(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記半円筒状可動部材は、前記半円筒状可動部材の一端側の端部口が前記高圧段圧縮機側に配向され、前記半円筒状可動部材の他端側の端部口が前記バイパス通路側に配向されるように、前記低圧側吸気通路と前記バイパス通路との前記分岐部に設けられる請求項4又は5に記載の2段過給システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、ディーゼルエンジンのような内燃機関においては、低圧段圧縮機を有する低圧段過給機、及び高圧段圧縮機を有する高圧段過給機の両方を備えて構成される2段過給システムが知られている。このような2段過給システムは、低圧段圧縮機と高圧段圧縮機とを接続する低圧側吸気通路、及び、低圧側吸気通路から分岐するとともに、高圧段圧縮機をバイパスするバイパス通路を備えている。そして、高トルクを要求されるような内燃機関の低速回転時には、低圧段圧縮機で圧縮された吸気が低圧側吸気通路を通過して高圧段圧縮機に送気され、高圧段圧縮機でさらに圧縮された後に内燃機関に供給される。一方で、高圧段圧縮機で吸気を圧縮する必要がないような内燃機関の高速回転時には、低圧段圧縮機で圧縮された吸気がバイパス通路を通過して内燃機関に供給される。
【0006】
しかしながら、このような2段過給システムでは、分岐部を含む分岐部の周辺構造が複雑になる場合がある。特に、エンジンルームのコンパクト化を図るために、低圧段過給機、高圧段過給機、及び内燃機関などを限られたスペース内に配置する際に、その傾向が顕著となる。そのため、分岐部の周辺構造が複雑になることによって、分岐部を流れる吸気に対して意図しない旋回力が生成される、又は、分岐部を流れる吸気に意図しない逆流を発生させるなど、設計時には予測困難な吸気の流れが発生する場合があることを本発明者らは見出した。このような設計時には予測困難な吸気の流れは、圧縮機(高圧段圧縮機)の効率低下を招いたり、バイパス通路を通過して内燃機関に供給される吸気に対して高圧損を生じさせたりする虞がある。
【0007】
この点、上述した特許文献1及び2には、当該技術を2段過給システムに対してどのように適用するかについて、何ら開示されていない。
【0008】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態は上述の従来技術に鑑みなされたものであり、内燃機関の運転状態に応じて、圧縮機の効率を向上させる、又は、圧縮機に供給される吸気の圧力比を上昇させることが可能であるとともに、複雑な分岐部の周辺構造によってもたらされる設計時には予測し得ないような吸気の流れに起因する圧縮機(高圧段圧縮機)の効率低下や、バイパス通路を通過して内燃機関に供給される吸気の高圧損を回避することのできる2段過給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る2段過給システムは、
内燃機関に圧縮した吸気を供給するための2段過給システムであって、
低圧段圧縮機を有する低圧段過給機と、
前記低圧段圧縮機の下流側に配置される高圧段圧縮機を有する高圧段過給機と、
前記低圧段圧縮機と前記高圧段圧縮機とを接続する低圧側吸気通路から分岐し、前記高圧段圧縮機と前記内燃機関とを接続する高圧側吸気通路に合流するバイパス通路と、
前記低圧側吸気通路と前記バイパス通路との分岐部、又は、前記低圧側吸気通路における前記分岐部より上流側の位置に設けられ、前記分岐部を流れる前記吸気を旋回させることが可能な可動部材、を有する旋回装置と、を備える。
【0010】
上記(1)の構成によれば、低圧側吸気通路とバイパス通路との分岐部、又は、低圧側吸気通路における分岐部より上流側の位置に、分岐部を流れる吸気を旋回させることが可能な可動部材が設けられている。そのため、内燃機関の運転状態に応じて、分岐部を流れる吸気を適切に旋回させることができる。
例えば、高トルクを要求されるような内燃機関の低速回転時には、分岐部を流れる吸気を高圧段圧縮機のインペラの回転方向とは逆方向に旋回させることで、高圧段圧縮機に送気される吸気の圧力比を上昇させることができる。あるいは、分岐部を流れる吸気を高圧段圧縮機のインペラの回転方向と同一の方向に旋回させることで、高圧段圧縮機の効率を向上させることができる。
