特許第6813095号(P6813095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6813095
(24)【登録日】2020年12月21日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/28 20060101AFI20201228BHJP
   F16H 48/08 20060101ALI20201228BHJP
   F16H 57/027 20120101ALI20201228BHJP
   F16H 57/037 20120101ALI20201228BHJP
   B60K 17/04 20060101ALI20201228BHJP
   B60K 17/16 20060101ALI20201228BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20201228BHJP
   B60K 6/405 20071001ALN20201228BHJP
【FI】
   F16H1/28
   F16H48/08
   F16H57/027
   F16H57/037
   B60K17/04 G
   B60K17/16 E
   B60K1/00
   !B60K6/405
【請求項の数】23
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2019-537714(P2019-537714)
(86)(22)【出願日】2018年8月24日
(86)【国際出願番号】JP2018031422
(87)【国際公開番号】WO2019039599
(87)【国際公開日】20190228
【審査請求日】2019年10月8日
(31)【優先権主張番号】特願2017-162183(P2017-162183)
(32)【優先日】2017年8月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-39785(P2018-39785)
(32)【優先日】2018年3月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】須山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】三治 広明
(72)【発明者】
【氏名】市岡 光広
(72)【発明者】
【氏名】川口 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】太田 幸児
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一幸
(72)【発明者】
【氏名】藤嶋 勇夫
【審査官】 山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−330111(JP,A)
【文献】 特開2015−230052(JP,A)
【文献】 特開2014−177868(JP,A)
【文献】 実開昭55−105653(JP,U)
【文献】 特開2016−095034(JP,A)
【文献】 特開2017−096370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/28
B60K 1/00
B60K 17/04
B60K 17/16
F16H 48/08
F16H 57/027
F16H 57/037
B60K 6/405
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1車輪及び第2車輪の駆動力源となる回転電機と、
前記回転電機からの駆動力を前記第1車輪と前記第2車輪とに分配する差動歯車装置と、
サンギヤ、キャリヤ、及びリングギヤを有する遊星歯車機構を含む減速装置と、
前記回転電機、前記差動歯車装置、及び前記減速装置を収容するケースと、を備え、
前記差動歯車装置、及び前記減速装置が、前記回転電機と同軸に配置され、
前記減速装置は、軸方向における前記回転電機と前記差動歯車装置との間に配置され、
前記ケースの内部に配置された支持部材が、前記ケースに支持されており、
前記リングギヤが、前記支持部材に回転不能に支持されており、
前記キャリヤが、前記支持部材に回転可能に支持されており、
前記ケースと前記支持部材とが互いに面接触し、
前記ケースと前記支持部材との接触面は、前記軸方向に直交する方向に沿っている、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記減速装置は、前記サンギヤである第1サンギヤ、前記キャリヤである第1キャリヤ、及び前記リングギヤである第1リングギヤを有する、前記遊星歯車機構である第1遊星歯車機構に加えて、第2サンギヤ、第2キャリヤ、及び第2リングギヤを有する第2遊星歯車機構を更に含み、
前記第1遊星歯車機構は、前記第2遊星歯車機構よりも、前記軸方向における前記回転電機側に配置され、
前記支持部材は、前記第1リングギヤ及び前記第2リングギヤの双方を支持している、請求項に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記支持部材は、第1支持材と、第2支持材とを含み、
前記第1リングギヤが前記第1支持材に支持され、
前記第2リングギヤが前記第2支持材に支持されている、請求項に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記第1支持材及び前記第2支持材の一方が、前記ケースに支持され、
前記第1支持材及び前記第2支持材の他方が、一方に連結されている、請求項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記第1支持材と前記第2支持材とが、前記ケースにおけるそれぞれ異なる箇所に支持されている、請求項記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記支持部材は、第1支持材と、第2支持材とを含み、
前記第1支持材と前記第2支持材とがそれぞれ前記ケースに支持され、
前記第1リングギヤ及び前記第2リングギヤの双方が前記第2支持材に支持されている、請求項に記載の車両用駆動装置。
【請求項7】
前記支持部材は、前記ケースの内部に配置された回転部材を支持するように構成されている、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項8】
前記支持部材は、前記ケースの内部に配置された回転部材を支持するように構成されている、請求項からのいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項9】
前記回転電機は、ロータ軸を備え、
前記第1支持材は、前記回転部材である前記ロータ軸を回転可能に支持している、請求項に記載の車両用駆動装置。
【請求項10】
前記第1支持材は、前記回転部材である前記第1サンギヤを回転可能に支持している、請求項又はに記載の車両用駆動装置。
【請求項11】
前記第2支持材は、前記回転部材である前記第2キャリヤを回転可能に支持している、請求項から10のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項12】
第1車輪及び第2車輪の駆動力源となる回転電機と、
前記回転電機からの駆動力を前記第1車輪と前記第2車輪とに分配する差動歯車装置と、
サンギヤ、キャリヤ、及びリングギヤを有する遊星歯車機構を含む減速装置と、
前記回転電機、前記差動歯車装置、及び前記減速装置を収容するケースと、を備え、
前記差動歯車装置、及び前記減速装置が、前記回転電機と同軸に配置され、
前記減速装置は、軸方向における前記回転電機と前記差動歯車装置との間に配置され、
前記ケースの内部に配置された支持部材が、前記ケースに支持されており、
前記リングギヤが、前記支持部材に回転不能に支持されており、
前記ケースと前記支持部材とが互いに面接触し、
前記ケースと前記支持部材との接触面は、前記軸方向に直交する方向に沿っており、
前記ケースの内部に開口する内側開口部と前記ケースの外部とを連通させるブリーザ機構を更に備え、
前記支持部材は、前記軸方向に延在する軸方向延在部を有し、
前記ブリーザ機構は、前記軸方向延在部と径方向視で重複する位置に配置されている、車両用駆動装置。
【請求項13】
前記軸方向延在部は、前記内側開口部に対して前記軸方向の一方側の部分に、当該一方側に突出すると共に周方向に連続的に形成された筒状突出部を有し、
前記筒状突出部に対して前記径方向内側に、前記減速装置を構成するギヤの少なくとも一部が配置されている、請求項12に記載の車両用駆動装置。
【請求項14】
前記減速装置は、前記サンギヤである第1サンギヤ、前記キャリヤである第1キャリヤ、及び前記リングギヤである第1リングギヤを有する、前記遊星歯車機構である第1遊星歯車機構に加えて、第2サンギヤ、第2キャリヤ、及び第2リングギヤを有する第2遊星歯車機構を更に含み、
前記第1遊星歯車機構は、前記第2遊星歯車機構よりも、前記軸方向における前記回転電機側に配置され、
前記支持部材は、前記第1リングギヤ及び前記第2リングギヤの双方を支持している、請求項13に記載の車両用駆動装置。
【請求項15】
前記支持部材は、第1支持材と、第2支持材とを含み、
前記第1リングギヤが前記第1支持材に支持され、
前記第2リングギヤが前記第2支持材に支持されている、請求項14に記載の車両用駆動装置。
【請求項16】
前記第1支持材及び前記第2支持材の一方が、前記ケースに支持され、
前記第1支持材及び前記第2支持材の他方が、一方に連結されている、請求項15に記載の車両用駆動装置。
【請求項17】
前記第1支持材と前記第2支持材とが、前記ケースにおけるそれぞれ異なる箇所に支持されている、請求項15に記載の車両用駆動装置。
【請求項18】
前記支持部材は、第1支持材と、第2支持材とを含み、
前記第1支持材と前記第2支持材とがそれぞれ前記ケースに支持され、
前記第1リングギヤ及び前記第2リングギヤの双方が前記第2支持材に支持されている、請求項14に記載の車両用駆動装置。
【請求項19】
前記第2支持材が前記筒状突出部を有し、
前記筒状突出部は、前記第1支持材側に突出し、
前記筒状突出部に対して前記径方向内側に、前記第1遊星歯車機構が配置されている、請求項15から18のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項20】
前記支持部材は、前記リングギヤを回転不能に支持する支持部よりも径方向内側に突出すると共に周方向に連続的に形成された突出壁部を備えている、請求項1から19のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項21】
前記ケースと前記支持部材とが、ボルトによって互いに連結されている、請求項1から20のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項22】
前記ケースは、前記回転電機、前記差動歯車装置、及び前記減速装置の径方向外側を囲む筒状の周壁部を備えている、請求項1から21のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項23】
前記差動歯車装置は、中空の差動ケースを備え、
前記差動ケースは、前記キャリヤと一体化され、
前記支持部材は、当該支持部材に支持された軸受を介して、前記キャリヤ及び前記差動ケースを回転可能に支持している、請求項1から22のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの車輪の駆動力源となる回転電機と、2つの車輪に回転電機からの駆動力を分配する差動歯車装置と、減速装置とを備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1に開示された電気自動車用動力伝達装置(10)は、車輪の駆動力源となる電動機(12)と、2つの車輪にそれぞれ駆動連結される2つの回転軸(20,21)と、これらの回転軸(20,21)に電動機(12)の駆動力を分配する差動機構部(19)と、減速機構部(18)と、それらを収容するケース(11)とを備えている。減速機構部(18)は、第1列リングギヤ(23)及び第2列リングギヤ(28)を有し、これらのリングギヤ(23,28)は、ケース(11)に直接支持されている。なお、背景技術の説明において括弧内に示す符号は、参照する文献のものである。
【0003】
しかし、特許文献1の電気自動車用動力伝達装置(10)では、第1列リングギヤ(23)及び第2列リングギヤ(28)がケース(11)に直接支持されているため、第1列リングギヤ(23)と第1列ピニオン(24)との噛み合い、及び第2列リングギヤ(28)と第2列ピニオン(29)との噛み合いにより発生する振動が、ケース(11)へ直接伝達される。その結果、大きいギヤノイズが発生する場合があるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−330111号公報(段落0010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、ギヤノイズを小さく抑えることが可能な車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みた、車両用駆動装置の特徴構成は、
