特許第6812994号(P6812994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6812994トナー、画像形成装置、及び画像形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6812994
(24)【登録日】2020年12月21日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】トナー、画像形成装置、及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/093 20060101AFI20201228BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   G03G9/093
   G03G9/097 365
【請求項の数】6
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2018-19061(P2018-19061)
(22)【出願日】2018年2月6日
(65)【公開番号】特開2019-138936(P2019-138936A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2020年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】野崎 貴俊
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−290303(JP,A)
【文献】 特開2019−045639(JP,A)
【文献】 特開2005−165043(JP,A)
【文献】 米国特許第06013404(US,A)
【文献】 特開平06−167828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00 − 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子を含み、
前記トナー粒子は、トナーコアと、前記トナーコアの表面を覆うシェル層とを備え、
前記トナーコアは、複合体粒子を含有し、
前記複合体粒子は、離型剤と導電性ポリマーとドーパントとの複合体の粒子であり、
前記複合体粒子の含有率は、前記トナーコアの質量に対して、0.5質量%以上15.0質量%以下である、トナー。
【請求項2】
前記複合体粒子の含有率は、前記トナーコアの質量に対して、0.5質量%以上10.0質量%以下である、請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記導電性ポリマーは、ポリチオフェン若しくはその誘導体、又はポリアニリン若しくはその誘導体を含む、請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記ドーパントは、ポリスチレンスルホン酸を含む、請求項1〜3の何れか一項に記載のトナー。
【請求項5】
トナーを収容するトナー収容部と、
像担持体と、
前記トナー収容部から供給された前記トナーにより、前記像担持体上の静電潜像をトナー像に現像する現像部と、
前記像担持体上の前記トナー像を、記録媒体に転写する転写部と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を、前記記録媒体に定着させる定着部と
を備え、
前記トナーが、請求項1〜4の何れか一項に記載のトナーである、画像形成装置。
【請求項6】
現像部が、トナー収容部から供給されたトナーにより、像担持体上の静電潜像をトナー像に現像する現像工程と、
転写部が、前記像担持体上の前記トナー像を、記録媒体に転写する転写工程と、
定着部が、前記記録媒体に転写された前記トナー像を、前記記録媒体に定着する定着工程と
を含み、
前記トナーが、請求項1〜4の何れか一項に記載のトナーであり、
前記定着工程において、前記トナー像を構成する前記トナーに含まれる前記トナー粒子の前記シェル層を前記定着部が破壊することにより、前記トナーコアに含有される前記複合体粒子が、前記定着部の表面に付着する、画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー、画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のトナーは、コアを含むトナー粒子を含む。このコアには、導電性表面層が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−290303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のトナーは、定着部に対するトナー付着に起因するオフセットの発生を抑制する点、及びトナー散りのような画像不良の発生を抑制する点で不十分であることが、本発明者の検討により判明した。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、定着部に対するトナー付着に起因するオフセットの発生を抑制しつつ、トナー散りのような画像不良の発生を抑制するトナーを提供することである。また、本発明の別の目的は、定着部に対するトナー付着に起因するオフセットの発生を抑制しつつ、トナー散りのような画像不良の発生を抑制する画像形成装置、及び画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るトナーは、トナー粒子を含む。前記トナー粒子は、トナーコアと、前記トナーコアの表面を覆うシェル層とを備える。前記トナーコアは、複合体粒子を含有する。前記複合体粒子は、離型剤と導電性ポリマーとドーパントとの複合体の粒子である。前記複合体粒子の含有率は、前記トナーコアの質量に対して、0.5質量%以上15.0質量%以下である。
【0007】
本発明に係る画像形成装置は、トナー収容部と、像担持体と、現像部と、転写部と、定着部とを備える。前記トナー収容部は、トナーを収容する。前記現像部は、前記トナー収容部から供給された前記トナーにより、前記像担持体上の静電潜像をトナー像に現像する。前記転写部は、前記像担持体上の前記トナー像を、記録媒体に転写する。前記定着部は、前記記録媒体に転写された前記トナー像を、前記記録媒体に定着させる。前記トナーが、上述したトナーである。
【0008】
本発明に係る画像形成方法は、現像工程と、転写工程と、定着工程とを含む。現像工程では、現像部が、トナー収容部から供給されたトナーにより、像担持体上の静電潜像をトナー像に現像する。転写工程では、転写部が、前記像担持体上の前記トナー像を、記録媒体に転写する。前記定着工程では、定着部が、前記記録媒体に転写された前記トナー像を、前記記録媒体に定着する。前記トナーが、上述したトナーである。前記定着工程において、前記トナー像を構成する前記トナーに含まれる前記トナー粒子の前記シェル層を前記定着部が破壊することにより、前記トナーコアに含有される前記複合体粒子が、前記定着部の表面に付着する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のトナーは、定着部に対するトナー付着に起因するオフセットの発生を抑制しつつ、トナー散りのような画像不良の発生を抑制することができる。本発明の画像形成装置、及び本発明の画像形成方法は、定着部に対するトナー付着に起因するオフセットの発生を抑制しつつ、トナー散りのような画像不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子の断面構造の一例を示す図である。
図2】定着部が備える定着ベルト及び加圧ローラーを示す図である。
図3】導電性ポリマーの一例と、ドーパントの一例とを示す図である。
図4】画像形成装置の一例を示す図であり、この画像形成装置には本発明の実施形態に係るトナーが収容される。
図5図4に示す定着部の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
粉体(より具体的には、トナーコア、トナー粒子、外添剤、又はトナー等)に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、相当数の粒子について測定した値の個数平均である。また、粉体の個数平均粒子径は、何ら規定していなければ、顕微鏡を用いて測定された1次粒子の円相当径の個数平均値である。円相当径は、ヘイウッド径であり、具体的には粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径である。また、粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、ベックマン・コールター株式会社製の「コールターカウンターマルチサイザー4」を用いてコールター原理(細孔電気抵抗法)に基づき測定した値である。「ガラス転移点」、及び「軟化点」を、各々、「Tg」、及び「Tm」と記載することがある。
【0012】
帯電性の強さは、何ら規定していなければ、日本画像学会から提供される標準キャリアに対する摩擦帯電のし易さである。例えばトナー(測定対象)は、日本画像学会から提供される標準キャリア(アニオン性:N−01、カチオン性:P−01)と混ぜて攪拌することで、測定対象を摩擦帯電させる。摩擦帯電させる前と後とでそれぞれ、例えばKFM(ケルビンプローブフォース顕微鏡)で測定対象の表面電位を測定し、摩擦帯電の前後での電位の変化が大きい測定対象ほど帯電性が強いことを示す。
【0013】
化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。
【0014】
[トナー]
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、トナーに関する。トナーは、トナー粒子を含む。トナーは、トナー粒子の集合体(粉体)である。
【0015】
図1は、本実施形態のトナーT(図4参照)に含まれるトナー粒子1の断面構造の一例を示す。図1に示されるトナー粒子1は、トナーコア2と、シェル層3とを備える。シェル層3は、トナーコア2の表面を覆う。トナーコア2は、複合体粒子4を含有する。複合体粒子4は、離型剤と導電性ポリマーとドーパントとの複合体の粒子である。
【0016】
本実施形態のトナーTは、定着部30(図2参照)に対するトナーTの付着に起因するオフセットの発生を抑制することができる。この理由は以下のように考えられる。ただし、以下の理由は仮説であって、本発明は以下の仮説によって限定されるものではない。
【0017】
まず、本実施形態のトナーTが正帯電性トナーである場合を例に挙げて説明する。画像形成装置100(図4参照)が備える定着部30は、その表面が負に帯電する傾向がある。負に帯電する傾向は、定着部30がその表面にフッ素樹脂層を備える場合に、顕著となる。フッ素樹脂が、強い負帯電性を示すからである。画像形成において記録媒体Pが定着部30を通過する際に、記録媒体Pと定着部30とが摩擦されることにより、記録媒体Pは正に摩擦帯電する傾向がある。正帯電性トナーは、正に摩擦帯電した記録媒体Pよりも、負に摩擦帯電した定着部30に対して、静電気的に付着し易い。このため、定着部30に対して正帯電性トナーが付着して、オフセットが発生する。
【0018】
ここで、本実施形態のトナーTにおいて、トナーコア2が複合体粒子4を含有する。複合体粒子4は、離型剤と導電性ポリマーとドーパントとの複合体の粒子である。画像形成の定着時に、定着部30によって、記録媒体P上のトナー粒子1のシェル層3が破壊される。これにより、記録媒体P上でトナー粒子1のトナーコア2が露出する。そして、トナーコア2に含有される複合体粒子4が、記録媒体Pから定着部30の表面に付着する。
【0019】
