(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0012】
実施形態に係る加硫接着体は、ポリアミド系樹脂部材と、該樹脂部材に加硫接着されたゴム部材とからなり、該ゴム部材中にフェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物を含有させずにメラミン誘導体を含有させたものである。ゴム部材中に添加されたメラミン誘導体と樹脂部材のポリアミド系樹脂が反応することにより、樹脂部材とゴム部材との接着力を高めることができる。より詳細には、ゴム部材をなす材料中に含まれるメラミン誘導体に対して、樹脂部材中のポリアミドにおける末端アミノ基が求核攻撃することにより、化学結合が生じ、これにより樹脂部材とゴム部材との強固な接着力を発現させる。また、ゴム部材をなす材料中にフェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物を含有させていないので、当該縮合物とメラミン誘導体との反応によりゴム部材が硬化するのを回避することができ、耐久性の低下を抑制することができる。
【0013】
上記ポリアミド系樹脂部材としては、ポリアミド系樹脂またはポリアミド系熱可塑性エラストマーからなるものが用いられる。
【0014】
ポリアミド系樹脂としては、ポリアミド樹脂、または、ポリアミド樹脂とポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂との混合物が用いられる。
【0015】
ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体、ナイロン6/66/610共重合体、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体などのナイロン樹脂(脂肪族ポリアミド樹脂)が挙げられ、これらはいずれか1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、酢酸ビニル(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)などのポリビニル系樹脂; ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル系樹脂; ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)などのポリニトリル系樹脂; 酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロースなどのセルロース系樹脂; ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)などのフッ素系樹脂; 芳香族ポリイミド(PI)などのイミド系樹脂が挙げられ、これらはそれぞれ1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。ポリアミド樹脂とポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂との混合物を用いる場合、ポリアミド樹脂を主成分とすること、即ち樹脂成分の50質量%以上がポリアミド樹脂であることが好ましい。
【0017】
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、(A)上記ポリアミド系樹脂(好ましくはポリアミド樹脂)にゴムを分散させた海島構造を持つものでもよく、(B)ポリアミドからなるハードセグメントとゴム弾性を示すソフトセグメントとからなるブロック共重合体でもよく、(C)該ブロック共重合体にゴムを分散させた海島構造を持つものでもよい。好ましくは、ポリアミド樹脂にゴムを分散させてなるポリアミド系熱可塑性エラストマーを用いることである。
【0018】
上記(A)及び(C)の態様において、分散相を構成するゴムとしては、一般に架橋(加硫)可能な各種ゴムが挙げられ、例えば、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)などのジエン系ゴム及びその水素添加ゴム; エチレンプロピレンゴム(EPDM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム、マレイン酸変性エチレンブチレンゴム、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)などのオレフィン系ゴム; ハロゲン化ブチルゴム(例えば、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR))、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンなどの含ハロゲンゴム等が挙げられ、これらはいずれか1種又は2種以上組み合わせることができる。一実施形態として、分散相を構成するゴムは、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、ニトリルゴム(NBR)及び水素化ニトリルゴム(H−NBR)から選択される少なくとも1種を用いてもよい。
