特許第6813085号(P6813085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6813085電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6813085
(24)【登録日】2020年12月21日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/04 20060101AFI20201228BHJP
   G03G 5/05 20060101ALI20201228BHJP
   G03G 5/06 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   G03G5/04
   G03G5/05 101
   G03G5/06 313
   G03G5/06 322
【請求項の数】10
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2019-515146(P2019-515146)
(86)(22)【出願日】2018年3月16日
(86)【国際出願番号】JP2018010490
(87)【国際公開番号】WO2018198590
(87)【国際公開日】20181101
【審査請求日】2019年9月11日
(31)【優先権主張番号】特願2017-89392(P2017-89392)
(32)【優先日】2017年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-246064(P2017-246064)
(32)【優先日】2017年12月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】岩下 裕子
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 一也
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和隆
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−090610(JP,A)
【文献】 特開2014−092582(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/061476(WO,A1)
【文献】 特開2014−071334(JP,A)
【文献】 特開2014−130236(JP,A)
【文献】 特開2012−208231(JP,A)
【文献】 特開2013−029777(JP,A)
【文献】 特開2017−182063(JP,A)
【文献】 特開2018−145145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/00 − 5/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、単層の感光層とを備える正帯電用の電子写真感光体であって、
前記感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを含有し、
光応答時間は、0.05ミリ秒以上0.85ミリ秒以下であり、
前記光応答時間は、波長780nmのパルス光が+800Vに帯電された前記感光層の表面に照射されてから、前記感光層の表面電位が+800Vから+400Vに減衰するまでの時間であり、
前記パルス光の強度は、前記パルス光が+800Vに帯電された前記感光層の前記表面に照射されてから400ミリ秒後に、前記感光層の前記表面電位が+800Vから+200Vとなる強度であり、
50℃における前記感光層のマルテンス硬度は、160N/mm2以上であり、
前記バインダー樹脂は、一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂を含み、
前記正孔輸送剤は、化学式(19−HT17)で表される化合物を含む、電子写真感光体。
【化1】
(前記一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子を有してもよい炭素原子数1以上3以下のアルキル基、又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表し、R3及びR4は互いに結合して炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基を表してもよい。)
【化2】
【請求項2】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂は、下記化学式(R1)、(R2)、(R3)又は(R4)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂である、請求項に記載の電子写真感光体。
【化3】
【請求項3】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂は、前記化学式(R2)、(R3)又は(R4)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂である、請求項に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記電子輸送剤の質量mETMに対する前記正孔輸送剤の質量mHTMの比率mHTM/mETMは、1.2以上4.0以下である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記感光層の質量に対する前記正孔輸送剤の含有率は、35質量%以上65質量%以下である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記光応答時間は、0.05ミリ秒以上0.70ミリ秒以下である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
請求項1に記載の電子写真感光体を備える、プロセスカートリッジ。
【請求項8】
像担持体と、
前記像担持体の表面を帯電する帯電部と、
帯電された前記像担持体の前記表面を露光して、前記像担持体の前記表面に静電潜像を形成する露光部と、
前記静電潜像をトナー像として現像する現像部と、
前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写する転写部と
を備える画像形成装置であって、
前記帯電部は、前記像担持体の前記表面を正極性に帯電し、
前記像担持体は、請求項1に記載の電子写真感光体である、画像形成装置。
【請求項9】
前記像担持体の前記表面における所定の箇所が前記露光部によって露光されてから前記現像部によって現像されるまでの時間は、100ミリ秒以下である、請求項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記トナー像を前記被転写体に転写し終えた前記像担持体の前記表面の領域は、除電されることなく、前記帯電部によって再び帯電される、請求項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる。電子写真感光体としては、例えば、積層型電子写真感光体又は単層型電子写真感光体が用いられる。電子写真感光体は、感光層を備える。積層型電子写真感光体は、感光層として、電荷発生の機能を有する電荷発生層と、電荷輸送の機能を有する電荷輸送層とを備える。単層型電子写真感光体は、感光層として、電荷発生の機能と電荷輸送の機能とを有する単層の感光層を備える。
【0003】
特許文献1に記載の電子写真感光体は、バインダー樹脂として、特定構造のポリアリレート樹脂の少なくとも1種を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56−135844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の電子写真感光体は、露光メモリーに起因する画像不良及び形成画像における黒点の発生を抑制する点で不十分であることが、本発明者らの検討により判明した。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、露光メモリーに起因する画像不良及び形成画像における黒点の発生を抑制する電子写真感光体を提供することである。また、本発明の別の目的は、露光メモリーに起因する画像不良及び形成画像における黒点の発生を抑制する画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子写真感光体は、導電性基体と、単層の感光層とを備える。前記感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを含有する。光応答時間は、0.05ミリ秒以上0.85ミリ秒以下である。前記光応答時間は、波長780nmのパルス光が+800Vに帯電された前記感光層の表面に照射されてから、前記感光層の表面電位が+800Vから+400Vに減衰するまでの時間である。前記パルス光の強度は、前記パルス光が+800Vに帯電された前記感光層の前記表面に照射されてから400ミリ秒後に、前記感光層の前記表面電位が+800Vから+200Vとなる強度である。50℃における前記感光層のマルテンス硬度は、160N/mm2以上である。
【0008】
本発明のプロセスカートリッジは、上述の電子写真感光体を備える。
【0009】
本発明の画像形成装置は、像担持体と、帯電部と、露光部と、現像部と、転写部とを備える。前記帯電部は、前記像担持体の表面を帯電する。前記露光部は、帯電された前記像担持体の前記表面を露光して、前記像担持体の前記表面に静電潜像を形成する。前記現像部は、前記静電潜像をトナー像として現像する。前記転写部は、前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写する。前記帯電部は、前記像担持体の前記表面を正極性に帯電する。前記像担持体は、上述の電子写真感光体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子写真感光体は、露光メモリーに起因する画像不良及び形成画像における黒点の発生を抑制することができる。また、本発明のプロセスカートリッジ及び画像形成装置は、露光メモリーに起因する画像不良及び形成画像における黒点の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本発明の実施形態に係る電子写真感光体の一例を示す部分断面図である。
図1B】本発明の実施形態に係る電子写真感光体の一例を示す部分断面図である。
図2】感光層の表面電位の減衰曲線を示すグラフ図である。
図3】画像形成装置の一例を示す図であり、この画像形成装置は本発明の実施形態に係る電子写真感光体を備える。
図4】光応答時間の測定装置を示す図である。
図5】評価用画像を示す図である。
図6】露光メモリーに起因する画像不良が発生した画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。
【0013】
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、「基を有してもよい」、「基を有する」、「ハロゲン原子を有してもよい」、及び「ハロゲン原子を有する」は、各々、「基で置換されてもよい」、「基で置換された」、「ハロゲン原子で置換されてもよい」、及び「ハロゲン原子で置換された」ことを意味する。
【0014】
以下、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、炭素原子数2以上4以下のアルケニル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数6以上10以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、5員以上14員以下の複素環基及び炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基は、何ら規定していなければ、それぞれ次の意味である。
【0015】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0016】
炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基及び炭素原子数1以上3以下のアルキル基は、各々、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基及びヘキシル基が挙げられる。炭素原子数1以上5以下のアルキル基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上5以下である基である。炭素原子数1以上4以下のアルキル基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上4以下である基である。炭素原子数1以上3以下のアルキル基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上3以下である基である。
【0017】
炭素原子数2以上4以下のアルケニル基は、直鎖状又は分岐状で非置換である。炭素原子数2以上4以下のアルケニル基は、1つ又は2つの二重結合を有する。炭素原子数2以上4以下のアルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基及びブタジエニル基が挙げられる。
【0018】
炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基及びヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0019】
炭素原子数6以上14以下のアリール基及び炭素原子数6以上10以下のアリール基は、各々、非置換である。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インダセニル基、ビフェニレニル基、アセナフチレニル基、アントリル基及びフェナントリル基が挙げられる。炭素原子数6以上10以下のアリール基としては、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
