特許第6812975号(P6812975)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6812975モータ、モータの製造方法、およびステータユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6812975
(24)【登録日】2020年12月21日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】モータ、モータの製造方法、およびステータユニット
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/50 20060101AFI20201228BHJP
   H02K 3/38 20060101ALI20201228BHJP
   H02K 3/18 20060101ALI20201228BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20201228BHJP
   H02K 3/46 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   H02K3/50 A
   H02K3/38 A
   H02K3/18 J
   H02K15/04 E
   H02K3/46 C
【請求項の数】18
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-534437(P2017-534437)
(86)(22)【出願日】2016年8月8日
(86)【国際出願番号】JP2016073266
(87)【国際公開番号】WO2017026436
(87)【国際公開日】20170216
【審査請求日】2019年7月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-158392(P2015-158392)
(32)【優先日】2015年8月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】朝日 優
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 英博
(72)【発明者】
【氏名】村上 俊輔
【審査官】 服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−031331(JP,A)
【文献】 特開2011−259614(JP,A)
【文献】 特開2011−217478(JP,A)
【文献】 特開2009−033836(JP,A)
【文献】 実開昭62−119140(JP,U)
【文献】 特開2014−075907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/50
H02K 3/18
H02K 3/38
H02K 3/46
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に伸びる中心軸に沿って配置されるシャフトを有するロータと、
前記ロータと隙間を介して径方向に対向するステータと、
前記ステータと電気的に接続される複数のバスバーと、
を備え、
前記ステータは、
周方向に沿って延びる環状のコアバックと、
前記コアバックから径方向に延びる複数のティースと、
複数の接続系統を構成し、前記ティースに巻き回された導電線よりなる複数のコイルと、
少なくとも一部が前記ティースと前記コイルとの間に位置するインシュレータと、
を有し、
前記コイルは、
前記インシュレータを介して前記ティースに巻き回される第1コイルと、
前記第1コイルおよび前記インシュレータを介して前記ティースに巻き回される第2コイルと、
を含み、
前記バスバーを保持し絶縁性を有するバスバーホルダをさらに備え、
前記バスバーホルダは、前記コイル端を支持する第1支持部を有する第1コイルサポートを有する、
モータ。
【請求項2】
記コイルは、前記バスバーと接続されるコイル端を有し、
複数の前記コイルを含む第1コイル群と、複数の前記コイルを含み前記第1コイル群と接続系統が異なる第2コイル群と、が構成され、
前記バスバーは、
前記第1コイル群と電気的に接続される第1バスバーと、
前記第2コイル群と電気的に接続される第2バスバーと、
を含み、
複数の前記ティースの少なくとも一つにおいて、
前記第1コイルの前記コイル端は、前記第1バスバーと前記第2バスバーとのうちの一方と接続され、
前記第2コイルの前記コイル端は、前記第1バスバーと前記第2バスバーとのうちの他方と接続される、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
複数の前記ティースの少なくとも一つにおいて、
前記第1コイルの前記コイル端および前記第2コイルの前記コイル端は、前記第1バスバーと前記第2バスバーとのうちの一方と接続される、請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
複数の前記ティースの少なくとも一つにおいて、
前記第1コイルおよび前記第2コイルは、1本の連続した前記導電線で構成される、請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記インシュレータは、
前記コアバックの上側に配置される基部と、
前記基部から上側に突出する第1突出部と、
前記基部から上側に突出するとともに、前記第1突出部と周方向に隙間を介して配置される第2突出部と、
を有し、
前記第1コイルの前記コイル端は、前記第1突出部と接触し、
前記第2コイルの前記コイル端は、前記第2突出部と接触する、請求項2から4のいずれか一項に記載のモータ。
【請求項6】
前記第1バスバーおよび前記第2バスバーと前記コイル端との接続箇所は、前記隙間と径方向に重なる、請求項5に記載のモータ。
【請求項7】
前記基部は、
前記第1突出部の周方向における前記第2突出部と逆側に配置され、上側に向かうにつれて、前記中心軸との間の径方向の距離が大きくなる第1傾斜面と、
前記第2突出部の周方向における前記第1突出部と逆側に配置され、上側に向かうにつれて、前記中心軸との間の径方向の距離が大きくなる第2傾斜面と、
を有する、請求項5または6に記載のモータ。
【請求項8】
前記第1コイルの前記コイル端および前記第2コイルの前記コイル端は、前記ティースの周方向の同じ側から延び、
前記第2傾斜面の軸方向に対する傾きは、前記第1傾斜面の軸方向に対する傾きよりも小さい、請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
