(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6813375
(24)【登録日】2020年12月21日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】寸法計測装置
(51)【国際特許分類】
G01B 5/02 20060101AFI20201228BHJP
【FI】
G01B5/02
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-9024(P2017-9024)
(22)【出願日】2017年1月21日
(65)【公開番号】特開2018-116033(P2018-116033A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2020年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】517023301
【氏名又は名称】アイディック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181881
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 俊一
(72)【発明者】
【氏名】吉▲崎▼ 達也
【審査官】
國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−128803(JP,A)
【文献】
実開平01−102805(JP,U)
【文献】
特開平05−060547(JP,A)
【文献】
実開昭53−054487(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に直角となる様に組み合わせた一つの滑走盤及び二つの規制部材と、
各規制部材に対向して各々と垂直に進退し各々の進退方向が相互に直交する加圧部材と、
各加圧部材を進退させる加圧手段と、
各加圧手段を支持し各々の加圧部材をその進退方向に対して直交する方向へ平行移動させる往復手段と、
各加圧部材の進退量を、各加圧部材が対向する規制部材の対物面から各加圧部材の先端までの寸法に換算して出力する計測手段を備え、
各加圧手段は、他の加圧手段の加圧を受けて前記往復手段を往動することを特徴とする寸法計測装置。
【請求項2】
計測対象の指定寸法を保持する指定情報保持部と、
前記計測手段が出力した採取寸法を受けて前記指定寸法と対比し適不適を出力する判定手段を備えることを特徴とする前記請求項1に記載の寸法計測装置。
【請求項3】
前記判定手段の出力が不適であるときに採取寸法を入れ替えて指定寸法を対比し適不適を出力する判定手段を備えることを特徴とする前記請求項2に記載の寸法計測装置。
【請求項4】
前記計測手段が出力した採取寸法を保持する計測情報保持部と、前記採取寸法の変動量を導く変動演算部を備えることを特徴とする前記請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の寸法計測装置。
【請求項5】
各加圧部材は、閉鎖側に加圧部を備え、開放側に他の加圧部材の加圧部が侵入する切欠部を備えることを特徴とする前記請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の寸法計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角材やパネル材などのブロック材の寸法を計測する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、完成品や中間製品たるブロック材の外形検査を、縦横や厚みの寸法を測定することによって簡易に行うには、ノギス、マイクロメーター又は下記特許文献3に記載の道具が用いられていた。
しかしながら、そのような道具による計測は、測定者の技量によってその精度が異なる他、一個あたりの計測に相応の時間を要するため効率が悪いという問題がある。
【0003】
一方、計測対象の1軸方向の寸法を測定する装置(例えば下記特許文献1参照)や、相互に直交する2軸方向の寸法を測定する装置(例えば下記特許文献2参照)も存在するが、所要の測定回数が多いことや、所要の測定時間が長いことなどの問題が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−185925号公報
