特許第6812930号(P6812930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6812930
(24)【登録日】2020年12月21日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】回転コネクタ
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/027 20060101AFI20201228BHJP
   H01R 13/46 20060101ALI20201228BHJP
   H01R 35/04 20060101ALI20201228BHJP
   B62D 1/10 20060101ALI20201228BHJP
   H04B 10/114 20130101ALI20201228BHJP
【FI】
   B60R16/027 L
   H01R13/46 D
   H01R35/04 F
   B62D1/10
   H04B10/114
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-169440(P2017-169440)
(22)【出願日】2017年9月4日
(65)【公開番号】特開2019-43400(P2019-43400A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2019年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐分 主税
(72)【発明者】
【氏名】恒川 雄一
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−017179(JP,U)
【文献】 特開平08−185950(JP,A)
【文献】 特開2001−069657(JP,A)
【文献】 特開2006−339109(JP,A)
【文献】 特開平11−329651(JP,A)
【文献】 特開平04−218286(JP,A)
【文献】 特開2013−247758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/027
B62D 1/10
H01R 13/46
H01R 35/04
H04B 10/114
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の軸線上に位置して前記軸線周りに相対回転することが可能な第1回転体と第2回転体とを備える回転コネクタにおいて、
前記第1回転体側に設けられた機器と前記第2回転体側に設けられた機器とを光通信によって接続する光通信部が、前記第1回転体及び前記第2回転体に設けられているとともに、
前記第1回転体側に設けられた機器と前記第2回転体側に設けられた機器とを接続するための通信ケーブルが、前記第1回転体と前記第2回転体とに亘って延びるように設けられており、
前記第1回転体は車体に固定される一方、前記第2回転体は前記車体に対し回転可能に支持されたステアリングホイールに固定され、
前記光通信部は、前記第1回転体と前記第2回転体とのうちの一方に設けられて光信号を発する発光素子と、前記第1回転体と前記第2回転体とのうちの他方に設けられて前記発光素子から発した光信号を受信する受光素子と、を備えており、
前記通信ケーブルは、前記光通信部における前記発光素子及び前記受光素子の側方を通過する直線部を有しており、
前記第1回転体には、前記第1回転体と前記第2回転体との相対回転に基づき前記通信ケーブルにおける前記直線部以外の部分の巻き付け及び繰り出しを行うことにより、その相対回転に伴う前記通信ケーブルにおける前記直線部以外の部分に乱れが生じることを抑制する調整部が設けられており、
前記ステアリングホイールは、前記第1回転体及び前記第2回転体を貫通するステアリングシャフトによって前記車体に対し回転可能に支持されるものであり、
前記第1回転体は、前記第2回転体側に向けて開口するとともに内部に前記調整部が設けられている車体側ケースを備えるとともに、その車体側ケースと前記第2回転体との間に位置して前記車体側ケースに対し固定されている中間ケースを備えており、
