(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような圧縮比を変更する圧縮調整装置を有するエンジンシステムは、ピストンロッドの移動方向における位置を変更することにより、ピストンの下死点及び上死点位置を変更し、圧縮比を調整している。このような圧縮比の調整は、操縦者の操作等に基づいてエンジンシステムの制御装置が行っている。しかしながら、制御装置は、ピストンロッドの位置を把握しておらず、正確に圧縮比を調整することが難しい。
【0005】
本開示は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、エンジンのピストンロッドの位置を制御する制御装置において、正確に圧縮比を調整することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の可変圧縮装置は、エンジンの燃焼室における圧縮比を変更する可変圧縮装置であって、ピストンロッドと、昇圧された作動流体が供給されることで上記ピストンロッドが圧縮比を高める方向に移動せる流体室と、上記作動流体を昇圧して上記流体室に供給する昇圧機構と、上記ピストンロッドに対して少なくとも一部が配置され、上記ピストンロッドの位置の変位を検出し、上記ピストンロッドの位置情報を含む信号を出力する検出部と、上記位置情報に基づいて上記昇圧機構を制御する制御部と、を備える。
【0007】
上記一態様の可変圧縮装置において、上記検出部は、ロッドと、上記ロッドと上記ピストンロッドの下端部に設けられる太径部との間に設けられる付勢部と、上記ロッドの移動を非接触で検出するセンサ部とを有し、上記ロッドは、上記付勢部により上記太径部に押し付けられていてもよい。
【0008】
上記一態様の可変圧縮装置において、上記ロッドは、上記ピストンロッドの移動方向に沿って配置されていてもよい。
【0009】
上記一態様の可変圧縮装置において、上記検出部は、上記ロッドに設けられる磁性部材を有し、上記センサ部は、磁界の変化を検出する磁気センサであってもよい。
【0010】
上記一態様の可変圧縮装置において、上記検出部から取得した上記位置情報を上記制御部に送信するよう構成される情報送信部を備えていてもよい。
【0011】
本開示の一態様のエンジンシステムは、上記一態様の可変圧縮装置を備える。
【0012】
本開示の一態様のピストンロッド位置調整方法は、作動流体を流体室に供給することでエンジンの燃焼室における圧縮比を高める方向にピストンロッドを移動させるピストンロッド位置調整方法であって、上記ピストンロッドの位置情報を取得する位置取得工程と、上記位置情報に基づいて上記作動圧力の供給圧力を調整する圧力調整工程と、を有する。
【0013】
上記一態様のピストンロッド位置調整方法において、上記位置取得工程は、上記燃焼室の上死点における筒内圧と上記燃焼室の下死点における筒内圧とに基づいて上記ピストンロッドの位置を算出してもよい。
【0014】
上記一態様のピストンロッド位置調整方法において、上記位置取得工程は、上記ピストンロッドに設けられた検出部より取得した上記位置情報を含む信号に基づいて、上記ピストンロッドの位置情報を取得してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、検出部がピストンロッドの移動方向における位置情報を含む信号を出力し、制御部がピストンロッドの位置情報を取得し、この位置情報に基づいて、ピストンロッドの位置を調整する。これにより、制御部は、ピストンロッドの移動方向における位置が、目標とするピストンロッドの位置と合っているかを監視し、ピストンロッドの移動方向における位置を正確に調整することができる。さらに、ピストンロッドの位置を正確に把握することにより、昇圧機構を駆動させる回数を減少させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本開示におけるエンジンシステム100の一実施形態について説明する。
【0018】
[第1実施形態]
本実施形態のエンジンシステム100は、例えば大型タンカなど船舶に搭載され、
図1に示すように、エンジン1と、過給機200と、制御部300と、位置検出部400(