第1車輪及び第2車輪の駆動力源となる回転電機と、
前記回転電機からの駆動力を前記第1車輪と前記第2車輪とに分配する差動歯車装置と、
サンギヤ、キャリヤ、及びリングギヤを有する遊星歯車機構を含む減速装置と、
前記回転電機、前記差動歯車装置、及び前記減速装置を収容するケースと、を備え、
前記差動歯車装置、及び前記減速装置が、前記回転電機と同軸に配置され、
前記減速装置は、軸方向における前記回転電機と前記差動歯車装置との間に配置され、
前記ケースの内部に配置された支持部材が、前記ケースに支持されており、
前記リングギヤが、前記支持部材に回転不能に支持されており、
前記ケースと前記支持部材とが互いに面接触し、
前記ケースと前記支持部材との接触面は、前記軸方向に直交する方向に沿っている点にある。
【0007】
この特徴構成によれば、ケースの内部に配置された支持部材がケースに支持され、リングギヤが支持部材に回転不能に支持されている。つまり、ケース及びリングギヤとは別部材である支持部材を介して、リングギヤがケースに支持されている。そのため、キャリヤに支持されたピニオンギヤとリングギヤとの噛み合い部において発生した振動は、ケースに伝達されるまでに、リングギヤと支持部材との間、支持部材、及び支持部材とケースとの間の各箇所において減衰されることになる。特に、リングギヤと支持部材との間、及び支持部材とケースとの間においては、それぞれ、部材同士の接触による摩擦によって、振動を減衰することができる。
また、本構成によれば、軸方向に直交する方向に沿った接触面で、ケースと支持部材とが互いに接触している。そのため、リングギヤに発生する周方向の振動がケースと支持部材との接触面に伝達され、当該接触面に生じる周方向の摩擦により減衰される。
以上のように、本構成によれば、減速装置からケースに伝達される振動を小さく抑えることができ、その結果、ケースから外部に伝わるギヤノイズも小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る車両用駆動装置の軸方向断面図
図2】第1の実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図
図3】第1の実施形態に係る車両用駆動装置の要部軸方向断面図
図4】第2の実施形態に係る車両用駆動装置の要部軸方向断面図
図5】第3の実施形態に係る車両用駆動装置の要部軸方向断面図
図6】第4の実施形態に係る車両用駆動装置の要部軸方向断面図
図7】第5の実施形態に係る車両用駆動装置の要部軸方向断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.第1の実施形態
以下では、車両用駆動装置の第1の実施形態である車両用駆動装置100について図面に基づいて説明する。図1は、車両用駆動装置100の軸方向断面図であり、図2は、車両用駆動装置100のスケルトン図である。車両用駆動装置100は、例えば、内燃機関及び回転電機を第1車輪501及び第2車輪502の駆動力源とするハイブリッド自動車や、回転電機を第1車輪501及び第2車輪502の駆動力源とする電気自動車に搭載される駆動装置である。図1及び図2に示すように、車両用駆動装置100は、第1車輪501及び第2車輪502の駆動力源として回転電機2のみを備えている。2輪駆動の4輪車の場合には、これによって電気自動車が実現できる。また、4輪駆動の4輪車の場合には、他の2輪を内燃機関の駆動力によって駆動することでハイブリッド車両が実現できる。当然ながら、4輪駆動の4輪車の場合には、本実施形態の車両用駆動装置100を他の2輪にも適用することで、4輪駆動の電気自動車を実現することもできる。
【0010】
以下の説明において、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていてもよい。ただし、下記において説明する減速装置3及び差動歯車装置4において、各回転要素について「駆動連結」という場合には、当該装置が備える3つ以上の回転要素に関して互いに他の回転要素を介することなく駆動連結されている状態を指すものとする。
【0011】
また、以下の説明において、単に「連結」という場合には、2つの部材を分離可能に結合した状態であって、当該2つの部材同士の接触により摩擦が生じ得るような状態を指し、例えば、ボルト締結、スプライン嵌合、及び圧入(キー及びキー溝の有無は問わない)を含む。ただし、2つの部材の分子的な結合(例えば、溶接)は含まない。
【0012】
車両用駆動装置100は、ケース1と、駆動力を出力するためのロータ軸27を有する回転電機2と、遊星歯車機構を含む減速装置3と、中間軸53に連結された第1ドライブシャフト51、及び第2ドライブシャフト52のそれぞれに回転電機2からの駆動力を分配する差動歯車装置4とを備えている。
【0013】
車両用駆動装置100においては、回転電機2、減速装置3、差動歯車装置4、第1ドライブシャフト51、第2ドライブシャフト52、及び中間軸53が、回転電機2のロータ軸27を基準として同軸配置されている。従って、回転電機2のロータ軸27の軸方向は、車両用駆動装置100の回転軸の軸方向と等価であり、回転電機2のロータ軸27の径方向は、車両用駆動装置100の径方向と等価である。従って、回転電機2のロータ軸27の軸方向を車両用駆動装置100の軸方向Lと称し、回転電機2のロータ軸27の径方向を車両用駆動装置100の径方向Rと称する。また、軸方向Lにおいて、第1ドライブシャフト51が配置される側を軸方向第1側L1と称し、第2ドライブシャフト52が配置される側を軸方向第2側L2と称する。また、径方向Rにおいて、ロータ軸27とは反対の外側を径方向外側R1と称し、ロータ軸27側の内側を径方向内側R2と称する。
【0014】
ケース1は、回転電機2、減速装置3、差動歯車装置4、第1ドライブシャフト51の一部(軸方向第2側L2の端部)、第2ドライブシャフト52の一部(軸方向第1側L1の端部)、及び中間軸53を内部に収容している。ケース1は、有底筒状のケース本体11と、ケース本体11の軸方向第1側L1の端部に位置する底部11aとは反対側(軸方向第2側L2)の開口部を覆うように配置される筒状の本体カバー12と、ケース本体11の底部11aの軸方向第1側L1で底部11aを覆うように配置される底部カバー13とを有している。ケース本体11と本体カバー12とは、互いに固定部材(本実施形態においては、ボルト)によって固定されている。ケース本体11と底部カバー13とは、互いに固定部材(本実施形態においては、ボルト)によって固定されている。
【0015】
回転電機2、及び減速装置3の一部(後述の第1遊星歯車機構31)は、ケース本体11の内部空間に配置されている。減速装置3の他部(後述の第2遊星歯車機構32)、差動歯車装置4、及び第2ドライブシャフト52の一部(軸方向第1側L1の端部)は、本体カバー12の内部空間に配置されている。第1ドライブシャフト51の一部(軸方向第2側L2の端部)は、ケース本体11と底部カバー13とによって形成される内部空間に配置されている。中間軸53は、ケース本体11と本体カバー12と底部カバー13とによって形成される内部空間に配置されている。ケース1においては、ケース本体11における底部11aを除いた部分、及び本体カバー12が「周壁部」に相当する。つまり、ケース1は、回転電機2、減速装置3、及び差動歯車装置4の径方向外側R1を囲む筒状の「周壁部」を備えている。
【0016】
回転電機2は、前述のように、第1車輪501及び第2車輪502の駆動力源である。回転電機2は、ロータコア22の内部に永久磁石23を備えたロータ21と、ステータコア25にステータコイル26が巻き回されたステータ24と、ロータコア22に固定されたロータ軸27とを備えた永久磁石型回転電機である。ロータコア22の径方向内側R2で、ロータ軸27がロータコア22に固定され、ロータ21とロータ軸27とが一体回転する。なお、本実施形態においては、回転電機2は永久磁石型回転電機であるが、例えば誘導型回転電機など他の方式の回転電機であってもよい。
【0017】
ロータ軸27は、円筒状に形成された軸部材である。ここで、「円筒状」とは、多少の異形部分を有していたとしてもその全体としての概略形状が円筒であることを意味する(以下、形状等に関して「状」を付して用いる他の表現に関しても同趣旨である)。ロータ軸27は、軸方向Lに沿ってロータコア22よりも軸方向第1側L1に突出した第1被支持部27aと、軸方向Lに沿ってロータコア22よりも軸方向第2側L2に突出した第2被支持部27bとを有している。第1被支持部27aは、第1ロータ軸受61を介して回転可能にケース1のケース本体11に支持され、第2被支持部27bは、第2ロータ軸受62を介して回転可能に、後述の支持部材9の第1支持材91に支持されている。ロータ軸27は、「回転部材」として機能する。
【0018】
減速装置3は、軸方向Lにおける回転電機2と差動歯車装置4との間に配置され、回転電機2の回転を減速して差動歯車装置4に駆動力を伝達する。本実施形態においては、減速装置3は、第1遊星歯車機構31と、第2遊星歯車機構32とを含んでいる。
【0019】
第1遊星歯車機構31は、第1サンギヤS31と、第1リングギヤR31と、第1キャリヤC31とを有している。第1サンギヤS31は、第1遊星歯車機構31の入力要素であり、回転電機2のロータ軸27に固定されている。第1リングギヤR31は、後述の支持部材9の第1支持材91に、周方向へ回転不能に支持されている。第1キャリヤC31は、第1遊星歯車機構31の出力要素であり、ブッシュ等の軸受を介して中間軸53に回転可能に支持されている。
【0020】
第2遊星歯車機構32は、軸方向Lにおいて、第1遊星歯車機構31に隣接し、第1遊星歯車機構31に対して回転電機2側とは反対側に配置されている。つまり、軸方向Lにおいて、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2へ向けて、回転電機2、第1遊星歯車機構31、及び第2遊星歯車機構32が記載の順に並んで配置されている。第2遊星歯車機構32は、第2サンギヤS32と、第2リングギヤR32と、第2キャリヤC32とを有している。第2サンギヤS32は、第2遊星歯車機構32の入力要素であり、第1遊星歯車機構31の第1キャリヤC31に固定されている。本実施形態においては、第2サンギヤS32は、第1キャリヤC31と一体的に形成されている。第2リングギヤR32は、後述の支持部材9の第2支持材92に、周方向へ回転不能に支持されている。第2キャリヤC32は、第2遊星歯車機構32の出力要素であり、ブッシュ等の軸受を介して中間軸53に回転可能に支持されている。第2キャリヤC32は、「回転部材」として機能する。
【0021】
差動歯車装置4は、軸方向Lにおいて減速装置3と第2ドライブシャフト52との間に配置されている。差動歯車装置4は、回転電機2から減速装置3を介して伝達された駆動力を、中間軸53に連結された第1ドライブシャフト51と、第2ドライブシャフト52とに分配して出力する。差動歯車装置4は、入力要素としての差動ケースD4と、差動ケースD4に固定された差動ピニオンシャフトF4と、差動ピニオンシャフトF4に対して回転可能に支持された第1差動ピニオンギヤP41及び第2差動ピニオンギヤP42と、分配出力要素としての第1サイドギヤB41及び第2サイドギヤB42とを有している。ここでは、第1差動ピニオンギヤP41、第2差動ピニオンギヤP42、第1サイドギヤB41、及び第2サイドギヤB42は、いずれも傘歯車である。
【0022】
差動ケースD4は、中空の部材であり、その内部に差動ピニオンシャフトF4と、第1差動ピニオンギヤP41及び第2差動ピニオンギヤP42と、第1サイドギヤB41及び第2サイドギヤB42とを収容可能に構成されている。差動ケースD4は、減速装置3における第2遊星歯車機構32の出力要素である第2キャリヤC32と一体化されている。本実施形態では、差動ケースD4は、第2キャリヤC32と一体的に形成されている。差動ケースD4は、軸方向Lに沿って第2サイドギヤB42よりも軸方向第2側L2に突出した被支持部D4aを有している。被支持部D4aは、第1サイドギヤB41及び第2サイドギヤB42と同軸の円筒状に形成されている。被支持部D4aは、差動軸受63を介して回転可能にケース1の本体カバー12に支持されている。
【0023】
差動ピニオンシャフトF4は、第1差動ピニオンギヤP41及び第2差動ピニオンギヤP42に挿通され、それらを回転可能に支持している。差動ピニオンシャフトF4は、差動ケースD4に径方向Rに沿って形成された貫通孔に挿入されており、固定部材43により差動ケースD4に固定されている。
【0024】
第1差動ピニオンギヤP41と第2差動ピニオンギヤP42とは、径方向Rに沿って互いに所定の間隔を空けて対向した状態で差動ピニオンシャフトF4に取り付けられ、差動ケースD4の内部空間において差動ピニオンシャフトF4を中心として回転するように構成されている。
【0025】
