【文献】
BATUEVA, T.D. et al.,Sorption Properties of Polymers Based on N-Substituted Maleimides,Journal of Applied Polymer Science,2013年 8月15日,Vol. 129, No. 4,p. 1978-1983
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主鎖の繰り返し単位にピロリドン骨格またはピペリドン骨格と、イミド骨格とが含まれるポリマーが担持されている担体から構成される、クロマトグラフィー用の固定相。
前記重合性官能基が、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基またはω位に二重結合を有する炭素数4〜12のアルケニル基である、請求項8に記載のクロマトグラフィー用の固定相の製造方法。
前記Wがビニル基であり、Xがアミド基または炭素数1〜3のN−アルキルアミド基であり、Yが炭素数1〜5のアルキレン基であり、Rが独立してメチル基、エチル基またはプロピル基であり、Zは炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキルメルカプチル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジノ基、イミダゾリル基、アリル基または2−メチル−2−プロペニル基である、請求項10に記載のクロマトグラフィー用の固定相の製造方法。
【背景技術】
【0002】
混合物の成分およびその含量を分析し、また分離精製するための方法として、クロマトグラフィーはもっとも有効な手段である。これは、カラムあるいはキャピラリーと呼ばれる管の中で空間的に固定された多孔質固体(固定相)と、その隙間を移動する流体(移動相)に対する物質固有の分配比(吸着平衡とも理解される)を利用して、異なる物質を分離するものである。その代表的なものとしてガスクロマトグラフィーと液体クロマトグラフィーがある。前者は移動相として気体を用いるものである。
【0003】
しかし、分離対象が気相に混じって移動するためには、一定以上の蒸気圧がなければならず、そのため分子量が低く、また電荷を持たない比較的限られた分析対象にしか応用できない。一方、液体クロマトグラフィーは移動相として液体を用いるものであり、適切な移動相を選べば、大抵の物質に適用できる。
【0004】
液体クロマトグラフィーとは別に、混合物の成分およびその含量を分析し、また分離精製するための方法として、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)がある。これは、超臨界、あるいは亜臨界状態にある流体が、気体に比べてはるかに他の化合物をよく溶解し、液体に比べて低い粘度、高い拡散速度を有するという特徴を利用したものである。超臨界流体として二酸化炭素を用いるSFCが安全性や装置上の理由から一般的に採用されており、徐々に利用が拡がりつつある。
【0005】
液体クロマトグラフィーにおいては、極性の高い固定相と低い移動相の組み合わせを用いる順相クロマトグラフィー、この逆の極性である逆相クロマトグラフィーが代表的なモードである。最近はさらに両相とも極性であるHILICといったものも注目されている。
これに対して、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)は、その特徴が順相クロマトグラフィーに似ているといわれている。しかし、その特徴、メカニズムは未だよく解っていない点が多い。また超臨界、あるいは亜臨界二酸化炭素を主とする移動相から徐々に極性の強い移動相、すなわち逆相系に移行することにより広い極性範囲の分離対象をカバーする考え方もある。
【0006】
液体クロマトグラフィー用の固定相として、ポリビニルピロリドンを利用する例が知られている。
具体的には、架橋によって溶媒に溶けなくしたポリ(1−ビニル−2−ピロリドン)(PVP)の粒子をカラムに充填して固定相として用いた例が存在する(例えば、非特許文献1)。
また、硬質のゲルであるシリカゲルの表面にPVPを結合することも試みられている。例えば、タンパクや微生物の分離においてシリカゲルを固定相とすると、いわゆる変性により目的物の性質が変わったり、回収率が著しく低くなることがあるため、これを防ぐために表面を親水性のポリマーで被覆し、シリカゲルの影響を遮蔽することを意図したものがある(非特許文献2)。
また、PVPを結合する方法についてはいくつかの試みがある。例えばPVPをシリカゲル上にコーティングしたのち、γ−線によって架橋処理することが報告されている(非特許文献1)。また別の報告ではシリカゲルに、ビニル基やメタクリロキシ基を持つシランカップリング剤を結合した上で、これにビニルピロリドンモノマーを共重合させる方法が開示されている(非特許文献3)。しかし、これらは一般にピークがブロードであるためか、HPLCのような液体クロマトグラフィーではあまり利用されていない。
【0007】
SFCに用いられる固定相としては、例えば非特許文献4に紹介されるように、シリカゲルあるいはその表面を様々な原子団で修飾したものがある。
修飾基としては、様々な鎖長の飽和アルキル鎖を含むもの、ひとつあるいは二つのベンゼン環、縮合多環芳香族炭化水素基をアルキル鎖又は、アミド結合、エーテル結合を含むアルキル鎖でつないだもの、ハロゲン置換ベンゼン環を特徴とするもの、ハロゲン化アルキル基をつないだもの、2,3−ジヒドロキシプロピル基、CN基、NH
2基などの極性基をつないだもの、高分子修飾基として架橋ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどがある。また、グラファイト構造を持った炭素も特徴ある固定相である。これらの中で、特にSFCにおいてよく用いられるものは、2−エチルピリジンと呼ばれる、(2−ピリジル)エチル基を結合したものであり、普通の固定相ではテーリングして幅広いピークを与える塩基性化合物もシャープなピークとなって溶出するだけでなく、酸性化合物も適度に保持可能であるため、好んで用いられる。
【0008】
しかしながら、やはり非特許文献3に指摘されるように、様々な化合物に対する保持の傾向が相似的であり、特徴の差がない固定相も少なくない。
【0009】
これまでにSFC用の固定相として用いられてきたものの多くは、シリカゲルあるいはその表面を様々な低分子化合物で修飾したものが大多数であった。一方で、シリカゲル表面を高分子で修飾した固定相の報告例もある。たとえば、特許文献1は、主鎖の繰り返し単位に芳香環と双極性原子団を有するポリマーを固定相としており、様々な化合物の分離に有効であるだけでなく、良好な分子形状認識性を有することが知られている。しかし、前述の2−エチルピリジンカラムと異なり、塩基性物質の分析時にテーリングし、幅広いピークを与えるといった問題点があった。
【0010】
また、これらの固定相は上記ポリマーを粒子状あるいはモノリス状の担体に担持させて調製したものである。そのため、本来これを溶かしうる溶媒あるいはそれを含む混合溶媒を展開溶媒とすると、一部あるいは全部が溶解し、カラムとしての機能を損ねる場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のクロマトグラフィー用の固定相は、主鎖の繰り返し単位にピロリドン骨格またはピぺリドン骨格と、イミド骨格とが含まれるコポリマーが担持している担体を含むものである。