図2参照、検出部)とを有している。なお、本実施形態においては、過給機200を補機として捉え、エンジン1(主機)と別体として説明する。但し、過給機200をエンジン1の一部として構成することも可能である。
【0019】
エンジン1は、多気筒のユニフロー掃気ディーゼルエンジンである。エンジン1は、天然ガス等の気体燃料を重油などの液体燃料と共に燃焼させるガス運転モードと、重油などの液体燃料を燃焼させるディーゼル運転モードとを有している。なお、ガス運転モードでは、気体燃料のみを燃焼させても良い。エンジン1は、架構2と、シリンダ部3と、ピストン4と、排気弁ユニット5と、ピストンロッド6と、クロスヘッド7と、油圧部8(昇圧機構)と、連接棒9と、クランク角センサ10と、クランク軸11と、掃気溜12と、排気溜13と、空気冷却器14とを有している。また、シリンダ部3、ピストン4、排気弁ユニット5及びピストンロッド6により、気筒が構成されている。
【0020】
架構2は、エンジン1の全体を支持する強度部材であり、クロスヘッド7、油圧部8及び連接棒9が収容されている。また、架構2の内部において、クロスヘッド7の後述するクロスヘッドピン7aが往復動可能とされている。
【0021】
シリンダ部3は、円筒状のシリンダライナ3aと、シリンダヘッド3bとシリンダジャケット3cとを有している。シリンダライナ3aは、円筒状の部材である。シリンダライナ3aの内側(内周面)には、ピストン4との摺動面が形成されている。シリンダライナ3aの内周面とピストン4とにより囲まれた空間が燃焼室R1とされている。また、シリンダライナ3aの下部には、複数の掃気ポートSが形成されている。掃気ポートSは、シリンダライナ3aの周面に沿って配列された開口であり、シリンダジャケット3c内部の掃気室R2とシリンダライナ3aの内側とを連通している。シリンダヘッド3bは、シリンダライナ3aの上端部に設けられた蓋部材である。シリンダヘッド3bの平面視における中央部には、排気ポートHが形成され、排気溜13と接続されている。また、シリンダヘッド3bには、不図示の燃料噴射弁が設けられている。さらに、シリンダヘッド3bの燃料噴射弁の近傍には、不図示の筒内圧センサが設けられている。筒内圧センサは、燃焼室R1内の圧力を検出し、制御部300へと送信している。シリンダジャケット3cは、架構2とシリンダライナ3aとの間に設けられ、シリンダライナ3aの下端部が挿入された円筒状の部材である。シリンダジャケット3cの内部に掃気室R2が形成されている。また、シリンダジャケット3cの掃気室R2は、掃気溜12と接続されている。
【0022】
ピストン4は、略円柱状とされ、後述するピストンロッド6と接続されてシリンダライナ3aの内側に配置されている。また、ピストン4の外周面には不図示のピストンリングが設けられ、ピストンリングにより、ピストン4とシリンダライナ3aとの間隙を封止している。ピストン4は、燃焼室R1における圧力の変動により、ピストンロッド6を伴ってシリンダライナ3a内を摺動する。
【0023】
排気弁ユニット5は、排気弁5aと、排気弁筐5bと、排気弁駆動部5cとを有している。排気弁5aは、シリンダヘッド3bの内側に設けられ、排気弁駆動部5cにより、シリンダ部3内の排気ポートHを閉塞する。排気弁筐5bは、排気弁5aの端部を収容する円筒形の筐体である。排気弁駆動部5cは、排気弁5aをピストン4のストローク方向に沿う方向に移動させるアクチュエータである。
【0024】
ピストンロッド6は、一端がピストン4と接続され、他端がクロスヘッドピン7aと連結された長尺状の部材である。ピストンロッド6の端部は、クロスヘッドピン7aに挿入され、連接棒9が回転可能となるように連結されている。また、ピストンロッド6のクロスヘッドピン7a側の端部(下端部)の一部には、径が太く形成された太径部を有している。
【0025】
クロスヘッド7は、クロスヘッドピン7aと、ガイドシュー7bと、蓋部材7cとを有している。クロスヘッドピン7aは、ピストンロッド6と連接棒9とを移動可能に連結する円柱状部材である。クロスヘッドピン7aのピストンロッド6の端部が挿入される挿入空間には、作動油(作動流体)の供給及び排出が行われる油圧室R3(流体室)が形成される。クロスヘッドピン7aの中心よりも下側には、クロスヘッドピン7aの軸方向に沿って貫通する出口孔Oが形成されている。出口孔Oは、ピストンロッド6の不図示の冷却流路を通過した冷却油が排出される開口である。また、クロスヘッドピン7aには、油圧室R3と後述するプランジャポンプ8cとを接続する供給流路R4と、油圧室R3と後述するリリーフ弁8fとを接続するリリーフ流路R5とが設けられている。さらに、クロスヘッド7には、クロスヘッドピン7aと、蓋部材7cとを連通し、蓋部材7cの周面及びクロスヘッドピン7aの周面に開口する補助流路R6が形成されている。
