特許第6813275号(P6813275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6813275組成物、これから製造された複合体、及びこれを含むフィルム並びに電子素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6813275
(24)【登録日】2020年12月21日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】組成物、これから製造された複合体、及びこれを含むフィルム並びに電子素子
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20201228BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20201228BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20201228BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20201228BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20201228BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   C08G73/10
   C08J5/18CFG
   H05B33/02
   H05B33/14 A
   H05B33/22 Z
   H05B33/04
【請求項の数】22
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2016-62055(P2016-62055)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-188367(P2016-188367A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2019年3月20日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0043489
(32)【優先日】2015年3月27日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0034556
(32)【優先日】2016年3月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】全 賢 貞
(72)【発明者】
【氏名】金 旻 相
(72)【発明者】
【氏名】池 尚 洙
(72)【発明者】
【氏名】孫 炳 熙
【審査官】 櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−048452(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0184688(US,A1)
【文献】 特開2005−298800(JP,A)
【文献】 特開2010−163601(JP,A)
【文献】 特開2008−116598(JP,A)
【文献】 特表2014−510159(JP,A)
【文献】 Zhenping Shang et. al.,Preparation and Properties of Ternary Polyimide/SiO2/Polydiphenylsiloxane Composite Films,Polymer International,2006年,Vol.55 No.11,Page.1277-1282
【文献】 L.Mascia et. al.,Influence of Siloxane Composition and Morphology on Properties of Polyimide-Silica Hybrids,Polymer,1995年,Vol.36 No.19,Page.3649-3659
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G,C08L,C08J5
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシシラン基により改質されたポリアミック酸及びオリゴシリカ化合物を含み、前記組成物内のSi原子の含量が前記組成物の固形分の総重量を基準として15重量%以下であり、
前記アルコキシシラン基により改質されたポリアミック酸は、酸二無水物及びジアミンの縮重合生成物と反応性有機シラン化合物との間の反応生成物を含み、前記オリゴシリカ化合物は、有機シランジオール及びアルコキシシラン化合物の非加水縮合反応生成物を含む組成物。
【請求項2】
前記組成物の水の含量は、100ppm以下である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記酸二無水物及びジアミンの縮重合生成物は、下記の一般式1で表わされる酸二無水物及び下記の一般式2のジアミンの縮重合生成物を含み、少なくとも片側の末端に前記反応性有機シラン化合物と反応する官能基を有する請求項1または2に記載の組成物:
【化1】

式中、Aは、同一又は異なり、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の4価のC6〜C24の脂肪族環基、置換若しくは非置換の4価のC6〜C24の芳香族環基、又は置換若しくは非置換の4価のC4〜C24のヘテロ芳香族環基であり、前記脂肪族環基、前記芳香族環基、又は前記ヘテロ芳香族環基は、単独で存在する、又は2以上の環が互いに接合されて縮合環を形成する、又は2以上の環が直接的に結合されている、若しくは−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)−、−Si(CH−、−(CH−(ここで、1≦p≦10)、−(CF−(ここで、1≦q≦10)、C1〜C10の直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基、C1〜C10のフルオロアルキル基、C6〜C20の芳香族炭化水素基、及びC6〜C20の指環族炭化水素基から選ばれる1以上の置換基を有するC1〜C10のアルキレン基、−C(CF−、−C(CF)(C)−、若しくは−C(=O)NH−により連結されており、
【化2】

式中、A2は、置換若しくは非置換の2価のC6〜C24の脂肪族環基、置換若しくは非置換の2価のC6〜C24の芳香族環基又は置換若しくは非置換の2価のC4〜C24のヘテロ芳香族環基であり、前記脂肪族環基、芳香族環基、又はヘテロ芳香族環基は単独で存在する、又は2以上の環が互いに接合されて縮合環を形成する、又は2以上の環が直接的に結合されている、若しくは−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)−、−Si(CH−、−(CH−(ここで、1≦p≦10)、−(CF−(ここで、1≦q≦10)、C1〜C10の直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基、C1〜C10のフルオロアルキル基、C6〜C20の芳香族炭化水素基、及びC6〜C20の指環族炭化水素基から選ばれる1以上の置換基を有するC1〜C10のアルキレン基、−C(CF−、−C(CF)(C)−、又は−C(=O)NH−により連結されている。
【請求項4】
一般式1において、前記Aは、下記のうちのいずれか一つである請求項3に記載の組成物:
【化3】

【化4】

式中、
〜Xは、同一又は異なり、それぞれ独立して、直接結合、−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)−、−Si(CH−、−(CH−(ここで、1≦p≦10)、−(CF−(ここで、1≦q≦10)、−C(CH−、−C(CF−、又は−C(=O)NH−であり、
は、−O−、−S−、又は−NR300−(ここで、R300は、水素又はC1〜C5のアルキル基である。)、
及びZは、同一又は異なり、それぞれ独立して、−N=又は−C(R301)=(ここで、R301は、水素又はC1〜C5のアルキル基であるが、Z及びZが同時に−C(R301)=であることはなく)、
30〜R50及びR54〜R60は、同一又は異なり、それぞれ独立して、ハロゲン、置換若しくは非置換のC1〜C10の脂肪族有機基、又は置換若しくは非置換のC6〜C20の芳香族有機基であり、
51〜R53は、同一又は異なり、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換のC1〜C10の芳香族有機基、又は置換若しくは非置換のC6〜C20の芳香族有機基であり、
k30、k31及びk32は、それぞれ独立して、0〜2の整数であり、
k33、k35、k36、k37、k39、k42、k43、k44、k46、k54及びk57は、それぞれ独立して、0〜3の整数であり、
k34は、0又は1であり、
k38、k45、k50、k55及びk56は、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、
k40、k41、k47、k48及びk49は、それぞれ独立して、0〜5の整数であり、
k58、k59及びk60は、それぞれ独立して、0〜8の整数であり、
*は、カルボニル基の炭素に接続される部分である。
【請求項5】
前記一般式2のA2は、下記のうちのいずれか一つである請求項3または4に記載の組成物:
【化5】

式中、
10〜X16は、同一又は異なり、それぞれ独立して、直接結合、−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)−、−Si(CH−、−(CH−(ここで、1≦p≦10)、−(CF−(ここで、1≦q≦10)、−C(CH−、−C(CF−、又は−C(=O)NH−であり、
70〜R86及びR89〜R90は、同一又は異なり、それぞれ独立して、ハロゲン、置換若しくは非置換のC1〜C10の脂肪族有機基、又は置換若しくは非置換のC6〜C20の芳香族有機基であり、
87及びR88は、同一又は異なり、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換のC1〜C10の脂肪族有機基、又は置換若しくは非置換のC6〜C20の芳香族有機基であり、
k70、k73、k74、k75、k76、k77、k78、k79、k80、k81、k82及びk83は、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、
k71、k72、k85及びk86は、それぞれ独立して、0〜3の整数であり、
k84、k89及びk90は、それぞれ独立して、0〜10の整数であり、
*は、窒素に接続される部分である。
【請求項6】
前記酸二無水物及び前記ジアミンの縮重合生成物は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物(DTDA)、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物;1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物;1,4−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物;2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物;2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物;2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物;4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル二無水物;ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物;4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物;4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物;ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物;4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物;4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物;ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物;4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物;4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物;3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物;2