(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。また、本明細書において、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
【0016】
以下、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、及び炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、各々、次の意味である。
【0017】
炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、及びヘキシル基が挙げられる。
【0018】
炭素原子数1以上3以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上3以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びイソプロピル基が挙げられる。
【0019】
炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、及びヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0020】
炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、及びイソプロポキシ基が挙げられる。
【0021】
炭素原子数6以上14以下のアリール基は、非置換である。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族単環炭化水素基、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合二環炭化水素基、及び炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合三環炭化水素基が挙げられる。より具体的な炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びフェナントリル基が挙げられる。
【0022】
炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基の水素原子の一つが炭素原子数6以上14以下のアリール基で置換された基である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基としては、例えば、フェニルメチル基(ベンジル基)、2−フェニルエチル基(フェネチル基)、1−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、ナフチルメチル基、アントリルメチル基及びフェナントリルメチル基が挙げられる。
【0023】
<第一実施形態:化合物(1)>
[化合物(1)の構造]
本発明の第一実施形態は、下記一般式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)と記載することがある。)である。
【0025】
一般式(1)中、R
1及びR
2は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、又は水素原子を表す。R
3及びR
4は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、又は炭素原子数7以上20以下のアラルキル基を表す。kは、0以上2以下の整数を表す。mは、0以上4以下の整数を表す。nは、0以上5以下の整数を表す。mが2以上4以下の整数を表す場合、同一のフェニレン基に結合する複数のR
3は互いに同一であっても異なってもよい。nが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR
4は互いに同一であっても異なってもよい。
【0026】
化合物(1)は、電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある。)の感度特性を向上させることができる。その理由は以下のように推測される。
【0027】
化合物(1)は、空間的な広がりが比較的大きいπ共役系を有する。そのため、化合物(1)は、キャリア(正孔)の受容性が高くなる傾向がある。また、化合物(1)はπ共役系が比較的大きいため、複数の化合物(1)のπ共役系が互いに重なり易くなり、複数の化合物(1)の分子間におけるキャリア(正孔)の移動距離が比較的小さくなる。そのため、化合物(1)は、キャリア(正孔)の輸送性が高くなる傾向がある。つまり、化合物(1)は、キャリア(正孔)の受容性及び輸送性が高くなる傾向があるため、感度特性を向上させることができると考えられる。
【0028】
また、化合物(1)は、感光体の耐オイルクラック性を向上させることができる。その理由は以下のように推測される。
【0029】
化合物(1)は、窒素原子に、2個のベンゼン環と、−CH=CR
1R
2基とが結合している。このような構造を有する化合物(1)は、トリフェニルアミン構造を持つ化合物よりも対称性が低い。そのため、化合物(1)と、感光層の母材となる材料(例えばバインダー樹脂)との相溶性が高まり、感光層外への化合物(1)の溶出が抑制される傾向がある。よって、化合物(1)は、感光体の耐オイルクラック性を向上させることができると考えられる。
【0030】
一般式(1)中、R
1及びR
2は、感度特性及び耐オイルクラック性をより向上させる観点から、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基又はフェニル基を表すことがより好ましく、メチル基又はフェニル基を表すことが更に好ましい。感度特性を更に向上させる観点から、R
1及びR
2の少なくとも一方は、炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましく、フェニル基を表すことがより好ましい。耐オイルクラック性を更に向上させる観点から、R
1及びR
2の少なくとも一方は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基を表すことが更に好ましい。
【0031】
一般式(1)中、R
3は、感度特性及び耐オイルクラック性をより向上させる観点から、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基又は炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基を表すことがより好ましく、メチル基又はメトキシ基を表すことが更に好ましく、メチル基を表すことが特に好ましい。また、感度特性を更に向上させる観点から、R
3は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基を表すことが特に好ましい。
【0032】
一般式(1)中、R
4は、感度特性及び耐オイルクラック性をより向上させる観点から、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基を表すことが更に好ましい。
【0033】
一般式(1)中、kは、感度特性をより向上させる観点から、1又は2を表すことが好ましく、2を表すことがより好ましい。
【0034】
一般式(1)中、mは、感度特性及び耐オイルクラック性をより向上させる観点から、1を表すことが好ましい。
【0035】
一般式(1)中、nは、感度特性及び耐オイルクラック性をより向上させる観点から、0又は1を表すことが好ましく、0を表すことがより好ましい。
【0036】
また、感度特性を特に向上させる観点から、一般式(1)中、R
3がメチル基を表し、kが1又は2を表し、nが0を表すことが好ましい。耐オイルクラック性を特に向上させる観点から、一般式(1)中、R
1及びR
2の少なくとも一方がメチル基を表し、R
