特許第6813222号(P6813222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6813222
(24)【登録日】2020年12月21日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】くくり罠用装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 23/34 20060101AFI20201228BHJP
【FI】
   A01M23/34
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-99451(P2020-99451)
(22)【出願日】2020年6月8日
【審査請求日】2020年6月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520203091
【氏名又は名称】伊藤 哲生
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 哲生
【審査官】 大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3207491(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0126786(US,A1)
【文献】 登録実用新案第3220691(JP,U)
【文献】 特開2017−70245(JP,A)
【文献】 特開2019−92400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 23/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルバネにより作動するくくり用ワイヤを保持する一対のワイヤ保持部材と、
該ワイヤ保持部材をセットするためのベース部材と、
くくり用ワイヤの保持及び解除用の係合部材と、
くくり用ワイヤの解除を作動させる踏込部材とを備えており、
前記ワイヤ保持部材は、一対の略半円弧状部材で構成され、
該略半円弧状部材の端部は、ベース部材に軸止され、
前記ワイヤ保持部材は、端部の軸止部分を軸として起き上がり動作可能であり、
前記ベース部材は、底面材と側面材とで構成され、
前記ベース部材の側面材に、前記ワイヤ保持部材の略半円弧状部材の端部が、前記係合部材の配置用の間隔を有して各々軸止され、
前記係合部材は、一対の略半円弧状部材の間に位置する突張固定部材と、該突張固定部材の位置を内側に動かすための動作部材とを有し、
前記動作部材は、前記ベース部材の底面材に固定される底面固定材と、前記突張固定部材と共に可動するように軸止される側面可動材とで構成され、
前記係合部材の動作部材の側面可動材は、曲線状部分と切欠部分と突張固定部材との貫通取付部分とを有し、
くくり用ワイヤの保持状態では該曲線状部分に前記踏込部材が接触し、
くくり用ワイヤの解除状態では切欠部分に前記踏込部材が接触するように構成され、
前記踏込部材は、一側端側がベース部材に軸止され、
前記踏込部材は、軸止部分を軸として、先端側が押し込まれることによる沈み込み動作可能であり、該踏込部材の先端側が押し込まれることで、曲線状部分が下方に押されて、側面可動材が突張固定部材と共に内側に移動し、その結果、略半円弧状部材が起き上がり、ワイヤの輪状部分が外れるように構成されていることにより、前記係合部材の動作部材に組み合うことを特徴とする、くくり罠用装置。
【請求項2】
前記係合部材の突張固定部材は、長さ調整可能であることを特徴とする、請求項1に記載のくくり罠用装置。
【請求項3】
前記ワイヤ保持部材の外周面の上側部分に、くくり用ワイヤ保持用の溝部を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のくくり罠用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、くくり罠用装置に関し、詳細にはコイルバネにより作動させるくくり用ワイヤをセットするためのくくり罠用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のくくり罠は、一方に設けられた通し孔に他方を通して罠用ループが作られるくくり用ワイヤと、該くくり用ワイヤのくくりを作動させるコイルバネによる作動構成と、罠をセットする際に前記罠用ループを作るように前記くくり用ワイヤを仮に保持する構成を有する罠本体とを備えるくくり罠において、前記罠本体が、獣の足が入る筒枠状の本体ボディと、該本体ボディの内側に位置されて獣の足によって踏み込まれる踏み板と、前記くくり用ワイヤが外側に掛け回されて仮に保持されるように半ループ状に形成されて両側の端部近傍のそれぞれで前記本体ボディに対して回動可能に軸着される跳ね上げ部材とを備え、該跳ね上げ部材の一対が、前記本体ボディに対し、該本体ボディの筒枠上端面に沿って支持されてループを形成するように向き合って対称位置に配され、上部が前記一対の跳ね上げ部材の向き合う端部の両方に係合すると共に、下部が前記踏み板に固定され、該踏み板が踏み込まれたときに前記くくり用ワイヤが跳ね上がるように前記一対の跳ね上げ部材を回動させる一対の作動フックを備えたものである。
【0003】
