(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、モータおよび紡績機械の例を開示する。なお、本開示では、モータの中心軸方向における
図1の右側を「上側」と、左側を「下側」として説明する。また、中心軸に平行な方向を「軸方向」と、中心軸を中心とする径方向を単に「径方向」と、中心軸を中心とする周方向を単に「周方向」として説明する。ただし、この方向の定義により、モータおよび紡績機械の製造時および使用時の向きを限定する意図はない。
【0009】
<1.第1実施形態>
<1−1.紡績機械の構成>
図1は、第1実施形態に係るモータ20を有する紡績機械1の構成を示す図である。紡績機械1は、ボビン11に糸12を巻き付けるための機械である。モータ20は、上下に延びる円筒状のモータケーシング41を、中心軸9を中心に回転させる。ボビン11は、モータケーシング41の外周面と接触して、中心軸9に対して平行に配置される棒状の部材である。ボビン11は、モータケーシング41と連動して、モータケーシング41とは逆方向に回転する。
【0010】
糸12は、図外の糸供給部から供給されて、その先端がボビン11に固定される。モータケーシング41の回転に伴ってボビン11が回転すると、糸12は、糸供給部から順次送られ、ボビン11へと巻き付けられていく。そして、モータケーシング41は、ボビン11に巻き付けられた糸12と接触しつつ、さらに回転する。そして、ボビン11は、巻き付けられた糸12の厚みが増加するにつれて、モータケーシング41から径方向外側へと押されて移動しながら、さらに糸12が巻き付けられていく。これにより、糸12が巻かれたボビン11が製造される。つまり、ボビン11は、モータ20と連動して回転し、糸12を巻き取る。この構造によって、紡績機械1の製造コストを削減できる。また、紡績機械1を小型化することができる。
【0011】
<1−2.モータの構成>
次に、紡績機械1に用いられるモータ20の詳細な構成について、説明する。
図2は、第1実施形態に係るモータ20の縦断面図である。モータ20は、ステータ33の径方向外側にマグネット42が配置される。つまり、モータ20は、アウターロータ型のモータである。モータ20は、静止部30と、回転部40と、軸受50と、を有する。
【0012】
静止部30は、紡績機械1の枠体に対して、相対的に静止する。静止部30は、シャフト31と、基板32と、ステータ33と、プレート34と、を有する。
【0013】
シャフト31は、中心軸9に沿って軸方向上下に延びる略円柱状の部材である。つまり、静止部30は、中心軸9に沿って上下に延びるシャフト31を有する。シャフト31の材料には、例えば、ステンレスや、炭素鋼等の金属が用いられる。シャフト31の上端部は、モータケーシング41よりも軸方向上側へ突出する。シャフト31の下端部は、モータケーシング41よりも軸方向下側へ突出する。シャフト31の上端部および下端部は、それぞれ、紡績機械1の枠体に固定される。
【0014】
ステータ33は、駆動電流に応じて磁束を発生させる部位である。ステータ33は、基板32の軸方向下側かつ軸受50の軸方向上側に位置する。ステータ33は、ステータコア331と、コイル332と、を有する。ステータコア331は、複数の鋼板を軸方向に積層した積層鋼板からなる。ステータコア331は、中心軸9を中心とする環状のコアバック333およびコアバック333から径方向外側へ向けて延びる複数のティース334を有する。コイル332は、ティース334に巻かれた導線35を有する。そして、導線35の端部は、第1導線351として、コイル332から基板32に向けて引き出される。つまり、コイル332から引き出される第1導線351は基板32と接続される。
【0015】
基板32は、電子回路や電子部品が搭載された略板状の部材である。基板32は、ステータ33より上側かつ、モータケーシング41の径方向内側において、シャフト31に対して垂直に配置される。すなわち、静止部30は、シャフト31に対して垂直に配置される基板32を有する。ただし、基板32は、シャフト31に対して略垂直であってもよい。本実施形態では、基板32は、シャフト31に対して垂直に固定された支持部325と接触して配置される。これにより、基板32はモータケーシング41内で位置決めされる。