3がメチル基を表し、nが0を表すことが好ましい。
【0037】
化合物(1)としては、例えば、下記化学式(H−1)〜(H−6)で表される化合物(以下、それぞれ化合物(H−1)〜(H−6)と記載することがある。)が挙げられる。
【0039】
これらの化合物のうち、感度特性をより向上させる観点から、化合物(H−1)、化合物(H−2)及び化合物(H−4)が好ましい。また、耐オイルクラック性をより向上させる観点から、化合物(H−1)、化合物(H−3)及び化合物(H−4)が好ましい。
【0040】
[化合物(1)の合成方法]
化合物(1)は、例えば、以下に示す反応式(R1)及び(R2)で表される反応(以下、それぞれ反応(R1)及び(R2)と記載することがある。)に従って又はこれに準ずる方法によって合成される。反応(R1)及び(R2)において、R
1〜R
4、k、m及びnは、それぞれ一般式(1)中のR
1〜R
4、k、m及びnと同義である。
【0042】
反応(R1)では、1モル当量の一般式(A1)で表される化合物(以下、化合物(A1)と記載する。)と、2モル当量の一般式(B1)で表される化合物(以下、化合物(B1)と記載する。)とを反応させて、1モル当量の一般式(C1)で表される化合物(以下、化合物(C1)と記載する。)を得る。化合物(C1)は、化合物(1)を合成するための原料である。反応(R1)では、1モルの化合物(A1)に対して、2モル以上5モル以下の化合物(B1)を添加することが好ましい。反応(R1)の反応温度は、50℃以上150℃以下であることが好ましい。反応(R1)の反応時間は、2時間以上10時間以下であることが好ましい。
【0043】
反応(R1)では、触媒としてパラジウム化合物を用いてもよい。パラジウム化合物としては、例えば、四価パラジウム化合物、二価パラジウム化合物及びその他のパラジウム化合物が挙げられる。四価パラジウム化合物としては、例えば、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物及びヘキサクロロパラジウム(IV)酸カリウム四水和物が挙げられる。二価パラジウム化合物としては、例えば、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロテトラミンパラジウム(II)及びジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)が挙げられる。その他のパラジウム化合物としては、例えば、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が挙げられる。パラジウム化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。パラジウム化合物の添加量は、1モルの化合物(A1)に対して、0.0005モル以上20モル以下であることが好ましく、0.001モル以上1モル以下であることがより好ましい。
【0044】
パラジウム化合物は、配位子を含む構造であってもよい。これにより、反応(R1)の反応性を向上させることができる。配位子としては、例えば、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフリルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリ(t−ブチル)ホスフィン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル及び2,2’−ビス[(ジフェニルホスフィノ)ジフェニル]エーテルが挙げられる。配位子は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。配位子の添加量は、1モルの化合物(A1)に対して、0.0005モル以上20モル以下であることが好ましく、0.001モル以上1モル以下であることがより好ましい。
【0045】
反応(R1)においてパラジウム化合物を用いる場合、反応(R1)は、塩基の存在下で行われてもよい。これにより、触媒活性を向上できると考えられる。塩基は、有機塩基であってもよいし、無機塩基であってもよい。有機塩基としては、例えば、アルカリ金属アルコキシドが挙げられ、具体的には、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、リチウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド及びカリウムt−ブトキシドが挙げられる。無機塩基としては、例えば、リン酸三カリウム及びフッ化セシウムが挙げられる。1モルの化合物(A1)に対して、パラジウム化合物を0.0005モル以上20モル以下添加する場合、塩基の添加量は、1モル以上50モル以下であることが好ましく、1モル以上30モル以下であることがより好ましい。
【0046】
反応(R1)は、溶媒中で行われてもよい。溶媒としては、例えば、キシレン(より具体的には、o−キシレン等)、トルエン、テトラヒドロフラン及びジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0047】
反応(R1)で得られた反応生成物を、必要に応じて精製することにより、化合物(C1)を単離することができる。精製方法としては、公知の方法が適宜採用され、例えば晶析及びシリカゲルクロマトグラフィーが挙げられる。精製に使用する溶媒としては、例えば、クロロホルム、ヘキサン、及びクロロホルムとヘキサンとの混合溶媒が挙げられる。
【0048】
反応(R2)では、1モル当量の化合物(C1)と、2モル当量の一般式(D1)で表される化合物(以下、化合物(D1)と記載する。)とを反応させて、1モル当量の化合物(1)を得る。反応(R2)では、1モルの化合物(C1)に対して、2モル以上5モル以下の化合物(D1)を添加することが好ましい。反応(R2)の反応温度は、50℃以上150℃以下であることが好ましい。反応(R2)の反応時間は、2時間以上5時間以下であることが好ましい。
【0049】
反応(R2)は、触媒の存在下で行われてもよい。触媒としては、例えば、酸触媒が挙げられ、より具体的には、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸及びピリジニウム−p−トルエンスルホン酸が挙げられる。これらの触媒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。触媒の添加量は、1モルの化合物(C1)に対して、0.01モル以上0.5モル以下であることが好ましい。
【0050】
反応(R2)は、溶媒中で行われてもよい。溶媒としては、例えば、エーテル類(より具体的には、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等)、及び芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン等)が挙げられる。
【0051】
反応(R2)で得られた反応生成物を、必要に応じて精製することにより、目的化合物である化合物(1)を単離することができる。精製方法としては、公知の方法が適宜採用され、例えば晶析及びシリカゲルクロマトグラフィーが挙げられる。精製に使用する溶媒としては、例えば、クロロホルム、ヘキサン、及びクロロホルムとヘキサンとの混合溶媒が挙げられる。
【0052】
<第二実施形態:感光体>
第二実施形態は、感光体に関する。第二実施形態の感光体は、積層型感光体であってもよく、単層型感光体であってもよい。第二実施形態の感光体は、導電性基体と、電荷発生剤及び化合物(1)を含有する感光層とを備える。上述したように、化合物(1)は、感光体の感度特性及び耐オイルクラック性を向上させることができる。よって、第二実施形態の感光体は、感度特性及び耐オイルクラック性を向上させることができる。
【0053】
[1.積層型感光体]
以下、図面を参照して、第二実施形態に係る感光体の一例である感光体1が積層型感光体である場合について説明する。