【0020】
炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、非置換である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、例えば、炭素原子数6以上14以下のアリール基を有する炭素原子数1以上6以下のアルキル基である。
【0021】
5員以上14員以下の複素環基は、炭素原子以外にヘテロ原子を少なくとも1個含み、非置換である。ヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群から選択される1種以上である。5員以上14員以下の複素環基は、例えば、炭素原子以外に1個以上3個以下のヘテロ原子を含む5員又は6員の単環の複素環基;このような単環の複素環が2個縮合した複素環基;このような単環の複素環と、5員又は6員の単環の炭化水素環とが縮合した複素環基;このような単環の複素環が3個縮合した複素環基;このような単環の複素環2個と、5員又は6員の単環の炭化水素環1個とが縮合した複素環基;又はこのような単環の複素環1個と、5員又は6員の単環の炭化水素環2個とが縮合した複素環基が挙げられる。5員以上14員以下の複素環基の具体例としては、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チオフェニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、インドリル基、1H−インダゾリル基、イソインドリル基、クロメニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、プリニル基、プテリジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、4H−キノリジニル基、ナフチリジニル基、ベンゾフラニル基、1,3−ベンゾジオキソリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基及びフェナントロリニル基が挙げられる。
【0022】
炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基は、非置換である。炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基及びシクロヘプチリデン基が挙げられる。炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基は、下記一般式で表される。一般式中、tは1以上3以下の整数を表し、アスタリスクは結合手を表す。
【0023】
【化1】
【0024】
<電子写真感光体>
本実施形態は電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)に関する。図1A及び図1Bを参照して、感光体1の構造について説明する。図1A及び図1Bは、それぞれ、本実施形態に係る感光体1の一例を示す断面図である。
【0025】
図1Aに示すように、感光体1は、例えば、導電性基体2と感光層3とを備える。感光層3は単層(一層)である。感光体1は、単層の感光層3を備える単層型電子写真感光体である。
【0026】
図1Bに示すように、感光体1は、導電性基体2と、感光層3と、中間層4(下引き層)とを備えてもよい。中間層4は、導電性基体2と感光層3との間に設けられる。図1Aに示すように、感光層3は導電性基体2上に直接設けられてもよい。或いは、図1Bに示すように、感光層3は導電性基体2上に中間層4を介して設けられてもよい。中間層4は、一層であってもよく、複数の層であってもよい。
【0027】
感光体1は、導電性基体2と、感光層3と、保護層(不図示)とを備えてもよい。保護層は、感光層3上に設けられる。保護層は、一層であってもよく、複数の層であってもよい。
【0028】
感光層3の厚さは、特に限定されない。感光層3の厚さは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。以上、図1A及び図1Bを参照して、感光体1の構造について説明した。以下、感光体について更に詳細に説明する。
【0029】
<感光層>
感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを含有する。感光層は、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。
【0030】
(マルテンス硬度)
50℃における感光層のマルテンス硬度は、160N/mm2以上である。50℃における感光層のマルテンス硬度は、感光層の温度が50℃である場合の感光層のマルテンス硬度である。50℃における感光層のマルテンス硬度が160N/mm2以上であることで、形成画像における黒点の発生を抑制することができる。50℃における感光層のマルテンス硬度が160N/mm2未満であると、形成画像に黒点が発生する。その理由は、以下のように推測される。感光層のマルテンス硬度が160N/mm2未満であると、画像形成装置の部材が感光体と接触したときに、感光体の感光層に細かな傷等が発生し易くなる。細かな傷等に、例えばトナーから脱離した外添剤が入り込み、感光体の表面に外添剤が付着し易くなる。外添剤の電気抵抗は比較的低い。そのため、感光体の表面の外添剤が付着した部分は、帯電され難くなる。その結果、形成画像に黒点が発生する。
【0031】
形成画像における黒点の発生を抑制するためには、50℃における感光層のマルテンス硬度は、180N/mm2以上であることが好ましく、185N/mm2以上であることがより好ましく、190N/mm2以上であることが更に好ましい。なお、50℃における感光層のマルテンス硬度の上限としては、感光体の感光層として機能し得る限り特に限定されないが、製造コストの観点から250N/mm2が好ましい。
【0032】
50℃における感光層のマルテンス硬度は、ISO14577の規格に基づくナノインデンテーション法により測定することができる。50℃における感光層のマルテンス硬度は、具体的には、実施例に記載の方法で測定される。
【0033】
50℃における感光層のマルテンス硬度は、例えば、正孔輸送剤の種類を変更することにより、調整することができる。正孔輸送剤がバインダー樹脂のボイド(空隙)を埋め易い構造であると、感光層の密度が高くなり、50℃における感光層のマルテンス硬度が高くなると考えられる。また、50℃における感光層のマルテンス硬度は、例えば、バインダー樹脂の種類を変更することによっても、調整することができる。また、50℃における感光層のマルテンス硬度は、例えば、感光層の質量に対する正孔輸送剤の含有率を変更することによっても調整することができる。感光層の質量に対する正孔輸送剤の含有率が低くなるほど、50℃における感光層のマルテンス硬度が高くなる傾向がある。
【0034】
(光応答時間)
感光体の光応答時間は、0.05ミリ秒以上0.85ミリ秒以下である。光応答時間は、波長780nmのパルス光が+800Vに帯電された感光層の表面に照射されてから、感光層の表面電位が+800Vから+400Vに減衰するまでの時間である。パルス光の光強度は、波長780nmのパルス光が+800Vに帯電された感光層の表面に照射されてから400ミリ秒後に、感光層の表面電位が+800Vから+200Vとなる強度に設定される。
【0035】
図2を用いて光応答時間を説明する。図2は、感光層の表面電位の減衰曲線を示す。縦軸は、感光層の表面電位(単位:V)を示す。横軸は、時間を示す。感光層の表面電位の減衰曲線では、パルス光が感光層の表面に照射された時点を0.00ミリ秒とする。感光層の表面電位の減衰曲線が示すように、パルス光が+800Vに帯電された感光層の表面に照射されてから400ミリ秒後に、感光層の表面電位は+800Vから+200Vに減衰する。このとき、パルス光が+800Vに帯電された感光層の表面に照射されてから、感光層の表面電位が+800Vから+400Vに減衰するまでの時間τを光応答時間とする。
【0036】
感光体の光応答時間は、0.05ミリ秒以上0.85ミリ秒以下であると、露光メモリーに起因する画像不良の発生を抑制することができる。ここで、露光メモリーは、画像形成時の露光の影響によって、前の周の露光領域に対応する感光体の表面の領域の帯電電位が、前の周の非露光領域に対応する感光体の表面の領域よりも低下する現象である。露光メモリーが発生すると、形成画像において、感光体の前の周の露光領域に対応する領域が黒ずむ画像不良が発生する。感光体の光応答時間が0.85ミリ秒を超えると、感光層内に電荷(特に正孔)が残留し易くなる。そのため、露光メモリーに起因する画像不良が発生する。なお、感光体が光応答するためにはある程度の時間が必要であることから、感光体の光応答時間を0.05ミリ秒以上とすることができる。
【0037】
露光メモリーに起因する画像不良が発生を抑制するためには、感光体の光応答時間の上限は、0.70ミリ秒であることが好ましく、0.60ミリ秒であることが更に好ましく、0.50ミリ秒であることが一層好ましい。感光体の光応答時間の下限は、例えば、0.23ミリ秒であってもよい。
【0038】
感光体の光応答時間は、実施例に記載の方法で測定される。感光体の光応答時間は、例えば、正孔輸送剤の種類を変更することにより、調整することができる。また、感光体の光応答時間は、例えば、電子輸送剤の種類を変更することによっても、調整することができる。また、感光体の光応答時間は、例えば、感光層の質量に対する正孔輸送剤の含有率を変更することによっても調整することができる。また、感光体の光応答時間は、例えば、電子輸送剤の質量mETMに対する正孔輸送剤の質量mHTMの比率mHTM/mETMを変更することによっても調整することができる。
【0039】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル酸重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂及びメラミン樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ化合物のアクリル酸付加物及びウレタン化合物のアクリル酸付加物が挙げられる。バインダー樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
バインダー樹脂としては、一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(以下、ポリカーボネート樹脂(1)と記載することがある)が好ましい。バインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂(1)を感光層が含有することで、形成画像における黒点の発生を更に抑制することができる。
【0041】
【化2】
【0042】
一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子を有してもよい炭素原子数1以上3以下のアルキル基、又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。R3及びR4は互いに結合して炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基を表してもよい。
【0043】
一般式(1)中のR1、R2、R3及びR4が表わす炭素原子数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。R1、R2、R3及びR4が表わす炭素原子数1以上3以下のアルキル基は、ハロゲン原子を有していてもよい。炭素原子数1以上3以下のアルキル基が有するハロゲン原子としては、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。炭素原子数1以上3以下のアルキル基が有するハロゲン原子の数は、1以上7以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましく、1以上3以下であることが更に好ましい。
【0044】
一般式(1)中のR1、R2、R3及びR4が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0045】
一般式(1)中のR3及びR4が互いに結合して表す炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基としては、シクロヘキシリデン基が好ましい。
【0046】
一般式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子又はハロゲン原子を有してもよい炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。R3及びR4は各々独立に炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すか、或いは、R3及びR4が互いに結合して炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基を表すことが好ましい。
【0047】
ポリカーボネート樹脂(1)の好適な例としては、化学式(R1)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂、化学式(R2)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂、化学式(R3)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂、及び化学式(R4)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(以下、それぞれをポリカーボネート樹脂(R1)、(R2)、(R3)及び(R4)と記載することがある)が挙げられる。