【0011】
また、上記(1)の構成によれば、低圧側吸気通路とバイパス通路との分岐部、又は、低圧側吸気通路における分岐部より上流側の位置に設けられた可動部材を適切に制御することにより、複雑な分岐部の周辺構造によってもたらされる設計時には予測し得ないような吸気の流れに起因する高圧段圧縮機の効率低下や、バイパス通路を通過して内燃機関に供給される吸気の高圧損を回避することができる。
例えば、所定の内燃機関の運転状態において、設計時に想定していなかったような旋回流が発生する場合には、可動部材を制御して分岐部を流れる吸気を旋回させることで、このような旋回流を打ち消すことができる。あるいは、設計時に想定していない逆流が発生する場合には、可動部材を制御して分岐部を流れる吸気を旋回させることで、このような逆流を打ち消すことができる。これにより、高圧段圧縮機の効率低下や、バイパス通路を通過して内燃機関に供給される吸気の高圧損を回避することができる。
【0012】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の構成において、
前記可動部材は、平板形状を有する平板状可動部材からなるとともに、前記低圧側吸気通路における前記分岐部より上流側の位置に設けられ、
前記旋回装置は、
前記平板状可動部材に接続される回転軸と、
前記回転軸を回転させる駆動源と、をさらに有する。
【0013】
上記(2)の構成によれば、平板状可動部材に接続される回転軸を回転させることにより、分岐部より上流側の位置に設けられる平板状可動部材によって、吸気に対して偏流を生じさせる。これにより、分岐部を流れる吸気を旋回させることができる。
【0014】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の構成において、
前記平板状可動部材は、長手方向を有し、
前記回転軸は、前記平板状可動部材に対して前記長手方向の一方側に偏心した位置に接続され、
前記平板状可動部材は、前記回転軸が回転した場合に、前記長手方向の他方側の端部が前記低圧側吸気通路における前記回転軸よりも上流側の位置で前記低圧側吸気通路の内周面に当接するように構成される。
【0015】
上記(3)の構成によれば、回転軸が回転した場合に、長手方向の他方側の端部(上流側の端部)が低圧側吸気通路における回転軸よりも上流側の位置で低圧側吸気通路の内周面に当接するように構成されている。これにより、平板状可動部材に衝突した吸気を平板状可動部材の長手方向に沿って下流側に流すことで、平板状可動部材に衝突した吸気を効果的に偏流させることができる。
【0016】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の構成において、
前記可動部材は、半円筒形状を有する半円筒状可動部材からなるとともに、前記低圧側吸気通路と前記バイパス通路との前記分岐部に設けられ、
前記旋回装置は、
前記半円筒状可動部材を周方向に回転させるための回転手段と、
前記回転手段を駆動させる駆動源と、をさらに有する。
【0017】
上記(4)の構成によれば、分岐部に設けられる半円筒形状を有する半円筒状可動部材を周方向に回転させることにより、分岐部を流れる吸気を旋回させることができる。
【0018】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の構成において、
前記回転手段は、前記半円筒状可動部材の外面と噛合するギヤを含む。
【0019】
上記(5)の構成によれば、回転手段が、半円筒状可動部材の外面と噛合するギヤを含むように構成されることで、シンプルな構成で半円筒状可動部材を周方向に回転させることができる。
【0020】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)又は(5)に記載の構成において、
前記半円筒状可動部材は、前記半円筒状可動部材の一端側の端部口が前記高圧段圧縮機側に配向され、前記半円筒状可動部材の他端側の端部口が前記バイパス通路側に配向されるように、前記低圧側吸気通路と前記バイパス通路との前記分岐部に設けられる。
【0021】
