(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
昇降路内を昇降する外かごの内側に上かごと下かごとを有し、前記外かごに設置された階間調整用巻上機の駆動シーブに掛けられて折り返された索状体の一端側で前記上かごを吊り下げ、他端側で前記下かごを吊り下げた構成を有するダブルデッキエレベータにおいて、
前記階間調整用巻上機を、前記駆動シーブの回転駆動により前記上かごと前記下かごのかご間隔を調整する定位置から、前記外かごに対し上方へ変位可能に保持する保持手段と、
前記外かごに対し、前記階間調整用巻上機を復元力により上方に付勢する弾性部材と、
前記外かごに固定され上下方向に設けられたレールと、
前記上かごに設置され、前記レールを把持することにより当該上かごの外かごに対する上下方向への相対変位を制動する把持状態と把持が開放された開放状態とに切り換え可能な上かご制動装置と、
前記下かごに設置され、前記レールを把持することにより当該下かごの外かごに対する上下方向への相対変位を制動する把持状態と把持が開放された開放状態とに切り換え可能な下かご制動装置と、
前記階間調整用巻上機が前記外かごに対し、前記定位置から上方への相対変位したことを検出する検出スイッチと、
前記検出スイッチにより前記階間調整用巻上機の前記相対変位が検出されると、前記上かご制動装置と前記下かご制動装置を前記開放状態から前記把持状態に切り換え制御する制御装置と、
を備え、
前記弾性部材は、前記索状体を介して前記階間調整用巻上機に前記上かごと前記下かごの重量が掛かっているときは、変形して、前記階間調整用巻上機が定位置に収められ、前記上かごと前記下かごの重量が掛からない状態では、前記階間調整用巻上機を前記定位置から上方へ変位させる大きさの復元力を有することを特徴とするダブルデッキエレベータ。
前記弾性部材は、圧縮バネであり、前記外かごと前記階間調整用巻上機との間で、前記防振部材と並列に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のダブルデッキエレベータ。
【背景技術】
【0002】
昇降路内を昇降する外かご内に設置された上かごと下かごとで2階建て構成とされるダブルデッキエレベータは、単一のかごで構成されるエレベータと比較して、輸送力で優れる。また、同等の輸送力を得るための設置スペースが少なくて済む。このため、大規模高層建物への導入が進められている。
【0003】
前記外かごはカウンタウエイトと主ロープで連結されており、当該主ロープは、昇降路上部の機械室に設置された巻上機の綱車に掛けられている。そして、前記巻上機を構成する巻上機モータを駆動して、前記綱車を回転させることにより、上・下かご各々の目的階に対応する目標位置まで外かごを昇降させて、当該上かごと下かごを異なる階に着床させるようになっている。
【0004】
ところで、建物によっては、階高に不揃いがある場合がある。例えば、1階は天井の高いエントランスホールで、2階以上は1階よりも天井の低いオフィスフロアとなっているような場合である。
【0005】
このように階高に不揃いのある建物に設置されるダブルデッキエレベータでは、同時に着床する二つの階の階高に合わせて、上かごと下かごの間隔を調整する必要がある。この調整を可能とするダブルデッキエレベータとして、駆動シーブに掛けられて折り返された、索状体の一種であるワイヤロープの一端側で上かごを吊り下げ、他端側で下かごを吊り下げた構成を有するものが知られている(特許文献1)。
【0006】
当該構成によれば、駆動シーブを第1の向きに回転させ、下かごを引き上げて上昇させれば、上かごは下降して、かごの間隔が短くでき、駆動シーブを第1の向きとは反対の第2の向きに回転させ、上かごを引き上げて上昇させれば、下かごは下降して、かご間隔が長くできるため、かご間隔の調整が可能となっている。これにより、目的階に合わせて、かごの間隔が調整され得る。
【0007】
上記のように構成されたダブルデッキエレベータは、上かごと下かごとが外かご内でワイヤロープによって吊り下げられているだけなので、上昇中の外かごが急停止すると、上かごと下かごとの両方が外かご内で飛び上がってしまう事態が生じる。
【0008】
例えば、前記巻上機が暴走し、前記カウンタウエイトが昇降路底部に設置された緩衝器に突っ込んだ場合である。この場合、外かごと一緒に上昇している上かごと下がごが、外かごの急停止後もその慣性によって飛び上がり、ことによっては、上記ワイヤロープが上記駆動シーブから外れてしまうおそれがある。
【0009】
