(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記挙動検出部は、前記車両を遠隔制御不能な事態が発生した場合に前記車両に対して人がとる身体的な挙動を検出することを特徴とする請求項1に記載の車両制御システム。
前記挙動検出部は、前記車両のボディに対する人の接触、及び接近のうちの少なくともいずれかの動作を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の車両制御システムを適用した遠隔駐車システム1の構成を示すブロック図である。
遠隔駐車システム1は、携帯端末11を用いた遠隔操作により、対象車両(以下、車両Sと表記する)の駐車(車庫入れを含む)・出庫を可能にするシステムである。この遠隔駐車システム1は、ユーザーが携帯する携帯端末11及びインテリジェントキー12と、車両Sに設けられた車載装置13と、車両Sに設けられたセンサー群14とを備えている。ユーザーは、遠隔駐車システム1の使用が許可された者であり、例えば車両Sの所有者である。
【0018】
車両Sは、自動車等の任意の車両であり、パワーユニット制御部22と、ステアリング制御部23と、ブレーキ制御部24と、電装部品制御部25とを備えている。
パワーユニット制御部22は、車両Sのパワーユニットを制御して車両Sの前進、後進を制御する。例えば、車両Sがエンジン(内燃機関)の駆動力で走行する車両の場合、パワーユニット制御部22は、電子スロットル装置、燃料噴射装置及び変速制御装置等を制御することによって、車両Sの前進、後進を制御する。なお、車両Sがモーターの駆動力で走行する車両の場合、パワーユニット制御部22は、モーター制御回路を制御することによって、車両Sの前進、後進を制御する。
【0019】
ステアリング制御部23は、車両Sが備えるステアリング装置(例えば電動ステアリング装置)を制御することによって、車両Sの進行方向を制御する。また、ブレーキ制御部24は、車両Sのブレーキ装置を制御することによって、車両Sの制動力(制動停止を含む)を制御する。電装部品制御部25は、車両Sが備える電装部品を制御することによって、例えば、後述の
図2に示すドア26、ボンネット27及びトランクリッド28の施錠・開錠等を制御する。
【0020】
携帯端末11は、ユーザーが携帯する情報処理装置であり、車載装置13と無線通信する通信機能、ユーザーから遠隔操作指示を入力する指示入力機能、及び各種の情報をユーザーに報知する報知機能等を備えている。
例えば、携帯端末11は、この遠隔駐車システム1に対応するアプリケーションブログラムがインストールされたスマートフォンである。携帯端末11は、アプリケーションブログラムを実行することによって、携帯端末11が有する表示画面に、ユーザーから遠隔操作等の指示を受け付ける画像を表示する。また、携帯端末11は、携帯端末11が有するタッチパネルを介してユーザーから遠隔操作等の指示を入力する。
【0021】
さらに、携帯端末11は、車載装置13と無線通信することによって、遠隔操作の指示を示す信号を車載装置13に送信したり、車載装置13から送信された情報を受信し、遠隔操作に供する各種の情報を表示したりする。なお、携帯端末11は、スマートフォンに限定されず、タブレット型コンピューター等の他の装置を広く適用可能である。
【0022】
インテリジェントキー12は、車載装置13と無線通信することによって、車両Sのドア26(
図2)の施錠、開錠、エンジン始動等を可能にする。例えば、車載装置13は、インテリジェントキー12が通信範囲内に在圏する場合、車両Sのドア26の施錠、開錠、パワーユニットの始動等を許可し、在圏しない場合、車両Sのドア26等の施錠等を禁止する。このインテリジェントキー12に関する構成は、公知のインテリジェントキーシステムの構成を広く適用可能である。
なお、携帯端末11と車載装置13との間、及びインテリジェントキー12と車載装置13との間の無線通信はいわゆる近距離無線通信が好ましい。
【0023】