【0019】
上記(A)及び(C)の態様において、ポリアミド系樹脂とゴムとの配合比(添加剤を除いたポリマーとしての比率)は、特に限定されず、例えば、質量比(ポリアミド系樹脂/ゴム)で、90/10〜20/80でもよく、60/40〜25/75でもよく、50/50〜30/70でもよい。
【0020】
好ましい実施形態として、上記(A)の海島構造とする場合、ポリアミド系樹脂とゴムを架橋剤とともに溶融混練してゴムを動的架橋(TPV)させることにより得られる、ポリアミド系樹脂を連続相(マトリックス相)とし、ゴムの架橋物を分散相(ドメイン相)とする動的架橋物を用いてもよい。架橋剤としては、例えば、アルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂や臭素化アルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂などのフェノール樹脂が挙げられる。動的架橋物の作製は、例えば、二軸押出機、スクリュー押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどの各種混練機を用いて行うことができる。
【0021】
ポリアミド系樹脂部材を形成する上記ポリアミド系樹脂またはポリアミド系熱可塑性エラストマーには、充填剤、相溶化剤、可塑剤、軟化剤、加工助剤、安定剤、酸化防止剤などの各種添加剤を必要に応じて適宜配合してもよい。
【0022】
上記ゴム部材をなす材料としては、加硫成形される各種ゴム組成物を用いることができ、特に限定されない。該ゴム組成物において、ゴム成分(加硫によりゴム弾性を発現するポリマー成分)としては、加硫可能な各種ゴムが用いられ、前述した分散相を構成するゴムが例示される。好ましくは、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などのジエン系ゴムであり、これらはいずれか1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。特に、タイヤ用途の場合、NR、IR、BR、SBR又はこれらの2種以上のブレンドゴムを用いることが好ましい。
【0023】
該ゴム組成物には、カーボンブラックやシリカ等の充填剤、シランカップリング剤、オイル、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。充填剤の配合量は、特に限定されないが、例えばゴム成分100質量部に対して10〜200質量部とすることができ、より好ましくは20〜100質量部である。加硫剤としては、硫黄及び硫黄含有化合物が挙げられ、その配合量としては、ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。また、加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、及びグアニジン系などの各種加硫促進剤のいずれか少なくとも1種を用いることができ、その配合量は、ゴム成分100質量部に対して0.1〜7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0024】
本実施形態において、ゴム部材の材料中に添加しておくメラミン誘導体は、ポリアミドの末端アミノ基と反応性を有するメラミン系化合物であり、例えば、メラミンをメチロール化したメチロール化メラミン化合物が挙げられる。メチロール化メラミン化合物としては、メチロール化メラミンの他、そのメチロール基の一部又は全てをアルキルエーテル化(例えばメチルエーテル化又はエチルエーテル化)したアルキルエーテル化メチロールメラミン、更には、これらメチロール化メラミンやアルキルエーテル化メチロールメラミンの縮合物などが挙げられる。具体例としては、メチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン(即ち、ヘキサメチロールメラミンヘキサメチルエーテル)、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテル、ヘキサメチロールメラミンテトラメチルエーテル、ペンタメチロールメラミンペンタメチルエーテル、ペンタメチロールメラミンテトラメチルエーテル、ペンタメチロールメラミントリメチルエーテル、テトラメチロールメラミンテトラメチルエーテル、テトラメチロールメラミントリメチルエーテル、トリメチロールメラミントリメチルエーテル、トリメチロールメラミンジメチルエーテルなどが挙げられ、これらはいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0025】