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物;2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物;4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物;ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物;ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物;1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物;1,1−ビス(3,4−カルボキシフェニル)エタン二無水物;1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物;2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物;2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物;2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物;2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物;4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル−2,2−プロパン二無水物;2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ−3,5−ジメチル)フェニル]プロパン二無水物;2,3,4,5−チオフェンテトラカルボン酸二無水物;2,3,5,6−ピラジンテトラカルボン酸二無水物;1,8,9,10−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物;3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物;1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物;1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン二無水物;2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物;1,1−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン二無水物;4,4’−ビス[2−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロイソプロピル]ジフェニルエーテル二無水物、又はこれらの混合物から選ばれる酸二無水物と、
2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFDB)、m−フェニレンジアミン;p−フェニレンジアミン;1,3−ビス(4−アミノフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン;4,4’−ジアミノ−ジフェニルメタン;1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン;1,1−ビス(4−アミノフェニル)エタン;2,2’−ジアミノ−ジエチルスルフィド;ビス(4−アミノフェニル)スルフィド;2,4’−ジアミノ−ジフェニルスルフィド;ビス(3−アミノフェニル)スルホン;ビス(4−アミノフェニル)スルホン;4,4’−ジアミノ−ジベンジルスルホキシド;ビス(4−アミノフェニル)エーテル;ビス(3−アミノフェニル)エーテル;ビス(4−アミノフェニル)ジエチルシラン;ビス(4−アミノフェニル)ジフェニルシラン;ビス(4−アミノフェニル)エチルホスフィンオキシド;ビス(4−アミノフェニル)フェニルホスフィンオキシド;ビス(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミン;ビス(4−アミノフェニル)−N−メチルアミン;1,2−ジアミノ−ナフタレン;1,4−ジアミノ−ナフタレン;1,5−ジアミノ−ナフタレン;1,6−ジアミノ−ナフタレン;1,7−ジアミノ−ナフタレン;1,8−ジアミノ−ナフタレン;2,3−ジアミノ−ナフタレン;2,6−ジアミノ−ナフタレン;1,4−ジアミノ−2−メチル−ナフタレン;1,5−ジアミノ−2−メチル−ナフタレン;1,3−ジアミノ−2−フェニル−ナフタレン;4,4’−ジアミノ−ビフェニル;3,3’−ジアミノ−ビフェニル;3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−ビフェニル;3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノ−ビフェニル;3,4’−ジメチル−4,4’−ジアミノ−ビフェニル;3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノ−ビフェニル;4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル;2,4−ジアミノ−トルエン;2,5−ジアミノ−トルエン;2,6−ジアミノ−トルエン;3,5−ジアミノ−トルエン;1,3−ジアミノ−2,5−ジクロロ−ベンゼン;1,4−ジアミノ−2,5−ジクロロ−ベンゼン;1−メトキシ−2,4−ジアミノ−ベンゼン;1,4−ジアミノ−2−メトキシ−5−メチル−ベンゼン;1,4−ジアミノ−2,3,5,6−テトラメチル−ベンゼン;1,4−ビス(2−メチル−4−アミノ−ペンチル)−ベンゼン;1,4−ビス(1,1−ジメチル−5−アミノ−ペンチル)−ベンゼン;1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)−ベンゼン;o−キシリレンジアミン;m−キシリレンジアミン;p−キシリレンジアミン;3,3’−ジアミノ−ベンゾフェノン;4,4’−ジアミノ−ベンゾフェノン;2,6−ジアミノ−ピリジン;3,5−ジアミノ−ピリジン;1,3−ジアミノ−アダマンタン;ビス[2−(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロイソプロピル]ジフェニルエーテル;3,3’−ジアミノ−1,1’−ジアダマンタン;N−(3−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド;4−アミノフェニル−3−アミノベンゾエ−ト;2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン;2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン;2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン;2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン;2,2−ビス[4−(2−クロロ−4−アミノフェノキシ)フェニルヘキサフルオロプロパン;1,1−ビス(4−アミノフェニル)−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン;1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン;1,4−ビス(3−アミノフェニル)ブタ−1−エン−3−イン;1,3−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン;1,5−ビス(3−アミノフェニル)デカフルオロペンタン;4,4’−ビス[2−(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロイソプロピル]ジフェニルエーテル、ジアミノシクロヘキサン、ビシクロヘキシルジアミン、4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタン、ジアミノフルオレン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン(BACH)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(4−フェノキシアニリン)(6FIDDA)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(BAPF)、及びこれらの混合物から選ばれるジアミンの縮重合生成物を含み、
片側又は両側の末端に前記反応性有機シラン化合物と反応する官能基を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記反応性有機シラン化合物は、下記の一般式3で表わされる化合物である請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物:
【化6】

式中、Lは、単一結合、置換若しくは非置換の炭素数1〜12のアルキレン、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリーレン、置換若しくは非置換のC1〜C12のヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせであり、Aは、−NH又は酸無水物基であり、R〜Rは、それぞれ独立して、C1〜C6のアルキル基又はC1〜C6のアルコキシ基であるが、R〜Rのうちの一つ以上は、C1〜C6のアルコキシ基である。
【請求項8】
前記反応性有機シラン化合物は、ガンマアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、3−(トリエトキシシリル)プロピルこはく酸無水物、又はこれらの組み合わせである請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記反応性有機シラン化合物の含量は、前記アルコキシシラン化合物1モル当たり0.01モル〜10モルである請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記有機シランジオールは下記の一般式4で表わされ、
【化7】

式中、nは、1〜10の整数であり、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基により置換された炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、又は炭素数6〜20のアリール基であり、
前記アルコキシシラン化合物は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、又はこれらの混合物である請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記有機シランジオール及び前記アルコキシシラン化合物間の縮合反応は、アルカリ土金属水酸化物の存在下における非加水縮合反応である請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記有機シランジオール1モル当たりの前記アルコキシシラン化合物の含量は、2〜10モルである請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記アルコキシシラン基により改質されたポリアミック酸100重量部当たりの前記オリゴシリカ化合物の含量は、1〜10重量部である請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物の硬化物を含む複合体。
【請求項15】
前記硬化物は、透過電子顕微鏡で観察したときに200nm以上の大きさを有し、ポリイミドマトリックスから分離されたシリカドメインを含んでいない請求項14に記載の複合体。
【請求項16】
前記硬化物は、透過電子顕微鏡で観察したとき、ポリイミドマトリックスから分離されたシリカドメインを含んでいない請求項14に記載の複合体。
【請求項17】
前記複合体は、複合体の総重量を基準としてSiの含量が4重量%〜14重量%である請求項14〜16のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項18】
前記複合体は、波長430nmの光に対する透過率が65%以上であり、且つヘイズが1%以下である請求項14〜17のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項19】
前記複合体は、複合体の試片を荷重0.05N下で30℃から400℃に10℃/分の速度にて加熱して得られる熱膨張係数(CTE)が150ppm/℃以下である請求項14〜18のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項20】
請求項14〜19のいずれか1項に記載の複合体を含むフィルム。
【請求項21】
請求項20に記載のフィルムを備える電子素子。
【請求項22】