図1、
図2及び
図3は、積層型感光体である感光体1の一例を示す部分断面図である。
【0054】
図1に示すように、感光体1は、導電性基体2と感光層3とを備える。感光層3は、電荷発生層3aと電荷輸送層3bとを含む。
【0055】
図2に示すように、感光体1は、導電性基体2上に電荷輸送層3bが設けられ、電荷輸送層3b上に電荷発生層3aが設けられてもよい。ただし、一般に電荷輸送層3bの膜厚は、電荷発生層3aの膜厚に比べ厚いため、電荷輸送層3bは、電荷発生層3aに比べ破損し難い。よって、感光体1の耐摩耗性を向上させるためには、
図1に示すように、導電性基体2上に電荷発生層3aが設けられ、電荷発生層3a上に電荷輸送層3bが設けられることが好ましい。
【0056】
図3に示すように、感光体1は、導電性基体2と感光層3と中間層4(例えば下引き層)とを備えていてもよい。中間層4は、導電性基体2と感光層3との間に備えられる。また、感光層3上には、保護層5(
図6参照)が設けられていてもよい。
【0057】
電荷発生層3a及び電荷輸送層3bの厚さは、それぞれの層としての機能を十分に発現できる限り、特に限定されない。電荷発生層3aの厚さは、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがより好ましい。電荷輸送層3bの厚さは、2μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0058】
電荷発生層3aは、電荷発生剤を含有する。電荷発生層3aは、電荷発生層用バインダー樹脂(以下、ベース樹脂と記載することがある。)を含有してもよい。電荷発生層3aは、必要に応じて、各種添加剤を含有してもよい。
【0059】
電荷輸送層3bは、化合物(1)を含有する。電荷輸送層3bは、バインダー樹脂を含有してもよい。電荷輸送層3bは、必要に応じて、電子アクセプター化合物及び各種添加剤を含有してもよい。以上、
図1〜3を参照して、積層型感光体としての感光体1の構造について説明した。
【0060】
[2.単層型感光体]
以下、
図4〜6を参照して、第二実施形態に係る感光体の一例である感光体1が単層型感光体である場合について説明する。
図4〜6は、単層型感光体である感光体1の一例を示す部分断面図である。
【0061】
図4に示すように、感光体1は、例えば、導電性基体2と感光層3とを備える。感光体1は、感光層3として、感光層3cを含む。感光層3cは、一層の感光層である。
【0062】
図5に示すように、感光体1は、導電性基体2と、感光層3cと、中間層4(例えば下引き層)とを備えてもよい。中間層4は、導電性基体2と感光層3cとの間に設けられる。また、
図6に示すように、感光層3c上に保護層5が設けられてもよい。
【0063】
感光層3cの厚さは、感光層としての機能を十分に発現できる限り、特に限定されない。感光層3cの厚さは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0064】
感光層3cは、電荷発生剤と化合物(1)とを一層に含有する。感光層3cは、電子輸送剤及びバインダー樹脂のうちの一以上を更に含有してもよい。感光層3cは、必要に応じて、各種添加剤を含有してもよい。単層型感光体である感光体1は、電荷発生剤と、化合物(1)と、必要に応じて添加される成分(例えば、電子輸送剤、バインダー樹脂及び添加剤)とが一層の感光層3(感光層3c)に含有される。以上、
図4〜6を参照して、単層型感光体としての感光体1の構造について説明した。
【0065】
[3.感光体の要素]
次に、第二実施形態に係る感光体の要素について説明する。
【0066】
〔導電性基体〕
導電性基体は、感光体の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体は、少なくとも表面部が導電性を有する材料で形成されていればよい。導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で形成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼及び真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて(例えば、合金として)用いてもよい。これらの導電性を有する材料のなかでも、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。
【0067】
導電性基体の形状は、感光体が取り付けられる画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状及びドラム状が挙げられる。なお、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
【0068】
〔感光層〕
感光層は、電荷発生剤及び化合物(1)を含有する。以下、感光層に含まれる成分について説明する。
【0069】
(化合物(1))
感光層は、化合物(1)の一種のみを含有してもよいし、化合物(1)の二種以上を含有してもよい。感光体が積層型感光体である場合、電荷輸送層は、例えば正孔輸送剤として化合物(1)を含有する。感光体が単層型感光体である場合、感光層は、例えば正孔輸送剤として化合物(1)を含有する。感光層に化合物(1)が含有されることにより、上述のように感度特性及び耐オイルクラック性を向上させることができる。以下、本実施形態の感光体が、正孔輸送剤として化合物(1)を含有する場合を例に説明する。
【0070】
感光体が積層型感光体である場合、正孔輸送剤としての化合物(1)の含有量は、例えば電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
【0071】
感光体が単層型感光体である場合、正孔輸送剤としての化合物(1)の含有量は、例えば感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、10質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
【0072】
感光体が積層型感光体である場合、電荷輸送層は、化合物(1)に加えて、更に別の正孔輸送剤を含有してもよい。また、感光体が単層型感光体である場合、感光層は、化合物(1)に加えて、更に別の正孔輸送剤を含有してもよい。別の正孔輸送剤としては、例えば、含窒素環式化合物及び縮合多環式化合物のうち、化合物(1)とは異なる構造の化合物を使用することができる。含窒素環式化合物及び縮合多環式化合物としては、例えば、ジアミン化合物(より具体的には、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体等)、オキサジアゾール系化合物(より具体的には、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等)、スチリル化合物(より具体的には、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等)、カルバゾール化合物(より具体的には、ポリビニルカルバゾール等)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(より具体的には、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物及びトリアゾール系化合物が挙げられる。正孔輸送剤の合計質量に対する化合物(1)の含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0073】
(電荷発生剤)
感光体が積層型感光体である場合、電荷発生層は、電荷発生剤を含有する。感光体が単層型感光体である場合、感光層は、電荷発生剤を含有する。
【0074】