【0048】
【化3】
【0049】
50℃における感光層のマルテンス硬度を高くするためには、ポリカーボネート樹脂(1)としては、ポリカーボネート樹脂(R2)、(R3)又は(R4)が好ましい。形成画像における黒点の発生を抑制するためには、ポリカーボネート樹脂(1)としては、ポリカーボネート樹脂(R2)又は(R3)が好ましい。感光体の光応答時間を短くするためには、ポリカーボネート樹脂(1)としては、ポリカーボネート樹脂(R1)が好ましい。露光メモリーに起因する画像不良を抑制するためには、ポリカーボネート樹脂(1)としては、ポリカーボネート樹脂(R1)又は(R2)が好ましい。
【0050】
ポリカーボネート樹脂(1)の粘度平均分子量は、25,000以上60,000以下であることが好ましく、35,000以上53,000以下であることがより好ましい。ポリカーボネート樹脂(1)の粘度平均分子量が25,000以上であると、50℃における感光層のマルテンス硬度が高くなる傾向がある。ポリカーボネート樹脂(1)の粘度平均分子量が60,000以下であると、ポリカーボネート樹脂(1)が感光層形成用の溶剤に溶解し易くなり、感光層を好適に形成できる。
【0051】
ポリカーボネート樹脂(1)は、繰り返し単位として、一般式(1)で表される繰り返し単位のみを有していてもよい。また、ポリカーボネート樹脂(1)は、繰り返し単位として、一般式(1)で表される繰り返し単位に加えて、一般式(1)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を更に有していてもよい。ポリカーボネート樹脂(1)が有する繰り返し単位の総数に対する、一般式(1)で表される繰り返し単位の数の比率は、0.80以上であることが好ましく、0.90以上であることがより好ましく、1.00であることが特に好ましい。
【0052】
感光層は、バインダー樹脂として、ポリカーボネート樹脂(1)の1種のみを含有してもよい。また、感光層は、バインダー樹脂として、ポリカーボネート樹脂(1)の2種以上を含有してもよい。また、感光層は、バインダー樹脂として、ポリカーボネート樹脂(1)に加えて、ポリカーボネート樹脂(1)以外のバインダー樹脂を更に含有してもよい。
【0053】
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ジアミン誘導体(例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体又はジ(アミノフェニルエテニル)ベンゼン誘導体)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)、スチリル系化合物(例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物及びトリアゾール系化合物が挙げられる。感光層は、正孔輸送剤の1種のみを含有してもよく、正孔輸送剤の2種以上を含有してもよい。
【0054】
露光メモリーに起因する画像不良及び形成画像における黒点の発生を抑制するためには、正孔輸送剤は、一般式(11)〜(19)で表される化合物のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。以下、一般式(11)〜(19)で表される化合物を、各々化合物(11)〜(19)と記載することがある。
【0055】
化合物(11)について説明する。下記一般式(11)中、Q1、Q2、Q3及びQ4は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。b1、b2、b3及びb4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。b5は、0又は1を表す。
【0056】
【化4】
【0057】
1が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ1は互いに同一であっても異なっていてもよい。b2が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ2は互いに同一であっても異なっていてもよい。b3が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ3は互いに同一であっても異なっていてもよい。b4が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ4は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0058】
一般式(11)中のQ1、Q2、Q3及びQ4が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0059】
一般式(11)中、Q1、Q2、Q3及びQ4は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。b1、b2、b3及びb4は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。b5は、0又は1を表すことが好ましい。
【0060】
化合物(11)としては、化学式(11−HT1)及び(11−HT2)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(11−HT1)及び(11−HT2)と記載することがある)が好ましい。
【0061】
【化5】
【0062】
化合物(12)について説明する。下記一般式(12)中、Q21及びQ28は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有してもよいフェニル基、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。Q22及びQ29は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基を表す。Q23、Q24、Q25、Q26及びQ27は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基を表す。Q23、Q24、Q25、Q26及びQ27のうちの隣接した二つが互いに結合して環(例えば、炭素原子数5以上7以下のシクロアルカン、具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン又はシクロヘプタン)を形成してもよい。d1及びd2は、各々独立に、0以上2以下の整数を表す。d3及びd4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
【0063】
【化6】
【0064】
3が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ22は互いに同一であっても異なっていてもよい。d4が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ29は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0065】
一般式(12)中、Q21及びQ28は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有してもよいフェニル基を表すことが好ましい。Q22及びQ29は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。Q23、Q24、Q25、Q26及びQ27は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。d1及びd2は、各々、0を表すことが好ましい。d3及びd4は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。Q21及びQ28が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有してもよいフェニル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を有してもよいフェニル基が好ましく、メチル基を有してもよいフェニル基がより好ましい。Q22及びQ29が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。Q23、Q24、Q25、Q26及びQ27が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基又はn−ブチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。Q25がメチル基であることが特に好ましい。Q23及びQ27が水素原子であることが特に好ましい。Q24及びQ26が水素原子であることが特に好ましい。
【0066】
露光メモリーに起因する画像不良の発生を抑制するためには、一般式(12)中、Q21及びQ28が互いに同一であり、Q22及びQ29は互いに同一であり、d1及びd2は互いに同じ整数を表し、d3及びd4は互いに同じ整数を表すことが好ましい。
【0067】
化合物(12)としては、化学式(12−HT3)及び(12−HT4)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(12−HT3)及び(12−HT4)と記載することがある)が好ましい。
【0068】
【化7】
【0069】
化合物(13)について説明する。下記一般式(13)中、Q31、Q32、Q33及びQ34は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。e1、e2、e3及びe4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。e5は、2又は3を表す。
【0070】
【化8】
【0071】
1が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ31は互いに同一であっても異なっていてもよい。e2が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ32は互いに同一であっても異なっていてもよい。e3が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ33は互いに同一であっても異なっていてもよい。e4が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ34は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0072】
一般式(13)中、Q31、Q32、Q33及びQ34は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。Q31、Q32、Q33及びQ34が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。e1、e2、e3及びe4は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。e5は、2又は3を表すことが好ましい。
【0073】
化合物(13)としては、化学式(13−HT5)及び(13−HT6)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(13−HT5)及び(13−HT6)と記載することがある)が好ましい。
【0074】
【化9】
【0075】
化合物(14)について説明する。下記一般式(14)中、Q41、Q42、Q43、Q44、Q45及びQ46は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基を表す。Q47、Q48、Q49及びQ50は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基を表す。g1及びg2は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。g3及びg4は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。fは、0又は1を表す。
【0076】
【化10】
【0077】
1が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ47は、互いに同一であっても異なっていてもよい。g2が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ48は、互いに同一であっても異なっていてもよい。g3が2以上4以下の整数を表す場合、複数のQ49は、互いに同一であっても異なっていてもよい。g4が2以上4以下の整数を表す場合、複数のQ50は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0078】
一般式(14)中、Q41、Q42、Q43、Q44、Q45及びQ46は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。g1及びg2は、各々、0を表すことが好ましい。g3及びg4は、各々、0を表すことが好ましい。fは、0を表すことが好ましい。Q41、Q42、Q43、Q44、Q45及びQ46が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基又はエチル基を表すことがより好ましい。
【0079】
化合物(14)としては、化学式(14−HT7)で表される化合物(以下、化合物(14−HT7)と記載することがある)が好ましい。
【0080】
【化11】
【0081】
化合物(15)について説明する。下記一般式(15)中、Q51、Q52、Q53、Q54、Q55及びQ56は、各々独立に、1つ以上のフェニル基を有してもよい炭素原子数2以上4以下のアルケニル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、フェニル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。h3及びh6は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。h1、h2、h4及びh5は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
