【課題を解決するための手段】
【0013】
上記のタイプの本発明による圧着コンタクトは、ウィングが、導体のためのレセプタクルに長手方向において重なる導体変位部材を形成するという点でこの問題を解決する。
【0014】
上記のタイプの圧着接続は、少なくとも1つのウィングが、導体のためのレセプタクルに長手方向において重なり、かつ導体の端部に押し込まれる少なくとも1つの導体変位部材を形成するという点でこの問題を解決する。
【0015】
「導体変位部材の押し込み」とは、導体変位部材が、使用されている導体の単一撚線間に押され、それらを変位させることを意味すると理解されるべきである。
【0016】
これらの方策により、内側に位置している、使用されているアルミニウム導体のそれらの単一撚線に直接電気的に接触することができるようになり、圧着接続を生成するとき、導体変位部材は、使用されているアルミニウム導体の内側の単一撚線との機械的接触に加わり、その結果、単一撚線のまわりに形成された酸化アルミニウムの層が貫通される。
【0017】
本発明による解決策は、互いに無関係な以下のそれぞれ個別に有利な成果を介して改善され得る。これらの構成および関連する利点は、この後さらに詳細に探求されるであろう。
【0018】
本発明による圧着コンタクトの第1の有利な構成では、導体変位部材は、ウィングの基部として形成され、この基部は長手方向においてレセプタクルの方に広がっている。これは、広がっている基部がクリンピング中にアルミニウム導体の単一撚線間で曲げられるという利点があり、ここで、ウィングは、圧着コンタクトの前端部を閉じ、広がっている基部のみが導体のためのレセプタクル中に延びることができ、アルミニウム導体の内部に位置する単一撚線に電気的および機械的の両方で接触する。
【0019】
基部の幅はウィングの幅までとすることができる。ウィングの幅は圧着コンタクトの長手方向に測定される。ウィングの広がっている基部は、クリンプ側面から始まって、ウィングの方にテーパ化し、クリンプ側面からある距離のウィング端部で終了することができる。さらに、クリンプ側面に面する端部とクリンプ側面から離れて面する端部との間の広がっている基部がウィングに隣接することも可能である。
【0020】
この構成は、クリンプ側面から始めてクリンプ側面に対して遠位にあるウィングの端部まで測定した、圧着コンタクトの長手方向におけるウィングおよび導体変位部材の幅が連続的に減少することを特徴とする。
【0021】
本発明による圧着コンタクトの第2の有利な構成では、ウィングにおいて、クリンプ側面からある距離のところに、少なくとも1つの導体変位部材が設けられ、少なくとも1つの導体変位部材は、変位逆とげ(displacing barb)として形成され、長手方向にウィングから突出しており、前端部から離れる方に向けられる。ウィングは、クリンピング中に前端部とレセプタクル端部との間で螺旋形状に一緒に巻かれるので、変位逆とげがウィングにおいてクリンプ側面から任意の距離のところに形成されることによって、そのような変位逆とげによって、内側にあるアルミニウム導体の事実上望ましいいかなる単一ワイヤも、変位逆とげと機械的および電気的に接触することができる。
【0022】
変位逆とげはバーとして形成することができる、すなわち、長手方向に垂直な変位逆とげの幅は、変位逆とげの長手方向範囲にわたって実質的に一定とすることができる。変位逆とげは、前端部から離れたところに長手方向において実質的にテーパ状になる変位逆とげとして形成することができることも可能である、すなわち、それは、三角形の形態を取ることができる。
【0023】
実質的に三角形の変位逆とげは、固定されていない先端においておよびウィングとの連結部において丸くすることができる。これは、クリンピング中に、変位逆とげが単一撚線間で機械的に移動される間、変位逆とげに働く力をウィングに均一に伝えることができるという利点を有する。
【0024】
本発明による圧着コンタクトのさらなる有利な構成では、レセプタクル端部は、クリンプ側面間に配置されたクリンプ背部に、および/またはクリンプ側面に端部標示として形成される。そのような端部標示により、ユーザは、アルミニウム導体を圧着コンタクト中に挿入し、アルミニウム導体を圧着コンタクトに正しく位置づけることがより容易になる。このようにして、この圧着コンタクトによりもたらされる圧着接続は、圧着接続への要件を満たすことが確実にされ、アルミニウム導体を圧着コンタクトに電気的に接触させること、および導電性および/または腐食性液体と周囲空気とからアルミニウム導体を防護することの両方が保証される。