前記第2回転体は、前記中間ケースと対向するステアリング側ケースと、そのステアリング側ケースから前記中間ケースの中央を通過するよう突出して前記車体側ケースに接するとともに前記ステアリングシャフトが貫通している円筒部と、を備えており、
前記光通信部は、前記発光素子と前記受光素子とのうちの一方が前記ステアリング側ケースに設けられており、他方が前記中間ケースに設けられているものであり、
前記通信ケーブルの直線部は、前記円筒部の外周面に沿って同円筒部の軸線方向に延びるよう設けられていることを特徴とする回転コネクタ。
【請求項2】
前記第1回転体と前記第2回転体との相対回転時に前記通信ケーブルの直線部が前記円筒部の径方向に変位することを抑制する抑制部を備えている請求項に記載の回転コネクタ。
【請求項3】
前記抑制部は、前記通信ケーブルにおける前記直線部をそれ以外の部分よりも硬い材料で形成することによって実現されている請求項に記載の回転コネクタ。
【請求項4】
前記抑制部は、前記円筒部の外周面に同円筒部の軸線方向に延びるよう形成されて前記通信ケーブルの直線部が嵌め込まれる溝である請求項に記載の回転コネクタ。
【請求項5】
前記車体側ケースは、前記ステアリングシャフトが貫通する円環状の内側壁部、及び、その内側壁部に対し同心円状に延びる外側壁部を有するものであって、それら内側壁部と外側壁部との前記中間ケース側の端部間が前記開口となっており、
前記調整部は、前記車体側ケースに設けられており、前記第1回転体と前記第2回転体との一方向への相対回転時に前記通信ケーブルの前記内側壁部の外周面に対する巻き付け及び前記外側壁部の内周面からの繰り出しを行う他、前記第1回転体と前記第2回転体との他方向への相対回転時に前記通信ケーブルの前記外側壁部の内周面に対する巻き付け及び前記内側壁部の外周面からの繰り出しを行うものであり、
前記中間ケースは、前記車体側ケースの前記開口を閉塞するよう同車体側ケースに対し固定されており、
前記第2回転体の円筒部は、前記車体側ケースの内側壁部における前記中間ケース側の端部に接しており、且つ、前記円筒部の外径が前記内側壁部の外径よりも大きくされている請求項に記載の回転コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
所定の部品に対し他の部品が回転可能に支持される構造において、それらの部品にそれぞれ設けられている機器同士を通信可能となるよう接続するための回転コネクタを設けることが知られている。なお、所定の部品に対し他の部品が回転可能に支持される構造としては、例えば車両における車体に対しステアリングホイールを回転可能にしたものがあげられる。
【0003】
上記回転コネクタは、同一の軸線上に位置して軸線周りに相対回転することが可能とされている第1回転体及び第2回転体を備える。第1回転体は上記所定の部品に固定される一方、第2回転体は上記所定の部品に対し回転可能に支持された上記他の部品に対し固定される。また、回転コネクタには、上記所定の部品に設けられた機器と上記他の部品に設けられた機器とを接続するための通信ケーブルが、第1回転体と第2回転体とに亘って延びるように設けられている。従って、上記所定の部品に設けられた機器と上記他の部品に設けられた機器とは、回転コネクタの通信ケーブルを介して接続される。
【0004】
ところで、上記所定の部品に設けられた機器と上記他の部品に設けられた機器との間で大容量且つ高速の通信が求められる場合があり、こうした要望に対応して回転コネクタの第1回転体及び第2回転体に上記機器同士を例えば特許文献1に示されるように光通信によって接続することが提案されている。この特許文献1では、第1回転体と第2回転体とのうち、一方に光信号を発する発光素子を設けるとともに、他方に上記発光素子から発せられた光信号を受信する受光素子を設け、それら発光素子及び受光素子を通じて上記機器同士を接続するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−80844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示されるように、光通信を通じて上記機器同士を接続した場合、それら機器同士の間において上記回転コネクタを介して大容量且つ高速の通信を実現できるようにはなる。ただし、発光素子及び受光素子を用いた光通信は、通信ケーブルを用いた有線通信と比較して通信形式が大きく異なる。このため、有線通信の代わりに光通信を採用した場合に生じる問題の回避に関する知見が必ずしも十分であるとは限らず、高い通信精度を必要とする機器同士の接続に上記光通信を採用することについては、必要な通信精度を確保する面での懸念が残る。