電荷発生剤は、感光体用の電荷発生剤である限り、特に限定されない。電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム及びアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料及びキナクリドン系顔料が挙げられる。電荷発生剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
フタロシアニン系顔料としては、例えば、下記化学式(C−1)で表される無金属フタロシアニン、及び金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、下記化学式(C−2)で表されるチタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン及びクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。フタロシアニン系顔料の結晶形状(例えば、α型、β型、X型、Y型、V型及びII型)については特に限定されず、種々の結晶形状を有するフタロシアニン系顔料が使用される。
【0078】
無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある。)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型及びY型結晶(以下、それぞれα型、β型及びY型チタニルフタロシアニンと記載することがある。)が挙げられる。ヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶としては、ヒドロキシガリウムフタロシアニンのV型結晶が挙げられる。
【0079】
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター及びファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。この場合の電荷発生剤としては、700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン及びチタニルフタロシアニンがより好ましく、X型無金属フタロシアニン及びY型チタニルフタロシアニンが更に好ましい。感光層に正孔輸送剤として化合物(1)が含有される場合に感度特性を特に向上させるためには、電荷発生剤としてはY型チタニルフタロシアニンがより好ましい。
【0080】
Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、例えば、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。
【0081】
CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法の一例について説明する。試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。
【0082】
短波長レーザー光源(例えば、350nm以上550nm以下の波長を有するレーザー光源)を用いた画像形成装置に適用される感光体には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料が好適に用いられる。
【0083】
感光体が積層型感光体である場合、電荷発生剤の含有量は、例えば電荷発生層に含有されるベース樹脂100質量部に対して、5質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、30質量部以上500質量部以下であることがより好ましい。
【0084】
感光体が単層型感光体である場合、電荷発生剤の含有量は、例えば感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上10質量部以下であることが特に好ましい。
【0085】
(電子輸送剤及び電子アクセプター化合物)
感光体が積層型感光体である場合、電荷輸送層は、必要に応じて、電子アクセプター化合物を含有してもよい。これにより、化合物(1)の正孔輸送能が向上する傾向がある。一方、感光体が単層型感光体である場合、感光層は、必要に応じて、電子輸送剤を含有してもよい。これにより、感光層は電子を輸送することができ、感光層にバイポーラー(両極性)の特性を付与し易くなる。
【0086】
電子輸送剤及び電子アクセプター化合物の例としては、キノン系化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸及びジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物及びジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。電子輸送剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。電子アクセプター化合物も、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
電子輸送剤及び電子アクセプター化合物としては、例えば、下記一般式(E1)で表される化合物が挙げられる。
【0089】
一般式(E1)中、R
22及びR
23は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。
【0090】
一般式(E1)中、R
22及びR
23で表される炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上6以下の分枝鎖状のアルキル基が好ましく、2−メチル−2−ブチル基がより好ましい。
【0091】
一般式(E1)で表される化合物としては、例えば、下記化学式(E−1)で表される化合物(以下、化合物(E−1)と記載することがある。)が挙げられる。
【0093】
感光体が積層型感光体である場合、電子アクセプター化合物の含有量は、例えば電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
【0094】
感光体が単層型感光体である場合、電子輸送剤の含有量は、例えば感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下であることが好ましく、10質量部以上80質量部以下であることがより好ましく、30質量部以上60質量部以下であることが特に好ましい。
【0095】
(バインダー樹脂)
感光体が積層型感光体である場合、電荷輸送層は、バインダー樹脂を含有してもよい。感光体が単層型感光体である場合、感光層は、バインダー樹脂を含有してもよい。
【0096】
バインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル酸重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂及びメラミン樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ−アクリル酸系樹脂(エポキシ化合物のアクリル酸付加物)及びウレタン−アクリル酸系共重合体(ウレタン化合物のアクリル酸付加物)が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0097】
これらの樹脂の中では、加工性、機械的特性、光学的特性及び耐摩耗性のバランスに優れた感光層及び電荷輸送層が得られることから、ポリカーボネート樹脂が好ましい。ポリカーボネート樹脂の例としては、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールZC型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂及びビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂が挙げられる。ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂は、下記化学式で表される繰返し単位を有する。