上かごと外かごの飛び上がりを防止するため、特許文献1に記載のダブルデッキエレベータは、その
図1に示されているように、かご間隔の調整のため外かご1内で昇降する上かご4と下かご5を案内するレール17,18を挟むクランプ機構からなる上方向非常止9,10、上方向非常止11,12を、上かご4、下かご5にそれぞれ設けている(特許文献1の段落[0031]〜[0037])。
【0010】
そして、カウンタウエイト13が昇降路底部に設置された緩衝器14に突っ込むと予想される場合、機械室に設置された上方向非常止装置用制御盤16(特許文献1の段落[0027])が動作指令信号を上方向非常止9〜12に送り、非常停止動作を行わせることとしている(特許文献1の特許請求の範囲請求項1〜3、請求項8〜10、段落[0039]〜[0040])。また、特許文献1には、『更に、外枠かご1が上昇中は、上かご4と下かご5の間隔を変化させないこととし、その間は常時、上方向非常止9〜12がレール17、18を挟んでいることにしてもよい。そうすることで、非常停止を検出あるいは予測し、上方向非常止9〜12を動作させるという緊急的な制御が不要となる。』(段落[0064])と記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るダブルデッキエレベータの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係るダブルデッキエレベータ10全体の概略構成を示す図である。
【0019】
図1に示すように、ダブルデッキエレベータ10は駆動方式としてトラクション方式を採用したロープ式エレベータである。昇降路12の最上部よりも上の建物部分に機械室14が設けられている。機械室14には、綱車16を有する巻上機とそらせ車18が設置されている。
【0020】
綱車16とそらせ車18には、いわゆるダブルラップ式で主ロープ20が掛けられている。主ロープ20の両端は、昇降路12の上部に固定されている。主ロープ20の一端と巻上機の間には、吊車22を介して外かご24が吊り下げられており、主ロープ20の他端と巻上機の間には、吊車26を介してカウンタウエイト28が吊り下げられている。
【0021】
上記の構成において、不図示の巻上機モータにより綱車16が正転または逆転されると、綱車16に巻き掛けられた主ロープ20が走行し、主ロープ20で吊り下げられた外かご24とカウンタウエイト28が互いに反対向きに昇降する。
【0022】
機械室14には、また、主制御装置30が設置されている。主制御装置30は、前記巻上機などを統括的に制御して、外かご24の円滑な昇降動作等による通常運転を実現する。昇降路14の底部(ピット)には、何らかの原因で、外かご24が最上階を超えて上昇し過ぎた場合、または、外かご24が落下した場合に備えて、カウンタウエイト用緩衝器32と外かご用緩衝器34が設置されている。
【0023】
図2は、外かご24および外かご24に設置された機器および装置を示す拡大図である。
図2に示すように、外かご24は、上梁36A、下梁36B、および上梁36Aと下梁36Bを連結する2つの立枠36C,36Dを含み、正面視で、縦方向に(上下方向に)長い長方形をした外かご枠36を有する。
【0024】
上梁36Aには、台座38が固定されている。台座38には、階間調整用巻上機40が載置されている。すなわち、上梁36Aには、台座38を介して階間調整用巻上機40が設置されている。階間調整用巻上機40は、電動機41(
図5)によって正転駆動、逆転駆動される駆動シーブ42を有する。階間調整用巻上機40の設置態様の詳細については後述する。
【0025】
外かご24(外かご枠36)の内側には、上かご43と下かご45とが上下方向に並んで設けられている。上かご43の上かご本体44の上部には一対の吊車48A,48Bが、下かご45の下かご本体46の下部には一対の吊車50A,50Bがそれぞれ設けられている。
【0026】
上梁36Aと下梁36Bの間には、一対のガイドレール52A,52Bが上下方向に設けられている。上かご本体44と下かご本体46には、一対のガイドレール52A,52B各々に対応して不図示のガイドシューが一対設けられていて、上かご本体44と下かご本体46は、前記ガイドシューによってガイドレール52A、52Bに上下方向に案内される。
【0027】
駆動シーブ42には、ワイヤロープ54が掛けられていて、駆動シーブ42に掛けられて折り返されたワイヤロープ54の一端54Aと他端54Bは、共に、上梁36Aに連結されている。一端54Aと駆動シーブ42との間のワイヤロープ54部分には、吊車48A,48Bを介して上かご本体44が吊り下げられており、他端54Bと駆動シーブ42との間のワイヤロープ54部分には、吊車50A,50Bを介して下かご本体46が吊り下げられている。