以下、図2を参照して、オフセットの発生を抑制できる理由を、更に詳細に説明する。図2は、画像形成装置100が備える定着部30の一例を示す。定着部30は、定着ベルト31と、加圧ローラー32とを備える。定着ベルト31と加圧ローラー32との間のニップ部36を、記録媒体Pが通過する。定着ベルト31と接触する記録媒体Pの表面には、未定着トナー像T1が形成されている。未定着トナー像T1は、トナー粒子1で構成されている。定着ベルト31と加圧ローラー32との間のニップ部36を記録媒体Pが通過するときに、記録媒体P上の未定着トナー像T1に含まれるトナー粒子1のシェル層3が破壊される。これにより、記録媒体P上でトナー粒子1のトナーコア2が露出する。そして、トナーコア2に含有される複合体粒子4が、記録媒体Pから定着部30の定着ベルト31の表面に付着する。付着した複合体粒子4は、定着ベルト31の表面に、複合体粒子層CPを形成する。定着ベルト31と加圧ローラー32との間のニップ部36を記録媒体Pが通過するときに、シェル層3が破壊されたトナー粒子1は、記録媒体Pに定着する。定着ベルト31と接触する記録媒体Pの表面に、定着したトナー粒子1を含む定着トナー像T2が形成される。
【0020】
複合体粒子4に含有される導電性ポリマーは、例えば、正孔を輸送する導電性ポリマーと、電子を輸送する導電性ポリマーとに大別される。以下、図2に加えて図3を更に参照して、導電性ポリマーが正孔を輸送する場合を例に挙げて説明する。図3は、導電性ポリマーの一例と、ドーパントの一例とを示す。導電性ポリマーの一例は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(以下、PEDOTと記載する)である。図3中のPEDOTは、導電性ポリマーの一例であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を示す。図3中のPSSは、ドーパント(詳しくは、アクセプター)の一例であるポリスチレンスルホン酸を示す。定着ベルト31の表面に複合体粒子4が付着した場合、複合体粒子4に含有されるドーパント(例えば、PSS)が、導電性ポリマー(例えば、PEDOT)から、電子を引き抜く。これにより、導電性ポリマー(例えば、PEDOT)内に、正孔が発生し、移動する。これにより、複合体粒子層CPから定着ベルト31の表面に正孔が移動し、負に摩擦帯電した定着ベルト31の表面の電子を打ち消す。これにより、定着ベルト31が負に摩擦帯電し難くなり、オフセットの発生を抑制することができる。
【0021】
次に、導電性ポリマーが電子を輸送する場合を例に挙げて説明する。定着ベルト31の表面に複合体粒子4が付着した場合、複合体粒子4に含有されるドーパント(詳しくは、ドナー)が、導電性ポリマーに電子を付与する。これにより、導電性ポリマー内を、電子が移動する。これにより、定着ベルト31の表面に付着した複合体粒子層CPに含有される導電性ポリマー内を電子が流れて、負に摩擦帯電した定着ベルト31の表面の電子が排出される。これにより、定着ベルト31が負に摩擦帯電し難くなり、オフセットの発生を抑制することができる。
【0022】
本実施形態によれば、画像形成のために使用されるトナーTによって、定着ベルト31の表面に複合体粒子4が供給され続ける。このため、連続して画像を形成した場合であっても、オフセットの発生を抑制することができる。以上、図2及び図3を参照して、定着部30に対するトナー付着に起因するオフセットの発生を抑制できる理由を説明した。
【0023】
なお、本実施形態のトナーTが負帯電性トナーである場合には、形成画像における像乱れを抑制できると考えられる。負帯電性トナーは、負に摩擦帯電した定着部30に対して、静電気的に反発する。定着部30に対する静電気的な反発により、記録媒体P上の負帯電性トナーの位置が若干ずれることがある。これにより、形成画像に像乱れが引き起こされる。ここで、既に述べたように、本実施形態のトナーTによれば、定着部30が負に摩擦帯電し難くなる。このため、本実施形態のトナーTが負帯電性トナーである場合には、形成画像における像乱れを抑制することができる。
【0024】
再び図1を参照して、トナーTに含まれるトナー粒子1の構造について説明を続ける。シェル層3がトナーコア2の表面を覆うことで、トナーTから電荷が抜け難くなり、トナーTの帯電量を所望の範囲内に維持することができる。これにより、トナー散りのような画像不良の発生を抑制することができる。シェル層3は、トナーコア2の表面全域を覆っていることが好ましく、トナーコア2の表面全域を完全に覆っていることがより好ましい。
【0025】
複合体粒子4は、トナーコア2内に位置する。複合体粒子4がトナーコア2内に位置することで、トナーTから電荷が抜け難くなり、トナーTの帯電量を所望の範囲内に維持することができる。これにより、定着部30に対するトナー付着に起因するオフセットの発生を抑制しつつ、トナー散りのような画像不良の発生を抑制することができる。複合体粒子4は、トナーコア2外には位置しないことが好ましい。複合体粒子4は、トナーコア2の表面には存在しないことが好ましい。複合体粒子4は、トナーコア2とシェル層3との間(界面)には位置していないことが好ましい。複合体粒子4は、シェル層3内には位置していないことが好ましい。複合体粒子4は、シェル層3の表面には備えられていないことが好ましい。複合体粒子4は、トナー粒子1の最表面には位置していないことが好ましい。以上、図1を参照して、トナーTに含まれるトナー粒子1の構造について説明した。以下、トナーについて更に説明する。
【0026】
<トナーコア>
トナーコアは、複合体粒子を含有する。トナーコアは、必要に応じて、結着樹脂、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉の少なくとも1つを更に含有していてもよい。
【0027】
(複合体粒子)
複合体粒子は、離型剤と導電性ポリマーとドーパントとの複合体の粒子である。複合体粒子の含有率は、トナーコアの質量に対して、0.5質量%以上15.0質量%以下である。複合体粒子がトナーコアの質量に対して0.5質量%以上であると、定着ベルトの表面に付着した導電性ポリマーによって、定着ベルトが負に摩擦帯電し難くなり、オフセットの発生を抑制することができる。複合体粒子の含有率がトナーコアの質量に対して15.0質量%以下であると、記録媒体にトナーを好適に定着させることができる。
【0028】
オフセットの発生とトナー散りのような画像不良の発生とを抑制しつつ、トナーの低温定着性を向上させるためには、複合体粒子の含有率は、トナーコアの質量に対して、0.5質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
【0029】
オフセットの発生を特に抑制するためには、複合体粒子の含有率は、トナーコアの質量に対して、11.0質量%以上15.0質量%以下であることが好ましい。
【0030】
複合体粒子の含有率は、トナーコアの質量に対して、0.5質量%以上3.0質量%未満、3.0質量%以上5.0質量%未満、5.0質量%以上10.0質量%未満、又は10.0質量%以上15.0質量%未満であってもよい。
【0031】
トナーコアの量に対する導電性ポリマーの量の比率は、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。トナーコアの量に対する導電性ポリマーの量の比率が0.1質量%以上であると、定着ベルトの表面に付着した導電性ポリマーによって、定着ベルトが負に摩擦帯電し難くなり、オフセットの発生を抑制することができる。トナーコアの量に対する導電性ポリマーの量の比率が10.0質量%以下であると、記録媒体にトナーを好適に定着させることができる。
【0032】
オフセットの発生とトナー散りのような画像不良の発生とを抑制しつつ、トナーの低温定着性を向上させるためには、トナーコアの量に対する導電性ポリマーの量の比率は、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
【0033】
オフセットの発生を特に抑制するためには、トナーコアの量に対する導電性ポリマーの量の比率は、6.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
【0034】
トナーコアの量に対する導電性ポリマーの量の比率は、0.1質量%以上1.0質量%未満、1.0質量%以上3.0質量%未満、3.0質量%以上4.0質量%未満、4.0質量%以上5.0質量%未満、5.0質量%以上7.0質量%未満、又は7.0質量%以上10.0質量%以下であってもよい。
【0035】
定着部に対するトナー付着に起因するオフセットの発生を抑制しつつ、トナー散りのような画像不良の発生を抑制するためには、複合体粒子の量に対する導電性ポリマーの量の比率は、50.0質量%以上70.0質量%以下であることが好ましい。複合体粒子の量に対する導電性ポリマーの量の比率は、50.0質量%以上52.0質量%未満、52.0質量%以上54.0質量%未満、54.0質量%以上60.0質量%未満、又は60.0質量%以上70.0質量%以下であってもよい。
【0036】
定着部に対するトナー付着に起因するオフセットの発生を抑制しつつ、トナー散りのような画像不良の発生を抑制するためには、導電性ポリマーの量に対するドーパントの量の比率は、5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。導電性ポリマーの量に対するドーパントの量の比率は、5質量%以上10質量%未満、10質量%以上15質量%未満、又は15質量%以上20質量%未満であってもよい。
【0037】
複合体粒子は、離型剤を含有する。以下、「複合体粒子に含有される離型剤」を「第一離型剤」と記載することがある。第一離型剤としては、例えば、脂肪族炭化水素ワックス(具体的には、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックス等)、脂肪族炭化水素ワックスの酸化物(具体的には、酸化ポリエチレンワックス、及びそのブロック共重合体等)、植物性ワックス(具体的には、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、及びライスワックス等)、動物性ワックス(具体的には、みつろう、ラノリン、及び鯨ろう等)、鉱物ワックス(具体的には、オゾケライト、セレシン、及びペトロラタム等)、脂肪酸エステルを主成分とするワックス類(具体的には、モンタン酸エステルワックス、及びカスターワックス等)、及び脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックス(具体的には、脱酸カルナバワックス等)が挙げられる。第一離型剤としては、カルナバワックスが好ましい。複合体粒子は、1種の第一離型剤のみを含有してもよく、2種以上の第一離型剤を含有してもよい。
【0038】
導電性ポリマーは、π共役系構造を有する。導電性ポリマーは、正孔を輸送する導電性ポリマー、及び電子を輸送する導電性ポリマーに大別される。導電性ポリマーの具体例としては、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリピロル及びその誘導体、並びにポリアセチレン及びその誘導体が挙げられる。導電性ポリマーの好適な例としては、ポリチオフェン及びその誘導体、並びにポリアニリン及びその誘導体が挙げられる。トナーの発色を良くするためには、導電性ポリマーは、透明であることが好ましい。
【0039】
ポリチオフェン及びその誘導体としては、例えば、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、及びポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が挙げられる。例示したポリチオフェン及びその誘導体のなかでも、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が好ましい。
【0040】
ポリアニリン及びその誘導体としては、例えば、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、及びポリ(2−エチルアニリン)が挙げられる。例示したポリアニリン及びその誘導体のなかでも、ポリアニリンが好ましい。
【0041】
