(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述のような荷電粒子線治療装置は、荷電粒子線の照射中にエラーが生じたときは、荷電粒子線の照射を停止する。このように荷電粒子線の照射を停止するような場合の動作として、例えば、次のような手法が採用される場合がある。すなわち、荷電粒子線治療装置が、停止時における走査経路中の荷電粒子線の停止位置を記憶しておき、エラーの解消後に、記憶していた停止位置から荷電粒子線の照射を開始する場合がある。上述のように正確な位置から荷電粒子線の照射を再開するためには、荷電粒子線の停止位置を正確に把握する必要がある。ここで、荷電粒子線の停止位置は、走査電磁石の電流値から間接的に把握することができる。従来の荷電粒子線治療装置では、荷電粒子線の停止位置を正確に把握するために、走査電磁石の電流値の測定精度を向上させる余地がある。
【0005】
そこで本発明は、走査電磁石の電流値の測定精度を向上できる荷電粒子線治療装置、及び電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る荷電粒子線治療装置は、被照射体に荷電粒子線を照射する荷電粒子線治療装置であって、荷電粒子線を走査する走査電磁石と、走査電磁石に電力を供給する電磁石電源と、電磁石電源と走査電磁石とを接続する第1の線と、第1の線の周囲を覆うように設けられ、電磁石電源側の一端が第1の線と接続されることで第1の線と並列となる第2の線と、第1の線と第2の線との接続部よりも走査電磁石側において第1の線に接続されて、第1の線の電流を測定する電流測定部と、を備える。
【0007】
本発明に係る荷電粒子線治療装置は、電磁石電源と走査電磁石とを接続する第1の線と、第1の線の周囲を覆うように設けられる第2の線と、を備える。第2の線が第1の線の周囲を覆うことで、第1の線と第2の線との間には分布容量が形成される。また、外周側の第2の線と外部の構造物との間には分布容量が形成される。ここで、第2の線は第1の線と並列であるため、第1の線と第2の線とは互いに同電位となる。従って、第1の線と第2の線との間の分布容量には電流は流れない。一方、第2の線と外部の構造物との間の分布容量には電流が流れる。しかし、当該電流は、第2の線を流れるが、第1の線には流れない。従って、第1の線と第2の線との接続部よりも走査電磁石側において第1の線に接続される電流測定部が測定する電流に、第2の線と外部の構造物との間の分布容量へ流れる電流が含まれることを防止できる。これにより、走査電磁石の電流値の測定精度を向上できる。
【0008】
本発明に係る荷電粒子線治療装置は、接続部よりも走査電磁石側において第1の線と第2の線との間に設けられ、第1の線と第2の線とを絶縁する第1の絶縁材と、第2の線の周囲を覆うように設けられた第2の絶縁材と、を更に備え、第2の絶縁材は、設置電位である設置電位部材に接続されていてよい。これにより、走査電磁石の電流値の測定精度を向上しつつ、第1の線及び第2の線全体を好適に絶縁することができる。
【0009】
本発明に係る電源装置は、被照射体に照射される荷電粒子線を走査する走査電磁石に電力を供給する電源装置であって、走査電磁石に電力を供給する電磁石電源と、電磁石電源と走査電磁石とを接続するための第1の線と、第1の線の周囲を覆うように設けられ、電磁石電源側の一端が第1の線と接続されることで第1の線と並列となる第2の線と、第1の線と第2の線との接続部よりも走査電磁石側において第1の線に接続されて、第1の線の電流を測定する電流測定部と、を備える。
【0010】
この電源装置によれば、上述の荷電粒子線治療装置と同様の作用・効果を得ることができる。
【0011】
本発明に係る電源装置は、接続部よりも走査電磁石側において第1の線と第2の線との間に設けられ、第1の線と第2の線とを絶縁する第1の絶縁材と、第2の線の周囲を覆うように設けられた第2の絶縁材と、を更に備え、第2の絶縁材は、設置電位である設置電位部材に接続されていてよい。これにより、走査電磁石の電流値の測定精度を向上しつつ、第1の線及び第2の線全体を好適に絶縁することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、走査電磁石の電流値の測定精度を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態に係る荷電粒子線治療装置について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る荷電粒子線治療装置1は、放射線療法によるがん治療等に利用される装置であり、イオン源(不図示)で生成した荷電粒子を加速して荷電粒子線として出射する加速器3と、荷電粒子線を被照射体へ照射する照射部2と、加速器3から出射された荷電粒子線を照射部2へ輸送するビーム輸送ライン41と、を備えている。照射部2は、治療台4を取り囲むように設けられた回転ガントリ5に取り付けられている。照射部2は、回転ガントリ5によって治療台4の周りに回転可能とされている。