前記インシュレータは、
前記基部から上側に向かって延び、前記第1突出部と径方向に隙間を介して対向する第1壁部と、
前記基部から上側に向かって延び、前記第2突出部と径方向に隙間を介して対向する第2壁部と、
を有し、
前記第1壁部と前記第1突出部との径方向の隙間および前記第2壁部と前記第2突出部との径方向の隙間には、それぞれ、前記コイル端が保持される、請求項5から8のいずれか一項に記載のモータ。
【請求項10】
前記バスバーは、周方向に延びるバスバー本体部と、前記バスバー本体部から径方向に延びる延出部と、前記延出部の径方向の端部に配置され、前記コイル端と接続される接続部と、を有し、
前記接続部の形状は、U字状である、請求項2から9のいずれか一項に記載のモータ。
【請求項11】
前記接続部は、下側に開口するU字状である、請求項10に記載のモータ。
【請求項12】
電源と接続される端子と、
前記コイル端を支持する第2支持部を有し絶縁性を有する第2コイルサポートと、
を備え、
前記バスバーは、前記端子と接続される相用バスバーと、複数の前記コイル端を中性点として繋ぐ中性点バスバーと、を含み、
前記第2コイルサポートは、前記中性点バスバーと前記相用バスバーとの軸方向の間に位置する、請求項1から11のいずれか一項に記載のモータ。
【請求項13】
上下方向に伸びる中心軸に沿って配置されるシャフトを有するロータと、
前記ロータと隙間を介して径方向に対向するステータと、
前記ステータと電気的に接続される複数のバスバーと、
を備え、
前記ステータは、
周方向に沿って延びる環状のコアバックと、
前記コアバックから径方向に延びる複数のティースと、
複数の接続系統を構成し、前記ティースに巻き回された導電線によりなる複数のコイルと、
少なくとも一部が前記ティースと前記コイルとの間に位置するインシュレータと、
を有し、
複数の前記コイルを含む第1コイル群と、複数の前記コイルを含み前記第1コイル群と
は接続系統が異なる第2コイル群と、が構成され、
前記バスバーは、前記第1コイル群と電気的に接続される第1バスバーと、前記第2コイル群と電気的に接続される第2バスバーと、を含む、モータの製造方法であって、
少なくとも一つの前記ティースにおいて、
前記ティースに前記導電線を巻き回して第1コイルを形成する工程S1と、
這回し線を形成する工程S2と、
前記第1コイルおよび前記這回し線と同じ前記導電線を、前記第1コイルの上から巻き回して第2コイルを形成する工程S3と、
前記這回し線に、前記第1バスバーおよび前記第2バスバーを配置する工程S4と、
前記第1バスバーが配置された部分と前記第2バスバーが配置された部分との間において、前記這回し線を切断する工程S5と、
を含み、
前記工程S2は、前記導電線をインシュレータに引っ掛けて、前記這回し線を形成する、モータの製造方法。
【請求項14】
切断した前記這回し線に前記第1バスバーおよび前記第2バスバーを接続する工程S6と、
を含む、請求項13に記載のモータの製造方法。
【請求項15】
前記インシュレータは、
前記コアバックの上側に配置される基部と、
前記基部から上側に突出する第1突出部と、
前記基部から上側に突出するとともに、前記第1突出部と周方向に隙間を介して配置される第2突出部と、
を有し、
前記工程S2において、前記導電線を前記第1突出部と前記第2突出部とに引っ掛け、前記這回し線を前記隙間と径方向に重なる位置に形成する、請求項13または14のいずれか一項に記載のモータの製造方法。
【請求項16】
前記基部は、
前記第1突出部の周方向一方側に配置され、上側に向かうにつれて、前記中心軸との間の径方向の距離が大きくなる第1傾斜面と、
前記第2突出部の周方向他方側に配置され、上側に向かうにつれて、前記中心軸との間の径方向の距離が大きくなる第2傾斜面と、
を有し、
前記工程S1において、前記第1コイルが巻き終わる位置は、前記ティースの周方向他方側であり、
前記工程S2において、前記第1コイルの巻き終わりを、前記第1突出部に引っ掛けた後に、前記第2突出部に引っ掛け、
前記工程S3において、前記第2コイルを巻き始める位置は、前記ティースの周方向他方側である、請求項15に記載のモータの製造方法。
【請求項17】
前記第2傾斜面の軸方向に対する傾きは、前記第1傾斜面の軸方向に対する傾きよりも小さい、請求項16に記載のモータの製造方法。
【請求項18】
上下方向に伸びる中心軸に沿って配置されるシャフトを有するロータを備えるモータのステータユニットであって、
前記ロータと隙間を介して径方向に対向するステータと、
前記ステータと電気的に接続される複数のバスバーと、
を備え、
前記ステータは、
周方向に沿って延びる環状のコアバックと、
前記コアバックから径方向に延びる複数のティースと、
複数の接続系統を構成し、前記ティースに巻き回された導電線よりなる複数のコイルと、
少なくとも一部が前記ティースと前記コイルとの間に位置するインシュレータと、
を有し、
前記コイルは、
前記バスバーと接続されるコイル端を有し前記インシュレータを介して前記ティースに巻き回される第1コイルと、
前記バスバーと接続されるコイル端を有し前記第1コイルおよび前記インシュレータを介して前記ティースに巻き回される第2コイルと、
を含み、
前記バスバーを保持し絶縁性を有するバスバーホルダをさらに備え、
前記バスバーホルダは、前記コイル端を支持する第1支持部を有する第1コイルサポートを有する、
ステータユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ、モータの製造方法、およびステータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータにおいて、1つの固定子鉄心から2本の引き出し線を引き出す巻線方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−84723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ステータへの電力供給を行う接続系統として、複数の異なる接続系統を有するモータがある。このようなモータにおいて、上記のような巻線方式の固定子巻線では、固定子巻線の巻き終わりとして引き出される2本の導体を取り違え、誤ったバスバーに接続する虞があった。そのため、正常に複数の接続系統を構成することが困難な問題があった。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記問題点に鑑みて、バスバーに接続するコイル端の取り違えを抑制できる構造を有するモータ、およびステータユニットを提供することを目的の一つとする。また、バスバーに接続するコイル端の取り違えを抑制できる、モータの製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様のモータは、上下方向に伸びる中心軸に沿って配置されるシャフトを有するロータと、前記ロータと隙間を介して径方向に対向するステータと、を備え、前記ステータは、周方向に沿って延びる環状のコアバックと、前記コアバックから径方向に延びる複数のティースと、複数の接続系統を構成し、前記ティースに巻き回された導電線よりなる複数のコイルと、少なくとも一部が前記ティースと前記コイルとの間に位置するインシュレータと、を有し、前記コイルは、前記インシュレータを介して前記ティースに巻き回される第1コイルと、前記第1コイルおよび前記インシュレータを介して前記ティースに巻き回される第2コイルと、を含む。