ドーパントは、アクセプター及びドナーに大別される。アクセプターは、電子を受容する。導電性ポリマーが正孔を輸送する場合、ドーパントはアクセプターとなる。ドナーは、電子を放出する。導電性ポリマーが電子を輸送する場合、ドーパントはドナーとなる。
【0042】
ドーパントとしては、例えば、ポリアニオンが挙げられる。ポリアニオンは、アニオン基を有する構成単位の重合体である。ポリアニオンとしては、例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸、及びポリスルホン化フェニルアセチレンが挙げられる。ドーパントは、これらの重合体のうちの何れかの単独重合体であってもよく、これらの重合体のうちの2種以上の共重合体であってもよい。ドーパントとしては、ポリスチレンスルホン酸が好ましい。
【0043】
複合体粒子は、硬化剤を更に含有していてもよい。硬化剤としては、例えば、アミン硬化剤が挙げられる。アミン硬化剤としては、例えば、イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、及びイソホロンジアミンが挙げられる。硬化剤としては、イミダゾールが好ましい。
【0044】
複合体粒子が導電性ポリマー及びドーパントを含有することは、例えば、次の方法で確認できる。常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナーを分散させ、40℃の雰囲気中に2日間静置して、硬化物を得る。ミクロトーム(ライカ株式会社製「EM UC6」)を用いて、硬化物から、厚さ200nmのトナー粒子の断面観察用薄片試料を切り出す。薄片試料を、透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子株式会社製「JSM−6700F」)を用いて倍率3000倍又は10000倍で観察し、トナー粒子の断面のTEM写真を撮影する。電子エネルギー損失分光法(EELS)を用いて、TEM写真中に、導電性ポリマーに特徴的な元素(例えば、硫黄元素又は窒素元素)をマッピングする。これにより、複合体粒子が導電性ポリマーを含有することが確認できる。また、電子エネルギー損失分光法(EELS)を用いて、TEM写真中に、ドーパントに特徴的な元素(例えば、硫黄元素)をマッピングする。これにより、複合体粒子がドーパントを含有することが確認できる。なお、得られた硬化物を、四酸化オスミウムを用いて染色した後、TEMにより観察してもよい。複合体粒子に含有される離型剤は染色され難く、複合体粒子に含有される導電性ポリマー及びドーパントは染色され易い。このため、離型剤と、導電性ポリマー及びドーパントとを区別して観察することができる。
【0045】
複合体粒子以外のトナーコアに含有される成分は、導電性ポリマー及びドーパントを含有しないことが好ましい。例えば、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び磁性粉は、導電性ポリマー及びドーパントを含有しないことが好ましい。また、トナーコアに含有され且つ複合体粒子に含有されていない離型剤(以下、第二離型剤と記載することがある)は、導電性ポリマー及びドーパントを含有しないことが好ましい。
【0046】
(結着樹脂)
結着樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂、オレフィン系樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、及びウレタン樹脂が挙げられる。また、これらの樹脂の共重合体、すなわち前述の樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体も、結着樹脂を構成する熱可塑性樹脂として使用できる。例えば、スチレン−アクリル酸系樹脂又はスチレン−ブタジエン系樹脂も、結着樹脂を構成する熱可塑性樹脂として使用できる。トナーコアは、1種のみの結着樹脂を含有してもよいし、2種以上(例えば、2種又は3種)の結着樹脂を含有してもよい。結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0047】
ポリエステル樹脂は、アルコールモノマーとカルボン酸モノマーとを縮重合又は共縮重合させることにより得られる。ポリエステル樹脂は、アルコールモノマーと、カルボン酸モノマーとの重合物である。
【0048】
アルコールモノマーの例としては、ジオールモノマー、ビスフェノールモノマー、及び3価以上のアルコールモノマーが挙げられる。
【0049】
ジオールモノマーの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
【0050】
ビスフェノールモノマーの例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(例えば、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物)が挙げられる。
【0051】
3価以上のアルコールモノマーの例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
【0052】
カルボン酸モノマーの例としては、2価カルボン酸モノマー、及び3価以上のカルボン酸モノマーが挙げられる。
【0053】
2価カルボン酸モノマーの例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸、及びアルケニルコハク酸が挙げられる。アルキルコハク酸の例としては、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、及びイソドデシルコハク酸が挙げられる。アルケニルコハク酸の例としては、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、及びイソドデセニルコハク酸が挙げられる。
【0054】
3価以上のカルボン酸モノマーの例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、及びエンポール三量体酸が挙げられる。
【0055】
アルコールモノマーの1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。カルボン酸モノマーの1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。更に、カルボン酸モノマーを、エステル形成性の誘導体に誘導体化して使用してもよい。エステル形成性の誘導体の例としては、酸ハライド、酸無水物、及アルキル(例えば、炭素原子数1以上6以下のアルキル)エステルが挙げられる。画像形成に適したトナーを得るためには、結着樹脂の量が、トナーコアの質量に対して50質量%以上99質量%以下であることが好ましい。
【0056】
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、30℃以上80℃以下であることが好ましい。結着樹脂のガラス転移点は、30℃以上40℃未満、40℃以上60℃未満、又は60℃以上80℃以下であってもよい。結着樹脂の軟化点(Tm)は、60℃以上130℃以下であることが好ましい。結着樹脂の軟化点は、60℃以上80℃未満、80℃以上110℃未満、又は110℃以上130℃以下であってもよい。
【0057】
結着樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて、試料(結着樹脂)の吸熱曲線を得ることにより、測定することができる。具体的には、試料15mgをアルミ皿に入れて、そのアルミ皿を測定装置の測定部にセットする。リファレンスとして空のアルミ皿を使用する。吸熱曲線の測定では、測定部の温度を、測定開始温度10℃から150℃まで10℃/分の速度で昇温させる(RUN1)。その後、測定部の温度を150℃から10℃まで10℃/分の速度で降温させる。続けて、測定部の温度を再び10℃から150℃まで10℃/分の速度で昇温させる(RUN2)。RUN2により、試料の吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)を得る。得られた吸熱曲線から、試料のガラス転移点を読み取る。吸熱曲線中、比熱の変化点(ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点)の温度(オンセット温度)が試料のガラス転移点に相当する。
【0058】
結着樹脂の軟化点は、何ら規定していなければ、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)を用いて測定した値である。
【0059】
(着色剤)
トナーコアは、必要に応じて、着色剤を含有してもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。画像形成に適したトナーを得るためには、着色剤の量が、トナーコアの質量に対して1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。トナーコアは、1種のみの着色剤を含有してよいし、2種以上の着色剤を含有してもよい。
【0060】
トナーコアは、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
【0061】
トナーコアは、カラー着色剤を含有していてもよい。カラー着色剤の例としては、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤が挙げられる。
【0062】
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤の例としては、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、及びC.I.バットイエローが挙げられる。
【0063】
マゼンタ着色剤の例としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される1種以上の化合物が挙げられる。マゼンタ着色剤の例としては、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、及び254)が挙げられる。
【0064】
シアン着色剤の例としては、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物が挙げられる。シアン着色剤の例としては、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、及び66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、及びC.I.アシッドブルーが挙げられる。
【0065】
(第二離型剤)
トナーコアは、複合体粒子に含有される第一離型剤とは別に、複合体粒子に含有されていない第二離型剤を更に含有していてもよい。第二離型剤の例は、第一離型剤の例と同一である。第二離型剤としては、カルナバワックスが好ましい。トナーコアは、1種のみの第二離型剤を含有してもよく、2種以上の第二離型剤を含有してもよい。
【0066】
(電荷制御剤)
トナーコアは、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性及び帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
【0067】
トナーコアに負帯電性の電荷制御剤(具体的には、有機金属錯体、及びキレート化合物等)を含有させることで、トナーコアのアニオン性を強めることができる。また、トナーコアに正帯電性の電荷制御剤(具体的には、ピリジン、ニグロシン、及び4級アンモニウム塩等)を含有させることで、トナーコアのカチオン性を強めることができる。ただし、トナーにおいて十分な帯電性が確保される場合には、トナーコアに電荷制御剤を含有させる必要はない。
【0068】
(磁性粉)