なお、本発明における固定相とは、クロマトグラフィー法において、分析用具(カラムまたはキャピラリー)の内部に固定され、これと接触しながら移動する流体との間で分離対象物質を分配し、分離に導く材料を意味するが、これが粒子である場合には、該粒子が充填されることによって形成された集合体を指すこともあり、またその個別の粒子を指すこともある。
【0019】
ピロリドン骨格またはピぺリドン骨格と、イミド骨格とを主鎖の繰り返し単位に有するとは、以下の式で示されるピロリドン骨格またはピペリドン骨格とイミド骨格とがコポリマー分子の主鎖に結合していることをいう。なお、本発明において、コポリマー分子中のピロリドン骨格またはピぺリドン骨格の単位の割合は、10〜90モル%であり、イミド骨格の割合が90〜10モル%であることが、固定相として性能を確保する観点から好ましく、この割合は、ピロリドン骨格またはピぺリドン骨格の単位が20〜80モル%、イミド骨格の単位が80〜20モル%であることがより好ましい。
【化7】
(式中、アスタリスクはコポリマーの主鎖と結合する位置を示す。)
【化8】
(式中、アスタリスクはコポリマーの主鎖と結合する位置を示す。)
【化9】
(式中、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、フェニル基及びヒドロキシフェニル基から選ばれる基である。アスタリスクはコポリマーの主鎖と結合する位置を示す。なお、上記イミド骨格に結合する2つの立体化学には、cis体とtrans体が存在するが、どちらかに限定されるものではない。)
【0020】
イミド骨格は、以下の式(I)で示されるマレイミド化合物に由来するものであることが好ましい。
【化10】
(式中、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、フェニル基及びヒドロキシフェニル基から選ばれる基である。)
【0021】
上記式(I)中、Rは水素、シクロヘキシル基、またはフェニル基であることが好ましい。
【0022】
本発明の固定相では、その安定性、分離性能の見地から担体にコポリマーが担持されており、コポリマーとの間に化学結合を形成させることがより好ましい態様である。具体的には、例えば以下の製造方法を例示することができる。
以下の製造方法のうち、(1)〜(7)の製造方法によれば、コポリマーと担体との間に化学結合(共有結合)が生じるものである。一方、(8)と(9)の製造方法によれば、担体の表面上でポリマー同士が架橋して存在することにより、担体表面からコポリマーが溶出したりすることがない。
超臨界流体クロマトグラフィー用の固定相において、担体との物理的結合を利用してコポリマーをコーティングすることは可能であるが、そのような場合には溶媒によってコポリマーが溶出することもあるので、好ましい方法とはいえない。
(1)1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンと、式(I)で示される化合物と、重合性官能基が結合している担体とをラジカル共重合させる工程を含む製造方法。
(2)1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンと、式(I)で示される化合物とを、末端に反応性シリル基を有する連鎖移動剤の存在下でラジカル重合させてコポリマーを得る工程と、得られたコポリマーを担体表面でシランカップリングする工程を含む製造方法。
(3)担体表面にドーマント種となる共有結合を導入し、1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンと式(I)で示される化合物とを用いて担体表面からリビングラジカル重合を行うことにより、担体表面にピロリドン骨格またはピペリドン骨格と、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に含むポリマーを導入する工程を含む製造方法。
(4)重合性二重結合を有するシランカップリング剤と、1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンと式(I)で示される化合物とを共重合させる工程と、得られたコポリマーを担体表面でシランカップリングする工程を含む製造方法。
(5)担体表面に連鎖移動性官能基を導入し、1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンと式(I)で示される化合物とをラジカル重合する工程を含む製造方法。
(6)開始末端に反応性シリル基を有するアニオン開始剤と1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンと式(I)で示される化合物とをアニオン重合させて、コポリマーを得る工程と、得られたコポリマーを担体表面でシランカップリングする工程を含む製造方法。
(7)アニオン開始剤と1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンと式(I)で示される化合物をアニオン重合後、反応性シリル基を有する停止剤を作用させてコポリマーを得る工程と、得られたコポリマーを担体表面でシランカップリングする工程を含む製造方法。
(8)1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンと式(I)で示される化合物と、架橋剤と、開始剤とを含む組成物と、担体とを混合して、架橋反応を行わせる工程を含む製造方法。
(9)1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンと式(I)で示される化合物とを共重合して得たコポリマーを担体の表面にコーティングし、γ線あるいは電子線の照射により、架橋反応を行わせる工程を含む製造方法。
いずれの方法でも重合時の重合温度、重合溶媒、添加剤等により、生成コポリマーの立体規則性を制御することも可能である。
【0023】
(1)の製造方法について説明する。
本発明の固定相の(1)の製造方法に用いられる重合性官能基が結合している担体は、以下の方法により作製することができる。
担体に結合している重合性官能基として、ラジカル重合性官能基を挙げることができ、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、またはω位に二重結合を有する炭素数4〜12のアルケニル基を挙げることができる。この中でも、ビニル基、アリル基またはイソプロペニル基が好ましい。
また、担体としては、多孔質有機担体又は多孔質無機担体が挙げられ、好ましくは多孔質無機担体を挙げることができる。多孔質有機担体として適当なものは、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリレート等から選択される高分子物質であり、多孔質無機担体として適当なものは、シリカゲル、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ガラス、カオリン、酸化チタン、ケイ酸塩、ヒドロキシアパタイトなどである。好ましい担体はシリカゲル、アルミナ、又はガラスである。
また最近のクロマトグラフィー用充填粒子には、コアシェルあるいはペリフェラルと呼ばれる、表層のみを多孔質にした担体を用いたものがあり、高いカラム効率を与えるとされる。本発明でも、これらの担体を用いることができ、上記で列挙した材料を用いたコアシェル型あるいはペリフェラル型の担体を用いてもよい。
担体として多孔質有機担体を用いる場合、公知の架橋剤との共重合法やX線、γ線、電子線による架橋により、上記の重合性官能基を担体と化学結合させることができる。
担体としてシリカゲルを用いる場合には、シリカゲルが有するシラノール基を介して、上記の重合性官能基が担体と化学結合する態様を挙げることができる。