上記(6)の構成によれば、半円筒状可動部材の内部に流入した吸気を旋回させるとともに、旋回させた吸気を半円筒状可動部材の一端側の端部口から高圧段圧縮機に流入させる、又は、半円筒状可動部材の他端側の端部口からバイパス通路に流入させることができる。このような本実施形態にかかる半円筒状可動部材は、例えば、逆T字形状を有する分岐部などに好適に配置される。
【0022】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)から(6)のいずれか一項に記載の構成において、
前記低圧段過給機は、前記低圧段圧縮機を駆動させる低圧段タービンを有する低圧段ターボチャージャからなり、
前記高圧段過給機は、前記低圧段タービンの上流側に配置される、前記高圧段圧縮機を駆動させる高圧段タービンを有する高圧段ターボチャージャからなる。
【0023】
上記(7)の構成によれば、本開示における2段過給システムを、低圧段ターボチャージャと高圧段ターボチャージャとからなる2段ターボチャージャに適用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、内燃機関の運転状態に応じて、圧縮機の効率を向上させる、又は、圧縮機に供給される吸気の圧力比を上昇させることが可能であるとともに、複雑な分岐部の周辺構造によってもたらされる設計時には予測し得ないような吸気の流れに起因する圧縮機(高圧段圧縮機)の効率低下や、バイパス通路を通過して内燃機関に供給される吸気の高圧損を回避することのできる2段過給システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る2段過給システムの全体構成を概略的に示す全体模式図である。
【0028】
図1に示すように、本発明の少なくとも一実施形態に係る2段過給システム1は、内燃機関2に圧縮した吸気を供給するための2段過給システム1であって、低圧段圧縮機6を有する低圧段過給機3と、低圧段圧縮機6の下流側に配置される高圧段圧縮機8を有する高圧段過給機4と、低圧段圧縮機6と高圧段圧縮機8とを接続する低圧側吸気通路10から分岐し、高圧段圧縮機8と内燃機関2とを接続する高圧側吸気通路11に合流するバイパス通路14と、低圧側吸気通路10における分岐部20より上流側の位置に設けられ、分岐部20を流れる吸気を旋回させることが可能な可動部材22、を有する旋回装置5と、を備える。
尚、可動部材22は低圧側吸気通路10とバイパス通路14との分岐部20に設けられてもよい。
【0029】
図示した実施形態では、2段過給システム1は、低圧段圧縮機6を駆動させる低圧段タービン17を有する低圧段ターボチャージャ3’(3)と、低圧段タービン17の上流側に配置される、高圧段圧縮機8を駆動させる高圧段タービン18を有する高圧段ターボチャージャ4’(4)と、からなる2段ターボチャージャである。
【0030】
また、2段過給システム1は、2段過給システム1の外部から吸い込んだ吸気を低圧段圧縮機6に送気するために低圧段圧縮機6と接続されている入口側吸気通路7と、内燃機関2で生じた排気を2段過給システム1の外部に排出するために低圧段タービン17と接続されている出口側排気通路9と、を有する。
【0031】
また、2段過給システム1は、バイパス通路14に加えて、第1排気通路側バイパス通路15と、第2排気通路側バイパス通路16と、を備える。第1排気通路側バイパス通路15は、内燃機関2と高圧段タービン18とを接続する高圧側排気通路12から分岐し、高圧段タービン18と低圧段タービン17とを接続する低圧側排気通路13に合流する通路である。第2排気通路側バイパス通路16は、低圧段タービン17をバイパスするために、低圧側排気通路13から分岐し、出口側排気通路9に合流する通路である。
【0032】
そして、バイパス通路14にはバイパスバルブ27が、第1排気通路側バイパス通路15にはフローコントロールバルブ28が、第2排気通路側バイパス通路16にはウェイストゲートバルブ29が、それぞれ設けられている。これらのバルブの開閉は、内燃機関2の運転状態に応じて制御される。例えば、低圧段圧縮機6及び高圧段圧縮機8の両方によって吸気を圧縮するような2ステージモードでは、バイパスバルブ27、フローコントロールバルブ28及びウェイストゲートバルブ29は閉じられる。一方で、低圧段圧縮機6のみによって吸気を圧縮するような1ステージモードでは、バイパスバルブ27及びフローコントロールバルブ28は開かれ、ウェイストゲートバルブ29は閉じられる。
