(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.土間用床材
本発明の土間用床材は、建物の土間における土間下地の上に敷設するために用いられる床材であって、
(1)前記床材は、下層から順に、少なくとも緩衝材層、木質材層及び樹脂含有層を含み、
(2)前記床材は、緩衝材層が土間下地に対面するように敷設される、
ことを特徴とする。
【0018】
図1に示すように、本発明の土間用床材10は、下層から順に、少なくとも緩衝材層11、木質材層12及び樹脂含有層13を含む。この場合、各層は、単層であっても良いし、複数の層から構成される積層体であっても良い。また、各層の層間には、必要に応じて他の層(例えば接着剤等)が介在していても良い。
【0019】
本発明の土間用床材は、建物の土間における土間下地の上に敷設するために用いられる。土間下地とは、例えば土間コンクリート、床スラブ、木質床パネル、金属板の床パン、FRP等の硬質樹脂製の床パン等のように、従来より床職人による床シート施工(最表面の仕上げ)とは別途に施工されている下地構造がすべて包含される。特に、
図2に示すように、土間用床材10は、緩衝材層11が土間下地20に対面するように、土間下地20上に敷設される。ここで、「緩衝材層が土間下地に対面する」とは、緩衝材層が何も介さずに土間下地に直に接触している場合のほか、接着層を介して接触している場合も含む。すなわち、本発明では、「土間下地/土間用床材」又は「土間下地/接着層/土間用床材」という層構成をとることが好ましい。
【0020】
接着層は、土間用床材を実質的に完全に土間下地に固定させる層、手指により土間用床材の付着及び剥離を可逆的に行える状態で土間床材を土間下地に粘着させる層、手指により土間用床材の配置及び除去を可逆的に行える状態で土間用床材の滑りを防止する層等を包含する。これらは、例えば接着剤、コーキング剤、粘着剤、粘着テープ、滑り止めシート等によって形成することができる。また、接着層は、土間下地又は土間用床材の全面に形成されていても良いし、部分的に形成されていても良い。部分的に形成される場合としては、例えば全面にわたってストライプ状、ドット状等に形成されているような場合も含む。
【0021】
また、本発明における土間下地は、玄関等の土間構造において、未だ捨て貼り合板等の木質板が配置されていない状態のものを指す。換言すれば、被施工面となる金属面、FRP面、コンクリート面又は木質面が露出している構造を意味する。この場合、土間コンクリート又は床スラブを構成するコンクリートとしては、ALCコンクリート、モルタル等のいずれも包含する。木質床パネルを構成する木質材料としては、例えば複数の木質の板が面方向に継ぎ接ぎされて構成されており、通常は段差等の凹凸を有する。土間コンクリート又は床スラブは、木質床パネルに比べて表面に大きな凹凸が多いが、本発明の土間用床材は、土間下地がコンクリート面であっても凹凸による不陸を吸収できるので、より確実かつ容易に施工することが可能となる。
【0022】
本発明の土間用床材は、各層が実質的に同一の形状・面積であっても良いが、必要に応じて各層で異なる形状又は面積に設定しても良い。例えば、
図3に示す土間用床材10は、緩衝材層11と木質材層12とが同一形状・同一面積となっていて、樹脂含有層13の面積が小さくなることで、木質材層12の両端の上面12a,12bが露出した形態となっている。換言すれば、木質材層12の上面が露出するような層構成を採用することもできる。このような層構成をとることにより、
図4に示すように木質材層12の両端の上面12a,12bに壁21が載るような構造を有する土間構造を創出することができる。
【0023】
なお、
図3では、木質材層12の両端の上面12a,12bが露出するように構成されているが、いずれか一方だけが露出するように設計することもできる。露出した上面12a,12bの幅は、例えば50〜300mm程度とすることができる。これによって、施工時に、土間用床材の両端を釘によって土間下地に強く固定することができる。その後、露出した上面12a,12bに壁を設けることによって、釘を隠すこともできる。
【0024】
本発明の土間用床材の厚みは、従前の捨て貼り合板とその上に積層されるシートとの合計厚みと同程度に設定すれば良い。従って、例えば3〜20mm、好ましくは4〜15mmの範囲内において、施工される土間の構造等に応じて適宜決定することができる。このような範囲内に設定することによって、より高い強度が得られるとともに、軽量化により持ち運びが容易となり、また施工後に土間と廊下部分との段差をより効果的に小さくすることができる。なお、上記の厚みは、任意の層が含まれる場合は、それらを含めた総厚みをいう。
