(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弁棒は、少なくとも前記蒸気弁が全開状態であるときに、前記弁棒の外周面のうち前記溝部が形成された部分が、前記ステムリーク流路の入口部分以外の部分に対面する、
請求項1に記載の蒸気弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
蒸気タービンシステムに用いられる蒸気弁の一例について、
図12から
図14を用いて説明する。
図12では、水平設置型の蒸気弁V1について水平面(xy面)に沿った断面を示しており、紙面に直交する方向が鉛直方向zであり、縦方向が、弁棒24の軸24Jに沿った第1水平方向yであり、横方向が、弁棒24の軸24Jに直交する第2水平方向xである。
図13では、
図12において破線で囲った領域Aに対応する断面(xy面)を拡大して示している。
図14では、
図13に示すY1−Y1部分の断面(xz面)を示している。
図12から
図14のそれぞれにおいては、蒸気弁V1が全て閉じられた全閉状態である場合の様子を模式的に図示している。蒸気弁V1を構成する各部について順次説明する。
【0008】
蒸気弁V1において、ケーシング21は、内部空間21C(弁室)を含み、入口21Aと出口21Bとが内部空間21Cに連通するように設けられている。ケーシング21は、蒸気弁V1が開けられたときには、蒸気Fが入口21Aから内部空間21Cに流入し、その蒸気Fが出口21Bから外部(蒸気タービンなど)へ流出する。ケーシング21において、入口21Aは、第2水平方向xの一方の側(
図12では左側)に形成されており、入口21Aが設けられた管状の流路が第2水平方向xに延在している。出口21Bは、第1水平方向yの一方の側(
図12では下側)に形成されており、出口21Bが設けられた管状の流路が第1水平方向yに延在している。また、ケーシング21は、第1水平方向yにおいて出口21Bが設けられた一方の側に対して反対側に位置する他方の側(
図12では上側)に、開口21Kが形成されている。
【0009】
弁蓋22は、ケーシング21の開口21Kを塞ぐように、ケーシング21に設置されている。ここでは、弁蓋22は、貫通孔22Kが中央部分に形成されている。弁蓋22の貫通孔22Kは、第1水平方向yに延在しており、蒸気弁V1の外部と内部空間21Cとの間を連通するように貫通している。貫通孔22Kの内部には、ブッシュ221が設置されている。ブッシュ221は、たとえば、円筒状の管状体であって、弁棒24の軸24Jに対して同軸になるように弁蓋22に嵌合されている。
【0010】
スリーブ23は、ケーシング21の内部空間21Cに収容されている。スリーブ23は、たとえば、円筒状の管状体であって、弁棒24の軸24Jと同軸に配置されている。スリーブ23は、一端部(図では上端部)が弁蓋22に固定されている。スリーブ23は、弁体25を内部に収容しており、弁体25の移動を案内する弁体案内部として機能する。
【0011】
弁棒24は、ブッシュ221を介して弁蓋22の貫通孔22Kを貫通している。弁棒24は、たとえば、円柱状の棒状体であって、軸24Jが水平面(xy面)に沿っている。弁棒24は、ブッシュ221の内部において第1水平方向yに沿って摺動するように、ブッシュ221に案内される。具体的には、
図13に示すように、弁棒24は、第1弁棒部241と、第1弁棒部241よりも径が大きい第2弁棒部242とを有しており、第1弁棒部241がブッシュ221の内部に収容される部分であり、第2弁棒部241がブッシュ221の外部に位置している。
【0012】
弁体25は、ケーシング21の内部空間21Cにおいて弁棒24に連結されている。弁体25は、たとえば、円筒状の管状体である部分を含み、その管状体である部分が弁棒24と同軸になるように配置されている。弁体25は、第1水平方向yにおいて一方の側に位置する部分(図では上側部分)が、スリーブ23の内部に収容されており、その部分の外径は、スリーブ23の内径と同じである。また、弁体25は、第1水平方向yにおいて他方の側に位置する端部(図では下側部分)が、曲面になっている。弁体25は、スリーブ23の内部において、弁棒24の一端に位置する第2弁棒部241に連結されている。弁体25は、弁棒24と共に軸24Jに沿って移動する。弁体25は、たとえば、ボルトなどの締結部材251を用いて、弁棒24に連結されている。弁体25は、スリーブ23の内部において第1水平方向yに摺動する。つまり、弁体25は、スリーブ23によってガイドされて、第1水平方向yを移動する。