トナーコアは、磁性粉を含有していてもよい。磁性粉の材料としては、例えば、強磁性金属(具体的には、鉄、コバルト、ニッケル、及びこれらの合金等)、強磁性金属酸化物(具体的には、フェライト、マグネタイト、及び二酸化クロム等)、及び強磁性化処理が施された材料(具体的には、熱処理により強磁性が付与された炭素材料等)が挙げられる。トナーコアは1種の磁性粉のみを含有してもよく、2種以上の磁性粉を含有してもよい。磁性粉からの金属イオン(例えば、鉄イオン)の溶出を抑制するためには、磁性粉を表面処理することが好ましい。
【0069】
<シェル層>
シェル層は、樹脂を含有する。以下、「シェル層が含有する樹脂」を、「シェル樹脂」と記載することがある。シェル層は、シェル樹脂によって構成されることが好ましく、シェル樹脂のみによって構成されることがより好ましい。シェル樹脂としては、スチレン系樹脂、又はスチレンアクリル酸系樹脂が好ましい。スチレン系樹脂は、スチレン系モノマーを含む単量体の重合体である。スチレン−アクリル酸系樹脂は、スチレン系モノマーとアクリル酸系モノマーとを含む単量体の重合体である。
【0070】
スチレン系モノマーは、スチレン又はその誘導体である。スチレン系モノマーの例としては、スチレン、アルキルスチレン(より具体的には、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、及び4−tert−ブチルスチレン等)、及びハロゲン化スチレン(より具体的には、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、及びp−クロロスチレン等)が挙げられる。スチレン系モノマーとしては、スチレンが好ましい。
【0071】
アクリル酸系モノマーは、(メタ)アクリル酸、又はその誘導体である。アクリル酸系モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル(具体的には、(メタ)アクリル酸n−プロピル、及び(メタ)アクリル酸iso−プロピル等)、(メタ)アクリル酸ブチル(具体的には、(メタ)アクリル酸n−ブチル、及び(メタ)アクリル酸iso−ブチル等)、及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、及び(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。アクリル酸系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸ブチルが好ましく、アクリル酸ブチルがより好ましい。
【0072】
シェル樹脂のガラス転移点(Tg)は、60℃以上100℃以下であることが好ましく、65℃以上75℃以下であることがより好ましい。シェル樹脂のガラス転移点の測定方法は、結着樹脂のガラス転移点の測定方法と同一である。
【0073】
<外添剤>
トナー粒子の表面に外添剤(詳しくは、外添剤粒子の集合体である粉体)を付着させてもよい。外添剤は、内添剤とは異なり、トナー粒子の内部には存在せず、トナー粒子の表面(トナー粒子の表層部)のみに選択的に存在する。例えば、トナー粒子(粉体)と外添剤(粉体)とを一緒に攪拌することで、トナー粒子の表面に外添剤粒子を付着させることができる。トナー粒子と外添剤粒子とは、互いに化学反応せず、化学的ではなく物理的に結合する。トナー粒子と外添剤粒子との結合の強さは、攪拌条件(より具体的には、攪拌時間、及び攪拌の回転速度等)、外添剤粒子の粒子径、外添剤粒子の形状、及び外添剤粒子の表面状態などによって調整できる。
【0074】
トナー粒子からの外添剤粒子の脱離を抑制しながら外添剤の機能を十分に発揮させるためには、外添剤の量(2種以上の外添剤粒子を使用する場合には、それら外添剤粒子の合計量)が、トナー粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。外添剤粒子の個数平均1次粒子径は、5nm以上50nm以下であることが好ましく、10nm以上35nm以下であることがより好ましい。
【0075】
外添剤粒子としては、無機粒子が好ましく、シリカ粒子、又は金属酸化物(具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウム等)の粒子が特に好ましい。ただし、外添剤粒子として、脂肪酸金属塩(具体的には、ステアリン酸亜鉛等)のような有機酸化合物の粒子、又は樹脂粒子を使用してもよい。外添剤粒子は、表面処理された外添剤粒子、より具体的には表面処理により正帯電性を付与された外添剤粒子(正帯電性シリカ粒子)であってもよい。トナー粒子の表面に、1種の外添剤粒子のみが備えられてもよく、2種以上の外添剤粒子が備えられてもよい。トナーコアの体積中位径(D50)が4μm以上9μm以下であることが好ましい。トナー粒子の体積中位径(D50)が4μm以上9μm以下であることが好ましい。
【0076】
なお、本実施形態のトナーは、例えば正帯電性トナー又は負帯電性トナーとして、静電潜像の現像に用いることができる。トナーを、1成分現像剤として使用してもよい。また、トナーとキャリアとを混合して、トナーを2成分現像剤として使用してもよい。高画質の画像を形成するためには、2成分現像剤におけるトナーの量は、キャリア100質量部に対して、5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。キャリアの個数平均1次粒子径は、20μm以上120μm以下であることが好ましい。トナーが1成分現像剤である場合には、トナーは、現像部内において現像スリーブ又はトナー帯電部材と摩擦することで、正又は負に帯電する。トナー帯電部材は、例えば、ドクターブレードである。トナーとキャリアとを含有する2成分現像剤である場合には、トナーは、現像部内においてキャリアと摩擦されることで、正又は負に帯電する。
【0077】
<トナーの製造方法>
まず、複合体粒子を形成する。詳しくは、導電性ポリマーを合成するためのモノマーと、ドーパントと、第一離型剤とを、溶媒中で混合する。これにより、複合体粒子が得られる。粉砕機を用いて、混合体粒子を粉砕することにより、所望の粒子径を有する混合体粒子を得てもよい。
【0078】
導電性ポリマーを合成するためのモノマーとしては、チオフェン及びその誘導体、アニリン及びその誘導体、ピロル及びその誘導体、並びにアセチレン及びその誘導体が挙げられる。導電性ポリマーを合成するためのモノマーの好適な例としては、チオフェン及びその誘導体、並びにアニリン及びその誘導体が挙げられる。
【0079】
チオフェン及びその誘導体としては、例えば、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、及び3,4−エチレンジオキシチオフェンが挙げられる。例示したチオフェン及びその誘導体のなかでも、3,4−エチレンジオキシチオフェンが好ましい。
【0080】
アニリン及びその誘導体としては、例えば、アニリン、2−メチルアニリン、及び2−エチルアニリンが挙げられる。例示したアニリン及びその誘導体のなかでも、アニリンが好ましい。
【0081】
溶媒としては、アルコールが好ましく、ブタノールがより好ましい。溶媒中に、既に述べた硬化剤を、更に添加してもよい。また、溶媒中に、触媒を、更に添加してもよい。触媒としては、例えば、パラトルエンスルホン酸鉄(III)が挙げられる。
【0082】
次いで、トナーコアを形成する。トナーコアの形成方法の好適な例としては、粉砕法及び凝集法が挙げられる。これらの方法は、結着樹脂中に内添剤を良好に分散させ易い。一般に、トナーは、粉砕トナーコアと重合トナーコア(ケミカルトナーコアとも呼ばれる)とに大別される。粉砕法で得られたトナーコアは粉砕トナーコアに属し、凝集法で得られたトナーは重合トナーコアに属する。本実施形態のトナーにおいて、トナーコアは、粉砕トナーコアであることが好ましい。
【0083】
粉砕法の一例では、まず、複合体粒子と、複合体粒子以外のトナー成分とを混合して、混合物を得る。複合体粒子以外のトナー成分は、例えば、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、第二離型剤、及び磁性粉の少なくとも1種である。続けて、得られた混合物を、溶融混練装置(例えば、1軸又は2軸の押出機)を用いて溶融しながら混練し、混練物を得る。続けて、混練物を粉砕及び分級する。これにより、所望の粒子径を有するトナーコアが得られる。
【0084】
凝集法の一例では、まず、複合体粒子と複合体粒子以外のトナー成分の粒子とを含む水性媒体中で、これらの粒子を凝集させる。複合体粒子以外のトナー成分の粒子は、例えば、結着樹脂の粒子、着色剤の粒子、電荷制御剤の粒子、第二離型剤の粒子、及び磁性粉の粒子の少なくとも1種である。これにより、複合体粒子と複合体粒子以外のトナー成分とを含有する凝集粒子が形成される。続けて、得られた凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含有される成分を合一化させる。これにより、所望の粒子径を有するトナーコアが得られる。
【0085】
次いで、シェル層を形成する。シェル層を形成する方法としては、例えば、in−situ重合法、液中硬化被膜法、及びコアセルベーション法が挙げられる。例えば、シェル層を形成するための材料(以下「シェル材料」と記載することがある)を溶かした水性媒体中にトナーコアを入れる。シェル材料は、例えば、水溶性である。続いて、その水性媒体を加熱することにより、シェル材料の重合反応を進行させる。これにより、トナーコアの表面にシェル層を形成する。
【0086】
また、シェル層の形成において、シェル材料として樹脂粒子(例えば、樹脂分散液)を使用してもよい。より具体的には、樹脂粒子とトナーコアとを含む液(例えば、水性媒体)中で、トナーコアの表面に樹脂粒子を付着させる。続いて、液を加熱することにより、樹脂粒子の膜化を進行させて、トナーコアの表面にシェル層を形成する。液を高温に保っている間に、トナーコアの表面において樹脂粒子同士の結合(ひいては、各樹脂粒子における架橋反応)を進行させることができる。
【0087】
水性媒体は、水を主成分とする媒体(より具体的には、純水、又は水と極性媒体との混合液等)である。水性媒体中の極性媒体としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール又はエタノール等)を使用できる。
【0088】
次いで、外添工程を行ってもよい。外添工程では、混合装置を用いて、トナー粒子に外添剤が埋め込まれないような条件でトナー粒子と外添剤とを混合することで、トナー粒子の表面に外添剤を付着させることができる。
【0089】
[画像形成方法及び画像形成装置]
以下、図4を参照して、本実施形態のトナーTを収容する画像形成装置100、及び本実施形態のトナーTを用いた画像形成方法について、説明する。なお、図4、及び後述する図5中、矢印Y1、Y2、Z1、及びZ2は、互いに直交する2軸(Y軸及びZ軸)に係る4方向を示している。矢印Z1は画像形成装置100の上方を、矢印Z2は画像形成装置100の下方を、矢印Y1は画像形成装置100の前方を、矢印Y2は画像形成装置100の後方を、それぞれ示す。
【0090】
画像形成装置100は、トナー収容部22と、像担持体21と、現像部23と、転写部14と、定着部30とを備える。トナー収容部22は、本実施形態のトナーTを収容する。現像部23は、トナー収容部22から供給されたトナーTにより、像担持体21上の静電潜像をトナー像に現像する(現像工程)。転写部14は、像担持体21上のトナー像を、記録媒体Pに転写する(転写工程)。定着部30は、記録媒体Pに転写されたトナー像を、記録媒体Pに定着させる(定着工程)。
【0091】
画像形成装置100は、トナー収容部22、像担持体21、現像部23、転写部14、及び定着部30に加えて、給紙カセット11と、手差しトレイ11aと、給紙ローラー12と、搬送路13と、搬送ローラー13aと、転写部14と、排出ローラー16と、排出部17と、帯電部24と、露光部25と、クリーニング部26とを更に備える。搬送ローラー13aは、搬送路13に設けられている。
【0092】