シリカゲル以外の担体を用いる場合には、担体の表面処理を行うことにより、担体自体への分離対象物質の過剰な吸着を抑制できるとともに、表面処理で導入された基を介して重合性官能基と結合させることができる。表面処理剤としては、アミノプロピルシランのようなシランカップリング剤や、チタネート系・アルミネート系カップリング剤を挙げることができる。
【0024】
上記のような、重合性官能基が結合している担体は、例えば下記式(II)で表される化合物と、担体としてシリカゲルを用いる場合はシリカゲルとをシランカップリングすることにより得られる。
【化11】
(式(II)中、Wは、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、またはω位に二重結合を有する炭素数4〜12のアルケニル基であり、Xは、アミド基、エステル基、炭素数1〜3のN−アルキルアミド基、エーテル基、スルホキシド基、スルホン基、スルフィド基、炭素数6〜20のアリーレン基またはリン酸エステル基であり、Yは、炭素数1〜30のアルキレン基であり、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基であり、Zは式(II)中のケイ素原子と担体との間に結合を作らせ得る脱離基である。nは1〜3の整数である。)
【0025】
上記式(II)中、Wは、ビニル基、アリル基、またはイソプロペニル基であることが好ましい。
上記式(II)中、Xは、Wと末端のZ基とのリンカーの一部であり、アミド基、炭素数1〜3のN−アルキルアミド基、エステル基、フェニレン基であることが好ましい。
上記式(II)のYは、炭素数1〜5のアルキレンであることが好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基のいずれかであることがより好ましい。
上記式(II)のRは、メチル基、またはエチル基であることが好ましい。
なお、式(II)中、Xが「アミド基」である場合、−N−CO−Yと、−CO−N−Yの態様を含み、Xが「N−アルキルアミド基」である場合、−NR−CO−Yと、−CO−NR−Yの態様を含む。
上記式(II)において、Wがビニル基で、Xがアミド基またはN−アルキルアミド基である態様と、Wがイソプロペニル基で、Xがアミド基またはN−アルキルアミド基である態様が、合成が容易な点と分離対象が塩基性物質である場合に良好なピーク形状を得る点で好ましい。
なお、式(II)のXが「アミド基」の場合、−CO−NH−の構造において、窒素にYが結合し、「N−アルキルアミド基」の場合、−CO−NR−(Rは炭素数1〜3のアルキル基)の構造において、窒素にYが結合している態様が好ましい。
【0026】
上記式(II)中のZは、脱離基であり、式(II)中のケイ素原子と、担体を構成する酸素のような原子との間に結合を作らせ得るものであれば、いかなる原子団であってもよい。取り扱いのしやすさと反応性のバランスが良いために、一般的に用いられるものは、炭素数1〜5のアルコキシ基、特に好ましくはメトキシ基あるいはエトキシ基を挙げることができ、ハロゲン(塩素、臭素またはヨウ素)、炭素数1〜20のアルキルメルカプチル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジノ基、イミダゾリル基のような窒素含有基、アリル基または2−メチル−2−プロペニル基を挙げることができる。脱離基の種類によって反応条件(触媒添加も含めて)を調整できる。
【0027】
上記式(II)で表される化合物は、上記式(II)のWで表される構造を有する化合物と、上記式(II)の−Y−SiR
3−nZ
nの構造を有する化合物とを反応させることにより得ることができる。
それらの化合物同士の反応により、上記式(II)の「−X−」が生じる。
【0028】
Wで表される構造を有する化合物としては、ビニル基の1−位に結合する水素が、炭素数が1〜12のアルキル基で置換されていてもよいα−アルキルアクリル酸や、ビニル基の1−位に結合する水素が、炭素数が1〜12のアルキル基で置換されていてもよいα−アルキルアクリル酸のハロゲン化物を挙げることができる。
【0029】
上記式(II)の−Y−SiR
3−nZ
nの構造を有する化合物としては、上記で説明したXの前駆体である基を有し、脱離基として炭素数が1〜5のアルコキシ基を有するシランカップリング剤を挙げることができる。具体的には、アミノアルキルアルコキシシランやヒドロキシアルキルアルコキシシランを挙げることができる。
【0030】
本発明で用いる重合性官能基が結合している担体は、上記式(II)で表される化合物と、シリカゲルとをシランカップリングすることによって得られる表面修飾シリカゲルであることが好ましい。
【0031】
上記式(II)で表される化合物を用いることとは別に、まず最初に上記式(II)の−Y−SiR
3−nZ
nの構造を有する化合物(例えばアミノアルキルアルコキシシランやヒドロキシアルキルアルコキシシラン)と、担体としてのシリカゲルとをカップリングした後、Wで表される構造を有する化合物(例えばビニル基に結合する炭素の水素がアルキルで置換されてもよいα−アルキルアクリル酸)を用いて反応を起こさせることもできる。
【0032】
本発明の固定相は、上記で説明した(1)の製造方法で製造する場合、1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンと式(I)で示される化合物と重合性官能基が結合している担体とを共重合させて得られるものである。
その共重合の態様としては、1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンのビニル基と、式(I)で示される化合物の二重結合と、重合性官能基の全てについて共重合を起こさせることが挙げられ、その際の反応条件は公知の方法を用いることができる。
【0033】
上記で説明した原料や製造方法を用いて得られる本発明の固定相は、以下の構造を有すると推定される。
【化12】
【化13】
(式III−1またはIII−2中、W’は、式(II)のWに由来し、付加重合により生成する基であり、Xは、アミド基、エステル基、炭素数1〜3のN−アルキルアミド基、エーテル基、スルホキシド基、スルホン基、スルフィド基、フェニレン基、またはリン酸エステル基であり、Yは、炭素数1〜30のアルキレン基であり、Vは担体表面と結合したエーテル基、もしくは未反応の上記式(II)中のZ基、またはR基である。なお、式III−1中において、ピロリドン骨格とイミド骨格は必ずしも交互に存在していなくてもよい。式III−2中においても、ピペリドン骨格とイミド骨格は必ずしも交互に存在していなくてもよい。)
【0034】
上記式(III−1)または(III−2)において、W’の具体例としては、単結合、分岐鎖を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基を挙げることができる。好ましくは、単結合、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基を挙げることができる。
式(III−1)または(III−2)中のX及びYの好ましい基は、上記式(II)と同様のものを採用できる。
式(III−1)または(III−2)中、pは1以上を例示でき、qは10〜1500程度を例示できる。pは好ましくは1〜10であり、qは好ましくは15〜1100、更に好ましくは20〜1000である。なお、p、q、いずれも2以上の場合、式(III−1)または(III−2)では、ピロリドン骨格またはピペリドン骨格を有する単位、イミド骨格を有する単位と担体との結合を有する単位とは、それぞれが連続するブロック共重合体のように見えるが、式(III−1)または(III−2)は、それぞれの残基の数のみを表現しているのであり、実際には交互性の高いランダムな共重合体であろうと推定される。