【0025】
また、本発明の土間用床材の形状、大きさ等も制限されない。形状としては、正方形、長方形、円形、ひし形等のいずれでも良いが、一般的には正方形、長方形等の矩形状であることが好ましい。また、これら形状において、一部が切り欠かれた形状であっても良い。また、大きさは、土間の広さ等に応じて設定できるが、施工の容易性、取扱性等の関係で最大で1.2m×2.4m程度とすれば良い。また、タイル等のように、一定の小さなサイズに分けて複数の土間用床材として組み合わせて使用することもできる。
【0026】
緩衝材層
緩衝材層は、土間下地の凹凸による不陸を吸収するとともに、木質材層の反りを抑制する機能等を有する。
【0027】
緩衝材層としては、クッション性を有する材料であれば良く、一般的に緩衝材として知られている材料又は市販品を使用することができる。また、材質として、合成樹脂、ゴム又はこれらの少なくとも1種を含む複合材料を採用することができる。特に、本発明では、a)合成樹脂又はゴムの発泡材、b)有機繊維又は無機繊維の織物シート又は不織布シート(以下「繊維シート」ともいう。)、及びc)前記a)又はb)を含む複合材料の少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0028】
前記a)の合成樹脂又はゴムの発泡材としては、例えば塩化ビニル系樹脂発泡材、ポリエチレン発泡材、ポリスチレン発泡材、ポリウレタン発泡材、ポリプロピレン発泡材、アクリル樹脂発泡材、EVA架橋発泡材、ABS発泡材、フェノール発泡材、天然ゴム発泡材、クロロプレンゴム発泡材、イソプレンゴム発泡材、スチレンブタジエンゴム発泡材、ニトリルゴム発泡材、シリコンゴム発泡材等のいずれも適用することができる。
【0029】
また、合成樹脂又はゴムの発泡材は、例えば合成樹脂組成物又はゴム組成物を発泡させることによって得ることができる。発泡材に含まれる気泡(気孔)は、独立気泡又は連続気泡のいずれでも良いが、接着剤を使用した際のアンカー効果をより発揮させるために、連続気泡がより好ましい。
【0030】
前記b)の繊維シートとしては、高分子有機化合物による合成繊維のほか、天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等の織物又は不織布が挙げられる。また、不織布は、例えばスパンボンド、フェルト等もすべて包含する。
【0031】
前記c)の複合材料としては、前記b)の繊維シートに合成樹脂を含浸させた材料が挙げられる。また、前記a)の発泡材のシート状体と、前記b)の繊維シートとを積層させた材料等も使用することができる。特に、ガラスの繊維シートを用いることにより、土間用床材の反りをより効果的に抑制することができる。
【0032】
また、緩衝材層は、必要に応じて複数の貫通孔を形成することができる。貫通孔を有する緩衝材層は、接着剤を用いて木質材層等と接合する際に、接着剤と接する面積が増大するとともに、貫通孔にも接着剤が入り込むことによるアンカー効果が得られる結果、接着力の向上を図ることができる。貫通孔の径は、通常は0.01〜5mm程度、好ましくは0.05〜2mm程度とすれば良い。また、貫通孔の密度は、特に制限されないが、一般的には500〜250000個/m
2の範囲内において、好ましくは1000〜50000個/m
2の範囲内において、所望の接着性等に応じて適宜設定することができる。貫通孔の形成方法は、例えば針ロール、打ち抜き装置、レーザー加工装置、多軸ボーリングマシン等の公知の加工装置等により実施することができる。貫通孔は、例えば
図5に示すように、緩衝材層の強度を均等にするという点で、縦方向及び横方向に均等間隔(等ピッチ)になるように形成することが好ましい。また、緩衝材層が複合材料からなる場合、全部の層に貫通孔を形成しても良く、一部の層のみに貫通孔を形成しても良い。
【0033】
緩衝材層の厚みは、特に制限されないが、通常は0.2〜5mm程度の範囲内で適宜設定すれば良い。なお、前記の厚みは、緩衝材層が複数の層から構成されている場合はその総厚みをいう。
【0034】
木質材層
木質材層は、床材全体としての強度を維持し、特にハイヒール、杖等による高い圧力(踏み抜き等)に床材に与えるための芯材となる層である。また、金属板、FRP、セラミックス等の他の硬質材料よりも比較的軟らかであるため、防音性、クッション性、加工性等においても有利である。さらに、他の硬質材料よりも比較的安価なため、芯材として製造コストを低く抑えることができる結果、本発明の土間用床材を比較的安価な住宅の玄関等の施工にも好適に使用することが可能となる。