給紙カセット11は、複数枚の記録媒体P(例えば、印刷用紙)を収容する。給紙ローラー12は、給紙カセット11中の記録媒体Pを1枚ずつ搬送路13に送り出す。搬送ローラー13aは、搬送路13に送り出された記録媒体Pを転写部14に向けて搬送する。なお、手差しトレイ11aにセットされた記録媒体Pも、給紙カセット11中の記録媒体Pと同じように、転写部14に搬送される。
【0093】
像担持体21は、画像形成装置100の筐体に、回転可能に支持されている。像担持体21は、例えばモーター(不図示)によって駆動されて回転する。
【0094】
画像形成装置100では、1つの像担持体21につき、1つの現像部23が設けられている。また、1つの現像部23につき、1つのトナー収容部22が設けられている。
【0095】
トナー収容部22は、供給ローラー22aと、トナー補給路22bとを備える。供給ローラー22aが回転すると、トナー収容部22内のトナーTがトナー収容部22のトナー補給路22bを通って、現像部23に供給される。供給ローラー22aは、例えばモーター(不図示)によって駆動されて回転する。
【0096】
現像部23は、複数個(例えば、2本)の攪拌スクリュー23aと、現像ローラー23bとを備える。現像ローラー23bは、金属製のシャフトと、マグネットロールと、非磁性材料から構成される現像スリーブとを備える。マグネットロールは、少なくともその表層部に磁極(例えば、永久磁石に基づくN極及びS極)を有し、シャフトに固定されている。現像スリーブは、マグネットロールの表層部に回転可能に設けられている。詳しくは、非回転のマグネットロールの周りを現像スリーブが回転できるように、シャフトと現像スリーブとがフランジを介して接続されている。
【0097】
現像部23の収容部には、トナーTとキャリア(詳しくは、磁性キャリア)とを含む2成分現像剤が収容される。トナーTは、必要に応じて、トナー収容部22から現像部23の収容部へ補給される。攪拌スクリュー23aが回転すると、現像部23の収容部にある2成分現像剤が攪拌される。トナーTが正帯電性を有する場合、トナーTを含む2成分現像剤が攪拌されると、トナーTはキャリアとの摩擦により正に帯電する。また、トナーTが負帯電性を有する場合、トナーTを含む2成分現像剤が攪拌されると、トナーTはキャリアとの摩擦により負に帯電する。現像ローラー23bは、現像部23の収容部にあるトナーT(例えば、トナー収容部22から供給されたトナーT)を像担持体21に供給する。攪拌スクリュー23a及び現像ローラー23bはそれぞれ、例えばモーター(不図示)によって駆動されて回転する。なお、現像部23の収容部に収容される現像剤は、2成分現像剤に限られず任意であり、1成分現像剤であってもよい。
【0098】
帯電部24は、例えば、像担持体21の表面に当接する帯電性部材(より具体的には、帯電ローラー等)を備える。帯電部24は、像担持体21の表面(例えば、感光層)に一様に静電気を帯びさせる。これにより、帯電部24は、像担持体21の表面(例えば、感光層)を帯電する。
【0099】
露光部25は、例えば光源としてLED(発光ダイオード)ヘッドを備える。露光部25は、像担持体21の表面(例えば、感光層)を露光して、像担持体21の表面に静電潜像を形成する。
【0100】
画像形成装置100が記録媒体Pに画像を形成する場合には、帯電部24が像担持体21の感光層を帯電させる。続けて、露光部25が像担持体21の感光層に選択的に光を照射する。光の照射位置は、画像データに応じて決定される。感光層のうち光が照射された部分の電位は低下する。その結果、像担持体21の表面に静電潜像が形成される。
【0101】
続けて、現像部23が、帯電したトナーT(例えば、キャリアとの摩擦により帯電したトナーT)を像担持体21に供給して、静電潜像を現像する。帯電したトナーTは、静電潜像に応じて選択的に感光層に付着する。その結果、像担持体21の表面にトナー像が形成される。
【0102】
記録媒体Pは、搬送ローラー13aにより搬送されて、像担持体21と転写部14との間を通る。この際、転写部14にバイアス(電圧)をかけることにより、上述のようにして像担持体21に形成されたトナー像を記録媒体Pに転写することができる。
【0103】
定着部30は、トナー像を加熱及び加圧の少なくとも一方を行うことにより、記録媒体Pにトナー像を定着させる。これにより、記録媒体Pに画像が形成される。画像が形成された記録媒体Pは、排出ローラー16によって排出部17に排出される。
【0104】
なお、像担持体21から記録媒体Pへトナー像が転写された後、像担持体21の表面に残留しているトナーTは、クリーニング部26により除去される。また、画像形成装置100は、像担持体21の表面における残留電荷を除電するための除電部を備えてもよい。
【0105】
次に、図5を更に参照して、定着部30をより詳細に説明する。図5は、図4に示す定着部30の一例を示す。
【0106】
定着部30は、定着ベルト31と、加圧ローラー32と、保持部材33と、ニップ形成部材34と、ガイド板35と、搬送ガイド37と、分離板38と、複数個(例えば、2個)の誘導コイル39とを備える。なお、定着部30は、定着ベルト31の代わりに、定着ローラーを備えていてもよい。
【0107】
定着ベルト31は、記録媒体Pの搬送方向に対して垂直な幅方向(以下、単に「幅方向」と称す)に長い略円筒状に備えられている。保持部材33は、定着ベルト31の内側に配置される。定着ベルト31は、保持部材33、ニップ形成部材34及びガイド板35によって、幅方向に延びる回転軸の周りを、回転可能に支持されている。
【0108】
加圧ローラー32は、幅方向に長い略円筒状である。加圧ローラー32は、加圧機構(不図示)によって定着ベルト31に圧接され、定着ベルト31と加圧ローラー32の間にはニップ部36が形成される。加圧ローラー32は、定着フレーム(不図示)に回転可能に支持されている。加圧ローラー32は、駆動機構(不図示)によって、回転駆動される。
【0109】
記録媒体PにトナーTを定着させる際には、誘導コイル39に高周波電流が印加される。これに伴って、誘導コイル39によって磁界が発生されて、この磁界の作用によって定着ベルト31に渦電流が発生し、定着ベルト31が発熱する。つまり、誘導コイル39によって定着ベルト31が加熱される。また、磁界の作用によって、ガイド板35が発熱し、ガイド板35によっても定着ベルト31が加熱される。
【0110】
以下、図2を再び参照して、定着部30を更に詳細に説明する。図2は、図5に示す定着部30が備える定着ベルト31及び加圧ローラー32を模式的に示す。定着ベルト31は、第一基材層311と、第一弾性層312と、第一離型層313とを備えている。加圧ローラー32は、芯材321と、第二弾性層322と、第二離型層323とを備えている。定着ベルト31と加圧ローラー32との間に、ニップ部36が設けられている。ニップ部36を記録媒体Pが通過する。
【0111】
定着ベルト31が備える第一基材層311は、無端状のベルトである。第一弾性層312は、第一基材層311上に設けられる。第一離型層313は、第一弾性層312上に設けられる。第一基材層311は、例えば、メッキ処理又は圧延処理を施された金属(具体的には、ニッケル電気鋳造及び銅等)により構成されている。第一弾性層312は、例えば、シリコーンゴムにより構成されている。第一離型層313は、例えば、フッ素樹脂により構成されている。
【0112】
加圧ローラー32が備える芯材321は、円筒状である。第二弾性層322は、芯材321を覆う。第二離型層323は、第二弾性層322を覆う。芯材321は、例えば、ステンレス及びアルミニウムのような金属によって構成される。第二弾性層322は、例えばシリコーンゴム及びシリコンスポンジのような弾性部材によって構成される。第二離型層323は、例えばフッ素樹脂によって構成される。
【0113】
定着部30は、定着部30の表面に、フッ素樹脂層を備えることができる。具体的には、定着ベルト31の表面に位置する第一離型層313は、フッ素樹脂層であり得る。フッ素樹脂層を備える定着ベルト31は、負に摩擦帯電し易い。しかし、既に述べたように、本実施形態のトナーTによれば、定着ベルト31の表面に、複合体粒子4を含有する複合体粒子層CPが形成される。これにより、定着ベルト31が負に摩擦帯電し難くなり、オフセットの発生を抑制することができる。
【0114】
フッ素樹脂は、フッ素原子を含有する樹脂である。フッ素樹脂の例としては、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリトリフルオロエチレン(より具体的には、ポリクロロトリフルオロエチレン等)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、及びテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が挙げられる。
【0115】
本実施形態のトナーTを用いる画像形成方法では、定着工程において、未定着トナー像T1を構成する未定着のトナーTに含まれるトナー粒子1(図1参照)のシェル層3(図1参照)を、定着部30が破壊する。これにより、トナーコア2(図1参照)に含有される複合体粒子4(図1参照)が、定着部30の表面に付着する。詳しくは、加圧ローラー32が、駆動機構(不図示)によって回転駆動される。これに伴って、加圧ローラー32に圧接する定着ベルト31が加圧ローラー32の回転に従動して回転する。定着ベルト31が回転すると、定着ベルト31がニップ形成部材34(図5参照)に対して摺動する。この状態で、記録媒体Pがニップ部36に進入すると、加熱された定着ベルト31が、記録媒体P上の未定着トナー像T1に当接する。その結果、未定着トナー像T1中のトナーTが溶融するとともに加圧される。これにより、未定着トナー像T1に含まれるトナー粒子1のシェル層3が、定着ベルト31及び加圧ローラー32によって、破壊される。これにより、トナーコア2に含有される複合体粒子4が定着ベルト31の表面に付着して、複合体粒子4を含有する複合体粒子層CPが形成される。これにより、既に述べたように、定着ベルト31が負に摩擦帯電し難くなり、オフセットの発生を抑制することができる。
【0116】
また、定着ベルト31及び加圧ローラー32によってシェル層3が破壊された後、未定着のトナーTが、記録媒体Pに定着する。これにより、定着したトナーTで構成される定着トナー像T2が、記録媒体P上に形成される。ニップ部36を通過した記録媒体Pは、分離板38(図5参照)によって定着ベルト31から分離されて定着部30の外部へ排出される。以上、本実施形態のトナーTを収容する画像形成装置100、及び本実施形態のトナーTを用いた画像形成方法について、説明した。
【実施例】
【0117】
実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。表1に、実施例又は比較例に係るトナーA−1〜A−7及びB−1〜B−6の組成を示す。
【0118】
【表1】
【0119】
表1中「PEDOT」、「PSS」、「WAX」、及び「wt%」は、各々、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリスチレンスルホン酸、カルナウバワックス、及び質量%を示す。表1中「コア内」は、トナーコア内に複合体粒子が位置していることを示す。表1中「コア外」は、トナーコア外に、詳しくはトナーコアとシェル層との間(界面)に、複合体粒子が位置し、トナーコア内に複合体粒子が位置していないことを示す。表1中「シェル層」の欄の「有」は、トナー粒子がシェル層を備えていることを示す。表1中「シェル層」の欄の「無」は、トナー粒子がシェル層を備えていないことを示す。表1中「複合体粒子」の欄の「−」は、含有していないことを示す。表1中「比率」の欄の「−」は、比率の算出の対象となる材料が含有されていないため、算出できないことを示す。
【0120】
表1中「ドーパント/導電性ポリマー」は、導電性ポリマーの量に対するドーパントの量の比率(単位:質量%)を示す。導電性ポリマーの量に対するドーパントの量の比率は、式「(100×ドーパントの量)/導電性ポリマーの量」、即ち、式「(100×ポリスチレンスルホン酸の固形分量)/(3,4−エチレンジオキシチオフェン又はポリアニリンの量)」から算出した。なお、各量は、添加量である。