【0099】
バインダー樹脂の粘度平均分子量は、40,000以上であることが好ましく、40,000以上52,500以下であることがより好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が40,000以上であると、感光体の耐摩耗性を向上させ易い。バインダー樹脂の粘度平均分子量が52,500以下であると、感光層の形成時にバインダー樹脂が溶剤に溶解し易くなり、電荷輸送層用塗布液又は感光層用塗布液の粘度が高くなり過ぎない。その結果、電荷輸送層又は感光層を形成し易くなる。
【0100】
(ベース樹脂)
感光体が積層型感光体である場合、電荷発生層は、ベース樹脂を含有してもよい。ベース樹脂は、感光体に適用できるベース樹脂である限り、特に制限されない。ベース樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂及びポリエステル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂及びその他の架橋性の熱硬化性樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ−アクリル酸系樹脂(エポキシ化合物のアクリル酸付加物)及びウレタン−アクリル酸系共重合体(ウレタン化合物のアクリル酸付加物)が挙げられる。ベース樹脂は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0101】
電荷発生層に含有されるベース樹脂は、電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂とは異なることが好ましい。積層型感光体の製造では、例えば、導電性基体上に電荷発生層が形成され、電荷発生層上に電荷輸送層が形成される。その際に、電荷発生層上に、電荷輸送層用塗布液が塗布される。そのため、電荷発生層は、電荷輸送層用塗布液の溶剤に溶解しないことが好ましいからである。
【0102】
(添加剤)
感光体の感光層(電荷発生層、電荷輸送層、及び単層型感光体の感光層)は、必要に応じて、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項消光剤及び紫外線吸収剤)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤及びレベリング剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール(例えば、ジ−t−ブチル−p−クレゾール)、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びこれらの誘導体、有機硫黄化合物並びに有機燐化合物が挙げられる。
【0103】
(材料の組合せ)
感度特性及び耐オイルクラック性をより向上させるためには、感光層が、電荷発生剤としてY型チタニルフタロシアニンを含有し、かつ化合物(H−1)、(H−2)、(H−3)、(H−4)、(H−5)及び(H−6)のうちの一種以上を含有することが好ましい。同様の理由から、感光層が、電荷発生剤としてY型チタニルフタロシアニンを含有し、かつ化合物(H−1)を含有することがより好ましい。
【0104】
〔中間層〕
本実施形態の感光体は、中間層(下引き層等)を含有してもよい。中間層は、例えば、無機粒子及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇が抑えられると考えられる。
【0105】
無機粒子としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム、鉄及び銅)の粒子、金属酸化物(例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ及び酸化亜鉛)の粒子、及び非金属酸化物(例えば、シリカ)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0106】
中間層用樹脂としては、中間層を形成する樹脂として用いることができる限り、特に限定されない。中間層は、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤は、例えば感光層の添加剤と同様である。
【0107】
[4.感光体の製造方法]
感光体が積層型感光体である場合、積層型感光体は、例えば、以下のように製造される。まず、電荷発生層用塗布液及び電荷輸送層用塗布液を調製する。電荷発生層用塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥することによって、電荷発生層を形成する。続いて、電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布し、乾燥することによって、電荷輸送層を形成する。これにより、積層型感光体が製造される。
【0108】
電荷発生層用塗布液は、電荷発生剤及び必要に応じて添加される成分(例えば、ベース樹脂及び各種添加剤)を、溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。電荷輸送層用塗布液は、化合物(1)及び必要に応じて添加される成分(例えば、バインダー樹脂、電子アクセプター化合物及び各種添加剤)を、溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。
【0109】
また、感光体が単層型感光体である場合、単層型感光体は、感光層用塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥することによって製造される。感光層用塗布液は、電荷発生剤、化合物(1)及び必要に応じて添加される成分(例えば、電子輸送剤、バインダー樹脂及び各種添加剤)を、溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。
【0110】
電荷発生層用塗布液、電荷輸送層用塗布液及び感光層用塗布液(以下、これらをまとめて塗布液と記載することがある。)に含有される溶剤は、塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノール)、脂肪族炭化水素(例えば、n−ヘキサン、オクタン及びシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン及びキシレン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素及びクロロベンゼン)、エーテル類(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテル)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン)、エステル類(例えば、酢酸エチル及び酢酸メチル)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いられる。感光体の製造時の作業性を向上させるためには、溶剤として非ハロゲン溶剤(ハロゲン化炭化水素以外の溶剤)を用いることが好ましい。
【0111】
塗布液は、各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー又は超音波分散機を用いることができる。
【0112】
塗布液は、各成分の分散性を向上させるために、例えば、界面活性剤を含有してもよい。
【0113】
塗布液を塗布する方法としては、塗布液を導電性基体等の上に均一に塗布できる方法である限り、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法及びバーコート法が挙げられる。
【0114】