【0035】
木質材層の材質としては、木材そのもの又は木材を原料とする加工品であれば特に限定されず、無垢材(製材)、加工木材等のいずれでも採用することができる。
【0036】
特に、本発明では、コスト面等において、加工木材を好適に用いることができる。加工木材としては、例えば集成材、積層材、合板、パーティクルボード、繊維板(ファイバーボード)等が挙げられるが、低コスト、加工容易性、強度等の見地より合板、パーティクルボード及び繊維板の少なくとも1種が好ましい。
【0037】
その中でも、特に経時的に発生し得る反りが抑制されており、施工時の切断が容易で切断面も綺麗であるという点において、繊維板を用いることがより好ましい。繊維板としては、例えば高密度繊維板(HDF)、中密度繊維板(MDF)等のいずれも好適に用いることができる。なお、これら加工木材は、いずれも公知又は市販のものを使用することができる。
【0038】
本発明では、木質材層は、剛性及び自立性を有する1枚又は2枚以上の板状体から木質材層が構成されていることが好ましい。従って、例えば市販の厚さ2mm以上のHDF又はMDFを木質材層として好適に用いることができる。
【0039】
木質材層の厚みは、木質材層を構成する材料の種類等に応じて適宜設定することができるが、通常は2mm以上とし、特に3〜9mmとすることが好ましい。なお、前記の厚みは、木質材層が複数の層から構成されている場合はその総厚みをいう。
【0040】
樹脂含有層
樹脂含有層は、土間用床材を下地コンクリート上に敷設した際に最表面に配置される層であることから、防滑性、意匠性、防水性、耐久性等の機能を持たせた層である。
【0041】
樹脂含有層に含まれる樹脂成分としては、例えば塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等の各種の合成樹脂が挙げられる。特に、加工が容易で耐久性が高いことから、塩化ビニル系樹脂を主体とする樹脂含有層が好ましい。また、形状は、タイル形状、シート形状のいずれも使用することができるが、シートはタイルに比べて、目地が少ないので好ましい。従って、本発明では、塩化ビニル系樹脂を主体とするシートを樹脂含有層として好適に用いることができる。
【0042】
本発明において「塩化ビニル系樹脂を主体とする」とは、1)樹脂含有層が単層構造から構成される場合は、その単層が塩化ビニル系樹脂から構成されることを意味し、2)樹脂含有層が多層構造から構成される場合、少なくとも1層が塩化ビニル系樹脂シートから構成されることを意味する。特に、樹脂含有層が多層構造から構成される場合、その厚みの50%以上、特に80%以上を塩化ビニル系樹脂から構成される層で占めることが望ましい。
【0043】
樹脂含有層が多層構造を有する場合は、例えば塩化ビニル系樹脂から構成されるシートを基材層とし、これに意匠層、補強層、表面保護層等の少なくとも1つが形成されてなる積層体を樹脂含有層として採用することができる。
【0044】
特に、樹脂含有層は、上記補強層として、有機繊維又は無機繊維の織物シート又は不織布シートを含んでいても良い。このようなシートとしては、緩衝材層で挙げた繊維シートも使用することができる。例えば、a)上側樹脂層、b)繊維シート及びc)下側樹脂層が積層されてなる積層体の形態で採用することができる。また、a)上側樹脂層及びb)繊維シートが積層されてなる2層型の積層体、b)繊維シート及びc)下側樹脂層が積層されてなる2層型の積層体等も樹脂含有層として使用することができる。このような積層体自体は、公知又は市販のものを使用することができる。
【0045】
樹脂含有層の厚みは、限定的ではないが、通常は0.5〜5mm程度とし、特に1〜4mmとすることが好ましい。なお、前記の厚みは、樹脂含有層が複数の層から構成されている場合はその総厚みをいう。
【0046】
その他の層
本発明の土間用床材は、上記の3つ層のほか、必要に応じて他の層が含まれていても良い。例えば、本発明では、平面方向に収縮性を有する収縮層を樹脂含有層と木質材層との間に介在させることができる。
【0047】