【0013】
弁座26は、ケーシング21の内部空間21Cに収容されている。弁座26は、たとえば、リング形状であって、弁棒24と同軸になるように配置されている。弁座26は、第1水平方向yにおいて弁体25が弁棒24と共に移動することによって蒸気弁V1が全閉状態になったときに、弁体25が接触する。
【0014】
ストレーナ27は、ケーシング21の内部空間21Cに収容されている。ストレーナ27は、たとえば、多孔板や網状体であって、弁蓋22と弁座26との間において、弁体25およびスリーブ23の周りを囲うように配置されている。ストレーナ27は、弁棒24と同軸になるように設けられている。ストレーナ27は、蒸気Fに混入した異物(図示なし)が内部空間21Cに流入することを防止するために設けられている。
【0015】
蒸気弁V1は、更に、ケーシング21の外部において、弁棒24が駆動装置28に連結されており、駆動装置28が弁棒24を第1水平方向yに移動させる。これにより、蒸気弁V1では、弁体25と弁座26との間の距離が変動して開度が調整され、蒸気弁V1を流れる蒸気Fの流量が制御される。図示を省略しているが、駆動装置28は、たとえば、油筒とバネとを備えており、油圧の作用によって蒸気弁V1を開け、油圧およびバネ力の作用によって蒸気弁V1を閉めるように構成されている。
【0016】
詳細に説明すると、蒸気弁V1を開けるときには、ケーシング21の内部空間21Cにおいて、弁体25が弁座26から離れる。これにより、ケーシング21の入口21Aに流入した蒸気Fが、内部空間21Cを流れて、ケーシング21の出口21Bから排出される量が増加する。この一方で、蒸気弁V1を閉じるときには、ケーシング21の内部空間21Cにおいて、弁体25が弁座26に近づく。これにより、ケーシング21の入口21Aに流入した蒸気Fが、内部空間21Cを流れて、ケーシング21の出口21Bから排出される量が減少する。そして、蒸気弁V1を全て閉じた全閉状態にするときには、弁体25が弁座26に接触して、その蒸気Fの流れが遮断される。蒸気弁V1では、たとえば、制御装置(図示省略)が出力した制御信号に応じて駆動装置28が弁体25と弁座26との間の距離を調節することによって、蒸気弁V1を流れる蒸気Fの流量が制御される。
【0017】
蒸気弁V1において、弁棒24およびブッシュ221のそれぞれは、蒸気弁V1が全て開けられた全開状態であるときに、互いに接触するバックシート面S24,S221が設けられている。弁棒24のバックシート面S24、および、ブッシュ221のバックシート面S221は、弁棒24の軸24Jに対して傾斜している。具体的には、弁棒24は、第1弁棒部241と第2弁棒部242との間に弁体25へ向かうに伴って外径が大きくなる部分を含み、その部分の外周面がバックシート面S24として形成されている。また、ブッシュ221は、弁体25側の一端において、弁体25へ向かうに伴って内径が大きくなる部分を含み、その部分の内周面がバックシート面S221として形成されている。蒸気弁V1が全開状態であるとき、弁棒24のバックシート面S24と、ブッシュ221のバックシート面S221とが互いに接触するので、弁棒24とブッシュ221との間の間隙から蒸気Fが漏れることを抑制可能である。
【0018】
なお、弁棒24とブッシュ221との間には、狭い間隙が介在している。つまり、ブッシュ221の内周面の半径R0よりも、弁棒24において第1弁棒部241の外周面の半径R1の方が小さい。ブッシュ221の内周面と弁棒24の外周面との間に介在する間隙の幅G(G=R0−R1)は、弁棒24の線膨張率とブッシュ221の線膨張率との差、酸化物スケールの堆積、および、弁棒24とブッシュ221との間から蒸気が漏れることによる効率の低下などを考慮し、弁棒24がブッシュ221の内部で円滑に摺動するように、適宜、設定されている。
【0019】
蒸気弁V1において、ケーシング21の内部空間21Cに導入された高圧の蒸気Fは、弁棒24とブッシュ221との間の間隙からステムリーク成分として漏洩する。このため、そのステムリーク成分が弁棒24とブッシュ221との間の間隙を介して駆動装置28側へ漏れることを抑制するために、蒸気弁V1にはステムリーク流路31およびステムリーク配管41が設けられている。
【0020】