【0082】
【化12】
【0083】
3が2以上4以下の整数を表す場合、複数のQ53は、互いに同一であっても異なっていてもよい。h6が2以上4以下の整数を表す場合、複数のQ56は、互いに同一であっても異なっていてもよい。h1が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ51は、互いに同一であっても異なっていてもよい。h2が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ52は、互いに同一であっても異なっていてもよい。h4が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ54は、互いに同一であっても異なっていてもよい。h5が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ55は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0084】
一般式(15)中、Q51、Q52、Q53、Q54、Q55及びQ56は、各々独立に、1つ以上のフェニル基を有してもよい炭素原子数2以上4以下のアルケニル基、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。h3及びh6は、各々、0を表すことが好ましい。h1、h2、h4及びh5は、各々独立に、0以上2以下の整数を表すことが好ましい。Q51、Q52、Q53、Q54、Q55及びQ56が表わす1つ以上のフェニル基を有してもよい炭素原子数2以上4以下のアルケニル基としては、1つ以上3つ以下のフェニル基を有するエテニル基が好ましく、ジフェニルエテニル基がより好ましい。Q51、Q52、Q53、Q54、Q55及びQ56が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
【0085】
化合物(15)としては、化学式(15−HT8)、(15−HT9)及び(15−HT10)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(15−HT8)、(15−HT9)及び(15−HT10)と記載することがある)が好ましい。
【0086】
【化13】
【0087】
化合物(16)について説明する。下記一般式(16)中、Q61、Q62、Q63及びQ64は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。j1、j2、j3及びj4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
【0088】
【化14】
【0089】
1が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ61は互いに同一であっても異なっていてもよい。j2が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ62は互いに同一であっても異なっていてもよい。j3が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ63は互いに同一であっても異なっていてもよい。j4が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ64は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0090】
一般式(16)中、Q61、Q62、Q63及びQ64は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。j1、j2、j3及びj4は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。Q61、Q62、Q63及びQ64が表わす炭素原子数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基が好ましい。
【0091】
化合物(16)としては、化学式(16−HT11)で表される化合物(以下、化合物(16−HT11)と記載することがある)が好ましい。
【0092】
【化15】
【0093】
化合物(17)について説明する。下記一般式(17)中、Q71、Q72、Q73及びQ74は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。k1、k2、k3及びk4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
【0094】
【化16】
【0095】
1が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ71は互いに同一であっても異なっていてもよい。k2が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ72は互いに同一であっても異なっていてもよい。k3が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ73は互いに同一であっても異なっていてもよい。k4が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ74は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0096】
一般式(17)中、Q71、Q72、Q73及びQ74は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。k1、k2、k3及びk4は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。Q71、Q72、Q73及びQ74が表わす炭素原子数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基が好ましい。
【0097】
化合物(17)としては、化学式(17−HT12)で表される化合物(以下、化合物(17−HT12)と記載することがある)が好ましい。
【0098】
【化17】
【0099】
化合物(18)について説明する。下記一般式(18)中、Q81、Q82、Q83、Q84、Q85及びQ86は、各々独立に、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。n1、n2、n3、n4、n5及びn6は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。xは、1以上3以下の整数を表す。r及びsは、各々独立に、0又は1を表す。
【0100】
【化18】
【0101】
1が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ81は互いに同一であっても異なっていてもよい。n2が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ82は互いに同一であっても異なっていてもよい。n3が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ83は互いに同一であっても異なっていてもよい。n4が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ84は互いに同一であっても異なっていてもよい。n5が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ85は互いに同一であっても異なっていてもよい。n6が2以上5以下の整数を表す場合、複数のQ86は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0102】
一般式(18)中、Q81、Q82、Q83、Q84、Q85及びQ86は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。n1、n2、n3、n4、n5及びn6は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。xは、2を表すことが好ましい。r及びsは、各々、0を表すことが好ましい。Q81、Q82、Q83、Q84、Q85及びQ86が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0103】
化合物(18)としては、化学式(18−HT13)で表される化合物(以下、化合物(18−HT13)と記載することがある)が好ましい。
【0104】
【化19】
【0105】
化合物(19)について説明する。下記一般式(19)中、R91及びR92は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基又は炭素原子数7以上20以下のアラルキル基を表す。p1及びp2は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。p3は、0以上2以下の整数を表す。
【0106】
【化20】
【0107】
1が2以上の整数を表す場合、複数のR91は互いに同一であっても異なってもよい。p2が2以上の整数を表す場合、複数のR92は互いに同一であっても異なってもよい。
【0108】
一般式(19)中、R91は、炭素原子数1以上3以下のアルキル基又は炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基を表すことが好ましい。R92は、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。p1は、0以上2以下の整数を表すことが好ましく、0を表すことがより好ましい。p2は、0又は1を表すことが好ましく、0を表すことがより好ましい。p3は、1又は2を表すことが好ましい。
【0109】
化合物(19)としては、化学式(19−HT17)で表される化合物(以下、化合物(19−HT17)と記載することがある)が好ましい。
【0110】
【化21】
【0111】
正孔輸送剤として、化合物(11)〜(19)のうちの1種のみを感光層が含有してもよい。露光メモリーの発生に起因する画像不良及び形成画像における黒点の発生を特に抑制するためには、正孔輸送剤として、化合物(11)〜(19)のうちの少なくとも2種を感光層が含有することが好ましく、化合物(11)〜(19)のうちの2種を感光層が含有することがより好ましく、化合物(11)と化合物(12)とを感光層が含有することが更に好ましい。なお、感光層は、化合物(11)〜(19)に加えて、化合物(11)〜(19)以外の正孔輸送剤を更に含有してもよい。
【0112】
露光メモリーの発生に起因する画像不良及び形成画像における黒点の発生を特に抑制するためには、正孔輸送剤として、化合物(11−HT1)、(11−HT2)、(12−HT3)、(12−HT4)、(13−HT5)、(13−HT6)、(14−HT7)、(15−HT8)、(15−HT9)、(15−HT10)、(16−HT11)、(17−HT12)、(18−HT13)及び(19−HT17)のうちの少なくとも1種を感光層が含有することが好ましい。正孔輸送剤として、化合物(11−HT1)、(11−HT2)、(12−HT3)、(12−HT4)、(13−HT5)、(13−HT6)、(14−HT7)、(15−HT8)、(15−HT9)、(15−HT10)、(16−HT11)、(17−HT12)、(18−HT13)及び(19−HT17)のうちの1種のみを感光層が含有してもよい。露光メモリーの発生に起因する画像不良及び形成画像における黒点の発生を特に抑制するためには、正孔輸送剤として、化合物正孔輸送剤として、化合物(11−HT1)、(11−HT2)、(12−HT3)、(12−HT4)、(13−HT5)、(13−HT6)、(14−HT7)、(15−HT8)、(15−HT9)、(15−HT10)、(16−HT11)、(17−HT12)、(18−HT13)及び(19−HT17)のうちの少なくとも2種を感光層が含有することが好ましく、これらの2種を感光層が含有することがより好ましく、化合物(11−HT1)と化合物(12−HT3)とを感光層が含有することが更に好ましい。
【0113】
露光メモリーの発生に起因する画像不良を特に抑制するためには、正孔輸送剤としては、化合物(11)、(12)、(14)、(15)、(17)、(18)又は(19)が好ましく、化合物(11)、(12)、(14)、(15)、(18)又は(19)がより好ましい。同じ理由から、正孔輸送剤としては、化合物(11−HT1)、(11−HT2)、(12−HT3)、(12−HT4)、(14−HT7)、(15−HT8)、(15−HT9)、(15−HT10)、(17−HT12)、(18−HT13)又は(19−HT17)が好ましく、化合物(11−HT1)、(11−HT2)、(12−HT3)、(12−HT4)、(14−HT7)、(15−HT8)、(18−HT13)又は(19−HT17)がより好ましい。
【0114】
形成画像における黒点の発生を特に抑制するためには、正孔輸送剤としては、化合物(11)、(12)、(13)、(14)、(15)又は(18)が好ましく、化合物(13)がより好ましい。同じ理由から、正孔輸送剤としては、化合物(11−HT1)、(12−HT3)、(12−HT4)、(13−HT5)、(13−HT6)、(14−HT7)、(15−HT8)、(15−HT9)又は(18−HT13)が好ましく、化合物(13−HT5)又は(13−HT6)がより好ましい。
【0115】
露光メモリーの発生に起因する画像不良の抑制と、形成画像における黒点の発生の抑制とをバランスよく達成するためには、正孔輸送剤としては、化合物(19)が好ましく、化合物(19−HT17)がより好ましい。
【0116】