図6に示すように、木質材層12と樹脂含有層13との間に収縮層14が積層された構成も採用することができる。これにより、床材の中心部が凸状に反る現象を効果的に抑制ないしは防止することができる。施工後の床面の中心部が凸状に反って浮き上がると、他の方法で反りを押さえることが困難であるうえ、床面が上下にぐらつくことで歩行等にも支障を来すおそれがある。このため、木質材層の上層に配置された収縮層により、木質材層が凹状に反るような力(床材の両端が持ち上がるような力)が加わることになる。その結果、床材が凸状に反る現象を効果的に抑えることができる。また、たとえ凹状に反って床材両端が浮き上がるように変形したとしても、例えば巾木、壁材、釘等によって床材両端を押さえることでその変形度合いを軽減することができる。
【0048】
収縮する方向は、収縮層の平面方向においてその中心に向かって収縮するように設定することが望ましい。例えば
図7に示すように、収縮層14の平面形状が正方形、長方形等の矩形である場合、その対角線が交差する点(中心点C)に向かってx方向及びy方向の少なくともいずれか一方に収縮することが好ましい。特に、反りは長尺方向が顕著になるので、少なくとも長尺方向(
図7におけるx方向)において収縮力が働くような収縮層を採用することが望ましい。
【0049】
収縮層としては、伸縮性のある材料からなる層であれば特に制限されない。例えば、前記の緩衝材層で使用できる前記b)の繊維シートを挙げることができる。材質は、高分子有機化合物による合成繊維のほか、天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等が挙げられ、特に、収縮力の観点から合成繊維、天然繊維が好ましい。形状は、織物又は不織布が挙げられる。また、不織布は、スパンボンド不織布、寒冷紗等も含まれる。これらの織物又は不織布も、公知又は市販のものを採用することができる。このような収縮性(又は伸縮性)のあるシートを伸ばした状態で木質材層上に積層・固定することによって、木質材層の経時的な反りを効果的に抑制することが可能となる。
【0050】
収縮層の厚みは、所望の収縮性等に応じて適宜設定することができるが、通常は0.2〜1mm程度の範囲内とすれば良い。
【0051】
2.土間用床材の製造方法
本発明の土間用床材は、特に、(a)緩衝材層となる緩衝材シート、木質材層となる木質板及び樹脂含有層となる樹脂含有シートを用意する工程及び(b)前記の緩衝材シート、木質板及び樹脂含有シートを接着剤により接着することにより、下層から順に、少なくとも緩衝材層、木質材層及び樹脂含有層を含む積層体を得る工程を含む製造方法によって好適に製造することができる。このように、上記製造方法では、各層として予めシート状又は板状に成形又は加工された材料を用いるので、比較的容易かつ確実に土間用床材を作製することができる。
【0052】
各層を構成する材料は、前記で述べた材料をそのまま用いることができる。各層を積層させる順序は特に限定されず、また全層を同時に積層させても良い。
【0053】
緩衝材シートとしては、合成樹脂シート、ゴムシート又はこれらの少なくとも1種を含む複合材料シートを採用することができる。特に、本発明では、a)合成樹脂又はゴムの発泡材、b)有機繊維又は無機繊維の織物シート又は不織布シート(以下「繊維シート」ともいう。)、及びc)前記a)又はb)を含む複合材料の少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0054】
木質板としては、木材そのもの又は木材を原料とする加工品であれば特に限定されず、無垢材(製材)、加工木材等のいずれでも採用することができる。特に、本発明では、低コスト、加工容易性、強度等の見地より合板、パーティクルボード及び繊維板の少なくとも1種の木質板を用いることが好ましい。
【0055】
樹脂含有シートとしては、合成樹脂を主体とするシートを用いることができる。本発明では、特に塩化ビニル系樹脂を主体とするシートを好適に用いることができる。また、前記のように、2つの樹脂層の間に繊維シートが介在してなる積層体シートも好適に採用することができる。
【0056】
また、各層を接合するための接着剤としては、各層の材質等に応じて適宜選択することができる。例えば、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合系、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂及びエポキシ系樹脂から選ばれる1種又は2種以上の混合物を接着成分とする接着剤が例示される。また、接着剤のタイプも限定的でなく、例えば1液型接着剤、2液型接着剤、熱硬化型接着剤、ホットメルト型接着剤、紫外線硬化型接着剤等の各種のタイプの接着剤を使用することができる。
【0057】