下記のステップを含むポリイミド複合体の製造方法:
酸二無水物及びジアミン間の反応によりポリアミック酸を準備するステップと、
前記ポリアミック酸と反応性有機シラン化合物とを反応させてアルコキシシラン基により改質されたポリアミック酸を準備するステップと、
有機シランジオール及びアルコキシシラン化合物間の非加水縮合反応によりオリゴシリカ化合物を準備するステップと、
前記アルコキシシラン基により改質されたポリアミック酸及び前記オリゴシリカ化合物を混合するステップ、及び
硬化を行うステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、これから製造された複合体、及びこれを含むフィルム並びに電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、高性能ポリマーの一種であり、主鎖に環状イミド及び芳香族環を含む。ポリイミドは、比較的優れた熱安定性、機械的な物性、光学的な物性を有することから、マイクロエレクトロニクス、航空及び分離技術などの先進技術分野においてかなり高い重要性を得ている。例えば、ポリイミドは、各種のディスプレイ装置及び発光ダイオード又は相補性金属酸化膜半導体センサーなどの電子素子において透明基板(例えば、フレキシブル基板)又は可撓性の透明保護フィルムとしての有用性が見出されている。この理由から、黄色指数及び透光性、ヘイズなど光学的な物性が向上したポリイミド系材料の開発が求められている。
【0003】
この種のポリイミド系材料は、ディスプレイ又は電子素子など最終製品のための工程中に高い温度に露出される虞がある。例えば、有機発光ダイオード(LED)の製造方法は、パネルの主な特性品質を保つために基板を約350℃以上の高温において所定時間処理する工程を含む。しかしながら、透明ポリイミド基板をガラス転移温度以上の高温において熱処理する場合、材料の光学的な物性(透光度、ヘイズ、黄色指数)が顕著に劣化する虞がある。例えば、高温熱処理は、高分子鎖の動きによる鎖間又は鎖内のパッキング現象の原因になる場合がある。その結果、チャージトランスファコンプレックス(charge transfer complex;以下、CTCと称する。)が形成されるが、これは、低い波長領域の可視光線を支配的に吸収して黄変の一つの原因として考えられている。なお、熱処理後に、ポリイミド基板は低下された機械的な物性を示すことがある。このような理由から、高温工程後にも元の物性(例えば、透過度、黄色指数などの光学的な物性及び機械的な物性)を保つことのできるポリイミド基板の材料の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、向上した光学的な物性を示し、且つ高温処理後にも元の物性を保つポリイミド複合体を製造するための組成物を提供することである。
【0005】
本発明の他の目的は、前記組成物から製造されたポリイミド複合体フィルムを提供することである。
【0006】
本発明の更に他の目的は、前記ポリイミド複合体フィルムを備える電子素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために案出された本発明の一実施形態による組成物は、アルコキシシラン基(アルコキシシリル基)により改質されたポリアミック酸及びオリゴシリカ化合物を含み、組成物内のSi原子の含量が前記組成物の固形分の総重量を基準として15重量%以下である。前記アルコキシシラン基により改質されたポリアミック酸は、酸二無水物及びジアミンの縮重合生成物と反応性有機シラン化合物との間の反応生成物を含む。前記オリゴシリカ化合物は、有機シランジオール及びアルコキシシラン化合物の縮合反応生成物を含む。 前記組成物への水の含量は、100ppm以下であり得る。例えば、前記組成物は、水を実質的に含んでいない。
【0008】
前記酸二無水物及びジアミンの縮重合生成物は、下記の一般式1で表わされる酸二無水物及び下記の一般式2のジアミンの縮重合生成物を含むことが好ましく、前記縮重合生成物は、少なくとも片側の末端に前記反応性有機シラン化合物と反応する残基を有することが好ましい。
【0009】
【化1】
【0010】
式中、Aは、置換若しくは非置換の4価のC5〜C24の脂肪族環基、置換若しくは非置換の4価のC6〜C24の芳香族環基、及び置換若しくは非置換の4価のC4〜C24のヘテロ芳香族環基から選ばれる残基であり、前記脂肪族、芳香族環基又はヘテロ芳香族環基は単独で存在するか、或いは、2以上が互いに接合されて多環式環を形成するか、或いは、2以上の前記脂肪族環又は前記芳香族環およびヘテロ芳香族環から選択される2以上が単一結合、−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)−、−Si(CH−、−(CH−(ここで、1≦p≦10)、−(CF−(ここで、1≦q≦10)、C1〜C10の直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基、C1〜C10のフルオロアルキル基、C6〜C20の芳香族炭化水素基、及びC6〜C20の指環族炭化水素基から選ばれる1以上の置換基を有するC1〜C10のアルキレン基、−C(=O)NH−又はこれらの組み合わせにより連結されており、
【0011】
【化2】
【0012】
式中、A2は、置換若しくは非置換の2価のC5〜C24の脂肪族環基、置換若しくは非置換の2価のC6〜C24の芳香族環基、置換若しくは非置換の2価のC4〜C24のヘテロ芳香族環基、及び−L−SiR−O−SiR−L(ここで、Lは、単一結合又はC1〜C10のアルキレン基)から選ばれる残基であり、前記脂肪族又は芳香族環基は単独で存在するか、或いは、2以上が互いに接合されて多環式環を形成するか、或いは、2以上の前記脂肪族環又は2以上の前記芳香族環が単一結合、−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)、−Si(CH−、−(CH−(ここで、1≦p≦10)、−(CF−(ここで、1≦q≦10)、C1〜C10の直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基、C1〜C10のフルオロアルキル基、C6〜C20の芳香族炭化水素基、及びC6〜C20の指環族炭化水素基から選ばれる1以上の置換基を有するC1〜C10の2価のアルキレン基、−C(=O)NH−又はこれらの組み合わせにより連結されている。
【0013】
一般式1において、Aは、下記のうちのいずれか一つであることが好ましい。
【0014】
【化3】
【0015】
【化4】
【0016】
式中、
〜Xは、同一又は異なり、それぞれ独立して、直接結合、−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)−、−Si(CH−、−(CH−(ここで、1≦p≦10)、−(CF−(ここで、1≦q≦10)、−C(CH−、−C(CF−、又は−C(=O)NH−であり、
は、−O−、−S−、又は−NR300−(ここで、R300は、水素又はC1〜C5のアルキル基である。)、
及びZは、同一又は異なり、それぞれ独立して、−N=又は−C(R301)=(ここで、R301は、水素又はC1〜C5のアルキル基であるが、Z及びZが同時に−C(R301)=であることはなく)、
30〜R50及びR54〜R60は、同一又は異なり、それぞれ独立して、ハロゲン、置換若しくは非置換のC1〜C10の脂肪族有機基、又は置換若しくは非置換のC6〜C20の芳香族有機基であり、
51〜R53は、同一又は異なり、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換のC1〜C10の芳香族有機基、又は置換若しくは非置換のC6〜C20の芳香族有機基であり、
k30、k31及びk32は、それぞれ独立して、0〜2の整数であり、
k33、k35、k36、k37、k39、k42、k43、k44、k46、k54及びk57は、それぞれ独立して、0〜3の整数であり、
k34は、0又は1であり、
k38、k45、k50、k55及びk56は、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、
k40、k41、k47、k48及びk49は、それぞれ独立して、0〜5の整数であり、
k58、k59及びk60は、それぞれ独立して、0〜8の整数である。
【0017】
一般式2において、A2は、下記のうちのいずれか一つで表わされることが好ましい。
【0018】
【化5】
【0019】
式中、
10〜X16は、同一又は異なり、それぞれ独立して、直接結合、−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)−、−Si(CH−、−(CH−(ここで、1≦p≦10)、−(CF−(ここで、1≦q≦10)、−C(CH−、−C(CF−、又は−C(=O)NH−であり、
70〜R86及びR89〜R90は、同一又は異なり、それぞれ独立して、ハロゲン、置換若しくは非置換のC1〜C10の脂肪族有機基、又は置換若しくは非置換のC6〜C20の芳香族有機基であり、
87及びR88は、同一又は異なり、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換のC1〜C10の脂肪族有機基、又は置換若しくは非置換のC6〜C20の芳香族有機基であり、
k70、k73、k74、k75、k76、k77、k78、k79、k80、k81、k82及びk83は、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、
k71、k72、k85及びk86は、それぞれ独立して、0〜3の整数であり、
k84、k89及びk90は、それぞれ独立して、0〜10の整数である。
【0020】
前記酸二無水物及び前記ジアミンの縮重合生成物は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物(DTDA)、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物;1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物;1,4−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物;2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物;2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物;2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物;4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル二無水物;ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物;4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物;4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物;ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物;4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物;4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物;ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物;4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物;4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物;3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物;2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物;2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物;4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物;ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物;ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物;1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物;1,1−ビス(3,4−カルボキシフェニル)エタン二無水物;1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物;2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物;2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物;2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物;2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物;[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル]プロパン二無水物;2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ−3,5−ジメチル)フェニル]プロパン二無水物;2,3,4,5−チオフェンテトラカルボン酸二無水物;2,3,5,6−ピラジンテトラカルボン酸二無水物;1,8,9,10−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物;3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物;1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物;1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン二無水物;2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物;1,1−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン二無水物;4,4’−ビス[2−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロイソプロピル]ジフェニルエーテル二無水物、又はこれらの混合物から選ばれる酸二無水物と、