【0028】
すなわち、ダブルデッキエレベータ10(
図1)は、外かご24に設置された階間調整用巻上機40の駆動シーブ42に掛けられて折り返されたワイヤロープ54の一端54A側で上かご43を吊り下げ、他端54B側で下かご45を吊り下げた構成を有している。
【0029】
上記の構成を有するダブルデッキエレベータ10において、駆動シーブ42を矢印Aの向きに回転させ、上かご43を引き上げて上昇させれば、下かご45は下降して、かごの間隔が長くでき、駆動シーブ42を矢印Aとは反対の矢印Bの向きに回転させ、下かご45を引き上げて上昇させれば、上かご43は下降して、かご間隔が短くできるため、かご間隔の調整が可能となっている。これにより、目的階に合わせて、かごの間隔が調整され得る。
【0030】
上かご43には、上かご制動装置56A,56Bが、下かご45には、下かご制動装置58A,58Bがそれぞれ設置されている。
【0031】
上かご制動装置56Aはガイドレール52Aを、上かご制動装置56Bはガイドレール52Bをそれぞれ把持することにより上かご43の外かご24(外かご枠36)に対する上下方向の相対変位を制動する。同じく、下かご制動装置58Aはガイドレール52Aを、下かご制動装置58Bはガイドレール52Bをそれぞれ把持することにより下かご45の外かご24(外かご枠36)に対する上下方向の相対変位を制動する。
【0032】
上かご制動装置56A,56B、下かご制動装置58A,58Bにおいて、ガイドレール52A,52Bを把持するための把持機構(クランプ機構)としては、例えば、特開2014−162575号公報や特開2015−131695号公報に記載された機構を用いることができる。
【0033】
上かご制動装置56A,56B、下かご制動装置58A,58Bは、対応するガイドレール52A,52Bを把持する把持状態と把持が開放された開放状態とに切り換え可能に構成されており、当該切り換えは、後述する副制御装置78によって制御される。
【0034】
次に、階間調整用巻上機40の設置態様の詳細について
図3を参照しながら説明する。
外かご枠36の上梁36Aには、上述したように台座38が固定されている。台座38は、全体的に方形の板状をしている。
【0035】
台座38には、防振部材である防振ゴム60を介して階間調整用巻上機40が載置されている。防振ゴム60は、厚手のシート状をしている。
【0036】
台座38には、4本の案内ピン62,64(図には、2本のみが現れている)が、平面視で方形に配置された状態で立設されている。防振ゴム60の、案内ピン62,64に対応する位置には、案内ピン62,64が挿通されるに足りる大きさの貫通孔60a,60bが開設されている。
【0037】
階間調整用巻上機40の構成部材である基台66の、案内ピン62,64に対応する位置には、案内ピン62,64よりも若干大きい径を有する貫通孔66a,66bが開設されている。階間調整用巻上機40は、4本の案内ピン62,64が基台66の貫通孔66a,66bに挿入された状態で、外かご24(外かご枠36)に設置されている。よって、案内ピン62,64は、階間調整用巻上機40を外かご24に対し上下方向に変位可能に保持する保持手段として機能する。
【0038】
台座38の上面には、有底孔38aが形成されている。防振ゴム60には、有底孔38aと連通する貫通孔60cが開設されている。有底孔38aと貫通孔60cで形成される空間をバネ収納部68と称することとする。
【0039】
バネ収納部68には、弾性部材である圧縮コイルバネ70が収納されている。圧縮コイルバネ70は、圧縮された状態で収納されており、その復元力により、台座38を介して外かご24に対し、階間調整用巻上機40を上方に付勢している。この復元力の大きさについては、後述する。
【0040】
また、
図3(b)からも分かるように、圧縮コイルバネ70は、外かご24と階間調整用巻上機40との間で、防振ゴム60に重ねた直列ではなく、防振ゴム60と並列に設けられている。
【0041】
台座38には、取付部材72を介してリミットスイッチ74が取り付けられている。リミットスイッチ74は、本体74Aとレバー74Bを有し、レバー74Bが本体74Aに押下されることによりオフからオンに切り換わる構成とされている。
【0042】