【0016】
基板32は、コイル332から引き出される第1導線351と接続される。そして、基板32は、軸方向上面に、第2導線352が接続される。外部電源から供給された電流は、第2導線352、基板32、および第1導線351を介して、コイル332へと流れる。なお、
図1の例では、コイル332から引き出される第1導線351の数は1本であるが、コイル332から引き出される第1導線351の数は複数であってもよい。そして、複数の第1導線351が基板32と接続されてもよい。
【0017】
図3は、モータ20の上面図である。本実施形態では、コネクタ321は、基板32の上面に位置する。コネクタ321は、第2導線352と接続される端子322と、端子322の外周を囲むカバー部323とを有する。端子322は、導体である金属からなり、コイル332から引き出された第1導線351と電気的に接続される。そして、モータ20の外へ延びる第2導線352は、端子322と接続される。これにより、第2導線35と基板32とを、容易に接続することができる。また、第1導線351と第2導線352とを接続箇所を封止するための、ホットモールド工程が不要となる。このため、導線35がホットモールド工程によって損傷することを防止できる。
【0018】
カバー部323は、絶縁体である樹脂からなり、端子322の外周を環状に囲む。これにより、端子322が水や塵などの不純物と接触することを防ぐことができる。特に、本実施形態のモータ20は、紡績機械1に用いられる。このため、モータ20は、糸屑等の異物が発生しやすい環境下で使用される。しかしながら、カバー部323によって、端子322が糸屑等の異物と接触することを防ぐことができる。したがって、端子322の腐食などの劣化が抑えられ、モータ20を長寿命化できる。
【0019】
プレート34は、中心軸9に対して垂直に広がる略板状の部材である。なお、プレート34は、中心軸9に対して略垂直に広がっていてもよい。プレート34は、基板32より軸方向上側、かつ、モータケーシング41の上端より軸方向下側において、モータケーシング41の径方向内側に配置され、中心軸9に対して垂直に広がる。プレート34は、モータケーシング41とシャフト31との間を塞ぐ。これにより、外部からモータ20内部への異物の進入を防ぐことができる。なお、本実施形態では、プレート34は、軸受50より下側にも配置される。これにより、モータ20内部への異物の進入をより防ぐことができる。なお、プレート34は、貫通孔341を有する。そして、コネクタ321は貫通孔341内に配置される。これにより、複数の第2導線352は、コネクタ321により接続される。
【0020】
回転部40は、中心軸9を中心に回転する部位である。回転部40は、モータケーシング41、マグネット42、およびロータヨーク43を有する。
【0021】
モータケーシング41は、静止部30および軸受50を内部に収容する。モータケーシング41は、静止部30より径方向外側において、シャフト31を中心に軸方向に延びる円筒状の部材である。
図1および
図3に示すように、モータケーシング41の外周部には、軸方向に延びる複数の溝部411が設けられている。これにより、モータケーシング41と、ボビン11と、の間の摩擦が大きくなる。したがって、モータケーシング41の回転に伴って、ボビン11が空回りすることなく回転しやすくなる。また、モータケーシング41と、糸12との間の摩擦も大きくなる。したがって、モータケーシング41の回転に伴って、糸12をボビン11へと送りやすくなる。
【0022】
なお、モータケーシング41の材料は、アルミニウム合金であることが好ましい。アルミニウム合金は、鉄等の他の金属材料と比較して、硬度や融点が低い。このため、切削加工によって、モータケーシング41の外周部への溝部411の形成や、内周部の加工が容易になる。また、押出加工によってモータケーシング41の外周部に容易に溝部411を形成することができる。したがって、モータ20の製造コストを抑えることができる。また、アルミニウム合金を用いることで、モータケーシング41の重量を軽量化できる。このため、モータ20の駆動のための消費電力を抑えることができる。また、モータ20の駆動に伴い発生する振動や騒音を低減できる。ただし、モータケーシング41に、アルミニウム合金以外の材料が用いられていてもよい。