感光層の質量に対する正孔輸送剤の含有率は、35質量%以上65質量%以下であることが好ましく、38質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、38質量%以上55質量%以下であることが更に好ましい。感光層の質量に対する正孔輸送剤の含有率が35質量%以上であると、露光メモリーの発生に起因する画像不良を好適に抑制することができる。一方、感光層の質量に対する正孔輸送剤の含有率が65質量%以下であると、形成画像における黒点の発生を好適に抑制することができる。また、感光層の質量に対する正孔輸送剤の含有率が65質量%以下であると、感光層の結晶化が発生し難くなると考えられる。
【0117】
電子輸送剤の質量mETMに対する正孔輸送剤の質量mHTMの比率mHTM/mETMは、1.2以上4.0以下であることが好ましく、1.5以上3.0以下であることがより好ましい。比率mHTM/mETMが1.2以上であると、露光メモリーの発生に起因する画像不良を好適に抑制することができる。一方、比率mHTM/mETMが4.0以下であると、形成画像における黒点の発生を好適に抑制することができる。なお、2種以上の電子輸送剤が感光層に含有される場合には、電子輸送剤の質量mETMは2種以上の電子輸送剤の合計質量である。また、2種以上の正孔輸送剤が感光層に含有される場合には、正孔輸送剤の質量mHTMは2種以上の正孔輸送剤の合計質量である。
【0118】
感光層に含有される正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上300質量部以下であることが好ましく、60質量部以上250質量部以下であることがより好ましい。
【0119】
(電子輸送剤)
電子輸送剤としては、例えば、キノン系化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸及びジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物及びジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。これらの電子輸送剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0120】
これらの電子輸送剤のうち、電子輸送剤の好適な例としては、一般式(21)、(22)及び(23)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(21)〜(23)と記載することがある)が挙げられる。
【0121】
【化22】
【0122】
一般式(21)中、R11及びR12は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基又は炭素原子数7以上20以下のアラルキル基を表す。
【0123】
一般式(21)中、R11及びR12は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。一般式(21)中のR11及びR12が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上5以下のアルキル基が好ましく、1,1−ジメチルプロピル基がより好ましい。
【0124】
化合物(21)としては、化学式(ET1)で表される化合物(以下、化合物(ET1)と記載することがある)が好ましい。
【0125】
【化23】
【0126】
一般式(22)中、R21、R22及びR23は、各々独立に、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ハロゲン原子を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基又は5員以上14員以下の複素環基を表す。
【0127】
一般式(22)中、R21及びR22は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、R23は、ハロゲン原子を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましい。R21及びR22が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が好ましく、tert−ブチル基がより好ましい。R23が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。R23が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基は、ハロゲン原子を有してもよい。このようなハロゲン原子としては、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。R23が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基が有するハロゲン原子の数は、1以上3以下であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0128】
化合物(22)としては、化学式(ET2)で表される化合物(以下、化合物(ET2)と記載することがある)が好ましい。
【0129】
【化24】
【0130】
一般式(23)中、R31及びR32は、各々独立に、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、アミノ基、又は置換基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。
【0131】
一般式(23)中、R31及びR32は、各々独立に、置換基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましい。R31及びR32が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。R31及びR32が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基は、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基が挙げられる。R31及びR32が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基が有する置換基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。R31及びR32が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基が有する置換基の数は、1以上3以下であることが好ましく、1以上2以下であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。
【0132】
化合物(23)としては、化学式(ET3)で表される化合物(以下、化合物(ET3)と記載することがある)が好ましい。
【0133】
【化25】
【0134】
感光層は、電子輸送剤として、化合物(21)、(22)及び(23)の1種のみを含有してもよい。また、感光層は、電子輸送剤として、化合物(21)、(22)及び(23)の2種以上を含有してもよい。また、感光層は、電子輸送剤として、化合物(21)、(22)又は(23)に加えて、化合物(21)、(22)及び(23)以外の電子輸送剤を更に含有してもよい。
【0135】
露光メモリーに起因する画像不良及び形成画像における黒点の発生を抑制するためには、電子輸送剤の含有量は、100質量部のバインダー樹脂に対して、20質量部以上200質量部以下であることが好ましく、40質量部以上150質量部以下であることがより好ましい。
【0136】
(電荷発生剤)
電荷発生剤は、感光体用の電荷発生剤である限り、特に限定されない。電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム又はアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料及びキナクリドン系顔料が挙げられる。電荷発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0137】
フタロシアニン系顔料としては、例えば、無金属フタロシアニン及び金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン及びクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。チタニルフタロシアニンは、例えば、化学式(CG1)で表される。無金属フタロシアニンは、例えば、化学式(CG2)で表される。
【0138】
【化26】
【0139】
【化27】
【0140】
フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。フタロシアニン系顔料の結晶形状(例えば、α型、β型、Y型、V型又はII型)については特に限定されず、種々の結晶形状を有するフタロシアニン系顔料が使用される。無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型及びY型結晶(以下、それぞれをα型、β型及びY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。
【0141】
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましく、X型無金属フタロシアニン又はY型チタニルフタロシアニンが更に好ましく、Y型チタニルフタロシアニンが特に好ましい。
【0142】
Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、例えば、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。
【0143】
CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法の一例について説明する。試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。
【0144】
短波長レーザー光源(例えば、350nm以上550nm以下の波長を有するレーザー光源)を用いた画像形成装置に適用される感光体には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料が好適に用いられる。
【0145】
電荷発生剤の含有量は、感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることが特に好ましい。
【0146】
(材料の組み合わせ)
露光メモリーに起因する画像不良及び形成画像における黒点の発生を抑制するためには、正孔輸送剤及びバインダー樹脂が、次に示す組み合わせの何れかであることが好ましい。更に、正孔輸送剤及びバインダー樹脂が、次に示す組み合わせの何れかであり、電荷発生剤がY型チタニルフタロシアニンであることが好ましい。正孔輸送剤及びバインダー樹脂が、次に示す組み合わせの何れかであり、電荷発生剤がX型無金属フタロシアニンであることも好ましい。
正孔輸送剤が化合物(11)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(11)及び化合物(12)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(12)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(13)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(14)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(15)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(16)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(17)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(18)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(11)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R2)であるか;
正孔輸送剤が化合物(11)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R3)であるか;
正孔輸送剤が化合物(11)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R4)であるか;
正孔輸送剤が化合物(18)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R2)であるか;又は
正孔輸送剤が化合物(19)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R2)である。
【0147】
露光メモリーに起因する画像不良及び形成画像における黒点の発生を抑制するためには、正孔輸送剤及びバインダー樹脂が、次に示す組み合わせの何れかであることがより好ましい。更に、正孔輸送剤及びバインダー樹脂が、次に示す組み合わせの何れかであり、電荷発生剤がY型チタニルフタロシアニンであることが好ましい。正孔輸送剤及びバインダー樹脂が、次に示す組み合わせの何れかであり、電荷発生剤がX型無金属フタロシアニンであることも好ましい。