【0007】
本発明の一つの態様のモータの製造方法は、上下方向に伸びる中心軸に沿って配置されるシャフトを有するロータと、前記ロータと隙間を介して径方向に対向するステータと、前記ステータと電気的に接続される複数のバスバーと、を備え、前記ステータは、周方向に沿って延びる環状のコアバックと、前記コアバックから径方向に延びる複数のティースと、複数の接続系統を構成し、前記ティースに巻き回された導電線によりなる複数のコイルと、少なくとも一部が前記ティースと前記コイルとの間に位置するインシュレータと、を有し、複数の前記コイルを含む第1コイル群と、複数の前記コイルを含み前記第1コイル群とは接続系統が異なる第2コイル群と、が構成され、前記バスバーは、前記第1コイル群と電気的に接続される第1バスバーと、前記第2コイル群と電気的に接続される第2バスバーと、を含む、モータの製造方法であって、少なくとも一つの前記ティースにおいて、前記ティースに前記導電線を巻き回して第1コイルを形成する工程S1と、這回し線を形成する工程S2と、前記第1コイルおよび前記這回し線と同じ前記導電線を、前記第1コイルの上から巻き回して第2コイルを形成する工程S3と、を含み、前記這回し線に、前記第1バスバーおよび前記第2バスバーを配置する工程S4と、前記第1バスバーが配置された部分と前記第2バスバーが配置された部分との間において、前記這回し線を切断する工程S5と、を含み、前記工程S2は、前記導電線をインシュレータに引っ掛けて、前記這回し線を形成する

以上
【0008】
本発明の一つの態様のステータユニットは、上下方向に伸びる中心軸に沿って配置されるシャフトを有するロータを備えるモータのステータユニットであって、前記ロータと隙間を介して径方向に対向するステータと、前記ステータと電気的に接続される複数のバスバーと、を備え、前記ステータは、周方向に沿って延びる環状のコアバックと、前記コアバックから径方向に延びる複数のティースと、複数の接続系統を構成し、前記ティースに巻き回された導電線よりなる複数のコイルと、少なくとも一部が前記ティースと前記コイルとの間に位置するインシュレータと、を有し、前記コイルは、前記バスバーと接続されるコイル端を有し前記インシュレータを介して前記ティースに巻き回される第1コイルと、前記バスバーと接続されるコイル端を有し前記第1コイルおよび前記インシュレータを介して前記ティースに巻き回される第2コイルと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一つの態様によれば、モータおよびステータユニットにおいて、バスバーに接続するコイル端の取り違えを抑制できる。また、モータの製造方法において、バスバーに接続するコイル端の取り違えを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態のモータを示す断面図である。
図2図2は、本実施形態のステータユニットの一部を示す斜視図である。
図3図3は、本実施形態の下側バスバーアッシーを示す斜視図である。
図4図4は、本実施形態の下側バスバーアッシーを示す平面図である。
図5図5は、本実施形態のステータの一部を示す断面図である。
図6図6は、本実施形態のステータの一部を示す斜視図である。
図7図7は、本実施形態のステータの一部を示す斜視図である。
図8図8は、本実施形態のステータの一部を示す斜視図である。
図9図9A図9B、および図9Cは、本実施形態のモータの製造方法の手順の一部を示す図である。
図10図10A図10B図10C、および図10Dは、本実施形態のモータの製造方法の手順の一部を示す図である。
図11図11は、本実施形態の他の一例であるインシュレータを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータについて説明する。本明細書では、上下方向に伸びる中心軸Jの軸方向における図1の上側を単に「上側」と呼び、下側を単に「下側」と呼ぶ。なお、上下方向は、実際の機器に組み込まれたときの位置関係や方向を示さない。また、中心軸Jに平行な方向を「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0012】
本明細書において、軸方向に延びる、とは、厳密に軸方向に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。径方向に延びる、とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0013】
図1に示すように、モータ10は、例えば、インナーロータ型のモータである。モータ10は、各部品を収容可能なハウジング20と、ロータ30と、筒状のステータ40と、ベアリングホルダ50と、ハウジング20に保持される下ベアリング60と、ベアリングホルダ50に保持される上ベアリング61と、下側バスバーアッシー70と、上側バスバーアッシー80と、端子92A,92Bと、を備える。
【0014】
ロータ30は、中心軸Jに沿って配置されるシャフト31と、第1ロータコア33Aと、第2ロータコア33Bと、第3ロータコア33Cと、第1マグネット34Aと、第2マグネット34Bと、第3マグネット34Cと、を有する。シャフト31は、下ベアリング60および上ベアリング61によって中心軸J周りに回転可能に支持される。ロータ30は、ステータ40の内側において、ステータ40に対して回転可能である。
【0015】