【特許文献2】特開平04−168301号公報
【特許文献3】実用新案登録第3030090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、ブロック材の相互に直交する2軸方向又は3軸方向の寸法情報を、作業者の技量を問わず正確に一括取得し得る簡素な寸法計測装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明による寸法計測装置は、相互に直角となる様に組み合わせた一つの滑走盤及び二つの規制部材と、各規制部材に対向して各々と垂直に進退し各々の進退方向が相互に直交する加圧部材と、各加圧部材を進退させる加圧手段と、各加圧手段を支持し各々の加圧部材をその進退方向に対して直交する方向へ平行移動させる往復手段と、各加圧部材の進退量を、各加圧部材が対向する規制部材の対物面(計測対象が当接し滑走する面)から各加圧部材の先端までの寸法に換算して出力する計測手段を備え、各加圧手段は、他の加圧手段の加圧を受けて前記往復手段を往動することを特徴とする。
【0007】
本発明による寸法計測装置は、計測対象の指定寸法を保持する指定情報保持部と、前記計測手段が出力した採取寸法を受けて前記指定寸法と対比し適不適を出力する判定手段を備える構成、前記判定手段の出力が不適であるときに採取寸法を入れ替えて指定寸法を対比し適不適を出力する判定手段を備える構成、又は更に、前記計測手段が出力した採取寸法を保持する計測情報保持部と、前記採取寸法の変動量を導く変動演算部を備える構成を採ることができる。
【0008】
各加圧部材は、閉鎖側に加圧部を備え、開放側に他の加圧部材の加圧部が侵入する切欠部を備える構成とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明による寸法計測装置によれば、相互に直角となる様に組み合わせた一つの滑走盤及び二つの規制部材と、各規制部材に対向して各々と垂直に進退し各々の進退方向が相互に直交する加圧部材と、各加圧部材を進退させる加圧手段と、各加圧手段を支持し各々の加圧部材をその進退方向に対して直交する方向へ平行移動させる往復手段と、各加圧部材の進退量を、各加圧部材が対向する規制部材の対物面から各加圧部材の先端までの寸法に換算して出力する計測手段を備えることによって、計測対象であるブロック材を、前記滑走盤上において各加圧部材の進退方向に位置する規制部材へ確実に押し当て、正確な計測を行うことができる。
【0010】
各加圧手段は、各々をその加圧部材の進退方向に対して直交する方向へ平行移動させる往復手段を備え、各加圧手段は、他の加圧手段の加圧を受けて当該往復手段により往動する構成を採ることによって、先に計測対象を加圧した加圧部材と加圧対象との位置関係を維持しつつ、遅れて計測対象に達する他の加圧部材による加圧を行うことができるため、一のブロック材に対する複数方向の計測を一の計測操作で正確に行うことができる。
【0011】
また、計測対象の指定寸法を保持する指定情報保持部と、前記計測手段が出力した採取寸法を受けて前記指定寸法と対比し適不適を出力する判定手段を備える構成を採ることによって、個々の適否を瞬時に知ることができ、前記判定手段の出力が不適であるときに採取寸法を入れ替えて指定寸法を対比し適不適を出力する判定手段を備えることによって、2軸又は3軸の寸法が近似しているブロック材について、滑走盤上に載置する向きを間違えた場合にあっても正確な計測や判定が可能となる。
【0012】
更に、前記計測手段の採取寸法を保持する計測情報保持部と、前記採取寸法の変動量を導く変動演算部を備える構成を採ることによって、製造時におけるブロック材の形状のバラツキや歩留まりを覚知することができる。
また、それぞれの加圧手段の支持位置を、各往復手段に沿って適宜変化させて計測することによって、ブロック材に対する位置の相違に伴う寸法のバラツキを検出することもできる。
【0013】
一方、各加圧部材は、閉鎖側に加圧部を備え、開放側に他の加圧部材の加圧部が侵入する切欠部を備えることによって、加圧手段に関わらず計測対象に応じた加圧部の設定により、小さいブロック材の寸法をも測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明による寸法計測装置の一例を示す計測作業時における正面図及び平面図である。