階間調整用巻上機40の基台66には、操作バー76が、その基端部が基台66に固定されて、取り付けられている。操作バー76は、その先端部がレバー74Bの真下となる位置に取り付けられている。
【0043】
続いて、圧縮コイルバネ70の復元力の大きさについて説明する。ダブルデッキエレベータ10の通常運転中は、階間調整用巻上機40には、ワイヤロープ54を介して上かご43および下かご45の重量が掛かっている。この状態では、圧縮コイルバネ70は、階間調整用巻上機40に押下されて、
図3(b)に示すように、基台66が防振ゴム60に
密着するまで圧縮されている(変形している)。階間調整用巻上機40に掛かる上かご43と下かご45の重量は、ワイヤロープ54に生じる張力として把握される。
【0044】
通常運転中において、上かご43と下かご45の重量で押下され、基台66が防振ゴム60に密着する状態となる、階間調整用巻上機40の位置を「定位置」と称することとする。また、通常運転中の位置であるため、「定位置」は、駆動シーブ42の回転駆動により上かご43と下かご45のかご間隔を調整する位置とも言える。
【0045】
以上の通り、圧縮コイルバネ70は、ワイヤロープ54を介して階間調整用巻上機40に上かご43と下かご45の重量が掛かっているときは圧縮されて(変形して)、階間調整用巻上機40が定位置に収められる復元力を有している。
【0046】
ここで、例えば、何らかのトラブルにより外かご24用の巻上機が暴走し、
図1に示すカウンタウエイト28がカウンタウエイト用緩衝器32に突っ込んだ場合を考える。この場合、外かご24と一緒に上昇している上かご43と下かご45が、外かご24の急停止後もその慣性によって飛び上がり、ワイヤロープ54の張力が略消失する。換言すると、階間調整用巻上機40(圧縮コイルバネ70)に上かご43と下かご45の重量が、ほぼ掛からない状態となる。また、外かご24に対し階間調整用巻上機40は上下方向の変位は拘束されていないため、外かご24の急停止後、階間調整用巻上機40も慣性によって、上方への変位を続けようとするため、圧縮コイルバネ70に掛かる階間調整用巻上機40の重量も小さくなる。
【0047】
階間調整用巻上機40(圧縮コイルバネ70)に、上かご43と下かご45の重量が、ほぼ掛からない状態となる事情は、外かご24が、何らかの原因で最下階を行き過ぎ、外かご用緩衝器34に突っ込んだ場合も同様である。すなわち、外かご用緩衝器34に突っ込んで、外かご24が急停止すると、外かご24と一緒に下降してきた上かご43と下かご45は、その慣性で、下降し続けようとするため、ワイヤロープ54が上かご43と下かご45に引っ張られて伸長される。そして、伸長されたワイヤロープ54の復元力(バネ性)で、上かご43と下かご45が引き上げられて飛び上がるため、ワイヤロープ54の張力が、ほぼ喪失される、すなわち、階間調整用巻上機40(圧縮コイルバネ70)に、上かご43と下かご45の重量が、ほぼ掛からない状態となるのである。
【0048】
加えて、外かご24が外かご用緩衝器34に突っ込んだ場合、圧縮コイルバネ70に掛かる階間調整用巻上機40の重量も小さくなる。すなわち、外かご24が、外かご用緩衝器34に突っ込んだ後、その反動で跳ね上がると、階間調整用巻上機40も外かご24に押し上げられて跳ね上がる。このとき、外かご24が減速して跳ね上がり(上方への変位)が終わった後も慣性によって階間調整用巻上機40は、上方への変位を続けようとするため、圧縮コイルバネ70に掛かる階間調整用巻上機40の重量が小さくなるのである。
【0049】
また、外かご24が外かご用緩衝器34に突っ込む以前に、上かご43と下かご45の重量、および階間調整用巻上機40の重量が、圧縮コイルバネ70にほぼ掛からない状態となる場合がある。外かご24が外かご用緩衝器34に突っ込むような事態となる原因の一つに、主ロープ20(
図1)が切断された場合がある。この場合、外かご24および外かご24に設けられている上かご43、下かご45、階間調整用巻上機40は自由落下するため、圧縮コイルバネ70に上かご43と下かご45、および階間調整用巻上機40の重量が、ほぼ掛からない状態となるのである。
【0050】
上記のようにワイヤロープ54の張力が略消失して、少なくとも階間調整用巻上機40に上かご43と下かご45の重量が掛からない状態では、圧縮コイルバネ70は、階間調整用巻上機40を押し上げて定位置から上方へ変位させる。換言すると、上記の状態では、階間調整用巻上機40を定位置から上方へ変位させる復元力を有している。
【0051】