第1ロータコア33A、第2ロータコア33B、および第3ロータコア33Cは、筒状である。第1ロータコア33Aと、第2ロータコア33Bと、第3ロータコア33Cとは、軸方向の下側から上側に向かって、この順で並ぶ。第1ロータコア33Aの内側面、第2ロータコア33Bの内側面、および第3ロータコア33Cの内側面は、例えば、中心軸Jを中心とする円筒状である。第1ロータコア33A、第2ロータコア33B、および第3ロータコア33Cは、シャフト31に、例えば圧入等により嵌め合わされて固定される。なお、第1ロータコア33A、第2ロータコア33B、および第3ロータコア33Cは、他の部材を介して間接的にシャフト31に固定されてもよい。
【0016】
第1マグネット34A、第2マグネット34B、および第3マグネット34Cは、例えば、周方向に延びる板状である。第1マグネット34Aは、第1ロータコア33Aの外側面に固定される。第2マグネット34Bは、第2ロータコア33Bの外側面に固定される。第3マグネット34Cは、第3ロータコア33Cの外側面に固定される。
【0017】
第1マグネット34A、第2マグネット34B、および第3マグネット34Cは、それぞれ周方向に沿って複数設けられる。なお、第1マグネット34A、第2マグネット34B、および第3マグネット34Cは、それぞれ単一部材であってもよい。この場合、第1マグネット34A、第2マグネット34B、および第3マグネット34Cは、例えば、円環状である。
【0018】
ステータ40は、ロータ30と隙間を介して径方向に対向する。ステータ40は、例えば、ロータ30の径方向外側に配置される。ステータ40は、ステータコア40aと、複数のコイル43と、複数のインシュレータ44と、を有する。ステータコア40aは、例えば、複数の電磁鋼板が積層されて構成される。ステータコア40aは、周方向に延びる環状のコアバック41と、コアバック41から径方向に延びる複数のティース42と、を有する。すなわち、ステータ40は、コアバック41と、ティース42と、を備える。
【0019】
コアバック41は、例えば、中心軸Jを中心とした円環状である。コアバック41の外周面は、ハウジング20の内周面に例えば圧入等により固定される。この実施形態では、複数のティース42は、コアバック41の内側面から径方向内側に延びる。複数のティース42は、周方向に沿って等間隔に配置される。
【0020】
コイル43は、インシュレータ44を介してティース42に巻き回された導電線43aから構成される。コイル43は、各ティース42に配置される。コイル43は、導電線43aの端部であるコイル端43bを有する。コイル端43bは、コイル43のティース42に巻き回された部分から上側に延びる。インシュレータ44の少なくとも一部は、ティース42とコイル43との間に配置される。インシュレータ44は、ティース42の少なくとも一部を覆う。
【0021】
下側バスバーアッシー70は、略円筒状である。下側バスバーアッシー70は、ステータ40の上側に配置される。下側バスバーアッシー70は、中性点バスバー90と、中性点バスバー90を保持する略円筒状の下側バスバーホルダ71と、を有する。すなわち、モータ10は、中性点バスバー90と、下側バスバーホルダ71と、を備える。
【0022】
下側バスバーホルダ71は、例えば、絶縁性を有する樹脂製である。下側バスバーホルダ71は、インシュレータ44に固定される。中性点バスバー90は、コイル43と電気的に接続される。より詳細には、中性点バスバー90は、コイル端43bと接続される。これにより、中性点バスバー90は、ステータ40と電気的に接続される。中性点バスバー90は、複数のコイル端43bを中性点として繋ぐ。
【0023】
上側バスバーアッシー80は、略円筒状である。上側バスバーアッシー80は、下側バスバーアッシー70の上側に配置される。上側バスバーアッシー80は、相用バスバー91と、相用バスバー91を保持する上側バスバーホルダ81と、を有する。すなわち、モータ10は、相用バスバー91と、上側バスバーホルダ81と、を備える。
【0024】
上側バスバーホルダ81は、略円筒状であり、例えば、絶縁性を有する樹脂製である。上側バスバーホルダ81は、ハウジング20に固定される。相用バスバー91は、コイル43と電気的に接続される。より詳細には、相用バスバー91は、コイル端43bと接続される。相用バスバー91は、端子92A,92Bと接続される。これにより、相用バスバー91は、ステータ40と電気的に接続される。
【0025】
端子92A,92Bは、上側に延びる板状の部材である。端子92A,92Bの上側の端部は、ハウジング20の上側の端部よりも上側に配置される。端子92A,92Bは、図示しない外部電源と接続される。
【0026】
図2に示すように、本実施形態においては、ステータ40と、上側バスバーアッシー80と、下側バスバーアッシー70と、を備えるステータユニット11が構成される。ステータユニット11は、上側バスバーアッシー80が有する相用バスバー91と、下側バスバーアッシー70が有する中性点バスバー90と、を備える。以下、ステータユニット11の各部について、さらに詳細に説明する。
【0027】
上側バスバーホルダ81は、略円環板状の第2コイルサポート82と、円筒状の外筒部83と、第1周壁部84と、第2周壁部85と、第3周壁部86と、端子保持部87A,87Bと、を有する。モータ10は、絶縁性を有する第2コイルサポート82を備える。
【0028】
外筒部83は、第2コイルサポート82の外縁から上側に延びる。第1周壁部84、第2周壁部85および第3周壁部86は、外筒部83よりも径方向内側に位置し、第2コイルサポート82から上側に延びる。端子保持部87A,87Bは、外筒部83から径方向外側に突出する。
【0029】
第2コイルサポート82の中心には、例えば、中心軸Jが通る。第2コイルサポート82は、コイル端43bを支持する第2支持部82aを有する。第2コイルサポート82は、中性点バスバー90と相用バスバー91との軸方向の間に位置する。そのため、中性点バスバー90を、相用バスバー91と、第2コイルサポート82を挟んで上下に分けて配置することができる。これにより、所定の位置に容易にコイル端43bを配置することができる。
【0030】
第2支持部82aは、第2コイルサポート82の内縁から径方向外側に窪む凹部である。第2支持部82aの内側には、コイル端43bが通る。コイル端43bは、第2支持部82aの内側面によって周方向両側から支持される。
【0031】
外筒部83は、中心軸Jを中心とする。第1周壁部84、第2周壁部85および第3周壁部86は、周方向に延びる。第1周壁部84は、平面視で円弧状である。第2周壁部85および第3周壁部86は、外筒部83と同心の円筒状である。第2周壁部85は、第1周壁部84よりも径方向内側に位置する。第3周壁部86は、第2周壁部85よりも径方向内側に位置する。
【0032】