【0121】
表1中「導電性ポリマー/複合体粒子」は、複合体粒子の量に対する導電性ポリマーの量の比率(単位:質量%)を示す。複合体粒子の量に対する導電性ポリマーの量の比率は、式「(100×導電性ポリマーの量)/(導電性ポリマーの量+ドーパントの量+第一離型剤の量+硬化剤の量)」、即ち、式「(100×3,4−エチレンジオキシチオフェン又はポリアニリンの量)/(3,4−エチレンジオキシチオフェン又はポリアニリンの量+ポリスチレンスルホン酸の固形分量+カルナウバワックスの量+イミダゾールの量)」から算出した。なお、各量は、添加量である。
【0122】
表1中「導電性ポリマー/トナーコア」は、トナーコアの量に対する導電性ポリマーの量の比率(単位:質量%)を示す。トナーコアの量に対する導電性ポリマーの量の比率は、式「(100×導電性ポリマーの量)/(トナーコアの量)」、即ち、式「[100×トナーコア形成工程で添加した複合体粒子の量×(複合体粒子の量に対する導電性ポリマーの量の比率/100)]/(トナーコア材料の合計量)」から算出した。トナーコア材料の合計量は、後述するトナーコア材料1〜8の各々に記載の量の合計である。例えば、トナーコア材料1において、トナーコア材料の合計量は、100.00質量部(即ち、第一ポリエステル樹脂の量(62.50質量部)+第二ポリエステル樹脂の量(9.00質量部)+第三ポリエステル樹脂の量(12.00質量部)+複合体粒子CP−1の量(7.50質量部)+カルナバワックスの量(3.00質量部)+着色剤の量(6.00質量部)に相当)である。なお、各量は、添加量である。
【0123】
表1中「複合体粒子/トナーコア」は、トナーコアの質量に対する複合体粒子の含有率(単位:質量%)を示す。トナーコアの質量に対する複合体粒子の含有率は、式「(100×複合体粒子の量)/(トナーコアの量)」、即ち、式「(100×トナーコア形成工程で添加した複合体粒子の量)/(トナーコア材料の合計量)」から算出した。トナーコア材料の合計量は、後述するトナーコア材料1〜8の各々に記載の量の合計である。例えば、トナーコア材料1において、トナーコア材料の合計量は、100.00質量部(即ち、第一ポリエステル樹脂の量(62.50質量部)+第二ポリエステル樹脂の量(9.00質量部)+第三ポリエステル樹脂の量(12.00質量部)+複合体粒子CP−1の量(7.50質量部)+カルナバワックスの量(3.00質量部)+着色剤の量(6.00質量部)に相当)である。なお、各量は、添加量である。
【0124】
以下、トナーの製造に使用する複合体粒子CP−1〜CP−8の製造方法について、説明する。また、トナーA−1〜A−7及びB−1〜B−6の製造方法、評価方法、及び評価結果について、説明する。なお、誤差が生じる評価においては、誤差が十分小さくなる相当数の測定値を得て、得られた測定値の個数平均を評価値とした。
【0125】
[複合体粒子の製造方法]
複合体粒子を、以下の方法で作製した。
【0126】
<複合体粒子CP−1の作製>
パラトルエンスルホン酸鉄(III)(バイエル社製)100.0gと、イミダゾール(シグマアルドリッチ社製)4.0gとを、ブタノール700.0gに溶解させ、溶液を得た。溶液に、3,4−エチレンジオキシチオフェン(シグマアルドリッチ社製)10.0gを添加した。3,4−エチレンジオキシチオフェンの添加直後に、ポリスチレンスルホン酸水溶液(固形分濃度20wt%、シグマアルドリッチ社)5.0gを、溶液に更に添加した。添加したポリスチレンスルホン酸の量は、1.0g(即ち、ポリスチレンスルホン酸水溶液の量5.0g×固形分濃度20wt%/100)であった。次いで、90℃に加熱したカルナバワックス(株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」)4.0gを、溶液に更に添加した。水温90℃のウォーターバス中で、溶液を15分間温めた。溶液を室温(25℃)まで冷却した後、溶液を乾燥させた。これにより、固形物を得た。精製水を用いて固形物を洗浄し、真空乾燥機を用いて固形物中の水分を除去した。水分を除去した固形物を、粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)」)を用いて粉砕し、複合体粒子CP−1を得た。複合体粒子CP−1は、第一離型剤(具体的には、カルナバワックス)と、導電性ポリマー(具体的には、PEDOT)と、ドーパント(具体的には、ポリスチレンスルホン酸)と、硬化剤(具体的には、イミダゾール)との複合体の粒子であった。
【0127】
<複合体粒子CP−2の作製>
ポリアニリン(シグマアルドリッチ社製)10.0gと、ポリスチレンスルホン酸(固形分濃度100wt%の粉体、シグマアルドリッチ社製)1.0gとを、N−メチルピロリドン(シグマアルドリッチ社製)500.0gに添加し、溶液を得た。次いで、90℃に加熱したカルナバワックス(株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」)4.0gを、溶液に更に添加した。水温90℃のウォーターバス中で、溶液を15分間温めた。溶液を室温(25℃)まで冷却した後、溶液をろ過して、固形物を得た。精製水を用いて固形物を洗浄し、真空乾燥機を用いて固形物中の水分を除去した。水分を除去した固形物を、粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)」)を用いて粉砕し、複合体粒子CP−2を得た。複合体粒子CP−2は、第一離型剤(具体的には、カルナバワックス)と、導電性ポリマー(具体的には、ポリアニリン)と、ドーパント(具体的には、ポリスチレンスルホン酸)との複合体の粒子であった。複合体粒子CP−2は、硬化剤(具体的には、イミダゾール)を含有していなかった。
【0128】
<複合体粒子CP−3の作製>
ポリスチレンスルホン酸水溶液(固形分濃度20wt%、シグマアルドリッチ社)の添加量を5.0gから2.5gに変更した以外は、複合体粒子CP−1の作製と同じ方法で、複合体粒子CP−3を作製した。複合体粒子CP−3の作製で添加したポリスチレンスルホン酸の量は、0.5g(即ち、ポリスチレンスルホン酸水溶液の量2.5g×固形分濃度20wt%/100)であった。
【0129】
<複合体粒子CP−4の作製>
ポリスチレンスルホン酸水溶液(固形分濃度20wt%、シグマアルドリッチ社)の添加量を5.0gから10.0gに変更した以外は、複合体粒子CP−1の作製と同じ方法で、複合体粒子CP−4を作製した。複合体粒子CP−4の作製で添加したポリスチレンスルホン酸の量は、2.0g(即ち、ポリスチレンスルホン酸水溶液の量10.0g×固形分濃度20wt%/100)であった。
【0130】
<複合体粒子CP−5の作製>
パラトルエンスルホン酸鉄(III)(バイエル社製)300.0gと、イミダゾール(シグマアルドリッチ社製)12.0gとを、ブタノール2100.0gに溶解させ、溶液を得た。溶液に、3,4−エチレンジオキシチオフェン(シグマアルドリッチ社製)30.0gを添加した。3,4−エチレンジオキシチオフェンの添加直後に、ポリスチレンスルホン酸水溶液(固形分濃度20wt%、シグマアルドリッチ社)15.0gを、溶液に更に添加した。添加したポリスチレンスルホン酸の量は、3.0g(即ち、ポリスチレンスルホン酸水溶液の量15.0g×固形分濃度20wt%/100)であった。次いで、90℃に加熱したカルナバワックス(株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」)5.0gを、溶液に更に添加した。水温90℃のウォーターバス中で、溶液を15分間温めた。溶液を室温(25℃)まで冷却した後、溶液を乾燥させた。これにより、固形物を得た。精製水を用いて固形物を洗浄し、真空乾燥機を用いて固形物中の水分を除去した。水分を除去した固形物を、粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)」)を用いて粉砕し、複合体粒子CP−5を得た。複合体粒子CP−5は、第一離型剤(具体的には、カルナバワックス)と、導電性ポリマー(具体的には、PEDOT)と、ドーパント(具体的には、ポリスチレンスルホン酸)と、硬化剤(具体的には、イミダゾール)との複合体の粒子であった。
【0131】
<複合体粒子CP−6の作製>
ポリスチレンスルホン酸水溶液を添加しなかったこと以外は、複合体粒子CP−1の作製と同じ方法で、複合体粒子CP−6を作製した。複合体粒子CP−6は、第一離型剤(具体的には、カルナバワックス)と、導電性ポリマー(具体的には、PEDOT)と、硬化剤(具体的には、イミダゾール)との複合体の粒子であった。複合体粒子CP−6は、ドーパント(具体的には、ポリスチレンスルホン酸)を含有していなかった。
【0132】
<複合体粒子CP−7の作製>
パラトルエンスルホン酸鉄(III)(バイエル社製)100.0gと、イミダゾール(シグマアルドリッチ社製)4.0gとを、ブタノール700.0gに溶解させ、溶液を得た。溶液に、3,4−エチレンジオキシチオフェン(シグマアルドリッチ社製)10.0g添加した。3,4−エチレンジオキシチオフェンの添加直後に、ポリスチレンスルホン酸水溶液(固形分濃度20wt%、シグマアルドリッチ社)5.0gを、溶液に更に添加した。添加したポリスチレンスルホン酸の量は、1.0g(即ち、ポリスチレンスルホン酸水溶液の量5.0g×固形分濃度20wt%/100)であった。次いで、溶液を室温(25℃)で乾燥させて、固形物を得た。精製水を用いて固形物を洗浄し、真空乾燥機を用いて固形物中の水分を除去した。水分を除去した固形物を、粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)」)を用いて粉砕し、複合体粒子CP−7を得た。複合体粒子CP−7は、導電性ポリマー(具体的には、PEDOT)と、ドーパント(具体的には、ポリスチレンスルホン酸)と、硬化剤(具体的には、イミダゾール)との複合体の粒子であった。複合体粒子CP−7は、第一離型剤(具体的には、カルナバワックス)を含有していなかった。
【0133】
<複合体粒子CP−8の作製>
パラトルエンスルホン酸鉄(III)(バイエル社製)100.0gと、イミダゾール(シグマアルドリッチ社製)4.0gとを、ブタノール700.0gに溶解させ、溶液を得た。溶液に、3,4−エチレンジオキシチオフェン(シグマアルドリッチ社製)10.0g添加した。3,4−エチレンジオキシチオフェンの添加直後に、ポリスチレンスルホン酸水溶液(固形分濃度20wt%、シグマアルドリッチ社)5.0gを、溶液に更に添加した。添加したポリスチレンスルホン酸の量は、1.0g(即ち、ポリスチレンスルホン酸水溶液の量5.0g×固形分濃度20wt%/100)であった。水温90℃のウォーターバス中で、溶液を15分間温めた。溶液を室温(25℃)まで冷却した後、溶液を乾燥させた。これにより、固形物を得た。精製水を用いて固形物を洗浄し、真空乾燥機を用いて固形物中の水分を除去した。水分を除去した固形物を、乳鉢と乳棒を用いて粉末状にした。これにより、複合体粒子CP−8を得た。複合体粒子CP−8は、導電性ポリマー(具体的には、PEDOT)と、ドーパント(具体的には、ポリスチレンスルホン酸)と、硬化剤(具体的には、イミダゾール)との複合体の粒子であった。複合体粒子CP−8は、第一離型剤(具体的には、カルナバワックス)を含有していなかった。
【0134】
[トナーの製造方法]
<トナーA−1の作製>
以下の方法で、トナーA−1を作製した。
【0135】
(トナーコア形成工程)
下記トナーコア材料1に示す量と種類のトナーコア材料を、FMミキサーに投入した。なお、第一ポリエステル樹脂は低粘度であり、第二ポリエステル樹脂は中粘度であり、第三ポリエステル樹脂は高粘度であった。
【0136】
<<トナーコア材料1>>
第一ポリエステル樹脂(Tg38℃、Tm65℃):62.50質量部、
第二ポリエステル樹脂(Tg53℃、Tm84℃):9.00質量部、
第三ポリエステル樹脂(Tg71℃、Tm120℃):12.00質量部、
複合体粒子CP−1:7.50質量部、