式(III−1)または(III−2)のVについて、上記式(II)で示される化合物において、n=1の場合、V=Rであり、n=2の場合、全てのVの数に対し、R基の割合は50%であり、未反応のZ基またはZ基が反応によって担体表面に置き換わった構造がそれぞれ0〜50%および50%〜0%であり、n=3の場合、未反応のZ基またはZ基が反応によって担体表面に置き換わった構造がそれぞれ0〜100%および100%〜0%である。
【0035】
なお、上記式(III−1)や(III−2)で示される化合物の重合の際には、溶媒と1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンの混合溶液に重合性官能基が結合している担体を分散させて重合させてもよいし、少量の溶媒とともに1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンを重合開始剤を、重合性官能基が結合している担体に吸収させた後、溶媒を除去して担体の表面で実質的に無溶媒下で重合させることもできる。また、後者の場合、溶媒をある程度残しながらも、重合溶液が担体に吸収されていて、担体の粒子が流動しない状態で重合させることもできる。
【0036】
次に、本発明の固定相を得るための(2)の製造方法について説明する。
(2)の製造方法は、末端に反応性シリル基を有する連鎖移動剤の存在下でラジカル重合させる工程と、得られたコポリマーを担体表面でシランカップリングする工程を含む製造方法である。
(2)の製造方法で用いる、末端に反応性シリル基を有する連鎖移動剤として、以下の式(IV)で示される化合物を例示することができる。本発明における反応性シリル基とは、下記の式(IV)のZで示されるような脱離基が結合しているシリル基のことであり、ケイ素を含む金属水酸化物に対して縮合によりSi−O−M(Mは金属原子)の形の結合を形成する性質のことである。以下の他の製法において用いる化合物においても同様である。
【化14】
(式(IV)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基であり、Zは式(IV)中のケイ素原子と担体との間に結合を作らせ得る脱離基である。Yは炭素数1〜30のアルキレン基であり、Tは連鎖移動性官能基である。nは1〜3の整数である。)
【0037】
式(IV)中、Rは、メチル基、エチル基、あるいはプロピル基であることが好ましい。Zは、脱離基であり、式(IV)中のケイ素原子とシリカゲルを構成する酸素との間に結合を作らせ得るものであれば、いかなる原子団であってもよい。
取り扱いのしやすさと反応性のバランスが良いために、脱離基として一般的に用いられるものは、炭素数1〜5のアルコキシ基であり、その中でもメトキシ基あるいはエトキシ基を例示でき、ハロゲン(塩素、臭素またはヨウ素)、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジノ基、イミダゾリル基のような窒素含有基、またアリル基やイソプロペニル基も用いることができ、脱離基の種類によって反応条件(触媒添加も含めて)を調整できる。Yは、炭素数1〜10のアルキレン基であることがより好ましい。Tは連鎖移動性官能基である。連鎖移動性官能基とは重合反応において、生長活性種の移動および再開始反応を伴う連鎖移動反応が活発に起こる官能基のことである。連鎖移動性官能基があることで、生成ポリマーの分子量や末端構造の制御がある程度可能となる。連鎖移動性官能基の具体例としては、ハロゲン化された炭素数1〜12のアルキル基、末端にチオールを有する炭素数1〜12のアルキル基またはジスルフィド基を基内に有する炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。
前記ハロゲン化された炭素数1〜12のアルキル基のハロゲンは塩素、臭素またはヨウ素を挙げることができ、そのアルキル基としては、炭素数1〜3のアルキル基を挙げることができる。
このような連鎖移動剤の存在下、少量のラジカル発生剤を触媒に用い、1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンのラジカル重合を行うことで、下記式(V−1)または(V−2)で示される構造を有すると推定される化合物を得ることができる。このときに、連鎖移動剤とモノマーのモル比からある程度の分子量の制御が可能となる。ラジカル発生剤は、重合反応に用いる公知のものを用いることができ、その具体例としては、アゾ化合物や過酸化物を挙げることができる。
【0038】
【化15】
【化16】
(式V−1またはV−2中、T’は式(IV)のTに由来し、連鎖移動反応により生成する基である。Y、R、Zは式(IV)のものと同じものを示し、qは2〜1500の整数である。)
【0039】
式(V−1)または(V−2)において、T’は、Tが末端にハロゲンが結合している炭素数1〜12のアルキル基の場合、そのハロゲンが置換された炭素数1〜12のアルキレン残基であり、Tが末端にチオールを有する炭素数1〜12のアルキル基またはジスルフィド基を基内に有する炭素数1〜12のアルキル基である場合はチオエーテルである。
本発明の固定相の(2)の製造方法で用いる担体は、(1)の製造方法で用いる担体と同じものを用いることができる。
式(V−1)または(V−2)で示される化合物と、担体とをシランカップリング反応によって結合させる方法ついては、公知のシランカップリングの方法を用いることができる。
式(V−1)または(V−2)で示される化合物と、担体とを結合させて得られる固定相は以下の構造を有していると推察される。
【化18】
【化19】
(式VI−1またはVI−2中、T’は式IVのTに由来し、連鎖移動反応により生成する基である。qは2〜1500の整数である。Vは担体表面と結合したエーテル基、もしくは未反応の上記式(IV)で示されるZ基、またはR基である。)
【0040】
式(VI−1)または(VI−2)のVについて、上記式(IV)で示される化合物において、n=1の場合、V=Rであり、n=2の場合、全てのVの数に対し、R基の割合は50%であり、未反応のZ基またはZ基が反応によって担体表面に置き換わった構造がそれぞれ0〜50%および50%〜0%であり、n=3の場合、未反応のZ基またはZ基が反応によって担体表面に置き換わった構造がそれぞれ0〜100%および100%〜0%である。
【0041】
次に(3)の製造方法について説明する。
担体表面にドーマント種となる安定な共有結合を導入し、表面からリビングラジカル重合を行うことにより、シリカゲルのような担体表面にピロリドン骨格またはピペリドン骨格と、イミド骨格とを主鎖の繰り返し単位に含むポリマーを導入することが可能である。
この手法では、シリカゲルのような担体表面上に高密度にピロリドン骨格またはピペリドン骨格と、イミド骨格とを主鎖の繰り返し単位に含むポリマーを導入でき、高度に配向可能なブラシ状ポリマーを得ることが可能である。
上記「ドーマント種となる安定な共有結合の導入とリビングラジカル重合」に関して、よく用いられている例を以下の(i)〜(iii)に示す。
