(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A成分及びB成分を含有することを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
A成分:
一般式(1)で示される化合物。
【化1】
(但し、一般式(1)中、R
1は、炭素数8〜20のアルキル基、炭素数8〜20のアルケニル基、炭素数8〜20のアリール基、(R
2)
2−N(CO)−で示される官能基(但し、R
2は、水素、炭素数8〜20のアルキル基または炭素数8〜20のアルケニル基であり、R
2は両方が水素である場合を除く)、または、R
3−O(CO)−で示される官能基(R
3は、炭素数8〜20のアルキル基または炭素数8〜20のアルケニル基である)である。X,Yは、
いずれもカルボキシ基
またはカルボキシ基の塩
であるか、
或いは、いずれかがスルホン酸基の
塩である。)
B成分:
一般式(2)で示されるリン酸エステルP1、一般式(3)で示されるリン酸エステルP2、及び、一般式(4)で示されるリン酸エステルP3からなる群より選択される少なくとも1つの化合物。
但し、前記一般式(2)で示されるリン酸エステルP1、前記一般式(3)で示されるリン酸エステルP2、及び、前記一般式(4)で示されるリン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたとき、
前記一般式(2)で示されるリン酸エステルP1に帰属されるP核NMR積分比率が50〜100%である。
【化2】
(但し、一般式(2)中、R
4は、炭素数6〜24の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基、または、炭素数6〜24の脂肪族アルコール1モル当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを合計1〜10モルの割合で付加したものから水酸基を除いた残基である。M
1,M
2は、それぞれ独立に、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属または有機アミンである。)
【化3】
(但し、一般式(3)中、R
5,R
6は、それぞれ独立に、炭素数6〜24の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基、または、炭素数6〜24の脂肪族アルコール1モル当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを合計1〜10モルの割合で付加したものから水酸基を除いた残基である。M
3は、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属または有機アミンである。)
【化4】
(但し、一般式(4)中、R
7,R
8は、それぞれ独立に、炭素数6〜24の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基、または、炭素数6〜24の脂肪族アルコール1モル当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを合計1〜10モルの割合で付加したものから水酸基を除いた残基である。M
4は、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属または有機アミンである。nは、2又は3の整数である。)
前記一般式(2)で示されるリン酸エステルP1、前記一般式(3)で示されるリン酸エステルP2、及び、前記一般式(4)で示されるリン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたとき、
前記一般式(2)で示されるリン酸エステルP1に帰属されるP核NMR積分比率が70〜100%である請求項1に記載の水硬性組成物用添加剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2では、他の水硬性組成物用添加剤との相溶性及び使用したコンクリートの凍結融解抵抗性が十分でないとの問題を生じることがあった。
【0006】
また、特許文献3では、得られる硬化体の凍結融解抵抗性が優れ、特許文献4では、他の水硬性組成物用添加剤との相溶性に優れ、得られるコンクリート硬化体の凍結融解抵抗性が向上するという利点がある。一方で、特許文献3,4では、水硬性組成物用添加剤を使用したコンクリートの空気量保持性に更なる向上の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、本発明における水硬性組成物用添加剤を使用した水硬性組成物の空気量の保持性が高く且つ得られるコンクリート硬化体等が良好な凍結融解抵抗性を示すことが可能であり、更に、既存の水硬性組成物用添加剤との相溶性に優れる水硬性組成物用添加剤の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定のA成分と特定のB成分の両方を用いることによって上記課題を解決できることを見出した。本発明によれば、以下の水硬性組成物用添加剤及び水硬性組成物が提供される。
【0009】
[1] A成分及びB成分を含有することを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
A成分:
一般式(1)で示される化合物。
【0010】
【化1】
(但し、一般式(1)中、R
1は、炭素数8〜20のアルキル基、炭素数8〜20のアルケニル基、炭素数8〜20のアリール基、(R
2)