第二離型剤(カルナバワックス、株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」):3.00質量部、及び
着色剤(フタロシアニンブルー、DIC株式会社製「KET Blue111」):6.00質量部。
【0137】
FMミキサーを用いて、回転数2400rpmの条件で、トナーコア材料を混合し、混合物を得た。2軸押出機を用いて、材料投入速度5kg/時間、軸回転数160rpm、及び設定温度105℃の条件で、混合物を溶融しながら混練し、混練物を得た。混練物を、冷却した。粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)」)を用いて、冷却した混練物を1次粉砕し、1次粉砕物を得た。ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製「超音波ジェットミルI型」)を用いて、1次粉砕物を2次粉砕し、2次粉砕物を得た。分級機(コアンダ効果を利用した風力分級機:日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて、2次粉砕物を分級し、トナーコアを得た。
【0138】
(樹脂粒子懸濁液の形成工程)
次に、シェル材料である樹脂粒子懸濁液を作製した。詳しくは、温度計及び攪拌羽根を備えた容量2Lの3つ口フラスコに、イオン交換水875mL、及びアニオン界面活性剤(花王株式会社製「ラテムル(登録商標)WX」、成分:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、固形分濃度:26質量%)75mLを入れた。ウォーターバスを用いて、フラスコ内温を80℃まで上げた。フラスコ内に、液(A)を5時間かけて滴下した。液(A)は、スチレン17mL及びアクリル酸ブチル3mLの混合液であった。液(A)の滴下と同時に、フラスコ内に、液(B)も5時間かけて滴下した。液(B)は、イオン交換水30mLに過硫酸カリウム0.5gを溶解させた溶液であった。液(A)及び液(B)の滴下終了後、フラスコ内容物を80℃で2時間保持した。これにより、重合反応を完結させて、樹脂粒子懸濁液を得た。透過型電子顕微鏡を用いて、得られた樹脂粒子懸濁液中の樹脂粒子の個数平均粒子径を測定したところ、32nmであった。示差走査型熱量計を用いて、樹脂粒子懸濁液中の樹脂粒子のTgを測定したところ、71℃であった。樹脂粒子懸濁液中の樹脂粒子は、スチレンアクリル酸系樹脂(具体的には、スチレンとアクリル酸ブチルとの共重合体)の粒子であった。
【0139】
(シェル層形成工程)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量2Lの3つ口フラスコに、イオン交換水300mLを入れた。ウォーターバスを用いて、フラスコ内容物の温度を30℃に保持した。次いで、フラスコ内に希塩酸を添加し、フラスコ内の水性媒体のpHを4に調整した。pH調整後、フラスコ内に、シェル材料(具体的には、上述の樹脂粒子懸濁液の作製で得られた樹脂粒子懸濁液)30mLを添加し、シェル材料を水性媒体に溶解させて、シェル材料の水溶液(C)を得た。フラスコ内の水溶液(C)に、トナーコア300gを添加した。フラスコ内容物を、200rpmの速度で1時間攪拌した。次いで、フラスコ内に、イオン交換水300mLを添加した。フラスコ内容物を100rpmで攪拌しながら、1℃/分の速度で、フラスコ内温物の温度を30℃から70℃まで上げた。昇温の途中フラスコ内温物の温度が35℃に達した時点で、フラスコ内に水酸化ナトリウム水溶液を添加して、フラスコ内の水性媒体のpHを7に調整した。70℃まで昇温した後、フラスコ内容物を常温まで冷却した。これにより、トナー粒子を含む分散液を得た。
【0140】
(洗浄工程)
ブフナー漏斗を用いてろ過することにより、トナー粒子を含む分散液から、トナー粒子のウェットケーキを取り出した。トナー粒子のウェットケーキをイオン交換水に分散させることにより、トナー粒子を洗浄した。このトナー粒子の洗浄を5回繰り返し、洗浄されたトナー粒子のウェットケーキを得た。
【0141】
(乾燥工程)
洗浄工程で得られたトナー粒子のウェットケーキを、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させて、スラリーを得た。スラリーを連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)に供給した。これにより、スラリー中のトナー粒子を乾燥させて、トナー粒子を得た。コートマイザーの乾燥条件は、熱風温度45℃、ブロアー風量2m3/分であった。
【0142】
(外添工程)
乾燥工程で得られたトナー粒子100.0質量部と、疎水性シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)RA−200H」、内容:トリメチルシリル基とアミノ基とで表面修飾された乾式シリカ粒子、BET比表面積:約150m2/g、個数平均1次粒子径:約12nm)2.0質量部と、導電性酸化チタン粒子(チタン工業株式会社製「EC−100」、基体:TiO2粒子、被覆層:SbドープSnO2層)1.5質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)を用いて、5分間混合した。これにより、外添剤をトナー粒子の表面に付着させた。200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて、外添剤が付着したトナー粒子を篩分けし、トナーA−1を得た。トナーA−1は、外添剤が付着したトナー粒子の多数個で構成された集合体(粉体)であった。
【0143】
<トナーA−2の作製>
トナーコア材料1を下記トナーコア材料2に変更した以外は、トナーA−1の作製と同じ方法で、トナーA−2を作製した。
【0144】
<<トナーコア材料2>>
第一ポリエステル樹脂(Tg38℃、Tm65℃):63.25質量部、
第二ポリエステル樹脂(Tg53℃、Tm84℃):10.00質量部、
第三ポリエステル樹脂(Tg71℃、Tm120℃):13.00質量部、
複合体粒子CP−1:3.75質量部、
第二離型剤(カルナバワックス、株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」):4.00質量部、及び
着色剤(フタロシアニンブルー、DIC株式会社製「KET Blue111」):6.00質量部。
【0145】
<トナーA−3の作製>
トナーコア材料1を下記トナーコア材料3に変更した以外は、トナーA−1の作製と同じ方法で、トナーA−3を作製した。
【0146】
<<トナーコア材料3>>
第一ポリエステル樹脂(Tg38℃、Tm65℃):64.00質量部、
第二ポリエステル樹脂(Tg53℃、Tm84℃):10.45質量部、
第三ポリエステル樹脂(Tg71℃、Tm120℃):14.00質量部、
複合体粒子CP−1:0.75質量部、
第二離型剤(カルナバワックス、株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」):4.80質量部、及び
着色剤(フタロシアニンブルー、DIC株式会社製「KET Blue111」):6.00質量部。
【0147】
<トナーA−4の作製>
トナーコア材料1を下記トナーコア材料4に変更した以外は、トナーA−1の作製と同じ方法で、トナーA−4を作製した。
【0148】
<<トナーコア材料4>>
第一ポリエステル樹脂(Tg38℃、Tm65℃):61.00質量部、
第二ポリエステル樹脂(Tg53℃、Tm84℃):7.00質量部、
第三ポリエステル樹脂(Tg71℃、Tm120℃):10.00質量部、
複合体粒子CP−1:15.00質量部、
第二離型剤(カルナバワックス、株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」):1.00質量部、及び
着色剤(フタロシアニンブルー、DIC株式会社製「KET Blue111」):6.00質量部。
【0149】
<トナーA−5の作製>
複合体粒子CP−1(7.50質量部)を複合体粒子CP−2(7.50質量部)に変更した以外は、トナーA−1の作製と同じ方法で、トナーA−5を作製した。
【0150】
<トナーA−6の作製>
複合体粒子CP−1(7.50質量部)を複合体粒子CP−3(7.50質量部)に変更した以外は、トナーA−1の作製と同じ方法で、トナーA−6を作製した。
【0151】
<トナーA−7の作製>
複合体粒子CP−1(7.50質量部)を複合体粒子CP−4(7.50質量部)に変更した以外は、トナーA−1の作製と同じ方法で、トナーA−7を作製した。
【0152】
<トナーB−1の作製>
トナーコア材料1を下記トナーコア材料5に変更した以外は、トナーA−1の作製と同じ方法で、トナーB−1を作製した。トナーコア材料5に示すように、トナーB−1のトナーコアの作製には、複合体粒子を使用しなかった。
【0153】
<<トナーコア材料5>>
第一ポリエステル樹脂(Tg38℃、Tm65℃):64.00質量部、
第二ポリエステル樹脂(Tg53℃、Tm84℃):11.00質量部、
第三ポリエステル樹脂(Tg71℃、Tm120℃)14.00質量部、
第二離型剤(カルナバワックス、株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」):5.00質量部、及び
着色剤(フタロシアニンブルー、DIC株式会社製「KET Blue111」):6.00質量部。
【0154】
<トナーB−2の作製>
トナーコア材料1を下記トナーコア材料6に変更した以外は、トナーA−1の作製と同じ方法で、トナーB−2を作製した。
【0155】
<<トナーコア材料6>>
第一ポリエステル樹脂(Tg38℃、Tm65℃):59.00質量部、
第二ポリエステル樹脂(Tg53℃、Tm84℃):5.00質量部、
第三ポリエステル樹脂(Tg71℃、Tm120℃):10.00質量部、
複合体粒子CP−5:20.00質量部、及び
着色剤(フタロシアニンブルー、DIC株式会社製「KET Blue111」):6.00質量部。
【0156】
<トナーB−3の作製>
樹脂粒子懸濁液の形成工程、シェル層形成工程、洗浄工程、及び乾燥工程を行わなかった以外は、トナーA−1の作製と同じ方法で、トナーB−3を作製した。シェル層形成工程を行っていないため、トナーB−3に含まれるトナー粒子は、シェル層を備えていなかった。
【0157】
<トナーB−4の作製>
トナーコア材料1を下記トナーコア材料7に変更した以外は、トナーA−1の作製と同じ方法で、トナーB−4を作製した。
【0158】
<<トナーコア材料7>>
第一ポリエステル樹脂(Tg38℃、Tm65℃):63.00質量部、
第二ポリエステル樹脂(Tg53℃、Tm84℃):9.00質量部、
第三ポリエステル樹脂(Tg71℃、Tm120℃):12.00質量部、
複合体粒子CP−6(ドーパント非含有):7.50質量部、
第二離型剤(カルナバワックス、株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」):2.50質量部、及び
着色剤(フタロシアニンブルー、DIC株式会社製「KET Blue111」):6.00質量部。
【0159】
<トナーB−5の作製>
トナーコア材料1を下記トナーコア材料8に変更した以外は、トナーA−1の作製と同じ方法で、トナーB−5を作製した。
【0160】
<<トナーコア材料8>>
第一ポリエステル樹脂(Tg38℃、Tm65℃):63.25質量部、
第二ポリエステル樹脂(Tg53℃、Tm84℃):10.00質量部、
第三ポリエステル樹脂(Tg71℃、Tm120℃):13.00質量部、
複合体粒子CP−7(第一離型剤非含有):2.75質量部、
第二離型剤(カルナバワックス、株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」):5.00質量部、及び
着色剤(フタロシアニンブルー、DIC株式会社製「KET Blue111」):6.00質量部。
【0161】