メラミン誘導体の配合量は、特に限定されないが、ゴム部材中のゴム成分100質量部に対して0.3〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.4〜10質量部であり、0.5〜5質量部でもよい。
【0026】
本実施形態において、ゴム部材の材料中にはフェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物は添加しない。ここで、該フェノール類化合物としては、フェノールの他、フェノールのベンゼン環に結合した5つの水素原子の1つ以上がヒドロキシル基、アルキル基及び/又はアシル基で置換されたものが含まれる。フェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物としては、例えば、クレゾール−ホルムアルデヒド縮合物、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物、更にはエポキシ化合物で変性された変性レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物などが挙げられる。
【0027】
このように本実施形態では、ゴム部材の材料中にはフェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物を含有させないが、ポリアミド系樹脂部材中には、フェノール類化合物とホルムアルデヒド、及び/又は、フェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物(以下、これらをまとめてフェノール系接着成分ということがある。)を含有させてもよい。これらのフェノール系接着成分をポリアミド系樹脂部材中に練り込んでおくことにより、ポリアミド系樹脂部材とゴム部材との接着性をより高めることができる。
【0028】
ポリアミド系樹脂部材中に練り込んでおくフェノール系接着成分において、フェノール類化合物としては、フェノールの他、フェノールのベンゼン環に結合した5つの水素原子の1つ以上がヒドロキシル基、アルキル基及び/又はアシル基で置換されたものが挙げられ、好ましくはレゾルシン又はそのアルキル誘導体である。そのため、好ましいフェノール系接着成分としては、レゾルシン又はそのアルキル誘導体を含むフェノール類化合物とホルムアルデヒド、及び/又は、その縮合物であり、更にはそれらの変性物でもよい。
【0029】
ポリアミド系樹脂部材中への前記フェノール系接着成分の配合量は、特に限定されず、例えば、樹脂部材をなすポリマー成分(分散相をなすゴムのポリマー分も含む)100質量部に対して0.5〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量部であり、2〜5質量部でもよい。
【0030】
ポリアミド系樹脂部材としては、樹脂フィルムの他、シート状や板状などの様々な形状を持つ部材が挙げられ、特に限定されない。好ましい一実施形態である樹脂フィルムについて、フィルムの語は、一般にフィルムと呼ばれることの多い厚みの小さいもの(例えば0.01mm以上0.2mm未満)のみならず、一般にシートなどと呼ばれる厚みの大きいもの(例えば0.2〜5mm、典型的には0.2〜0.5mm)も含むものとする。樹脂フィルムの厚みは、好ましくは、0.02〜1.0mmであり、より好ましくは0.05〜0.5mmであり、更に好ましくは0.3mm以下である。
【0031】
ゴム部材は、その加硫成形時にポリアミド系樹脂部材と接着(即ち、加硫接着)されるものであり、ポリアミド系樹脂部材との接着界面を有するものであれば、その形状などは特に限定されない。また、ゴム部材は、独立した部材に限られず、未加硫の状態で他の未加硫のゴム部材の表面に貼り付けられる表面ゴム層などであってもよい。例えば、インナーライナーとカーカスプライとの間に配置されるタイゴム層であってもよい。また、複数のゴム層が一体に設けられる場合、ポリアミド系樹脂部材と接する表面ゴム層を該ゴム部材として、当該表面ゴム層のみにメラミン誘導体を配合してもよい。
【0032】
次に、ポリアミド系樹脂部材とゴム部材とからなる加硫接着体の製造方法について説明する。
【0033】
まず、ポリアミド系樹脂部材を作製するに際しては、ポリアミド系樹脂またはポリアミド系熱可塑性エラストマーを用いて、所定の形状に成形すればよい。その際、ポリアミド系樹脂またはポリアミド系熱可塑性エラストマー中に、上記フェノール系接着成分を添加して練り込んでおいてもよい。
【0034】