すなわち、特許文献1に記載のくくり罠は、くくり用ワイヤを跳ね上げ部材にセットする際に、下部が踏み板に固定された一対の作動フックの上部で、一対の跳ね上げ部材の両端部を各々鉤状に係合して保持するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019−92400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のくくり罠の罠本体において、一対の跳ね上げ部材の両端部を各々鉤状に係合して保持する作動フックは、踏み板全体が下方に沈み込むことで解除される。
そして、踏み板の沈下距離を十分に確保するため、罠本体がある程度の厚みを必要とし、罠本体を現地に設置する際には、厚み相当分の深い穴を掘る必要があり、手間がかかる。
【0006】
したがって、本発明の解決しようする課題は、コイルバネにより作動させるくくり用ワイヤの解除の際に、踏み板全体が沈み込む必要がなく、薄くても解除動作が可能であり、くくり罠を現地に設置する際にも、深い穴を掘る必要がなく、くくり罠を容易に設置可能とする、くくり罠用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を解決するための手段は、下記のとおりである。
【0008】
第1に、
コイルバネにより作動するくくり用ワイヤを保持する一対のワイヤ保持部材と、
該ワイヤ保持部材をセットするためのベース部材と、
くくり用ワイヤの保持及び解除用の係合部材と、
くくり用ワイヤの解除を作動させる踏込部材とを備えており、
前記ワイヤ保持部材は、一対の略半円弧状部材で構成され、
該略半円弧状部材の端部は、ベース部材に軸止され、
前記ワイヤ保持部材は、端部の軸止部分を軸として起き上がり動作可能であり、
前記ベース部材は、底面材と、該底面材の両端部に位置し略直角状を形成する側面材とで構成され、
前記ベース部材の側面材に、前記ワイヤ保持部材の略半円弧状部材の端部が、前記係合部材の配置用の間隔を有して各々軸止され、
前記係合部材は、一対の略半円弧状部材の間に位置する突張固定部材と、該突張固定部材の位置を内側に動かすための動作部材とを有し、
前記動作部材は、前記ベース部材の底面材に固定される底面固定材と、前記突張固定部材と共に可動するように該底面固定材に可動用蝶番機構を介して軸止される側面可動材とで構成され、
前記踏込部材は、平板形状であり、一方の側端側がベース部材に沈込動作用蝶番機構を介して軸止され、
前記踏込部材は、沈込動作用蝶番機構の軸止部分を軸として沈み込み動作可能であり、
前記踏込部材は、前記係合部材の動作部材に組み合うことを特徴とする、くくり罠用装置。
第2に、
前記係合部材の動作部材の側面可動材は、曲線状部分と切欠部分と突張固定部材との貫通取付部分とを有し、
くくり用ワイヤの保持状態では該曲線状部分に前記踏込部材が接触し、
くくり用ワイヤの解除状態では切欠部分に前記踏込部材が接触するように構成したことを特徴とする、前記第1に記載のくくり罠用装置。
第3に、
前記係合部材の突張固定部材は、長さ調整可能であることを特徴とする、前記第1または第2に記載のくくり罠用装置。
第4に、
前記ワイヤ保持部材の外周面の上側部分に、くくり用ワイヤ保持用の溝部を有することを特徴とする、前記第1〜第3のいずれか一つに記載のくくり罠用装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明のくくり罠用装置によれば、一側端側の軸止部分を軸とする踏込部材の沈み込み動作で、コイルバネにより作動させるくくり用ワイヤの保持状態の解除が可能なので、以下の効果を奏することができる。
【0010】
解除の際に、踏み板全体を沈下させる必要がないので、くくり罠用装置としての厚みを薄くすることができる。
そのため、くくり罠用装置にくくり用ワイヤをセットしたくくり罠を現地に設置する際にも深い穴を掘る必要がないので、くくり罠を容易に設置することが可能となる。
【0011】
また、罠を薄く構成できるので、罠を設置した箇所が自然環境に馴染み易くなり、対象動物が罠の存在を察知し難くなり、捕獲率の向上を図ることができる。
さらに、くくり用ワイヤの保持状態の解除を、一側端側の軸止部分を軸とする踏込部材の沈み込み動作により行うので、設置場所が例え傾斜箇所であっても誤動作が少なく、獲物を確実に捉えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のくくり罠用装置の使用状態(保持状態)の斜視図である。
図2図1に示すくくり罠用装置の斜視図である。
図3図2に示すくくり罠用装置に関し、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は正面図である。
図4図2に示すくくり罠用装置に関し、解除状態の斜視図である。
図5図4に示すくくり罠用装置に関し、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は正面図である。
図6図3(A)のA−A断面図である。
図7図5(A)のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ具体的に説明する。
ここで、添付図面において同一の部材には同一符号を付しており、また重複した説明は省略されている。
なお、ここでの説明は本発明が実施される一形態であることから、本発明は該当形態に限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
図1に示すとおり、本実施例のくくり罠用装置は、コイルバネ51により作動するくくり用ワイヤ50を保持する一対のワイヤ保持部材10と、該ワイヤ保持部材10をセットするためのベース部材20と、くくり用ワイヤ50の保持及び解除用の係合部材30と、くくり用ワイヤ50の解除を作動させる踏込部材40とを備えている。