車載装置13は、ECU(Electronic Control Unit)であり、メインプロセッサー、ROM、RAM、及び通信モジュール等のデバイスを有するコンピューターで構成される。車載装置13は、メインプロセッサーがROMに記憶される制御プログラムを実行することにより、通信制御部41、センサー制御部42、及び車両制御部43として機能する。
【0024】
通信制御部41は、携帯端末11と車両制御部43との間の通信を制御する。通信制御部41は、例えば、携帯端末11からの遠隔操作の指示を示す信号を受信し、受信した指示を車両制御部43に出力する。また、通信制御部41は、携帯端末11に表示又は報知させる情報等を携帯端末11に送信することにより、携帯端末11に各種の情報を表示、又は報知させる。また、通信制御部41は、携帯端末11、及びインテリジェントキー12から受信電界強度を示す情報を受信し、この情報に基づいて、携帯端末11、及びインテリジェントキー12が所定の範囲内か否かを監視し、監視結果を車両制御部43等に出力することもできる。
【0025】
センサー制御部42は、センサー群14によって検出される情報に基づいて各種の処理を行う。また、センサー制御部42は、センサー群14によって検出される情報に基づき、車両Sに対する人(ユーザー)の挙動を検出する検出処理を行う。
検出対象の挙動は、車両Sを遠隔制御不能な事態が発生した場合に、車両Sに対して人(ユーザー)がとる可能性が高い身体的な挙動であり、本実施形態では、ユーザーが車両Sに接近し、車両Sを叩く、又は引っ張る、といった動作である。センサー制御部42が行う各種の処理は後述する。
【0026】
車両Sを遠隔制御不能な事態が発生する場合とは、例えば、携帯端末11のタッチパネルにクラックが入り、一部の領域でタッチパネルが正常に動作しない場合や、各種のソフトウェアの関係性により通信等の動作に不具合が生じている場合である。
【0027】
車両制御部43は、携帯端末11からの遠隔操作の指示に基づいて、パワーユニット制御部22、ステアリング制御部23、及びブレーキ制御部24を選択的に制御することにより、車両Sの遠隔制御を行う。
例えば、車両制御部43は、遠隔操作の指示として、駐車位置への駐車指示を入力した場合、車両Sを駐車位置へ走行させるように、パワーユニット制御部22と、ステアリング制御部23と、ブレーキ制御部24とを制御する。なお、駐車位置は、携帯端末11の操作によってユーザーが指定した位置でもよいし、センサー制御部42が、後述する画像センサー33によって取得した車両S周辺の画像から画像認識によって検出した位置でもよい。
【0028】
また、車両制御部43は、遠隔操作の指示として、駐車位置からの出庫指示を入力した場合、車両Sを出庫させるべく、パワーユニット制御部22、ステアリング制御部23、及びブレーキ制御部24を選択的に制御する。
なお、遠隔制御中は、センサー制御部42によって車両Sの周囲に障害物がないか否かが監視され、車両制御部43は、障害物を避けるように車両Sを走行させるか、障害物との接触を避けるように車両Sを停止制御する。車両Sの遠隔制御には公知の制御を広く適用可能である。
【0029】
センサー群14について説明する。センサー群14は、車両Sの状況を検出するセンサーである。このセンサー群14は、車両Sの動きを検出する動き検出用センサー(本構成では、ジャイロセンサー31及び加速度センサー32)を備える。また、センサー群14は、車両Sのボディ・周辺に関する情報を検出するボディ・周辺検出用センサー(本構成では、画像センサー33、距離センサー34、振動センサー35、及び圧力センサー36)を備える。各センサー31〜36の検出情報はセンサー制御部42に入力される。
ここで、車両Sのボディとは、車両Sの外観に露出する部分であり、車体に限定されず、外装部品等の車体に装着される装着物(ドア26、ボンネット27及びトランクリッド28等)を含んでいる。
【0030】