他の任意の層を採用する場合は、上記の製造方法において、さらに任意の層を接着剤で積層する工程を導入すれば良い。例えば、収縮層を採用する場合は、木質材層と樹脂含有層との積層に先立って、伸縮性を有するシート状材料を一定方向に伸ばした状態で固定しながら木質材層上面に積層する工程を追加すれば良い。より具体的には、一定方向に伸ばした状態でシート状材料を粘着テープ等で仮止めし、その上に接着剤を塗工することにより硬化させることにより、一定のテンションを維持したままでシート状材料を木質材層上に積層・固定することができる。
【0058】
各層を積層した後は、必要に応じて、積層体を公知の方法に従って裁断、加工等を行っても良い。本発明の土間用床材は、木質材層を採用しているので、例えばカットソー、ランニングソー等の裁断機ほか、手持ちできる手動鋸又は電動鋸でも比較的容易に裁断することができる。
【0059】
3.土間の施工方法
本発明は、土間の施工方法も包含する。例えば、物の土間の床構造を構築する方法であって、本発明の土間用床材を土間下地の上に敷設するに際し、前記床材の緩衝材層が1)土間下地に直に接するように又は2)接着層を介して土間下地に接するように、前記床材を敷設する工程を含む施工方法を好適に採用できる。
【0060】
本発明の施工方法は、より具体的には壁の配置の仕方により2つの方法に大別される。第1は、下地コンクリート面に壁を配置する方法である。第2は、本発明の土間用床材の上に壁を配置する方法である。
【0061】
<第1の方法>
第1の方法としては、例えば(a)土間下地面上に壁を構築する工程(壁構築工程)、(b)壁が配置された領域以外の領域に、本発明の土間用床材をその緩衝材層が下層となるように土間下地面上に敷設する工程(床材敷設工程)、を含む施工方法を好適に採用することができる。
【0062】
壁構築工程
壁構築工程では、土間下地面上に壁を構築する。例えば、
図8に示すように、土間下地20の領域20a,20b上に壁材21を配置する。前記領域は、通常は、土間下地20の両端とすれば良い。前記領域の形状、面積等は、施工する壁の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0063】
床材敷設工程
床材敷設工程では、壁が配置された領域以外の領域に、本発明の土間用床材をその緩衝材層が下層となるように土間下地面上に敷設する。例えば、
図2に示すように、土間用床材10をその緩衝材層11が下層(下面)となるように、土間下地20上に設置する。このように配置することにより、土間用床材10は、壁21と完全に独立して設置されることになる。そのため、土間用床材10のみの交換、洗浄、修理等を容易に行うことが可能となる。また、樹脂含有層のみの交換、洗浄、修理等も容易になる。
【0064】
従来の施工方法では、土間下地20に対して捨て貼り合板の設置とその上の床シートの設置とが別々の工程(別々の業者)により行われているため、工期の長期化、コスト高等の要因となっている。これに対し、第1の方法では捨て貼り合板と床シートとの機能を併せ持つ床材を提供できるので、それらの作業を一つの工程で一挙に行うことが可能になる。しかも、本発明の土間用床材を使用するので、土間下地面の凹凸による不陸を効果的に吸収できる等の利点もある。
【0065】
第1の方法では、土間用床材10を土間下地20上に敷設する場合、壁が設置される領域を残した状態で土間用床材を敷設する。例えば、
図8に示すように、土間下地20の両端の領域20a,20bを空けた状態で土間用床材を敷設する。この場合、必要に応じて、土間用床材を適当な形状及び大きさとなるように適宜裁断することができる。
【0066】
また、土間用床材10を土間下地20上に設置するに際し、例えば接着剤、粘着テープ、釘、鋲等の固定手段で土間用床材10が動かないように固定しても良いが、これらの固定手段を用いることなく載置しても良い。本発明の土間用床材では、床材の自重、緩衝材層のクッション性等によりある程度の固定力ないしは滑り止め効果が発揮されるので、必ずしも固定手段は必要としない。固定手段を使用しない場合は、床材の修理、交換、清掃等が容易になるという利点がある。
【0067】
なお、第1の方法として、上述のように、壁構築工程→床材敷設工程の順に施工していく方法を説明したが、2つの工程が逆でも良い。すなわち、(a)土間下地面上において壁が配置される領域を残して、本発明の土間用床材をその緩衝材層が下層となるように土間下地面上に敷設する工程(床材敷設工程)、(b)前記領域に壁を構築する工程(壁構築工程)を含む施工方法も適宜採用することができる。このように壁を土間下地面上に敷設する場合、後述するように土間下地を釘、ビス等の固定部材で固定した場合には、固定部材を後に壁で隠すことが可能となる。このような固定方法をとることで、意匠性を損なわずに、より強固な固定を実現することが可能となる。