(i) シリカゲルのような担体表面に、銅・鉄・ルテニウムなどの遷移金属触媒によって活性化可能な炭素−ハロゲン結合を導入し、一電子酸化還元機構によりハロゲンの引き抜きと引き戻しを可逆的に行うことで、1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンと、式(I)で示される化合物の重合をリビング的に進行させる。この技術を用いることでシリカゲルのような担体表面上に、高密度にピロリドン骨格またはピペリドン骨格と、イミド骨格とを主鎖の繰り返し単位に含むコポリマーを導入することが可能である。
(ii) シリカゲルのような担体表面に、例えばアルコキシアミンを導入し、そのアルコキシアミンの炭素−酸素結合が熱的に解離して炭素ラジカルとニトロキシドを生成すると、1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンと、式(I)で示される化合物の重合が進行するとともに生長炭素ラジカルはニトロキシドにより可逆的にすばやくキャッピングされることで再びドーマント種に戻り、重合反応が制御される。この技術を用いることでシリカゲルのような担体表面上に、高密度にピロリドン骨格またはピペリドン骨格と、イミド骨格とを主鎖の繰り返し単位に含むコポリマーを導入することが可能である。
(iii)シリカゲルのような担体表面に、チオカルボニル化合物やヨウ素化合物を導入した場合、ポリマー末端間でのラジカル種とドーマント種との交換反応による可逆的な連鎖移動が速く起こることで、すべてのコポリマー鎖が同じように生長する機会が与えられて、分子量の制御が可能となる。この技術を用いることでシリカゲルのような担体表面上に、高密度にピロリドン骨格またはピペリドン骨格と、イミド骨格とを主鎖の繰り返し単位に含むコポリマーを導入することが可能である。
【0042】
上記(i)〜(iii)のいずれにおいても、担体については、シリカゲルの他には上記(1)や(2)の製造方法で用いられるものと同じものを用いることができる。
【0043】
次に(4)の製造方法について説明する。
この製造方法は、重合性二重結合を有するシランカップリング剤と、1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンとを共重合させる工程と、得られたポリマーを担体表面でシランカップリングする工程を含む方法である。
【0044】
重合性二重結合を有するシランカップリング剤としては、例えば上記の式(II)で表される構造を有する化合物を挙げることができる。上記式(II)における置換基及びその好ましい例についても、上記式(II)で説明したものと同じ条件を用いることができる。
上記(4)の製造方法においても、担体については、シリカゲルの他には上記(1)や(2)の製造方法で用いるものと同じものを用いることができ、1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンや式(I)で示される化合物についても、(1)や(2)の製造方法と同じものを用いることができる。
この製造方法では、コポリマー合成の際に適当な連鎖移動剤や、上述のリビングラジカル重合法を用いることで、分子量の制御も可能である。得られたコポリマーと担体とをシランカップリング反応によって結合させる方法ついては、公知のシランカップリングの方法を用いることができる。
【0045】
次に(5)の方法について説明する。
この製造方法は、担体表面に連鎖移動性官能基を導入し、1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンと式(I)で示される化合物をラジカル重合する工程を含む製造方法である。
【0046】
上記のような連鎖移動性官能基が結合している担体は、例えば下記式(VII)で表される化合物と、担体としてシリカゲルを用いる場合はシリカゲルとをシランカップリングすることにより得られる。
【化20】
(式(VII)中、Tは連鎖移動性官能基であり、Yは炭素数1〜30のアルキレン基であり、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基であり、Zは式(VII)中のケイ素原子と担体との間に結合を作らせ得る脱離基である。nは1〜3の整数である。)
【0047】
式(VII)中、Rは、メチル基、エチル基、あるいはプロピル基であることが好ましい。Zは、脱離基であり、式(VII)中のケイ素原子と、担体がシリカゲルである場合、シリカゲルを構成する酸素との間に結合を作らせ得るものであれば、いかなる原子団であってもよい。担体がシリカゲルでない場合でも、担体を構成する原子との間に結合を作らせ得るものである。
Tについては、(2)と同じものを、RやZについても、(1)や(2)や(4)で用いたものと同じものを好ましく用いることができる。
本発明で用いる連鎖移動性官能基が結合している担体は、上記式(VII)で表される化合物と、シリカゲルとをシランカップリングすることによって得られる表面修飾シリカゲルであることが好ましい。
【0048】
表面に連鎖移動性官能基が導入された(化学結合した)担体の存在下、少量のラジカル発生剤を触媒として用い、1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンと、式(I)で示される化合物のラジカル重合を行うことで、担体表面にコポリマーを固定化することが可能となる。上記(5)の製造方法においても、担体については、シリカゲルの他には上記(1)や(2)の製造方法で用いるものと同じものを用いることができる。また、ラジカル発生剤についても、(2)の製造方法で用いるものと同じものを用いることができる。
【0049】
次に(6)の方法について説明する。
この製造方法は、開始末端に反応性シリル基を有するアニオン開始剤と1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンとをアニオン重合させてコポリマーを得る工程と、得られたコポリマーを担体表面でシランカップリングする工程を含む製造方法である。
【0050】
上記のような開始末端に反応性シリル基を有するアニオン開始剤は、例えば下記式(VIII)で表される化合物と、担体としてシリカゲルを用いる場合、そのシリカゲルとをシランカップリングすることにより得られる。
【化21】
(式(VIII)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基であり、Zは式(VIII)中のケイ素原子と担体との間に結合を作らせ得る脱離基であり、Yは、任意の水素が芳香環を有する基で置換されもよい炭素数1〜30の分岐または直鎖状のアルキレン基である。Mはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属である。nは1〜3の整数である。)
【0051】
式(VIII)中、Rはメチル基、エチル基またはプロピル基であることが好ましく、Y、Zは前記式(II)と同じものを好ましく挙げることができ、Mはリチウム、ナトリウム、カリウム、またはマグネシウムを好ましく挙げることができる。
Yについて、任意の水素が置換されてもよい芳香環を含む基としては、例えば1つまたは2つのフェニル基を有する炭素数4〜20のアルキル基を挙げることができ、より具体的には1,1−ジフェニルヘキシル基などを挙げることができる。
【0052】
このようなアニオン開始剤の存在下、公知の方法により末端に反応性シリル基を有するピロリドン骨格またはピペリドン骨格と、イミド骨格とを主鎖の繰り返し単位に含むコポリマーを合成できる。
ただし、重合時の副反応により開始末端に直接シランカップリング剤を導入することが難しい場合、保護基により開始末端を保護した誘導体を合成し、重合後に脱保護し、定量的にシランカップリング剤へと変換することによっても得ることができる。このようにして得られたコポリマーと担体とをシランカップリング反応によって結合させる方法ついては、公知のシランカップリングの方法を用いることができる。