ジャイロセンサー31は、車両Sの角速度を検出することにより、車両Sの進行方向等を特定可能にする。加速度センサー32は、車両Sの加速度を検出することにより、車両Sの加速度、進行方向等を特定可能にする。センサー制御部42は、遠隔制御により車両Sを駐車位置、又は出庫位置へ走行させる場合に、ジャイロセンサー31、及び加速度センサー32の検出情報に基づいて、公知の手法により車両Sの進行方向、及び移動距離等を検出する。なお、車速については、センサー制御部42が車両Sが備える車速センサーからの車速パルスを取得し、この車速パルスから車速を検出してもよい。
【0031】
図2は車両Sの上面視における画像センサー33、距離センサー34、振動センサー35、及び圧力センサー36の配置を示す図である。また、
図3は車両Sの側面視における振動センサー35、及び圧力センサー36の配置を示す図である。
図2に示すように、画像センサー33は、車両Sの前後左右の各々に配置され、車両Sの前方、左右方向、及び後方の画像を各々取得する。画像センサー33は、例えばCMOSイメージセンサーである。
【0032】
センサー制御部42は、画像センサー33によって取得された画像を画像認識することによって、車両Sに対して接近する検出対象物(以下、「接近物」と適宜に表記する)があるか否かを検出する。なお、接近物は人を含む。画像認識は、公知の技術を適用することができる。
【0033】
また、センサー制御部42は、画像認識により、接近物が接近する速度(以下、「接近速度」と言う)を検出したり、接近物がドア26、ボンネット27、トランクリッド28及びフロントグリル29のいずれかの近傍に位置するか否かを検出したりすることができる。なお、一台の画像センサー33で接近速度を検出する場合は、接近物が徐々に拡大して撮像される画像から、時間当たりの対象物(人物)の拡大度合いを特定し、特定した値に基づき接近速度を算出する。また、画像センサー33にステレオカメラを適用した場合、三角法の原理を利用して接近物との距離を測定し、距離の変化から速度を算出する。なお、接近速度は、車両Sに対する相対速度でもよいし、車速を考慮した絶対速度でもよい。
【0034】
距離センサー34は、車両Sの前部及び後部に、左右に間隔を空けて配置され、車両Sの前部及び後部の周辺に存在する検出対象物(接近物を含む)との間の距離を検出する。距離センサー34は、超音波センサーを有する非接触型センサーであり、超音波の発信から受信までに要した時間等に基づき検出対象物との間の距離を検出する。なお、超音波センサーに限定する必要はなく、レーザーセンサー又はミリ波センサー等を利用して非接触型の距離センサーを広く適用可能である。
【0035】
センサー制御部42は、距離センサー34の検出情報に基づき、車両Sに対して接近する接近物があるか否かを検出する。なお、超音波等を用いた距離センサー34は、画像センサー33と比べて検出範囲が相対的に狭いので、距離センサー34によって車両Sに最も近接する位置に検出対象物が存在する場合(反射強度が最大に相当する範囲の場合)に、接近物があると判定してもよい。
【0036】
また、センサー制御部42は、距離センサー34の検出情報に基づき、接近物の接近速度を検出したり、接近物がドア26、ボンネット27、トランクリッド28及びフロントグリル29のいずれかの近傍に位置するか否かを検出したりすることができる。また、センサー制御部42は、距離センサー34の検出情報に基づき、車両Sの進行方向(走行経路)に検出対象物が存在する場合も、その旨を車両制御部43に出力する。
【0037】
図2及び
図3に示すように、振動センサー35は、車両Sの前部を上方から覆うボンネット27の裏面と、車両Sの後上部を覆うトランクリッド28の裏面とに左右に間隔を空けて設けられ、車両S(ボディに相当)に対する振動を検出する。これによって、振動センサー35は、人がボンネット27又はトランクリッド28を叩く挙動(接触動作)をした場合に生じる上下振動を検出する。この振動センサー35は、圧電素子を有する接触型センサーであり、圧電効果を利用して振動を検出する。
【0038】
センサー制御部42は、振動センサー35の検出情報に基づき、人がボンネット27又はトランクリッド28を叩く挙動をしたか否かを検出する。この場合、この挙動を高精度に検出できるように、振動センサー35及びセンサー制御部42の少なくともいずれかの感度や測定範囲を設定しておくことが好ましい。
【0039】