【0007】
本発明の目的は、大容量且つ高速の通信と通信精度の確保とを両立できる回転コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する回転コネクタは、同一の軸線上に位置して前記軸線周りに相対回転することが可能な第1回転体と第2回転体とを備える。第1回転体及び第2回転体には、第1回転体側に設けられた機器と第2回転体側に設けられた機器とを光通信によって接続する光通信部が設けられる。更に、回転コネクタには、第1回転体側に設けられた機器と第2回転体側に設けられた機器とを接続するための通信ケーブルが、第1回転体と第2回転体とに亘って延びるように設けられる。
【0009】
上記構成によれば、高い通信精度を必要としない機器同士の接続には、光通信部による光通信を用いることにより、大容量且つ高速の通信を行うことができる。一方、高い通信精度を必要とする機器同士の接続には、通信ケーブルによる有線通信を用いることにより、必要な通信精度を確保することができる。従って、大容量且つ高速の通信と通信精度の確保とを両立することができる。
【0010】
なお、上記回転コネクタに関しては、第1回転体が車体に固定される一方、第2回転体が上記車体に対し回転可能に支持されたステアリングホイールに固定されるものとすることが考えられる。
【0011】
上記回転コネクタにおいて、上記光通信部は、第1回転体と第2回転体とのうちの一方に設けられて光信号を発する発光素子と、第1回転体と第2回転体とのうちの他方に設けられて上記発光素子から発した光信号を受信する受光素子と、を備えるものとすることが考えられる。また、上記通信ケーブルは、光通信部における発光素子及び受光素子の側方を通過する直線部を有するものとすることが考えられる。更に、上記第1回転体と上記第2回転体とのうちの一方には、第1回転体と第2回転体との相対回転に基づき上記通信ケーブルにおける直線部以外の部分の巻き付け及び繰り出しを行うことにより、その相対回転に伴う上記通信ケーブルにおける直線部以外の部分に乱れが生じることを抑制する調整部を設けることが考えられる。
【0012】
上記構成によれば、通信ケーブルの直線部が発光素子及び受光素子の側方を通過している一方、第1回転体と第2回転体との相対回転時に通信ケーブルにおける上記直線部以外の部分が乱れることは調整部によって抑制される。このため、第1回転体と第2回転体との相対回転時などに、通信ケーブルが光通信部の発光素子と受光素子との間に変位し、それによって光通信部における発光素子と受光素子との間の光通信が妨げられることを抑制できるようになる。
【0013】
なお、上記調整部は、第1回転体に設けられているものとすることが考えられる。
この構成によれば、調整部を第1回転体に設けることは従来から行われており、そうした従来構成の流用によって簡単に実現することができる。
【0014】
上記ステアリングホイールは、第1回転体及び第2回転体を貫通するステアリングシャフトによって車体に対し回転可能に支持される。この場合、上記回転コネクタにおいて、第1回転体は、第2回転体側に向けて開口するとともに内部に上記調整部が設けられている車体側ケースを備えるとともに、その車体側ケースと第2回転体との間に位置して車体側ケースに対し固定されている中間ケースを備えるものとすることが考えられる。また、第2回転体は、中間ケースと対向するステアリング側ケースと、そのステアリング側ケースから中間ケースの中央を通過するよう突出して車体側ケースに接するとともにステアリングシャフトが貫通している円筒部と、を備えるものとすることが考えられる。一方、光通信部は、発光素子と受光素子とのうちの一方がステアリング側ケースに設けられており、他方が中間ケースに設けられているものとすることが考えられる。また、通信ケーブルの直線部は、円筒部の外周面に沿って同円筒部の軸線方向に延びるよう設けることが考えられる。
【0015】
上記構成によれば、通信ケーブルの直線部が、ステアリング側ケースにおける円筒部の外周面に同円筒部の軸線方向に延びることにより、ステアリング側ケース及び中間ケースに設けられた発光素子及び受光素子の側方を通過するようになる。