【0016】
図2は、
図1の荷電粒子線治療装置の照射部付近の概略構成図である。なお、以下の説明においては、「X方向」、「Y方向」、「Z方向」という語を用いて説明する。「Z方向」とは、荷電粒子線Bの基軸AXが延びる方向であり、荷電粒子線Bの照射の深さ方向である。なお、「基軸AX」とは、後述の走査電磁石6で偏向しなかった場合の荷電粒子線Bの照射軸とする。
図2では、基軸AXに沿って荷電粒子線Bが照射されている様子を示している。「X方向」とは、Z方向と直交する平面内における一の方向である。「Y方向」とは、Z方向と直交する平面内においてX方向と直交する方向である。
【0017】
まず、
図2を参照して、本実施形態に係る荷電粒子線治療装置1の概略構成について説明する。荷電粒子線治療装置1はスキャニング法に係る照射装置である。なお、スキャニング方式は特に限定されず、ラインスキャニング、ラスタースキャニング、スポットスキャニング等を採用してよい。
図2に示されるように、荷電粒子線治療装置1は、加速器3と、照射部2と、ビーム輸送ライン41と、制御部7と、を備えている。
【0018】
加速器3は、荷電粒子を加速して予め設定されたエネルギーの荷電粒子線Bを出射する装置である。加速器3として、例えば、サイクロトロン、シンクロトロン、シンクロサイクロトロン、ライナック等が挙げられる。なお、加速器3として予め定めたエネルギーの荷電粒子線Bを出射するサイクロトロンを採用する場合、エネルギー調整部20を採用することで、照射部2へ送られる荷電粒子線Bのエネルギーを調整(低下)させることが可能となる。なお、シンクロトロンは出射する荷電粒子線Bのエネルギーを容易に変更できるため、加速器3としてシンクロトロンを採用する場合には、エネルギー調整部20を省略してもよい。この加速器3は、制御部7に接続されており、供給される電流が制御される。加速器3で発生した荷電粒子線Bは、ビーム輸送ライン41によって照射ノズル9へ輸送される。ビーム輸送ライン41は、加速器3と、エネルギー調整部20と、照射部2と、を接続し、加速器3から出射された荷電粒子線Bを照射部2へ輸送する。
【0019】
荷電粒子線治療装置1は、加速器3内に配置され、イオン源から出た荷電粒子線Bを遮断するビームチョッパ16を更に備えている。ビームチョッパ16の作動状態(ON)において、イオン源から出た荷電粒子線Bは遮断され、加速器3から出射されない状態となる。ビームチョッパ16の停止状態(OFF)において、イオン源から出た荷電粒子線Bは遮断されることなく加速器3から出射される状態となる。ビームチョッパ16の作動状態及び停止状態は、ビームチョッパスイッチ(不図示)により切り替えられる。なお、荷電粒子線の照射、非照射を切り替える手段としてビームチョッパ以外を用いても良い。例えば、ビーム輸送ライン中にシャッターを設けてシャッターで荷電粒子線を遮断してよい。あるいは、加速器3内に設けたデフレクタ(電極)を用いて荷電粒子線を照射するときのみ加速器3から荷電粒子線を出射させてよい。
【0020】
照射部2は、患者15の体内の腫瘍(被照射体)14に対し、荷電粒子線Bを照射するものである。荷電粒子線Bとは、電荷をもった粒子を高速に加速したものであり、例えば陽子線、重粒子(重イオン)線、電子線等が挙げられる。具体的に、照射部2は、イオン源(不図示)で生成した荷電粒子を加速する加速器3から出射されてビーム輸送ライン41で輸送された荷電粒子線Bを腫瘍14へ照射する装置である。照射部2は、走査電磁石6、四極電磁石8、プロファイルモニタ11、ドーズモニタ12、フラットネスモニタ13a,13b、及びディグレーダ30を備えている。走査電磁石6、各モニタ11,12,13a,13b、四極電磁石8、及びディグレーダ30は、照射ノズル9に収容されている。なお、四極電磁石8、プロファイルモニタ11、ドーズモニタ12、フラットネスモニタ13a,13b、及びディグレーダ30は省略してもよい。
【0021】