【0033】
図2は、本発明の一実施形態に係る低圧側吸気通路とバイパス通路との分岐部を流れる吸気の流れを示す図である。
図2の(a)はバイパスバルブが閉じられている状態を示す。
図2の(b)はバイパスバルブが開かれている状態を示す。
【0034】
図示した実施形態では、分岐部20を含む分岐部20の周辺構造は、複数の湾曲部を有する分岐部20より上流側の第1低圧側吸気通路10a(10)と、第1低圧側吸気通路10aに対して略直交する一方側に延在する分岐部20より下流側の第2低圧側吸気通路10b(10)と、第1低圧側吸気通路10aに対して略直交する他方側に延在するバイパス通路14とから構成されており、逆T字形状を含むような複雑な形状に形成されている。さらに、バイパス通路14は、バイパスバルブ27を通過すると流路断面が急拡大している。
【0035】
図2の(a)に示したような、バイパスバルブ27が閉じられている場合には、第1低圧側吸気通路10aから分岐部20に流れる吸気は、第2低圧側吸気通路10bを通過して、高圧段圧縮機8に送気される。この際、分岐部20から高圧段圧縮機8に向かって流れる吸気は、分岐部20の内周面21、又は第2低圧側吸気通路10bの内周面に沿って流れている。つまり、高圧段圧縮機8に送気される吸気は、高圧段圧縮機8から視認して時計周りに旋回している状態となる。
【0036】
一方で、
図2の(b)に図示したような、バイパスバルブ27が開かれている場合には、第1低圧側吸気通路10aから分岐部20に流れる吸気はバイパス通路14に流入する。この際、分岐部20を流れる吸気は分岐部20の内周面21に沿って流れ、バイパス通路14を通過する吸気はバイパス通路14の内周面に沿って通過している。つまり、バイパス通路14を通過する吸気は、高圧段圧縮機8から視認して反時計周りに旋回している状態となる。また、バイパス通路14を通過する吸気は、バイパスバルブ27を通過すると流路断面が急拡大しているため、流路断面の中央部において圧力が低下し、分岐部20に向かって逆流するような逆流領域R1が形成される場合がある。
【0037】
このような分岐部20を流れる吸気の流れは、上述した分岐部20の複雑な周辺構造の影響だけではなく、内燃機関2の運転状態によっても変化する。そのため、分岐部20を流れる吸気に対して意図しない旋回力が生成される、又は、分岐部20を流れる吸気に意図しない逆流を発生させるなど、設計時には予測困難な吸気の流れが発生する場合がある。
【0038】
このような本発明の少なくとも一実施形態にかかる2段過給システム1によれば、低圧側吸気通路10とバイパス通路14との分岐部20、又は、低圧側吸気通路10における分岐部20より上流側の位置に、分岐部20を流れる吸気を旋回させることが可能な可動部材22が設けられている。そのため、内燃機関2の運転状態に応じて、分岐部20を流れる吸気を適切に旋回させることができる。
例えば、高トルクを要求されるような内燃機関2の低速回転時には、分岐部20を流れる吸気を高圧段圧縮機8のインペラ35の回転方向とは逆方向に旋回させることで、高圧段圧縮機8に送気される吸気の圧力比を上昇させることができる。あるいは、分岐部20を流れる吸気を高圧段圧縮機8のインペラ35の回転方向と同一の方向に旋回させることで、高圧段圧縮機8の効率を向上させることができる。
【0039】
また、このような本発明の少なくとも一実施形態にかかる2段過給システム1によれば、低圧側吸気通路10とバイパス通路14との分岐部20、又は、低圧側吸気通路10における分岐部20より上流側の位置に設けられた可動部材22を適切に制御することにより、複雑な分岐部20の周辺構造によってもたらされる設計時には予測し得ないような吸気の流れに起因する高圧段圧縮機8の効率低下や、バイパス通路14を通過して内燃機関2に供給される吸気の高圧損を回避することができる。
例えば、
図2の(a)に示したような、高圧段圧縮機8から視認して時計回りに旋回する、設計時には意図しない旋回流が発生する場合には、可動部材22を制御して分岐部20を流れる吸気を、高圧段圧縮機8から視認して反時計回りに旋回させることで、このような設計時には意図しない旋回流を打ち消すことができる。これにより、高圧段圧縮機8の効率低下を回避することができる。あるいは、