【0068】
<第2の方法>
第2の方法としては、例えば(a)本発明の土間用床材をその緩衝材層が下層となるように土間下地上に敷設する工程(床材敷設工程)、(b)前記土間用床材の樹脂含有層上及び/又は露出した木質材層上面上に壁を構築する工程(壁構築工程)を含む施工方法を好適に採用することができる。
【0069】
床材敷設工程
床材敷設工程では、本発明の土間用床材をその緩衝材層が下層となるように土間下地上に敷設する。例えば、
図2に示すように、土間用床材10をその緩衝材層11が下層(下面)となるように、土間下地20上に設置する。
【0070】
従来の施工方法では、土間下地20に対して捨て貼り合板の設置とその上の床シートの設置とが別々の工程(別々の業者)により行われているのに対し、第2の施工方法では捨て貼り合板と床シートとの機能を併せ持つ床材を使用するので、それらの作業を一つの工程で一挙に済ませることができる。しかも、本発明の土間用床材10の使用によって、土間下地20面の凹凸による不陸を効果的に吸収できる等の効果も得ることができる。
【0071】
土間用床材10を土間下地20上に設置するに際し、例えば接着剤、粘着テープ、釘、鋲等の固定手段で土間用床材10が動かないように固定しても良いが、これらの固定手段を用いることなく載置しても良い。本発明の土間用床材では、床材の自重、緩衝材層のクッション性等によりある程度の固定力ないしは滑り止め効果が発揮されるので、必ずしも固定手段は必要としない。固定手段を使用しない場合は、床材の修理、交換、清掃等が容易になるという利点がある。
【0072】
また、
図11に示すように、土間用床材10の壁が配置される領域において、釘33によって土間用床材10を土間下地20に固定しても良い。これによって、土間用床材10と土間下地20とを、強く固定することができ、土間用床材が経時的に凹状に反る現象を効果的に抑制することができる。
図10においても、同様に、土間用床材10の壁が配置される領域において、木質材層12の露出した上面12a,12bに、釘を打ち付けて、土間用床材10を土間下地20に固定しても良い。
【0073】
なお、釘の代わりにビス、ボルトナット等の他の固定部材によって固定しても良い。このように、壁を設置する場所に釘等を打ち込み、後に壁で隠すことによって、外観では釘等の固定部材が露出しないので意匠性を損なわず、より強固な固定を実現することが可能となる。しかも、壁によって釘等の固定部材が押さえつけられるため、固定が強固となる上、外部環境から遮断されるため、固定部材が劣化しにくくなる。とりわけ。固定部材が金属製の場合にはより高い保護効果を得ることができる。
【0074】
壁構築工程
壁構築工程では、前記土間用床材の樹脂含有層上及び/又は露出した木質材層上面上に壁を構築する。
【0075】
壁を構築する場合、土間用床材の樹脂含有層の上面に壁(壁材)の下面が接触するように配置することができる。
【0076】
例えば、
図9に示すように、土間用床材10の樹脂含有層13の上面に壁21の下面を載せることができる。この場合、壁を樹脂含有層の上面のどこでも配置することができるため、例えば施工時に少し位置がずれても施工できることから、施工の自由度が高いという利点がある。
【0077】
別の実施形態として、例えば
図3に示す層構成の土間用床材10を用いる場合、
図10に示すように木質材層12の露出した上面12a,12bに壁21を配置する方法も採用することができる。特に、
図10に示す方法であれば、例えば樹脂含有層の交換、洗浄、修理等が容易になる等の利点がある。
【0078】
壁を樹脂含有層又は木質材層の露出した面に壁の下面を接するように壁を設けることにより、土間用床材が経時的に凹状に反る現象を効果的に抑制することができる。すなわち、
図9又は
図10に示すように、本発明の床材20の両端を壁、巾木等で押さえ付けることができるため、床材の両端が浮くようなかたちで反る力がかかったとしてもその反りをより効果的に抑制ないしは防止することができる。
【0079】
その他の工程
本発明では、公知の土間を施工する際に実施されている作業も適宜実施することができる。例えば、
図8〜