【0053】
次に(7)の方法について説明する。
この製造方法は、アニオン開始剤と1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンと、式(I)で示される化合物をアニオン重合させ、反応性シリル基を有する停止剤を作用させてコポリマーを得る工程と、得られたコポリマーを担体表面でシランカップリングする工程を含む製造方法である。停止末端に直接シランカップリング剤を導入することが難しい場合、保護基により保護した誘導体を用いて停止後に脱保護し、定量的にシランカップリング剤へと変換することによっても得ることができる。
【0054】
アニオン開始剤を用いた重合は、公知の方法を用いることができる。また、反応性シリル基を有する停止剤は、例えば下記式(IX)で表される化合物が挙げられる。
【化22】
(式(IX)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基であり、Zは式(IX)中のケイ素原子と担体との間に結合を作らせ得る脱離基であり、Yは、任意の水素が芳香環を含む基で置換されていてもよい炭素数1〜30の分岐または直鎖状のアルキレン基である。Z’は、生長アニオン末端と停止剤との反応で脱離する基であり、nは1〜3の整数である。)
【0055】
Zの具体例としては、前記式(II)で具体例として挙げられているものを好ましく挙げることができる。
Z’の具体例としては、ハロゲン(塩素、臭素、またはヨウ素)、炭素数1〜5のアルコキシ基、その中でも好ましくはメトキシ基あるいはエトキシ基、アルキルメルカプチル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジノ基、イミダゾリル基のような窒素含有基、アリル基または2−メチル−2−プロペニル基を挙げることができる。脱離基の種類によって反応条件(触媒添加も含めて)を調整できる。
Yについて、任意の水素が置換されてもよい芳香環を含む基としては、例えば1つまたは2つのフェニル基を有する炭素数4〜20のアルキル基を挙げることができ、より具体的には1,1−ジフェニルヘキシル基などを挙げることができる。
このようにして得られたコポリマーと担体とをシランカップリング反応によって結合させる方法については、公知のシランカップリングの方法を用いることができる。
【0056】
次に(8)の製造方法について説明する。
この製造方法は、1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンと、式(I)で示される化合物と、架橋剤と、開始剤とを含む組成物と、担体とを混合して、架橋反応を行わせる工程を含む。
この製造方法では、該モノマーと架橋剤とを共重合することによって不溶性の重合物とするものである。具体的には、1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンと、式(I)で示される化合物と、架橋剤として例えばジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレートなどを前記モノマーに対し0.01〜1当量、適量のラジカル開始剤、必要に応じて溶媒を混じたものを該担体に吸収させ、開始剤が重合を開始する条件におくことができる。
また、ラジカル開始剤としては、一般的なラジカル重合反応に用いる公知のものを使用でき、その具体例としては、アゾ化合物や過酸化物を挙げることができる。
【0057】
次に(9)の製造方法について説明する。
(9)の製造方法は、非特許文献2に記載されている方法を改良したものである。
まず1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンと式(I)で示される化合物とを共重合して得たコポリマーを溶解した溶液に担体を分散させ、溶媒を除去する。溶媒除去後、1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンと式(I)で示される化合物とを共重合して得たコポリマーが表面にコーティングされた担体に熱を加える。その際の温度としては、50℃〜180℃程度を挙げることができる。熱を加えることにより、担体上に1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンと、式(I)で示される化合物とを共重合して得たコポリマーを固定化し、その後、γ線や電子線を照射して、架橋反応を起こさせて、担体と1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンと、式(I)で示される化合物とを共重合して得たコポリマーを結合させる。
【0058】
上記(1)〜(9)のいずれの方法により得られた固定相も超臨界流体クロマトグラフィー用の固定相として優れた性能を有する。
【0059】
上記の操作を経て得られる、本発明の固定相の担体に担持された、主鎖の繰り返し単位にピロリドン骨格またはピペリドン骨格と、イミド骨格とが含まれるポリマーの重量平均分子量は、1,000〜5,000,000であることが好ましい。なお、本発明でいうコポリマーの重量平均分子量は、例えば上記式(III−1)、(III−2)や(V−1)、(V−2)で示される構造の場合、主鎖の繰り返し単位である−(CH
2−CAB)
n−の部位のものである。
上記重量平均分子量は、コポリマーの溶媒への溶解性、コポリマーを担体に担持させる際の粒子の凝集の防止、移動相溶媒への溶解の抑制、担体に化学結合する際の結合量の維持、等の観点から、上記範囲が好ましい。最適点はコポリマーの種類によって異なる。
ただし、本発明の固定相の製造方法(1)においては、1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドン及び式(I)で示される化合物の重合とシリカゲルへの固定化が同時に起こるため、重合溶液の上澄みから重量平均分子量を見積もる。
製造方法(2)、(4)、(6)、(7)においては、主鎖の繰り返し単位にピロリドン骨格またはピペリドン骨格と、イミド骨格とを含むコポリマーを担体に結合させる前に、そのコポリマーの重量平均分子量を測定する。
重量平均分子量はポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)方法により測定できる。GPC溶媒としては、コポリマーの溶解の程度に応じてDMF、NMP、THFを適宜用いることができる。DMFやNMPを用いる場合は、異常なピーク形状を避けるため、10−100mMの塩化リチウムあるいは臭化リチウムを添加してもよい。
【0060】
本発明の固定相のうち、製造方法(1)〜(7)を用いて得られるものでは、主鎖の繰り返し単位にピロリドン骨格またはピペリドン骨格と、イミド骨格とが含まれるコポリマーが担体表面に共有結合しているので、本来これらのコポリマーを溶かしうる溶媒あるいはそれを含む混合溶媒を展開溶媒に用いても、溶解することなく、固定相としての機能を損ねることはない。
また、本発明の固定相のうち、製造方法(8)、(9)を用いて得られるものも、担体上でコポリマー同士が架橋していることにより、本来これらコポリマーを溶かしうる溶媒あるいはそれを含む混合溶媒を展開溶媒に用いても、溶解することがない。
【0061】
本発明の固定相の比表面積は用いる担体の比表面積に相当するため、所望の比表面積の担体を選択すればよい。担体が、例えばシリカゲルである場合、適当な製品を選ぶことで調整することができる。一般的に、コポリマーを担体に担持させる態様では、担持の前後で比表面積に誤差以上の変化はないため、固定相の比表面積は、用いる担体の比表面積と同一とみなすことができる。