図2の(b)に示したような、設計時には意図しない逆流領域R1が形成されてしまう場合には、可動部材22を制御して分岐部20を流れる吸気を、逆流領域R1を形成させないように旋回させることで、このような設計時には意図しない逆流を打ち消すことができる。これにより、バイパス通路14を通過する吸気の圧力損失を小さくすることができるため、バイパス通路14を通過して内燃機関2に供給される吸気の高圧損を回避することができる。
【0040】
図3Aは、本発明の一実施形態に係る平板状可動部材を説明するための縦断面図である。
図3Bは、本発明の一実施形態に係る旋回力生成装置を概略的に示した模式図である。
【0041】
幾つかの実施形態では、
図3A及び
図3Bに示すように、可動部材22は、平板形状を有する平板状可動部材22aからなるとともに、低圧側吸気通路10における分岐部20より上流側の位置に設けられる。旋回装置5は、平板状可動部材22aに接続される回転軸30と、回転軸30を回転させる駆動源31とをさらに有する。そして、駆動源31によって回転軸30を回転させることで、平板状可動部材22aの配向方向が変化するように構成されている。
【0042】
図示した実施形態では、平板状可動部材22aは、オーバル形状(卵形状)を有する。また、平板状可動部材22aは、平板状可動部材22aの吸気の流れ方向に沿った第1の端部22a1が下流側に、平板状可動部材22aの第2の端部22a2が上流側に位置するように、第1低圧側吸気通路10aの内部に設けられている。
尚、平板状可動部材22aの形状はオーバル形状に限定されない。平板状可動部材22aの形状は、第1低圧側吸気通路10aの内部形状等に応じて適当に構成されればよく、例えば、楕円形状や矩形状で構成されてもよい。
【0043】
回転軸30は、平板状可動部材22aの面内方向(平板状可動部材22aの表面に沿った方向)に沿って延在するとともに、第1低圧側吸気通路10a内を流れる吸気(第2の端部22a2より上流側を流れる吸気a1の流れ方向)に対して直交する方向に延在する部材である。また、回転軸30は、第1低圧側吸気通路10aの横断面形状を視認した時に、第1低圧側吸気通路10aの流路断面の中心位置を通過するように構成されている。すなわち、回転軸30は、その中心線CLが、第1低圧側吸気通路10aの流路断面の中心位置を通過し、且つ、流路断面を最短距離で横断するように構成されている。そして、このような回転軸30は、流路断面の外側の位置において、駆動源31と接続されている。
また、回転軸30は、
図3Bに示したように、分岐部20における第2低圧側吸気通路10bからバイパス通路14側に向かう軸方向Xに沿った方向に延在している。
尚、駆動源31は電動機であってもよいし、電動機に代わり内燃機関2で発生した運動エネルギを利用して回転軸30を機械的に回転させる装置であってもよい。
【0044】
図4は、旋回装置によって分岐部を流れる吸気を旋回させるメカニズムを説明するための図である。
図4の(a)は、分岐部を流れる吸気を旋回させていない状態を示す。
図4の(b)は分岐部を流れる吸気をインペラの回転方向と逆方向に旋回させている状態を示す。
図4の(c)は分岐部を流れる吸気をインペラの回転方向と同一方向に旋回させている状態を示す。これら
図4の(a)〜(c)は、
図3BのA方向から視認したときの図である。
【0045】
図4の(a)に示した実施形態では、平板状可動部材22aの第1の端部22a1と第2の端部22a2とを結ぶ直線Lが、平板状可動部材22aの第2の端部22a2より上流側を流れる吸気a1の流れ方向に対して、略平行となるように平板状可動部材22aを配向させている。このときには、吸気を平板状可動部材22aによって偏流させないで、分岐部20に流入させている。
【0046】