2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFDB、2,2’−ビストリフルオロメチル−4,4’−ビフェニルジアミン)、m−フェニレンジアミン;p−フェニレンジアミン;1,3−ビス(4−アミノフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン;4,4’−ジアミノ−ジフェニルメタン;1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン;1,1−ビス(4−アミノフェニル)エタン;2,2’−ジアミノ−ジエチルスルフィド;ビス(4−アミノフェニル)スルフィド;2,4’−ジアミノ−ジフェニルスルフィド;ビス(3−アミノフェニル)スルホン;ビス(4−アミノフェニル)スルホン;4,4’−ジアミノ−ジベンジルスルホキシド;ビス(4−アミノフェニル)エーテル;ビス(3−アミノフェニル)エーテル;ビス(4−アミノフェニル)ジエチルシラン;ビス(4−アミノフェニル)ジフェニルシラン;ビス(4−アミノフェニル)エチルホスフィンオキシド;ビス(4−アミノフェニル)フェニルホスフィンオキシド;ビス(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミン;ビス(4−アミノフェニル)−N−メチルアミン;1,2−ジアミノ−ナフタレン;1,4−ジアミノ−ナフタレン;1,5−ジアミノ−ナフタレン;1,6−ジアミノ−ナフタレン;1,7−ジアミノ−ナフタレン;1,8−ジアミノ−ナフタレン;2,3−ジアミノ−ナフタレン;2,6−ジアミノ−ナフタレン;1,4−ジアミノ−2−メチル−ナフタレン;1,5−ジアミノ−2−メチル−ナフタレン;1,3−ジアミノ−2−フェニル−ナフタレン;4,4’−ジアミノ−ビフェニル;3,3’−ジアミノ−ビフェニル;3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−ビフェニル;3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノ−ビフェニル;2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノ−ビフェニル;3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノ−ビフェニル;4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル;2,4−ジアミノ−トルエン;2,5−ジアミノ−トルエン;2,6−ジアミノ−トルエン;3,5−ジアミノ−トルエン;1,3−ジアミノ−2,5−ジクロロ−ベンゼン;1,4−ジアミノ−2,5−ジクロロ−ベンゼン;1−メトキシ−2,4−ジアミノ−ベンゼン;1,4−ジアミノ−2−メトキシ−5−メチル−ベンゼン;1,4−ジアミノ−2,3,5,6−テトラメチル−ベンゼン;1,4−ビス(2−メチル−4−アミノ−ペンチル)−ベンゼン;1,4−ビス(1,1−ジメチル−5−アミノ−ペンチル)−ベンゼン;1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)−ベンゼン;o−キシリレンジアミン;m−キシリレンジアミン;p−キシリレンジアミン;3,3’−ジアミノ−ベンゾフェノン;4,4’−ジアミノ−ベンゾフェノン;2,6−ジアミノ−ピリジン;3,5−ジアミノ−ピリジン;1,3−ジアミノ−アダマンタン;ビス[2−(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロイソプロピル]ジフェニルエーテル;3,3’−ジアミノ−1,1’−ジアダマンタン;N−(3−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド;4−アミノフェニル−3−アミノベンゾエ−ト;2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン;2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン;2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン;2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン;2,2−ビス[4−(2−クロロ−4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン;1,1−ビス(4−アミノフェニル)−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン;1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン;1,4−ビス(3−アミノフェニル)ブタ−1−エン−3−イン;1,3−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン;1,5−ビス(3−アミノフェニル)デカフルオロペンタン;4,4’−ビス[2−(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロイソプロピル]ジフェニルエーテル、ジアミノシクロヘキサン、ビシクロヘキシルジアミン、4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタン、ジアミノフルオレン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン(BACH)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(p−フェニレンオキシ)ジアニリン、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(4−フェノキシアニリン)(6FIDDA)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(BAPF)、及びこれらの混合物から選ばれるジアミンの縮重合生成物を含み、片側又は両側の末端に前記無水物残基、アミン残基、又はこれらの両方を有することが好ましい。
【0021】
前記酸二無水物及び前記ジアミンの縮重合生成物は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、又はこれらの混合物から選ばれる酸二無水物と、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFDB)との縮重合生成物を含み、片側又は両側の末端に無水物残基、アミン残基、又はこれらの両方を有することが好ましい。
【0022】
前記反応性有機シラン化合物は、下記の一般式3で表わされる化合物であることが好ましい。
【0023】
【化6】
【0024】
式中、Lは、単一結合、置換若しくは非置換の炭素数1〜12のアルキレン、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリーレン、置換若しくは非置換のC1〜C12のヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせであり、Aは、−NH又は酸無水物基であり、R〜Rは、それぞれ独立して、C1〜C6のアルキル基又はC1〜C6のアルコキシ基であるが、R〜Rのうちの一つ以上は、C1〜C6のアルコキシ基である。
【0025】
前記反応性有機シラン化合物は、ガンマアミノプロピルトリメトキシシラン(γ−APS)、アミノフェニルトリメトキシシラン、3−(トリエトキシシリル)プロピルこはく酸無水物、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。
【0026】
前記反応性有機シラン化合物の含量は、前記アルコキシシラン化合物1モル当たり0.01モル以上及び10モル以下であることが好ましい。
【0027】
前記有機シランジオールは、下記の一般式4で表わされることが好ましい。
【0028】
【化7】
【0029】
式中、nは、1〜10の整数であり、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基により置換された炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、又は炭素数6〜20のアリール基である。
【0030】
前記アルコキシシラン化合物は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、又はこれらの混合物であることが好ましい。
【0031】
前記有機シランジオール及び前記アルコキシシラン化合物間の縮合反応は、アルカリ土金属水酸化物の存在下において行われる非加水縮合反応であることが好ましい。
【0032】
前記有機シランジオール1モル当たりの前記アルコキシシラン化合物の含量は、2〜10モルであることが好ましい。
【0033】
前記アルコキシシラン基により改質されたポリアミック酸100重量部当たりの前記オリゴシリカ化合物の含量は、1〜10重量部であることが好ましい。
【0034】
他の実施形態において、ポリイミド複合体は、上述した組成物の硬化物を含む。前記ポリイミド複合体において、Si原子の含量は、ポリイミド複合体の総重量を基準として15重量%以下であることが好ましい。前記Si原子の含量は、走査電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光分析(Scanning electron microscopy with energy dispersive X−ray spectroscopy(SEM/EDX)により定められることが好ましい。
【0035】
前記硬化物は、透過電子顕微鏡で観察したときに200nm以上の大きさを有する分離されたシリカドメインを含んでいない。
【0036】
前記ポリイミド複合体は、複合体の総重量を基準としてSi原子の含量が4%〜14%であることが好ましい。
【0037】
前記ポリイミド複合体は、波長430nmの光に対する透過率が65%以上であり、且つヘイズが1%以下であることが好ましい。
【0038】
前記ポリイミド複合体は、前記複合体の試片を荷重0.05N下で30℃から400℃に10℃/分の速度にて加熱して得られる熱膨張係数(CTE)が150ppm/℃以下であることが好ましい。
【0039】
他の実施形態において、フィルムは、前記ポリイミド複合体を含む。
【0040】
更に他の実施形態において、電子素子は、前記フィルムを備える。
【0041】
前記電子素子は、フラットパネルディスプレイ、タッチパネル、太陽電池、e−ウィンドウ、ヒートミラー、透明トランジスタ、フレキシブルディスプレイ、相補性金属酸化膜半導体センサー又は発光ダイオード照明であることが好ましい。
【0042】
他の実施形態において、ポリイミド複合体の製造方法は、酸二無水物及びジアミン間の反応によりポリアミック酸を準備するステップと、前記ポリアミック酸と反応性有機シラン化合物とを反応させてアルコキシシラン基により改質されたポリアミック酸を準備するステップと、有機シランジオール及びアルコキシシラン化合物間の非加水縮合反応によりオリゴシリカ化合物を準備するステップと、前記アルコキシシラン基により改質されたポリアミック酸及び前記オリゴシリカ化合物を混合するステップ及び硬化を行うステップを含む。