2−N(CO)−で示される官能基(但し、R
2は、水素、炭素数8〜20のアルキル基または炭素数8〜20のアルケニル基であり、R
2は両方が水素である場合を除く)、または、R
3−O(CO)−で示される官能基(R
3は、炭素数8〜20のアルキル基または炭素数8〜20のアルケニル基である)である。X,Yは、
いずれもカルボキシ基
またはカルボキシ基の塩
であるか、
或いは、いずれかがスルホン酸基の
塩である。)
B成分:
一般式(2)で示されるリン酸エステルP1、一般式(3)で示されるリン酸エステルP2、及び、一般式(4)で示されるリン酸エステルP3からなる群より選択される少なくとも1つの化合物。
但し、前記一般式(2)で示されるリン酸エステルP1、前記一般式(3)で示されるリン酸エステルP2、及び、前記一般式(4)で示されるリン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたとき、
前記一般式(2)で示されるリン酸エステルP1に帰属されるP核NMR積分比率が50〜100%である。
【0011】
【化2】
(但し、一般式(2)中、R
4は、炭素数6〜24の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基、または、炭素数6〜24の脂肪族アルコール1モル当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを合計1〜10モルの割合で付加したものから水酸基を除いた残基である。M
1,M
2は、それぞれ独立に、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属または有機アミンである。)
【0012】
【化3】
(但し、一般式(3)中、R
5,R
6は、それぞれ独立に、炭素数6〜24の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基、または、炭素数6〜24の脂肪族アルコール1モル当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを合計1〜10モルの割合で付加したものから水酸基を除いた残基である。M
3は、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属または有機アミンである。)
【0013】
【化4】
(但し、一般式(4)中、R
7,R
8は、それぞれ独立に、炭素数6〜24の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基、または、炭素数6〜24の脂肪族アルコール1モル当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを合計1〜10モルの割合で付加したものから水酸基を除いた残基である。M
4は、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属または有機アミンである。nは、2又は3の整数である。)
【0014】
[2] 前記一般式(2)で示されるリン酸エステルP1、前記一般式(3)で示されるリン酸エステルP2、及び、前記一般式(4)で示されるリン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたとき、
前記一般式(2)で示されるリン酸エステルP1に帰属されるP核NMR積分比率が70〜100%である前記[1]に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0015】
[3] 前記一般式(2)中のR
4、前記一般式(3)中のR
5,R
6、及び、前記一般式(4)中のR
7,R
8が、それぞれ独立に、炭素数6〜18のアルキル基または炭素数6〜18のアルケニル基である前記[1]または[2]に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0016】
[4] 前記一般式(1)におけるX及びYの
いずれもが、カルボキシ基またはカルボキシ基の塩である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0017】
[5] 前記一般式(1)におけるR
1が、炭素数8〜16のアルキル基または炭素数8〜16のアルケニル基である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0018】
[6] 前記A成分及び前記B成分の含有割合の合計を100質量%としたとき、
前記A成分を30〜70質量%の割合で含有し、前記B成分を70〜30質量%の割合で含有する前記[1]〜[5]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0019】
[7] セメントを含有する結合材、水、細骨材、粗骨材、及び、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤を含有することを特徴とする水硬性組成物。
【発明の効果】
【0020】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、この水硬性組成物用添加剤を使用した水硬性組成物の空気量保持性が高く且つ得られるコンクリート硬化体等が良好な凍結融解抵抗性を発揮し、更に、既存の水硬性組成物用添加剤との相溶性に優れるという効果を奏するものである。
【0021】
本発明の水硬性組成物は、空気量保持性が高く且つ得られるコンクリート硬化体等が良好な凍結融解抵抗性を発揮するという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【0023】