図4の(b)に示した実施形態では、回転軸30を時計周りに回転させることで、平板状可動部材22aの第2の端部22a2が回転軸30に対して右側に位置するように、平板状可動部材22aを配向させている。このときには、分岐部20を流れる吸気を、高圧段圧縮機8のインペラ35の回転方向とは逆方向に旋回させている。具体的に説明すると、平板状可動部材22aの第1の端部22a1は、第1低圧側吸気通路10aの左側の内周面34l(34)に対して、所定の離間距離を有している。そして、平板状可動部材22aに衝突した吸気が平板状可動部材22aの長手方向に沿って下流側に流れ、平板状可動部材22aの第1の端部22a1と、第1低圧側吸気通路10aの左側の内周面34lとの間を通過して、分岐部20に流れる。そして、分岐部20に流れた吸気は、第1低圧側吸気通路10aの左側の内周面34lの一端34l1から、第1低圧側吸気通路10aの右側の内周面34rの一端34r1に向かって、円弧形状を有する分岐部20の内周面21に沿って流れる。つまり、分岐部20を流れる吸気は、高圧段圧縮機8から視認して、インペラ35の回転方向とは逆方向に旋回している状態となる。
【0047】
図4の(c)に示した実施形態では、回転軸30を時計周りに回転させることで、平板状可動部材22aの第2の端部22a2が回転軸30に対して右側に位置するように、平板状可動部材22aを配向させている。このときには、分岐部20を流れる吸気を、高圧段圧縮機8のインペラ35の回転方向と同一方向に旋回させている。具体的に説明すると、平板状可動部材22aの第1の端部22a1は、第1低圧側吸気通路10aの右側の内周面34r(34)に対して、所定の離間距離を有している。そして、平板状可動部材22aに衝突した吸気が平板状可動部材22aの長手方向に沿って下流側に流れ、平板状可動部材22aの第1の端部22a1と、第1低圧側吸気通路10aの右側の内周面34rとの間を通過して、分岐部20に流れる。そして、分岐部20に流れた吸気は、第1低圧側吸気通路10aの右側の内周面34lの一端34r1から、第1低圧側吸気通路10aの左側の内周面34rの一端34l1に向かって、円弧形状を有する分岐部20の内周面21に沿って流れる。つまり、分岐部20を流れる吸気は、高圧段圧縮機8から視認して、インペラ35の回転方向と同一方向に旋回している状態となる。
【0048】
このような構成によれば、平板状可動部材22aに接続される回転軸30を回転させることにより、分岐部20より上流側の位置に設けられる平板状可動部材22aによって、吸気に対して偏流を生じさせる。これにより、分岐部20を流れる吸気を旋回させることができる。
【0049】
幾つかの実施形態では、
図3A、
図3B及び
図4に示すように、平板状可動部材22aは長手方向を有する。回転軸30は平板状可動部材22aに対して長手方向の一方側に偏心した位置に接続される。そして、平板状可動部材22aは、
図4に示したように、回転軸30が回転した場合に、長手方向の他方側の端部(第2の端部22a2)が低圧側吸気通路10における、回転軸30よりも上流側の位置で低圧側吸気通路10の内周面34に当接するように構成される。
【0050】
図示した実施形態では、
図3Aに示したように、平板状可動部材22aの第1の端部22a1と第2の端部22a2との距離D1は、平板状可動部材22aの第3の端部22a3と第4の端部22a4との距離D2よりも大きくなっている。すなわち、平板状可動部材22aは、第1の端部(長手方向の一方側の端部)22a1から第2の端部(長手方向の他方側の端部)22a2を結ぶ方向に沿って長手方向を有し、第3の端部(短手方向の一方側の端部)22a3から第4の端部(短手方向の他方側の端部)22a4を結ぶ方向に沿って短手方向を有する。そして、これら長手方向および短手方向は、互いに直交する方向に延在している。そして、回転軸30は、平板状可動部材22aの重心Oの位置より第1の端部22a1側(下流側)に偏心した位置に接続されている。すなわち、平板状可動部材22aは、回転軸30から第2の端部22a2までの長さが、回転軸30から第1の端部22a1までの長さよりも、大きくなるように形成されている。
【0051】
そして、平板状可動部材22aは、回転軸30が時計回りに回転した場合には、
図4の(b)に示したように、第2の端部22a2が第1低圧側吸気通路10aの右側の内周面34rに当接するように構成される。また、平板状可動部材22aは、回転軸30が反時計回りに回転した場合には、
図4の(c)に示したように、第2の端部22a2が第1低圧側吸気通路10aの左側の内周面34lに当接するように構成される。