図2に示すように、振動センサー35は、左右のドア26にも設けられ、人が車外からドア26を叩く挙動(接触動作)をした場合に生じる振動を検出する。センサー制御部42は、ドア26に設けられた振動センサー35の検出情報に基づき、人がドア26を叩く挙動をしたか否かを検出する。この場合も、人がドア26を叩く挙動をしたことを高精度に検出できるように、振動センサー35及びセンサー制御部42の少なくともいずれかの感度や測定範囲を設定しておくことが好ましい。
【0040】
図2及び
図3に示すように、圧力センサー36は、車両Sの前部を前方から覆うフロントグリル29と、車両Sの後上部を覆うトランクリッド28とに左右に間隔を空けて設けられ、車両Sに対する圧力を検出する。
図3に示すように、フロントグリル29側の圧力センサー36は、ユーザーがフロントグリル29を前方に引っ張る挙動を検出できるように、フロントグリル29の裏側(ユーザーの手が引っ掛かる場所)に設けられる。また、トランクリッド28側の圧力センサー36は、ユーザーがトランクリッド28を後上方に引っ張る挙動を検出できるように、トランクリッド28後部のユーザーの手が引っ掛かる場所に設けられる。
つまり、圧力センサー36は、人がフロントグリル29又はトランクリッド28を引っ張る挙動(接触動作)をした場合に生じる圧力を検出する。
【0041】
センサー制御部42は、圧力センサー36の検出情報に基づき、人がフロントグリル29又はトランクリッド28を引っ張る挙動をしたか否かを検出する。この場合、この引っ張る挙動を高精度に検出できるように、圧力センサー36及びセンサー制御部42の少なくともいずれかの感度や測定範囲を設定しておくことが好ましい。
【0042】
本構成の車載装置13は、携帯端末11によって車両Sを遠隔制御している場合、センサー制御部42によって、車両Sに対する人(ユーザー)の挙動を検出し、この検出結果に基づいて遠隔制御を強制停止する強制停止制御を行う。
【0043】
図4は強制停止制御のフローチャートである。
携帯端末11によって車両Sを駐車位置に走行させる遠隔制御が開始されると、車載装置13は、センサー制御部42により、車両Sの周辺状況を検出する周辺検出を開始する(ステップS1)。この場合、センサー制御部42は、画像センサー33、及び距離センサー34からの検出情報に基づいて、車両Sに接近する接近物があるか否かを監視するとともに、接近物の接近速度を監視する。
【0044】
この場合、種類が異なる画像センサー33、及び距離センサー34の両方を利用して接近物等を検出するので、一方のセンサーが接近物を検出できない状況(例えば、画像センサー33が適切に画像を取得できない悪天候の状況)でも他方のセンサー(例えば、距離センサー34)により接近物等を検出可能である。なお、距離センサー34の場合、反射強度が最大に相当する範囲の場合に、接近物があると判定してもよい。
【0045】
次に、車載装置13は、センサー制御部42により、車速よりも早い速度で車両Sに接近する接近物が存在するか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2の判定が否定結果の場合(ステップS2;NO)、ステップS2の処理を繰り返し実行する。これにより、車載装置13は、車速よりも早い速度で車両Sに接近する接近物を継続して監視(トラッキングとも称する)する。
【0046】
一方、ステップS2の判定が肯定結果の場合(ステップS2;YES)、車載装置13は、車両制御部43により緊急停止の準備状態に移行する(ステップS3)。車速よりも早い速度で車両Sに接近する接近物を検出するので、ユーザー等が車両Sに接近したことを高精度に検出することができる。
【0047】
なお、画像センサー33の場合、画像認識により、車速よりも早い速度で車両Sに接近する接近物が車両Sの前部又は後部の少なくともいずれかに存在したら、緊急停止の準備状態に移行することが好ましい。また、距離センサー34の場合、車両Sの前部又は後部の少なくともいずれかにおいて、反射強度が最大であれば緊急停止の準備状態に移行することが好ましい。