<トナーB−6の作製>
トナーB−1のトナーコアの作製と同じ方法で、トナーB−6のトナーコアを作製した。トナーB−6のトナーコアの作製には、複合体粒子を使用しなかった。次いで、トナーコア95質量部と、複合体粒子CP−8(第一離型剤非含有、微粉砕)5質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)を用いて、混合した。これにより、トナーコアの表面に、複合体粒子CP−8を付着させた。次いで、トナーコア(300g)の代わりに、複合体粒子CP−8が付着したトナーコア(300g)を添加した以外は、トナーA−1のシェル層形成工程と同じ方法で、トナーB−6のシェル層形成工程を行った。次いで、トナーA−1の洗浄工程、乾燥工程、及び外添工程と同じ方法で、トナーB−6の洗浄工程、乾燥工程、及び外添工程を行った。これにより、トナーB−6を得た。トナーB−6に含まれるトナー粒子は、トナーコアの表面が複合体粒子CP−8で構成される層で覆われ、複合体粒子CP−8で構成される層の表面がシェル層で覆われていた。つまり、トナーコアの表面上に複合体粒子CP−8で構成される層が備えられ、複合体粒子CP−8で構成される層上にシェル層が備えられていた。トナーB−6に含まれるトナー粒子においては、トナーコアとシェル層との間(界面)に複合体粒子CP−8が位置し、トナーコア内に複合体粒子CP−8が位置していなかった。
【0162】
[評価方法]
各試料(トナーA−1〜A−7及びB−1〜B−6の各々)の評価方法は、以下のとおりであった。
【0163】
まず、評価に使用するための2成分現像剤を作製した。詳しくは、カラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa 8052ci」)用のキャリア100質量部と、トナー(トナーA−1〜A−7及びB−1〜B−6の何れか)10質量部とを混合し、評価用2成分現像剤を得た。
【0164】
<耐オフセット性の評価>
評価用2成分現像剤を用いて画像を形成することにより、耐オフセット性を評価した。評価環境は、温度32.5℃、且つ相対湿度80%であった。評価機としては、カラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa 8052ci」)の改造機を使用した。改造機においては、定着ベルトに付随した電荷チャージャーを取り外す改造を行った。定着ベルトの表面層は、フッ素樹脂層であった。定着ベルトの定着温度を160℃に設定した。現像部の現像バイアスを250Vに調整した。評価機のシアン用現像部(現像装置)に、評価用2成分現像剤を入れた。また、評価機のシアン用トナー収容部(トナーコンテナ)に、補給用トナーを入れた。補給用トナーとしては、評価用2成分現像剤に含まれるトナーと同一のトナーを使用した。補給用トナーは、トナーA−1〜A−7及びB−1〜B−6の何れかであった。
【0165】
(初期の耐オフセット性の評価)
評価機を用いて、10枚の用紙(A3サイズの普通紙)に、画像Iを印刷した。画像Iは、パッチ画像領域と、白紙画像領域とを含んでいた。パッチ画像領域は、定着ベルトの1周目に定着する画像の領域に対応していた。白紙画像領域は、定着ベルトの2周目に定着する画像の領域に対応していた。パッチ画像領域は、5個のパッチ画像部を含んでいた。5個のパッチ画像部は、各々、パッチ画像部A、B、C、D、及びEであった。パッチ画像部A、B、C、D、及びEのサイズは、各々、3cm×2cmであった。パッチ画像部A、B、C、D、及びEは、用紙の搬送方向に対して垂直に、用紙の左端から記載された順に、用紙に印刷された。パッチ画像部A、B、C、D、及びEのトナー載り量は、各々、1.0mg/cm2、0.8mg/cm2、0.6mg/cm2、0.4mg/cm2、及び0.2mg/cm2であった。
【0166】
画像Iが印刷された10枚の用紙の各々に対して、白紙画像領域のかぶり濃度(FD)を測定した。白紙画像領域のFDの測定には、全自動白色度計(有限会社東京電色製「TC−6DSA」)を用いた。白紙画像のFDは、式「FD=(白紙画像領域の反射濃度)−(未印刷紙の反射濃度)」に基づいて算出した。オフセットが発生した場合には、定着ベルトの1周目で定着ベルトに対してトナーが付着するため、定着ベルトの2周目で定着ベルトから用紙へトナーが付着する傾向がある。このため、定着ベルトの2周目で定着される画像の領域に対応する白紙画像領域のかぶり濃度が高くなる。
【0167】
(耐久後の耐オフセット性の評価)
次に、評価機を用いて、30万枚の用紙(A4サイズの普通紙)に、画像II(印字率5%のパターン画像)を印刷した。300万枚印刷した後、評価機を用いて、10枚の用紙(A3サイズの普通紙)に、画像Iを印刷した。初期の耐オフセット性の評価と同じ方法で、画像Iが印刷された10枚の用紙の各々に対して、白紙画像領域のFDを測定した。
【0168】
(初期及び耐久後の耐オフセット性の評価基準)
測定した白紙画像領域のFDから、下記基準に基づき、初期(具体的には、300万枚印刷前)及び耐久後(具体的には、300万枚印刷後)の耐オフセット性を評価した。
良好:FDが0.003以下である。
不良:FDが0.003超である。
【0169】
<画像不良の評価>
耐久後の耐オフセット性の評価で得られた、画像Iが印刷された10枚の用紙の各々を、目視で観察した。そして、画像Iにおける画像不良(具体的には、尾引き、中抜け、及びトナー散り)の発生の有無を確認した。
【0170】
<低温定着性の評価>
評価用2成分現像剤を用いて画像を形成することにより、トナーの最低定着温度を評価した。評価環境は、温度23℃、且つ湿度50%RHであった。評価機としては、プリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」、定着部の構成:Roller−Roller方式の加熱加圧型の定着部、定着部のニップ幅:8mm)の改造機を使用した。改造機においては、定着温度が変更可能なように、プリンター(FS−C5250DN)の定着部を改造した。定着部の表面層は、フッ素樹脂層であった。評価機のシアン用現像部(現像装置)に、評価用2成分現像剤を入れた。また、評価機のシアン用トナー収容部(トナーコンテナ)に、補給用トナーを入れた。補給用トナーとしては、評価用2成分現像剤に含まれるトナーと同一のトナーを使用した。補給用トナーは、トナーA−1〜A−7及びB−1〜B−6の各々であった。
【0171】
評価機を用いて、紙に、トナー載り量0.4mg/cm2の条件で、未定着のソリッド画像(詳しくは、未定着トナー像)を形成した。続けて、画像が形成された紙を評価機の定着部に通した。そして、定着部の定着温度を100℃から5℃ずつ上昇させて、未定着のソリッド画像を紙に定着できる最低温度(仮の最低定着温度)を測定した。次に、定着部の定着温度を仮の最低定着温度から1℃ずつ上昇させて、未定着のソリッド画像を紙に定着できる最低温度(最低定着温度)を測定した。
【0172】
最低定着温度の測定において、トナーを定着させることができたか否かは、以下に示す折擦り試験で確認した。定着部に通した評価用紙を、画像を形成した面が内側となるように折り曲げ、布帛で被覆した1kgの分銅を用いて、折り目上を10往復摩擦した。続けて、紙を広げ、紙の折り曲げ部(ソリッド画像が形成された部分)を観察した。そして、折り曲げ部のトナーの剥がれの長さ(剥がれ長)を測定した。剥がれ長が1mm以下となる定着温度のうちの最低温度を、最低定着温度(単位:℃)とした。
【0173】
[評価結果]
トナーA−1〜A−7及びB−1〜B−6の各々について、耐オフセット性、画像不良、及び低温定着性を評価した結果を、表2に示す。表2中、「FD」、及び「NG」は、各々、「かぶり濃度」、及び「不良」を示す。表2中「画像不良」の欄の「無」は、画像不良の評価において、形成画像に、尾引き、中抜け、及びトナー散りが何れも観察されなかったことを示す。表2中「画像不良」の欄の「有」は、画像不良の評価において、形成画像に、尾引き、中抜け、及びトナー散りの少なくとも1つが観察されたことを示す。表2中「測定不可」は、トナー散りに起因する過度なかぶりが発生したために、オフセットの発生に起因するかぶり濃度を正確に測定できなかったことを示す。
【0174】
【表2】
【0175】
表1に示すように、トナーA−1〜A−7において、トナー粒子は、トナーコアと、トナーコアの表面を覆うシェル層とを備えていた。トナーコアは、複合体粒子を含有していた。複合体粒子は、第一離型剤(具体的には、カルナウバワックス)と、導電性ポリマー(具体的には、PEDOT又はポリアニリン)と、ドーパント(具体的には、PSS)との複合体の粒子であった。複合体粒子の含有率は、トナーコアの質量に対して、0.5質量%以上15.0質量%以下であった。そのため、表2に示すように、トナーA−1〜A−7では、耐オフセット性の評価が良好であった。また、トナーA−1〜A−7を用いて形成された画像には、尾引き、中抜け、及びトナー散りのような画像不良が何れも発生していなかった。
【0176】
表1に示すように、トナーA−1〜A−3及びA−5〜A−7において、複合体粒子の含有率が、トナーコアの質量に対して、0.5質量%以上10.0質量%以下であった。そのため、表2に示すように、トナーA−1〜A−3及びA−5〜A−7では、最低定着温度が132℃以下であり、オフセットの発生及び画像不良の発生を抑制しつつ、トナーの低温定着性を向上させることができた。
【0177】
トナーB−1においては、トナーコアが、複合体粒子を含有していなかった(表1参照)。そのため、表2に示すように、トナーB−1は、耐オフセット性に劣っていた。
【0178】
トナーB−2においては、複合体粒子の含有率が、トナーコアの質量に対して、15.0質量%超であった(表1参照)。そのため、表2に示すように、トナーB−2を用いて画像を形成したところ、用紙に画像が定着せず、用紙に画像を印刷することができなかった。そのため、トナーB−2では、耐オフセット性、画像不良、及び低温定着性を評価することができなかった。
【0179】
トナーB−3においては、トナー粒子がシェル層を備えていなかった(表1参照)。そのため、表2に示すように、トナーB−3を用いて形成された画像には、画像不良が発生した。
【0180】
トナーB−4においては、トナーコアが複合体粒子を含有していたが、その複合体粒子はドーパント(具体的には、PSS)を含有していなかった(表1参照)。そのため、表2に示すように、トナーB−4は、耐オフセット性に劣っていた。
【0181】
トナーB−5においては、トナーコアが複合体粒子を含有していたが、その複合体粒子は第一離型剤(具体的には、カルナウバワックス)を含有していなかった(表1参照)。そのため、表2に示すように、トナーB−5は、耐オフセット性に劣っていた。
【0182】
トナーB−6においては、トナーコアが複合体粒子を含有していなかった。詳しくは、複合体粒子が、トナーコア外(具体的には、トナーコアとシェル層との間)に位置していた。また、複合体粒子は第一離型剤(具体的には、カルナウバワックス)を含有していなかった(表1参照)。そのため、表2に示すように、トナーB−6を用いて形成された画像には、画像不良(特にトナー散り)が発生した。また、トナーB−6では、トナー散りに起因する過度なかぶりが発生したために、オフセットの発生に起因するかぶり濃度を正確に測定できなかった。
【0183】
以上のことから、トナーA−1〜A−7を包含する本発明に係るトナーは、定着部に対するトナー付着に起因するオフセットの発生を抑制しつつ、尾引き、中抜け、及びトナー散りのような画像不良の発生を抑制できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明に係るトナーは、例えば複写機、プリンター、又は複合機において画像を形成するために用いることができる。
【符号の説明】
【0185】
1 :トナー粒子
2 :トナーコア
3 :シェル層
4 :複合体粒子
14 :転写部
21 :像担持体
22 :トナー収容部
23 :現像部
30 :定着部
100 :画像形成装置
P :記録媒体
T :トナー
図1
図2
図3
図4
図5