【発明の効果】
【0043】
本発明の一実施形態による組成物から製造されたポリイミド複合体は、向上した光学的な物性(例えば、透光度、黄色指数、及びヘイズ値)を示し、且つ高温工程により発生する物性の低下を抑制又は防止する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】非制限的な一実施形態によるポリイミド複合体の製造反応スキームを模式的に示す図である。
図2】比較例1のポリイミド及び実施例1〜3のポリイミド複合体の熱機械分析試験結果を示すグラフである。
図3】実施例により製造されたポリイミド複合体の透過電子顕微鏡イメージを示す図である。
図4】比較例により製造されたポリイミド複合体の透過電子顕微鏡イメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の一実施形態について具体的に説明する。但し、これは単なる例示として提示されるものであり、これにより本発明が制限されることはなく、本発明は、後述する特許請求の範囲により定義される。
【0046】
本明細書において、特に断りのない限り、「置換」とは、与えられた官能基または化合物に含まれている一つ以上の水素原子がハロゲン原子(−F、−Cl、−Br又は−I)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基(NH、NH(R100)又はN(R101)(R102)であり、ここで、R100、R101及びR102は、同一又は異なり、それぞれ独立して、C1〜C10のアルキル基である。)、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシル基、エステル基、ケトン基、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換の指環族有機基(例えば、シクロアルキル基など)、置換若しくは非置換のアリール基(例えば、ベンジル基、ナフチル基、フルオレニル基など)、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換のアルキニル基、置換若しくは非置換のヘテロアリール基、及び置換若しくは非置換のヘテロ環基よりなる群から選ばれる1種以上の置換基により置換されることを意味し、これらの置換基は、互いに接続されて環を形成する。
【0047】
本明細書において、特に断りのない限り、「アルキル基」は、C1〜C30のアルキル基を意味し、具体的には、C1〜C15のアルキル基を意味し、「シクロアルキル基」は、C3〜C30のシクロアルキル基を意味し、具体的には、C3〜C18のシクロアルキル基を意味し、「アルコキシ基」は、C1〜C30のアルコキシ基を意味し、具体的には、C1〜C18のアルコキシ基を意味し、「エステル基」は、C2〜C30のエステル基を意味し、具体的には、C2〜C18のエステル基を意味し、「ケトン基」は、C2〜C30のケトン基を意味し、具体的には、C2〜C18のケトン基を意味し、「アリール基」は、C6〜C30のアリール基を意味し、具体的には、C6〜C18のアリール基を意味し、「アルケニル基」は、C2〜C30のアルケニル基を意味し、具体的には、C2〜C18のアルケニル基を意味する。
【0048】
ここで、「アルキレン」は、直鎖又は分枝鎖の、飽和された脂肪族炭化水素基であり、少なくとも2の価数を有し、選択によっては、アルキレン基の価数が超えない範囲内において一つ以上の置換体により置換される。
【0049】
ここで、「アリーレン」は、芳香族炭化水素の一つ以上の環から2つの水素原子が除去されて形成された2価のラジカルであり、水素は、同一又は異なる環から除去され、それぞれの環は、芳香族又は非芳香族である。
【0050】
ここで、「ヘテロアルキレン」とは、前記アルキレン基の一つ以上の炭素原子に接続されたヘテロ原子を一つ以上含むアルキレン基のことをいう。ヘテロ原子は、独立して、窒素、酸素、硫黄及びリンから選ばれる。
【0051】
本明細書において、「反応性有機シラン化合物」とは、酸二無水物とジアミンの縮合反応生成物に含まれている反応性官能基(例えば、無水物基又はアミン基)と反応する官能基を有する有機シラン化合物のことをいう。
【0052】
本明細書において、「アルコキシシラン基により改質されたポリアミック酸」とは、アルコキシシラン基を有するように改質されたポリアミック酸のことをいう。
【0053】
本明細書において、「アルコキシシラン基」とは、アルコキシ基を一つ以上(例えば、一つ、2つ、3つ、4つなど)有するシランに由来する基(例えば、アルコキシシリル)のことをいう。
【0054】
ここで、「シリカ」という用語は、SiOに限らず、Si-O連結基盤の材料をいって、文脈によって、シリカは、SiO(xは1.5〜2.5)、シロキサン(siloxane)、及び/又は有機置換基(水素、アリール、アルキルなど)を有するシリカまたはシロキサンなどの有機材料も指し得る。
【0055】
本発明の一実施形態による組成物は、アルコキシシラン基により改質されたポリアミック酸及びオリゴシリカ化合物を含むが、前記組成物内のSi原子の含量は、前記組成物の固形分の総重量を基準として15重量%以下である。前記組成物は水を実質的に含んでいない。例えば、前記組成物における水の含量は、100ppm以下である。前記組成物内の水分の含量は、組成物の製造時にやむを得ず含まれる量の水分(例えば、反応物又は溶媒中に含まれている微量の水分)に起因するものである。ここで、固形分とは、重合体の含量と関係があり、ここでは、組成物内に含まれたジアミンと酸二無水物の含量をいう。Siの含量は、組成物内の固形分を構成する成分(又は、反応原料)の含量から計算される。
【0056】
前記アルコキシシラン基により改質されたポリアミック酸は、少なくとも片側の末端に無水物基及び/又はアミン基などの反応性官能基を有する、酸二無水物とジアミンの縮重合生成物(例えば、少なくとも片側の末端に無水物基及び/又はアミン基を有するポリアミック酸)及び反応性有機シラン化合物間の反応生成物を含む。
【0057】
前記酸二無水物は、下記の一般式1で表わされる:
【0058】
【化8】
【0059】
式中、Aは、置換若しくは非置換の4価のC5〜C24の脂肪族環基、置換若しくは非置換の4価のC6〜C24の芳香族環基、及び置換若しくは非置換の4価のC4〜C24のヘテロ芳香族環基から選ばれる残基であり、前記脂肪族、芳香族環基又はヘテロ芳香族環基は単独で存在するか、或いは、2以上が互いに接合されて多環式(芳香族)環を形成するか、或いは、2以上の前記脂肪族環又は前記芳香族環及びヘテロ芳香族環から選択される2以上が単一結合、−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)−、−Si(CH−、−(CH−(ここで、1≦p≦10)、−(CF−(ここで、1≦q≦10)、C1〜C10の直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基、C1〜C10のフルオロアルキル基、C6〜C20の芳香族炭化水素基、及びC6〜C20の指環族炭化水素基から選ばれる1以上の置換基を有するC1〜C10のアルキレン基(例えば、−CR−として、Rは独立して、水素、C1〜C10の脂肪族炭化水素基、C6〜C20の芳香族炭化水素基、又はC6〜C20の指環族炭化水素基であるが、Rは同時に水素ではない)、−C(=O)NH−又はこれらの組み合わせにより連結されている。
【0060】
一般式1において、Aは、下記のうちのいずれか一つであることが好ましい。
【0061】
【化9】
【0062】
【化10】
【0063】
式中、X〜Xは、同一又は異なり、それぞれ独立して、直接結合、−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)−、−Si(CH−、−(CH−(ここで、1≦p≦10)、−(CF−(ここで、1≦q≦10)、−C(CH−、−C(CF−、又は−C(=O)NH−であり、
は、−O−、−S−、又は−NR300−(ここで、R300は、水素又はC1〜C5のアルキル基である。)、
及びZは、同一又は異なり、それぞれ独立して、−N=又は−C(R301)=(ここで、R301は、水素又はC1〜C5のアルキル基であるが、Z及びZが同時に−C(R301)=であることはなく)、
30〜R50及びR54〜R60は、同一又は異なり、それぞれ独立して、ハロゲン、置換若しくは非置換のC1〜C10の脂肪族有機基、又は置換若しくは非置換のC6〜C20の芳香族有機基であり、
51〜R53は、同一又は異なり、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換のC1〜C10の芳香族有機基、又は置換若しくは非置換のC6〜C20の芳香族有機基であり、
k30、k31及びk32は、それぞれ独立して、0〜2の整数であり、
k33、k35、k36、k37、k39、k42、k43、k44、k46、k54及びk57は、それぞれ独立して、0〜3の整数であり、
k34は、0又は1であり、
k38、k45、k50、k55及びk56は、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、
k40、k41、k47、k48及びk49は、それぞれ独立して、0〜5の整数であり、
k58、k59及びk60は、それぞれ独立して、0〜8の整数である。
【0064】
一般式2において、A2は、下記のうちのいずれか一つで表わされることが好ましい:
【0065】
【化11】
【0066】
式中、X10〜X16は、同一又は異なり、それぞれ独立して、直接結合、−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)−、−Si(CH−、−(CH−(ここで、1≦p≦10)、−(CF−(ここで、1≦q≦10)、−C(CH−、−C(CF−、又は−C(=O)NH−であり、
70〜R86及びR89〜R90は、同一又は異なり、それぞれ独立して、ハロゲン、置換若しくは非置換のC1〜C10の脂肪族有機基、又は置換若しくは非置換のC6〜C20の芳香族有機基であり、
87及びR88は、同一又は異なり、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換のC1〜C10の脂肪族有機基、又は置換若しくは非置換のC6〜C20の芳香族有機基であり、
k70、k73、k74、k75、k76、k77、k78、k79、k80、k81、k82及びk83は、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、
k71、k72、k85及びk86は、それぞれ独立して、0〜3の整数であり、
k84、k89及びk90は、それぞれ独立して、0〜10の整数である。
【0067】
一実施形態では、前記一般式1において、Aは、下記から選ばれる:
【0068】
【化12】
【0069】
それぞれのLは、同一又は異なり、それぞれ独立して、直接結合、−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)−、−Si(CH−、−(CH−(ここで、1≦p≦10)、−(CF−(ここで、1≦q≦10)、−CR−(ここで、Rは、同一又は異なり、それぞれ独立して、水素、C1〜C10の直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基、C6〜C20の芳香族炭化水素基、又はC6〜C20の指環族炭化水素基であるが、2つのRが両方とも水素であることはなく)、−C(CF−、−C(CF)(C)−又は−C(=O)NH−であり、
前記芳香族環は、置換されていないか、或いは、1以上の水素がC1〜C15のアルキル基、−F、−Cl、−Br、−I、C1〜C15のハロアルキル基、C1〜C15のアルコキシ基、C6〜C12のアリール基、C6〜C12のアリルオキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、又はこれらの組み合わせにより置換され、*は、カルボニル基の炭素に接続される部分である。
【0070】
例えば、Aは、下記から選ばれるが、これに制限されない。
【0071】
【化13】
【0072】
【化14】
【0073】