これにより、例えば、携帯端末11の故障等で車両Sが遠隔制御不能になり、例えば、パニック状態になったユーザーが車両Sのボンネット27又はトランクリッド28に近くに移動した際に、その移動を検出することができる。
【0048】
緊急停止の準備状態とは、後述するステップS4の処理によってセンサー制御部42から緊急停止信号が出力された場合に、車両制御部43が、緊急停止信号をトリガとして車両Sを緊急停止可能な状態である。例えば、車両制御部43は、車両Sのブレーキ装置を迅速かつ適正に作動できるように、ブレーキ用の油圧を高める制御、又は現在の車速に合わせたブレーキ力を演算しておく処理等を実行する。
【0049】
次いで、車載装置13は、センサー制御部42により、振動センサー35の検出情報に基づき、車両Sに対する人の接触を検出したか否かを判定する(ステップS4)。この場合、センサー制御部42は、ボンネット27、又はトランクリッド28を人が叩く挙動に対応する振動が検出された場合に、車両Sに対する人の接触を検出したと判定する。
車両Sに対する人の接触を検出した場合(ステップS4;YES)、車載装置13は、センサー制御部42から車両制御部43に緊急停止信号を出力することにより、車両制御部43によって車両Sを緊急停止させる(ステップS5)。これによって、携帯端末11によって車両Sを遠隔制御している場合に、携帯端末11のハードウェア又はソフトウェアの不具合等により操作不可能な事態が発生しても、車両Sを緊急停止させ、車両Sの遠隔制御を停止させることができる。
【0050】
車両Sを緊急停止させた場合、車載装置13は、車両Sを停止位置から移動可能にする制御(以下、出庫受け付け制御と表記する)を開始する(ステップS6)。
なお、ステップS4において、車両Sに対する人の接触が検出されない場合(ステップS4;NO)、車載装置13は、緊急停止の準備状態を解除した後(ステップS7)、ステップS2の処理に移行する。これにより、車両Sに対する人の接触が検出されなければ、ステップS2〜S4、S7の処理が繰り返される。以上により、車両Sを遠隔制御している間、車速よりも早い速度で車両Sに接近する接近物が存在し、且つ、車両Sに対する接触が検出される条件が成立するかが継続的に監視され、条件が成立すると、直ちに車両Sの緊急停止が実行される。
【0051】
なお、強制停止制御の際、車載装置13の通信制御部41によって、車両Sの状態、又は強制停止を実行する旨を携帯端末11宛に送信してもよい。また、不図示の音声出力装置による音声又は不図示の光源によって、車両Sの状態、又は強制停止を実行する旨を車両S近くの人(ユーザー等)に報知する処理を行ってもよい。
【0052】
図5は出庫受け付け制御を示すフローチャートである。なお、出庫受け付け制御の開始時は、車両Sが駐車位置に走行する途中で緊急停止した状態である。このため、車両Sを屋内の駐車場等の壁が存在する場所に駐車させようとしていた場合、或いは、隣の車との隙間が狭いスペースに駐車させようとしていた場合、車両Sのドア26を開けることができない場合がある。出庫受け付け制御は、車両Sのドア26を開けることができない状態でも出庫可能にする制御である。
【0053】
出庫受け付け制御の場合、車両Sの周辺状況を検出する周辺検出が実行される。そして、車載装置13は、センサー制御部42により、車両Sに接近する接近物があるか否かを判定する(ステップS11)。この場合も、ステップS1と同様に、画像センサー33、及び距離センサー34の両方を利用して接近物を検出するので、接近物の検出精度を高めることができる。
このステップS11において、画像センサー33の場合、画像認識により、接近物が車両Sの前部又は後部の少なくともいずれかに存在すれば、接近物があると判定する。また、距離センサー34の場合、車両Sの前部又は後部の少なくともいずれかにおいて、反射強度が最大であれば接近物があると判定する。これにより、車両Sのフロントグリル29、又はトランクリッド28の近くにユーザーが移動した場合に、その挙動を検出することができる。
【0054】