第1サイドギヤB41及び第2サイドギヤB42は、差動歯車装置4における分配後の回転要素である。第1サイドギヤB41と第2サイドギヤB42とは、軸方向Lに沿って互いに所定の間隔を空けて、差動ピニオンシャフトF4を挟んで対向するように設けられ、差動ケースD4の内部空間においてそれぞれの周方向に回転するように構成されている。第1サイドギヤB41と第2サイドギヤB42とは、第1差動ピニオンギヤP41と第2差動ピニオンギヤP42とに噛み合っている。第1サイドギヤB41の内周面には、周方向の全域にわたって、中間軸53を連結するためのスプラインが形成されている。第2サイドギヤB42の内周面には、周方向の全域にわたって、第2ドライブシャフト52を連結するためのスプラインが形成されている。
【0026】
中間軸53は、差動歯車装置4によって分配された回転電機2からの駆動力を第1ドライブシャフト51に伝達する軸部材である。中間軸53は、回転電機2のロータ軸27の径方向内側を軸方向Lに貫通している。中間軸53における軸方向第2側L2の端部の外周面には、周方向の全域にわたって、差動歯車装置4の第1サイドギヤB41に連結するためのスプラインが形成されている。当該スプラインと第1サイドギヤB41の内周面のスプラインとが係合することにより、中間軸53と第1サイドギヤB41とが一体的に回転するように連結されている。中間軸53の軸方向第1側L1の端部には、第1ドライブシャフト51を連結するための連結部53aが形成されている。
【0027】
連結部53aは、ケース本体11の内部空間における回転電機2よりも軸方向第1側L1の部分から底部カバー13の内部空間にかけて延在している。連結部53aは、中間軸53における連結部53a以外の部分と同軸の円筒状に形成されている。連結部53aは、中間軸53における連結部53a以外の部分の外径よりも大きい外径を有している。連結部53aは、第1出力軸受64を介して回転可能にケース1の底部カバー13に支持されていると共に、第2出力軸受65を介して回転可能にケース本体11の底部11aに支持されている。連結部53aにおける軸方向第2側L2の部分の内周面には、周方向の全域にわたって、第1ドライブシャフト51を連結するためのスプラインが形成されている。
【0028】
第1ドライブシャフト51は、第1車輪501に駆動連結され、「第1出力部材」として機能する。第2ドライブシャフト52は、第2車輪502に駆動連結され、「第2出力部材」として機能する。なお、本実施形態においては、中間軸53の軸方向第1側L1の端部に連結部53aが設けられ、第1ドライブシャフト51と中間軸53の連結部53aとがスプラインによって連結されている。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、中間軸53の軸方向第1側L1の端部に、連結部53aの代わりにフランジヨークが設けられ、当該フランジヨークと第1ドライブシャフト51とがボルトによって締結された構成であっても良い。
【0029】
本実施形態においては、車両用駆動装置100は、支持部材9をさらに備えている。以下では、図3を参照して、支持部材9の構成について詳細に説明する。
【0030】
図3に示すように、支持部材9は、ケース1の内部に設けられ、軸方向Lにおける回転電機2と差動歯車装置4との間に配置されている。支持部材9は、車両用駆動装置100におけるケース1や減速装置3を構成する各部材と一体的に形成されたものではなく、それらの部材とは別部材として構成されている。支持部材9は、第1支持材91と第2支持材92とを含んでいる。
【0031】
第1支持材91は、ケース連結部91aと、第1接続部91bと、第1ギヤ支持部91cと、第1突出壁部91dと、軸支持部91eとを有する。
【0032】
ケース連結部91aは、ケース1のケース本体11に連結されている。ケース連結部91aは、ケース1のケース本体11と面接触した状態でケース1に支持されている。ケース連結部91aとケース本体11との接触面は、軸方向Lに直交する方向に沿っている。具体的には、ケース連結部91aにおけるケース本体11に対向する部分に、軸方向Lに直交する方向に沿って延在する連結部接触面91asが形成され、ケース本体11におけるケース連結部91aに対向する部分に、軸方向Lに直交する方向に沿って延在する第1ケース接触面11saが形成されている。そして、ケース連結部91aの連結部接触面91asとケース本体11の第1ケース接触面11saとが互いに接触している。ここでは、「軸方向Lに直交する方向」は、径方向R及び周方向である。
【0033】
本実施形態では、ケース連結部91aは、第1ボルト93によってケース本体11と連結されている。第1ボルト93は、ケース連結部91aを軸方向Lに貫通した状態でケース本体11に螺合される。第1ボルト93は、円筒状の第1ピン94を通るように配置されている。第1ピン94は、ケース本体11に対してケース連結部91aを連結する際の位置決めに利用される。
【0034】
第1ピン94は、第1ボルト93によってケース連結部91aとケース本体11とが連結された状態で、それらの境界部から軸方向Lに延在するように形成されている。ケース本体11のボルト孔には、第1ピン94が圧入される第1圧入溝94aが形成され、ケース連結部91aのボルト孔には、第1ピン94が挿入される第1挿入溝94bが形成されている。第1圧入溝94aは、第1ケース接触面11saから軸方向Lに沿って形成されている。第1圧入溝94aの内径は、第1ピン94の外径と同一又はそれよりも小さい。第1挿入溝94bは、連結部接触面91asから軸方向Lに沿って形成されている。第1挿入溝94bの内径は、第1ピン94の外径よりも大きい。そのため、第1ピン94が第1挿入溝94bに挿入された状態では、ケース本体11に対するケース連結部91aの周方向の振動は許容される。よって、第1ピン94の存在に関わらず、第1支持材91に支持された第1リングギヤR31に発生する周方向の振動が、第1ケース接触面11saと連結部接触面91asとの間に生じる周方向の摩擦により減衰される。
【0035】
本実施形態では、ケース連結部91aは、第1支持材91の径方向外側R1の端部に形成されている。ケース連結部91aは、第1支持材91の周方向の1箇所又は複数個所に形成されている。
【0036】
第1接続部91bは、第2支持材92と連結されている。本実施形態では、第1接続部91bは、ケース連結部91aよりも径方向内側R2に形成されている。第1接続部91bは、周方向に連続的又は断続的に形成されている。
【0037】
第1ギヤ支持部91cは、減速装置3における第1遊星歯車機構31の第1リングギヤR31に連結されており、第1リングギヤR31を周方向へ回転不能に支持している。ここでは、第1ギヤ支持部91cは、スプライン嵌合により第1リングギヤR31に対して径方向外側R1から連結している。本実施形態では、第1ギヤ支持部91cは、第1接続部91bよりも径方向内側R2に形成されている。第1ギヤ支持部91cは、第1支持材91の周方向の全域にわたって連続的に形成されている。
【0038】
第1突出壁部91dは、第1ギヤ支持部91cよりも径方向内側R2に突出すると共に、周方向に連続的に形成されている。このように、第1突出壁部91dはフランジ状に形成されている。第1突出壁部91dは、回転電機2と減速装置3の第1遊星歯車機構31との間において、第1ギヤ支持部91cから軸支持部91eにかけて形成されている。
【0039】
また、本実施形態では、第1突出壁部91dには、回転位置センサ7の構成要素である第1検出体71が設けられている。回転位置センサ7は、第1検出体71と第2検出体72とを有するレゾルバにて構成されている。第1検出体71は、第1突出壁部91dにおける軸方向第1側L1であって、回転電機2のステータコイル26よりも径方向内側R2に位置する部分に配置されている。第2検出体72は、回転電機2におけるロータ軸27の第2被支持部27bの外周面に設けられ、第1検出体71と軸方向Lの位置を合わせて配置されている。例えば、回転位置センサ7は、第1検出体71に備えたコイルに交流電流を通したときの第1検出体71に対する第2検出体72の相対角度に応じた交流電圧の位相を検出して、ロータ軸27の回転位置を検出する。回転位置センサ7は、レゾルバに限らず、例えば、ホール素子センサ、エンコーダ、磁気式回転センサ等の各種センサにより構成することができる。
【0040】
軸支持部91eは、第2ロータ軸受62を介して、回転電機2におけるロータ軸27の第2被支持部27bを回転可能に支持している。本実施形態では、軸支持部91eは、第1支持材91の径方向内側R2の端部に形成されている。軸支持部91eは、第1支持材91の周方向の全域にわたって連続的に形成されている。
【0041】
第2支持材92は、第2接続部92aと、第2ギヤ支持部92bと、第2突出壁部92cと、キャリヤ支持部92dとを有する。
【0042】
第2接続部92aは、第1支持材91の第1接続部91bと面接触した状態で第1支持材91に支持されている。第2接続部92aと第1接続部91bとの接触面は、軸方向Lに直交する方向に沿っている。具体的には、第2接続部92aにおける第1接続部91bに対向する部分に、軸方向Lに直交する方向に沿って延在する第2接続部接触面92asが形成され、第1接続部91bにおける第2接続部92aに対向する部分に、軸方向Lに直交する方向に沿って延在する第1接続部接触面91bsが形成されている。そして、第2接続部接触面92asと第1接続部接触面91bsとが互いに接触している。
【0043】
第2接続部92aは、第1支持材91の第1接続部91bと連結されている。第2接続部92aは、周方向に連続的又は断続的に形成されている。本実施形態では、第2接続部92aは、周方向の1箇所又は複数個所において第1接続部91bと第2ボルト95によって連結されている。第2ボルト95は、第2接続部92aを軸方向Lに貫通した状態で第1接続部91bに螺合される。第2ボルト95は、円筒状の第2ピン96を通るように配置されている。第2ピン96は、第1接続部91bに対して第2接続部92aを連結する際の位置決めに利用される。
【0044】
第2ピン96は、第2ボルト95によって第1接続部91bと第2接続部92aとが連結された状態で、それらの境界部から軸方向Lに延在するように形成されている。第1接続部91bのボルト孔には、第2ピン96が圧入される第2圧入溝96aが形成され、第2接続部92aのボルト孔には、第2ピン96が挿入される第2挿入溝96bが形成されている。第2圧入溝96aは、第1接続部接触面91bsから軸方向Lに沿って形成されている。第2圧入溝96aの内径は、第2ピン96の外径と同一又はそれよりも小さい。第2挿入溝96bは、第2接続部接触面92asから軸方向Lに沿って形成されている。第2挿入溝96bの内径は、第2ピン96の外径よりも大きい。そのため、第2ピン96が第2挿入溝96bに挿入された状態では、第1接続部91bに対する第2接続部92aの周方向の振動は許容される。よって、第2ピン96の存在に関わらず、第2支持材92に支持された第2リングギヤR32に発生する周方向の振動が、第1接続部接触面91bsと第2接続部接触面92asとの間に生じる周方向の摩擦により減衰される。
【0045】
第2ギヤ支持部92bは、減速装置3における第2遊星歯車機構32の第2リングギヤR32に連結されており、第2リングギヤR32を周方向へ回転不能に支持している。ここでは、第2ギヤ支持部92bは、スプライン嵌合により第2リングギヤR32に対して径方向外側R1から連結している。本実施形態では、第2ギヤ支持部92bは、第2接続部92aよりも径方向内側R2かつ軸方向第2側L2に形成されている。第2ギヤ支持部92bは、第2支持材92の周方向の全域にわたって連続的に形成されている。
【0046】
第2突出壁部92cは、第2ギヤ支持部92bよりも径方向内側R2に突出すると共に、周方向に連続的に形成されている。このように、第1突出壁部91dはフランジ状に形成されている。第2突出壁部92cは、減速装置3の第1遊星歯車機構31と第2遊星歯車機構32との間において、第2ギヤ支持部92bからキャリヤ支持部92dにかけて形成されている。
【0047】
キャリヤ支持部92dは、当該キャリヤ支持部92dに支持されたキャリヤ軸受66を介して、減速装置3における第2遊星歯車機構32の第2キャリヤC32を回転可能に支持している。詳細には、第2キャリヤC32は、減速装置3の第1遊星歯車機構31と第2遊星歯車機構32との間において、軸方向第1側L1に突出する被支持部C32aを有しており、被支持部C32aがキャリヤ軸受66を介して、キャリヤ支持部92dに回転可能に支持されている。前述のように、第2キャリヤC32は差動ケースD4と一体化されている。そのため、キャリヤ支持部92dは、キャリヤ軸受66を介して第2キャリヤC32を回転可能に支持することで、差動ケースD4も回転可能に支持することになる。つまり、キャリヤ支持部92dは、キャリヤ軸受66を介して、第2キャリヤC32及び差動ケースD4を回転可能に支持している。本実施形態では、キャリヤ支持部92dは、第2支持材92の径方向内側R2の端部に形成されている。キャリヤ支持部92dは、第2支持材92の周方向の全域にわたって連続的に形成されている。
【0048】