【
図2】本発明による寸法計測装置の一例を示す計測作業時における正面図及び平面図である。
【
図3】本発明による寸法計測装置の一例を示す計測作業時における正面図及び平面図である。
【
図4】本発明による寸法計測装置の一例を示す計測作業時における正面図及び平面図である。
【
図5】本発明による寸法計測装置の一例を示す計測作業時における正面図及び平面図である。
【
図6】本発明による寸法計測装置の一実施態様例を示す(A):左側面図,(B):平面図,(C):右側面図,(D):A−A矢視図である。
【
図7】本発明による寸法計測装置の一例を示す計測作業時における平面図である。
【
図8】本発明による寸法計測装置の判定手段の一例を示すブロック図である。
【
図9】本発明による寸法計測装置の判定手段での処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】本発明による寸法計測装置の一例を示す計測作業時における正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による寸法計測装置の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
図に示す例は、相互に直角となる様に組み合わせた一つの滑走盤1及び二つの規制部材2,2と、各規制部材2,2に対向して各々と垂直に進退し各々の進退方向が相互に直交する加圧部材3,3と、各加圧部材3,3を進退させる加圧手段4,4と、各加圧手段4,4をその進退方向に対して直交する方向へ平行移動させる往復手段5,5を備える。
【0016】
この例は、更に、各加圧部材3,3の進退量を各加圧部材3,3が対向する規制部材2,2の対物面から各加圧部材3,3の先端までの寸法に換算して出力する計測手段6と、前記計測手段6が出力した採取寸法を受けて前記指定寸法と対比し適不適を出力する判定手段9を所謂コンピュータシステムとして備える。
【実施例1】
【0017】
この例の前記滑走盤1は、水平に配置される水平定盤であり、前記規制部材2は、前記滑走盤1の上に形成された滑走領域の相直行する二方向を区画するための直線的規制線又は規制面を形成する棒材又は板材である。
この例の規制部材2は、前記滑走盤1の滑走面に対して直行する平坦面を内側に備えた鉛直定盤であって、閉鎖側(前記加圧部材3の進行方向側)にL字状の角を有し、開放側に各加圧部材3,3の加圧手段4,4を配置する。
【0018】
この例の前記滑走盤1及び規制部材2,2の対物面は、計測対象に対する滑性が与えられた平坦面として構成されているが、計測対象7が前記滑走盤1上を滑らかに滑走し、又は前記滑走領域の閉鎖側を直線的に規制しつつ各加圧手段4の加圧によって滑らかに移動させることができる限り、平坦面に限らず適宜選択することができる。
【0019】
各加圧手段4は、各々の加圧部材3の進退方向に対して直交する規制部材2に沿って平行移動させる往復手段5で支持される。
この例の加圧手段4は、対向する規制部材2に対して各々の加圧部材3を垂直に進退させるエアシリンダである。
【0020】
この例の往復手段5は、前記滑走盤1の表面に固定され、各加圧手段4の加圧部材3の進行方向に位置する規制部材2に対して平行に固定された直線形状の往復ガイド5aと、当該往復ガイド5aを把持して滑動する往復部材5bとで構成される。
この様な往復手段5に各加圧手段4が支持されることにより、各加圧手段4では、各々の往復方向と各加圧手段4の伸縮方向が相互に直交することとなる。
【0021】
前記往復部材5bと前記往復ガイド5aとの組合せ構造は、素材の組合せ、潤滑手段、滑走補助構造など、前記加圧手段4を各々支持する各往復部材5bが、前記往復ガイド5a上を他の加圧手段4の加圧力をもって、滑らかに移動するだけの滑性を付与する構造を備える(
図1乃至
図4参照)。
【0022】
この例の加圧部材3は、計測対象に対して滑性に劣る硬質樹脂を素材とする。
当該加圧部材3は、進行方向端面の閉鎖側に直方形状に突出した加圧部を備え、開放側に他の加圧部材3の加圧部が侵入する直方形状の切欠部を備える。
この例では、いずれか一方の加圧部が他方の切欠部に進入することによって、加圧部の端面寸法を最小値とした計測を行うことができる(