【0023】
図2に戻る。マグネット42は、モータケーシング41の内周面に直接またはロータヨーク43を介して配置される。ロータヨーク43は、磁性体により形成された円環状の部材である。ロータヨーク43は、例えば、モータケーシング41の内周面に圧入されることで固定される。ただし、ロータヨーク43は、圧入接着等の他の方法によって、モータケーシング41の内周面に固定されてもよい。
【0024】
マグネット42は、N極とS極とが周方向に交互に着磁された1つの円環状の部材である。マグネット42は、ロータヨーク43の内周面に、例えば接着剤で固定される。マグネット42の内周面は、複数のティース334の径方向外側の端面と、径方向に対向する。マグネット42の径方向内側の面は、ステータ33に対向する磁極面となっている。なお、1つの円環状のマグネット42に代えて、N極とS極とが交互に並ぶように、周方向に配列した複数のマグネットが、使用されていてもよい。また、マグネット42には、例えば、Nd−Fe−B合金系の焼結磁石が、使用されていてもよい。
【0025】
モータケーシング41の材料に、鉄などの磁性体を用いる場合には、ロータヨーク43を省略してもよい。その場合、モータケーシング41の内周面に、直接マグネット42を固定すればよい。
【0026】
モータ20は、軸受50を1つ以上有する。軸受50は、シャフト31に対して回転部40を、中心軸9を中心として回転可能に支持する。軸受50は、ステータ33よりも下側に配置される。本実施形態では、軸受50は、上軸受51と、上軸受51よりも下側に配置される下軸受52とを有する。本実施形態の上軸受51および下軸受52には、球体を介して外輪と内輪とを相対回転させるボールベアリングが、使用されている。上軸受51および下軸受52の内輪は、シャフト31の外周面に、固定されている。上軸受51および下軸受52の外輪は、モータケーシング41の内周面に、固定されている。なお、軸受50に、ボールベアリングに代えて、すべり軸受や流体軸受等の他方式の軸受が、使用されていてもよい。
【0027】
このようなモータ20において、ステータ33のコイル332に駆動電流を与えると、ステータコア331の複数のティース334に、径方向の磁束が発生する。そして、ティース334とマグネット42との間の磁束の作用により、周方向のトルクが発生する。その結果、静止部30に対して回転部40が、中心軸9を中心として回転する。回転部40が回転すると、モータケーシング41とともにボビン11も回転する。
【0028】
このように、本実施形態のモータ20では、ステータ33の軸方向下側のみに、軸受50が配置されている。そして、ステータ33のコイル332から、軸受50とは反対方向に、第1導線351が引き出されている。このため、軸受50を避けて導線を引き出すために、シャフト31を複雑に加工する必要がない。したがって、モータ20の製造コストを削減できる。
【0029】
<1−3.センサ、ダストシールについて>
次に、センサ324およびダストシール60について説明する。
【0030】
図4は、モータ20のステータ33付近の部分断面図である。本実施形態では、基板32は、軸方向下側の面に、少なくとも一つのセンサ324を有する。センサ324はマグネット42の磁束を検出する。これにより、モータケーシング41の回転速度を検出することができる。モータケーシング41の回転速度は、センサ324の検出結果に基づいて、フィードバック制御される。なお、基板32に搭載されるセンサ324の数は、一つであってもよく、二つ以上であってもよい。複数のセンサ324を設けることで、マグネット42の磁束をより精度よく検出することができる。
【0031】
ここで、
図4に示すように、コアバック333の軸方向の長さをLsとする。また、ステータコア331の軸方向の中心から、マグネット42の軸方向上側の端部までの軸方向の長さをLm1とする。このとき、LsとLm1は、Lm1>Lsの関係を満たす。つまり、コアバック333の軸方向の長さLsと、ステータコア331の軸方向の中心から、マグネット42の軸方向上側の端部までの軸方向の長さLm1と、がLm1>Lsの関係を満たす。これにより、マグネット42の上側の端部を、センサ324に接近させることができる。さらに、コアバック333とセンサ324との軸方向距離を長くすることができるため、コアバック333のコイル332周辺に発生する磁束が、センサ324に影響しにくい。したがって、センサ324によるマグネット42の磁束の検出精度を向上できる。