第1周壁部84の上側の端部は、軸方向において、外筒部83の上側の端部とほぼ同じ位置にある。第2周壁部85の上側の端部は、軸方向において、第1周壁部84の上側の端部よりも下側に位置する。第3周壁部86の上側の端部は、軸方向において、第2周壁部85の上側の端部よりも下側に位置する。
【0033】
上側バスバーホルダ81は、下側に窪み周方向に延びる第1溝部81a、第2溝部81b、および第3溝部81cを有する。第1溝部81aは、外筒部83と第1周壁部84との径方向の間に位置する。第2溝部81bは、第1周壁部84と第2周壁部85との径方向の間に位置する。第3溝部81cは、第2周壁部85と第3周壁部86との径方向の間に位置する。
【0034】
第1溝部81aの底部は、軸方向において、第2溝部81bの底部よりも上側に位置する。第2溝部81bの底部は、軸方向において、第3溝部81cの底部よりも上側に位置する。
【0035】
端子保持部87A,87Bは、平面視で略矩形状である。端子保持部87Aは、端子92Aを保持する。端子保持部87Bは、端子92Bを保持する。
【0036】
図2に示すように、相用バスバー91は、第1相用バスバー93A,93Bと、第2相用バスバー94A,94Bと、第3相用バスバー95A,95Bと、を含む。すなわち、モータ10は、複数の相用バスバー91を備える。
【0037】
第1相用バスバー93A,93Bは、第1溝部81aに保持される。第2相用バスバー94A,94Bは、第2溝部81bに保持される。第3相用バスバー95A,95Bは、第3溝部81cに保持される。
【0038】
複数の相用バスバー91は、接続系統が異なる複数のバスバー群を構成する。この実施形態では、第1相用バスバー93Aと第2相用バスバー94Aと第3相用バスバー95Aとを含む第1バスバー群と、第1相用バスバー93Bと第2相用バスバー94Bと第3相用バスバー95Bとを含む第2バスバー群と、の2つのバスバー群が構成される。
【0039】
以下、第1バスバー群を含む接続系統を、接続系統Aと呼ぶ場合があり、第2バスバー群を含む接続系統を、接続系統Bと呼ぶ場合がある。
【0040】
本明細書において、「ある対象同士の接続系統が異なる」、とは、ある対象に電気的に接続される外部電源が異なり、接続系統ごとに独立して電源が供給されることを含む。例えば、2つの接続系統A,Bが構成される場合、モータ10に電源を供給する外部電源は、接続系統Aに電気的に接続される外部電源と、接続系統Bに電気的に接続される外部電源との2つ設けられる。
【0041】
2つの外部電源は、それぞれ独立してモータ10に電源を供給することが可能である。一方の接続系統に電源を供給する一方の外部電源が、何らかの原因によりモータ10に電源が供給できない場合であっても、他方の外部電源によって他方の接続系統に電源を供給可能である。これにより、例えば、外部電源および外部電源の制御装置等の故障により、一方の接続系統に電源が供給されなくなっても、他方の接続系統に電流を流すことにより、モータ10を駆動させることが可能である。
【0042】
図3に示すように、下側バスバーホルダ71は、第1コイルサポート72と、下側ホルダ筒部73と、内側周壁部74と、外側周壁部75と、を有する。
【0043】
第1コイルサポート72は、中心軸Jを中心とする略円環板状である。図4に示すように、第1コイルサポート72は、コイル43の上側に位置する。第1コイルサポート72は、コイル端43bを支持する第1支持部72aを有する。そのため、コイル43の導電線43aを、絶縁性を確保しつつ容易に這い回すことができる。
【0044】
第1支持部72aは、第1コイルサポート72の内縁から径方向外側に窪む凹部である。第1支持部72aの内側には、コイル端43bが通される。第1支持部72aの内側を通るコイル端43bは、第1支持部72aの内側面によって周方向両側から支持される。
【0045】
図3および図4に示すように、下側ホルダ筒部73は、中心軸Jを中心とする円筒状である。下側ホルダ筒部73は、第1コイルサポート72から上側に延びる。内側周壁部74および外側周壁部75は、周方向に延びる略環状である。内側周壁部74は、下側ホルダ筒部73よりも径方向内側に位置し、第1コイルサポート72から上側に延びる。外側周壁部75は、下側ホルダ筒部73よりも径方向外側に位置し、第1コイルサポート72から上側に延びる。
【0046】
下側バスバーホルダ71は、下側に窪み周方向に延びる第1下側溝部71aおよび第2下側溝部71bを有する。第1下側溝部71aは、下側ホルダ筒部73と内側周壁部74との径方向の間に位置する。第2下側溝部71bは、下側ホルダ筒部73と外側周壁部75との径方向の間に位置する。
【0047】
中性点バスバー90は、第1バスバー90Aと、第2バスバー90Bと、を含む。図4に示すように、第1バスバー90Aは、周方向に延びる第1バスバー本体部90Aaと、第1バスバー本体部90Aaから径方向に延びる第1接続端子部98Aと、を有する。
【0048】
平面視において、第1バスバー本体部90Aaは、略環状である。第1バスバー本体部90Aaは、第1下側溝部71a内に配置される。第1バスバー本体部90Aaは、第1下側溝部71a内に嵌め込まれる。
【0049】
第1接続端子部98Aは、第1バスバー本体部90Aaから径方向外側に延びる。この実施形態では、第1バスバー90Aは、9つの第1接続端子部98Aを有する。第1接続端子部98Aは、周方向に沿ってほぼ等間隔に並ぶ。
【0050】
第1接続端子部98Aは、第1延出部96Aと、第1接続部97Aと、を有する。すなわち、第1バスバー90Aは、第1延出部96Aと、第1接続部97Aと、を有する。
【0051】
第1延出部96Aは、第1バスバー本体部90Aaから径方向に延びる。第1接続部97Aは、第1延出部96Aの径方向の端部に配置され、コイル端43bと接続される。
【0052】
図3に示すように、第1接続部97Aの形状は、U字状である。そのため、下側バスバーアッシー70をステータ40の上側に配置する際に、第1接続部97Aによってコイル端43bを保持することができる。これにより、第1接続部97Aとコイル端43bとを容易に接続することができる。
【0053】
第1接続部97Aは、下側に開口するU字状である。そのため、下側バスバーアッシー70をステータ40の上側に配置する際に、第1接続部97Aによってコイル端43bを容易に掴むことができる。より詳細には、第1接続部97Aによって後述する這回し線45gを容易に掴むことができる。これにより、第1接続部97Aをコイル端43bに容易に配置することができる。
【0054】
図4に示すように、第2バスバー90Bは、周方向に延びる第2バスバー本体部90Baと、第2バスバー本体部90Baから径方向に延びる第2接続端子部98Bと、を有する。