【0025】
端部標示は、長手方向に対して実質的に垂直に向けられた表面構造として形成することができる。この表面構造は、エンボス加工で製造することができ、または変質していない圧着コンタクトよりも光学的に目立つ機械的に変質された表面とすることができる。
【0026】
端部標示は、圧着コンタクトの長手方向に垂直に圧着コンタクトから突出する領域、例えば、押出領域として形成され、その結果、この領域は、電気的に接触されるべきアルミニウム導体のその端部のための機械的停止点を示すとも考えられる。したがって、レセプタクル端部のそのような構成において、アルミニウム導体がレセプタクル端部に突き当たり、それにより、アルミニウム導体が圧着コンタクト中に正しく差し込まれたという触覚フィードバックを介してユーザに信号を送るまで、ユーザは圧着コンタクトに沿って長手方向にこのレセプタクル端部までアルミニウム導体を変位させることができる。
【0027】
本発明による圧着コンタクトのさらなる構成では、それは、少なくとも1つの導体変位部材が、酸化物層を貫通するための、圧着コンタクトの導体受取側に形成された少なくとも1つの要素を有する場合に有利である。酸化物層を貫通するためのそのような追加として形成された要素は、導体変位部材の平滑な表面との機械的な接触が、酸化物層を貫通するために使用されるだけでなく、それにより、さらに、酸化アルミニウムの機械的に安定した層が安全に貫通されることが可能になるという利点を有する。
【0028】
酸化物層を貫通するための要素は、いわゆるセレーション(刻み目)として、孔として、くぼみとして、突起として、または圧着コンタクトの表面の粗化として形成することができる。一般に、導体変位部材の表面粗さを増加させる各形成要素は有利には酸化物層が貫通されるのを確実にすることができる。
【0029】
圧着コンタクトは、アルミニウム導体と接触するようになる様々な領域に、酸化物層を貫通するための説明した要素を有することができる。
【0030】
本発明による圧着コンタクトのさらなる有利な構成では、少なくとも1つの変位逆とげが、クリンプ側面からある距離にあるウィングのその端部に配置される。これは、クリンピング中に、そのような形成された変位逆とげが、アルミニウム導体の内部に位置するこれらの単一撚線と機械的におよび電気的に接触するという利点を有する。
【0031】
それにより、クリンピング中にクリンプ側面が到達できない単一撚線が、電気的に接触され得る。さらに、クリンピング中に、そのような適切な位置に置かれた変位逆とげは、異なる単一撚線の表面の酸化アルミニウムの層を貫通ができる状態で、アルミニウム導体の単一撚線間を通って機械的に移動することができ、その結果、単一撚線を互いに電気的に接触させることを改善することができる。変位逆とげは、ウィングの端部に直接形成するか、またはクリンプ側面の方向にウィングの端部からオフセットして形成することができる。
【0032】
本発明による圧着コンタクトのさらなる有利な構成では、少なくとも1つの変位逆とげは、クリンプ側面に面するウィングのその端部に配置される。変位逆とげのそのような配置は、クリンピング中に変位逆とげがアルミニウム導体の単一撚線間の限定的な通路しか移動する必要がなく、それにより、ストレスにさらされることが少ないという利点を有する。これは、例えば、薄肉材料から打ち抜かれた圧着コンタクトの場合に有利となり得る。
【0033】
クリンピング中にウィングを螺旋形状に内側に曲げることに起因して、内側に位置するアルミニウム導体の単一撚線の機械的および電気的接触が、さらに、クリンプ側面に面するウィングのその端部に配置された変位逆とげにより保証され得る。
【0034】
本発明による圧着コンタクトのさらなる構成では、それは、ウィングにおいて長手方向に対して垂直に分布した複数の変位逆とげをウィングが有する場合に有利である。複数の変位逆とげは、個々の変位逆とげが様々な単一撚線に触れることができ、それにより、変位逆とげのすべてが単一の変位逆とげにより可能となるよりも多くの単一撚線と機械的におよび電気的に接触することができるという利点がある。
【0035】
加えて、複数の変位逆とげが存在することによって、酸化アルミニウム層のより大きい有効表面が機械的に接触され、貫通され得る。それは、単一撚線の互いの電気的接触の改善をもたらすことができる。
【0036】