(1)水硬性組成物用添加剤:
本発明の水硬性組成物用添加剤は、特定のA成分及び特定のB成分を含有するものである。このような水硬性組成物用添加剤は、これを使用した水硬性組成物の空気量保持性が高く且つ得られるコンクリート硬化体等が良好な凍結融解抵抗性を発揮しつつ、更には、既存の水硬性組成物用添加剤との相溶性にも優れるものである。
【0024】
ここで、空気量調整剤(AE剤)によってもたらさせる連行空気泡は、フレッシュコンクリートのワーカビリティー向上、単位水量の低減及び凍結融解抵抗性の向上に寄与する。一般的に、他の水硬性組成物用添加剤との相溶性が高い公知のAE剤は、空気量保持性及び凍結融解抵抗性が低く、一方、空気量保持性及び凍結融解抵抗性が高い公知のAE剤は、他の水硬性組成物用添加剤との相溶性が乏しいという問題がある。
【0025】
本発明は、下記の特定のA成分及び特定のB成分の両方を用いることによって、A成分に由来する高い空気量保持性を示し、且つ、B成分に由来する高い凍結融解抵抗性を示す。更には、下記の特定のA成分及び特定のB成分の両方を用いることで、上記の性能を維持しつつ、他の水硬性組成物用添加剤(既存の水硬性組成物用添加剤)との相溶性にも優れるAE剤(水硬性組成物用添加剤)を作製することができることを見出したものである。
【0026】
(1−1)A成分:
A成分は、下記一般式(1)で示される化合物である。この化合物は、得られる水硬性組成物用添加剤を使用した水硬性組成物において高い空気量保持性を発揮させるものである。更に、本発明においては、B成分と組み合わせて用いることによって、使用した水硬性組成物の空気量保持性が高く且つ得られるコンクリート硬化体等が良好な凍結融解抵抗性を発揮しつつ、他の水硬性組成物用添加剤(既存の水硬性組成物用添加剤)との相溶性に優れる水硬性組成物用添加剤が得られることになる。
【0027】
【化5】
(但し、一般式(1)中、R
1は、炭素数8〜20のアルキル基、炭素数8〜20のアルケニル基、炭素数8〜20のアリール基、(R
2)
2−N(CO)−で示される官能基(但し、R
2は、水素、炭素数8〜20のアルキル基または炭素数8〜20のアルケニル基であり、R
2は両方が水素である場合を除く)、または、R
3−O(CO)−で示される官能基(R
3は、炭素数8〜20のアルキル基または炭素数8〜20のアルケニル基である)である。X,Yは、それぞれ独立に、カルボキシ基、カルボキシ基の塩、ヒドロキシ基、スルホン酸基、スルホン酸基の塩、または、R
3−O(CO)−で示される官能基(但し、R
3は、炭素数8〜20のアルキル基または炭素数8〜20のアルケニル基であり、XとYの両方がR
3−O(CO)−で示される官能基である場合を除く)
とすることができるが、本発明では、X,Yは、いずれもカルボキシ基またはカルボキシ基の塩であるか、或いは、いずれかがスルホン酸基の塩である。)
【0028】
一般式(1)におけるR
1は、炭素数8〜16のアルキル基または炭素数8〜16のアルケニル基であることがよい。このようにすると、使用した水硬性組成物の空気量保持性が高く且つ得られるコンクリート硬化体等が良好な凍結融解抵抗性を発揮しつつ、他の水硬性組成物用添加剤(既存の水硬性組成物用添加剤)との相溶性に更に優れる水硬性組成物用添加剤が得られる。
【0029】
一般式(1)におけるX及びYの少なくとも一方は、カルボキシ基またはカルボキシ基の塩
とすることができるが、本発明では、一般式(1)におけるX及びYのいずれもが、カルボキシ基またはカルボキシ基の塩であることがよい。このようにすると、使用した水硬性組成物の空気量保持性が高く且つ得られるコンクリート硬化体等が良好な凍結融解抵抗性を発揮しつつ、他の水硬性組成物用添加剤(既存の水硬性組成物用添加剤)との相溶性に更に優れる水硬性組成物用添加剤が得られる。
【0030】
(1−2)B成分:
B成分は、下記一般式(2)で示されるリン酸エステルP1、下記一般式(3)で示されるリン酸エステルP2、及び、下記一般式(4)で示されるリン酸エステルP3からなる群より選択される少なくとも1つの化合物である。この化合物は、脂肪族アルコールリン酸エステルであり、このB成分に由来してコンクリート硬化体等において高い凍結融解抵抗性が発揮される。更に、本発明においては、A成分と組み合わせて用いることによって、使用した水硬性組成物の空気量保持性が高く且つ得られるコンクリート硬化体等が良好な凍結融解抵抗性を発揮しつつ、他の水硬性組成物用添加剤(既存の水硬性組成物用添加剤)との相溶性に優れる水硬性組成物用添加剤が得られることになる。
【0031】
【化6】
(但し、一般式(2)中、R
4は、炭素数6〜24の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基、または、炭素数6〜24の脂肪族アルコール1モル当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを合計1〜10モルの割合で付加したものから水酸基を除いた残基である。M
1,M
2は、それぞれ独立に、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属または有機アミンである。)
【0032】
【化7】
(但し、一般式(3)中、R
5,R
6は、それぞれ独立に、炭素数6〜24の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基、または、炭素数6〜24の脂肪族アルコール1モル当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを合計1〜10モルの割合で付加したものから水酸基を除いた残基である。M