一般式1で表わされる酸二無水物の非制限的な例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物(DTDA)、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物;1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物;1,4−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物;2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物;2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物;2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物;4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル二無水物;ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物;4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物;4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物;ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物;4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物;4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物;ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物;4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物;4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物;3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物;2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物;2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物;4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物;ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物;ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物;1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物;1,1−ビス(3,4−カルボキシフェニル)エタン二無水物;1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物;2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物;2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物;2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物;2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物;4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル−2,2−プロパン二無水物;2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ−3,5−ジメチル)フェニル]プロパン二無水物;2,3,4,5−チオフェンテトラカルボン酸二無水物;2,3,5,6−ピラジンテトラカルボン酸二無水物;1,8,9,10−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物;3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物;1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物;1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン二無水物;2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物;1,1−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン二無水物;4,4’−ビス[2−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロイソプロピル]ジフェニルエーテル二無水物が挙げられる。このような酸二無水物モノマーは、公知の方法により合成可能であるか、或いは、商業的に入手可能である。酸二無水物は、単独で使用してもよく、或いは、必要に応じて、2種以上の混合物として使用してもよい。
【0074】
前記ジアミンは、下記の一般式2で表わされる。
【0075】
【化15】
【0076】
式中、A2は、置換若しくは非置換の2価のC5〜C24の脂肪族環基、置換若しくは非置換の2価のC6〜C24の芳香族環基、置換若しくは非置換の2価のC4〜C24のヘテロ芳香族環基、及び−L−SiR−O−SiR−L(ここで、Lは、単一結合又はC1〜C10のアルキレン基)から選ばれる残基であり、前記脂肪族又は芳香族環基は単独で存在するか、或いは、2以上が互いに接合されて多環式(芳香族)環を形成するか、或いは、2以上の前記脂肪族環又は2以上の前記芳香族環が単一結合、−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)、−Si(CH−、−(CH−(ここで、1≦p≦10)、−(CF−(ここで、1≦q≦10)、C1〜C10の直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基、C1〜C10のフルオロアルキル基、C6〜C20の芳香族炭化水素基、及びC6〜C20の指環族炭化水素基から選ばれる1以上の置換基を有するC1〜C10の2価のアルキレン基(例えば、−CR−として、Rは独立して、水素、C1〜C10の脂肪族炭化水素基、C6〜C20の芳香族炭化水素基、又はC6〜C20の指環族炭化水素基であるが、Rは同時に水素ではない)、−C(=O)NH−又はこれらの組み合わせにより連結されている。
【0077】
一般式2において、A2は、下記のうちの一つであることが好ましい。
【0078】
【化16】
【0079】
式中、X10〜X16は、同一又は異なり、それぞれ独立して、直接結合、−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)−、−Si(CH−、−(CH−(ここで、1≦p≦10)、−(CF−(ここで、1≦q≦10)、−C(CH−、−C(CF−、又は−C(=O)NH−であり、
R70〜R86及びR89〜R90は、同一又は異なり、それぞれ独立して、ハロゲン、置換若しくは非置換のC1〜C10の脂肪族有機基、又は置換若しくは非置換のC6〜C20の芳香族有機基であり、
87及びR88は、同一又は異なり、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換のC1〜C10の脂肪族有機基、又は置換若しくは非置換のC6〜C20の芳香族有機基であり、
k70、k73、k74、k75、k76、k77、k78、k79、k80、k81、k82及びk83は、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、
k71、k72、k85及びk86は、それぞれ独立して、0〜3の整数であり、
k84、k89及びk90は、それぞれ独立して、0〜10の整数である。
【0080】
一実施形態では、一般式2において、A2は、下記から選ばれる:
【0081】
【化17】
【0082】
上記式中、Lは、同一又は異なり、直接結合、−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)−、−Si(CH−、−(CH−(ここで、1≦p≦10)、−(CF−(ここで、1≦q≦10)、−CR−(ここで、Rは、同一又は異なり、それぞれ独立して、水素、C1〜C10の直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基、C6〜C20の芳香族炭化水素基、又はC6〜C20の指環族炭化水素基であるが、2つのRが両方とも水素であることはなく)、−C(CF−、−C(CF)(C)−又は−C(=O)NH−であり、
Xは、同一又は異なり、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のC1〜C10のアルキレン基、置換若しくは非置換のC4〜C20のシクロアルキレン基、又は置換若しくは非置換のC6〜C20のアリーレン基であり、
前記芳香族又は指環族環は、置換されていないか、或いは、1以上の水素がC1〜C15のアルキル基、−F、−Cl、−Br、−I、C1〜C15のハロアルキル基、C1〜C15のアルコキシ基、C6〜C12のアリール基、C6〜C12のアリルオキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、又はこれらの組み合わせにより置換され、*は、窒素に接続される部分である。
【0083】
別の実施形態では、前記A2は、下記から選ばれるが、これに制限されない。
【0084】
【化18】
【0085】
【化19】
【0086】
【化20】
【0087】
【化21】
【0088】
本発明の一実施形態において、前記ジアミンは、下記の化合物から選ばれる一つ以上である。
【0089】
【化22】
【0090】
式中、R32〜R52は、同一又は異なり、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ基、置換若しくは非置換のC1〜C15のアルキル基、置換若しくは非置換のC1〜C15のアルコキシ基、置換若しくは非置換のC1〜C15のフルオロアルキル基、置換若しくは非置換のC3〜C15のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC3〜C15のヘテロシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC3〜C15のオキシシクロアルキル基、置換若しくは非置換のC6〜C15のアリール基、置換若しくは非置換のC6〜C15のオキシアリール基、又は置換若しくは非置換のC2〜C15のヘテロアリール基であり、
〜X12は、同一又は異なり、それぞれ独立して、単一結合、置換若しくは非置換のC1〜C10のアルキレン基、置換若しくは非置換のC1〜C10のシクロアルキレン基、置換若しくは非置換のC6〜C15のアリーレン基、SO、O、CO又はこれらの組み合わせであり、
n35〜n37、及びn40〜n49は、0〜4の整数のうちのいずれか一つであり、
n38及びn39は、0〜3の整数のうちのいずれか一つである。
【0091】
非制限的な例として、ジアミンは、下記の一般式を有する。
【0092】
【化23】
【0093】
【化24】
【0094】
使用可能なジアミンモノマーの具体例としては、m−フェニレンジアミン;p−フェニレンジアミン;1,3−ビス(4−アミノフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン;4,4’−ジアミノ−ジフェニルメタン;1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン;1,1−ビス(4−アミノフェニル)エタン;2,2’−ジアミノ−ジエチルスルフィド;ビス(4−アミノフェニル)スルフィド;2,4’−ジアミノ−ジフェニルスルフィド;ビス(3−アミノフェニル)スルホン;ビス(4−アミノフェニル)スルホン;4,4’−ジアミノ−ジベンジルスルホキシド;ビス(4−アミノフェニル)エーテル;ビス(3−アミノフェニル)エーテル;ビス(4−アミノフェニル)ジエチルシラン;ビス(4−アミノフェニル)ジフェニルシラン;ビス(4−アミノフェニル)エチルホスフィンオキシド;ビス(4−アミノフェニル)フェニルホスフィンオキシド;ビス(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミン;ビス(4−アミノフェニル)−N−メチルアミン;1,2−ジアミノ−ナフタレン;1,4−ジアミノ−ナフタレン;1,5−ジアミノ−ナフタレン;1,6−ジアミノ−ナフタレン;1,7−ジアミノ−ナフタレン;1,8−ジアミノ−ナフタレン;2,3−ジアミノ−ナフタレン;2,6−ジアミノ−ナフタレン;1,4−ジアミノ−2−メチル−ナフタレン;1,5−ジアミノ−2−メチル−ナフタレン;1,3−ジアミノ−2−フェニル−ナフタレン;4,4’−ジアミノ−ビフェニル;3,3’−ジアミノ−ビフェニル;3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−ビフェニル;3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノ−ビフェニル;3,4’−ジメチル−4,4’−ジアミノ−ビフェニル;3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノ−ビフェニル;4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル;2,4−ジアミノ−トルエン;2,5−ジアミノ−トルエン;2,