【0026】
ガイドシュー7bは、クロスヘッドピン7aを回動可能に支持する。ガイドシュー7bは、クロスヘッドピン7aに伴ってピストン4のストローク方向に沿って不図示のガイドレール上を移動する。ガイドシュー7bがガイドレールに沿って移動することにより、クロスヘッドピン7aは、回転運動と、ピストン4のストローク方向に沿う直線方向への移動以外の移動が規制される。蓋部材7cは、クロスヘッドピン7aの上部に固定され、ピストンロッド6の端部が挿入される環状部材である。クロスヘッド7は、ピストン4の直線運動を連接棒9へと伝達している。
【0027】
図3に示すように、油圧部8は、供給ポンプ8aと、揺動管8bと、プランジャポンプ8cと、プランジャポンプ8cが有する第1逆止弁8d及び第2逆止弁8eと、リリーフ弁8fとを有している。また、ピストンロッド6、クロスヘッド7、油圧部8、制御部300及び位置検出部400は、本開示における可変圧縮装置として機能する。
【0028】
供給ポンプ8aは、制御部300からの指示に基づいて、不図示の作動油タンクから供給される作動油を昇圧してプランジャポンプ8cへと供給する。供給ポンプ8aは、船舶のバッテリの電力により駆動され、燃焼室R1に液体燃料が供給されるよりも前に稼働することが可能である。揺動管8bは、供給ポンプ8aと各気筒のプランジャポンプ8cとを接続する。揺動管8bは、クロスヘッドピン7aに伴って移動するプランジャポンプ8cと、固定された供給ポンプ8aとの間において、揺動可能とされている。
【0029】
プランジャポンプ8cは、クロスヘッドピン7aに固定されている。プランジャポンプ8cは、棒状のプランジャ8c1と、プランジャ8c1を摺動可能に収容する筒状のシリンダ8c2と、プランジャ駆動部8c3とを有している。プランジャポンプ8cは、プランジャ8c1が不図示の駆動部と接続されることで、シリンダ8c2内を摺動し、作動油を昇圧して油圧室R3へと供給する。また、シリンダ8c2の端部に設けられた作動油の吐出側の開口には第1逆止弁8dが設けられ、シリンダ8c2の側周面に設けられた作動油の吸入側の開口には第2逆止弁8eが設けられている。プランジャ駆動部8c3は、プランジャ8c1に接続され、制御部300からの指示に基づいてプランジャ8c1を往復動させる。
【0030】
第1逆止弁8dは、シリンダ8c2の内側に向けて弁体が付勢されることで閉弁する構造とされ、油圧室R3に供給された作動油がシリンダ8c2へと逆流することを防止している。また、第1逆止弁8dは、シリンダ8c2内の作動油の圧力が第1逆止弁8dの付勢部材の付勢力(開弁圧力)以上となると、弁体が作動油に押されることにより開弁する。第2逆止弁8eは、シリンダ8c2の外側に向けて付勢されており、シリンダ8c2に供給された作動油が供給ポンプ8aへと逆流することを防止している。また、第2逆止弁8eは、供給ポンプ8aから供給される作動油の圧力が第2逆止弁8eの付勢部材の付勢力(開弁圧力)以上となると、弁体が作動油に押されることにより開弁する。なお、第1逆止弁8dの開弁圧力は第2逆止弁8eの開弁圧力よりも高く、予め設定された圧縮比で運転される定常運転時においては、第1逆止弁8dは、供給ポンプ8aから供給される作動油の圧力により開弁することはない。
【0031】
リリーフ弁8fは、クロスヘッドピン7aに設けられる。リリーフ弁8fは、本体部8f1と、リリーフ弁駆動部8f2とを有している。本体部8f1は、油圧室R3及び不図示の作動油タンクに接続される弁である。リリーフ弁駆動部8f2は、本体部8f1の弁体に接続され、制御部300からの指示に基づいて本体部8f1を開閉する。リリーフ弁8fがリリーフ弁駆動部8f2により開弁することで、油圧室R3に貯留された作動油が作動油タンクに戻される。
【0032】