3は、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属または有機アミンである。)
【0033】
【化8】
(但し、一般式(4)中、R
7,R
8は、それぞれ独立に、炭素数6〜24の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基、または、炭素数6〜24の脂肪族アルコール1モル当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを合計1〜10モルの割合で付加したものから水酸基を除いた残基である。M
4は、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属または有機アミンである。nは、2又は3の整数である。)
【0034】
一般式(2)中のR
4、一般式(3)中のR
5,R
6、及び、一般式(4)中のR
7,R
8は、それぞれ独立に、炭素数6〜18のアルキル基または炭素数6〜18のアルケニル基であることがよい。このようにすると、使用した水硬性組成物の空気量保持性が高く且つ得られるコンクリート硬化体等が良好な凍結融解抵抗性を発揮しつつ、他の水硬性組成物用添加剤(既存の水硬性組成物用添加剤)との相溶性に更に優れる水硬性組成物用添加剤が得られる。
【0035】
(1−2−1)リン酸エステルP1:
一般式(2)中のR
4としては、例えば、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、2−エチル−ヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、2−プロピル−ヘプチルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、2−ブチル−オクチルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール、テトラコシルアルコール等の炭素数6〜24の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基;ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、2−エチル−ヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、2−プロピル−ヘプチルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、2−ブチル−オクチルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール、テトラコシルアルコール等の炭素数6〜24の脂肪族アルコール1モル当たりエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの少なくとも一方を合計1〜10モルの割合で付加したものから水酸基を除いた残基が挙げられる。
【0036】
これらの中でも、R
4としては、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、2−エチル−ヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、2−プロピルヘプチルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、2−ブチル−オクチルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等の炭素数6〜18の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基が好ましい。
【0037】
一般式(2)で示されるリン酸エステルP1(脂肪族アルコールリン酸エステル)としては、例えば、モノヘキシルホスフェート、モノヘプチルホスフェート、モノオクチルホスフェート、モノ2−エチル−ヘキシルホスフェート、モノノニルホスフェート、モノデシルホスフェート、モノ2−プロピルへプチルホスフェート、モノウンデシルホスフェート、モノドデシルホスフェート、モノ2−ブチル−オクチルホスフェート、モノトリデシルホスフェート、モノミリスチルホスフェート、モノセチルホスフェート、モノステアリルホスフェート、モノイソステアリルホスフェート、モノオレイルホスフェート等が挙げられる。
【0038】
(1−2−2)リン酸エステルP2:
一般式(3)において、R
5,R
6は、一般式(2)中のR
4ついて記述したものと同一である。そのため、詳細な説明は省略する。
【0039】
一般式(3)で示されるリン酸エステルP2(脂肪族アルコールリン酸エステル)としては、例えば、ジヘキシルホスフェート、ジヘプチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジ2−エチル−ヘキシルホスフェート、ジノニルホスフェート、ジデシルホスフェート、ジ2−プロピルへプチルホスフェート、ジウンデシルホスフェート、ジドデシルホスフェート、ジ2−ブチル−オクチルホスフェート、ジトリデシルホスフェート、ジミリスチルホスフェート、ジセチルホスフェート、ジステアリルホスフェート、ジイソステアリルホスフェート、ジオレイルホスフェート等が挙げられる。
【0040】
(1−2−3)リン酸エステルP3:
一般式(4)において、R
7,R