次に、車載装置13は、センサー制御部42により、圧力センサー36の検出情報に基づき、車両Sに対する人の接触を検出したか否かを判定する(ステップS12)。この場合、センサー制御部42は、フロントグリル29を人が前方に引っ張る挙動に対応する圧力、又はトランクリッド28を人が後方に引っ張る挙動に対応する圧力が検出された場合に、車両Sに対する人の接触を検出したと判定する。
車両Sに対する人の接触を検出した場合(ステップS12;YES)、車載装置13は、センサー制御部42により、検出結果を示す信号を車両制御部43に出力し、車両制御部43によって車両Sの出庫制御を実行する(ステップS13)。この出庫制御は、車両Sを停止位置から移動させる制御であり、この制御により、車両Sを少なくともドア26を開けてマニュアル運転ができる位置まで移動させることができる。
【0055】
出庫制御について説明する。車両制御部43は、センサー制御部42によってフロントグリル29を人が前方に引っ張る挙動が検出される場合、車両Sを、引っ張った方向である前方に走行させる。また、車両制御部43は、センサー制御部42によってトランクリッド28を人が後方に引っ張る挙動が検出される場合、車両Sを、引っ張った方向である後方に走行させる。これにより、ユーザーが引っ張った方向に車両Sを移動させることができる。また、この場合の車速は極低速(例えば人の歩行速度と同程度かそれ以下の速度)に制御される。
【0056】
さらに、車載装置13は、センサー制御部42により、距離センサー34によって車両Sのドア26付近にドア26を開閉自在な隙間があるか否かを監視する。そして、車載装置13は、ドア26を開閉自在な隙間が確保されたことを検出すると、車両制御部43により車両Sを停止させる。さらに、車載装置13は、センサー制御部42により、振動センサー35の検出情報に基づき、人がボンネット27又はトランクリッド28を叩く挙動(接触動作)を検出したら、車両制御部43により車両Sを停止させる。これにより、容易に車両Sを停止させることができる。
【0057】
また、出庫制御の際、車載装置13は、不図示の音声出力装置による音声又は不図示の光源によって、出庫制御を実行する旨を車両S近くの人(ユーザー等)に報知することが好ましい。さらに、緊急停止後に、圧力センサー36の検出情報に基づき出庫制御を行った場合、携帯端末11による車両Sの遠隔制御を禁止した状態にすることが好ましい。これにより、出庫制御後に、動作が不安定な携帯端末11を用いて車両Sを遠隔制御する事態を回避できる。以上が出庫制御の内容である。なお、出庫制御についても、公知の制御を広く適用可能である。
【0058】
図5に示すように、ステップS11又はS12の判定が否定結果の場合(ステップS11、S12;NO)、車載装置13は、緊急停止の状態が解除されていなければ(ステップS15;YES)、ステップS2の処理に移行する。
緊急停止の状態が解除される場合とは、例えば、ドア26を開けてユーザーが車両Sに乗車し、車両Sの運転を開始した場合である。
図5に示すフローチャートによれば、緊急停止の状態が解除されない間、接近物が検出され、且つ、車両Sに対する人の接触が検出されるまで、ステップS11、S12の処理が繰り返される。これにより、接近物が存在し、且つ、車両Sに対する接触が検出されると、出庫制御を迅速に開始できる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の遠隔駐車システム1は、外からの指示に応じて車両Sを制御する遠隔制御を行う車両制御部43と、車両Sに対する人の挙動を検出するセンサー制御部42(挙動検出部)とを備える。そして、車両制御部43は、センサー制御部42による人の挙動の検出結果に基づいて遠隔制御を停止する。これにより、車外から指示を行う携帯端末11の不具合発生時に、携帯端末11の操作に依らず、車両Sの遠隔制御を迅速に停止させることができる。
【0060】
しかも、センサー制御部42は、車両Sに接近し、車両Sを叩く、又は引っ張る、といった車両Sを遠隔制御不能な事態が発生した場合に車両Sに対して人がとる身体的な挙動を検出する。これにより、例えば、車両Sが遠隔制御不能になってパニック状態になったユーザーが車両Sを叩く、又は引っ張る挙動を行えば、車両Sの遠隔制御を自動的に停止させることができる。