走査電磁石6は、X方向走査電磁石6a及びY方向走査電磁石6bを含む。X方向走査電磁石6a及びY方向走査電磁石6bは、それぞれ一対の電磁石から構成され、制御部7から供給される電流に応じて一対の電磁石間の磁場を変化させ、当該電磁石間を通過する荷電粒子線Bを走査する。X方向走査電磁石6aは、X方向に荷電粒子線Bを走査し、Y方向走査電磁石6bは、Y方向に荷電粒子線Bを走査する。これらの走査電磁石6は、基軸AX上であって、加速器3よりも荷電粒子線Bの下流側にこの順で配置されている。
【0022】
四極電磁石8は、X方向四極電磁石8a及びY方向四極電磁石8bを含む。X方向四極電磁石8a及びY方向四極電磁石8bは、制御部7から供給される電流に応じて荷電粒子線Bを絞って収束させる。X方向四極電磁石8aは、X方向において荷電粒子線Bを収束させ、Y方向四極電磁石8bは、Y方向において荷電粒子線Bを収束させる。四極電磁石8に供給する電流を変化させて絞り量(収束量)を変化させることにより、荷電粒子線Bのビームサイズを変化させることができる。四極電磁石8は、基軸AX上であって加速器3と走査電磁石6との間にこの順で配置されている。なお、ビームサイズとは、XY平面における荷電粒子線Bの大きさである。また、ビーム形状とは、XY平面における荷電粒子線Bの形状である。
【0023】
プロファイルモニタ11は、初期設定の際の位置合わせのために、荷電粒子線Bのビーム形状及び位置を検出する。プロファイルモニタ11は、基軸AX上であって四極電磁石8と走査電磁石6との間に配置されている。ドーズモニタ12は、荷電粒子線Bの強度を検出する。ドーズモニタ12は、基軸AX上であって走査電磁石6に対して下流側に配置されている。フラットネスモニタ13a,13bは、荷電粒子線Bのビーム形状及び位置を検出監視する。フラットネスモニタ13a,13bは、基軸AX上であって、ドーズモニタ12よりも荷電粒子線Bの下流側に配置されている。各モニタ11,12,13a,13bは、検出した検出結果を制御部7に出力する。
【0024】
ディグレーダ30は、通過する荷電粒子線Bのエネルギーを低下させて当該荷電粒子線Bのエネルギーの微調整を行う。本実施形態では、ディグレーダ30は、照射ノズル9の先端部9aに設けられている。なお、照射ノズル9の先端部9aとは、荷電粒子線Bの下流側の端部である。
【0025】
制御部7は、例えばCPU、ROM、及びRAM等により構成されている。この制御部7は、各モニタ11,12,13a,13bから出力された検出結果に基づいて、加速器3、走査電磁石6及び四極電磁石8を制御する。また、本実施形態においては、制御部7は、各モニタ11,12,13a,13bの検出結果をフィードバックして、荷電粒子線Bのビームサイズが一定となるように、四極電磁石8を制御する。
【0026】
また、荷電粒子線治療装置1の制御部7は、荷電粒子線治療の治療計画を行う治療計画装置100と接続されている。治療計画装置100は、治療前に患者15の腫瘍14をCT等で測定し、腫瘍14の各位置における線量分布(照射すべき荷電粒子線の線量分布)を計画する。具体的には、治療計画装置100は、腫瘍14に対して治療計画マップを作成する。治療計画装置100は、作成した治療計画マップを制御部7へ送信する。
【0027】
スキャニング法による荷電粒子線の照射を行う場合、腫瘍14をZ方向に複数の層に仮想的に分割し、一の層において荷電粒子線を治療計画において定めた走査経路に従うように走査して照射する。そして、当該一の層における荷電粒子線の照射が完了した後に、隣接する次の層における荷電粒子線の照射を行う。
【0028】
図2に示す荷電粒子線治療装置1により、スキャニング法によって荷電粒子線Bの照射を行う場合、通過する荷電粒子線Bが収束するように四極電磁石8を作動状態(ON)とする。
【0029】
続いて、加速器3から荷電粒子線Bを出射する。出射された荷電粒子線Bは、走査電磁石6の制御により、治療計画において定めた走査経路に従うように走査される。これにより、荷電粒子線Bは、腫瘍14に対してZ方向に設定された一の層における照射範囲内を走査されつつ照射されることとなる。一の層に対する照射が完了したら、次の層へ荷電粒子線Bを照射する。
【0030】
制御部7の制御に応じた走査電磁石6の荷電粒子線照射イメージについて、
図3(a)及び(b)を参照して説明する。
図3(a)は、深さ方向において複数の層に仮想的にスライスされた被照射体を、
図3(b)は、深さ方向から見た一の層における荷電粒子線の走査イメージを、それぞれ示している。
【0031】
図3(a)に示すように、被照射体は照射の深さ方向において複数の層に仮想的にスライスされており、本例では、深い(荷電粒子線Bの飛程が長い)層から順に、層L