【0016】
上記回転コネクタは、第1回転体と第2回転体との相対回転時に通信ケーブルの直線部が上記円筒部の径方向に変位することを抑制する抑制部を備えるものとすることが考えられる。
【0017】
この構成によれば、通信ケーブルが上記円筒部の径方向に変位することは上記抑制部によって抑制されるため、そうした直線部の変位が生じることに伴い通信ケーブルにより発光素子と受光素子との間の光通信が阻害されることは抑制される。
【0018】
なお、上記抑制部は、通信ケーブルにおける直線部をそれ以外の部分よりも硬い材料で形成することによって実現されるものとすることが考えられる。
また、上記抑制部は、上記円筒部の外周面に同円筒部の軸線方向に延びるよう形成されて通信ケーブルの直線部が嵌め込まれる溝とすることも考えられる。
【0019】
上記回転コネクタにおいて、車体側ケースは、ステアリングシャフトが貫通する円環状の内側壁部、及び、その内側壁部に対し同心円状に延びる外側壁部を有するものであって、それら内側壁部と外側壁部との中間ケース側の端部が上記開口となっているものとすることが考えられる。また、調整部は、車体側ケースに設けられており、第1回転体と第2回転体との一方向への相対回転時に通信ケーブルの内側壁部の外周面に対する巻き付け及び外側壁部の内周面からの繰り出しを行う他、第1回転体と第2回転体との他方向への相対回転時に通信ケーブルの外側壁部の内周面に対する巻き付け及び内側壁部の外周面からの繰り出しを行うものとすることが考えられる。更に、中間ケースは、車体側ケースの上記開口を閉塞するよう同車体側ケースに対し固定されているものとすることが考えられる。また、第2回転体の円筒部は、車体側ケースの内側壁部における中間ケース側の端部に接しており、且つ、円筒部の外径が内側壁部の外径よりも大きくされているものとすることが考えられる。
【0020】
上記構成によれば、車体側ケースの開口が中間ケースと第2回転体の円筒部とによって閉塞されているため、通信ケーブルにおいて車体側ケース内で内側壁部の外周面に巻き付けられた部分、及び、外側壁部の内周面に巻き付けられた部分が、車体側ケースの上記開口から外にはみ出すことは抑制される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、大容量且つ高速の通信と通信精度の確保とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】車両における車室周りを同車両の側方から見た状態を示す略図。
図2】回転コネクタを示す斜視図。
図3図2の回転コネクタを矢印A−A方向から見た状態を示す断面図。
図4図3の回転コネクタを矢印B−B方向から見た状態を示す断面図。
図5】回転コネクタの車体側ケースをその開口側から見た状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、回転コネクタの一実施形態について、図1図5を参照して説明する。
図1は、車両における車室1周りを同車両の側方から見た状態を示している。同図に示されるように、車室1内における運転席2の前方(図1の右方)には、車両における車体3の一部をなすステアリングコラム3aが設けられている。このステアリングコラム3aの後側(図1の左側)には、運転席2に着座した乗員Dによって回転操作されるステアリングホイール4が設けられている。ステアリングホイール4は、ステアリングシャフト5によって上記ステアリングコラム3aに対し回転可能に支持されている。
【0024】
ステアリングコラム3aとステアリングホイール4との間には、ステアリングシャフト5が貫通する回転コネクタ6が設けられている。この回転コネクタ6は、車体3に設けられたオーディオ機器7及びコンピュータ8等の機器と、ステアリングホイール4に設けられた各種スイッチ9及びエアバッグ装置10等の機器とを、通信可能に接続するためのものである。上記回転コネクタ6は、車体3に対しステアリングホイール4が回転可能に支持されている状態のもとで、車体3側の上記機器とステアリングホイール4側の上記機器とを接続することが可能な構造となっている。
【0025】