図7参照)。
【0023】
この例の計測手段6は、前記加圧手段4各々の伸縮量を検出するストロークセンサ13と、当該ストロークセンサ13の出力をその伸びの限界、即ち、当該加圧手段4に対向する規制部材2の対物面から各加圧部材3の先端までの寸法に換算し、その寸法を計測対象7の採取寸法として出力する寸法演算部14を備える。
【0024】
この例の判定手段9は、計測対象7の指定寸法を保持する指定情報保持部8と、前記計測手段6が出力した採取寸法を保持する計測情報保持部10と、前記計測手段6が出力した採取寸法を受けて前記指定寸法と対比し適不適の判定を出力する判定部12と、前記採取寸法の変動量を導く変動演算部11と、前記採取寸法、判定又は変動量の一部又は全てを表示する表示部15を備える(
図8参照)。
【実施例2】
【0025】
この例は、前記実施例1に加えて、前記滑走盤1に直交する軌道で加圧部材3を進退させる加圧手段(以下「垂下加圧手段4v」という)4と、当該垂下加圧手段4vを当該滑走盤1に沿って平行移動させる往復手段(以下「架設往復手段5v」という)5を備える。
【0026】
前記架設往復手段5vは、計測対象7を鉛直方向から加圧する垂下加圧手段4vを、前記滑走盤1の上方において当該滑走盤1と平行に移動させる二次元走査機構である。
前記垂下加圧手段4vの架設往復手段5vは、実施例1と同様な構成を以って前記垂下加圧手段4vが落下しないように組み合わせた構造を備えたものであって、前記滑走盤1の上方に、前記規制部材2,2の一方と平行な往復ガイド5aを架設すると共に、当該往復手段5の往復部材5bに、他方の規制部材2と平行な往復手段5の往復ガイド5aを固定することによって、二軸に沿って自由に移動可能な前記二次元走査機構を構成したものである。
尚、この例の垂下加圧手段4vは、対向する滑走盤1に対して各々の加圧部材3を垂直に進退させるエアシリンダである(
図10参照)。
【0027】
本発明による寸法計測装置は、以上のごとく構成され、計測対象7を相直行する規制部材2,2の閉鎖側に寄せて載置し、計測を開始することによって、前記実施例1にあっては、計測対象7は、前記規制部材2に密着しているか否かに関わらず、計測対象7が前記滑走盤1上を前記規制部材2に沿って滑走し、直角の角に密着して各加圧部材3と共に制動される。
両加圧手段4,4の制動が完了した際における両加圧手段4,4の出力を前記計測手段6で当該計測対象7の寸法として出力する。
【0028】
その際、各加圧手段4のストロークや伸縮速度に差を設けるなど、前記計測対象7に対する前記加圧部材3,3の到達時間に、先に到達する加圧部材3が当該計測対象7に十分な圧力を与えるに足る時間差を設けることによって、先に到達した加圧部材3と前記計測対象7との間に生じ、且つ前記往復手段5の往復抵抗を凌駕し、更に当該計測対象7と前記滑走盤1及び前記規制部材2との摩擦力を凌駕する摩擦力が、後に到達した加圧部材3を介してその加圧手段4の圧力を先に到達した加圧部材3の加圧手段4へ伝え、当該加圧手段4をその往復手段5に沿って移動させる(
図1乃至
図4参照)。
【0029】
更に、実施例2では、例えば、先ず、前記垂下加圧手段4vによって計測対象7を鉛直法から加圧し、次いで、前記実施例1と同様に、前記加圧手段4,4を、相互に時間差を設けて順次加圧することによって、当該計測対象7の三軸方向の寸法を計測することができる。
尚、前記実施例1及び実施例2のいずれにあっても、前記時間差は、各加圧手段4,4(,4)について、計測対象7の捕捉を誤らない(空振りしない)時間とする。
【0030】
前記実施例のいずれにあっても、前記判定手段9の出力が不適であるときに採取寸法を入れ替えて指定寸法を対比し適不適を出力する判定手段9とすることができる。
前記採取寸法の入れ替えは、当該寸法計測装置が具備する加圧手段4の全ての組合せについて判定を行っても不適であるとき、又は採取寸法の入れ替えによって適が出力されたときに終了する(
図9参照)。
【符号の説明】
【0031】
1 滑走盤,2 規制部材,3 加圧部材,
4 加圧手段,4v 垂下加圧手段,
5 往復手段,5a 往復ガイド,5b 往復部材,5v 架設往復手段,
6 計測手段,
7 計測対象,
8 指定情報保持部,
9 判定手段,
10 計測情報保持部,
11 変動演算部,12 判定部,
13 ストロークセンサ,14 寸法演算部,15 表示部,