【0052】
このような構成によれば、回転軸30が回転した場合に、長手方向の他方側の端部(第2の端部22a2)が低圧側吸気通路10における回転軸30よりも上流側の位置で低圧側吸気通路10の内周面34に当接するように構成されている。これにより、平板状可動部材22aに衝突した吸気を平板状可動部材22aの長手方向に沿って下流側に流すことで、平板状可動部材22aに衝突した吸気を効果的に偏流させることができる。
【0053】
図5Aは、本発明の一実施形態に係る半円筒状可動部材を説明するための斜視図である。
図5Bは、本発明の一実施形態に係る旋回装置を概略的に示した模式図である。
図6は、本発明の一実施形態に係る半円筒状可動部材を説明するための斜視図である。
【0054】
幾つかの実施形態では、
図5A及び
図5Bに示すように、可動部材22は半円筒形状を有する半円筒状可動部材22b(22)からなる。半円筒状可動部材22bは低圧側吸気通路10とバイパス通路14との分岐部20に設けられる。そして、旋回装置5は、半円筒状可動部材22bを周方向に回転させるための回転手段38と、回転手段38を駆動させる駆動源40と、をさらに有する。
【0055】
図示した実施形態では、半円筒状可動部材22bは、断面形状が円弧形状であるとともに、一端側から他端側(高圧段圧縮機8側からバイパス通路14側)に向かって延在している。そして、半円筒状可動部材22bは、内面23と対向する方向に開口している開口39と、高圧段圧縮機8側に配口される一端側の端部口22b1と、バイパス通路14側に配口される他端側の端部口22b2と、が形成されている。
また、半円筒状可動部材22bの内面23は、
図5BのB方向から視認したとき(高圧段圧縮機8から視認したとき)に、分岐部20の内周面21に沿って延在するように構成されている。
【0056】
尚、本開示における、「半円筒」とは、円弧が周方向に所定の角度(例えば、90°〜270°、好ましくは、150°〜240°)に亘って延在している態様を意味しており、必ずしも、円弧が周方向に180°に亘って延在している態様に限定されるものではない。
また、半円筒状可動部材22bは、
図6に図示するように、一端側の端部口22b1と接続されるリング形状を有する第1リング部42aと、他端側の端部口22b2と接続されるリング形状を有する第2リング部材42bと、がさらに設けられてもよい。
【0057】
回転手段38は、分岐部20を流れる吸気に対して干渉することが回避されるように、分岐部20の外側に設けられる。そして、このような回転手段38は駆動源40と接続されている。
【0058】
図7は、旋回装置によって分岐部を流れる吸気を旋回させるメカニズムを説明するための図である。
図7の(a)は、分岐部を流れる吸気を旋回させていない状態を示す。
図7の(b)は分岐部を流れる吸気をインペラの回転方向とは逆方向に旋回させている状態を示す。
図7の(c)は分岐部を流れる吸気をインペラの回転方向と同一方向に旋回させている状態を示す。これら
図7の(a)〜(c)は、
図5BのB方向から視認したときの図である。
【0059】
図7の(a)に図示した実施形態では、第1の縁部22b3と第1の縁部22b3より右側の内周面34rに近くなるように配置される第2の縁部22b4とを結ぶ直線L’が、半円筒状可動部材22bより上流側を流れる吸気a2の流れに対して直交するように半円筒状可動部材22bを配向させている。このときには、吸気を半円筒状可動部材22bによって偏流させないで、分岐部20に流入させている。
【0060】
図7の(b)に図示した実施形態では、回転手段38を時計周りに駆動させることで、半円筒状可動部材22bの第2の縁部22b4が、第1低圧側吸気通路10aの右側の内周面34rから離れて、第1低圧側吸気通路10aの左側の内周面34lに近づくように、半円筒状可動部材22bを配向させている。このときには、分岐部20を流れる吸気を、高圧段圧縮機8のインペラ35の回転方向とは逆方向に旋回させている。具体的に説明すると、吸気は、半円筒状可動部材22bの第2の縁部22b4と第1低圧側吸気通路10aの右側の内周面34rとの間を通過せず、半円筒状可動部材22bの第2の縁部22b4と第1低圧側吸気通路10aの左側の内周面34lとの間を通過して、分岐部20に流れる。そして、分岐部20に流れた吸気は、第1低圧側吸気通路10aの左側の内周面34lの一端34l1から、第1低圧側吸気通路10aの右側の内周面34rの一端34r1に向かって、円弧形状を有する分岐部20の内周面21に沿って流れる。つまり、分岐部20を流れる吸気は、高圧段圧縮機8から視認して、インペラ35の回転方向とは逆方向に旋回している状態となる。