6−ジアミノ−トルエン;3,5−ジアミノ−トルエン;1,3−ジアミノ−2,5−ジクロロ−ベンゼン;1,4−ジアミノ−2,5−ジクロロ−ベンゼン;1−メトキシ−2,4−ジアミノ−ベンゼン;1,4−ジアミノ−2−メトキシ−5−メチル−ベンゼン;1,4−ジアミノ−2,3,5,6−テトラメチル−ベンゼン;1,4−ビス(2−メチル−4−アミノ−ペンチル)−ベンゼン;1,4−ビス(1,1−ジメチル−5−アミノ−ペンチル)−ベンゼン;1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)−ベンゼン;o−キシリレンジアミン;m−キシリレンジアミン;p−キシリレンジアミン;3,3’−ジアミノ−ベンゾフェノン;4,4’−ジアミノ−ベンゾフェノン;2,6−ジアミノ−ピリジン;3,5−ジアミノ−ピリジン;1,3−ジアミノ−アダマンタン;ビス[2−(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロイソプロピル]ジフェニルエーテル;3,3’−ジアミノ−1,1’−ジアダマンタン;N−(3−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド;4−アミノフェニル−3−アミノベンゾエ−ト;2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン;2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン;2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン;2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン;2,2−ビス[4−(2−クロロ−4−アミノフェノキシ)フェニルヘキサフルオロプロパン;1,1−ビス(4−アミノフェニル)−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン;1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン;1,4−ビス(3−アミノフェニル)ブタ−1−エン−3−イン;1,3−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン;1,5−ビス(3−アミノフェニル)デカフルオロペンタン;4,4’−ビス[2−(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロイソプロピル]ジフェニルエーテル、ジアミノシクロヘキサン、ビシクロヘキシルジアミン、4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFDB)、ジアミノフルオレン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン(BACH)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(4−フェノキシアニリン)(6FIDDA)及び9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(BAPF)が挙げられるが、これらに制限されない。前記ジアミンは、単独で使用してもよく、或いは、必要に応じて、2種以上の混合物として使用してもよい。
【0095】
本発明の一実施形態において、前記酸二無水物とジアミンの縮重合生成物は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物6FDA)、又はこれらの混合物から選ばれる酸二無水物と、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFDB)との縮重合生成物を含む。
【0096】
縮重合は、酸二無水物とジアミンとを、空気雰囲気下において、又は不活性ガス雰囲気下において、所定の温度(例えば、50℃以下)において攪拌することにより行われる。このような縮合重合の条件及び通常の機構は周知である。重合方式は、特に制限されるものではなく、適切に選択すればよい。
【0097】
例えば、前記縮重合は、選択に応じて、縮重合触媒を含む溶液中において行われる。溶液重合の場合、重合溶媒としては、ポリアミック酸の製造のために知られている任意の溶媒が使用可能である。溶媒の例としては、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの二極性非プロトン性溶媒、ガンマブチロラクトン、モノクロロベンゼンなどが挙げられるが、これらに制限されない。縮重合触媒の例として、パラトルエンスルホン酸などが挙げられるが、これに制限されない。二極性非プロトン性溶媒など上述した重合溶媒内において、与えられた酸二無水物モノマーを、選択に応じて、所定の触媒の存在下において、与えられたジアミンモノマーに所定の温度において付加すると、無水物基のカルボニル炭素に対するアミノ基の親核性攻撃により縮合反応が行われる。重合時間及び温度も、使用されたモノマーの種類に応じて適切に選択すればよい。
【0098】
例えば、重合は、50℃以下、例えば、−20℃〜30℃の温度において、30分以上、例えば、1時間以上行う。前記溶液内のモノマーの濃度も適切に選択すればよく、特に制限されない。酸二無水物及びジアミンモノマーは、公知の合成方法により簡単に製造可能であるか、或いは、商業的に入手可能である。ジアミンに対する酸二無水物のモル比(酸二無水物/ジアミン)を調節して、縮重合生成物には、片側又は両側の末端に無水物残基を持たせる。例えば、酸二無水物の含量は、ジアミン1モルに対して、0.8〜0.99、例えば、0.9〜0.97の範囲である。
【0099】
片側又は両側の末端に反応性官能基(例えば、無水物及び/又はアミン残基)を有する前記縮重合生成物(例えば、ポリアミック酸)は、反応性有機シラン化合物と反応してアルコキシシラン基により改質されたポリアミック酸を得る。非制限的な例において、図1を参照すると、反応性有機シラン化合物の反応性官能基(例えば、アミノ基)は、前記縮重合生成物の無水物基と反応して鎖の末端にアルコキシシラン基を有するポリアミック酸を得る。
【0100】
前記反応性有機シラン化合物は、下記の一般式3で表わされる化合物であることが好ましい。
【0101】
【化25】
【0102】
式中、Lは、単一結合、置換若しくは非置換の炭素数1〜12のアルキレン、置換若しくは非置換のC6〜C30のアリーレン、置換若しくは非置換のC1〜C12のヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせであり、Aは、−NH又は酸無水物基であり、R〜Rは、それぞれ独立して、C1〜C6のアルキル基又はC1〜C6のアルコキシ基であるが、R〜Rのうちの一つ以上は、C1〜C6のアルコキシ基である。
【0103】
前記反応性有機シラン化合物の例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン及び3−(トリエトキシシリル)プロピルこはく酸無水物が挙げられるが、これらに制限されない。
【0104】
反応性有機シラン化合物及び前記縮重合生成物間の反応条件は、特に制限されない。例えば、反応性有機シラン化合物(例えば、アミノアルコキシシラン)とポリアミック酸とを100℃以下、例えば、50℃以下、又は30℃以下の温度において任意の溶媒(例えば、ジメチルアセトアミド(DMAc)など)内において攪拌してアルコキシシラン基により改質されたポリアミック酸を得る。
【0105】
前記反応性有機シラン化合物の含量は、片側又は両側の末端に反応性官能基(例えば、無水物基或いはアミン基)を有するポリアミック酸の含量及び後述するオリゴシリカ化合物に含まれているアルコキシシラン化合物の含量を考慮して適切に選択する。例えば、前記反応性有機シラン化合物の含量は、ポリアミック酸の反応性官能基(無水物或いはアミン残基)1モル当たり1〜1.5モルの範囲であるが、これに制限されない。例えば、前記反応性有機シラン化合物の含量(例えば、アミノアルコキシシランの含量)は、オリゴシリカ化合物に含まれるアルコキシシラン化合物1モル当たり、0.01〜10モル、例えば、0.1モル〜3モル、0.5モル〜2モル、又は0.8モル〜1.5モルの範囲であるが、これに制限されない。
【0106】
アルコキシシラン基により改質されたポリアミック酸は、オリゴシリカ化合物のヒドロキシ基又はアルコキシ基と反応する。
【0107】
前記オリゴシリカ化合物は、有機シランジオールとアルコキシシラン化合物の縮合反応生成物を含む。
【0108】
前記アルコキシシラン化合物は、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、又はこれらの組み合わせを含む。本発明の一実施形態においては、オリゴシリカ化合物を非加水縮合反応を通じて製造し、製造されたオリゴシリカ化合物を上述した縮重合生成物と混合して組成物を得る。
【0109】
前記有機シランジオールは、下記の一般式4で表わされる化合物が好ましい。
【0110】
【化26】
【0111】
式中、nは、1〜10の整数であり、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基により置換された炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、又は炭素数6〜20のアリール基である。
【0112】
例えば、前記シランジオールは、ジフェニルシランジオール、ジイソブチルシランジオール、シラノール末端化ポリジメチルシロキサン、シラノール末端ポリジメチルシロキサン、シラノール末端ジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、シラノール末端ポリジフェニルシロキサン、シラノール末端ポリジフェニルシロキサン、シラノール末端ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン又はこれらの混合物である。シランジオールとしてジフェニルシランジオールを使用する場合、光学的に透明なオリゴシリカ化合物溶液が得られる。
【0113】
前記アルコキシシラン化合物は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、又はこれらの混合物であることが好ましい。
【0114】
オリゴシリカ化合物の透明性のために、或いは、製造された複合体の向上した光学的な物性のために、前記有機シランジオール1モル当たりの前記アルコキシシラン化合物の含量は、1〜10モルである。アルコキシシラン化合物のみを使用する非加水縮合反応は、不透明なオリゴシリカ化合物を提供するのに対し、上述した含量のアルコキシシラン化合物及びシランジオールを使用すると、例えば、非加水ゾルゲル反応の速度を制御することにより、オリゴシリカ化合物を含む透明な粘性溶液が得られる。
【0115】
前記有機シランジオールと前記アルコキシシラン化合物の縮合反応は、アルカリ土金属水酸化物の存在下における非加水縮合反応、例えば、非加水ゾルゲル反応である。すなわち、本発明の実施形態において、ポリイミド複合体製造用の組成物は、水を含んでいない。
【0116】
従来、加水縮合反応により製造されたオリゴシリカ化合物を含む組成物は、光学的な物性(例えば、透過度)の向上のために多量のシリカを必要としていた。このように多量のシリカを含む場合、最終複合体の機械的な物性の低下が避けられず、例えば、最終複合体は脆性の増加が顕著であった。
【0117】
これとは対照的に、非加水ゾルゲル反応により得られたオルガノシリカ前駆体を含む組成物は、より少ない含量のシリカを含む場合であっても、製造された複合体が向上した光学的な物性(例えば、増加された透光率及び減少された黄色指数)を示す。本発明の一実施形態による組成物において、前記オリゴシリカ化合物の含量は、前記アルコキシシラン基により改質されたポリアミック酸100重量部当たりに1重量部以上、例えば、2重量部以上、3重量部以上、又は4重量部以上である。例えば、前記オリゴシリカ化合物の含量は、前記アルコキシシラン基により改質されたポリアミック酸100重量部当たりに15重量部以下、例えば、14.5重量部以下、14重量部以下である。このように少量のオリゴシリカ化合物の付加によっても光学的な物性の向上が図られるので、シリカ粒子が複合体の脆性など機械的な物性に及ぼす影響を極力抑えながら向上した品質の複合体を提供することができる。
【0118】
一方、加水ゾルゲル反応の場合、通常、24時間以上の反応時間が必要である。このような非加水ゾルゲル反応は、複合体製造用の組成物の製造及び複合体の製造にかかる時間を大幅に短縮させることが確認された。前記オリゴシリカ化合物が非加水ゾルゲル反応により製造される場合、前記オリゴシリカ化合物を含む組成物は水及びゾルゲル反応のための溶媒を含んでいない。このため、水及び溶媒による組成物の粘度の低下が発生せず、これにより、複合体の製造工程における生産性が向上して組成物の取り扱いが容易である。
【0119】