以上説明したように、圧縮コイルバネ70は、(i)ワイヤロープ54を介して階間調整用巻上機40に上かご43と下かご45の重量が掛かっているときは、階間調整用巻上機40が定位置に収められるまで圧縮され(変形し)、(ii)ワイヤロープ54の張力が略消失して、少なくとも階間調整用巻上機40に上かご43と下かご45の重量が掛からない状態では、階間調整用巻上機40を押し上げて定位置から上方へ変位させる大きさの復元力を有している。
【0052】
図4に示すように、階間調整用巻上機40が定位置から上方へ変位すると、これに取り付けられた操作バー76も一緒に上方へ変位し、その先端でリミットスイッチ74のレバー74Bを本体74Aに押下する。これによりリミットスイッチ74はオフからオンに切り換わる。すなわち、リミットスイッチ74は、階間調整用巻上機40が外かご24に対し、定位置から上方へ相対変位したことを検出する検出スイッチとして機能する。
【0053】
階間調整用巻上機40が外かご42に対し、定位置から上方へ変位を相対変位したことをリミットスイッチ74が検出したことを契機に、上かご制動装置56A,56B、下かご制動装置58A,58Bを前記開放状態から前記把持状態に切り換え制御する副制御装置78が外かご枠36の上部に設置されている(
図1、
図2)。
【0054】
副制御装置78は、
図5に示すように、CPU80にROM82およびRAM84が接続された構成を有している。副制御装置78には、例えば、マイコンが用いられる。副制御装置78は、また、主制御装置30と不図示のトラベリングケーブルを介して交信し、階間調整用巻上機40を制御して、着床階に合わせて、上かご43と下かご45のかご間隔の調整制御を行ったり、上かご43と下かご45のかごドア(不図示)の開閉制御を行ったりするが、これらの制御は本願発明の主眼ではないので、その説明については、省略する。
【0055】
副制御装置78には、上かご制動装置56A,56B、下かご制動装置58A,58B、リミットスイッチ74が接続されている。副制御装置78は、通常運転中は、上かご制動装置56A,56B、下かご制動装置58A,58Bの各々を上記開放状態に維持する。
【0056】
そして、副制御装置78は、リミットスイッチ74がオフからオンに切り換わって初めて、すなわち、リミットスイッチ74により、階間調整用巻上機40の外かご24に対する定位置から上方への相対変位が検出されて初めて、換言すると、カウンタウエイト28がカウンタウエイト用緩衝器32に突っ込んだり、外かご24が外かご用緩衝器34に突っ込んだり、あるいは外かご24が自由落下するといった事態(以下、これらの事態を総称して「非常事態」と言う。)が起こって初めて、上かご制動装置56A,56B、下かご制動装置58A,58Bの各々を前記開放状態から把持状態に切り換え制御する。
【0057】
これにより、上かご43と下かご45の外かご24に対する上方への相対変位が制動されて、過度の飛び上がりが抑制されることとなる。しかも、非常事態が起こって初めて、当該制動がなされるため、不必要に上かご43と下かご45の上下方向の移動を制動することがない。
【0058】
過度の飛び上がりを抑制するという観点から、上かご43と下かご45の飛び上がり初期の段階で操作バー76がリミットスイッチ74のレバー74Bを押下するよう、操作バー76の先端部とレバー74Bを可能な限り近接させることが好ましい。すなわち、操作バー76の先端とレバー74Bの上下方向における距離を可能な限り短くするのが好ましい。
【0059】
さらに言うと、階間調整用巻上機40が外かご24に対し定位置から上方へ相対変位したことを検出する検出スイッチであるリミットスイッチ74を、上かご43と下かご45が飛び上がり切るまでに前記相対変位を検出できる位置に設置することが好ましい。
【0060】
以上説明してきたように、上記の構成からなる実施形態に係るダブルデッキエレベータ10によれば、上述した非常事態が生じたことに起因して、階間調整用巻上機40に掛けられたワイヤロープ54の張力が略消失し、階間調整用巻上機40に上かご43と下かご45の重量がほとんど掛からない状態になると、圧縮コイルバネ70の復元力によって階間調整用巻上機40が定位置から外かご24に対し上方へ相対変位される。すると、当該相対変位がリミットスイッチ74で検出されて、上かご制動装置56A,56B、下かご制動装置58A,58Bが上記開放状態から上記把持状態へ切り換えられる。これにより、上かご43と下かご45の上下方向の相対変位が制動されることとなる。
【0061】
しかも、非常事態が起こって初めて、当該制動がなされるため、不必要に上かご43と下かご45の上下方向の移動を制動することがない。