ウィングに形成される変位逆とげは、同じにまたは様々な形状で形成することができる。したがって、例えば、クリンプ側面から遠位にあるウィングのその端部に設けられた変位逆とげは、圧着コンタクトの長手方向に垂直な方向について、ウィングにおいてクリンプ側面のより近くに形成された追加の変位逆とげよりも狭く形成することができる。さらに、変位逆とげは、ウィングにおいて、等距離でまたは互いに対して異なる距離で設けることが可能である。
【0037】
2つのウィングが圧着コンタクトに形成される場合、異なる数の変位逆とげを2つのウィングに形成することができる。
【0038】
本発明による圧着コンタクトのさらなる有利な構成では、互いに対称な2つのウィングが圧着コンタクトに設けられ、ここで、ウィングに形成される変位逆とげは、互いに対して非対称に配置される。
【0039】
変位逆とげのそのような配置は、とりわけ、クリンピングプロセス中に、変位逆とげが、アルミニウム導体の単一撚線間で連続して、並行してではなく、移動されるという利点を有する。したがって、単一撚線を通る変位逆とげの移動は、ジッパーの歯に匹敵する。
【0040】
クリンプ側面からある距離にあるウィングのその端部がクリンプ背部に達する場合、どの場合にも、1つの変位逆とげのみが、変位逆とげを支えるウィングが配置されているクリンプ側面の方向に単一撚線によって横方向に案内される。
【0041】
本発明による圧着コンタクトのさらなる有利な構成では、圧着コンタクトのクリンピング中にシール剤を利用可能にする少なくとも1つのシール剤容器が設けられる。シール剤が圧着コンタクトによって既に利用可能にされている場合、圧着コンタクトがシール剤なしでクリンプされる危険性が減少する。
【0042】
シール剤は、例えば、導体のためのレセプタクルに、および/または前端部と圧着コンタクトのレセプタクル端部との間に、および/または導体クリンプの領域に備えることができる。有利には、シール剤は、グリースとすることができ、したがって、水溶性ではなく、周囲空気からの保護または封止を提供する。
【0043】
シール剤容器は、クリンプ背部の対称軸に対して対称に設けることができ、その結果、2つの対置するクリンプ側面をクリンプするとき、間隙を封止するのに十分なシール剤が各クリンプ側面内にまたは各クリンプ側面の一点にある。
【0044】
有利には、上記の圧着接続は、2つの対置する対称的に配置されたウィングをもつ圧着コンタクトを含む。それにもかかわらず、単に1つのクリンプ側面および1つのウィングを備えることが可能である。この場合、クリンピングプライヤまたはクリンピングツールは、そのようにして形成された圧着接続をクリンプするために特別に設計される。
【0045】
本発明による圧着接続の第1の有利な構成では、導体の導体絶縁部を受け取る絶縁クリンプは、クリンプされるウィングから遠位にある圧着コンタクトのその端部に設けられる。そのような絶縁クリンプは、クリンピングの後、圧着接続が引張り防止保護を有し、加えて、前端部とは反対側の圧着コンタクトの端部からのクリンプ内部への進入路が絶縁クリンプによって閉じられるという利点を有する。
【0046】
絶縁クリンプは、使用されている導体の絶縁部を変形させ、クランピング接続において圧着コンタクトと接続するが、導体の絶縁部を貫通しないように形成することができる。
【0047】
本発明による圧着接続の第2の有利な構成では、利用可能にされるシール剤が、クリンピング中に変形され、クリンプされた圧着コンタクトから少なくとも部分的に圧せられ、残っている間隙を、前端部においてクリンプされたウィングから、および/またはクリンプされた絶縁クリンプから、および/またはクリンプされたクリンプ側面から充填する。
【0048】
したがって、シール剤は、絶縁クリンプに、クリンプ側面に、およびウィングに備えることができ、その結果、導電性もしくは腐食性液体も周囲空気もクリンプ側面によって形成されたクリンプ内部に入り込むことができない。
【0049】
加えて、保持ループまたは保持突起を絶縁クリンプに設けることができ、それは、導体の絶縁部を変形させ、例えば、絶縁部に圧入され、それにより、圧着接続の引張り強度を改善できる歪取りの役割をする。
【0050】
以下、本発明が、例として図面を参照しながら実施形態を使用して説明される。様々な特徴は、上述の個々の有利な構成において既に実証されたように、本事例では互いに無関係に組み合わせることができる。個々の特徴は、さらに、この特徴に関連づけられた効果が重要でない限りでは、構成において省略することができる。