以上のように、第1の実施形態に係る支持部材9は、第1支持材91と第2支持材92とを含んでいる。第1支持材91は、ケース連結部91aにおいてケース1のケース本体11と連結されている。前述のように、「連結」は、2つの部材の分子的な結合を含まないため、第1支持材91はケース1とは別部材である。第1支持材91は、第1ギヤ支持部91cにおいて第1リングギヤR31に連結されると共に第1リングギヤR31を回転不能に支持している。同様に、「連結」は、2つの部材の分子的な結合を含まないため、第1支持材91は第1リングギヤR31とは別部材である。第1支持材91は、軸支持部91eにおいてロータ軸27を回転可能に支持している。さらに、第1支持材91は、第1ギヤ支持部91cよりも径方向内側R2に突出すると共に周方向に連続的に形成された第1突出壁部91dを有している。
【0049】
また、第2支持材92は、第2ギヤ支持部92bにおいて第2リングギヤR32に連結されると共に第2リングギヤR32を回転不能に支持している。前述のように、「連結」は、2つの部材の分子的な結合を含まないため、第2支持材92は第2リングギヤR32とは別部材である。第2支持材92は、キャリヤ支持部92dにおいて第2キャリヤC32を回転可能に支持している。さらに、第2支持材92は、第2ギヤ支持部92bよりも径方向内側R2に突出すると共に周方向に連続的に形成された第2突出壁部92cを有している。
【0050】
また、第1支持材91と第2支持材92とが、それぞれ、第1接続部91bと第2接続部92aとにおいて連結されている。前述のように、「連結」は、2つの部材の分子的な結合を含まないため、第1支持材91は第2支持材92とは別部材である。
【0051】
2.第2の実施形態
以下では、車両用駆動装置の第2の実施形態について、図4を用いて説明する。本実施形態は、第1の実施形態における支持部材9とは異なる支持部材109が設けられている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
【0052】
図4に示すように、支持部材109は、ケース1の内部に設けられ、軸方向Lにおける回転電機2と差動歯車装置4との間に配置されている。支持部材109は、車両用駆動装置100におけるケース1や減速装置3を構成する各部材と一体的に形成されたものではなく、それらの部材とは別部材として構成されている。支持部材109は、第1支持材191と第2支持材192とを含んでいる。
【0053】
第1支持材191は、第1ケース連結部191aと、第1ギヤ支持部191bと、第1突出壁部191cと、軸支持部191dとを有する。
【0054】
第1ケース連結部191aは、ケース1のケース本体11に連結されている。第1ケース連結部191aは、ケース1のケース本体11と面接触した状態でケース1に支持されている。第1ケース連結部191aとケース本体11との接触面は、軸方向Lに直交する方向に沿っている。具体的には、第1ケース連結部191aにおけるケース本体11に対向する部分に、軸方向Lに直交する方向に沿って延在する第1連結部接触面191asが形成されており、第1ケース連結部191aの第1連結部接触面191asとケース本体11の第1ケース接触面11saとが互いに接触している。
【0055】
本実施形態では、第1ケース連結部191aは、第1ボルト193によってケース本体11と連結されている。第1ボルト193は、第1ケース連結部191aを軸方向Lに貫通した状態でケース本体11に螺合される。第1ボルト193は、円筒状の第1ピン194を通るように配置されている。第1ピン194は、ケース本体11に対して第1ケース連結部191aを連結する際の位置決めに利用される。
【0056】
第1ピン194は、第1ボルト193によって第1ケース連結部191aとケース本体11とが連結された状態で、それらの境界部から軸方向Lに延在するように形成されている。ケース本体11のボルト孔には、第1ピン194が圧入される第1圧入溝194aが形成され、第1ケース連結部191aのボルト孔には、第1ピン194が挿入される第1挿入溝194bが形成されている。第1圧入溝194aは、第1ケース接触面11saから軸方向Lに沿って形成されている。第1圧入溝194aの内径は、第1ピン194の外径と同一又はそれよりも小さい。第1挿入溝194bは、第1連結部接触面191asから軸方向Lに沿って形成されている。第1挿入溝194bの内径は、第1ピン194の外径よりも大きい。そのため、第1ピン194が第1挿入溝194bに挿入された状態では、ケース本体11に対する第1ケース連結部191aの周方向の振動は許容される。よって、第1ピン194の存在に関わらず、第1支持材191に支持された第1リングギヤR31に発生する周方向の振動が、第1ケース接触面11saと第1連結部接触面191asとの間に生じる周方向の摩擦により減衰される。
【0057】
本実施形態では、第1ケース連結部191aは、第1支持材191の径方向外側R1の端部に形成されている。第1ケース連結部191aは、第1支持材191の周方向の1箇所又は複数個所に形成されている。
【0058】
第1ギヤ支持部191bは、減速装置3における第1遊星歯車機構31の第1リングギヤR31に連結されており、第1リングギヤR31を周方向へ回転不能に支持している。ここでは、第1ギヤ支持部191bは、スプライン嵌合により第1リングギヤR31に対して径方向外側R1から連結している。本実施形態では、第1ギヤ支持部191bは、第1ケース連結部191aよりも径方向内側R2に形成されている。第1ギヤ支持部191bは、第1支持材191の周方向の全域にわたって連続的に形成されている。
【0059】
第1突出壁部191cは、第1ギヤ支持部191bよりも径方向内側R2に突出すると共に、周方向に連続的に形成されている。このように、第1突出壁部191cはフランジ状に形成されている。第1突出壁部191cは、回転電機2と減速装置3の第1遊星歯車機構31との間において、第1ギヤ支持部191bから軸支持部191dにかけて形成されている。また、第1突出壁部191cには、回転位置センサ7の第1検出体71が設けられている。
【0060】
軸支持部191dは、第2ロータ軸受62を介して、回転電機2におけるロータ軸27の第2被支持部27bを回転可能に支持している。本実施形態では、軸支持部191dは、第1支持材191の径方向内側R2の端部に形成されている。軸支持部191dは、第1支持材191の周方向の全域にわたって連続的に形成されている。
【0061】
第2支持材192は、第2ケース連結部192aと、第2ギヤ支持部192bと、第2突出壁部192cと、キャリヤ支持部192dとを有する。
【0062】
第2ケース連結部192aは、ケース1のケース本体11に連結されている。第2ケース連結部192aは、ケース1のケース本体11と面接触した状態でケース1に支持されている。第2ケース連結部192aとケース本体11との接触面は、軸方向Lに直交する方向に沿っている。具体的には、第2ケース連結部192aにおけるケース本体11に対向する部分に、軸方向Lに直交する方向に沿って延在する第2連結部接触面192asが形成され、ケース本体11における第2ケース連結部192aに対向する部分に、軸方向Lに直交する方向に沿って延在する第2ケース接触面11sbが形成されている。そして、第2ケース連結部192aの第2連結部接触面192asとケース本体11の第2ケース接触面11sbとが互いに接触している。
【0063】
本実施形態では、第2ケース連結部192aは、第2ボルト195によってケース本体11と連結されている。第2ボルト195は、第2ケース連結部192aを軸方向Lに貫通した状態でケース本体11に螺合される。第2ボルト195は、円筒状の第2ピン196を通るように配置されている。第2ピン196は、ケース本体11に対して第2ケース連結部192aを連結する際の位置決めに利用される。
【0064】
第2ピン196は、第2ボルト195によって第2ケース連結部192aとケース本体11とが連結された状態で、それらの境界部から軸方向Lに延在するように形成されている。ケース本体11のボルト孔には、第2ピン196が圧入される第2圧入溝196aが形成され、第2ケース連結部192aのボルト孔には、第2ピン196が挿入される第2挿入溝196bが形成されている。第2圧入溝196aは、第2ケース接触面11sbから軸方向Lに沿って形成されている。第2圧入溝196aの内径は、第2ピン196の外径と同一又はそれよりも小さい。第2挿入溝196bは、第2連結部接触面192asから軸方向Lに沿って形成されている。第2挿入溝196bの内径は、第2ピン196の外径よりも大きい。そのため、第2ピン196が第2挿入溝196bに挿入された状態では、ケース本体11に対する第2ケース連結部192aの周方向の振動は許容される。よって、第2ピン196の存在に関わらず、第2支持材192に支持された第2リングギヤR32に発生する周方向の振動が、第2ケース接触面11sbと第2連結部接触面192asとの間に生じる周方向の摩擦により減衰される。
【0065】
第2支持材192の第2ケース連結部192aがケース本体11と連結される箇所は、第1支持材191の第1ケース連結部191aがケース本体11と連結される箇所とは軸方向Lの位置が異なる。また、第2支持材192の第2ケース連結部192aがケース本体11と連結される箇所は、第1支持材191の第1ケース連結部191aがケース本体11と連結される箇所とは周方向の位置も異なる。本実施形態では、第2ケース連結部192aは、第2支持材192の径方向外側R1の端部に形成されている。第2ケース連結部192aは、第2支持材192の周方向の1箇所又は複数個所に形成されている。
【0066】
第2ギヤ支持部192bは、減速装置3における第2遊星歯車機構32の第2リングギヤR32に連結されており、第2リングギヤR32を周方向へ回転不能に支持している。ここでは、第2ギヤ支持部192bは、スプライン嵌合により第2リングギヤR32に対して径方向外側R1から連結している。本実施形態では、第2ギヤ支持部192bは、第2ケース連結部192aよりも径方向内側R2かつ軸方向第2側L2に形成されている。第2ギヤ支持部192bは、第2支持材192の周方向の全域にわたって連続的に形成されている。
【0067】
第2突出壁部192cは、第2ギヤ支持部192bよりも径方向内側R2に突出すると共に、周方向に連続的に形成されている。このように、第2突出壁部192cはフランジ状に形成されている。第2突出壁部192cは、減速装置3の第1遊星歯車機構31と第2遊星歯車機構32との間において、第2ギヤ支持部192bからキャリヤ支持部192dにかけて形成されている。
【0068】
キャリヤ支持部192dは、キャリヤ軸受66を介して、減速装置3における第2遊星歯車機構32の第2キャリヤC32の被支持部C32aを回転可能に支持している。本実施形態では、キャリヤ支持部192dは、第2支持材192の径方向内側R2の端部に形成されている。キャリヤ支持部192dは、第2支持材192の周方向の全域にわたって連続的に形成されている。
【0069】
以上のように、第2の実施形態に係る支持部材109は、第1支持材191と第2支持材192とを含んでいる。第1支持材191は、第1ケース連結部191aにおいてケース1のケース本体11と連結されている。前述のように、「連結」は、2つの部材の分子的な結合を含まないため、第1支持材191はケース1とは別部材である。第1支持材191は、第1ギヤ支持部191bにおいて第1リングギヤR31に連結されると共に第1リングギヤR31を回転不能に支持している。同様に、「連結」は、2つの部材の分子的な結合を含まないため、第1支持材191は第1リングギヤR31とは別部材である。第1支持材191は、軸支持部191dにおいてロータ軸27を回転可能に支持している。さらに、第1支持材191は、第1ギヤ支持部191bよりも径方向内側R2に突出すると共に周方向に連続的に形成された第1突出壁部191cを有している。
【0070】
また、第2支持材192は、第2ケース連結部192aにおいてケース1のケース本体11と連結されている。前述のように、「連結」は、2つの部材の分子的な結合を含まないため、第2支持材192はケース1とは別部材である。第2支持材192は、第2ギヤ支持部192bにおいて第2リングギヤR32に連結されると共に第2リングギヤR32を回転不能に支持している。同様に、「連結」は、2つの部材の分子的な結合を含まないため、第2支持材192は第2リングギヤR32とは別部材である。第2支持材192は、キャリヤ支持部192dにおいて第2キャリヤC32を回転可能に支持している。さらに、第2支持材192は、第2ギヤ支持部192bよりも径方向内側R2に突出すると共に周方向に連続的に形成された第2突出壁部192cを有している。
【0071】
3.第3の実施形態
以下では、車両用駆動装置の第3の実施形態について、図5を用いて説明する。本実施形態では、第1及び第2の実施形態における支持部材9,109とは異なる支持部材209が設けられている。以下では、上記の各実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
【0072】
図5に示すように、支持部材209は、ケース1の内部に設けられ、軸方向Lにおける回転電機2と差動歯車装置4との間に配置されている。支持部材209は、車両用駆動装置100におけるケース1や減速装置3を構成する各部材と一体的に形成されたものではなく、それらの部材とは別部材として構成されている。支持部材209は、第1支持材291と第2支持材292とを含んでいる。本実施形態では、第1支持材291と第2支持材292とが、ケース1の互いに異なる部材に連結されている点で、上記第2の実施形態と相違している。具体的には、本実施形態では、第1支持材291がケース1のケース本体11に連結され、第2支持材292がケース1の本体カバー12に連結されている。