【0061】
図7の(c)に図示した実施形態では、回転手段38を反時計周りに駆動させることで、半円筒状可動部材22bの第1の縁部22b3が、第1低圧側吸気通路10aの左側の内周面34lから離れて、第1低圧側吸気通路10aの右側の内周面34rに近づくように、半円筒状可動部材22bを配向させている。このときには、分岐部20を流れる吸気を、高圧段圧縮機8のインペラ35の回転方向と同一方向に旋回させている。具体的に説明すると、吸気は、半円筒状可動部材22bの第1の縁部22b3と第1低圧側吸気通路10aの左側の内周面34lとの間を通過せず、半円筒状可動部材22bの第1の縁部22b3と第1低圧側吸気通路10aの右側の内周面34rとの間を通過して、分岐部20に流れる。そして、分岐部20に流れた吸気は、第1低圧側吸気通路10aの右側の内周面34rの一端34r1から、第1低圧側吸気通路10aの左側の内周面34lの一端34l1に向かって、円弧形状を有する分岐部20の内周面21に沿って流れる。つまり、分岐部20を流れる吸気は、高圧段圧縮機8から視認して、インペラ35の回転方向と同一方向に旋回している状態となる。
【0062】
このような構成によれば、分岐部20に設けられる半円筒形状を有する半円筒状可動部材22bを周方向に回転させることにより、分岐部20を流れる吸気を旋回させることができる。
【0063】
幾つかの実施形態では、
図5B及び
図7に示すように、回転手段38は、半円筒状可動部材22bの外面33と噛合するギヤ43を含む。図示した実施形態では、
図7の(a)に示すように、直線L’が吸気a2の流れに対して直交するように半円筒状可動部材22bを配向させているときに、ギヤ43は、半円筒状可動部材22bに対して周方向の中心となるような位置に設けられている。そして、このようなギヤ43は、半円筒状可動部材22bの外面33と噛合している。このような構成によれば、ギヤ43によって、半円筒状可動部材22bを周方向両側に向かって同じ角度まで回転させることができる。
【0064】
このような構成によれば、回転手段38が、半円筒状可動部材22bの外面33と噛合するギヤ43を含むように構成されることで、シンプルな構成で半円筒状可動部材22bを周方向に回転させることができる。
【0065】
幾つかの実施形態では、
図5B及び
図7に示すように、半円筒状可動部材22bは、半円筒状可動部材22bの一端側の端部口22b1が高圧段圧縮機8側に配向され、半円筒状可動部材22bの他端側の端部口22b2がバイパス通路14側に配向されるように、低圧側吸気通路10とバイパス通路14との分岐部20に設けられる。
【0066】
図示した実施形態では、
図5Bに示すように、半円筒状可動部材22bの一端側の端部口22b1は、分岐部20に接続されている第1低圧側吸気通路10aのうち最も高圧段圧縮機8側に位置する第1低圧側吸気通路10aの一端34a1より高圧段圧縮機8側に位置している。また、半円筒状可動部材22bの他端側の端部口22b2は、分岐部20に接続されている第1低圧側吸気通路10aのうち最もバイパス通路14側に位置する第1低圧側吸気通路10aの他端34a2よりバイパス通路14側に位置している。
【0067】
このような構成によれば、半円筒状可動部材22bの内部に流入した吸気を旋回させるとともに、旋回させた吸気を半円筒状可動部材の一端側の端部口22b1から高圧段圧縮機8に流入させる、又は、半円筒状可動部材の他端側の端部口22b2からバイパス通路14に流入させることができる。このような本実施形態にかかる半円筒状可動部材22bは、例えば、逆T字形状を有する分岐部20などに好適に配置される。
【0068】
以上、本発明の一実施形態にかかる2段過給システムについて説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。