ここでは、ステムリーク流路31は、第1ステムリーク流路311と第2ステムリーク流路312とを有し、第1ステムリーク流路311がブッシュ221に形成されており、第2ステムリーク流路312が弁蓋22に形成されている。第1ステムリーク流路311は、ブッシュ221の内周面側と外周面側とが連通するように、弁棒24の径方向に沿ってブッシュ221を直線状に貫通している。そして、第2ステムリーク流路312は、弁蓋22に形成された貫通孔22Kと蒸気弁V1の外部とが連通するように、弁棒24の径方向に沿って弁蓋22を直線状に貫通している。第2ステムリーク流路312において弁蓋22の貫通孔22K側には、周方向の全体を囲った環状空間312aが形成されている。ステムリーク流路31において、ステムリーク成分は、弁棒24とブッシュ221との間の間隙に流入した後に、第1ステムリーク流路311を流れ、環状空間312aから第2ステムリーク流路312を流れる。
【0021】
ステムリーク配管41は、蒸気弁V1の外部においてステムリーク流路31に接続されている。ステムリーク配管41は、ステムリーク配管弁V41が設けられており、ステムリーク成分がステムリーク流路31からステムリーク配管41に流入し、ステムリーク配管弁V41を経由して、ステムリーク配管弁V41の外部へ流出する。たとえば、ステムリーク成分は、蒸気タービンシステムの低圧系統(図示省略)や復水器(図示省略)へステムリーク配管41から導入されて、回収される。
【0022】
ところで、蒸気弁V1が全閉状態であるときには、蒸気弁V1の内部空間21Cのうち弁体25が弁座26に接触した部分よりも出口21B側(下流側)に位置する部分は、たとえば、真空状態であって、圧力が低い状態である。これに対して、蒸気弁V1の内部空間21Cのうち弁体25が弁座26に接触した部分よりも入口21A側(上流側)に位置する部分は、ボイラから供給される高圧の蒸気Fによって、圧力が高い状態である。弁体25は、出口21B側の圧力と入口21A側の圧力との差に起因して、弁座26に押し付けられる閉鎖力が作用する。このため、全閉状態の蒸気弁V1について開動作を開始するためには、駆動装置28は、弁体25に作用する閉鎖力よりも大きな駆動力で弁体25を駆動させることが必要になる。その結果、大きな駆動力を得るために、たとえば、駆動装置28の大型化が必要になり、コストが上昇する場合がある。
【0023】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、弁体を駆動させるのに必要な駆動力を低減することが可能な蒸気弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
実施形態の蒸気弁は、ケーシングと弁蓋と弁棒と弁体と弁座とを備え、蒸気の流量を調節する。ケーシングは、蒸気が入口から内部空間に流入して出口から流出するように構成されていると共に、その内部空間に連通する開口が形成されている。弁蓋は、開口を塞ぐようにケーシングに設置されている。弁棒は、ブッシュを介して弁蓋を貫通している。弁体は、内部空間において弁棒に連結されている。弁座は、内部空間に設置されており、蒸気弁が全閉状態であるときに弁体が接触する。ここで、弁蓋およびブッシュには、蒸気が内部空間から弁棒とブッシュとの間をステムリーク成分として通過した後に、ステムリーク成分が流れるステムリーク流路が形成されている。弁棒は、溝部が外周面に形成されており、蒸気弁が全閉状態であるときに、弁棒の外周面のうち溝部が形成された部分と、ステムリーク流路の入口部分とが弁棒の径方向において対面する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る蒸気弁について、
図1および
図2を用いて説明する。
図1では、
図13と同様な部分の断面(xy面)を拡大して示しており、
図2では、
図1に示すY1−Y1部分の断面(xz面)を示している。
図1および
図2では、蒸気弁が全閉状態である場合の様子を図示している。
【0027】
本実施形態の蒸気弁V1は、
図1および
図2に示すように、弁棒24を除いた各部が、上記した関連技術の場合(X1参照)と同様に構成されている。このため、本実施形態の説明において上記の関連技術と重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0028】
本実施形態において、弁棒24は、上記の関連技術の場合と異なり、第1弁棒部241の外周面に溝部245が形成されている。溝部245は、弁棒24の軸方向で規定される幅が、弁棒24の径方向において内側から外側に向かうに伴って広くなるように形成されている。