正孔輸送剤が化合物(11−HT1)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(11−HT2)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(11−HT1)及び化合物(12−HT3)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(12−HT4)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(13−HT5)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(13−HT6)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(14−HT7)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(15−HT8)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(15−HT9)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(15−HT10)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(16−HT11)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(17−HT12)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(18−HT13)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(11−HT1)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R2)であるか;
正孔輸送剤が化合物(11−HT1)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R3)であるか;
正孔輸送剤が化合物(11−HT1)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R4)であるか;
正孔輸送剤が化合物(18−HT13)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R2)であるか;又は
正孔輸送剤が化合物(19−HT17)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R2)である。
【0148】
露光メモリーに起因する画像不良及び形成画像における黒点の発生を抑制するためには、正孔輸送剤、バインダー樹脂及び電子輸送剤が、次に示す組み合わせの何れかであることが好ましい。更に、正孔輸送剤、バインダー樹脂及び電子輸送剤が、次に示す組み合わせの何れかであり、電荷発生剤がY型チタニルフタロシアニンであることが好ましい。正孔輸送剤、バインダー樹脂及び電子輸送剤が、次に示す組み合わせの何れかであり、電荷発生剤がX型無金属フタロシアニンであることも好ましい。
正孔輸送剤が化合物(11)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(21)であるか;
正孔輸送剤が化合物(11)及び化合物(12)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(21)であるか;
正孔輸送剤が化合物(12)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(21)であるか;
正孔輸送剤が化合物(13)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(21)であるか;
正孔輸送剤が化合物(14)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(21)であるか;
正孔輸送剤が化合物(15)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(21)であるか;
正孔輸送剤が化合物(16)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(21)であるか;
正孔輸送剤が化合物(17)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(21)であるか;
正孔輸送剤が化合物(18)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(21)であるか;
正孔輸送剤が化合物(11)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(22)であるか;
正孔輸送剤が化合物(11)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(23)であるか;
正孔輸送剤が化合物(11)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R2)であり、電子輸送剤が化合物(21)であるか;
正孔輸送剤が化合物(11)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R3)であり、電子輸送剤が化合物(21)であるか;
正孔輸送剤が化合物(11)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R4)であり、電子輸送剤が化合物(21)であるか;
正孔輸送剤が化合物(18)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R2)であり、電子輸送剤が化合物(21)であるか;又は
正孔輸送剤が化合物(19)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R2)であり、電子輸送剤が化合物(21)である。
【0149】
露光メモリーに起因する画像不良及び形成画像における黒点の発生を抑制するためには、正孔輸送剤、バインダー樹脂及び電子輸送剤が、次に示す組み合わせの何れかであることがより好ましい。更に、正孔輸送剤、バインダー樹脂及び電子輸送剤が、次に示す組み合わせの何れかであり、電荷発生剤がY型チタニルフタロシアニンであることが好ましい。正孔輸送剤、バインダー樹脂及び電子輸送剤が、次に示す組み合わせの何れかであり、電荷発生剤がX型無金属フタロシアニンであることも好ましい。
正孔輸送剤が化合物(11−HT1)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(ET1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(11−HT2)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(ET1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(11−HT1)及び化合物(12−HT3)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(ET1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(12−HT4)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(ET1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(13−HT5)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(ET1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(13−HT6)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(ET1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(14−HT7)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(ET1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(15−HT8)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(ET1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(15−HT9)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(ET1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(15−HT10)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(ET1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(16−HT11)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(ET1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(17−HT12)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(ET1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(18−HT13)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(ET1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(11−HT1)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(ET2)であるか;
正孔輸送剤が化合物(11−HT1)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R1)であり、電子輸送剤が化合物(ET3)であるか;
正孔輸送剤が化合物(11−HT1)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R2)であり、電子輸送剤が化合物(ET1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(11−HT1)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R3)であり、電子輸送剤が化合物(ET1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(11−HT1)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R4)であり、電子輸送剤が化合物(ET1)であるか;
正孔輸送剤が化合物(18−HT13)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R2)であり、電子輸送剤が化合物(ET1)であるか;又は
正孔輸送剤が化合物(19−HT17)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(R2)であり、電子輸送剤が化合物(ET1)である。
【0150】
(添加剤)
添加剤としては、例えば、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項消光剤又は紫外線吸収剤)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤及びレベリング剤が挙げられる。
【0151】
<導電性基体>
導電性基体は、感光体の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体は、少なくとも表面部が導電性を有する材料で形成されていればよい。導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で形成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼及び真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて(例えば、合金として)用いてもよい。これらの導電性を有する材料のなかでも、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
【0152】
導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状及びドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
【0153】
<中間層>
中間層(下引き層)は、例えば、無機粒子及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇が抑えられると考えられる。
【0154】
無機粒子としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム、鉄又は銅)、金属酸化物(例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ又は酸化亜鉛)の粒子及び非金属酸化物(例えば、シリカ)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0155】
中間層用樹脂としては、中間層を形成する樹脂として用いることができる限り、特に限定されない。中間層は、添加剤を含有してもよい。中間層に含有される添加剤の例は、感光層に含有される添加剤の例と同じである。
【0156】
<感光体の製造方法>