図2に示すように、回転コネクタ6は、ステアリングコラム3a(図1)に固定される第1回転体11と、ステアリングホイール4(図1)に固定される第2回転体12と、を備えている。第1回転体11と第2回転体12とは、同一の軸線L1上に位置しており、その軸線L1周りに相対回転することが可能となっている。なお、この軸線L1は回転コネクタ6(第1回転体11及び第2回転体12)を貫通するステアリングシャフト5(図1)の中心線と一致している。
【0026】
図3は、図2の回転コネクタ6を矢印A−A方向から見た状態を示している。図3から分かるように、回転コネクタ6の第1回転体11は、ステアリングコラム3aに対し固定されるとともに第2回転体12側に向けて開口する車体側ケース13を備えるとともに、その車体側ケース13と第2回転体12との間に位置して車体側ケース13に対し固定されている中間ケース14を備えている。
【0027】
上記車体側ケース13は、ステアリングコラム3aに対し固定される円環状の底板15を備えている。この底板15の内縁には、第2回転体12に向けて突出する円環状の内側壁部16が形成されている。また、底板15の外縁には、第2回転体12に向けて突出する円環状の外側壁部17が形成されている。そして、内側壁部16と外側壁部17との第2回転体12側(中間ケース14側)の端部間が、車体側ケース13の上述した開口となっている。なお、ステアリングシャフト5は、車体側ケース13における内側壁部16の内側を貫通している。
【0028】
上記中間ケース14は、ステアリングシャフト5が貫通する円環状の底板18と、その底板18の外縁から第2回転体12に向けて突出する円環状の壁部19と、を備えている。底板18の内径は車体側ケース13における内側壁部16の外径よりも大きくされており、底板18の外縁は車体側ケース13における外側壁部17の突出方向の端部に形成されている段差部分に固定されている。従って、車体側ケース13の上記開口部、すなわち内側壁部16と外側壁部17との端部間の大部分が、中間ケース14の底板18によって閉塞されている。
【0029】
上記第2回転体12は、第1回転体11の中間ケース14と対向するステアリング側ケース20を備えている。このステアリング側ケース20は、ステアリングホイール4に対し固定されるとともにステアリングシャフト5が貫通する円環状の天板21を備えている。天板21の内縁には、中間ケース14の中央部分を通過して車体側ケース13における内側壁部16の端部に接するよう突出する円筒部22が形成されている。この円筒部22の外径は、車体側ケース13における内側壁部16の外径よりも大きくされており、且つ、中間ケース14における底板18の内径よりも小さくされている。従って、車体側ケース13の上記開口、すなわち内側壁部16と外側壁部17との端部間のうち、中間ケース14の底板18によって閉塞されていない部分が、円筒部22における突出方向の端部によって閉塞されている。なお、ステアリングシャフト5は、ステアリング側ケース20における円筒部22の内側を貫通している。
【0030】
上記天板21の外縁には、中間ケース14の壁部19に向けて突出する円環状の壁部23が形成されている。この壁部23の突出方向の端部は、中間ケース14における壁部19の突出方向の端部の端面及び外周面に接している。そして、第2回転体12(天板21、円筒部22、及び壁部23)は、ステアリングコラム3aに対するステアリングホイール4の回転、すなわち軸線L1を中心とする回転に伴い、第1回転体11(車体側ケース13及び中間ケース14)に対し相対回転するようになる。
【0031】
次に、車体3側に設けられた機器とステアリングホイール4側に設けられた機器とを通信可能に接続するための回転コネクタ6の構造について詳しく説明する。なお、回転コネクタ6では上記機器同士の接続を光通信と有線通信とによって個別に実現しており、以下では光通信を実現するための構造、及び、有線通信を実現するための構造についてそれぞれ個別に述べる。
【0032】
[光通信を実現する構造]
回転コネクタ6は、車体3側(第1回転体11側)に設けられた機器と、ステアリングホイール4側(第2回転体12側)に設けられた機器とを、光通信によって接続するための光通信部を備えている。この光通信部は、第1回転体11の中間ケース14に固定された基板24と、第2回転体12のステアリング側ケース20において上記基板24と対向する位置に固定された基板25と、を備えている。これら基板24,25は、ステアリング側ケース20の円筒部22が貫通した状態となる円環状に形成されている。