塗布液を乾燥する方法としては、塗布液中の溶剤の少なくとも一部を蒸発させ得る限り、特に限定されない。例えば、高温乾燥機又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理条件は、例えば、40℃以上150℃以下の温度、かつ3分間以上120分間以下の時間である。
【0115】
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて、中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程の一方又は両方を更に含んでもよい。中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程では、公知の方法が適宜選択される。
【実施例】
【0116】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。
【0117】
<実施例及び比較例で用いた材料>
電荷発生層、電荷輸送層、及び単層型感光体の感光層を製造するための材料として、以下の正孔輸送剤及び電子輸送剤を準備した。
【0118】
[正孔輸送剤]
正孔輸送剤として、第一実施形態で述べた化合物(H−1)〜(H−6)を準備した。更に、化合物(HT−1)及び(HT−2)も準備した。化合物(HT−1)及び(HT−2)は、それぞれ以下に示す化学式(HT−1)及び(HT−2)で表される正孔輸送剤である。
【0119】
【化10】
【0120】
(化合物(H−1)〜(H−6)の合成)
化合物(H−1)〜(H−6)は、各々以下の方法で合成した。なお、以下において、反応式(R11)〜(R16)で表される反応を、それぞれ反応(R11)〜(R16)と記載することがある。化学式(A1−1)、(A1−2)、(B1−1)〜(B1−4)、(C1−1)〜(C1−5)、(D1−1)及び(D1−2)で表される化合物を、それぞれ化合物(A1−1)、(A1−2)、(B1−1)〜(B1−4)、(C1−1)〜(C1−5)、(D1−1)及び(D1−2)と記載することがある。また、以下において、収率(%)はモル数基準である。
【0121】
まず、化合物(H−1)〜(H−6)を合成するための原料として、下記反応(R11)〜(R15)に従って、それぞれ化合物(C1−1)〜(C1−5)を合成した。
【0122】
【化11】
【0123】
【化12】
【0124】
反応(R11)では、化合物(A1−1)と化合物(B1−1)とを反応させて化合物(C1−1)を得た。詳しくは、三口フラスコに、化合物(A1−1)5.55g(0.025モル)、トリシクロヘキシルホスフィン0.066g(0.0002モル)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)0.086g(0.0001モル)、ナトリウムt−ブトキシド7.68g(0.08モル)、化合物(B1−1)12.04g(0.05モル)及び蒸留したо−キシレン(200mL)を投入した。フラスコ内の空気をアルゴンガスで置換した。続いて、フラスコ内容物を120℃で5時間攪拌した後、室温(25℃)まで冷却した。フラスコ内容物をイオン交換水で3回洗浄し、有機層を得た。有機層に無水硫酸ナトリウムと活性白土とを加え、乾燥処理及び吸着処理を行った。乾燥処理及び吸着処理後の有機層を減圧留去し、о−キシレンを除去した。これにより、残渣を得た。得られた残渣を、クロロホルム/ヘキサン(体積比率1/1)の混合溶媒を用いてシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、化合物(C1−1)を得た。化合物(C1−1)の収量は9.30gであり、収率は60%であった。
【0125】
反応(R12)では、反応(R11)において、化合物(B1−1)12.04gの代わりに化合物(B1−2)10.74gを用いたこと以外は、反応(R11)と同様の反応を行い、化合物(C1−2)を得た。化合物(C1−2)の収量は9.23gであり、収率は65%であった。
【0126】
反応(R13)では、反応(R11)において、化合物(B1−1)12.04gの代わりに化合物(B1−3)13.34gを用いたこと以外は、反応(R11)と同様の反応を行い、化合物(C1−3)を得た。化合物(C1−3)の収量は9.24gであり、収率は55%であった。
【0127】
反応(R14)では、反応(R11)において、化合物(B1−1)12.04gの代わりに化合物(B1−4)12.74gを用いたこと以外は、反応(R11)と同様の反応を行い、化合物(C1−4)を得た。化合物(C1−4)の収量は9.92gであり、収率は60%であった。
【0128】
反応(R15)では、反応(R11)において、化合物(A1−1)5.55gの代わりに化合物(A1−2)6.10gを用いたこと以外は、反応(R11)と同様の反応を行い、化合物(C1−5)を得た。化合物(C1−5)の収量は8.15gであり、収率は50%であった。
【0129】
次に、下記反応(R16)に従って、化合物(H−1)を合成した。
【0130】
【化13】
【0131】
反応(R16)では、化合物(C1−1)と化合物(D1−1)とを反応させて化合物(H−1)を得た。詳しくは、ディーン・スターク管に、化合物(C1−1)6.20g(0.01モル)、化合物(D1−1)3.35g(0.025モル)、トルエン(200mL)及びp−トルエンスルホン酸0.095g(0.0005モル)を加えた。混合物を110℃で3時間還流しながら攪拌した後、室温(25℃)まで冷却した。得られた反応液に活性白土を加え、吸着処理を行った。吸着処理後の反応液を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣を、クロロホルム/ヘキサン(体積比率1/1)の混合溶媒を用いてシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、化合物(H−1)を得た。化合物(H−1)の収量は5.11gであり、収率は60%であった。
【0132】
次に、反応(R16)における化合物(C1−1)及び添加量をそれぞれ表1に示すアミン誘導体及び添加量に変更し、化合物(D1−1)及び添加量をそれぞれ表1に示すアルデヒド誘導体及び添加量に変更したこと以外は、上記と同様に化合物(H−2)〜(H−6)を合成した。表1に、得られた化合物(H−2)〜(H−6)の収量及び収率を示す。なお、表1中、欄「アミン誘導体」の「種類」のC1−1〜C1−5は、それぞれ化合物(C1−1)〜(C1−5)を示す。欄「アルデヒド誘導体」の「種類」のD1−1及びD1−2は、それぞれ化合物(D1−1)及び(D1−2)を示す。欄「目的化合物」の「種類」のH−2〜H−6は、それぞれ化合物(H−2)〜(H−6)を示す。アルデヒド誘導体である化合物(D1−2)は、以下に示す化学式(D1−2)で表される化合物である。
【0133】
【表1】
【0134】
【化14】
【0135】
次に、プロトン核磁気共鳴分光計(日本分光株式会社製、300MHz)を用いて、合成した化合物(H−1)〜(H−6)の
1H−NMRスペクトルを測定した。溶媒としてCDCl
3を用いた。内部標準試料としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。これらのうち、化合物(H−1)及び(H−2)を代表例として挙げる。
【0136】
図7及び
図8に、化合物(H−1)及び(H−2)の
1H−NMRスペクトルをそれぞれ示す。
図7及び
図8中、縦軸は信号強度を示し、横軸は化学シフト値(ppm)を示す。以下に化合物(H−1)及び(H−2)の化学シフト値を示す。
【0137】
化合物(H−1):δ=7.18−7.46(m,24H)、6.79−7.12(m,14H)、6.51−6.63(m,6H)、2.32(s,6H)、1.71(s,6H).
【0138】
化合物(H−2):δ=7.13−7.43(m,24H)、6.86−7.02(m,22H)、6.69−6.83(m,4H)、6.51−6.63(m,4H)、2.23(s,6H).