図1に示すように、連接棒9は、クロスヘッドピン7aと連結されると共にクランク軸11と連結されている長尺状部材である。連接棒9は、クロスヘッドピン7aに伝えられたピストン4の直線運動を回転運動に変換している。クランク角センサ10は、クランク軸11のクランク角を計測するためのセンサであり、制御部300へとクランク角を算出するためのクランクパルス信号を送信している。
【0033】
クランク軸11は、気筒に設けられる連接棒9に接続された長尺状の部材であり、それぞれの連接棒9により伝えられる回転運動により回転されることで、例えばスクリュー等に動力を伝える。掃気溜12は、シリンダジャケット3cと過給機200との間に設けられ、過給機200により加圧された空気が流入する。また、掃気溜12の内部には、空気冷却器14が設けられている。排気溜13は、各気筒の排気ポートHと接続されると共に過給機200と接続される管状部材である。排気ポートHより排出されるガスは、排気溜13に一時的に貯留されることにより、脈動を抑制した状態で過給機200へと供給される。空気冷却器14は、掃気溜12内部の空気を冷却する。
【0034】
過給機200は、排気ポートHより排出されたガスにより回転されるタービンにより、不図示の吸気ポートから吸入した空気を加圧して燃焼室R1に供給する。
【0035】
制御部300は、船舶の操縦者による操作等に基づいて、燃料の供給量等を制御するコンピュータである。制御部300は、位置検出部400の後述する通信部430の無線通信を受信する受信部を備えている。また、制御部300は、油圧部8を制御することにより、燃焼室R1における圧縮比を変更する。具体的には、制御部300は、位置検出部400からの信号に基づいてピストンロッド6の位置情報を取得し、プランジャポンプ8c、供給ポンプ8a及びリリーフ弁8fを制御し、油圧室R3における作動油の量を調整することにより、ピストンロッド6の位置を変更させて圧縮比を変更する。
【0036】
位置検出部400は、
図2及び
図3に示すように、磁気センサ410(センサ部)と、ロッド部420と、通信部430(情報送信部)とを有している。磁気センサ410は、蓋部材7cに固定されている。磁気センサ410は、後述するロッド421の移動に伴う磁界の変化により電気信号(ピストンロッド6の位置情報を含む信号)を発生させる。
【0037】
ロッド部420は、ロッド421と、保持部422と、付勢バネ423(付勢部)と、磁性部材424とを有している。ロッド421は、その端部の近傍に設けられ、付勢バネ423を保持するフランジを有した棒状部材である。ロッド421は、保持部422及び蓋部材7cに形成された貫通孔に挿入され、ピストンロッド6の延在方向に沿って配置され、付勢バネ423によりピストンロッド6の下端部の太径部に押し付けられている。すなわち、ロッド421は、ピストンロッド6が油圧で押し上げられたときに、ピストンロッド6の太径部の上面に当接される。保持部422は、蓋部材7cに固定され、ロッド421が挿入された筒状部材である。ロッド421は、保持部422内を往復動可能とされている。付勢バネ423は、ロッド421のフランジと、ピストンロッド6の太径部との間に設けられ、ロッド421をピストンロッド6の太径部に向けて付勢している。磁性部材424は、等間隔で配列された複数の磁石を有し、ロッド421の周面においてロッド421の延在方向に沿って設けられている。
【0038】
通信部430は、磁気センサ410の検出した電気信号を制御部300に無線通信により送信するテレメータである。
【0039】
エンジンシステム100は、不図示の燃料噴射弁より燃焼室R1に噴射された燃料を着火、爆発させることによりピストン4をシリンダライナ3a内で摺動させ、クランク軸11を回転させる。詳述すると、燃焼室R1に供給された燃料は、掃気ポートSより流入した空気と混合された後、ピストン4が上死点方向に向けて移動することにより圧縮されて温度が上昇し、自然着火する。また、液体燃料の場合には、燃焼室R1において温度上昇することにより気化し、自然着火する。
【0040】