【0061】
また、センサー制御部42は、車両Sのボディに対する人の接触、及び接近の両方の動作を検出するので、人の身体的な挙動を精度良く検出でき、その挙動によって車両Sの遠隔制御を確実に停止させ易くなる。
なお、車両Sのボディに対する人の接触、及び接近の両方の動作を検出する構成に限定しなくてもよい。例えば、センサー制御部42は、車両Sのボディに対する人の接触、及び接近のうちの少なくともいずれかの動作を検出することによって、人の身体的な挙動を検出してもよい。
【0062】
さらに、センサー制御部42は、上記挙動を非接触で検出する非接触型センサー(第1センサー)である画像センサー33、及び距離センサー34と、上記挙動を検出する接触型センサー(第2センサー)である振動センサー35、及び圧力センサー36とを有する。そして、非接触型センサーと接触型センサーの両方によって上記挙動に対応する所定の挙動が検出された場合に車両Sの遠隔制御を停止する。従って、非接触型センサーと接触型センサーのいずれか一方を使用して人の挙動を検出する場合を比べて、誤検知を抑制でき、制御の信頼性を向上できる。
【0063】
また、画像センサー33、及び距離センサー34を使用するので、近年、車両への装着率が高まっている画像センサー、及び距離センサーを、上記挙動を検出するセンサーに流用できる。また、振動センサー35、及び圧力センサー36は、小型化、かつ相対的に低コストな部品であるため、車両Sに後付けし易い等のメリットがある。
【0064】
また、車両制御部43は、遠隔制御を停止する場合、車両Sを停止した状態に保持するので、車外から指示を行う携帯端末11の不具合発生時に、車両Sの走行を確実に停止させることができる。
なお、遠隔制御を停止する場合、車両Sを即座に停止する態様に限定しなくてもよい。例えば、車両Sがドア26を開けることができない位置であれば、ドア26を開けることが可能な位置(マニュアル運転可能な位置に相当)まで自動走行させてもよい。この場合、自動走行させた後に車両Sを停止させればよい。
【0065】
また、車両制御部43は、車両Sを停止した状態に保持した後、車両Sを停止位置から移動可能にする出庫受け付け制御を行うので、車両Sを、ドア26を開けることができない位置からドア26を開けることが可能な位置へと移動させ易くなる。
また、センサー制御部42によって、フロントグリル29、又はトランクリッド28を人が引っ張る挙動(車両Sを停止位置から移動させるための他の挙動に相当)が検出された場合に、車両Sに対し停止位置から移動させるので、人の直接的かつ直感的な身体的な挙動によって、車両Sを移動させることができる。
【0066】
さらに、フロントグリル29を前方に引っ張る挙動が検出された場合は、車両Sを前方に走行させ、トランクリッド28を後方に引っ張る挙動が検出された場合は、車両Sを後方に走行させるので、その挙動を行う人に判りやすい方向に車両Sを走行させ易くなる。
【0067】
上記の実施形態は、あくまでも本発明の一実施の態様を例示するものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
例えば、上記実施形態では、ユーザー以外がユーザーと同じ挙動を行えば、
図4に示すステップS5の緊急停止、及び
図5のステップS13に示す出庫制御が実行される。ユーザー以外による緊急停止、及び出庫制御を禁止する場合は以下の構成にすればよい。
【0068】
例えば、携帯端末11、又はインテリジェントキー12の受信電界強度の情報に基づいてユーザーが近距離圏内にいるか否かを判断し、ユーザーが近距離圏内にいない場合、
図4に示すステップS5の緊急停止、及び
図5のステップS13に示す出庫制御を実行しないようにしてもよい。また、受信電界強度以外の情報に基づきユーザー認証し、ユーザー認証されない場合は、緊急停止、及び出庫制御を実行しないようにしてもよい。
【0069】