【0032】
また、マグネット42の軸方向下側の端部から、ステータコア331の中心までの軸方向の長さをLm2とする。このとき、Lm1とLm2は、Lm1≧Lm2の関係をさらに満たす。つまり、Lm1と、マグネット42の軸方向下側の端部から、ステータコア331の中心までの軸方向の長さLm2と、がLm1≧Lm2の関係をさらに満たす。これにより、マグネット42全体の軸方向の長さLmを抑えながら、マグネット42の上側の端部を、センサ324に接近させることができる。
【0033】
なお、本実施形態では、回転部40は、ダストシール60をさらに有する。
図5は、モータ20の、ダストシール60付近の拡大断面図である。ダストシール60は円環状の部材であり、モータケーシング41の内周面に嵌めこまれて固定される。そして、ダストシール60の一部は、プレート34と接触する。つまり、ダストシール60は、プレート34と、モータケーシング41との間を塞ぐ。したがって、水や埃などの不純物がモータ20内部へと進入することを防止できる。
【0034】
また、本実施形態では、ダストシール60は、金属製である金属部61と、樹脂製である樹脂部62と、を有する二色成型品である。ダストシール60の製造時には、金型の内部に予め金属部61を配置した状態で、金型の内部に樹脂を流し込むことにより、樹脂部62を成型する。金属部61は、モータケーシング41の内周面に沿って軸方向に延びる円筒部63と、円筒部63から径方向内側へ突出する環状の平板部64と、平板部64から径方向内側かつ軸方向下方へ折り曲がる傾斜部65と、を有する。樹脂部62は、傾斜部65の径方向内側の端部に配置される。そして、樹脂部62は、プレート34と接触する。このように、プレート34に対して、弾性を有する樹脂部62を接触させることにより、ダストシール60による防水性、防塵性を向上することができる。また、ダストシール60を、モータケーシング41内へ組み込みやすくなる。
【0035】
また、本実施形態では、金属部61が、モータケーシング41の内周面に固定される。これにより、モータケーシング41に対するダストシール60の固定強度が向上する。また、ダストシール60を、モータケーシング41内に容易に組み込むことができる。
【0036】
<2.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態には限定されない。
【0037】
図6は、変形例に係るモータのダストシール60A付近の拡大断面図である。ダストシール60Aの金属部61Aは、モータケーシング41Aの内周面に沿って、軸方向に延びる円筒部63Aと、円筒部63Aの上端から径方向内側へ突出する環状の平板部64Aと、平板部64Aの内端から径方向内側かつ下方へ折り曲がる傾斜部65Aと、を有する。樹脂部62Aは、傾斜部65Aの径方向内側の端部に配置される。そして、樹脂部62Aは、プレート34Aと接触する。ダストシール60Aは、このような構造であっても、モータケーシング41Aとプレート34Aとの間を塞ぐことができる。これにより、ダストシール60Aを、モータケーシング41A内へより組み込みやすくなる。
【0038】
また、上記の実施形態では、基板は電子回路や電子部品が搭載された部材であった。しかしながら、基板は電気伝導性を備えた部材であってもよく、導線を支持する配線台であってもよい。この場合、導線を配線台に這わせて、直接端子ピンへ接続させ、駆動電流を供給すればよい。
【0039】
また、上記の実施形態では、軸受は、上軸受と下軸受けの二つの軸受を有していた。しかしながら、軸受は、一つであってもよく、三つ以上であってもよい。
【0040】
また、上記の実施形態では、モータは紡績機械に使用されていた。しかしながら、モータは、他の用途に使用されるものであってもよい。
【0041】
また、各部材の細部の形状については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。