【0033】
基板24と基板25とのうち、一方には光信号を発する発光素子26が設けられており、他方には発光素子26から発せられた光信号を受信する受光素子27が設けられている。なお、この例では、発光素子26が基板25に設けられている一方、受光素子27が基板24に設けられている。上記発光素子26は基板25の周方向に間隔をおいて複数設けられており、各発光素子26からは同じ光信号が同時に発せられる。また、上記受光素子27は、第1回転体11と第2回転体12との相対回転位置がいずれの位置であっても発光素子26からの光信号を受信できるよう、基板24の周方向における所定の位置にそれぞれ設けられている。
【0034】
基板24には受光素子27と繋がる第1接続端子28が設けられており、同第1接続端子28は車体3側に設けられた機器と接続可能となっている。一方、基板25には発光素子26と繋がる第2接続端子29が設けられており、同第2接続端子29はステアリングホイール4側に設けられた機器と接続可能となっている。従って、車体3側に設けられた機器とステアリングホイール4側に設けられた機器とは、回転コネクタ6における光通信部の発光素子26及び受光素子27を通じて通信可能に接続される。ちなみに、光通信部によって互いに接続される上記機器としては、高い通信精度を必要としないもの、例えばスイッチ9とオーディオ機器7とがあげられる。
【0035】
[有線通信を実現する構造]
回転コネクタ6には、車体3側に設けられた機器とステアリングホイール4側に設けられた機器とを接続するための通信ケーブル30が、第1回転体11と第2回転体12とに亘って延びるように設けられている。ちなみに、この実施形態における通信ケーブル30は、二本のフラットケーブルを厚さ方向に重ねたものとなっている。
【0036】
通信ケーブル30の一方の端部UE(図3の上側の端部)は、第2回転体12におけるステアリング側ケース20の天板21を貫通しており、ステアリングコラム3a側に設けられた機器に接続されている。また、通信ケーブル30の他方の端部LEは、第1回転体における中間ケース14の第1接続端子28に繋がっており、同第1接続端子28を介して車体3側に設けられた機器と接続可能となっている。従って、車体3側に設けられた機器とステアリングホイール4側に設けられた機器とは、回転コネクタ6における通信ケーブル30を通じて通信可能に接続される。ちなみに、通信ケーブル30によって互いに接続される上記機器としては、高い通信精度を必要とするもの、例えばエアバッグ装置10とコンピュータ8とがあげられる。
【0037】
また、上記通信ケーブル30は、ステアリング側ケース20における円筒部22の外周面に沿って同円筒部22の軸線方向に直線状に延びる直線部30aを有している。このように延びる直線部30aは、光通信部における発光素子26及び受光素子27の側方を通過している。
【0038】
図4は、図3の回転コネクタ6を矢印B−B方向から見た状態を示している。図4に示されるように、通信ケーブル30の直線部30aは、上記円筒部22の外周面に同円筒部22の軸線方向(図4の紙面と直交する方向)全体に亘って延びるよう形成された溝22a内に嵌め込まれている。このため、第1回転体11と第2回転体12との相対回転時、通信ケーブル30の直線部30aが上記円筒部22の径方向に変位することは抑制される。このように上記円筒部22の溝22aは、第1回転体11と第2回転体12との相対回転時に直線部30aが上記円筒部22の径方向に変位することを抑制する抑制部としての役割を担う。
【0039】
図3に示すように、通信ケーブル30における直線部30a以外の部分であって同直線部30aよりも下側の部分は、第1回転体11の車体側ケース13内において内側壁部16の外周面に対し周方向に巻き付けられているとともに外側壁部17の内周面に対しても周方向に巻き付けられている。通信ケーブル30において、直線部30aは内側壁部16の外周面に巻き付けられた部分と繋がっており、同部分は外側壁部17の内周面に巻き付けられた部分と繋がっており、同部分は端部LEと繋がっている。
【0040】