8は、一般式(2)中のR
4について記述したものと同一である。そのため、詳細な説明は省略する。
【0041】
一般式(4)で示されるリン酸エステルP3(脂肪族アルコールリン酸エステル)としては、例えば、ジオクチルピロホスフェート、ジオクチルポリホスフェート、ジ2−エチルヘキシルピロホスフェート、ジ2−エチルヘキシルポリホスフェート、ジノニルピロホスフェート、ジドデシルピロホスフェート、ジオレイルピロホスフェート、ジオレイルポリホスフェート等が挙げられる。
【0042】
(1−2−4)P核NMR積分比率(%):
一般式(2)で示されるリン酸エステルP1、一般式(3)で示されるリン酸エステルP2、及び、一般式(4)で示されるリン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%とする。このとき、一般式(2)で示されるリン酸エステルP1に帰属されるP核NMR積分比率は、50〜100%であ
り、60〜100%であることが更によく、70〜100%であることが特によい。上記範囲とすることによって、使用した水硬性組成物の空気量保持性が高く且つ得られるコンクリート硬化体等が良好な凍結融解抵抗性を発揮しつつ、他の水硬性組成物用添加剤(既存の水硬性組成物用添加剤)との相溶性に更に優れる水硬性組成物用添加剤が得られる。上記下限値未満であると、他の水硬性組成物用添加剤との相溶性が十分でなくなるおそれがある。
【0043】
P核NMR積分比率(B成分から帰属されるP核NMRの積分比率(%))は、リン酸エステルのアルカリ金属塩等に過剰のKOHを加えてpHを12以上にした条件下で、
31P−NMR(VALIAN社製の商品名MERCURY plus NMR Spectrometor System、300MHz)に供したときの測定値を用いて、下記の式(a)〜式(c)に基づいて算出することができる値である。なお、溶媒は重水/テトラヒドロフラン=8/2(体積比)の混合溶媒を用いることができる。
【0044】
なお、式(a)〜式(c)中、「P化1」は、一般式(2)で示されるリン酸エステルP1に帰属されるP核NMR積分値を示す。「P化2」は、一般式(3)で示されるリン酸エステルP2に帰属されるP核NMR積分値を示す。「P化3」は、一般式(4)で示されるリン酸エステルP3に帰属されるP核NMR積分値を示す。
【0048】
(1−3)その他の成分:
本発明の水硬性組成物用添加剤は、A成分及びB成分以外に、その他の成分を更に含有していてもよい。このような他の成分としては、例えば、炭素数8〜24のアルキルベンゼンスルホン酸、炭素数8〜24のアルキルベンゼンスルホン酸の塩、炭素数8〜24のアルキルスルホン酸、炭素数8〜24のアルキルスルホン酸の塩、炭素数8〜24のアルケニルスルホン酸、炭素数8〜24のアルケニルスルホン酸の塩、炭素数8〜24のα−オレフィンスルホン酸、炭素数8〜24のα−オレフィンスルホン酸の塩、炭素数8〜24のアルキル硫酸、炭素数8〜24のアルキル硫酸の塩などを挙げることができる。
【0049】
その他の成分の含有割合としては、例えば、本発明の水硬性組成物用添加剤全体の0〜20質量%とすることができる。
【0050】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、土木、建築、二次製品等の水硬性結合材を含有する水硬性組成物に用いる添加剤として使用することができる。この水硬性組成物としては、具体的には、ペースト、モルタル、コンクリート等が挙げられる。
【0051】
また、本発明の水硬性組成物用添加剤は、既存の水硬性組成物用添加剤などの他の水硬性組成物用添加剤と併用することができる。このような他の水硬性組成物用添加剤としては、例えば、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、空気量調整剤としてAE剤、消泡剤、凝結遅延剤、収縮低減剤、増粘剤、硬化促進剤、防腐剤、防水剤、防錆剤等を挙げることができる。
【0052】
A成分及びB成分の含有割合の合計を100質量%としたとき、A成分を20〜80質量%の割合で含有し、B成分を80〜20質量%の割合で含有することがよい。更には、A成分を30〜70質量%の割合で含有し、B成分を70〜30質量%の割合で含有することがよい。A成分及びB成分について上記範囲とすることによって、本発明の水硬性組成物用添加剤を使用した水硬性組成物の空気量保持性が高く且つ得られるコンクリート硬化体等が良好な凍結融解抵抗性を発揮し、更に、既存の水硬性組成物用添加剤との相溶性に優れることになる。A成分及びB成分が上記下限値未満であるか、或いは上記上限値超であると、本発明の水硬性組成物用添加剤を使用した水硬性組成物における空気量保持性、及び、得られるコンクリート硬化体等の凍結融解抵抗性に関して、所望の性能が得られ難くなり、更に、既存の水硬性組成物用添加剤との相溶性について十分でなくなるおそれがある。
【0053】
(2)水硬性組成物:
本発明の水硬性組成物は、セメントを含有する結合材、水、細骨材、粗骨材、及び、本発明の水硬性組成物用添加剤を含有するものである。本発明の水硬性組成物用添加剤を含有する水硬性組成物は、空気量保持性が高く且つ得られるコンクリート硬化体等が良好な凍結融解抵抗性を発揮する。
【0054】
結合材としては、セメントを含有するものであり、例えば、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメントなどの各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメントなどの各種のセメントを挙げることができる。