【0029】
ここでは、溝部245は、第1弁棒部241の外周面において周方向の全体をリング状に囲うように形成されている。第1弁棒部241において溝部245が形成された部分(小径部)の半径R2は、他の部分の半径R1よりも小さい(R2<R1)。換言すると、弁棒24の第1弁棒部241において軸24Jから外周面までの距離は、溝部245が形成された部分の距離(R2)の方が、溝部245が形成された部分以外の部分の距離(R1)よりも短くなっている。
【0030】
上記の蒸気弁V1を全閉状態から開けるときの開動作に関して、
図1および
図2と共に、
図3および
図4を用いて説明する。
図3および
図4では、蒸気弁の開動作が開始された後であって蒸気弁V1が全開状態にされる前の状態を図示している。
図3は、
図1と同様な部分を示し、
図4は、
図2と同様な部分を示している。
【0031】
図1および
図2に示したように、蒸気弁V1が全閉状態であるときには、弁棒24の外周面のうち溝部245が形成された部分と、ステムリーク流路31の入口部分とが弁棒24の径方向(
図1および
図2では横方向)において対面している。具体的には、弁棒24の第1弁棒部241のうち溝部245が形成された部分は、ステムリーク流路31のうちブッシュ221に形成された第1ステムリーク流路311に対して、弁棒24の径方向で対面している。これにより、ブッシュ221の内周面と弁棒24の外周面との間の間隙は、ステムリーク流路31の入口部分よりも弁体25側(
図1では下側,
図12参照)の部分が、溝部245によって広い幅GTになっている(GT=R0−R2)。
【0032】
このため、全閉状態である蒸気弁V1について開動作の開始を行う際には、高圧の蒸気Fが、溝部245によって広い幅GTになった間隙を経由して、ケーシング21の内部空間21Cからステムリーク成分としてステムリーク流路31へ流れる。本実施形態では、溝部245が弁棒24の周方向の全体に渡るようにリング状に形成されているので、溝部245によって広い幅GTになったリング状の間隙にステムリーク成分が流入した後に、そのステムリーク成分がステムリーク流路31を介して外部へ排出される。これに伴い、弁体25よりも入口21A側の圧力が減少するので、弁体25よりも出口21B側の圧力と弁体25よりも入口21A側の圧力との差が小さくなる。
【0033】
その結果、弁体25が弁座26に押し付けられる閉鎖力が減少する。したがって、本実施形態では、蒸気弁V1について開動作の開始を行う際に弁体25を駆動させるのに必要な駆動力を低減することができる。
【0034】
図3および
図4に示すように、蒸気弁V1について開動作が開始された後には、弁棒24の外周面のうち溝部245が形成された部分は、ステムリーク流路31の入口部分以外の部分に対面する。ステムリーク流路31の入口部分は、弁棒24の外周面のうち溝部245が形成された部分よりも弁体25側(
図3では下側,
図12参照)の部分に対面している。具体的には、弁棒24の第1弁棒部241のうち溝部245が形成された部分は、ステムリーク流路31のうちブッシュ221に形成された第1ステムリーク流路311に対して、弁棒24の径方向で対面しない。第1弁棒部241のうち溝部245が形成された部分は、ブッシュ221の内周面のうち第1ステムリーク流路311よりも駆動装置28側に位置する部分(
図3では上側,
図12参照)に対して、弁棒24の径方向で対面する。そして、第1弁棒部241のうち溝部245が形成された部分よりも弁体25側に位置する部分が、第1ステムリーク流路311に対面する。これにより、ブッシュ221の内周面と弁棒24の外周面との間の間隙は、ステムリーク流路31の入口部分よりも弁体25側(下側)の部分が、狭い幅Gになる(G=R0−R1)。
【0035】
このため、蒸気弁V1が全閉状態から開けられて全開状態になる前の状態においては、高圧の蒸気Fは、溝部245によって広い幅GTになった間隙ではなく、狭い幅Gの間隙を経由して、ケーシング21の内部空間21Cからステムリーク成分としてステムリーク流路31へ流れる。
【0036】
その結果、ステムリーク成分の流量は、蒸気弁V1が全閉状態であるときの流量よりも少なく、上記した関連技術の場合と同様になる。したがって、十分に高いタービン効率を実現することができる。
【0037】
図示を省略しているが、蒸気弁V1が全開状態で場合には、
図3および