【0062】
以上、本発明に係るダブルデッキエレベータを実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下の形態としても構わない。
(1)上記実施形態では、上かご本体44と下かご本体46を外かご24内で吊り下げる索状体として、ワイヤロープ54を用いたが、上かご本体44と下かご本体46とを吊り下げる索状体は、ワイヤロープに限らず、例えば、スチールコード等の心線入りのゴムベルトや炭素繊維からなるベルトを用いても構わない。
【0063】
(2)上記実施形態では、外かご24に対し、階間調整用巻上機40を復元力により上方に付勢する弾性部材として圧縮コイルバネを用いたが、これに限らず、板バネを用いても構わない。
【0064】
また、前記弾性部材として、例えば、引っ張りコイルバネを用いても構わない。この場合、台座38に引っ張りコイルバネの一方のフックを引掛けて吊り下げるためのスタンドを設ける一方、基台66に他方のフックを引掛けるための引掛け部を設ける。そして、スタンドに一方のフックが掛けられて吊り下げられた引っ張りコイルバネを伸長させて前記引掛け部に引掛ける。これにより、基台66(階間調整用巻上機40)は、引っ張りコイルバネが収縮しようとする復元力により上方に付勢されることとなる。当該復元力の大きさは、圧縮コイルバネ70の復元力の大きさと同様に設定される。
【0065】
(3)上記実施形態では、階間調整用巻上機40を定位置から、外かご24に対し上方へ変位可能に保持する保持手段として、案内ピン62,64を用いたが、これに限らず、例えば、全ネジボルト(寸切ボルト)を用いても構わない。
【0066】
あるいは、ピンやボルトのような棒状のものでなく、板状のものを用いても構わない。例えば、基台66と防振ゴム60に平面視で細長い「U」字状のスリットを開設し、このスリットに挿入される案内板を台座38に立設するのである。
【0067】
(4)上記実施形態では、リミットスイッチ74がオフからオンに切り換わることで、階間調整用巻上機40の外かご24に対する上方への相対変位を検出する構成としたが、これに限らず、リミットスイッチ74がオンからオフに切り換わることで前記相対変位を検出する構成としても構わない。
【0068】
例えば、リミットスイッチ74を、
図3に示す位置から下げて、階間調整用巻上機40が定位置にある間は、レバー74Bが操作バー76で押下されてオン状態となり、階間調整用巻上機40が上記相対変位すると操作バー76がレバー74Bから離れて非接触となり、レバー74Bが復帰してオフ状態となるような位置に取り付けることとしても構わない。
【0069】
(5)上記実施形態では、階間調整用巻上機40の上方への上記相対変位をリミットスイッチで検出したが、これに限らず、他の種類のスイッチを用いても構わない。他のスイッチとしては、例えば、発光素子と受光素子が対向して設けられた構成の光電スイッチを用いることができる。
【0070】
当該光電スイッチを、例えば、階間調整用巻上機40が定位置にあるときは、前記発光素子から出射された検出光を前記受光素子が受光してオン状態となり、階間調整用巻上機40が上方へ上記相対変位すると操作バー76が、前記発光素子と前記受光素子の対向領域に進入して前記検出光を遮り、オフ状態となるような位置に取り付けることとしても構わない。
【0071】
(6)上記実施形態では、階間調整用巻上機40に操作バー76を取付け、これによりリミットスイッチ74をオフとオンに切り換えることとしたが、これに限らず、階間調整用巻上機40の一部でリミットスイッチ74をオフとオンに切り換えるようにしても構わない。例えば、基台66の上角部でレバー74を押下する構成としても構わない。
【0072】
(7)上記実施形態では、上かご制動装置56A,56Bと下かご制動装置58A,58Bでガイドレール52A,52Bを把持することにより上がご43と下かご45を制動した。すなわち、上かご43と下かご45の上下方向の移動を案内するガイドレール52A,52Bを制動用に兼用したがこれに限らず、ガイドレール52A,52Bとは別に、上かご43と下かご45の制動用として制動専用レールを設けても構わない。
【0073】
(8)上記実施形態では、上かご制動装置56A,56Bと下かご制動装置58A,58Bで把持するレールを、上かご43用と下かご45用とで共通にしたが、これに限らず、上かご制動装置56A,56B用専用と下かご制動装置58A,58B用専用で個別に設けても構わない。すなわち、制動用のレールを4本設けて構わない。