【0055】
結合材は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、石灰石微粉末、石粉、シリカフューム、膨張材などの各種混和材を上述した各種セメントと併用してもよい。
【0056】
細骨材としては、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、珪砂、砕砂、各種スラグ細骨材などが挙げられる。
【0057】
粗骨材としては、例えば、川砂利、山砂利、陸砂利、砕石、各種スラグ粗骨材、軽量骨材などが挙げられる。
【0058】
水硬性組成物用添加剤としては、上述した本発明の水硬性組成物用添加剤を用いることができる。
【0059】
本発明の水硬性組成物は、その水/結合材比としては、通常、70%以下とすることができ、20〜60%とすることが好ましく、25〜55%とすることが更に好ましく、30〜55%とすることが特に好ましい。一般的に水/結合材比が大きくなると、水硬性組成物の凍結融解抵抗性が低くなるため、本発明の水硬性組成物用添加剤を用いることが望ましいが、70%を超えると凍結融解抵抗性が十分に得られないおそれがある。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
(合成例1)A成分(A−1)の合成:
反応容器にイオン交換水298.6gと48%水酸化カリウム90.3gを仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、反応系の温度を温水浴にて40℃に保持した。次に、ドデセニルコハク酸無水物(試薬、東京化成工業株式会社製、分岐鎖異性体混合物)111.1gを1時間かけて滴下して中和を行ない、その後45℃で2時間攪拌した。中和反応後、イオン交換水にて25%に調整して、A成分(A−1)の25%水溶液を得た。
【0062】
(合成例2〜7)A成分(A−2)〜(A−6)、(A−9)の合成:
表1に示すようにしたこと以外は、合成例1と同様にして、A成分(A−2)〜(A−6)、(A−9)のそれぞれの合成を行った。
【0063】
(合成例8)A成分(A−8)の合成:
反応容器にイオン交換水とエタノールの混合溶媒(混合比1:1)479.9g及び1,2−エポキシドデカン168.7gを仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、反応系の温度を温水浴にて60℃に保持した。次に、亜硫酸ナトリウム40%水溶液328.2gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で4時間攪拌し、中和反応後反応系のpHが7であることを確認した後、120℃、0.05MPaの条件下で溶媒を減圧留去した。その後、イオン交換水にて25%に調整してA成分(A−8)の25%水溶液を得た。
【0064】
【表1】
【0065】
なお、A成分(A−7)は、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(試薬、東京化成工業株式会社製)をイオン交換水にて25%に調整して、A成分(A−7)の25%水溶液を得た。
【0066】
(合成例9)B成分(B−1−1)の合成:
反応容器に1−オクタノール262.6gを仕込み、120℃で0.05MPaの条件下に2時間脱水処理した後、大気圧に戻し、攪拌しながら60±5℃で五酸化二燐167.2gを0.5時間かけて投入した。80℃にて3時間熟成した後、イオン交換水130.1gを投入して0.5時間熟成した。これに48%水酸化カリウム水溶液440.1gを50℃で滴下して中和を行ない、B成分(B−1)の25%水溶液を得た。
【0067】
(合成例10〜23)B成分(B−1−2〜B−1−7、B−2、B−3−1、B−3−2、B−4〜B−8)の合成:
B成分(B−1−2〜B−1−7)は、原料アルコール及び五酸化二燐の仕込み割合を変更したこと以外、B成分(B−1−1)の合成と同様にしてそれぞれ合成を行った。また、B成分(B−2、B−3−1、B−3−2、B−4〜B−8)については、使用する化合物(原料アルコール)の種類及び原料アルコールと五酸化二燐の仕込み割合を変化させたこと以外、B成分(B−1−1)の合成と同様にしてそれぞれ合成を行った。
【0068】
【表2】
【0069】
(合成例24)減水剤B液の合成:
イオン交換水76.6g及びα−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ヒドロキシ−ポリ(53モル)オキシエチレン150.7gを反応容器に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて65℃に保持した。次に、1%過酸化水素水8.8gを3時間かけて滴下するとともに、イオン交換水39.1gにアクリル酸9.6gを均一に溶解させた水溶液を3時間かけて滴下し、更にそれと同時に、イオン交換水7.0gにL−アスコルビン酸0.8gと連鎖移動剤としてチオグリコール酸0.6gを均一に溶解させた水溶液を4時間かけて滴下した。その後、65℃で2時間保持し、重合反応を終了した。
【0070】
重合反応終了後、30%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系のpHを5に調整し、イオン交換水にて40%に調整して、ビニル共重合体の40%水溶液(減水剤B液)を得た。
【0071】
このビニル共重合体(減水剤B液)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量は28000であった。
【0072】