図4から判るように、弁棒24の外周面のうち溝部245が形成された部分が、ステムリーク流路31の入口部分以外の部分に対面する。つまり、蒸気弁V1の開度が0%を超えた所定値から全開状態の値(100%)になるまでの間、ブッシュ221の内周面と弁棒24の外周面との間の間隙が、全閉状態の場合の幅GTよりも狭い幅Gになる(G<GT)。
【0038】
さらに、蒸気弁V1が全開状態であるときには、関連技術の場合と同様に、弁棒24のバックシート面S24と、ブッシュ221のバックシート面S221とが互いに接触する。このため、関連技術の場合と同様に、弁棒24とブッシュ221との間の間隙から蒸気Fが漏れることが抑制されるので、十分に高いタービン効率を実現することができる。
【0039】
上記においては、蒸気弁V1に関して、弁棒24の軸24Jが第1水平方向yに沿った水平設置型である場合について説明したが、これに限らない。弁棒24の軸24Jが鉛直方向zに沿うように設置される場合においても、上記と同様に、弁棒24に溝部245を形成してもよい。この場合においても、蒸気弁V1について開動作の開始を行う際に弁体25を駆動させるのに必要な駆動力を低減することができる。
【0040】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る蒸気弁について、
図5および
図6を用いて説明する。
図5では、
図1と同様な部分の断面(xy面)を示しており、
図6では、
図5に示すY1−Y1部分の断面(xz面)を示している。
図5および
図6では、蒸気弁が全閉状態である場合の様子を図示している。
【0041】
本実施形態の蒸気弁V1は、
図5および
図6に示すように、一部の構成が上記した第1実施形態の場合と異なっている。このため、本実施形態の説明では、上記実施形態と重複する事項について、適宜、説明を省略する。
【0042】
本実施形態の蒸気弁V1において、弁棒24は、第1実施形態の場合と同様に、第1弁棒部241の外周面に溝部245Bが形成されている。しかし、本実施形態では、溝部245Bは、第1実施形態の場合と異なり、第1弁棒部241の外周面において周方向の全体をリング状に囲っていない。本実施形態の溝部245Bは、第1弁棒部241の外周面において周方向の一部に形成されている。弁棒24の第1弁棒部241において軸24Jから外周面までの距離は、溝部245Bが形成された部分(溝形成部)の距離(R2)の方が、溝部245Bが形成された部分以外の部分の距離(R1)よりも短くなっている(R2<R1)。
【0043】
本実施形態では、弁棒24の他に、ステムリーク流路31の構成が第1実施形態の場合と異なっている。本実施形態において、ステムリーク流路31を構成する第1ステムリーク流路311は、ブッシュ221の内周面側に周方向の全体を囲った環状空間311aが形成されている。
【0044】
上記の蒸気弁V1を全閉状態から開けるときの開動作に関して説明する。
【0045】
図5および
図6に示したように、蒸気弁V1が全閉状態であるときには、上記の実施形態の場合と同様に、弁棒24の外周面のうち溝部245Bが形成された部分と、ステムリーク流路31の入口部分とが弁棒24の径方向において対面している。これにより、ブッシュ221の内周面と弁棒24の外周面との間の間隙は、ステムリーク流路31の入口部分よりも弁体25側の部分が、溝部245Bによって広い幅GTになっている(GT=R0−R2)。
【0046】
このため、全閉状態である蒸気弁V1について開動作の開始を行う際には、高圧の蒸気Fが、その溝部245Bによって広い幅GTになった間隙を経由して、ケーシング21の内部空間21Cからステムリーク成分としてステムリーク流路31へ流れる。本実施形態では、ステムリーク流路31において、ステムリーク成分は、環状空間311aから第1ステムリーク流路311を流れ、環状空間312aを介して第2ステムリーク流路312を流れた後に、復水器(図示省略)などの外部へ排出される。
【0047】
その結果、本実施形態では、上記の実施形態の場合と同様に、弁体25が弁座26に押し付けられる閉鎖力が減少するので、蒸気弁V1について開動作の開始を行う際に弁体25を駆動させるのに必要な駆動力を低減することができる。
【0048】
図示を省略しているが、本実施形態において蒸気弁V1の開動作が開始された後から蒸気弁V1が全開状態になるまでの間は、弁棒24の外周面のうち溝部245Bが形成された部分が、上記の実施形態の場合と同様に、ステムリーク流路31の入口部分以外の部分に対面する。これにより、ブッシュ221の内周面と弁棒24の外周面との間の間隙は、ステムリーク流路31の入口部分よりも弁体25側(下側)の部分が、狭い幅Gになる(G=R0−R1)。このため、高圧の蒸気Fは、狭い幅Gの間隙を経由して、内部空間21Cからステムリーク成分としてステムリーク流路31へ流れる。