【0062】
本発明で用いることができる、このような担体の平均粒径は、通常0.1〜1000μm、好ましくは1〜50μmであり、平均孔径は、通常10〜10000Å、好ましくは50〜1000Å、さらに好ましくは100〜1000Åである。この範囲においても、細孔が小さいほど表面積が大きいため、ポリマー結合率が大きくなるが、担体であるシリカゲルによる吸着への影響も大きくなる(例えば塩基性試料の保持が大きくなり、ピークがテイリングする)傾向があり、表面積が小さいほどポリマー結合率が上がりにくい傾向が見られる。
また、担体の比表面積は、通常5〜1000m
2/g、好ましくは10〜500m
2/gである。一般的に、コポリマーを担体に担持させる場合であれば、担持の前後で比表面積に誤差以上の変化はないため、固定相の平均粒径は、用いる担体の平均粒径と同一とみなすことができる。つまり、本発明の固定相が粒子状である場合には、その平均粒径は、0.1μm〜1000μmである態様を挙げることができ、好ましくは1〜50μmである。
【0063】
担体に担持された該コポリマーの平均厚み(担体g当たり担持量/担体比表面積)は通常0.5〜5nmが好ましい。上記範囲であれば、ピークがシャープになる傾向があり好ましい。
【0064】
このように、コポリマーが担体上に担持された固定相において、固定相100質量部中に含まれるコポリマーの質量部の割合(%)は、好ましくは1〜50質量%であり、より好ましくは3〜30質量%であり、さらに好ましくは5〜20質量%である。このような割合とすることで、コポリマーの吸着能力を適切に発現させながら、徒に保持を強くすることやピークを幅広にすることを避けることができ、好ましい。
なお、固定相100質量部中に含まれるコポリマーの質量部の割合(%)は、元素分析により測定することが可能であり、コポリマーが担持する前の担体の炭素含有量と、得られた固定相の炭素含有量を測定結果に基づき、コポリマーが担持する前の担体に含まれる炭素以外の炭素は、全てコポリマーに由来するものとし、さらにポリマー中のモノマー組成を便宜上1:1(モル比)と仮定して固定相中のコポリマーの質量部の割合を算出する。
【0065】
本発明の固定相が粒子状である場合の平均粒径は、球形であればその直径を指し、不定形粒子の場合には、該粒子体積と等しくなる球の直径で表される。平均粒径は顕微鏡画像用いて測定する装置、例えばMalvern社製Mastersizer 2000Eにより測定することができる。
【0066】
本発明の固定相を粒子として用いる場合には、アスペクト比が2以下、好ましくは1.5以下である球状粒子状であることが好ましい。真球に近ければ近いほど好ましいので、下限は、1まで特に制限されない。
アスペクト比は以下のとおりに測定する。試料を観察台上に無作為に散布した状態で真上から電子顕微鏡あるいは光学顕微鏡によって観察し、独立した(他のどの粒子とも接触あるいは重複していない)一次粒子が10個以上観察される任意の画面において、画面内の個々の独立した一次粒子に対し、長軸および短軸(長軸に垂直で最も長い部分の長さ)を求め、両者の比を個別粒子のアスペクト比とする。画面内のすべての独立した一次粒子に対するアスペクト比を相加平均したものを、本発明におけるアスペクト比とする。一次粒子とは、粒子間の界面が明瞭に観察することができる粒子のことである。通常、観察は試料台上での一次粒子の重なりを避けるように適度に分散させて行うが、偶発的重なりは避けがたく、また、複数の一次粒子が凝集したバルク状粒子もあるが、これらは観察対象から除かれる。
【0067】
本発明の固定相は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)や超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)、薄層クロマトグラフィーの固定相として用いることができる。
本発明の固定相をSFC用に用いると、酸性化合物や塩基性化合物について優れた分離特性を有し、さらに、例えば縮合環芳香族化合物や、芳香族化合物の異性体の分離特性にも優れる。
【0068】
本発明の固定相は、通常のHPLC用のカラムに充填して用いることができる。カラムへの充填は、スラリー充填法を用いることができる。
HPLCの溶離液としては、分離対象とする目的物質に応じて、公知のものを限定なく使用することができる。
【0069】
また、本発明の固定相は、例えば特開2006−058147号に記載のような、超臨界流体クロマトグラフィー用の公知のカラムに充填して用いることができる。
超臨界流体クロマトグラフィーでは、超臨界流体と溶剤とを含有する流体を移動相として用いる。ここで言う超臨界流体クロマトグラフィーとは、超臨界流体を主たる移動相とするクロマトグラフィーに対する一般的名称である。前記超臨界流体は、臨界圧力以上及び臨界温度以上の状態(すなわち超臨界状態)にある物質である。超臨界流体として用いられる物質としては、例えば二酸化炭素、アンモニア、二酸化硫黄、ハロゲン化水素、亜酸化窒素、硫化水素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ハロゲン化炭化水素、水等をあげることができるが、適当な臨界条件、安全性、コストなどから、実質的には二酸化炭素を利用する態様を挙げることができる。また厳密に超臨界であることは必要ではなく、亜臨界状態での使用も含めて“超臨界流体クロマトグラフィー”と呼ばれる。また、亜臨界も含む「超臨界」条件から、徐々に移動相中の通常液体の含量を増やし、実質的に液体クロマトグラフィー条件に移行させることも行われるようになっている(このような手法をインテグレーテッドクロマトグラフィーと呼ぶこともある)。
【0070】
前記溶剤としては、前記目的の物質の種類や超臨界流体の種類等に応じて、公知の種々の溶剤の中から一種又は二種以上が選ばれる。前記溶剤としては、例えばメタノール、エタノールや2−プロパノール等の低級アルコール、アセトン等のケトン、アセトニトリル、酢酸エチル、THF、ジクロロメタン、クロロホルム等が挙げられる。また、塩基性、酸性、両性化合物、極性化合物を分離する際にはピークの形状をよくするために、水、酸、アミン塩基、アンモニウム塩などをさらに少量添加することもある。
前記超臨界流体クロマトグラフィーは、前記超臨界流体と前記溶剤とを含有する流体を移動相に用いるクロマトグラフィーであれば特に限定されない。
【0071】
本発明の固定相を用いた高速液体クロマトグラフィー及び超臨界流体クロマトグラフィーは、分析用であってもよいし分取用であってもよい。
分取用の高速液体クロマトグラフィー及び超臨界流体クロマトグラフィーは、カラムで分離した目的の物質に応じて、カラムを通過した後の移動相をフラクションコレクタで分け取る工程を含む高速液体クロマトグラフィー又は超臨界流体クロマトグラフィーであれば特に限定されない。
【0072】
充填するカラムは、HPLC用、SFC用共に公知のサイズのものを用いることができる。
また、流速もそれぞれ適宜調整して用いることができ、例えば内径0.46mmのカラムの場合、0.3〜10ml/minの態様を挙げることでき、好ましくは1〜6ml/minの態様を挙げることができる。
また、それぞれのカラム温度も0〜50℃程度の態様を挙げることができ、20〜40℃程度を挙げることができる。
SFC用の場合、背圧は120〜180bar程度の態様を挙げることができ、130〜160bar程度を挙げることができる。
【0073】