1、層L
2、…層L
n−1、層L
n、層L
n+1、…層L
N−1、層L
NとN層に仮想的にスライスされている。また、
図3(b)に示すように、荷電粒子線Bは、ビーム軌道TL(走査経路)を描きながら層L
nの複数の照射スポットに対して照射される。すなわち、制御部7によって照射部2が制御され、照射部2から照射された荷電粒子線Bは、ビーム軌道TL上を移動する。
【0032】
制御部7は、荷電粒子線Bの照射中にエラーが生じたときは、荷電粒子線Bの照射を停止する。制御部7は、ビームチョッパ16をONとすることで加速器3からの荷電粒子線Bの出射を停止する。そして、制御部7は、停止時における荷電粒子線Bの停止位置を記憶する。エラーの解消後に、制御部7は記憶していた停止位置から荷電粒子線Bの照射を開始する。なお、エラーとは、荷電粒子線治療装置1に設けられた何れかのモニタで異常値を検出することである。モニタは、例えば、イオン源からのイオンの出力(電流値)を監視する検出器、加速器3からの荷電粒子線Bの出力を監視する検出器、照射ノズル9内の各種モニタ、患者の動きを検知する検知器などが挙げられる。また、荷電粒子線Bの停止は、ビームチョッパ16によるものに限らず、他の方法によるものであってもよい。例えば、ビーム輸送ライン41中にシャッターを設けて、シャッターで荷電粒子線Bを物理的に遮蔽してもよい。
【0033】
ここで、荷電粒子線治療装置1は、腫瘍14に照射される荷電粒子線Bを走査する走査電磁石6に電力を供給する電源装置150を備えている。電源装置150は、走査電磁石6に電力を供給する電磁石電源50と、電磁石電源50と走査電磁石6とを接続するケーブル60と、電流を測定する電流測定部51と、を備える。なお、ケーブル60は、回転ガントリ5の背面側から這いまわされて、当該回転ガントリ5の背面側に設けられた巻取部55に収容される(
図1参照)。ケーブル60は、回転ガントリ5内部を所定の経路で這いまわされて、照射部2の走査電磁石6に接続される。
【0034】
図4〜
図6を参照して、電源装置150の詳細な構成について説明する。
図4は、電源装置150の電磁石電源50とケーブル60との接続部付近の構成を示す模式図である。
図5は、ケーブル60の横断面である。
図6は、電源装置150の回路図である。
【0035】
図4及び
図5に示すように、ケーブル60は、心線(第1の線)61と、絶縁材(第1の絶縁材)62と、シールド(第2の線)63と、絶縁材(第2の絶縁材)64と、を備える。
【0036】
心線61は、導電性の材料からなり、電磁石電源50と走査電磁石6とを接続する。心線61は、電磁石電源50内では、電力供給を行う出力端子(接続部)52に接続されている。心線61の周囲は絶縁材62で覆われている。これにより、ケーブル60内では、心線61はシールド63から絶縁されている。
【0037】
シールド63は、心線61の周囲を覆うように設けられる。シールド63は、例えば導電性のメッシュ部材などによって構成される。シールド63は、一端が第1の線と接続されることで前記第1の線と並列となる(
図6参照)。シールド63の電磁石電源50側の端部は、当該電磁石電源50内にて、出力端子52を介して心線61に接続されている。一方、シールド63の走査電磁石6側の端部では、当該シールド63は、心線61に接続されていない。すなわち、シールド63は、電磁石電源50側での接続部分よりも走査電磁石6側では、心線61と接続されていない。このような構成により、シールド63は、心線61と同電位となる。シールド63の周囲は絶縁材64で覆われている。これにより、ケーブル60内では、シールド63は外部から絶縁されている。
【0038】
図4に示すように、ケーブル60からは、電磁石電源50側の端部において、絶縁材64が除去されている。また、心線61とシールド63の延長部63aとは、互いに離間された状態となっている。このような状態において、心線61には電流測定部51が接続されている。電流測定部51は、心線61とシールド63との接続部である出力端子52よりも走査電磁石6側において心線に接続される。電流測定部51は、心線61の電流を測定する。一方、シールド63の延長部63aは、電流測定部51を迂回するように延びて、出力端子52と接続されている。これにより、電流測定部51は、シールド63に流れる電流は検出することなく、心線61に流れる電流のみを検出することができる。
【0039】
