通としない構成(つまり、第2接続部41bと第4接続部41dが直接接続されないように構成されて、直流入力端子2bおよび出力端子(交流出力端子3bや直流出力端子7b)のいずれか一方が共通グランドGに繋がらない構成)を採用することもできる。
【0056】
この第2接続部41bと第4接続部41dが直接接続されない構成の第2のLC共振回路41とは、
図3〜
図6に示す第2のLC共振回路41の各実施例において、第1接続部41aと第2接続部41bとが入れ替わり、かつ第3接続部41cと第4接続部41dとが入れ替わったLC共振回路である。この構成の第2のLC共振回路では、直流入力端子2aとスイッチング素子5の一端とが直接接続される一方で、直流入力端子2bとスイッチング素子5の他端との間にはインダクタンスやキャパシタンス(例えば
図3の回路に適用したときには、第1のインダクタンス411、第2のインダクタンス412、第3のインダクタンス413および第2のキャパシタンス432)が接続されることから、直流入力端子2bおよび出力端子(交流出力端子3bや直流出力端子7b)のいずれか一方が共通グランドGに繋がらない構成となる。
【0057】
また、直流入力端子2bおよび出力端子(交流出力端子3bや直流出力端子7b)のいずれか一方が共通グランドGに繋がらない構成には、上記したように、第1のLC共振回路43を構成するキャパシタンス43aとインダクタンス43bを、スイッチング素子5の一端と交流出力端子3aとを接続する第1経路内と、スイッチング素子5の他端と交流出力端子3bとを接続する第2経路内とに分散させて配設する構成も含まれる。