感光体は、例えば、以下のように製造される。感光体は、感光層用塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥することによって製造される。感光層用塗布液は、電荷発生剤、電子輸送剤、バインダー樹脂、正孔輸送剤及び必要に応じて添加される成分(例えば、添加剤)を、溶剤に溶解又は分散させることにより製造される。
【0157】
感光層用塗布液に含有される溶剤は、塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はブタノール)、脂肪族炭化水素(例えば、n−ヘキサン、オクタン又はシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン又はキシレン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素又はクロロベンゼン)、エーテル類(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテル)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン又はシクロヘキサノン)、エステル類(例えば、酢酸エチル又は酢酸メチル)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。感光体の製造時の作業性を向上させるためには、溶剤として非ハロゲン溶剤(ハロゲン化炭化水素以外の溶剤)を用いることが好ましい。
【0158】
塗布液は、各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー又は超音波分散機を用いることができる。
【0159】
感光層用塗布液は、各成分の分散性を向上させるために、例えば、界面活性剤を含有してもよい。
【0160】
感光層用塗布液を塗布する方法としては、塗布液を導電性基体上に均一に塗布できる方法である限り、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ブレードコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法及びバーコート法が挙げられる。
【0161】
感光層用塗布液を乾燥する方法としては、塗布液中の溶剤を蒸発させ得る限り、特に限定されない。例えば、高温乾燥機又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理温度は、例えば、40℃以上150℃以下である。熱処理時間は、例えば、3分間以上120分間以下である。
【0162】
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて、中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程の一方又は両方を更に含んでもよい。中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程では、公知の方法が適宜選択される。
【0163】
<画像形成装置>
以下、本実施形態の感光体を備える画像形成装置について説明する。以下、本実施形態の感光体を備える画像形成装置の一態様として、直接転写方式及びタンデム方式を採用するカラー画像形成装置を例に挙げて、図3を参照しながら説明する。
【0164】
図3に示す画像形成装置90は、画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dと、転写ベルト38と、定着部36とを備える。以下、区別する必要がない場合には、画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dの各々を、画像形成ユニット40と記載する。
【0165】
画像形成ユニット40は、像担持体30と、帯電部42と、露光部44と、現像部46と、転写部48とを備える。像担持体30は、本実施形態の感光体1である。画像形成ユニット40の中央位置に、像担持体30が設けられる。像担持体30は、矢符方向(反時計回り)に回転可能に設けられる。像担持体30の周囲には、帯電部42を基準として像担持体30の回転方向の上流側から順に、帯電部42と、露光部44と、現像部46と、転写部48とが設けられる。画像形成ユニット40には、クリーニング部(不図示、具体的にはブレードクリーニング部)及び除電部(不図示)の一方又は両方が更に備えられてもよい。なお、画像形成ユニット40は、クリーニングブレードを備えなくてもよい。即ち、画像形成装置90は、ブレードクリーニングレス方式を採用することができる。
【0166】
画像形成ユニット40a〜40dの各々によって、転写ベルト38上の記録媒体Mに、複数色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4色)のトナー像が順に重ねられる。
【0167】
帯電部42は、像担持体30の表面(具体的には、周面)を帯電する。帯電部42の帯電極性は、正極性である。即ち、帯電部42は、像担持体30の表面を正極性に帯電する。
【0168】
帯電部42は、帯電ローラーである。帯電ローラーは、像担持体30の表面と接触しながら像担持体30の表面を帯電する。画像形成装置90は、接触帯電方式を採用している。帯電ローラー以外の接触帯電方式の帯電部としては、例えば、帯電ブラシが挙げられる。なお、帯電部は非接触方式であってもよい。非接触方式の帯電部としては、例えば、コロトロン帯電器及びスコロトロン帯電器が挙げられる。
【0169】
露光部44は、帯電された像担持体30の表面を露光する。これにより、像担持体30の表面に静電潜像が形成される。静電潜像は、画像形成装置90に入力された画像データに基づいて形成される。
【0170】
現像部46は、像担持体30の表面にトナーを供給する。これにより、現像部46は、静電潜像をトナー像として現像する。これにより、像担持体30が、トナー像を担持する。現像剤は一成分現像剤であっても二成分現像剤であってもよい。現像剤が一成分現像剤である場合、現像部46は、像担持体30の表面に形成された静電潜像に一成分現像剤であるトナーを供給する。現像剤が二成分現像剤である場合、現像部46は、像担持体30の表面に形成された静電潜像に、二成分現像剤に含まれるトナーとキャリアとのうちトナーを供給する。
【0171】
像担持体30の表面における所定の箇所が露光部44によって露光されてから現像部46によって現像されるまでの時間(以下、露光と現像との間のプロセス時間と記載することがある)は、100ミリ秒以下である。露光と現像との間のプロセス時間は、より具体的には、露光部44が照射する露光光が像担持体30の表面における所定の箇所に照射され始めてから、現像部46によってこの所定の箇所にトナーが供給され始めるまでの時間である。像担持体30の表面における所定の箇所は、例えば、像担持体30の周面の露光される領域における1つの点である。露光と現像との間のプロセス時間は、像担持体30の周速と対応する。
【0172】
通常、露光と現像との間のプロセス時間が100ミリ秒以下であると、像担持体の周速が速く、像担持体の表面に残るトナー及びトナーの外添剤をクリーニングする時間が短い。そのため、形成画像に黒点が発生し易い。特に、高温高湿環境下において、形成画像に黒点が発生し易い。また、通常、露光と現像との間のプロセス時間が100ミリ秒以下であると、像担持体の周速が速く、像担持体の感光層中に電荷が残存し易い。そのため、露光メモリーに起因する画像不良が発生し易い。しかし、画像形成装置90は、像担持体30として本実施形態に係る感光体1を備える。感光体1は、露光メモリーに起因する画像不良の発生及び形成画像における黒点の発生を抑制することができる。このため、像担持体30として感光体1を備える画像形成装置90は、露光と現像との間のプロセス時間が100ミリ秒以下であっても、露光メモリーに起因する画像不良の発生及び形成画像における黒点の発生を抑制することができる。
【0173】
露光と現像との間のプロセス時間は、0ミリ秒より大きく100ミリ秒以下であることが好ましく、50ミリ秒以上90ミリ秒以下であることがより好ましく、65ミリ秒以上70ミリ秒以下であることが更に好ましい。
【0174】
転写ベルト38は、像担持体30と転写部48との間に記録媒体Mを搬送する。転写ベルト38は、無端状のベルトである。転写ベルト38は、矢符方向(時計回り)に回転可能に設けられる。
【0175】
転写部48は、現像部46によって現像されたトナー像を、像担持体30の表面から被転写体へ転写する。被転写体は、記録媒体Mである。転写部48としては、例えば、転写ローラーが挙げられる。
【0176】
転写部48が像担持体30の表面から被転写体である記録媒体Mにトナー像を転写し終えた像担持体30の表面の領域は、除電されることなく、帯電部42によって再び帯電される。即ち、画像形成装置90は、いわゆる除電レス方式を採用することができる。通常、除電レス方式を採用する画像形成装置では、像担持体の感光層中に電荷が残存し易い。そのため、露光メモリーに起因する画像不良が発生し易い。しかし、画像形成装置90は、像担持体30として本実施形態に係る感光体1を備える。感光体1は、露光メモリーに起因する画像不良の発生を抑制することができる。このため、像担持体30として感光体1を備える画像形成装置90は、除電レス方式を採用しても、露光メモリーに起因する画像不良の発生を抑制することができる。
【0177】
定着部36は、転写部48によって記録媒体Mに転写された未定着のトナー像を、加熱及び/又は加圧する。定着部36は、例えば、加熱ローラー及び/又は加圧ローラーである。トナー像を加熱及び/又は加圧することにより、記録媒体Mにトナー像が定着する。その結果、記録媒体Mに画像が形成される。
【0178】
以上、画像形成装置の一例について説明したが、画像形成装置は、上述した画像形成装置90に限定されない。上述した画像形成装置90はカラー画像形成装置であったが、画像形成装置はモノクロ画像形成装置であってもよい。この場合、画像形成装置は、例えば画像形成ユニットを1つだけ備えていればよい。また、上述した画像形成装置90はタンデム方式を採用していたが、画像形成装置は例えばロータリー方式を採用してもよい。また、上述した画像形成装置90は直接転写方式を採用していたが、画像形成装置は例えば中間転写方式を採用してもよい。この場合、転写部は一次転写部及び二次転写部に相当し、被転写体は記録媒体及び転写ベルトに相当する。
【0179】
<プロセスカートリッジ>
図3を引き続き参照して、本実施形態の感光体1を備えるプロセスカートリッジの一例について説明する。プロセスカートリッジは、画像形成用のカートリッジである。プロセスカートリッジは、画像形成ユニット40a〜40dの各々に相当する。プロセスカートリッジは、像担持体30を備える。像担持体30は、本実施形態に係る感光体1である。プロセスカートリッジは、感光体1に加えて、帯電部42、露光部44、現像部46及び転写部48からなる群より選択される少なくとも1つを更に備えていてもよい。プロセスカートリッジには、クリーニング部(不図示)及び除電部(不図示)の一方又は両方が更に備えられてもよい。プロセスカートリッジは、画像形成装置90に対して着脱自在に設計される。そのため、プロセスカートリッジは取り扱いが容易であり、感光体1の感度特性等が劣化した場合に、感光体1を含めて容易かつ迅速に交換することができる。以上、図3を参照して、本実施形態の感光体1を備えるプロセスカートリッジについて説明した。
【実施例】
【0180】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
【0181】
<感光層を形成するための材料>
感光体の感光層を形成するための材料として、以下の電子輸送剤、正孔輸送剤、電荷発生剤及びバインダー樹脂を準備した。
【0182】
(電子輸送剤)
電子輸送剤として、実施形態で説明した化合物(ET1)〜(ET3)を準備した。
【0183】
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤として、実施形態で説明した化合物(11−HT1)、(11−HT2)、(12−HT3)、(12−HT4)、(13−HT5)、(13−HT6)、(14−HT7)、(15−HT8)、(15−HT9)、(15−HT10)、(16−HT11)、(17−HT12)、(18−HT13)及び(19−HT17)を準備した。また、比較例で使用する正孔輸送剤として、下記化学式(HT14)〜(HT16)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(HT14)〜(HT16)と記載することがある)も準備した。
【0184】
【化28】
【0185】
(電荷発生剤)
電荷発生剤として、Y型チタニルフタロシアニン及びX型無金属フタロシアニンを準備した。Y型チタニルフタロシアニンは、実施形態で述べた化学式(CG1)で表され、Y型の結晶構造を有するチタニルフタロシアニン(以下、化合物(CG1)と記載することがある)であった。X型無金属フタロシアニンは、実施形態で述べた化学式(CG2)で表され、X型の結晶構造を有する無金属フタロシアニン(以下、化合物(CG2)と記載することがある)であった。
【0186】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂として、実施形態で説明したポリカーボネート樹脂(R1)〜(R4)を準備した。ポリカーボネート樹脂(R1)、(R2)、(R3)及び(R4)の粘度平均分子量は、何れも、40000であった。
【0187】
<感光体の製造>
感光層を形成するための材料を用いて、感光体(A−1)〜(A−25)及び(B−1)〜(B−7)の各々を製造した。
【0188】
(感光体(A−1)の製造)
容器内に、電荷発生剤としての化合物(CG1)3質量部、正孔輸送剤としての化合物(11−HT1)150質量部、電子輸送剤としての化合物(ET1)75質量部、バインダー樹脂としてのポリカーボネート樹脂(R1)100質量部及び溶剤としてのテトラヒドロフラン800質量部を投入した。容器の内容物を、ボールミルを用いて50時間混合して、溶剤に材料を分散させた。これにより、感光層用塗布液を得た。感光層用塗布液を、導電性基体(アルミニウム製のドラム状支持体、直径30mm、全長247.5mm)上に、ディップコート法を用いて塗布した。塗布した感光層用塗布液を、120℃で60分間熱風乾燥させた。これにより、導電性基体上に、単層の感光層(膜厚28μm)を形成した。その結果、感光体(A−1)が得られた。