【0073】
第1支持材291は、第1ケース連結部291aと、第1ギヤ支持部291bと、第1突出壁部291cと、軸支持部291dとを有する。
【0074】
第1ケース連結部291aは、ケース1のケース本体11に連結されている。第1ケース連結部291aは、ケース1のケース本体11と面接触した状態でケース1に支持されている。第1ケース連結部291aとケース本体11との接触面は、軸方向Lに直交する方向に沿っている。具体的には、第1ケース連結部291aにおけるケース本体11に対向する部分に、軸方向Lに直交する方向に沿って延在する第1連結部接触面291asが形成されており、第1ケース連結部291aの第1連結部接触面291asとケース本体11の第1ケース接触面11saとが互いに接触している。
【0075】
本実施形態では、第1ケース連結部291aは、第1ボルト293によってケース本体11と連結されている。第1ボルト293は、第1ケース連結部291aを軸方向Lに貫通した状態でケース本体11に螺合される。第1ボルト293は、円筒状の第1ピン294を通るように配置されている。第1ピン294は、ケース本体11に対して第1ケース連結部291aを連結する際の位置決めに利用される。
【0076】
第1ピン294は、第1ボルト293によって第1ケース連結部291aとケース本体11とが連結された状態で、それらの境界部から軸方向Lに延在するように形成されている。ケース本体11のボルト孔には、第1ピン294が圧入される第1圧入溝294aが形成され、第1ケース連結部291aのボルト孔には、第1ピン294が挿入される第1挿入溝294bが形成されている。第1圧入溝294aは、第1ケース接触面11saから軸方向Lに沿って形成されている。第1圧入溝294aの内径は、第1ピン294の外径と同一又はそれよりも小さい。第1挿入溝294bは、第1連結部接触面291asから軸方向Lに沿って形成されている。第1挿入溝294bの内径は、第1ピン294の外径よりも大きい。そのため、第1ピン294が第1挿入溝294bに挿入された状態では、ケース本体11に対する第1ケース連結部291aの周方向の振動は許容される。よって、第1ピン294の存在に関わらず、第1支持材291に支持された第1リングギヤR31に発生する周方向の振動が、第1ケース接触面11saと第1連結部接触面291asとの間に生じる周方向の摩擦により減衰される。
【0077】
本実施形態では、第1ケース連結部291aは、第1支持材291の径方向外側R1の端部に形成されている。第1ケース連結部291aは、第1支持材291の周方向の1箇所又は複数個所に形成されている。
【0078】
第1ギヤ支持部291bは、減速装置3における第1遊星歯車機構31の第1リングギヤR31に連結されており、第1リングギヤR31を周方向へ回転不能に支持している。ここでは、第1ギヤ支持部291bは、スプライン嵌合により第1リングギヤR31に対して径方向外側R1から連結している。本実施形態では、第1ギヤ支持部291bは、第1ケース連結部291aよりも径方向内側R2に形成されている。第1ギヤ支持部291bは、第1支持材291の周方向の全域にわたって連続的に形成されている。
【0079】
第1突出壁部291cは、第1ギヤ支持部291bよりも径方向内側R2に突出すると共に、周方向に連続的に形成されている。このように、第1突出壁部291cはフランジ状に形成されている。第1突出壁部291cは、回転電機2と減速装置3の第1遊星歯車機構31との間において、第1ギヤ支持部291bから軸支持部291dにかけて形成されている。また、第1突出壁部291cには、回転位置センサ7の第1検出体71が設けられている。
【0080】
軸支持部291dは、第2ロータ軸受62を介して、回転電機2におけるロータ軸27の第2被支持部27bを回転可能に支持している。本実施形態では、軸支持部291dは、第1支持材291の径方向内側R2の端部に形成されている。軸支持部291dは、第1支持材291の周方向の全域にわたって連続的に形成されている。
【0081】
第2支持材292は、第2ケース連結部292aと、第2ギヤ支持部292bと、第2突出壁部292cと、キャリヤ支持部292dとを有する。
【0082】
第2ケース連結部292aは、ケース1の本体カバー12に連結されている。第2ケース連結部292aは、ケース1の本体カバー12と面接触した状態でケース1に支持されている。第2ケース連結部292aと本体カバー12との接触面は、軸方向Lに直交する方向に沿っている。具体的には、第2ケース連結部292aにおける本体カバー12に対向する部分に、軸方向Lに直交する方向に沿って延在する第2連結部接触面292asが形成され、本体カバー12における第2ケース連結部292aに対向する部分に、軸方向Lに直交する方向に沿って延在する第3ケース接触面12sが形成されている。そして、第2ケース連結部292aの第2連結部接触面292asと本体カバー12の第3ケース接触面12sとが互いに接触している。
【0083】
本実施形態では、第2ケース連結部292aは、第2ボルト295によって本体カバー12と連結されている。第2ボルト295は、第2ケース連結部292aを軸方向Lに貫通した状態で本体カバー12に螺合される。第2ボルト295は、円筒状の第2ピン296を通るように配置されている。第2ピン296は、本体カバー12に対して第2ケース連結部292aを連結する際の位置決めに利用される。
【0084】
第2ピン296は、第2ボルト295によって第2ケース連結部292aと本体カバー12とが連結された状態で、それらの境界部から軸方向Lに延在するように形成されている。第2ケース連結部292aのボルト孔には、第2ピン296が挿入される第2挿入溝296aが形成され、本体カバー12のボルト孔には、第2ピン296が圧入される第2圧入溝296bが形成されている。第2圧入溝296bは、第3ケース接触面12sから軸方向Lに沿って形成されている。第2圧入溝296bの内径は、第2ピン296の外径と同一又はそれよりも小さい。第2挿入溝296aは、第2連結部接触面292asから軸方向Lに沿って形成されている。第2挿入溝296aの内径は、第2ピン296の外径よりも大きい。そのため、第2ピン296が第2挿入溝296aに挿入された状態では、本体カバー12に対する第2ケース連結部292aの周方向の振動は許容される。よって、第2ピン296の存在に関わらず、第2支持材292に支持された第2リングギヤR32に発生する周方向の振動が、第3ケース接触面12sと第2連結部接触面292asとの間に生じる周方向の摩擦により減衰される。
【0085】
本実施形態では、第2ケース連結部292aは、第2支持材292の径方向外側R1の端部に形成されている。第2ケース連結部292aは、第2支持材292の周方向の1箇所又は複数個所に形成されている。
【0086】
第2ギヤ支持部292bは、減速装置3における第2遊星歯車機構32の第2リングギヤR32に連結されており、第2リングギヤR32を周方向へ回転不能に支持している。ここでは、第2ギヤ支持部292bは、スプライン嵌合により第2リングギヤR32に対して径方向外側R1から連結している。本実施形態では、第2ギヤ支持部292bは、第2ケース連結部292aよりも径方向内側R2かつ軸方向第2側L2に形成されている。第2ギヤ支持部292bは、第2支持材292の周方向の全域にわたって連続的に形成されている。
【0087】
第2突出壁部292cは、第2ギヤ支持部292bよりも径方向内側R2に突出すると共に、周方向に連続的に形成されている。このように、第2突出壁部292cはフランジ状に形成されている。第2突出壁部292cは、減速装置3の第1遊星歯車機構31と第2遊星歯車機構32との間において、第2ギヤ支持部292bからキャリヤ支持部292dにかけて形成されている。
【0088】
キャリヤ支持部292dは、キャリヤ軸受66を介して、減速装置3における第2遊星歯車機構32の第2キャリヤC32の被支持部C32aを回転可能に支持している。本実施形態では、キャリヤ支持部292dは、第2支持材292の径方向内側R2の端部に形成されている。キャリヤ支持部292dは、第2支持材292の周方向の全域にわたって連続的に形成されている。
【0089】
以上のように、第3の実施形態に係る支持部材209は、第1支持材291と第2支持材292とを含んでいる。第1支持材291は、第1ケース連結部291aにおいてケース1のケース本体11と連結されている。前述のように、「連結」は、2つの部材の分子的な結合を含まないため、第1支持材291はケース1とは別部材である。第1支持材291は、第1ギヤ支持部291bにおいて第1リングギヤR31に連結されると共に第1リングギヤR31を回転不能に支持している。同様に、「連結」は、2つの部材の分子的な結合を含まないため、第1支持材291は第1リングギヤR31とは別部材である。第1支持材291は、軸支持部291dにおいてロータ軸27を回転可能に支持している。さらに、第1支持材291は、第1ギヤ支持部291bよりも径方向内側R2に突出すると共に周方向に連続的に形成された第1突出壁部291cを有している。
【0090】
また、第2支持材292は、第2ケース連結部292aにおいてケース1の本体カバー12と連結されている。前述のように、「連結」は、2つの部材の分子的な結合を含まないため、第2支持材292はケース1とは別部材である。第2支持材292は、第2ギヤ支持部292bにおいて第2リングギヤR32に連結されると共に第2リングギヤR32を回転不能に支持している。同様に、「連結」は、2つの部材の分子的な結合を含まないため、第2支持材292は第2リングギヤR32とは別部材である。第2支持材292は、キャリヤ支持部292dにおいて第2キャリヤC32を回転可能に支持している。さらに、第2支持材292は、第2ギヤ支持部292bよりも径方向内側R2に突出すると共に周方向に連続的に形成された第2突出壁部292cを有している。
【0091】
4.第4の実施形態
以下では、車両用駆動装置の第4の実施形態について、図6を用いて説明する。本実施形態は、第1から第3の実施形態における支持部材9,109,209とは異なる支持部材309が設けられている。以下では、上記の各実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
【0092】
図6に示すように、支持部材309は、ケース1の内部に設けられ、軸方向Lにおける回転電機2と差動歯車装置4との間に配置されている。支持部材309は、車両用駆動装置100におけるケース1や減速装置3を構成する各部材と一体的に形成されたものではなく、それらの部材とは別部材として構成されている。支持部材309は、第1支持材391と第2支持材392とを含んでいる。本実施形態では、第1支持材291が減速装置3のリングギヤR31,R32を支持せず、第2支持材292のみがリングギヤR31,R32を支持する点で、上記第1から第3の実施形態と相違している。
【0093】
第1支持材391は、第1ケース連結部391aと、軸支持部391bとを有する。
【0094】
第1ケース連結部391aは、ケース1のケース本体11に連結されている。第1ケース連結部391aは、ケース1のケース本体11と面接触した状態でケース1に支持されている。第1ケース連結部391aとケース本体11との接触面は、軸方向Lに直交する方向に沿っている。具体的には、第1ケース連結部391aにおけるケース本体11に対向する部分に、軸方向Lに直交する方向に沿って延在する第1連結部接触面391asが形成されており、第1ケース連結部391aの第1連結部接触面391asとケース本体11の第1ケース接触面11saとが互いに接触している。
【0095】
本実施形態では、第1ケース連結部391aは、第1ボルト393によってケース本体11と連結されている。第1ボルト393は、第1ケース連結部391aを軸方向Lに貫通した状態でケース本体11に螺合される。第1ボルト393は、円筒状の第1ピン394を通るように配置されている。第1ピン394は、ケース本体11に対して第1ケース連結部391aを連結する際の位置決めに利用される。
【0096】
第1ピン394は、第1ボルト393によって第1ケース連結部391aとケース本体11とが連結された状態で、それらの境界部から軸方向Lに延在するように形成されている。ケース本体11のボルト孔には、第1ピン394が圧入される第1圧入溝394aが形成され、第1ケース連結部391aのボルト孔には、第1ピン394が挿入される第1挿入溝394bが形成されている。第1圧入溝394aは、第1ケース接触面11saから軸方向Lに沿って形成されている。第1圧入溝394aの内径は、第1ピン394の外径と同一又はそれよりも小さい。第1挿入溝394bは、第1連結部接触面391asから軸方向Lに沿って形成されている。第1挿入溝394bの内径は、第1ピン394の外径よりも大きい。そのため、第1ピン394が第1挿入溝394bに挿入された状態では、ケース本体11に対する第1ケース連結部391aの周方向の振動は許容される。よって、第1ピン394の存在に関わらず、第1支持材391に支持された第1リングギヤR31に発生する周方向の振動が、第1ケース接触面11saと第1連結部接触面391asとの間に生じる周方向の摩擦により減衰される。