ポリアミド系樹脂部材を動的架橋物で構成する場合、二軸押出機を用いて、ポリアミド系樹脂とゴムを架橋剤とともに溶融混練することにより、動的架橋物のペレットを得る。得られたペレットを、例えばフィルム化する方法としては、押し出し成形やカレンダー成形など、通常の熱可塑性樹脂をフィルム化する方法を用いることができる。例えば、上記の動的架橋物のペレットを二軸押出機や単軸押出機を用いて押し出し成形することにより樹脂フィルムが得られる。
【0035】
ポリアミド系樹脂部材にフェノール系接着成分を練り込む場合、その添加時期は、分散相としてのゴムの添加と同時でもよく、前でも後でもよい。好ましくは、動的架橋後に添加することであり、これにより、後述するゴム部材との加硫接着時において接着性の向上効果をより一層高めることができる。
【0036】
加硫接着体の製造方法においては、また、ゴム部材をなす材料、即ちゴム組成物を調製する。その際、ゴム組成物中には、フェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物は添加せずに、メラミン誘導体を添加して混合することにより、ゴム組成物を得る。該ゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。なお、メラミン誘導体は、高温条件で分解してホルムアルデヒドを放出するため、ゴム部材の材料を混合する際には、例えば110℃以下で混練を行うのが好ましく、より好ましくは100℃以下で行う。
【0037】
このようにして得られたフェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物を含まないゴム組成物を、ゴム部材をなす材料として用いて、当該材料とポリアミド系樹脂部材とが接した状態で、加硫成形を行うことにより、加硫接着体が得られる。加硫成形の方法としては、特に限定されず、例えば、ポリアミド系樹脂部材と上記材料(即ち、未加硫のゴム部材)とを両者が接した状態となるような所定形状に成形して複合化しておき、該複合体を成形型内で加硫成形してもよく、あるいは該複合体をプレス加工により加硫成形してもよい。あるいはまた、例えば、射出成形型内にポリアミド系樹脂部材をセットしておき、上記材料を射出成形型内に注入してポリアミド系樹脂部材と一体に加硫成形してもよい。加硫温度も特に限定されず、例えば、140〜200℃とすることができ、ポリアミド系樹脂部材を構成するポリアミド系樹脂又はポリアミド系熱可塑性エラストマーの融点より低い温度に設定すればよい。
【0038】
このようにして得られる加硫接着体の用途は特に限定されない。好ましくは、自動車や二輪車などの各種空気入りタイヤに用いられる。空気入りタイヤに用いる場合、例えば、ポリアミド系樹脂部材としての樹脂フィルムが、タイヤ内面側のゴム層(ゴム部材)にインナーライナーとして加硫接着されたものでもよい。
【0039】
また、該樹脂フィルムはインナーライナー以外の部位にも好ましく用いることができ、例えば、サイドウォールを構成するゴム部材の層と積層してもよく、それによりサイドウォールの薄肉化による軽量化を図ってもよい。その場合、例えば、外面側の樹脂シートと、その内側の加硫ゴムとからなる加硫接着体を形成してもよい。
【0040】
また、樹脂フィルム以外のポリアミド系樹脂部材として用いることもでき、例えば、ビード部においてビードフィラーやビードコアを構成する比較的硬質の部材として用いることもできる。その場合、例えば、金属材とともにコアを構成するポリアミド系樹脂部材と、コアを取り囲む加硫ゴムとからなる加硫接着体を形成してもよい。
【0041】
かかる空気入りタイヤの製造方法としても、特に限定されず、上記樹脂フィルムなどのポリアミド系樹脂部材を用いて公知の方法によりグリーンタイヤを作製し、作製したグリーンタイヤをモールド内で加硫成形することにより、一実施形態に係る空気入りタイヤが得られる。
【0042】
本実施形態によれば、ゴム部材をなす材料の混練時に接着のための薬剤を添加するだけでポリアミド系樹脂部材とゴム部材の充分な接着を実現できる。そのため、ポリアミド系樹脂部材やゴム部材に対して予め接着剤液などによる表面処理を行うことなく、接着性を向上させることができる。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
なお、実施例1,2は参考例である。
【0044】
[使用材料]
実施例及び比較例で使用した下記表1に示す各材料の詳細は以下に示す通りである。
【0045】
・ナイロン樹脂:ナイロン6/66共重合体、DSM社製「Novamid 2020J」
・相溶化剤:住友化学(株)製「ボンドファーストE」
・BR:宇部興産(株)製「UBEPOL BR150L」
・架橋剤:臭素化アルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業(株)製「タッキロール250−III」