(合成例25)減水剤C液の合成:
イオン交換水76.6g及びα−メタリル−ω−ヒドロキシ−ポリ(68モル)オキシエチレン158.3gを反応容器に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて65℃に保持した。次に、1%過酸化水素水8.8gを3時間かけて滴下するとともに、イオン交換水39.1gにアクリル酸7.0gとアクリル酸ヒドロキシエチル10.6gを均一に溶解させた水溶液を3時間かけて滴下し、更にそれと同時に、イオン交換水7.0gにL−アスコルビン酸0.8gと連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸1.1gを均一に溶解させた水溶液を4時間かけて滴下した。その後、65℃で2時間保持し、重合反応を終了した。
【0073】
重合反応終了後、30%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系のpHを6に調整し、イオン交換水にて25%に調整して、ビニル共重合体の25%水溶液を得た。このビニル共重合体をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量は32000であった。
【0074】
このビニル共重合体の25%水溶液100質量部に対してグルコン酸ナトリウムを1質量部添加して、減水剤C液を得た。
【0075】
[質量平均分子量の測定条件]
合成した減水剤B液及び減水剤C液におけるビニル共重合体の質量平均分子量の測定条件を以下に示す。
[GPC法]
装置:昭和電工株式会社製 Shodex GPC−101
検出器:示差屈折計(RI)
カラム:昭和電工株式会社 OHPak SB−G+SB−806M HQ+SB−806M HQ
溶離液:50mM硝酸ナトリウム水溶液
流速:0.7mL/分
カラム温度:40℃
標準物質:プルラン(昭和電工株式会社製)
【0076】
(その他の成分)
水硬性組成物用添加剤を構成するA成分及びB成分以外のその他の成分については、表3に示すものを使用した。
【0077】
【表3】
【0078】
その他の成分(R−1)は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ハード型)(試薬、東京化成工業株式会社製)をイオン交換水にて25%に調整して得られた、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ハード型)の25%水溶液である。
【0079】
その他の成分(R−2)は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ソフト型)(試薬、東京化成工業株式会社製)をイオン交換水にて25%に調整して得られた、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ソフト型)の25%水溶液である。
【0080】
その他の成分(R−3)は、リポランLB−440(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)をイオン交換水にて25%に調整して得られた、「リポランLB−440」の25%水溶液である。
【0081】
その他の成分(R−4)は、デシル硫酸ナトリウム(試薬、東京化成工業株式会社製)をイオン交換水にて25%に調整して得られた、デシル硫酸ナトリウムの25%水溶液である。
【0082】
なお、その他の成分(R−5)は、以下のようにして調製したロジンカリウム塩の25%水溶液である。即ち、まず、反応容器にイオン交換水701.7g、48%水酸化カリウム水溶液76.3gを仕込んだ後、90℃になるよう加温した。そこにロジン(試薬、富士フイルム和光純薬株式会社製)を攪拌しながら222.0g添加した。添加後、1時間熟成を行った。このようにして、ロジンカリウム塩の25%水溶液を得た。
【0083】
(実施例1〜22、比較例1〜5)
表4に示すように、各成分を混合し、イオン交換水で希釈して25質量%水溶液の水硬性組成物用添加剤を作製した。
【0084】
【表4】
【0085】
P核NMR積分比率(B成分から帰属されるP核NMRの積分比率(%))は、脂肪族アルコールリン酸エステルのアルカリ金属塩等に過剰のKOHを加えてpHを12以上にした条件下で、
31P−NMR(VALIAN社製の商品名MERCURY plus NMR Spectrometor System、300MHz)に供したときの測定値を用いて、下記の式(a)〜式(c)に基づいて算出した。なお、溶媒は重水/テトラヒドロフラン=8/2(体積比)の混合溶媒を用いた。
【0086】
【数4】
【0087】
【数5】
【0088】
【数6】
【0089】
ここで、式(a)〜式(c)中、「P化1」は、一般式(2)で示される脂肪族アルコールリン酸エステルのアルカリ金属塩等に帰属されるP核NMR積分値を示し、「P化2」は、一般式(3)で示される脂肪族アルコールリン酸エステルのアルカリ金属塩等に帰属されるP核NMR積分値を示し、「P化3」は、一般式(4)で示される脂肪族アルコールリン酸エステルのアルカリ金属塩等に帰属されるP核NMR積分値を示す。
【0090】
なお、表4中、B成分から帰属されるP核NMRの積分比率(%)の欄における「P1」は、式(a)から算出されるP核NMR積分比率を示し、「P2」は、式(b)から算出されるP核NMR積分比率を示し、「P3」は、式(c)から算出されるP核NMR積分比率を示す。
【0091】
(水硬性組成物用添加剤の水溶液と減水剤の相溶性試験)