【0055】
平面視において、第2バスバー本体部90Baは、略環状である。第2バスバー本体部90Baは、第2下側溝部71b内に配置される。第2バスバー本体部90Baは、第2下側溝部71b内に嵌め込まれる。
【0056】
第1バスバー本体部90Aaと第2バスバー本体部90Baとは、軸方向において、同じ位置にある。第1バスバー本体部90Aaと第2バスバー本体部90Baとは、径方向に重なる。
【0057】
第2接続端子部98Bは、第2バスバー本体部90Baから径方向外側に延びる。この実施形態では、第2バスバー90Bは、9つの第2接続端子部98Bを有する。第2接続端子部98Bは、周方向に沿ってほぼ等間隔に並ぶ。
【0058】
第2接続端子部98Bは、第2延出部96Bと、第2接続部97Bと、を有する。すなわち、第2バスバー90Bは、第2延出部96Bと、第2接続部97Bと、を有する。
【0059】
第2延出部96Bは、第2バスバー本体部90Baから径方向に延びる。第2接続部97Bは、第2延出部96Bの径方向の端部に配置され、コイル端43bと接続される。第2接続部97Bの形状は、第1接続部97Aの形状と同様である。
【0060】
第1接続部97Aと第2接続部97Bとは、軸方向において、例えば同じ位置にある。そのため、各接続部とコイル端43bとを接続する軸方向の位置を、同じにできる。これにより、第1バスバー90Aおよび第2バスバー90Bとコイル端43bとの接続作業を簡便にできる。
【0061】
図5に示すように、インシュレータ44は、インシュレータ筒部44aと、内側板部44bと、外側板部44cと、第1基部46bと、第2基部47bと、第1突出部46aと、第2突出部47aと、を有する。
【0062】
インシュレータ筒部44aは、筒状であり、ティース42の軸方向両側および周方向両側を囲む。インシュレータ筒部44aは、例えば、径方向に延びる矩形筒状である。
【0063】
内側板部44bは、板状であり、インシュレータ筒部44aの径方向内側の端部から軸方向両側および周方向両側に延びる。外側板部44cは、板状であり、インシュレータ筒部44aの径方向外側の端部から軸方向両側および周方向両側に延びる。
【0064】
図6から図8に示すように、第1基部46bおよび第2基部47bは、外側板部44cから上側に突出する略四角柱状である。図6に示すように、第1基部46bは、外側板部44cの上側の端部における周方向一方側の端部に配置される。第1基部46bは、ティース42よりも周方向一方側に位置する。
【0065】
第2基部47bは、外側板部44cの上側の端部における周方向他方側の端部に配置される。第2基部47bは、ティース42よりも周方向他方側に配置される。図5に示すように、第1基部46bおよび第2基部47bは、コアバック41の上側に配置される。なお、第1基部46bおよび第2基部47bは、ティース42と軸方向に重なるように配置されてもよい。
【0066】
図6に示すように、第1突出部46aは、第1基部46bから上側に突出する。第1突出部46aは、略四角柱状である。第1突出部46aは、第1基部46bの上端において、径方向内側の端部かつ周方向の第2基部47b側の端部に配置される。
【0067】
第2突出部47aは、第2基部47bから上側に突出する。第2突出部47aは、第1突出部46aと周方向に隙間DPを介して配置される。第2突出部47aは、略四角柱状である。第2突出部47aは、第2基部47bの上端において、径方向内側の端部かつ周方向の第1基部46b側の端部に配置される。
【0068】
第1基部46bは、第1傾斜面46cを有する。第1傾斜面46cは、第1突出部46aの周方向における第2突出部47aと逆側に配置される。第1傾斜面46cは、上側に向かうにつれて、中心軸Jとの間の径方向の距離が大きくなる。
【0069】
第2基部47bは、第2傾斜面47cを有する。第2傾斜面47cは、第2突出部47aの周方向における第1突出部46aと逆側に配置される。第2傾斜面47cは、上側に向かうにつれて、中心軸Jとの間の径方向の距離が大きくなる。
【0070】
図8に示す第2傾斜面47cの軸方向に対する傾きφ2は、図7に示す第1傾斜面46cの軸方向に対する傾きφ1よりも小さい。
【0071】
複数のコイル43は、複数の接続系統を構成する。具体的には、複数のコイル43は、2つの接続系統を構成する。すなわち、複数のコイル43を含む第1コイル群と、複数のコイルを含み第1コイル群と接続系統が異なる第2コイル群と、が構成される。
【0072】
第1コイル群には、第1バスバー90A、および第1バスバー群が電気的に接続される。第2コイル群には、第2バスバー90B、および第2バスバー群が電気的に接続される。
【0073】
第1コイル群および第1バスバー90Aは、接続系統Aに含まれる。第2コイル群および第2バスバー90Bは、接続系統Bに含まれる。
【0074】
各ティース42には、インシュレータ44を介して、2つのコイル43が配置される。コイル43は、第1コイル45aと、第2コイル45bと、を含む。第1コイル45aは、インシュレータ44を介して、ティース42に配置される。第2コイル45bは、第1コイル45aおよびインシュレータ44を介して、ティース42に配置される。すなわち、第2コイル45bは、第1コイル45aの軸方向両側および周方向両側を囲む。
【0075】
第1コイル45aおよび第2コイル45bがティース42に形成される場合、導電線がティース42に巻き回されて第1コイル45aが形成された後に、第1コイル45aの上から導電線が巻き回されて第2コイル45bが形成される。すなわち、第1コイル45aの巻き終わりおよび第2コイル45bの巻き始めが、同時に設けられない。そのため、2本の導電線が同時に巻き回される場合に比べて、第1コイル45aのコイル端43bおよび第2コイル45bのコイル端43bを作業者等が判別しやすい。これにより、中性点バスバー90に接続するコイル端43bを作業者等が取り違えることを抑制できる。その結果、各第1コイル45aおよび各第2コイル45bを適切に中性点バスバー90に接続しやすく、容易、かつ、より確実に複数の接続系統を構成できる。
【0076】
図6に示すように、第1コイル45aのコイル端43bである第1コイル端45cは、第1突出部46aと接触する。第2コイル45bのコイル端43bである第2コイル端45dは、第2突出部47aと接触する。そのため、第1コイル45aおよび第2コイル45bを作る際に、ティース42に巻き回す導電線43aを第1突出部46aおよび第2突出部47aに引っ掛けることができる。これにより、作業者等が第1コイル端45cおよび第2コイル端45dを取り違えることを、より抑制できる。