そして、燃焼室R1内の燃料が自然着火することで急激に膨張し、ピストン4には下死点方向に向けた圧力がかかる。これにより、ピストン4が下死点方向に移動し、ピストン4に伴ってピストンロッド6が移動され、連接棒9を介してクランク軸11が回転される。さらに、ピストン4が下死点に移動されることで、掃気ポートSより燃焼室R1へと加圧空気が流入する。排気弁ユニット5が駆動することで排気ポートHが開き、燃焼室R1内の排気ガスが、加圧空気により排気溜13へと押し出される。
【0041】
圧縮比を大きくする場合には、制御部300により供給ポンプ8aが駆動され、プランジャポンプ8cに作動油が供給される。そして、制御部300は、プランジャポンプ8cを駆動して作動油を、ピストンロッド6を持ち上げることが可能な圧力となるまで加圧し、油圧室R3へと作動油を供給する。油圧室R3の作動油の圧力により、ピストンロッド6の端部が持ち上がり、これに伴ってピストン4の上死点位置が上方(排気ポートH側)に移動される。
【0042】
圧縮比を小さくする場合には、制御部300によりリリーフ弁8fが駆動され、油圧室R3と不図示の作動油タンクとが連通状態となる。そして、ピストンロッド6の荷重が油圧室R3の作動油にかかり、油圧室R3内の作動油がリリーフ弁8fを介して作動油タンクへと押し出される。これにより、油圧室R3の作動油が減少し、ピストンロッド6が下方(クランク軸11側)に移動され、これに伴ってピストン4の上死点位置が下方に移動される。
【0043】
続いて、本実施形態におけるピストンロッド6の位置調整方法について説明する。
ピストンロッド6の移動に伴ってロッド421が移動されると、磁性部材424が移動されることにより、磁気センサ410が検出する磁界が変化する。磁気センサ410は、このような磁界の変化を電気信号として出力する。通信部430は、磁気センサ410の電気信号を制御部300へと送信する。
【0044】
制御部300は、磁気センサ410の電気信号を受信し、電気信号に基づいて算出されるロッド421の位置からピストンロッド6の位置を取得する(位置取得工程)。そして、制御部300は、ピストンロッド6の位置に基づいて、目標とする圧縮比と、実際の圧縮比とを比較し、実際の圧縮比が目標とする圧縮比と異なる場合には、目標とする圧縮比となるまで油圧部8を制御して作動油の昇圧量(供給圧力)の制御または油圧室R3内の作動油の排出を行う(圧力調整工程)。
【0045】
本実施形態におけるエンジンシステム100及びピストンロッド6の位置調整方法によれば、位置検出部400により、ピストンロッド6の移動方向における位置情報を含む信号を出力する。制御部300により、ピストンロッド6の位置情報を取得し、この位置情報に基づいて、ピストンロッド6の位置を調整する。これにより、制御部300は、ピストンロッド6の移動方向における位置が、目標とするピストンロッド6の位置と合っているかを監視し、ピストンロッド6の移動方向における位置を正確に調整することができる。さらに、ピストンロッド6の位置を正確に把握することにより、油圧部8のプランジャポンプ8c及びリリーフ弁8fを駆動させる回数を減少させることができる。
【0046】
また、本実施形態におけるエンジンシステム100によれば、位置検出部400がピストンロッド6と共に移動するロッド421と、ロッド421の移動を検出する磁気センサ410とを有している。これにより、ピストンロッド6に対して直接加工を行うことなく、磁気センサ410が非接触でピストンロッド6の位置情報を取得することができる。
【0047】
また、本実施形態におけるエンジンシステム100によれば、ロッド421がピストンロッド6の移動方向に沿って配置されている。これにより、ロッド421の長手方向に沿って磁気センサ410の検出対象である磁性部材424を設けることができ、ロッド421の大きさを最小限にしつつピストンロッド6の位置情報を取得することができる。
【0048】
また、本実施形態においては、位置検出部400は、磁気センサ410によりピストンロッド6の位置情報を含む信号を発生させている。磁気センサ410は、往復動を繰り返すピストンロッド6に対して非接触の状態で、ピストンロッド6の位置の計測が可能である。さらに、磁気センサ410は、構造が単純であり、エンジン1のように高温になりやすい部位でも計測を行うことが可能である。
【0049】
また、本実施形態においては、通信部430を設けているため、位置検出部400により出力された電気信号を、離れた位置にある制御部300へと送信することができる。これにより、制御部300を位置検出部400と別体としてエンジン1に対して配置することができる。