【0097】
本実施形態では、第1ケース連結部391aは、第1支持材391の径方向外側R1の端部に形成されている。第1ケース連結部391aは、第1支持材391の周方向の1箇所又は複数個所に形成されている。
【0098】
軸支持部391bは、第2ロータ軸受62を介して、回転電機2におけるロータ軸27の第2被支持部27bを回転可能に支持している。本実施形態では、軸支持部391bは、第1支持材391の径方向内側R2の端部に形成されている。軸支持部391bは、第1支持材391の周方向の全域にわたって連続的に形成されている。
【0099】
第2支持材392は、第2ケース連結部392aと、第1ギヤ支持部392bと、第2ギヤ支持部392cと、突出壁部392dと、キャリヤ支持部392eとを有する。
【0100】
第2ケース連結部392aは、ケース1のケース本体11に連結されている。第2ケース連結部392aは、ケース1のケース本体11と面接触した状態でケース1に支持されている。第2ケース連結部392aとケース本体11との接触面は、軸方向Lに直交する方向に沿っている。具体的には、第2ケース連結部392aにおけるケース本体11に対向する部分に、軸方向Lに直交する方向に沿って延在する第2連結部接触面392asが形成されており、第2ケース連結部392aの第2連結部接触面392asとケース本体11の第2ケース接触面11sbとが互いに接触している。
【0101】
本実施形態では、第2ケース連結部392aは、第2ボルト395によってケース本体11と連結されている。第2ボルト395は、第2ケース連結部392aを軸方向Lに貫通した状態でケース本体11に螺合される。第2ボルト395は、円筒状の第2ピン396を通るように配置されている。第2ピン396は、ケース本体11に対して第2ケース連結部392aを連結する際の位置決めに利用される。
【0102】
第2ピン396は、第2ボルト395によって第2ケース連結部392aとケース本体11とが連結された状態で、それらの境界部から軸方向Lに延在するように形成されている。ケース本体11のボルト孔には、第2ピン396が圧入される第2圧入溝396aが形成され、第2ケース連結部392aのボルト孔には、第2ピン396が挿入される第2挿入溝396bが形成されている。第2圧入溝396aは、第2ケース接触面11sbから軸方向Lに沿って形成されている。第2圧入溝396aの内径は、第2ピン396の外径と同一又はそれよりも小さい。第2挿入溝396bは、第2連結部接触面392asから軸方向Lに沿って形成されている。第2挿入溝396bの内径は、第2ピン396の外径よりも大きい。そのため、第2ピン396が第2挿入溝396bに挿入された状態では、ケース本体11に対する第2ケース連結部392aの周方向の振動は許容される。よって、第2ピン396の存在に関わらず、第2支持材392に支持された第2リングギヤR32に発生する周方向の振動が、第2ケース接触面11sbと第2連結部接触面392asとの間に生じる周方向の摩擦により減衰される。
【0103】
第2支持材392の第2ケース連結部392aがケース本体11と連結される箇所は、第1支持材391の第1ケース連結部391aがケース本体11と連結される箇所とは軸方向Lの位置が異なる。また、第2支持材392の第2ケース連結部392aがケース本体11と連結される箇所は、第1支持材391の第1ケース連結部391aがケース本体11と連結される箇所とは周方向の位置も異なる。本実施形態では、第2ケース連結部392aは、第2支持材392の径方向外側R1の端部に形成されている。第2ケース連結部392aは、第2支持材392の周方向の1箇所又は複数個所に形成されている。
【0104】
第1ギヤ支持部392bは、減速装置3における第1遊星歯車機構31の第1リングギヤR31に連結されており、第1リングギヤR31を周方向へ回転不能に支持している。ここでは、第1ギヤ支持部392bは、スプライン嵌合により第1リングギヤR31に対して径方向外側R1において連結されている。本実施形態では、第1ギヤ支持部392bは、第2ケース連結部392aよりも径方向内側R2かつ軸方向第1側L1に形成されている。第1ギヤ支持部392bは、第2支持材392の周方向の全域にわたって連続的に形成されている。
【0105】
第2ギヤ支持部392cは、減速装置3における第2遊星歯車機構32の第2リングギヤR32に連結されており、第2リングギヤR32を周方向へ回転不能に支持している。ここでは、第2ギヤ支持部392cは、スプライン嵌合により第2リングギヤR32に対して径方向外側R1において連結されている。本実施形態では、第2ギヤ支持部392cは、第2ケース連結部392aよりも径方向内側R2かつ軸方向第2側L2に形成されている。第2ギヤ支持部392cは、第1ギヤ支持部392bよりも軸方向第2側L2において、第1ギヤ支持部392bと径方向Rの位置を合わせて形成されている。第2ギヤ支持部392cは、第1ギヤ支持部392bと一体的に形成されている。第2ギヤ支持部392cは、第2支持材392の周方向の全域にわたって連続的に形成されている。
【0106】
突出壁部392dは、第1ギヤ支持部392b及び第2ギヤ支持部392cよりも径方向内側R2に突出すると共に、周方向に連続的に形成されている。このように、突出壁部392dはフランジ状に形成されている。突出壁部392dは、減速装置3の第1遊星歯車機構31と第2遊星歯車機構32との間において、第1ギヤ支持部392bと第2ギヤ支持部392cとの接続部分からキャリヤ支持部392eにかけて形成されている。
【0107】
キャリヤ支持部392eは、キャリヤ軸受66を介して、減速装置3における第2遊星歯車機構32の第2キャリヤC32の被支持部C32aを回転可能に支持している。本実施形態では、キャリヤ支持部392eは、第2支持材392の径方向内側R2の端部に形成されている。キャリヤ支持部392eは、第2支持材392の周方向の全域にわたって連続的に形成されている。
【0108】
以上のように、第4の実施形態に係る支持部材309は、第1支持材391と第2支持材392とを含んでいる。第1支持材391は、第1ケース連結部391aにおいてケース1のケース本体11と連結されている。前述のように、「連結」は、2つの部材の分子的な結合を含まないため、第1支持材391はケース1とは別部材である。第1支持材391は、軸支持部391bにおいてロータ軸27を回転可能に支持している。
【0109】
また、第2支持材392は、第2ケース連結部392aにおいてケース1のケース本体11と連結されている。前述のように、「連結」は、2つの部材の分子的な結合を含まないため、第2支持材392はケース1とは別部材である。第2支持材392は、第1ギヤ支持部392bにおいて第1リングギヤR31に連結されると共に第1リングギヤR31を回転不能に支持している。さらに、第2支持材392は、第2ギヤ支持部392cにおいて第2リングギヤR32に連結されると共に第2リングギヤR32を回転不能に支持している。同様に、「連結」は、2つの部材の分子的な結合を含まないため、第2支持材192は第1リングギヤR31と第2リングギヤR32とは別部材である。第2支持材392は、キャリヤ支持部392eにおいて第2キャリヤC32を回転可能に支持している。さらに、第2支持材392は、第1ギヤ支持部392b及び第2ギヤ支持部392cよりも径方向内側R2に突出すると共に周方向に連続的に形成された突出壁部392dを有している。
【0110】
5.第5の実施形態
以下では、車両用駆動装置の第5の実施形態について、図7を用いて説明する。本実施形態は、上記第2の実施形態と略同様に構成されているが、ブリーザ機構8を備えている点で上記第2の実施形態とは異なる。以下では、上記第2の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第2の実施形態と同様とする。
【0111】
上記第1から第4の実施形態では説明を省略したが、図7に示すように、第1遊星歯車機構31は、第1ピニオンシャフトP31Aと、第1ピニオンギヤP31Bと、第1ピニオン軸受P31Cとを有している。また、第2遊星歯車機構32は、第2ピニオンシャフトP32Aと、第2ピニオンギヤP32Bと、第2ピニオン軸受P32Cとを有している。
【0112】
第1ピニオンシャフトP31Aは、軸方向Lに延在する軸部材である。第1ピニオンシャフトP31Aは、第1キャリヤC31に固定されている。第1ピニオンシャフトP31Aには、第1ピニオンギヤP31Bが第1ピニオン軸受P31Cを介して回転可能に支持されている。第1ピニオンギヤP31Bは、第1サンギヤS31と第1リングギヤR31とに噛み合うように配置されている。第1ピニオンギヤP31Bは、その軸心回りに回転(自転)すると共に、第1サンギヤS31を中心として回転(公転)するように構成されている。なお、図示は省略するが、第1ピニオンギヤP31Bは、その公転軌跡に沿って、互いに間隔を空けて複数設けられている。図示の例では、第1ピニオン軸受P31Cは、ニードル軸受である。
【0113】
第2ピニオンシャフトP32Aは、軸方向Lに延在する軸部材である。第2ピニオンシャフトP32Aは、第2キャリヤC32に固定されている。第2ピニオンシャフトP32Aには、第2ピニオンギヤP32Bが第2ピニオン軸受P32Cを介して回転可能に支持されている。第2ピニオンギヤP32Bは、第2サンギヤS32と第2リングギヤR32とに噛み合うように配置されている。第2ピニオンギヤP32Bは、その軸心回りに回転(自転)すると共に、第2サンギヤS32を中心として回転(公転)するように構成されている。なお、図示は省略するが、第2ピニオンギヤP32Bは、その公転軌跡に沿って、互いに間隔を空けて複数設けられている。図示の例では、第2ピニオン軸受P32Cは、ニードル軸受である。
【0114】
上記第1から第4の実施形態では説明を省略したが、中間軸53、及び遊星歯車機構31,32には油路が形成されている。図7に示すように、中間軸53は、軸内油路53bと、第1分配油路53cと、第2分配油路53dとを有している。
【0115】
軸内油路53bは、中間軸53の内部を軸方向Lに沿って延在する油路である。軸内油路53bには、図示せぬ油圧ポンプによって吐出された油が供給される。軸内油路53bに供給された油は、第1分配油路53cを介して、第1キャリヤC31に形成された第1キャリヤ油路C31cに供給されると共に、第2分配油路53dを介して、第2キャリヤC32に形成された第2キャリヤ油路C32cに供給される。第1分配油路53c及び第2分配油路53dは、軸内油路53bと中間軸53の外周面とを連通している。第1分配油路53c及び第2分配油路53dは、径方向Rに沿って延在している。また、第1分配油路53c及び第2分配油路53dは、中間軸53の周方向に複数形成されている。
【0116】
第1キャリヤC31は、第1キャリヤ溝部C31bと、第1キャリヤ油路C31cとを有している。
【0117】
第1キャリヤ溝部C31bは、第1キャリヤC31における中間軸53の外周面に対向する面に形成された溝である。第1キャリヤ溝部C31bは、第1キャリヤC31の周方向に連続的に形成されている。第1キャリヤ溝部C31bは、第1分配油路53cと連通するように配置されている。具体的には、第1キャリヤC31と中間軸53との間にはブッシュ等の第1滑り軸受67が介装されており、この第1滑り軸受67に径方向Rに沿って形成された貫通孔を介して、第1キャリヤ溝部C31bと第1分配油路53cとが連通している。
【0118】
第1キャリヤ油路C31cは、第1キャリヤC31の内部に形成された油路である。第1キャリヤ油路C31cは、第1キャリヤ溝部C31bと、第1ピニオンシャフトP31Aに形成された第1導入油路P31Aaとを連通している。
【0119】
第1ピニオンシャフトP31Aは、第1導入油路P31Aaと、第1軸内油路P31Abと、第1供給油路P31Acとを有している。第1導入油路P31Aaは、第1キャリヤ油路C31cと第1軸内油路P31Abとを連通する油路である。第1導入油路P31Aaは、径方向Rに沿って延在している。第1軸内油路P31Abは、第1ピニオンシャフトP31Aの内部を軸方向Lに沿って延在する油路である。第1供給油路P31Acは、第1軸内油路P31Abと第1ピニオンシャフトP31Aの外周面とを連通する油路である。第1供給油路P31Acは、第1ピニオンシャフトP31Aの外周面における第1ピニオン軸受P31Cに対向する部分に開口するように形成されている。第1供給油路P31Acは、径方向Rに沿って延在している。
【0120】
軸内油路53bに供給された油の一部は、第1分配油路53c、第1キャリヤ溝部C31b、第1キャリヤ油路C31c、第1導入油路P31Aa、第1軸内油路P31Ab、及び第1供給油路P31Acを順に通って第1ピニオン軸受P31Cに供給される。第1ピニオン軸受P31Cに供給された油は、第1ピニオン軸受P31Cを潤滑した後、第1遊星歯車機構31の各ギヤの噛み合い部等を潤滑し、その後、各ギヤ及び第1キャリヤC31の回転による遠心力によって径方向外側R1に向かって飛散する。
【0121】
第2キャリヤC32は、第2キャリヤ溝部C32bと、第2キャリヤ油路C32cとを有している。
【0122】