また、本発明の固定相は、モノリスとして用いることもできる。本発明の固定相をモノリスにする場合には、予めモノリス状に成形されているとともに、重合性官能基が結合している担体、あるいはモノリス状に成形される担体となる原料で重合性官能基が結合しているものと、1−ビニル−2−ピロリドンまたは1−ビニル−2−ピペリドンと式(I)で示される化合物とを反応させることで得ることができる。
【0074】
本発明の固定相を用いた高速液体クロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィーによれば、芳香族あるいはヘテロ芳香族環を有する化合物の置換位置異性体のような化合物の分離性能に優れている。
【実施例】
【0075】
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の態様に制限されない。
【0076】
<実施例1>
(シリカゲルのN−メチル−N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]2−プロペンアミド処理)
(調製例1)
300mL三首フラスコの中にトルエン200mL、トリメトキシ[3−(メチルアミノ)プロピル]シラン 3.91g、トリエチルアミン2.74g、4−ピロリジルピリジン約50mgを入れ、撹拌しながら、この中に塩化アクリロイル2.10g、トルエン4mLの混合液を滴下した。滴下終了後、約3時間80℃に加温し、結晶性生成物(トリエチルアミン塩酸塩)が浮遊した淡褐色液体を得た。
一方、300mL三首フラスコの中に160℃で真空乾燥した公称孔径300Å、粒子径5μmのシリカゲル20.60gを入れ、撹拌羽をセットした。ここに前記反応で得た淡褐色液体をグラスフィルターを通して流し込み、グラスフィルターに残った固体は50mLのトルエンで伴洗いした。このフラスコを撹拌しながらオイルバス中、90℃で1時間、125℃で5時間、加温した。この間、側管より約100gのトルエンを留出した。得られたシリカゲルを0.5μmメンブレンフィルター上でろ別し、50mLのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、100mLのメタノール、50mLのアセトンで洗浄した後、60℃で真空乾燥した。
収量21.74g 重量増加率は6.5%であった。
元素分析値はC:2.65、H:0.55、N:0.44(各%)であった。
【0077】
調製例1で得たシリカゲルへの1−ビニル−2−ピロリドン(VP)及びN−フェニルマレイミドの共重合
調製例1で得たシリカゲル2.15gに窒素雰囲気下、1−ビニル−2−ピロリドン510mg、アゾビスイソブチロニトリル20.4 mg、N−フェニルマレイミド784mg、NMP4.00mLの混合液に窒素バブリングした液を注ぎ、65℃2時間、80℃1時間、90℃1時間加熱した。得られたスラリーをグラスフィルター上でNMP、THF、メタノール各40mLで洗浄し、アセトン20mLでリンスして、60℃の真空乾燥機で乾燥した。実施例1で得られた粉体は2.475gであり、15%の重量増加であった。
得られたコポリマー結合シリカゲルは、以下の構造を有していることが推定できた。
【0078】
【化23】
【0079】
また、重合反応後の液相、および洗浄液を合して濃縮、ポリマー成分のGPC測定を行ったところ、その重量平均分子量は3822であった。交互共重合体であると仮定すると、1−ビニル−2−ピロリドンとN−フェニルマレイミド併せて約27個のモノマーからなると推定された。シリカゲルに結合したコポリマーの分子量は測定できないが、同等であると推定された。
【0080】
GPC測定は以下の条件で行った。
カラムは東ソー(株)製TSKgel α−M+TSKgel guardcolumn−α、移動相は塩化リチウム100mMol/Lを含むDMF、送液は1.0mL/min、温度は40℃、検出には示差屈折計検出器を用い、分子量はポリスチレン標準(東ソー(株)製)で換算した。
【0081】
<実施例2>
1−ビニル−2−ピロリドン201mg、N−シクロヘキシルマレイミド321mg、アゾビスイソブチロニトリル8.1mgを3.00mLのアセトンに溶解し、これを調製例1で作製したシリカゲル2.08gに吸収させた後、アセトンを減圧留去した。残った粉体を窒素雰囲気下、実施例1と同じ温度/と時間で熱処理し、同様に洗浄、乾燥した。得られた粉体は2.48gであり、約19%の重量増加であった。
【0082】
得られたコポリマー結合シリカゲルは、以下の構造を有していることが推定できた。
【化24】
【0083】
<実施例3>
調製例1で作製したシリカゲル2.15gに窒素雰囲気下、1−ビニル−2−ピロリドン542mg、アゾビスイソブチロニトリル19.7mg、マレイミド484mg、シクロヘキサノン4.00mLの混合液に窒素バブリングした液を注ぎ、72℃4時間20分加熱した。得られたスラリー(重合物のためゲル状になっている)にNMP10mLを加え、溶液とした後、グラスフィルターでシリカゲルをろ別し、NMP30mL、メタノール20mL、アセトン20mLでリンスして、60℃の真空乾燥機で乾燥した。得られた粉体は2.62gであり、約23%の重量増加であった。
得られたコポリマー結合シリカゲルは、以下の構造を有していることが推定できた。
【0084】
【化25】
【0085】
また重合反応の後の液相および洗浄液を併せ、蒸発濃縮し、コポリマー成分のGPCを測定したところ、そのポリスチレン換算重量平均分子量は191,500であった。これは、交互共重合体であると仮定すると、両モノマー併せて1,840個と推定された。シリカゲルに結合したコポリマーの分子量は測定できないが、同等であると推定された。
【0086】
<比較例1>
VP 984mg、NMP4.2mL、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)23mgを混合し、窒素バブリングの後、調製例1で得たシリカゲル2.084gを入れたフラスコに移液した。液を均一に混和、フラスコを窒素置換した後、ロータリエバポレータに接続し、回転しながら、65℃、80℃、90℃にそれぞれ2時間保温した。得られた液は、5.5μmグラスフィルタに移し、NMP50mL、メタノール50mL、アセトン50mLをそれぞれ何回かに分けて洗浄し、真空乾燥(60℃)した。収量2.262g、調製例1で得たシリカゲルに対する重量増加は8.5%、シリカゲル元素分析値はC:7.91、H:1.37、N:1.48(各%)であった。
得られたポリ(1−ビニル−2−ピロリドン)結合シリカゲルは、以下の構造を有していることが推定できた。
【化26】
【0087】
実施例1、3及び比較例1で得た固定相をエタノールを用いた湿式充填によって4.6mmφ×150mmのステンレスカラムに充填した。
これらのカラムを用いてカフェインと3種のジメチルキサンチン異性体(テオフィリン、テオブロミン、パラキサンチン)をSFCで分析した結果(
図1:実施例1、
図3:実施例3、
図5:比較例1)と、2’−,3’−,4’−ヒドロキシフラバノン異性体をSFCで分析した結果(
図2:実施例1、
図4:比較例1)を示す。
いずれも移動相はCO
2/メタノール 9:1(v/v)、流速は4.0 mL/min、カラム温度は40℃、カラム背圧(BPR)は150 bar、検出にはUV検出器(254nm)を用いた。
図2と
図4を比べると、比較例1の固定相では、2’−,3’−,4’−ヒドロキシフラバノン異性体の分離が不十分であることが分かる。
図5(比較例1の固定相)を参照すると、2番目のピークにおいて、テオフィリンとテオブロミンが重なっていることが分かる。