【0049】
その結果、ステムリーク成分の流量は、蒸気弁V1が全閉状態であるときの流量よりも少なく、上記した関連技術の場合と同様になる。したがって、十分に高いタービン効率を実現することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、第1実施形態の場合と異なり、溝部245Bは、第1弁棒部241の外周面において周方向の全体をリング状に囲っておらず、周方向の一部に形成されている。このため、蒸気弁V1の開動作が開始された後にステムリーク成分が漏れる流量について、第1実施形態の場合よりも更に効果的に低減することができる。
【0051】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る蒸気弁について、
図7および
図8を用いて説明する。
図7では、
図1と同様な部分の断面(xy面)を拡大して示しており、
図8では、
図7に示すY1−Y1部分の断面(xz面)を示している。
図7および
図8では、蒸気弁が全閉状態である場合の様子を図示している。
【0052】
本実施形態の蒸気弁V1は、
図7および
図8に示すように、一部の構成が上記した第1実施形態の場合と異なっている。このため、本実施形態の説明においては、上記した実施形態と重複する事項に関して、適宜、省略する。
【0053】
本実施形態の蒸気弁V1は、第1実施形態の場合と異なり、円筒部材41を更に有する。円筒部材41は、円筒状の管状体であって、弁棒24の外周面のうち溝部245が形成された部分を囲うように設置されている。円筒部材41は、弁棒24に対して同軸に設置されおり、溝部245の内部に収容されている。円筒部材41は、弁棒24の外周面のうち溝部245が形成された部分と、ブッシュ221の内周面のうちステムリーク流路31の入口が形成された部分との間に介在している。
【0054】
具体的には、円筒部材41の外周面の半径は、弁棒24の第1弁棒部241において溝部245が形成された部分以外の部分の半径R1と同じであって、ブッシュ221の内周面の半径R0よりも小さい(R1>R0)。そして、円筒部材41の内周面の半径R3は、第1弁棒部241において溝部245が形成された部分の半径R2よりも大きい(R3>R2)。このため、円筒部材41の外周面とブッシュ221の内周面との間に間隙が介在していると共に、円筒部材41の内周面と第1弁棒部241のうち溝部245が形成された部分の外周面との間に間隙が介在している。円筒部材41の内周面と第1弁棒部241の外周面との間に介在する間隙の幅GXは、円筒部材41の外周面とブッシュ221の内周面との間に介在する間隙の幅Gによりも広い(GX=R3−R2,GX>G)。また、円筒部材41は、弁棒24の軸24Jに沿った第1水平方向yにおいては、一端側(図では下端側)に間隙が設けられていると共に、他端側に間隙が設けられている。
【0055】
円筒部材41には、切り欠き部41Kが形成されている。ここでは、蒸気弁V1が全閉状態であるときに、円筒部材41のうち切り欠き部41Kが形成された部分と、ステムリーク流路31の入口部分とが弁棒24の径方向において対面するように構成されている。
【0056】
円筒部材41に関して、
図9を用いて更に詳細に説明する。
図9は、円筒部材41の側面図であって、断面図ではないが、各部材を区別するために、各部材に応じて異なるハッチングを付している。
【0057】
図9に示すように、円筒部材41は、第1の半円筒部品41aと第2の半円筒部品41bとを組み合わせることによって構成されている。円筒部材41において、第1の半円筒部品41aおよび第2の半円筒部品41bのそれぞれは、周方向に突き出るように嵌合部が形成されており、それぞれの嵌合部を嵌合することによって、円筒部材41が構成されている。
【0058】
円筒部材41は、キー411を用いて弁棒24に設置されている。ここでは、円筒部材41においては、一対のキー411が挿入される一対の挿入口(図示省略)が径方向において軸24Jを介して形成されている。そして、第1弁棒部241において溝部245が形成された部分の外周面には、一対のキー溝(図示省略)が径方向において軸24Jを介して形成されている。円筒部材41は、円筒部材41に形成された挿入口にキー411を挿入し、その挿入されたキー411をキー溝にキー411が嵌合させることによって、弁棒24に固定されている。そして、円筒部材41は、円筒部材41を構成する第1の半円筒部品41aに切り欠き部41Kが形成されている。なお、キー411を用いずに、ピンなどの他の固定部品を用いて、円筒部材41の固定を行ってもよい。