図11に示すように、土間用床材と壁との入隅への止水処理部22の形成、巾木23の設置等を必要に応じて行うこともできる。止水処理部22は、コーキング剤等によって形成することができる。また、巾木23を土間用床材に接触するように設置することによって、土間用床材が経時的に凹状に反る現象を効果的に抑制することができ、止水効果を得ることができる。特に、
図8に示す構成の場合に効果的である。
【0080】
4.土間の構造
本発明は、上記3.で構築された土間構造も包含する。特に、本発明では、建物の土間における土間下地の上に本発明の土間用床材が配置されている土間の床構造であって、当該緩衝材層が1)土間下地に直に接するように又は2)接着層を介して土間下地に接するように土間用床材が配置されていることを特徴とする床構造を包含する。
【0081】
本発明の土間構造として、より具体的には壁の配置の仕方により2つの方法に大別される。第1は、土間下地上に壁が配置されている構造である。第2は、本発明の土間用床材の上に壁が配置されている構造である。
【0082】
<第1の構造>
第1の構造としては、a)土間下地上において壁が配置される領域を残して、土間下地上に敷設された本発明の土間用床材、b)土間下地の前記領域に壁の下面が接するように設置された壁を含む土間構造を本発明の土間構造として好適に採用することができる。
【0083】
図8には、第1の構造の模式図を示す。
図8では、a)土間下地20上において壁が配置される領域20a,20bを残して、土間下地上に敷設された本発明の土間用床材10、b)土間下地の前記領域20a,20bに壁21の下面が接するように設置された壁21を含む土間構造が示されている。
【0084】
第1の構造では、本発明の土間用床材が壁から完全に独立しているため、前記床材の交換、修理、洗浄等を比較的容易に行うことができる。また、土間用床材を接着剤等の固定手段で固定せずに単に敷置している場合は、フロアマット感覚で異なるデザインの複数の土間用床材を自由に交換することも可能となる。
【0085】
<第2の構造>
第2の構造としては、a)建物の土間における土間下地上に敷設された本発明の土間用床材、b)当該土間用床材の樹脂含有層の上面又は木質材層の露出した上面に壁の下面が接するように設置された壁を含む土間構造を本発明の土間構造として好適に採用することができる。
【0086】
図9には、第2の構造の模式図を示す。
図9では、a)建物の土間における土間下地20上に敷設された土間用床材10を有し、b)当該土間用床材の樹脂含有層13の上面に接するように設置された壁21を含む土間構造が示されている。この実施形態では、
図10の構造とは異なり、木質材層の露出面を形成されていないので、様々な現場で汎用的に用いることができる。
【0087】
図10には、本発明の別の形態の土間構造を示す。
図10では、a)建物の土間における土間下地20上に敷設された土間用床材10を有し、b)当該土間用床材の木質材層の露出した上面12a,12bに接するように設置された壁21を含む土間構造が示されている。この実施形態では、樹脂含有層上に壁がないので、容易に樹脂含有層だけを交換することが可能である。また、壁の下に、樹脂含有層を介在させずに、木質材層が直接接触するので、壁を安定的に固定することができる。
【0088】
図11には、本発明の別の形態の土間構造を示す。
図11は、壁の下面に位置する土間用床材上面から土間下地にわたって釘33が打たれている点を除いて、
図9と同様の構造を有する。この構造によれば、釘によってより高い接合強度が得られるとともに、その釘が壁により隠蔽できるという効果が得られる。
【0089】
なお、釘の代わりにビス、ボルトナット等の別の固定部材を採用しても良い。このように、壁を設置する場所に釘等を打ち込み、後に壁で隠すことによって、釘等の固定部材が露出しないので意匠性を損なわないだけでなく、より強固な固定を実現することも可能となる。しかも、壁の重量によって釘、ビス等が押さえつけられるため、固定が強固となる上、外部環境から遮断されるため、固定部材が劣化しにくくなる。特に、固定部材が金属製の場合により優れた保護効果が発揮できる。
【0090】
なお、第1及び第2のいずれの構造においても、止水処理部、巾木等の公知の土間で採用されている部材もその構造に含めることができる。すなわち、
図8〜
図11に示すように、土間用床材と壁との入隅への止水処理部22、巾木23等も本発明の構造に含まれていても良い。
【実施例】
【0091】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0092】
実施例1
図8に示す土間構造を形成する場合の施工例を示す。まず、土間用床材として、