第2キャリヤ溝部C32bは、第2キャリヤC32における中間軸53の外周面に対向する面に形成された溝である。第2キャリヤ溝部C32bは、第2キャリヤC32の周方向に連続的に形成されている。第2キャリヤ溝部C32bは、第2分配油路53dと連通するように配置されている。具体的には、第2キャリヤC32と中間軸53との間にはブッシュ等の第2滑り軸受68が介装されており、この第2滑り軸受68に径方向Rに沿って形成された貫通孔を介して、第2キャリヤ溝部C32bと第2分配油路53dとが連通している。
【0123】
第2キャリヤ油路C32cは、第2キャリヤC32の内部に形成された油路である。第2キャリヤ油路C32cは、第2キャリヤ溝部C32bと、第2ピニオンシャフトP32Aに形成された第2導入油路P32Aaとを連通している。
【0124】
第2ピニオンシャフトP32Aは、第2導入油路P32Aaと、第2軸内油路P32Abと、第2供給油路P32Acとを有している。第2導入油路P32Aaは、第2キャリヤ油路C32cと第2軸内油路P32Abとを連通する油路である。第2導入油路P32Aaは、径方向Rに沿って延在している。第2軸内油路P32Abは、第2ピニオンシャフトP32Aの内部を軸方向Lに沿って延在する油路である。第2供給油路P32Acは、第2軸内油路P32Abと第2ピニオンシャフトP32Aの外周面とを連通する油路である。第2供給油路P32Acは、第2ピニオンシャフトP32Aの外周面における第2ピニオン軸受P32Cに対向する部分に開口するように形成されている。第2供給油路P32Acは、径方向Rに沿って延在している。
【0125】
軸内油路53bに供給された油の一部は、第2分配油路53d、第2キャリヤ溝部C32b、第2キャリヤ油路C32c、第2導入油路P32Aa、第2軸内油路P32Ab、及び第2供給油路P32Acを順に通って第2ピニオン軸受P32Cに供給される。第2ピニオン軸受P32Cに供給された油は、第2ピニオン軸受P32Cを潤滑した後、第2遊星歯車機構32の各ギヤの噛み合い部等を潤滑し、その後、各ギヤ及び第2キャリヤC32の回転による遠心力によって径方向外側R1に向かって飛散する。
【0126】
図7に示すように、ブリーザ機構8は、ブリーザ室81と、ブリーザ孔82と、遮蔽部材83とを有している。
【0127】
ブリーザ室81は、ケース1に形成されている。ブリーザ室81は、内側開口部81aがケース1の内部に開口するように形成されている。本実施形態では、ブリーザ室81は、内側開口部81aが軸方向第1側L1に向けて開口するように、本体カバー12に形成されている。
【0128】
ブリーザ孔82は、ブリーザ室81とケース1の外部とを連通するようにケース1に形成されている。本実施形態では、ブリーザ孔82は、径方向Rに沿って本体カバー12に形成されている。なお、ブリーザ孔82に、ケース1内の圧力が所定値以上となった場合に、ケース1内のガスを外部に排出してケース1内の圧力を下げるブリーザプラグを設けても良い。
【0129】
遮蔽部材83は、内側開口部81aを覆うように配置されている。遮蔽部材83は、ケース1に固定されている。本実施形態では、遮蔽部材83は、板状に形成され、本体カバー12に固定されている。遮蔽部材83とケース1との間には、図示しない隙間が形成されており、当該隙間を介して、ブリーザ室81とケース1の内部とが連通している。
【0130】
本実施形態では、ブリーザ機構8は、第2支持材192の第2ギヤ支持部192bと径方向R視で重複する位置に配置されている。本実施形態では、第2ギヤ支持部192bが、軸方向Lに延在する「軸方向延在部」に相当する。
ここで、2つの部材の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が存在することを指す。
【0131】
上記のとおり、第2供給油路P32Acから第2ピニオン軸受P32Cに供給された油は、第2ピニオンギヤP32B及び第2キャリヤC32等の回転により、径方向外側R1に向けて飛散する。本実施形態では、軸方向Lに延在する第2ギヤ支持部192bがブリーザ機構8と径方向R視で重複する位置に配置されているため、第2ギヤ支持部192bよりも径方向内側R2から径方向外側R1に向けた油の移動が、第2ギヤ支持部192bによって阻害される。
【0132】
また、本実施形態では、第2支持材192の第2ギヤ支持部192bは、ブリーザ機構8の内側開口部81aに対して軸方向第1側L1の部分に、軸方向第1側L1に突出すると共に周方向に連続的に形成された筒状突出部192eを有している。筒状突出部192eに対して径方向内側R2には、減速装置3を構成するギヤの少なくとも一部が配置されている。本実施形態では、筒状突出部192eに対して径方向内側R2には、第1遊星歯車機構31が配置されている。つまり、第1遊星歯車機構31とブリーザ機構8の内側開口部81aとの径方向Rの間に筒状突出部192eが配置されている。
【0133】
上記のとおり、第1供給油路P31Acから第1ピニオン軸受P31Cに供給された油は、第1ピニオンギヤP31B及び第1キャリヤC31等の回転により、径方向外側R1に向けて飛散する。本実施形態では、第1遊星歯車機構31からブリーザ機構8の内側開口部81aまでの油の飛散経路上に筒状突出部192eが配置されているため、第1遊星歯車機構31から内側開口部81aへ向かう油の移動が筒状突出部192eによって阻害される(図7に示す太破線矢印参照)。
【0134】
6.その他の実施形態
(1)上記の実施形態では、支持部材の第1支持材が第1リングギヤを支持し、第2支持材が第2リングギヤを支持する構成(第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態)と、支持部材の第2支持材が第1リングギヤ及び第2リングギヤの双方を支持する構成(第4の実施形態)とを例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば支持部材の第1支持材が第1リングギヤ及び第2リングギヤの双方を支持する構成としても良い。
【0135】
(2)上記の実施形態では、回転電機のロータ軸が「回転部材」として機能し、支持部材の第1支持材に回転可能に支持されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば減速装置における第1遊星歯車機構の第1サンギヤが「回転部材」として機能し、支持部材の第1支持材に回転可能に支持されている構成としても良い。
【0136】
(3)上記の実施形態では、支持部材の第1支持材と第2支持材とが互いに連結され、第1支持材がケースのケース本体に連結されている構成(第1の実施形態)と、支持部材の第1支持材及び第2支持材の双方がケースのケース本体に連結されている構成(第2の実施形態、第4の実施形態)と、支持部材の第1支持材がケースのケース本体に連結され、第2支持材がケースの本体カバーに連結されている構成(第3の実施形態)とを例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば支持部材の第1支持材と第2支持材とが互いに連結され、第2支持材がケースに連結されている構成、又は支持部材の第1支持材及び第2支持材の双方がケースの本体カバーに連結されている構成としても良い。
【0137】
(4)上記の実施形態では、リングギヤが、支持部材に直接連結され、支持部材に回転不能に支持されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、リングギヤが中継部材を介して支持部材に回転不能に支持されている構成としても良い。また、例えばリングギヤと支持部材とがトルクリミッタを介して連結され、平常時はリングギヤが回転不能であるが、過大なトルクが作用した場合には、リングギヤが支持部材に対して回転する構造としても良い。
【0138】
(5)上記第5の実施形態では、ブリーザ機構8が本体カバー12に設けられた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えばブリーザ機構8がケース本体11に設けられていても良い。
【0139】
(6)上記第5の実施形態では、ブリーザ室81の内側開口部81aが軸方向第1側L1に向けて開口した構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、内側開口部81aが軸方向第2側L2に向けて開口した構成であっても良いし、径方向内側R2に向けて開口した構成であっても良い。
【0140】
(7)上記第5の実施形態では、第2支持材192の第2ギヤ支持部192bが「軸方向延在部」である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば第1支持材191の第1ギヤ支持部191bが「軸方向延在部」に相当する構成であっても良い。また、上記第5の実施形態以外の実施形態における支持材のギヤ支持部が「軸方向延在部」であっても良い。
【0141】
(8)上記第5の実施形態では、第2支持材192の第2ギヤ支持部192bが軸方向第1側L1に突出する筒状突出部192eを有する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば第1支持材191の第1ギヤ支持部191bが軸方向第2側L2に突出する筒状突出部を有する構成であっても良い。
【0142】
(9)上記の実施形態では、支持部材が突出壁部を備えた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、支持部材が突出壁部を備えていない構成であっても良い。
【0143】
(10)上記の実施形態では、ケースと支持部材とが、ボルトによって互いに連結された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ケースと支持部材とが、例えばリベット等によって互いに連結された構成であっても良い。
【0144】
(11)上記の実施形態では、キャリヤと差動ケースとが一体化され、支持部材に支持された軸受を介して、キャリヤ及び差動ケースが回転可能に支持された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、キャリヤと差動ケースとが互いに独立し、それぞれが別の軸受を介して回転可能に支持された構成であっても良い。
【0145】
7.上記実施形態の概要
以下、上記において説明した車両用駆動装置(100)の概要について説明する。
【0146】
車両用駆動装置(100)は、
第1車輪(501)及び第2車輪(502)の駆動力源となる回転電機(2)と、
前記回転電機(2)からの駆動力を前記第1車輪(501)と前記第2車輪(502)とに分配する差動歯車装置(4)と、
サンギヤ(S31,S32)、キャリヤ(C31,C32)、及びリングギヤ(R31,R32)を有する遊星歯車機構(31,32)を含む減速装置(3)と、
前記回転電機(2)、前記差動歯車装置(4)、及び前記減速装置(3)を収容するケース(1)と、を備え、
前記差動歯車装置(4)、及び前記減速装置(3)が、前記回転電機(2)と同軸に配置され、
前記減速装置(3)は、軸方向(L)における前記回転電機(2)と前記差動歯車装置(4)との間に配置され、
前記ケース(1)の内部に配置された支持部材(9,109,209,309)が、前記ケース(1)に支持されており、
前記リングギヤ(R31,R32)が、前記支持部材(9,109,209,309)に回転不能に支持されており、
前記ケース(1)と前記支持部材(9,109,209,309)とが互いに面接触し、
前記ケース(1)と前記支持部材(9,109,209,309)との接触面(11sa,11sb,12s,91as,191as,192as,291as,292as,391as,392as)は、前記軸方向(L)に直交する方向(R)に沿っている。
【0147】
この構成によれば、ケース(1)の内部に配置された支持部材(9,109,209,309)がケース(1)に支持され、リングギヤ(R31,R32)が支持部材(9,109,209,309)に回転不能に支持されている。つまり、ケース(1)及びリングギヤ(R31,R32)とは別部材である支持部材(9,109,209,309)を介して、リングギヤ(R31,R32)がケース(1)に支持されている。そのため、キャリヤ(C31,C32)に支持されたピニオンギヤとリングギヤ(R31,R32)との噛み合い部において発生した振動は、ケース(1)に伝達されるまでに、リングギヤ(R31,R32)と支持部材(9,109,209,309)との間、支持部材(9,109,209,309)、及び支持部材(9,109,209,309)とケース(1)との間の各箇所において減衰されることになる。特に、リングギヤ(R31,R32)と支持部材(9,109,209,309)との間、及び支持部材(9,109,209,309)とケース(1)との間においては、それぞれ、部材同士の接触による摩擦によって、振動を減衰することができる。