・NR:RSS#3
・SBR:JSR(株)製「JSR1502」
・カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製「ショウワブラックN−330T」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS−20」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華3号」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
・加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーNS‐P」
・メラミン誘導体:ヘキサメトキシメチルメラミン、日本サイテックインダストリーズ(株)製「サイレッツ963L」
・レゾルシン縮合物:変性レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業(株)製「スミカノール620」。
【0046】
[加硫接着体の調製・評価]
下記表1に記載の配合処方(質量部)に従い、動的架橋体を作製した。詳細には、ナイロン樹脂と相溶化剤をドライブレンドしたものと、ゴムと架橋剤をマスターバッチ化したゴムペレットとを、220℃に設定した二軸押出機(プラスチック工学研究所製)にて溶融混練することにより動的架橋してペレット化した。得られたペレットを単軸押出機にて幅14cm、厚み0.2mmの樹脂フィルムを成形した。
【0047】
なお、実施例3では、動的架橋して得られたペレットに、二軸押出機を用いて、フェノール系接着成分としてのレゾルシン縮合物を添加し、溶融混練することによりペレットを得て、該ペレットを用いて単軸押出機によりフィルムを成形した。
【0048】
下記表1に記載の配合処方(質量部)に従い、未加硫ゴム部材を作製した。詳細には、バンバリーミキサーを用いて、加硫系薬剤(硫黄及び加硫促進剤)及びメラミン誘導体を除く各材料を十分に混合した後、内部のゴム材料の温度が100℃以下に保たれるように、ゆっくりと混合を行いつつ、加硫系薬剤及びメラミン誘導体を添加し、しばらく混練を続けた。その後、混練物を取り出し、冷ロールで厚み0.3mmシート状に成形した後、所定のサイズに切断した。
【0049】
得られた厚み0.3mmの未加硫ゴム部材をタイゴム層として、カーカスプライの未加硫のトッピングゴム層の表面に貼り付けた。厚み0.2mmの樹脂フィルムの各サンプルを、カーカスプライに貼り付けたタイゴム層と重ね合わせ、プレス温度=160℃、プレス時間=20分間、プレス圧力=30kg/cm
2でプレス加硫を実施して、接着一体化させた。得られた加硫接着体について、接着性を評価した。
【0050】
上記で得られた厚み0.2mmの樹脂フィルムと、上記の厚み0.3mmの未加硫ゴム部材とを重ね合わせ、プレス温度=160℃、プレス時間=20分間、プレス圧力=30kg/cm
2でプレス加硫を実施して、接着一体化させた。得られた加硫接着体について、耐久性を評価した。
【0051】
[評価方法]
以下の接着性及び耐久性の評価方法は次の通りである。
【0052】
・接着性:上記で作製した接着性評価用の加硫接着体を幅25mm×長さ16cmの短冊状に切断し、50mm/分の剥離速度で180度剥離試験を実施し、接着力(N/25mm)を測定した。
【0053】
・耐久性:JIS K6270に類似の方法で行った。詳細には、上記で作製した耐久性評価用の加硫接着体をダンベル3号形で配向方向(押出方向)に打ち抜き、試験片を作製した。試験片をチャック間3cmにて挟み込み、5Hzの振動数で50%の繰り返し伸長をかけた(試験温度:−20℃)。試験片の数は10個とし、50%伸長を10万回繰り返した。試験を行うと樹脂フィルムやゴム部材の破断、あるいは樹脂フィルムとゴム部材の剥離が起こる。試験後にフィルムの破断ないし剥離が起こったものの数を調べた。破断ないし剥離した個数が少ないほど、低温耐久性に優れる。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示すように、ゴム部材にメラミン誘導体を配合していない比較例1では樹脂フィルムに対して接着しなかった。そのため、耐久性の試験は実施できず、表1中では「−」と表示した。一方、比較例2,3では、ゴム部材中にメラミン誘導体を配合したことにより、樹脂フィルムとゴム部材との接着性は向上したが、ゴム部材中にレゾルシン縮合物も配合したため、耐久性が劣っていた。これに対し、ゴム部材中にレゾルシン縮合物を配合することなくメラミン誘導体を配合した実施例1〜3では樹脂フィルムとゴム部材との接着性が顕著に向上しており、耐久性にも優れていた。
【0056】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。