そして、第1回転体11と第2回転体12との一方向への相対回転が行われると、第1回転体11に対するステアリング側ケース20(第2回転体12)における円筒部22(直線部30a)の一方向への相対回転が行われる。これにより、第1回転体11の車体側ケース13における内側壁部16の外周面に対し、通信ケーブル30における直線部30aよりも下側の部分の巻き付けが行われる。更に、そうした内側壁部16の外周面に対する通信ケーブル30の巻き付けに伴い、通信ケーブル30のうち第1回転体11の車体側ケース13における外側壁部17の内周面に巻き付けられた部分からの繰り出しが行われる。
【0041】
一方、第1回転体11と第2回転体12との他方向への相対回転が行われると、第1回転体11に対するステアリング側ケース20(第2回転体12)における円筒部22(直線部30a)の他方向への相対回転が行われる。これにより、通信ケーブル30のうち第1回転体11の車体側ケース13における内側壁部16の外周面に巻き付けられた部分からの繰り出しが行われる。更に、そうした内側壁部16の外周面からの通信ケーブル30の繰り出しに伴い、第1回転体11の車体側ケース13における外側壁部17の内周面に対し、通信ケーブル30における直線部30aよりも下側の部分の巻き付けが行われる。
【0042】
図5は、車体側ケース13をその開口側(図3の上側)から見た状態を示している。図5に示されるように、車体側ケース13内における底板15には、車体側ケース13の径方向についての弾性力を有する押圧部材31が設けられている。この押圧部材31は、第1回転体11と第2回転体12との相対回転時、同押圧部材31自体の弾性力により、通信ケーブル30のうちの内側壁部16の外周面に巻き付けられた部分を同外周面に向けて押圧するとともに外側壁部17の内周面に巻き付けられた部分を同内周面に向けて押圧する。
【0043】
従って、回転コネクタ6における第1回転体11と第2回転体12との相対回転に伴い、通信ケーブル30における内側壁部16の外周面に巻き付けられた部分、及び、外側壁部17の内周面に巻き付けられた部分において、それらの部分の乱れが生じることは上記押圧部材31によって抑制される。また、第1回転体11と第2回転体12との相対回転が行われたとき、そうした相対回転が通信ケーブル30によって阻害されることは、上述した内側壁部16の外周面及び外側壁部17の内周面に対する通信ケーブル30の巻き付け及び繰り出しによって抑制される。なお、回転コネクタ6において、内側壁部16、外側壁部17、及び押圧部材31は、第1回転体11と第2回転体12との相対回転時、通信ケーブル30における直線部30aよりも下側の部分の上述した巻き付け及び繰り出しを行うとともに上記部分の乱れを抑制する調整部として機能する。
【0044】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(1)回転コネクタ6においては、各種のスイッチ9とオーディオ機器7といった高い通信精度を必要としない機器同士の接続には、光通信部による光通信を用いることにより、大容量且つ後続の通信することができる。一方、エアバッグ装置10とコンピュータ8といった高い通信精度を必要とする機器同士の接続には、通信ケーブル30による有線通信を用いることにより、必要な通信精度を確保することができる。従って、回転コネクタ6において、機器同士の接続として光通信と有線通信とを上述したように使い分けることができ、それによって大容量且つ高速の通信と通信精度の確保とを両立することができる。
【0045】
(2)通信ケーブル30の直線部30aは、ステアリング側ケース20における円筒部22の外周面で同円筒部22の軸線方向に延びることにより、ステアリング側ケース20及び中間ケース14に設けられた発光素子26及び受光素子27の側方を通過している。更に、通信ケーブル30の直線部30aは、円筒部22の外周面に形成された溝22a内に嵌め込まれているため、第1回転体11と第2回転体12との相対回転時、通信ケーブル30の直線部30aが上記円筒部22の径方向に変位することを抑制できる。従って、直線部30aにおける円筒部22の径方向への変位に伴い、光通信部における発光素子26と受光素子27との間の光通信が直線部30a(通信ケーブル30)によって阻害されることを抑制できる。
【0046】