作製した各水硬性組成物用添加剤の水溶液と減水剤の相溶性について試験を行った。具体的には、以下のようにして評価を行った。まず、変性リグニンスルホン酸とポリカルボン酸系化合物の複合体のAE減水剤「チューポールEX60(竹本油脂製:減水剤A液)」、上記のようにして合成した減水剤B液及び減水剤C液を用意した。その後、減水剤A液、減水剤B液、及び減水剤C液のそれぞれに対して、水硬性組成物用添加剤の25質量%水溶液を当該水溶液が1質量%となるように添加して試験液を得た。
【0092】
その後、20℃で1か月静置し、静置中における試験液の状態を適宜(具体的には、静置開始後、1日目、1週間目、1か月目)目視にて確認して相溶性を評価した。評価基準を以下に示す。評価結果を表5に示す。
S:1か月溶解(静置開始後、1か月目においても試験液に分離は確認されなかった)
A:1週間溶解(静置開始後、1週間目において試験液に分離は確認されなかったが、1か月目には分離が確認された)
B:1日間溶解(静置開始後、1日目において試験液に分離は確認されなかったが、1週間目には分離が確認された)
C:1日以内に分離(静置開始後、1日目において試験液に分離が確認された)
【0093】
【表5】
【0094】
(水硬性組成物(コンクリート組成物)の調製)
(実施例23〜44、比較例6〜10)
50Lのパン型強制練りミキサーに、表6に記載の調合条件で、普通ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、及び、細骨材を順次投入して10秒間空練りした。次いで、減水剤C液と水硬性組成物用添加剤を練り混ぜ水(蒲郡市上水道水)とともに上記ミキサーに添加し、120秒間練り混ぜた。この際、消泡剤(竹本油脂株式会社製:商品名「AFK−2」)を結合材(普通ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、及びフライアッシュ)に対して0.0005質量%となるように添加し、更に、水硬性組成物用添加剤を、目標空気量4.5±0.5%になるよう適宜調整して添加した。このようにして、各コンクリート組成物を調製した。表6中、配合NO.1では目標スランプフローを示し、配合NO.2では目標スランプを示す。
【0095】
なお、使用した材料は、具体的には以下の通りである。
セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製、宇部三菱セメント株式会社製及び住友大阪セメント株式会社製の等量混合物)密度3.16g/cm
3
高炉スラグ微粉末:エスメント(エスメント中部株式会社製)密度2.89g/cm
3
フライアッシュ:フライアッシュJISII種相当品(株式会社テクノ中部製)密度2.32g/cm
3
細骨材:大井川水系陸砂 密度2.58g/cm
3
粗骨材:岡崎産砕石 密度2.66g/cm
3
【0096】
【表6】
【0097】
(コンクリート組成物の評価)
作製した各コンクリート組成物について以下の方法で、空気量(容量%)、スランプまたはスランプフロー(cm)、及び、凍結融解抵抗性の各評価を行った。評価結果を表7に示す。
【0098】
[空気量(容量%)]
練り混ぜ直後(0分)及び練り混ぜ直後から30分後のコンクリート組成物について、JIS A 1128に準拠して測定した(表7中、「0分」、「30分」と記す)。その後、練り混ぜ直後(0分)及び練り混ぜ直後から30分後における空気量(%)の差(練り混ぜ直後の空気量−練り混ぜ直後から30分後の空気量)を算出し(表7中、「0分と30分の空気量の差」と記す)、評価を行った。評価基準を以下に示す。
S:0.5%未満
A:0.5%以上1.0%未満
B:1.0%以上1.5%未満
C:1.5%以上
【0099】
[スランプまたはスランプフロー(cm)]
空気量(%)の測定と同時に、練り混ぜ直後(0分)及び練り混ぜ直後から30分後におけるスランプまたはスランプフロー(cm)を、それぞれ、スランプはJIS A 1101、スランプフローはJIS A 1150に準拠して測定した。測定結果を表7に示す。なお、実施例24及び比較例7では、配合NO.2を採用し、スランプを示し、その他の実施例及び比較例では配合NO.1を採用し、スランプフローを示す。
【0100】
[凍結融解抵抗性]
各水硬性組成物用添加剤を用いて調製したコンクリート組成物(水硬性組成物)から硬化体(コンクリート硬化体)を作製し、この硬化体について、JIS A 1148に準拠して測定して得られた値を用い、耐久性指数を算出して評価した。評価基準を以下に示す。なお、耐久性指数は、最大値が100であり、100に近いほど、凍結融解に対する抵抗性が優れていることを示す。
S:耐久性指数が90以上
A:耐久性指数が80以上90未満
B:耐久性指数が70以上80未満
C:耐久性指数が70未満
【0101】
【表7】
【0102】
表7中、「※1」は、コンクリート組成物における、結合材に対する減水剤の添加量(質量%)を示し、「※2」は、コンクリート組成物における、結合材に対する水硬性組成物用添加剤の水溶液の添加量(質量%)を示す。
【0103】
(結果)
表5、表7に示される結果から明らかなように、本発明の水硬性組成物用添加剤を使用した水硬性組成物は、空気量保持性が高く且つ得られるコンクリート硬化体等が良好な凍結融解抵抗性の値を示すことが可能であり、更に、本発明の水硬性組成物用添加剤は、既存の水硬性組成物用添加剤との相溶性に優れることが確認された。
【課題】この水硬性組成物用添加剤を使用した水硬性組成物の空気量保持性が高く且つ得られるコンクリート硬化体等が良好な凍結融解抵抗性の値を示すことが可能であり、且つ、既存の水硬性組成物用添加剤との相溶性に優れる水硬性組成物用添加剤を提供する。