【0139】
1H−NMRスペクトル及び化学シフト値により、化合物(H−1)及び(H−2)が得られていることを確認した。化合物(H−3)〜(H−6)も同様にして、
1H−NMRスペクトル及び化学シフト値により、それぞれ化合物(H−3)〜(H−6)が得られていることを確認した。
【0140】
[電子輸送剤]
第二実施形態で説明した化合物(E−1)を準備した。
【0141】
<積層型感光体の製造>
以下に示す方法により積層型感光体(A−1)〜(A−6)、(B−1)及び(B−2)を製造した。
【0142】
[積層型感光体(A−1)の製造]
(下引き層の形成)
表面処理された酸化チタン(テイカ株式会社製「試作品SMT−02」、数平均一次粒径10nm)を準備した。詳しくは、アルミナとシリカとを用いて酸化チタンを表面処理し、更に、表面処理された酸化チタンを湿式分散しながらメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いて表面処理した酸化チタンを準備した。このメチルハイドロジェンポリシロキサンで表面処理した酸化チタン(2.8質量部)と、共重合ポリアミド樹脂(ダイセル・エボニック株式会社製「ダイアミドX4685」)(1質量部)とを混合溶剤に添加した。混合溶剤としては、エタノール(10質量部)と、ブタノール(2質量部)とを混合したものを用いた。ビーズミルを用いて、これら材料(酸化チタン及び共重合ポリアミド樹脂)と混合溶剤とを5時間混合し、混合溶剤中に材料を分散させた。この分散液を目開き5μmのフィルターを用いてろ過し、下引き層用塗布液を調製した。得られた下引き層用塗布液を、導電性基体としてのアルミニウム製のドラム状支持体(直径30mm、全長238.5mm)の表面にディップコート法を用いて塗布し、塗布膜を形成した。続いて、塗布膜を130℃で30分間乾燥させて、導電性基体上に下引き層(膜厚1.5μm)を形成した。
【0143】
(電荷発生層の形成)
次に、電荷発生剤としてのY型チタニルフタロシアニン(1質量部)と、ベース樹脂としてのポリビニルブチラール樹脂(デンカ株式会社製「デンカブチラール#6000EP」)(1質量部)とを、混合溶剤に添加した。混合溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(40質量部)と、テトラヒドロフラン(40質量部)とを混合したものを用いた。ビーズミルを用いてこれら材料(Y型チタニルフタロシアニン及びポリビニルブチラール樹脂)と混合溶剤とを2時間混合し、混合溶剤中に材料を分散させた。この分散液を目開き3μmのフィルターを用いてろ過し、電荷発生層用塗布液を調製した。得られた電荷発生層用塗布液を、上述のようにして形成された下引き層上にディップコート法を用いて塗布し、塗布膜を形成した。塗布膜を50℃で5分間乾燥させた。これにより、下引き層上に電荷発生層(膜厚0.3μm)を形成した。
【0144】
(電荷輸送層の形成)
次に、正孔輸送剤としての化合物(H−1)(70質量部)と、添加剤としてのジ−t−ブチル−p−クレゾール(5質量部)と、バインダー樹脂としてのビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製「TS2050」、粘度平均分子量50,000)(100質量部)とを、混合溶剤に添加した。混合溶剤としては、テトラヒドロフラン(430質量部)と、トルエン(430質量部)とを混合したものを用いた。これら材料(化合物(H−1)、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、及びビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂)と混合溶剤とを混合し、混合溶剤中に材料を分散させて、電荷輸送層用塗布液を調製した。次いで、電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層用塗布液と同様にして電荷発生層上に塗布し、塗布膜を形成した。塗布膜を130℃で30分間乾燥させた。これにより、電荷発生層上に電荷輸送層(膜厚20μm)を形成し、積層型感光体(A−1)を得た。
【0145】
[積層型感光体(A−2)〜(A−6)、(B−1)及び(B−2)の製造]
積層型感光体(A−1)の製造に用いた正孔輸送剤としての化合物(H−1)を表2に示す種類の正孔輸送剤に変更したこと以外は、積層型感光体(A−1)の製造と同様の方法で、積層型感光体(A−2)〜(A−6)、(B−1)及び(B−2)を製造した。なお、表2中、欄「正孔輸送剤」のH−1〜H−6、HT−1及びHT−2は、それぞれ化合物(H−1)〜(H−6)、(HT−1)及び(HT−2)を示す。
【0146】
<単層型感光体の製造>
以下に示す方法により単層型感光体(A−7)〜(A−12)、(B−3)及び(B−4)を製造した。
【0147】
[単層型感光体(A−7)の製造]
電荷発生剤としてのX型無金属フタロシアニン(5質量部)と、正孔輸送剤としての化合物(H−1)(80質量部)と、電子輸送剤としての化合物(E−1)(50質量部)と、バインダー樹脂としてのビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製「TS2050」、粘度平均分子量50,000)(100質量部)とを、テトラヒドロフラン(800質量部)に添加した。ボールミルを用いて、これら材料(X型無金属フタロシアニン、化合物(H−1)、化合物(E−1)及びビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂)とテトラヒドロフランとを50時間混合し、テトラヒドロフラン中に材料を分散させて、感光層用塗布液を調製した。次いで、導電性基体としてのアルミニウム製のドラム状支持体(直径30mm、全長238.5mm)上にディップコート法を用いて感光層用塗布液を塗布し、塗布膜を形成した。塗布膜を100℃で30分間乾燥させた。これにより、導電性基体上に感光層(膜厚25μm)を形成し、単層型感光体(A−7)を得た。