【0050】
さらに、本実施形態においては、付勢バネ423によりロッド421をピストンロッド6に押し付けている。これにより、ピストンロッド6を加工することなくロッド421を取り付けられ、既存のピストンロッド6に対してロッド421を取り付けることが容易である。
【0051】
[第2実施形態]
上記第1実施形態の変形例を第2実施形態として説明する。なお、上記第1実施形態と同一の構成の部材については、同一の符号を付し、説明を省略する。
本実施形態におけるエンジンシステム100は、位置検出部400を有していない。このような構成において、制御部300は、筒内圧センサからの信号から算出される燃焼室R1内の圧力に基づいて、実際の圧縮比を算出し、ピストンロッド6の位置を調整する。
【0052】
ピストン4が下死点に位置するときの筒内圧をP
0、ピストン4が上死点に位置するときの筒内圧をP
1としたとき、圧縮比εは、下記式1で示される。なおκは、ポリトロープ指数を示す。
【0054】
制御部300は、筒内圧センサが出力する信号から上記式1に基づいてシリンダ部3における圧縮比を算出する。さらに、制御部300は、算出された圧縮比からピストンロッド6の位置を算出する(位置取得工程)。そして、制御部300は、ピストンロッド6の位置に基づいて、目標とする圧縮比と、実際の圧縮比とを比較し、実際の圧縮比が目標とする圧縮比と異なる場合には、目標とする圧縮比となるまで油圧部8を制御して作動油の昇圧量の制御または油圧室R3内の作動油の排出を行う(圧力調整工程)。
【0055】
このような本実施形態におけるピストンロッド6の位置調整方法によれば、筒内圧センサにより、筒内圧(ピストンロッド6の移動方向における位置情報を含む信号)を制御部300に出力する。制御部300により、ピストンロッド6の位置情報を取得し、この位置情報に基づいて、ピストンロッド6の位置を調整する。これにより、制御部300は、ピストンロッド6の移動方向における位置が、目標とするピストンロッド6の位置と合っているかを監視し、ピストンロッド6の移動方向における位置を正確に調整することができる。さらに、ピストンロッド6の位置を正確に把握することにより、油圧部8のプランジャポンプ8c及びリリーフ弁8fを駆動させる回数を減少させることができる。
【0056】
また、制御部300が筒内圧センサからの信号に基づいて圧縮比を算出することで、正確な圧縮比を取得することができ、実際の圧縮比に基づいて、より正確にピストンロッド6の位置を調整することができる。
【0057】
また、本実施形態においては、位置検出部400を設けておらず、エンジンシステム100に対する可変圧縮装置の設置が容易となる。
【0058】
以上、図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本開示の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0059】
上記実施形態においては、位置検出部400は、磁気センサ410及び磁性部材424を設けているが、本開示はこれに限定されない。位置検出部400は、静電容量センサによりピストンロッド6の位置情報を含む信号を出力してもよい。また、位置検出部400は、他の非接触型変位センサを備えていてもよい。
【0060】
また、上記実施形態においては、通信部430は、無線通信により送信するものとしたが、本開示はこれに限定されない。通信部430は、有線により制御部300と接続されてもよい。
【0061】
上記実施形態においては、油圧を用いてピストンロッド6を移動させ、圧縮比を変更させる構成を採用した。しかしながら、本開示はこれに限定されず、作動油以外の流体の圧力によりピストンロッド6を移動させる構成を含む。
【0062】
さらに、位置検出部400は、パルス位置センサであり、ロッド421及び磁性部材424の代わりに、光学式または超音波式のパルス型変位センサのパルス発信部を有するロッドが設けられ、磁気センサ410の代わりに上記パルスの受信部が蓋部材7cに設けられていてもよい。また、位置検出部400は、ロッド421に設けられるレーザ発生器及びレーザ受信部により、レーザを用いて位置を検出してもよい。