(3)車体側ケース13の開口は、中間ケース14の底板18とステアリング側ケース20の円筒部22における突出方向の端部とによって閉塞されている。このため、通信ケーブル30において、車体側ケース13内で内側壁部16の外周面に対し巻き付けられた部分、及び、外側壁部の内周面に対し巻き付けられた部分が、第1回転体11と第2回転体12との相対回転時等に、車体側ケース13の上記開口から外にはみ出すことを抑制される。従って、そのはみ出した部分が光通信部における発光素子26と受光素子27との間に変位してしまい、発光素子26と受光素子27との間での光通信が阻害されることを抑制できる。
【0047】
(4)通信ケーブル30の巻き付け部分の乱れを抑制するための調整部を車体3に固定される第1回転体11に設けることは、従来の回転コネクタにおいても行われており、そうした従来の構成を流用することによって回転コネクタ6を簡単に実現することができる。
【0048】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・車体側ケース13の開口については、必ずしも閉塞されている必要はない。この場合であっても、第1回転体11と第2回転体12との相対回転時、通信ケーブル30における車体側ケース13内に位置する部分であって、内側壁部16の外周面に巻きつけられた部分及び外側壁部17の内周面に巻きつけられた部分が乱れることは、調整部によって抑制される。このため、通信ケーブル30の上述したように巻き付けられた部分の乱れにより、同部分が光通通信部における発光素子26と受光素子27との間に変位してしまい、その変位に伴い発光素子26と受光素子27との間での光通信が阻害されることを抑制できる。
【0049】
・第1回転体11と第2回転体12との相対回転時に通信ケーブル30の直線部30aにおける円筒部22の径方向への変位を抑制する抑制部として、直線部30aが嵌め込まれる溝22aを上記円筒部22の外周面に形成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、通信ケーブル30における直線部30aを他の部分よりも硬い材料で形成することによって上記抑制部を実現するようにしたり、直線部30aを円筒部22の外周面上に押さえ付ける板材を上記抑制部として設けるようにしたりしてもよい。
【0050】
・上述したような抑制部については必ずしも設ける必要はない。この場合であっても、通信ケーブル30の直線部30aは、光通信部の発光素子26及び受光素子27の側方を通過するように延びるため、その直線部30aが発光素子26と受光素子27との間の光通信を阻害することは生じにくくなる。
【0051】
・光通信を通じて互いに接続される機器の種類に応じて、発光素子26と受光素子27との位置関係を上記実施形態とは逆にしたり、双方向通信が可能となるように発光素子26と受光素子27との位置関係が互いに逆となる二組の発光素子26と受光素子27とを設けるようにしたりしてもよい。
【0052】
・第1回転体11をステアリングホイール4に固定する一方、第2回転体12をステアリングコラム3aに固定するようにしてもよい。この場合、第1接続端子28には各種のスイッチ9及びエアバッグ装置10が接続される一方、第2接続端子29に対しオーディオ機器7が接続されるとともに通信ケーブル30の端部LEがコンピュータ8に接続される。
【0053】
・回転コネクタ6の設置対象として、車体3(ステアリングコラム3a)及びステアリングホイール4を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、車体3に対しシャフトを中心に回転可能に支持されたシートが設けられるような場合や、車体3に対しシャフトを中心に回転するよう支持されたドアが設けられるような場合には、車体3及び上記シートを設置対象としたり、車体3及び上記ドアを設置対象としたりすることが考えられる。
【符号の説明】
【0054】
1…車室、2…運転席、3…車体、3a…ステアリングコラム、4…ステアリングホイール、5…ステアリングシャフト、6…回転コネクタ、7…オーディオ機器、8…コンピュータ、9…スイッチ、10…エアバッグ装置、11…第1回転体、12…第2回転体、13…車体側ケース、14…中間ケース、15…底板、16…内側壁部、17…外側壁部、18…底板、19…壁部、20…ステアリング側ケース、21…天板、22…円筒部、22a…溝、23…壁部、24…基板、25…基板、26…発光素子、27…受光素子、28…第1接続端子、29…第2接続端子、30…通信ケーブル、30a…直線部、31…押圧部材。
図1
図2
図3
図4
図5