【0077】
第1コイル端45cは、第1突出部46aに引っ掛けられる。第2コイル端45dは、第2突出部47aに引っ掛けられる。このとき、第1コイル端45cは、第1傾斜面46cに沿って案内される。第2コイル端45dは、第2傾斜面47cに沿って案内される。したがって、第1コイル端45cおよび第2コイル端45dを第1突出部46aおよび第2突出部47aに引っ掛けて、引き回しやすい。
【0078】
第1コイル端45cは、第1コイル45aの巻き終わりの線である。第2コイル端45dは、第2コイル45bの巻き始めの線である。第1コイル端45cおよび第2コイル端45dは、ティース42の周方向他方側から延びる。すなわち、第1コイル端45cおよび第2コイル端45dは、ティース42の周方向の同じ側から延びる。
【0079】
そのため、ティース42から第1突出部46aに延びる第1コイル端45cの軸方向に対する角度と、ティース42から第2突出部47aに延びる第2コイル端45dの軸方向に対する角度とは、互いに異なる。
【0080】
具体的に、図6では、第1コイル端45cは、ティース42の周方向他方側から引き出され、周方向一方側の第1突出部46aに引っ掛けられる。一方、第2コイル端45dは、周方向他方側の第2突出部47aに引っ掛けられ、ティース42の周方向他方側に延びる。そのため、第1コイル端45cの軸方向に対する傾きは、第2コイル端45dの軸方向に対する傾きよりも、比較的大きい。
【0081】
上述したように、第2傾斜面47cの傾きφ2は、第1傾斜面46cの傾きφ1よりも小さい。軸方向に対する傾きが比較的大きい第1コイル端45cは、傾きが比較的大きい第1傾斜面46cに沿わすことができるため、モータの製造時において案内しやすい。軸方向に対する傾きが比較的小さい第2コイル端45dは、傾きが比較的小さい第2傾斜面47cに沿わすことができるため、モータの製造時において案内しやすい。したがって、第1コイル端45cおよび第2コイル端45dを、第1突出部46aおよび第2突出部47aに引っ掛けてより容易に引き回すことができる。
【0082】
各ティース42に巻き回される第1コイル45aおよび第2コイル45bは、接続系統が互いに異なる第1コイル群と第2コイル群とのうちのいずれかの一方のコイル群に、含まれる。各ティース42において、この実施形態では、第1コイル45aと第2コイル45bとで、含まれるコイル群は互いに異なる。
【0083】
図4に示すように、各第1接続部97Aおよび各第2接続部97Bと第1コイル端45cおよび第2コイル端45dとは、例えば、溶接により接続される。
【0084】
各第1接続部97Aおよび各第2接続部97Bと、第1コイル端45cおよび第2コイル端45dと、の接続箇所は、隙間DPと径方向に重なる。すなわち、第1バスバー90Aおよび第2バスバー90Bとコイル端43bとの接続箇所は、隙間DPと径方向に重なる。そのため、隙間DPによって、コイル端43bと第1バスバー90Aおよび第2バスバー90Bとを接続するスペースを確保できる。これにより、コイル端43bと第1バスバー90Aおよび第2バスバー90Bとを、例えば溶接等によって接続することが容易である。
【0085】
なお、第1コイル45aと第2コイル45bとが、1本の連続した導電線43aで構成されてもよい。この場合、1つの第1接続部97A,97Bを這回し線45g(図6参照)に接続することのみによって、2つのコイル端43b、(すなわち、第1コイル端45cおよび第2コイル端45dの両方)を中性点バスバー90に接続できる。これにより、モータの製造時において、溶接等による接合する作業の回数を半減できる。したがって、コイル端43bと中性点バスバー90との接合作業にかかる手間を低減できる。
【0086】
図9Aおよび図10Aに示すように、第1コイル形成工程S1は、ティース42に導電線43aを巻き回して第1コイル45aを形成する工程である。第1コイル形成工程S1においては、導電線43aを、例えば、ティース42の径方向内側の端部から、インシュレータ44を介して巻き始める。
【0087】
図9Bおよび図10Bに示すように、第1コイル形成工程S1により、第1コイル45aが形成される。第1コイル形成工程S1において、第1コイル45aが巻き終わる位置は、ティース42の周方向他方側である。
【0088】
這回し線形成工程S2は、第1コイル45aの巻き終わりの導電線43aをインシュレータ44に引っ掛けて、這回し線45gを形成する工程である。ティース42の周方向他方側から延びる第1コイル端45cである第1コイル45aの巻き終わりが、周方向一方側に引き出され、第1突出部46aに引っ掛けられる。
【0089】
そして、導電線43aは、第1突出部46aの径方向外側を介して、第2突出部47aまで引き回され、第2突出部47aに引っ掛けられる。言い換えると、這回し線形成工程S2において、第1コイル45aの巻き終わりが、第1突出部46aに引っ掛けられた後に、第2突出部47aに引っ掛けられる。
【0090】
これにより、図10Bに示すように、這回し線45gが形成される。すなわち、這回し線形成工程S2において、導電線43aが第1突出部46aと第2突出部47aとに引っ掛けられ、這回し線45gが隙間DPと径方向に重なる位置に形成される。
【0091】
第2コイル形成工程S3は、第1コイル45aと這回し線45gと同じ導電線43aを、第1コイル45aの上から巻き回して第2コイル45bを形成する工程である。第2コイル形成工程S3において、第2コイル45bを巻き始める位置は、ティース42の周方向他方側である。
【0092】
例えば、這回し線45gを形成する際の導電線43aの引き回す向きを逆にする場合、第2突出部47a、第1突出部46aの順で引っ掛けられた導電線43aは、下側に向かって、周方向一方側から周方向他方側へと斜め下に引き回される。この場合、斜めに引き回される導電線43aは、上側から下側へと引き回されるため、上側に膨らみやすい。これにより、導電線43aが弛みやすい問題があった。
【0093】
これに対して、本実施形態では、這回し線形成工程S2において、第1コイル45aの巻き終わりが、まず第1突出部46aに引っ掛けられる。これにより、ティース42の周方向他方側から引き出された第1コイル45aの巻き終わりは、上側に向かって、周方向他方側から周方向一方側へと斜め上に引き回される。そのため、斜めに引き回される導電線43aが上側に膨らみにくくなり、導電線43aが弛むことを抑制できる。
【0094】
図9Bに示すように、第2コイル形成工程S3においては、導電線43aを、ティース42の径方向外側の端部から、インシュレータ44および第1コイル45aを介して、巻き始める。第2コイル形成工程S3によって、第2コイル45bが形成される(図9Cおよび図10C参照)。