また、上記の実施形態において、センサー群14の配置や数を変更してもよい。例えば、画像センサー33、及び距離センサー34のうちのいずれか一方を省略してもよい。また、車両Sに対する接触を検知するセンサーに、振動センサー35、及び圧力センサー36を用いる場合を説明したが、いずれか一方を省略してもよい。また、車両Sのボディに対する人の接触、又は接近を検知するセンサーは、上記のセンサー33〜36に限定されず、他のセンサーを使用してもよい。
【0070】
図6はフロントグリル29側の圧力センサー36の他の配置例を示す図である。
図6に示すように、圧力センサー36は、ボンネット27の前端裏側に配置される圧力センサー36A、フロントグリル29の裏側(後側)及び下側に配置される圧力センサー36B、36C、及び車両Sの前下部に設けられるフロントバンパー51の裏側及び下部に配置される圧力センサー36D、36Eを備える。また、
図6中、矢印は、各圧力センサー36A〜36Eが圧力を検出する方向を示している。
【0071】
また、
図7はトランクリッド28側の圧力センサー36の他の配置例を示す図である。
図7に示すように、圧力センサー36は、トランクリッド28を開ける際にユーザーが指をかける場所に配置される圧力センサー36F、車両Sの後下部に設けられるリヤバンパー52の裏側及び下部に各々配置される圧力センサー36G、36Hを備える。また、
図7中、矢印は、各圧力センサー36E〜36Gが圧力を検出する方向を示している。また、
図7中、符号53はナンバープレートである。
【0072】
各圧力センサー36A〜36Hは、基本的に外装部品(ボンネット27、フロントグリル29、フロントバンパー51、リヤバンパー52)の内側に取り付けられ、ユーザーが外装部品の各々を引っ張る際に、ユーザーの指が引っ掛かる場所にレイアウトされる。ユーザーが外装部品を引っ張る場合、一定時間以上、指からの力が作用するので、予め定めた時間以上の力が作用した場合に圧力センサー36A〜36Gがアクティブになるように構成してもよい。この構成にすることで、誤検出を抑制し易くなる。
【0073】
また、各圧力センサー36A〜36Hに対応する位置に、指の接触を検出する静電容量センサーを設け、静電容量センサーと圧力センサー36A〜36Cとの組み合わせによって、ユーザーによる引っ張りを検出するようにしてもよい。これによっても、誤検出を抑制でき、検出精度を向上し易くなる。
【0074】
また、
図1に示した機能ブロックのうちの少なくとも一部は、ハードウェアで実現してもよいし、ハードウェアとソフトウェアの協働により実現される構成としてもよく、図に示した通りに独立したハードウェア資源を配置する構成に限定されない。また、実行するプログラムは、不揮発性記憶部、又は他の記憶装置(図示略)に記憶されてもよい。また、外部の装置に記憶されたプログラムを、通信部を介して取得して実行する構成としてもよい。
【0075】
また、
図3、
図4に示したフローチャートの処理単位は、処理を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。処理単位の分割の仕方や名称によって、本願発明が制限されることはない。各装置の処理は、処理内容に応じて、さらに多くの処理単位に分割することもできる。また、1つの処理単位がさらに多くの処理を含むように分割することもできる。また、同様の処理が行えれば、上記のフローチャートの処理順序も、図示した例に限られるものではない。
【0076】
また、上記の実施形態では、車載装置13を制御するための制御プログラムを車載装置13内に予め記憶している。これに限らず、この制御プログラムを、磁気記録媒体、光記録媒体、半導体記録媒体などのコンピューターが読み取り可能な記録媒体に格納し、コンピューターが記録媒体からこの制御プログラムを読み取って実行するようにしてもよい。また、この制御プログラムを、通信ネットワーク(電気通信回線)を介して配信サーバーなどからダウンロードできるようにしてもよい。
【0077】
また、上述の実施形態では、車両Sの少なくとも駐車を可能にする遠隔駐車システム1に本発明を適用する場合を説明したが、駐車に加えて、或いは、駐車に代えて、車両Sの走行等を制御する車両制御システムに本発明を広く適用可能である。