また、本構成によれば、軸方向(L)に直交する方向(R)に沿った接触面(11sa,11sb,12s,91as,191as,192as,291as,292as,391as,392as)で、ケース(1)と支持部材(9,109,209,309)とが互いに接触している。そのため、リングギヤ(R31,R32)に発生する周方向の振動がケース(1)と支持部材(9,109,209,309)との接触面(11sa,11sb,12s,91as,191as,192as,291as,292as,391as,392as)に伝達され、当該接触面に生じる周方向の摩擦により減衰される。
以上のように、本構成によれば、減速装置(3)からケース(1)に伝達される振動を小さく抑えることができ、その結果、ケース(1)から外部に伝わるギヤノイズも小さく抑えることができる。
【0148】
ここで、前記支持部材(9,109,209,309)は、前記リングギヤ(R31,R32)を回転不能に支持する支持部(91c,92b,191b,192b,291b,292b,392b,392c)よりも径方向内側(R2)に突出すると共に周方向に連続的に形成された突出壁部(91d,92c,191c,192c,291c,292c,392d)を備えていると好適である。
【0149】
この構成によれば、突出壁部(91d,92c,191c,192c,291c,292c,392d)によって剛性が高められた支持部材(9,109,209,309)を介して、リングギヤ(R31,R32)がケース(1)に支持される。そのため、キャリヤ(C31,C32)に支持されたピニオンギヤとリングギヤ(R31,R32)との噛み合い部において発生した振動に起因する支持部材(9,109,209,309)の振動を小さく抑えることができる。よって、減速装置(3)からケース(1)に伝達される振動を更に小さく抑えることができ、その結果、ケース(1)から外部に伝わるギヤノイズも更に小さく抑えることができる。
【0150】
また、前記ケース(1)と前記支持部材(9,109,209,309)とが、ボルト(93,95,193,195,293,295,393,395)によって互いに連結されていると好適である。
【0151】
この構成によれば、支持部材(9,109,209,309)がケース(1)に面接触して支持された状態を簡易な構成で実現することができる。
【0152】
ここで、上記の構成は、前記ケース(1)が、前記回転電機(2)、前記差動歯車装置(4)、及び前記減速装置(3)の径方向外側(R1)を囲む筒状の周壁部を備えている場合に特に好適である。このような構成では、ケース(1)に伝達される振動により生じるケース表面からの放射音が大きくなり易く、その結果、外部に伝わるギヤノイズが大きくなり易いためである。
【0153】
ここで、前記減速装置(3)は、前記サンギヤである第1サンギヤ(S31)、前記キャリヤである第1キャリヤ(C31)、及び前記リングギヤである第1リングギヤ(R31)を有する、前記遊星歯車機構である第1遊星歯車機構(31)に加えて、第2サンギヤ(S32)、第2キャリヤ(C32)、及び第2リングギヤ(R32)を有する第2遊星歯車機構(32)を更に含み、
前記第1遊星歯車機構(31)は、前記第2遊星歯車機構(32)よりも、前記軸方向(L)における前記回転電機(2)側に配置され、
前記支持部材(9,109,209,309)は、前記第1リングギヤ(R31)及び前記第2リングギヤ(R32)の双方を支持していると好適である。
【0154】
この構成によれば、減速装置(3)が2つの遊星歯車機構(31,32)を含む場合であっても、減速装置(3)からケース(1)に伝達される振動を小さく抑えることができ、ケース(1)から外部に伝わるギヤノイズも小さく抑えることができる。
【0155】
一例として、上記のように減速装置(3)が2つの遊星歯車機構(31,32)を含む構成において、
前記支持部材(9,109,209)は、第1支持材(91,191,291)と、第2支持材(92,192,292)とを含み、
前記第1リングギヤ(R31)が前記第1支持材(91,191,291)に支持され、
前記第2リングギヤ(R32)が前記第2支持材(92,192,292)に支持されていると好適である。
【0156】
この構成によれば、第1キャリヤ(C31)に支持されたピニオンギヤと第1リングギヤ(R31)との噛み合い部において発生した振動と、第2キャリヤ(C32)に支持されたピニオンギヤと第2リングギヤ(R32)との噛み合い部において発生した振動とを、それぞれ別の支持材によって減衰させることができる。よって、ケース(1)から外部に伝わるギヤノイズをさらに小さく抑えることができる。
【0157】
ここで、前記第1支持材(91)及び前記第2支持材(92)の一方が、前記ケース(1)に支持され、
前記第1支持材(91)及び前記第2支持材(92)の他方が、一方に連結されていると好適である。
【0158】
この構成によれば、第1キャリヤ(C31)に支持されたピニオンギヤと第1リングギヤ(R31)との噛み合い部において発生した振動、及び第2キャリヤ(C32)に支持されたピニオンギヤと第2リングギヤ(R32)との噛み合い部において発生した振動の一方を1つの支持材によって減衰させることができ、他方を2つの支持材及びそれらの連結部によって減衰させることができる。よって、ケース(1)から外部に伝わるギヤノイズをさらに小さく抑えることができる。また、第1支持材(91)及び第2支持材(92)の一方のみがケース(1)に連結される構成であるため、支持部材(9)のケース(1)への取付構造を簡略化できる。よって、装置の大型化を抑えることができる。
【0159】
ここで、前記第1支持材(191,291)と前記第2支持材(192,292)とが、前記ケース(1)におけるそれぞれ異なる箇所に支持されていると好適である。
【0160】
この構成によれば、第1キャリヤ(C31)に支持されたピニオンギヤと第1リングギヤ(R31)との噛み合い部において発生した振動と、第2キャリヤ(C32)に支持されたピニオンギヤと第2リングギヤ(R32)との噛み合い部において発生した振動とを、それぞれ別の支持材によって減衰させることができると共に、当該振動がケース(1)におけるそれぞれ異なる箇所に伝わるようにすることができる。よって、ケース(1)自体の振動を小さく抑えることができ、ケース(1)から外部に伝わるギヤノイズをさらに小さく抑えることができる。
【0161】
あるいは、上記のように減速装置(3)が2つの遊星歯車機構(31,32)を含む構成において、前記支持部材(309)は、第1支持材(391)と、第2支持材(392)とを含み、
前記第1支持材(391)と前記第2支持材(392)とがそれぞれ前記ケース(1)に支持され、
前記第1リングギヤ(R31)及び前記第2リングギヤ(R32)の双方が前記第2支持材(392)に支持されていると好適である。
【0162】
この構成によれば、2つの支持材の一方のみによって第1リングギヤ(R31)及び第2リングギヤ(R32)の双方を支持するため、2つのリングギヤ(R31,R32)の支持構造を簡略化することができる。よって、装置の大型化を抑えることができる。
【0163】
また、前記ケース(1)の内部に開口する内側開口部(81a)と前記ケース(1)の外部とを連通させるブリーザ機構(8)を更に備え、
前記支持部材(109)は、前記軸方向(L)に延在する軸方向延在部(192b)を有し、
前記ブリーザ機構(8)は、前記軸方向延在部(192b)と径方向(R)視で重複する位置に配置されていると好適である。
【0164】
一般的に、ケース(1)を備えた車両用駆動装置(100)においては、ケース(1)に収容された部材の潤滑及び冷却のための油がケース(1)の内部に存在する。この油は、ケース(1)に収容された部材の作動、特にギヤ等の回転部材の回転により、ケース(1)の内部において飛散する。
この構成によれば、支持部材(109)の軸方向延在部(192b)よりも径方向内側(R2)から径方向外側(R1)に向けた油の移動が、支持部材(109)の軸方向延在部(192b)によって阻害される。したがって、軸方向延在部(192b)と径方向(R)視で重複する位置に配置されたブリーザ機構(8)に油を流入させ難くすることができる。
【0165】
一例として、上記のように前記支持部材(109)が前記軸方向(L)に延在する軸方向延在部(192b)を有する構成において、
前記軸方向延在部(192b)は、前記内側開口部(81a)に対して前記軸方向(L)の一方側(L1)の部分に、当該一方側(L1)に突出すると共に周方向に連続的に形成された筒状突出部(192e)を有し、
前記筒状突出部(192e)に対して前記径方向内側(R2)に、前記減速装置(3)を構成するギヤの少なくとも一部が配置されていると好適である。
【0166】
この構成によれば、減速装置(3)を構成するギヤとブリーザ機構(8)の内側開口部(81a)との径方向(R)の間に筒状突出部(192e)が配置される。そのため、減速装置(3)を構成するギヤから内側開口部(81a)へ向かう油の移動が筒状突出部(192e)によって阻害される。つまり、減速装置(3)を構成するギヤからブリーザ機構(8)へ向かって飛散する油の量を少なく抑えることができる。一般的に、減速装置(3)を構成するギヤは比較的高速で回転するため、当該ギヤから油が飛散し易い。したがって、この構成により、ブリーザ機構(8)に油を更に流入させ難くすることができる。
【0167】
一例として、上記のように、前記軸方向延在部(192b)が前記筒状突出部(192e)を有し、かつ、前記支持部材(109)が前記第1支持材(191)と前記第2支持材(192)とを含む構成において、
前記第2支持材(192)が前記筒状突出部(192e)を有し、
前記筒状突出部(192e)は、前記第1支持材(191)側に突出し、
前記筒状突出部(192e)に対して前記径方向内側(R2)に、前記第1遊星歯車機構(31)が配置されていると好適である。
【0168】
この構成によれば、第1遊星歯車機構(31)とブリーザ機構(8)の内側開口部(81a)との径方向(R)の間に筒状突出部(192e)が配置される。そのため、第1遊星歯車機構(31)から内側開口部(81a)へ向かう油の移動が筒状突出部(192e)によって阻害される。つまり、第1遊星歯車機構(31)からブリーザ機構(8)へ向かって飛散する油の量を少なく抑えることができる。したがって、ブリーザ機構(8)に油を更に流入させ難くすることができる。
【0169】
また、前記支持部材(9,109,209,309)は、前記ケース(1)の内部に配置された回転部材を支持するように構成されていると好適である。
【0170】
この構成によれば、別途、回転部材を支持する部材を設ける必要がないため、装置の大型化及びコスト増加を抑えることができる。
【0171】
ここで、前記回転電機(2)は、ロータ軸(27)を備え、
前記第1支持材(91,191,291,391)は、前記回転部材である前記ロータ軸(27)を回転可能に支持していると好適である。
【0172】
この構成によれば、別途、ロータ軸(27)を支持する部材を設ける必要がないため、装置の大型化及びコスト増加を抑えることができる。
【0173】
また、前記第1支持材(91,191,291,391)は、前記回転部材である前記第1サンギヤ(S31)を回転可能に支持していると好適である。
【0174】
この構成によれば、別途、第1サンギヤ(S31)を支持する部材を設ける必要がないため、装置の大型化及びコスト増加を抑えることができる。
【0175】
また、前記第2支持材(92,192,292,392)は、前記回転部材である前記第2キャリヤ(C32)を回転可能に支持していると好適である。
【0176】
この構成によれば、第2遊星歯車機構(32)の2つの要素である、第2リングギヤ(R32)および第2キャリヤ(C32)が、第2支持材(92,192,292,392)によって支持される。よって、第2遊星歯車機構(32)を精度良く支持することができる。
【0177】
また、前記差動歯車装置(4)は、中空の差動ケース(D4)を備え、
前記差動ケース(D4)は、前記キャリヤ(C31,C32)と一体化され、
前記支持部材(9,109,209,309)は、当該支持部材(9,109,209,309)に支持された軸受(66)を介して、前記キャリヤ(C31,C32)及び前記差動ケース(D4)を回転可能に支持していると好適である。
【0178】
この構成によれば、支持部材(9,109,209,309)を利用して、簡易な構成でキャリヤ(C31,C32)及び差動ケース(D4)を回転可能に支持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0179】
本開示に係る技術は、2つの車輪の駆動力源となる回転電機と、2つの車輪に回転電機からの駆動力を分配する差動歯車装置と、減速装置とを備えた車両用駆動装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0180】
100 :車両用駆動装置
1 :ケース
11sa:第1ケース接触面(接触面)
2 :回転電機
27 :ロータ軸
3 :減速装置
31 :第1遊星歯車機構
S31 :第1サンギヤ
R31 :第1リングギヤ
C31 :第1キャリヤ
32 :第2遊星歯車機構
S32 :第2サンギヤ
R32 :第2リングギヤ
C32 :第2キャリヤ
4 :差動歯車装置
9 :支持部材
91 :第1支持材
91as:連結部接触面(接触面)
92 :第2支持材
L :軸方向
R :径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7