【0095】
図9Cおよび図10Cに示すように、配置工程S4は、這回し線45gに、第1バスバー90Aおよび第2バスバー90Bを配置する工程である。第1バスバー90Aおよび第2バスバー90Bをステータ40の上側から近づけて、這回し線45gを、U字状の第1接続部97Aおよび第2接続部97Bで保持する。
【0096】
切断工程S5は、第1バスバー90Aが配置された部分と第2バスバー90Bが配置された部分との間において、這回し線45gを切断する工程である。例えば、切断線Lcの位置において、這回し線45gを切断する。これにより、図10Dに示すように、第1コイル端45cと第2コイル端45dとが分断される。
【0097】
接続工程S6は、切断された這回し線45gに第1バスバー90Aおよび第2バスバー90Bを接続する工程である。具体的には、第1コイル端45cに第1接続部97Aを接続する。第2コイル端45dに第2接続部97Bを接続する。これにより、接続系統が異なる2つの中性点バスバー90が第1コイル45aと第2コイル45bとにそれぞれ接続された状態となる。第1接続部97Aおよび第2接続部97Bは、第1コイル端45cおよび第2コイル端45dと、溶接等により接続される。
【0098】
以上によって、2つのコイル43が異なる2つの接続系統の中性点バスバー90に接続される。これにより、中性点バスバー90に接続するコイル端43bを作業者等が取り違えることを抑制しつつ、2つの接続系統A,Bを構成しやすい。
【0099】
這回し線45gに、第1バスバー90Aと第2バスバー90Bとのうちの一方のみを接続する工程があってもよい。その場合、その工程は、這回し線45gに接続する中性点バスバー90が第1バスバー90Aと第2バスバー90Bとのうちの一方のみである点を除いて、配置工程S4と同様である。
【0100】
本発明は上述の実施形態に限られず、他の構成を採用することもできる。以下の説明において上記説明と同様の構成については、適宜同一の符号を付す等により説明を省略する
場合がある。
【0101】
第1コイル端45cは、第1バスバー90Aと第2バスバー90Bとのうちの一方と接続され、第2コイル端45dは、第1バスバー90Aと第2バスバー90Bとのうちの他方と接続されてもよい。すなわち、第1コイル端45cが第2バスバー90Bと接続され、第2コイル端45dが第1バスバー90Aと接続されてもよい。また、第1コイル端45cおよび第2コイル端45dに接続される中性点バスバー90がティース42ごとに異なってもよい。
【0102】
少なくとも一つのティース42において、第1コイル45aおよび第2コイル45bが巻き回されていれば、例えば、他の一部のティース42において、巻き回されるコイル43が1つであってもよい。
【0103】
インシュレータ44の構成は、図11に示す構成であってもよい。図11に示すように、インシュレータ144は、第1壁部146dと、第2壁部147dと、を有する。
【0104】
第1壁部146dは、第1基部46bから上側に向かって延びる。第1壁部146dは、例えば、板面が径方向と直交する板状である。第1壁部146dは、第1突出部46aと径方向に隙間を介して対向する。第1突出部46aと第1壁部146dとによって、第1保持部146eが構成される。
【0105】
第2壁部147dは、第2基部47bから上側に向かって延びる。第2壁部147dは、例えば、板面が径方向と直交する板状である。第2壁部147dは、第2突出部47aと径方向に隙間を介して対向する。第2突出部47aと第2壁部147dとによって、第2保持部147eが構成される。
【0106】
第1保持部146eと第2保持部147eとには、コイル端43bが保持される。すなわち、第1壁部146dと第1突出部46aとの径方向の隙間および第2壁部147dと第2突出部47aとの径方向の隙間には、それぞれ、コイル端43bが保持される。そのため、コイル端43bを引き回して這回し線45gを形成する際に、コイル端43bを弛みなく容易に引き回すことができる。
【0107】
これにより、コイル端43bを弛みなく引き回すために、コイル端43bを強く引張する必要がなく、コイル端43bによって第1突出部46aおよび第2突出部47aに加えられる径方向内向きの力を小さくできる。したがって、第1突出部46aおよび第2突出部47aに大きな力が加えられてインシュレータ144の位置がずれること、および第1突出部46aおよび第2突出部47aが歪むこと、を抑制できる。
【0108】
第1基部46bおよび第2基部47bの構成は、特に限定されない。例えば、第1基部46bと第2基部47bとは、突出していなくてもよい。例えば、外側板部44cが基部として機能してもよい。
【0109】
ロータ30におけるロータコアの数は、1つであってもよい。モータ10は、例えば、アウターロータ型のモータであってもよい。
【0110】
上記実施形態の各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0111】
10…モータ、11…ステータユニット、30…ロータ、31…シャフト、40…ステータ、41…コアバック、42…ティース、42a…第1ティース群、42b…第2ティース群、42c…第3ティース群、43…コイル、43a…導電線、43b…コイル端、44,144…インシュレータ、45a…第1コイル、45b…第2コイル、45g…這回し線、46a…第1突出部、46b…第1基部(基部)、46c…第1傾斜面、47a…第2突出部、47b…第2基部(基部)、47c…第2傾斜面、71…下側バスバーホルダ(バスバーホルダ)、72…第1コイルサポート、72a…第1支持部、81…上側バスバーホルダ(バスバーホルダ)、82…第2コイルサポート、82a…第2支持部、90…中性点バスバー(バスバー)、90A…第1バスバー、90Aa…第1バスバー本体部(バスバー本体部)、90B…第2バスバー、90Ba…第2バスバー本体部(バスバー本体部)、91…相用バスバー(バスバー)、92A,92B…端子、96A…第1延出部(延出部)、96B…第2延出部(延出部)、97A…第1接続部(接続部)、97B…第2接続部(接続部)、146d…第1壁部、147d…第2壁部、A,B…接続系統、J…中心軸、DP…隙間、S1…第1コイル形成工程(工程S1)、S2…這回し線形成工程(工程S2)、S3…第2コイル形成工程(工程S3)、S4…配置工程(工程S4)、S5…切断工程(工程S5)、S6…接続工程(工程S6)、φ1,φ2…傾き
図1
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図11