【0189】
(感光体(A−2)〜(A−25)及び(B−1)〜(B−7)の製造)
次の点を変更した以外は、感光体(A−1)の製造と同じ方法で、感光体(A−2)〜(A−25)及び(B−1)〜(B−7)の各々を製造した。感光体(A−1)の製造においては電荷発生剤として化合物(CG1)を使用したが、感光体(A−2)〜(A−25)及び(B−1)〜(B−7)の各々の製造においては表1及び表2に示す種類の電荷発生剤を使用した。感光体(A−1)の製造においては正孔輸送剤として150質量部の化合物(11−HT1)を使用したが、感光体(A−2)〜(A−25)及び(B−1)〜(B−7)の各々の製造においては表1及び表2に示す種類及び量の正孔輸送剤を使用した。感光体(A−1)の製造においては電子輸送剤として75質量部の化合物(ET1)を使用したが、感光体(A−2)〜(A−25)及び(B−1)〜(B−7)の各々の製造においては表1及び表2に示す種類及び量の電子輸送剤を使用した。感光体(A−1)の製造においてはバインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂(R1)を使用したが、感光体(A−2)〜(A−25)及び(B−1)〜(B−7)の各々の製造においては表1及び表2に示す種類のバインダー樹脂を使用した。
【0190】
<マルテンス硬度の測定>
感光体(A−1)〜(A−25)及び(B−1)〜(B−7)の各々に対して、50℃における感光層のマルテンス硬度を測定した。50℃における感光層のマルテンス硬度は、ISO14577の規格に基づくナノインデンテーション法により測定した。50℃における感光層のマルテンス硬度の測定環境は、温度23℃かつ湿度50%RHの環境であった。まず、ヒーターを用いて、感光体の感光層の温度を50℃まで上昇させた。感光層の温度を50℃に維持しながら、硬度計(株式会社フィッシャー・インストルメンツ製「FISCHERSCOPE(登録商標) HM2000XYp」)を用いて、感光層のマルテンス硬度を測定した。具体的には、感光層の表面に、硬度計が備える圧子(対面角135度のダイヤモンド製の四角錐型の圧子)を当接させた。次いで、圧子に10mN/20秒の速度で徐々に荷重を加えた。荷重が10mNに達した時点で、圧子を5秒間保持した。5秒間保持した後、20秒かけて圧子に加えた荷重を除荷した。測定された50℃における感光層のマルテンス硬度を、表1及び表2に示す。
【0191】
<光応答時間の測定>
感光体(A−1)〜(A−25)及び(B−1)〜(B−7)の各々の光応答時間を測定した。光応答性時間の測定環境は、温度25℃及び相対湿度50%RHの環境下であった。
【0192】
図4を参照して、感光体1の光応答時間の測定方法を説明する。図4は、感光体1の光応答時間の測定装置50を示す。測定装置50は、帯電装置52と、露光装置54と、透明プローブ56と、電位検出装置58とを備える。測定装置50として、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いた。まず、感光体1(具体的には、感光体(A−1)〜(A−25)及び(B−1)〜(B−7)の何れか)を測定装置50に装着した。
【0193】
帯電装置52によって、感光体1の感光層3の表面3aを+800Vに帯電した。これにより、感光層3の表面3aが帯電位置Aで+800Vに帯電した。帯電位置Aは、帯電装置52と、感光層3の表面3aとが接触する位置であった。
【0194】
帯電位置Aから露光位置Bへ向かう方向(図4において実線の矢印で示す方向)に感光体1を回転させて、帯電された感光層3の表面3aを、露光位置Bに移動させた。露光位置Bは、パルス光が照射される位置であった。移動後、感光体1の回転を止め、感光体1の位置を固定した。感光層3の表面3aの電位(表面電位)の測定は、感光体1を固定した状態で実行された。露光位置Bで、露光装置54が帯電された感光層3の表面3aにパルス光(波長780nm、半値幅40マイクロ秒)を照射した。パルス光が+800Vに帯電された感光層3の表面3aに照射されてから400ミリ秒後に、感光層3の表面電位が+800Vから+200Vとなる強度に、パルス光の光強度を設定した。パルス光の照射は1回であった。即ち、1パルスを照射した。露光装置54の光源としてキセノンフラッシュランプ(浜松ホトニクス株式会社製「C4479」)を用いた。パルス光の波長及び光強度は、光学フィルター(不図示)により調整した。なお、厳密には、帯電装置52によって感光層3の表面3aを+800Vよりわずかに大きい値に帯電させた。次いで、所定の時間を経過させて、感光層3の表面電位が+800Vまで暗減衰した時点で、露光装置54によって、パルス光を感光層3の表面3aに照射した。
【0195】
透明プローブ56によって、感光層3の表面電位を測定した。透明プローブ56は、パルス光の光軸上に設置され、パルス光を透過させた。図4中、露光装置54から感光体1へ向かう破線の矢印は、パルス光の光軸を示す。透明プローブ56として、プローブ(トレックジャパン株式会社製「3629A」)を用いた。
【0196】
電位検出装置58は、透明プローブ56と電気的に接続されていた。電位検出装置58によって、透明プローブ56が測定した時間ごとの感光層3の表面電位を得た。これにより、感光層3の表面電位の減衰曲線を得た。得られた減衰曲線から、パルス光が感光層3の表面3aに照射されてから感光層3の表面電位が+800Vから+400Vに減衰するまでの時間τを得た。得られた時間τを、光応答時間とした。以上、図4を参照して、感光体1の光応答時間の測定方法を説明した。測定された感光体の光応答時間を、表1及び表2に示す。
【0197】
<画像評価:露光メモリーに起因する画像不良>
感光体(A−1)〜(A−25)及び(B−1)〜(B−7)の各々に対して、露光メモリーに起因する画像不良が抑制されているか否かを評価した。露光メモリーに起因する画像不良の評価は、温度10℃及び相対湿度15%RHの環境下で行った。
【0198】
感光体を評価機に装着した。評価機として、カラー画像形成装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」)の改造機を用いた。この評価機は、帯電部としてスコロトロン帯電装置を備えていた。この評価機は、除電部と、クリーニング部としてのクリーニングブレードとを備えていなかった。帯電電位を+700Vに設定した。露光と現像との間のプロセス時間が75ミリ秒となるように、感光体の周速を調整した。
【0199】
図5を参照して、露光メモリーに起因する画像不良の評価に使用した評価用画像70を説明する。図5は、評価用画像70を示す。評価用画像70は、第一領域72及び第二領域74を含む。第一領域72は、像担持体の1周目に形成される画像の領域に相当する。第一領域72は、第一画像76を含む。第一画像76は、ドーナツ型のソリッド画像(画像濃度100%)から構成される。このソリッド画像は、2つの同心円の1組から構成される。第二領域74は、像担持体の2周目に形成される画像の領域に相当する。第二領域74は第二画像78を含む。第二画像78は、全面ハーフトーン画像(画像濃度40%)から構成される。
【0200】
次に、図6を参照して、露光メモリーに起因する画像不良が発生した画像80を説明する。図6は、露光メモリーに起因する画像不良が発生した画像80を示す。画像80は、評価用画像70で説明した第一領域72、第二領域74、第一画像76及び第二画像78を含む。評価用画像70を印刷して露光メモリーに起因する画像不良が発生した場合には、第二領域74に第二画像78が印刷されるべきところ、第二領域74の第二画像78中にゴースト画像Gが現れる。ゴースト画像Gの画像濃度は、第二画像78に比べて濃い。ゴースト画像Gは、第一領域72の露光領域の第一画像76を反映して設計画像濃度よりも濃くなった、露光メモリーに起因する画像不良である。
【0201】
まず、評価機を用いて、2000枚の記録媒体(A4サイズの紙)に、15秒間隔で、画像(印字率4%の印字パターン画像)を印刷した。2000枚の記録媒体に印刷した後、1枚の記録媒体(A4サイズの紙)に、図5で示す評価用画像70を印刷した。印刷した評価用画像70を肉眼で観察し、露光メモリーに起因する画像不良の発生の有無を確認した。具体的には、評価用画像70の第二領域74に、第一画像76に対応したゴースト画像Gが発生したか否かを確認した。評価用画像70の観察結果から下記基準に基づいて、露光メモリーに起因する画像不良を評価した。評価結果を表3及び表4に示す。なお、評価がA〜Cである感光体を、露光メモリーに起因する画像不良が抑制されていると評価した。
【0202】
(露光メモリーに起因する画像不良の評価基準)
評価A:ゴースト画像Gが観察されなかった。
評価B:ゴースト画像Gがわずかに観察された。
評価C:ゴースト画像Gが観察されたが、実用上問題のない水準であった。
評価D:ゴースト画像Gが明確に観察され、実用上問題のある水準であった。
【0203】
<画像評価:黒点>
感光体(A−1)〜(A−25)及び感光体(B−1)〜(B−7)の各々に対して、形成画像における黒点の発生が抑制されているか否かを評価した。黒点に関する評価は、温度32℃及び相対湿度80%RHの環境下で行った。
【0204】
感光体を評価機に装着した。黒点に関する評価に使用した評価機は、露光メモリーに起因する画像不良の評価に使用した評価機と同じであった。帯電電位を+700Vに設定した。露光と現像との間のプロセス時間が60ミリ秒となるように、感光体の周速を調整した。
【0205】
まず、2000枚の記録媒体(A4サイズの紙)に、白紙画像を連続して印刷した。次いで、評価機を24時間静置した。次いで、1枚の記録媒体(A4サイズの紙)に白紙画像を印刷した。評価機を24時間静置した後に印刷された白紙画像を肉眼で観察し、この白紙画像中に発生した長径が0.1mm以上である黒点の数を数えた。黒点の数を、表3及び表4に示す。なお、黒点の数が少ないほど、形成画像における黒点の発生が抑制されていると評価した。
【0206】
表1及び表2中、CGM、HTM、ETM、樹脂、硬度、部、wt%、CG2及びCG1は、各々、電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、バインダー樹脂、50℃における感光層のマルテンス硬度、質量部、質量%、X型無金属フタロシアニン及びY型チタニルフタロシアニンを示す。また、表1で示す感光体(A−7)の正孔輸送剤の種類「11−HT1/12−HT3」及び正孔輸送剤の量「75/75」は、正孔輸送剤として、75質量部の化合物(11−HT1)と、75質量部の化合物(12−HT3)とを使用したことを示す。
【0207】
表1及び表2中、「HTM」欄の「含有率」は、感光層の質量に対する正孔輸送剤の含有率を示す。感光層の質量に対する正孔輸送剤の含有率は、計算式「含有率(単位:質量%)=100×正孔輸送剤の量(単位:質量部)/[電荷発生剤の量(単位:質量部)+正孔輸送剤の量(単位:質量部)+電子輸送剤の量(単位:質量部)+バインダー樹脂の量(単位:質量部)]」から求めた。
【0208】
表1及び表2中、「比率mHTM/mETM」は、電子輸送剤の質量mETMに対する正孔輸送剤の質量mHTMの比率mHTM/mETMを示す。比率mHTM/mETMは、計算式「比率mHTM/mETM=正孔輸送剤の量(単位:質量部)/電子輸送剤の量(単位:質量部)」から求めた。
【0209】
【表1】
【0210】
【表2】
【0211】
【表3】
【0212】
【表4】
【0213】
感光体(A−1)〜(A−25)は、各々、導電性基体と、単層の感光層とを備えていた。感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを含有していた。50℃における感光層のマルテンス硬度は、160N/mm2以上であった。光応答時間は、0.05ミリ秒以上0.85ミリ秒以下であった。そのため、表3及び表4に示すように、感光体(A−1)〜(A−25)では、黒点の数が15個以下であり、形成画像における黒点の発生が抑制されていた。また、感光体(A−1)〜(A−25)では、露光メモリーに起因する画像不良の評価がA〜Cであり、露光メモリーに起因する画像不良が抑制されていた。
【0214】
一方、感光体(B−1)、(B−2)及び(B−5)の各々では、光応答時間が0.85ミリ秒超であった。そのため、表4に示すように、感光体(B−1)、(B−2)及び(B−5)の各々では、露光メモリーに起因する画像不良の評価がDであり、露光メモリーに起因する画像不良が抑制されていなかった。
【0215】
感光体(B−3)、(B−4)及び(B−7)の各々では、50℃における感光層のマルテンス硬度が160N/mm2未満であった。そのため、表4に示すように、感光体(B−3)、(B−4)及び(B−7)の各々では、黒点の数が35個以上であり、形成画像における黒点の発生が抑制されていなかった。
【0216】
感光体(B−6)では、感光層が結晶化したため、光応答時間、及び50℃における感光層のマルテンス硬度を測定することができなかった。また、感光体(B−6)では、感光層が結晶化したため、露光メモリーに起因する画像不良、及び形成画像における黒点の発生を評価することができなかった。
【0217】
以上のことから、本発明に係る感光体によれば、露光メモリーに起因する画像不良及び形成画像における黒点の発生を抑制できることが示された。また、本発明に係るプロセスカートリッジ及び画像形成装置によれば、露光メモリーに起因する画像不良及び形成画像における黒点の発生を抑制できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明に係る感光体は、画像形成装置に利用することができる。本発明に係るプロセスカートリッジ及び画像形成装置は、記録媒体に画像を形成するために利用することができる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6