これとは対照的に、加水ゾルゲル反応により製造されたオリゴシリカ化合物を含むとき、最終組成物は水を必然的に含むことになる。ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸は、水分の存在に敏感である。特に、水分の存在下においてポリアミック酸が加熱される場合、主鎖が分解されて最終的なポリマー複合体におけるポリイミドの分子量が低下し、これは、製造されたポリマー複合体を含む成形品(例えば、フィルム)の物性の劣化につながる。なお、加水ゾルゲル反応により製造されたオルガノシリカ前駆体の含量が増えると、最終組成物は更に増大された量の水を含むことになるが、このように増大された量の水はポリアミック酸溶液の粘度の低下の原因になって工程性及び取り扱い性の面からみて不利である。
【0120】
非制限的な例として、図1を参照すると、シランジオールの水酸基及びアルコキシシランのアルコキシ基が非加水縮合反応をして(例えば、アルコールが抜けながら)架橋されたシリカ前駆体を形成する。非加水縮合反応は、金属水酸化物触媒の存在下において行われる。金属水酸化物触媒の非制限的な例としては、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウムなどが挙げられる。触媒の量は、0.0001〜10モル%であるが、これに制限されない。非加水縮合反応は、10分以上、例えば、30分間〜5時間行われるが、これに制限されない。反応温度は、0℃以上200℃以下であるが、これに制限されない。例えば、反応は、常温において行われる。縮合反応により製造されたアルコールは、改質されたポリアミック酸との混合前に、適切な方法(例えば、減圧蒸発など)により除去される。
【0121】
改質されたポリアミック酸と(非加水縮合反応により形成された)オリゴシリカ化合物とを混合して組成物を得る。得られた組成物は、選択に応じて、フィルムなどにより製造されて乾燥される。乾燥は、50℃〜200℃において行われるが、これに制限されない。乾燥は、窒素雰囲気下において行われるが、これに制限されない。前記組成物は選択に応じて乾燥され、且つ硬化されてオルガノシリカ(例えば、そのナノ粒子)が分散されているポリイミド複合体を提供する。選択に応じて乾燥及び硬化が行われる間に、ポリアミック酸はポリイミドに転換され、オリゴシリカ化合物はシリカネットワークを形成し、特に、オルガノシリカ前駆体の反応基(例えば、アルコキシ基又はヒドロキシ基)がポリアミック酸末端のアルコキシシランと反応して架橋結合を形成する。
【0122】
したがって、本発明の他の実施形態は、上述した組成物の硬化物を含むポリイミド複合体に関するものである。
【0123】
組成物の硬化は、ポリアミック酸のイミド化を引き起こすのに十分な温度に前記組成物を加熱することにより行われる。前記温度は、50℃以上、例えば、80℃〜400℃の範囲であるが、これに制限されない。硬化は、窒素雰囲気下において行われるが、これに制限されない。前記組成物は、高温硬化時における透過度の低下の問題を解決し、硬化により得られた複合体は、加水ゾルゲル反応生成物であるオリゴシリカ化合物を含む組成物に比べて、顕著に向上した透明性、減少された熱膨張係数、向上した耐熱性を示す。特に、複合体内のシリカの含量が低い場合であっても、上述した効果が得られる。
【0124】
本発明の一実施形態において、前記硬化物は、透過電子顕微鏡(TEM)で観察したとき、200nm以上の大きさ(特に、150nm以上の大きさ)を有するシリカ粒子を含んでいない。本発明の一実施形態において、前記硬化物は、透過電子顕微鏡で観察したとき、ポリイミドマトリックスから分離されたオリゴシリカのドメインを含んでいない。前記ポリイミド複合体におけるSiの含量は、複合体の総重量を基準として、例えば、4重量%〜14重量%の範囲である。このような範囲内にSiを含む場合、前記複合体は、透過度、黄色指数、及びヘイズの面からみて向上した光学的な物性を示す。前記ポリイミド複合体は、波長430nmの光に対する透過率が65%以上、例えば、68%以上であり、ヘイズが1%以下、例えば、0.5%以下である。例えば、ポリイミド複合体は、透光度70%以上、YI 12以下、及びヘイズ5%以下を同時に満たす。
【0125】
また、前記複合体は、300℃超、例えば、約400℃の高い温度において格段に向上した耐熱性を示す。このため、前記複合体は、ポリイミドフィルムが後続する高温工程において光特性及び物理的な特性の低下を示すという問題点を解決する。例えば、前記ポリイミド複合体は、試験片を荷重0.05N下において30℃から400℃に10℃/分の速度にて加熱して得られる熱膨張係数(CTE)が150ppm/℃以下、例えば、130ppm/℃以下である。
【0126】
他の実施形態において、フィルムは、前記ポリイミド複合体を含む。
【0127】
更に他の実施形態において、電子素子は、前記フィルムを備える。前記フィルムは、電子素子の基板、絶縁膜、誘電膜、平坦膜、保護膜などに用いられる。
【0128】
前記電子素子は、フラットパネルディスプレイ、タッチパネル、太陽電池、e−ウィンドウ、ヒートミラー、透明トランジスタ、フレキシブルディスプレイ、相補性金属酸化膜半導体センサー、又は発光ダイオード照明である。
【0129】
以下、実施例を挙げて本発明の実施形態について詳細に説明する。しかしながら、下記の実施例は単に本発明の実施形態を説明するための例示に過ぎず、これらにより本発明の範囲が制限されることはない。
【実施例】
【0130】
I.組成物及び複合体の製造
(実施例1)
[1]ポリ(アミック酸)の製造:
窒素雰囲気下において、反応器にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を投入した。前記反応器に2,2’−ビストリフルオロメチル−4,4’−ビフェニルジアミン(TFDB)を付加し且つ溶解させて2,2’−ビストリフルオロメチル−4,4’−ビフェニルジアミン(TFDB)溶液を製造した。前記2,2’−ビストリフルオロメチル−4,4’−ビフェニルジアミン(TFDB)溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を2,2’−ビストリフルオロメチル−4,4’−ビフェニルジアミン(TFDB)とのモル比が0.9〜0.99:1(TFDB:BPDA)になるように付加し、25℃において48時間反応を行ってポリアミック酸を得た。
【0131】
[2]アミノアルキルシロキサンによる末端のキャッピング処理:
項目[1]において製造したポリアミック酸を含む溶液にガンマアミノプロピルトリメトキシシランを付加し、25℃において攪拌して前記ポリアミック酸の無水物の末端をアルコキシシランでキャッピングした。ガンマアミノプロピルトリメトキシシランの含量は、ジアミン及び二無水物間のモル含量の差を基準として2.0〜2.3倍にした。
【0132】
[3](非加水縮合反応を用いた)オリゴシリカ化合物の製造:
テトラメトキシシラン10g(0.066モル)及びジフェニルシランジオール3.57g(0.0165モル)をフラスコに入れ、ここに更に水酸化バリウムをテトラメトキシシラン1モルに対して0.2モル%の含量で付加した後、80℃において5時間攪拌した。減圧蒸発器を用いて得た反応混合物からメタノールを除去してオリゴシリカ化合物を得た。
【0133】
[4]組成物の製造及び前記組成物の硬化による複合体の製造:
項目[2]において製造され、且つアミノシロキサンにより末端がキャッピングされた所定量のポリアミック酸、及び項目[3]において得られた所定量のオリゴシリカ化合物を混合し且つ攪拌して組成物を得た。前記組成物のSiの含量は、4.3重量%であった。
【0134】
得られた組成物をガラス基板にコーティングしてフィルムを製造し、得られたフィルムを窒素雰囲気下において300℃の温度において60分間熱処理してオリゴシリカを含むポリイミド複合体を得た。
【0135】
(実施例2〜5)
アミノシロキサンにより末端がキャッピングされた所定量のポリアミック酸、及び所定量のオリゴシリカ化合物を混合して、組成物内のSiの含量がそれぞれ表1に示す通りである組成物を得たことを除いては、実施例1の方法と同様にして組成物及びポリイミド複合体を製造した。
【0136】
(比較例1)
オリゴシリカ化合物を付加することなく、前記アミノシロキサンにより末端がキャッピングされたポリアミック酸からなる組成物を用いたことを除いては、実施例1の方法と同様にして組成物及びポリイミドを製造した。
【0137】
(比較例2〜3)
アミノシロキサンにより末端がキャッピングされた所定量のポリアミック酸、及び所定量のオリゴシリカ化合物を混合して、組成物内のSiの含量がそれぞれ表1に示す通りである組成物を得たことを除いては、実施例1の方法と同様にして組成物及びポリイミド複合体を製造した。
【0138】
(比較例4)
末端がキャッピングされていない所定量のポリアミック酸、及び所定量のオリゴシリカ化合物を混合して、組成物内のSi含量がそれぞれ表1に示す通りである組成物を得たことを除いては、実施例1の方法と同様にして組成物及びポリイミド複合体を製造した。
【0139】
(比較例5及び比較例6)
非加水ゾルゲル反応により製造されたオリゴシリカ化合物の代わりに、加水ゾルゲル反応により製造されたシリカ前駆体を使用し、組成物のシリカの含量をそれぞれ下記表1に示すようにしたことを除いては、実施例1の方法と同様にして組成物を製造し、これからシリカ含有ポリイミド複合体を得た。
【0140】
II.製造された複合体の特性の分析及び物性の評価
1.複合体の透光度の測定
実施例1〜5及び比較例1〜6により得られた複合体に対して、下記の方法を用いて、300〜800nmの光に対する全波長透過率(%)及び430nmの波長の光に対する透過率(%)を測定した。
【0141】
サンプルの一部を幅50mm×長さ50mmに切断し、ミノルタ社製の分光測光器CM−3600dを用いて透過率を測定した。
【0142】
その結果を表1にまとめて示す。
【0143】
2.複合体の黄色指数の測定
実施例1〜5及び比較例1〜6により得られた複合体に対し、下記の方法を用いて黄色指数(YI)を測定した。
【0144】
サンプルの一部を幅50mm×長さ50mmに切断し、ミノルタ社製の分光測光器CM−3600dを用いて黄色指数を測定した。
【0145】
その結果を表1にまとめて示す。
【0146】
3.複合体のヘイズの測定
実施例1〜5及び比較例1〜6により得られた複合体に対し、下記の方法を用いてヘイズを測定した。
【0147】
サンプルの一部を幅50mm×長さ50mmに切断し、ミノルタ社製の分光測光器CM−3600dを用いてヘイズを測定した。
その結果を表1にまとめて示す。
【0148】
4.複合体の熱膨張係数の測定
実施例1〜3及び比較例1により得られた複合体に対し、下記の方法を用いて熱膨張係数(CTE)を測定した。
【0149】
サンプルの一部を幅5mm×長さ30mmに切断し、TAインスツルメント社製の熱機械的分析装置Q400を用いて熱膨張係数値(Coefficient of thermal expansion;CTE)を測定した。サンプルを水晶フックにかけ、0.050Nの力を加えた後に窒素雰囲気下において30℃から400℃まで10℃/分の速度にて加熱した。熱膨張係数値は、50℃から400℃までの範囲内において求めた。
【0150】
その結果を図2及び表2に示す。
【0151】
5.複合体の透過電子顕微鏡による分析
実施例4の複合体及び比較例4の複合体に対し、FEI社製のTecnai G2装置を用いて透過電子顕微鏡分析を行い、その結果を図3及び図4にそれぞれ示す。
【0152】
【表1】
【0153】
表1の結果は、実施例1〜5の複合体が比較例の複合体に比べて、向上した光学的な物性を示すことを示唆する。例えば、実施例1及び実施例4の複合体は、それぞれ4.3%及び13.9%のSi含量を有するが、比較例1に比べて略14%及び27%向上した透過度(430nmの波長において)を示すのに対し、比較例6の複合体は、おおよそ25重量%のSiの含量を有するが、比較例1に比べて僅か10%より高い透過度(430nmの波長において)を示す。すなわち、実施例1〜5の複合体は、たとえ減少された含量のシリカを含んでいるとしても(甚だしくは、短波長領域においても)、より高い透過度など向上した光学的な物性を示し、その結果、脆性など他の機械的な物性に影響を与えないながらも、複合体の光学的な物性を向上させる。
【0154】
比較例6の結果から明らかなように、加水反応を用いて非加水反応と同じ光特性を得るためには、添加されるべきシリカの含量が遥かに(例えば、3倍)多くなければならない。
【0155】
【表2】
【0156】
前記表2及び図2の結果から明らかなように、実施例1〜3の複合体は、比較例1のポリイミドに比べて、(特に、400℃の高温熱処理に際して)顕著に低くなった熱膨張係数CTEを示す可能性がある。したがって、有機発光ダイオード(LED)の製造工程など、高い温度の後続熱処理を含む製造工程において光学的な素子(例えば、透明基板又は透光フィルム)に好適に適用される。
【0157】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれらに制限されるものではなく、下記の特許請求の範囲において定義している基本概念を用いた当業者の色々な変形及び改良形態もまた本発明の権利範囲に属するものである。
図1
図2
図3
図4