図1に示すような構造の積層体を作製する。本実施例では、緩衝材層11の材料として市販の塩化ビニル系樹脂発泡材シート(大きさ91cm×135cm、厚み1.3mm)を用い、木質材層として市販のMDF(大きさ91cm×135cm、厚み4mm)を用い、樹脂含有層として市販の塩化ビニル系樹脂シート(大きさ91cm×135cm、厚み2.5mm)を用いる。これらを
図1に示すような順で積層し、各層間はウレタン樹脂系接着剤で接合する。
上記で作製された土間用床材10を
図8に示すように土間下地20上の壁以外の領域に敷設する。この場合、必要に応じて、土間用床材を適当な形状及び大きさとなるように適宜裁断する。土間用床材10と土間下地とは、ウレタン樹脂系接着剤を用いて互いに接着・固定することもできる。
次いで、土間用床材10の両端面と壁21とのコーナー部に市販の水系ポリウレタン系シーリング剤により止水処理を実施することもできる。その後、止水処理部の目隠し等のために巾木23を壁21に取り付ける。取り付け位置は、土間用床材10の樹脂含有層13の表面から約1〜10mmの範囲内の高さに巾木23の下面が位置するようにすれば良い。
このように、本発明の土間用床材の使用により、従来では大工及び床職人による施工されていた2つの工程を1つの工程で比較的短時間で完了することが可能となる。
【0093】
実施例2
図10に示す土間構造を形成する場合の施工例を示す。まず、土間用床材として、
図3に示すような構造の積層体を作製する。本実施例では、緩衝材層11の材料として市販の塩化ビニル系樹脂発泡材シート(大きさ91cm×135cm、厚み1.3mm)を用い、木質材層として市販のMDF(大きさ91cm×135cm、厚み4mm)を用い、樹脂含有層として市販の塩化ビニル系樹脂シート(大きさ91cm×115cm、厚み2.5mm)を用いる。これらを
図3に示すような順で積層し、各層間はウレタン樹脂系接着剤で接合する。この場合、
図4に示すように、木質材層12の両端が露出するように配置し、その露出面12a,12bを形成する。上記で作製された土間用床材10を
図10に示すように土間下地20上に敷設する。この場合、土間用床材10と土間下地20とは、ウレタン樹脂系接着剤を用いて接着して互いに固定し、また土間用床材10の端部に釘を打ちつけて土間下地20に固定することもできる。
次いで、前記露出面12a,12bの上面に壁材21を垂直に立てて配置し、固定具により固定する。このとき、土間用床材10の両端面と壁21とのコーナー部に市販の水系ポリウレタン系シーリング剤により止水処理を実施することもできる。その後、止水処理部の目隠し等のために巾木23を壁21に取り付ける。取り付け位置は、土間用床材10の樹脂含有層13の表面から約1〜10mmの範囲内の高さに巾木23の下面が位置するようにすれば良い。
このように、本発明の土間用床材を用いることにより、従来では大工及び床職人による施工されていた2つの工程を1つの工程で比較的短時間で完了することが可能となる。
【0094】
実施例3
図11に示す土間構造を形成する場合の施工例を示す。まず、土間用床材として、
図1に示すような構造の積層体を作製する。本実施例では、緩衝材層11の材料として市販の塩化ビニル系樹脂発泡材シート(大きさ91cm×135cm、厚み1.3mm)を用い、木質材層として市販のMDF(大きさ91cm×135cm、厚み4mm)を用い、樹脂含有層として市販の塩化ビニル系樹脂シート(大きさ91cm×135cm、厚み2.5mm)を用いる。これらを
図1に示すような順で積層し、各層間はウレタン樹脂系接着剤で接合する。
上記で作製された土間用床材10を
図11に示すように土間下地上に敷設する。このとき土間用床材10と土間下地20とは、ウレタン樹脂系接着剤を用いて接着し、また土間用床材10の端部に釘33を打つことにより土間用床材10を土間下地20に固定することもできる。
その後、土間用床材の樹脂含有層13の上面の両端部において、上記固定に釘33を使用する場合には、その釘頭が隠れるように壁21を設置する。
次いで、土間用床材10の両端面と壁21とのコーナー部に市販の水系ポリウレタン系シーリング剤により止水処理を実施することもできる。その後、止水処理部の目隠し等のために巾木23を壁21に取り付ける。取り付け位置は、土間用床材10の樹脂含有層13の表面から約1〜10mmの範囲内の高さに巾木23の下面が位置するように設定すれば良い。
このように、本発明によれば、従来では大工及び床職人による施工されていた2つの工程を1つの工程で比較的短時間で完了することが可能となる。