上述のような構成により、絶縁材62は、心線61とシールド63との接続部である出力端子52よりも走査電磁石6側において心線61とシールド63との間に設けられ、心線61とシールド63とを絶縁する。絶縁材64は、シールド63の周囲を覆うように設けられる。絶縁材64は、設置電位である設置電位部材に接続される。本実施形態では、設置電位部材とは、例えば外部の構造物であり、ケーブルラックの設置面80などである。すなわち、ケーブル60が設置面80上に設置されることで、絶縁材64が設置電位部材に接続される。
【0040】
次に、
図6を参照して、電源装置150の回路構成について説明する。
図6に示すように、電磁石電源50の出力端子52から、心線61が負荷70(ここでは走査電磁石6)まで延びている。また、出力端子52から、当該心線61と同電位のシールド63が延びている。心線61は、所定のインダクタンスL1を有している。シールド63は、所定のインダクタンスL2を有している。
【0041】
また、心線61とシールド63とは、絶縁材62を介して互いに径方向に隣接している。従って、心線61とシールド63との間には、分布容量C1が形成される。また、シールド63は、心線61よりも外周側に配置されており、絶縁材64を介して、外部の構造物と隣接する。外部の構造物は、例えばケーブルラックの設置面80(
図5参照)などである。このような構造物はシールド63に対してアースGとして機能する。これによって、シールド63とアースGとの間には、分布容量C2が形成される。
【0042】
次に、本実施形態に係る荷電粒子線治療装置1、及び電源装置150の作用・効果について説明する。
【0043】
まず、
図7を参照して、比較例に係る電源装置200について説明する。電源装置200は、本実施形態の電源装置150のようなシールド63を有していない。従って、心線61と外部の構造物との間には容量分布C3が形成される。この状態では、心線61には、走査電磁石6へ流れる電流A2に加え、容量分布C3へ流れる電流A1も発生する。従って、電流測定部51には、当該電流A1も流れる。この場合、エラーによって荷電粒子線の照射が停止し、停止位置から照射を開始する際に、容量分布C3へ流れる電流A1が発生し、電流測定部51は、当該電流A1も測定してしまう。これにより、電流測定部51の測定結果に誤差が生じる。このように測定結果に誤差が生じると、荷電粒子線の照射が停止したときの走査電磁石6への電流値を正確に検知できない。これにより、荷電粒子線の停止位置を正確に把握できないという問題が生じる。
【0044】
一方、本実施形態に係る荷電粒子線治療装置1及び電源装置150は、電磁石電源50と走査電磁石6とを接続する心線61と、心線61の周囲を覆うように設けられるシールド63と、を備える。シールド63が心線61の周囲を覆うことで、心線61とシールド63との間には分布容量C1が形成される。また、外周側のシールド63と外部の構造物との間には分布容量C2が形成される。ここで、シールド63は心線61と並列であるため、心線61とシールド63とは互いに同電位となる。従って、心線61とシールド63との間の分布容量C1には電流は流れない。一方、シールド63と外部の構造物との間の分布容量C2には電流A2が流れる。しかし、当該電流A2は、シールド63を流れるが、心線61には流れない。従って、心線に接続される電流測定部51に、当該電流A2が流れることを防止できる。電流測定部51は、心線61から走査電磁石6に流れる電流A3のみを検出できる。これにより、走査電磁石6の電流値の測定精度を向上できる。このように測定精度を向上できると、荷電粒子線の照射が停止したときの走査電磁石6への電流値を正確に検知できる。これにより、荷電粒子線の停止位置を正確に把握できる。
【0045】
本実施形態に係る荷電粒子線治療装置1及び電源装置150は、接続部である出力端子52よりも走査電磁石6側において心線61とシールド63との間に設けられ、心線61とシールド63とを絶縁する絶縁材62と、シールド63の周囲を覆うように設けられた64と、を更に備える。絶縁材64は、設置電位である設置面(設置電位部材)80に接続されている。これにより、走査電磁石6の電流値の測定精度を向上しつつ、ケーブル60(心線61及びシールド63)全体を好適に絶縁することができる。
【0046】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0047】
例えば、電源装置150やケーブル60の構造、接続態様などは、上述の実施形態に限定されず、本発明の趣旨の範囲内で、適宜変更してもよい。
【0048】
また、照射部2の構成は
図2に示すものに限定されず、適宜変更可能である。