図1中、52はワイヤ、53はワイヤの輪状部分、54は先端短管、55はコイルバネ51を縮める際に使用する操作管を示している。
【0015】
図1では、くくり用ワイヤ50を使用した状態であって、コイルバネ51が縮められた状態であり、ワイヤ52の輪状部分53が、水平に開いたワイヤ保持部材10に保持された状態が示されている。
該保持状態は、係合部材30によって、ワイヤ保持部材10の位置がロックされ、そのままではくくり用ワイヤ50が外れないように構成されている。
【0016】
図2以降では、図1中に示したくくり用ワイヤ50を省略した状態で、本発明にかかるくくり罠用装置が示されている。
【0017】
図3(A)に示すとおり、ワイヤ保持部材10は、2つの略半円弧状部材11を対向して一対として用いることで構成されている。
略半円弧状部材11の端部11aは、各々ベース部材20に軸止されている。
【0018】
ワイヤ保持部材10は、端部11aの軸止部分12を軸として、起き上がり動作可能に構成されている。
図3(B)に示すとおり、ワイヤ保持部材10の略半円弧状部材11の外周面の上部には、くくり用ワイヤを保持するための保持用溝部13が設けられている。
【0019】
図3(C)に示すとおり、ベース部材20は、長方形状の底面材21と、該底面材21の両端部に位置し略直角状を形成する細長矩形状の側面材22とで構成されている。
底面材21と側面材22とは、一枚の板状物の両側部を直角状に折り曲げることで形成できる他に、図示は省略するが、別部材を接着することで構成することもできる。
【0020】
図3(A)に示すとおり、踏込部材40は、両側に三角錐状部分を有する平板形状であり、一方の側端側がベース部材20の内側に、沈込動作用蝶番機構41を介して軸止されている。
図6及び図7に示すとおり、踏込部材40は、沈込動作用蝶番機構41の軸止部分を軸として先端側が沈み込み動作可能であり、係合部材の動作部材32に組み合うものである。
【0021】
図3(A)に示すとおり、係合部材30の配置用の間隔を有して、ベース部材20の一方の側面材22に、ワイヤ保持部材10の略半円状部材11の端部11aが、各々軸止されている。
係合部材30は、一対の略半円弧状部材11の間に位置する突張固定部材31と、該突張固定部材31の位置を内側に動かすための動作部材32とを有するものである。
【0022】
突張固定部材31は、六角両雄ネジスペーサ311の両側に、ナット312,丸型スペーサ313,つまみネジ314を順に組み合わせることで、長さ調整可能なものである。
突張固定部材31の長さは、ワイヤの輪状部分が外れずに保持するように、つまみネジ314の頭部314aが、略半円弧状部材11の一方のL型縁部11bを、十分に押し込んで接触するように調整されている。
【0023】
図5(C)、図6図7に示すように、動作部材32は、ベース部材20の底面材21に固定される底面固定材321と、突張固定部材31と共に可動するように底面固定材321に可動用蝶番機構を介して軸止される側面可動材322とで構成されている。
該側面可動材322は、曲線状部分3221と切欠部分3222と突張固定部材31との貫通取付部分3223とを有するものである。
【0024】
図6に示すように、くくり用ワイヤの保持状態では、曲線状部分3221の先端上部側に踏込部材40が接触している。
【0025】
図7に示すように、くくり用ワイヤの解除状態では、軸止部分42を軸として、踏込部材40の先端側が押し込まれることで、曲線状部分3221が下方に押されて、側面可動材322が突張固定部材31と共に内側に移動する。
その結果、保持状態(図3(A)参照)が解除され、図4図5に示すとおり、略半円弧状部材11が起き上がり、ワイヤの輪状部分が外れて、踏込部材40を押し込んだ対象動物の足を締め付ける。
この状態では、踏込部材40の先端側は、切欠部分3222に接触している。
【0026】
なお、図4図5図7では、理解を容易にするために、実際とは異なり、略半円弧状部材11が直角状に起き上がり、ワイヤの輪状部分が外れた解除状態を図示している。
【符号の説明】
【0027】
50 くくり用ワイヤ
51 コイルバネ
52 ワイヤ
53 ワイヤの輪状部分
54 先端短管
55 操作管
10 ワイヤ保持部材
11 略半円弧状部材
11a 端部
11b L型縁部
12 軸止部分
13 保持用溝部
20 ベース部材
21 底面材
22 側面材
30 係合部材
31 突張固定部材
311 六角両雄ネジスペーサ
312 ナット
313 丸型スペーサ
314 つまみネジ
314a つまみネジの頭部
32 動作部材
321 底面固定材
322 側面可動材
3221 曲線状部分
3222 切欠部分
3223 貫通取付部分
40 踏込部材
41 沈込動作用蝶番機構
42 軸止部分

【要約】
【課題】コイルバネにより作動させるくくり用ワイヤの解除の際に、踏み板全体が沈み込む必要がなく、薄くても解除動作が可能であり、くくり罠を現地に設置する際にも、深い穴を掘る必要がなく、くくり罠を容易に設置可能とする、くくり罠用装置を提供する。
【解決手段】 コイルバネ51により作動するくくり用ワイヤ50を保持するワイヤ保持部材10と、該ワイヤ保持部材10をセットするためのベース部材20と、くくり用ワイヤ50の保持及び解除用の係合部材30と、くくり用ワイヤ50の解除を作動させる踏込部材40とを備えており、前記係合部材30は、突張固定部材31と、該突張固定部材31の位置を内側に動かすための動作部材32とを有し、踏込部材40は、一側端側を軸として沈み込み動作可能であり、係合部材の動作部材32に組み合うものである。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7