【0148】
[単層型感光体(A−8)〜(A−12)、(B−3)及び(B−4)の製造]
以下の点を変更した以外は、単層型感光体(A−7)の製造と同様の方法で、単層型感光体(A−8)〜(A−12)、(B−3)及び(B−4)を製造した。
【0149】
(変更点)
単層型感光体(A−7)の製造に用いた電荷発生剤としてのX型無金属フタロシアニンを、表3に示す電荷発生剤に変更した。単層型感光体(A−7)の製造に用いた正孔輸送剤としての化合物(H−1)を、表3に示す正孔輸送剤に変更した。なお、表3中、欄「正孔輸送剤」のH−1、H−2、H−3、及びHT−1は、それぞれ化合物(H−1)、(H−2)、(H−3)、及び(HT−1)を示す。
【0150】
<積層型感光体の評価>
[感度特性の評価]
積層型感光体(A−1)〜(A−6)、(B−1)及び(B−2)の各々に対して、感度特性を評価した。感度特性の評価は、温度23℃及び湿度50%RHの環境下で行った。まず、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、感光体の表面を−700Vに帯電させた。次いで、バンドパスフィルターを用いて、ハロゲンランプの白色光から単色光(波長780nm、半値幅20nm、光強度0.4μJ/m
2)を取り出した。取り出された単色光を、感光体の表面に照射した。照射開始から0.5秒経過した時の感光体の表面電位を測定した。測定された表面電位を、露光後電位V
L(単位V)とした。測定された感光体の露光後電位V
Lを表2に示す。なお、露光後電位V
Lの絶対値が小さいほど、感光体の感度特性が優れていることを示す。
【0151】
[耐オイルクラック性の評価]
積層型感光体(A−1)〜(A−6)、(B−1)及び(B−2)の各々に対して、耐オイルクラック性を評価した。耐オイルクラック性の評価は、感光体の表面(10個の測定箇所)に、油脂(オレイン酸トリグリセリド)を付着させて、温度23℃及び湿度50%RHの環境下で2日間放置した。その後、感光体の表面を光学顕微鏡(倍率200倍)で観察し、各測定箇所についてクラックの有無を確認した。確認結果から、下記基準に従って、感光体の耐オイルクラック性を判定した。耐オイルクラック性の結果を表2に示す。判定がA、B又はCである感光体を、耐オイルクラック性が良好であると評価した。また、判定がDである感光体を、耐オイルクラック性が不良であると評価した。
【0152】
(耐オイルクラック性の判定基準)
A:クラック発生箇所が0箇所である。
B:クラック発生箇所が1箇所である。
C:クラック発生箇所が2箇所である。
D:クラック発生箇所が3箇所以上である。
【0153】
【表2】
【0154】
<単層型感光体の評価>
[感度特性の評価]
単層型感光体(A−7)〜(A−12)、(B−3)及び(B−4)の各々に対して、感度特性を評価した。感度特性の評価は、温度23℃及び湿度50%RHの環境下で行った。まず、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、感光体の表面を+700Vに帯電させた。次いで、バンドパスフィルターを用いて、ハロゲンランプの白色光から単色光(波長780nm、半値幅20nm、光強度1.5μJ/m
2)を取り出した。取り出された単色光を、感光体の表面に照射した。照射開始から0.5秒経過した時の感光体の表面電位を測定した。測定された表面電位を、露光後電位V
L(単位V)とした。測定された感光体の露光後電位V
Lを表3に示す。なお、露光後電位V
Lの絶対値が小さいほど、感光体の感度特性が優れていることを示す。
【0155】
【表3】
【0156】
表2に示すように、積層型感光体(A−1)〜(A−6)は、電荷輸送層が一般式(1)に包含される化合物(H−1)〜(H−6)の何れかを含有していた。積層型感光体(A−1)〜(A−6)は、露光後電位V
Lが−108V以上−100V以下であった。積層型感光体(A−1)〜(A−6)は、耐オイルクラック性の評価がA(良好)、B(良好)又はC(良好)であった。
【0157】
表2に示すように、積層型感光体(B−1)及び(B−2)は、電荷輸送層が一般式(1)に包含されない化合物(HT−1)及び(HT−2)の何れかを含有していた。積層型感光体(B−1)は、露光後電位V
Lが−120Vであった。積層型感光体(B−2)は、耐オイルクラック性の評価がD(不良)であった。
【0158】
表2から明らかなように、積層型感光体(A−1)〜(A−6)は、積層型感光体(B−1)に比べ、感度特性に優れていた。また、積層型感光体(A−1)〜(A−6)は、積層型感光体(B−2)に比べ、耐オイルクラック性に優れていた。
【0159】
表3に示すように、単層型感光体(A−7)〜(A−12)は、感光層が一般式(1)に包含される化合物(H−1)、(H−2)及び(H−3)の何れかを含有していた。単層型感光体(A−7)〜(A−12)は、露光後電位V
Lが+109V以上+120V以下であった。
【0160】
表3に示すように、単層型感光体(B−3)及び(B−4)は、感光層が一般式(1)に包含されない化合物(HT−1)を含有していた。単層型感光体(B−3)及び(B−4)は、露光後電位V
Lが+132V以上であった。
【0161】
表3から明らかなように、単層型感光体(A−7)〜(A−12)は、単層型感光体(B−3)及び(B−4)に比べ、感度特性に優れていた。