【0059】
本実施形態では、円筒部材41の他に、ステムリーク流路31の構成が第1実施形態の場合と異なっている。本実施形態において、ステムリーク流路31を構成する第1ステムリーク流路311は、ブッシュ221の内周面側に周方向の全体を囲った環状空間311aが形成されている(第2実施形態の場合と同様)。
【0060】
上記した蒸気弁V1を全閉状態から開けるときの開動作に関して説明する。
【0061】
図7および
図8に示したように、蒸気弁V1が全閉状態であるときには、円筒部材41のうち切り欠き部41Kが形成された部分とステムリーク流路31の入口部分とが弁棒24の径方向において対面している。その結果、ブッシュ221の内周面と弁棒24の外周面との間において円筒部材41の切り欠き部41Kが介在する部分の間隙は、広い幅GTになっている(GT=R0−R2)。
【0062】
上述したように、円筒部材41と第1弁棒部241のうち溝部245が形成された部分との間に介在する間隙の幅GXは、円筒部材41の外周面とブッシュ221の内周面との間に介在する間隙の幅Gよりも広い(GX>G)。このため、全閉状態である蒸気弁V1について開動作の開始を行う際には、高圧の蒸気Fは、その狭い幅Gの間隙よりも、その広い幅GXの間隙へ多く流入する。
【0063】
そして、その広い幅GXの間隙に流入した高圧の蒸気Fは、溝部245および切り欠き部41Kによって更に広い幅GTになった間隙を介して、ケーシング21の内部空間21Cからステムリーク成分としてステムリーク流路31へ流れる。本実施形態では、ステムリーク成分は、環状空間311aを経由して、第1ステムリーク流路311を流れる。そして、ステムリーク成分は、第1ステムリーク流路311から環状空間312aを介して第2ステムリーク流路312を流れ、復水器(図示省略)などの外部へ排出される。
【0064】
その結果、本実施形態では、上記の実施形態の場合と同様に、弁体25が弁座26に押し付けられる閉鎖力が減少するので、蒸気弁V1について開動作の開始を行う際に弁体25を駆動させるのに必要な駆動力を低減することができる。
【0065】
図示を省略しているが、本実施形態において蒸気弁V1の開動作が開始された後から蒸気弁V1が全開状態になるまでの間は、弁棒24の外周面のうち溝部245が形成された部分が、上記の実施形態の場合と同様に、ステムリーク流路31の入口部分以外の部分に対面する。これにより、ブッシュ221の内周面と弁棒24の外周面との間の間隙は、ステムリーク流路31の入口部分よりも弁体25側(下側)の部分が、狭い幅Gになる(G=R0−R1)。このため、高圧の蒸気Fは、狭い幅Gの間隙を経由して、内部空間21Cからステムリーク成分としてステムリーク流路31へ流れる。
【0066】
その結果、ステムリーク成分の流量は、蒸気弁V1が全閉状態であるときの流量よりも少なく、上記した関連技術の場合と同様になる。したがって、十分に高いタービン効率を実現することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、第1実施形態の場合と異なり、弁棒24の外周面のうち溝部245が形成された部分を囲うように円筒部材41が設置されている。このため、蒸気弁V1の開動作が開始された後にステムリーク成分が漏れる流量について、第1実施形態の場合よりも更に効果的に低減することができる。
【0068】
<第4実施形態>
第4実施形態に係る蒸気弁について、
図10および
図11を用いて説明する。
図10では、
図7と同様な部分の断面(xy面)を拡大して示しており、
図11では、
図10に示すY1−Y1部分の断面(xz面)を示している。
図10および
図11では、蒸気弁が全閉状態である場合の様子を図示している。
【0069】
本実施形態の蒸気弁V1は、
図10および
図11に示すように、一部の構成が上記した第3実施形態の場合と異なっている。このため、本実施形態の説明においては、上記した実施形態と重複する事項に関して、適宜、省略する。
【0070】
本実施形態の蒸気弁V1において、弁棒24は、第3実施形態の場合と同様に、第1弁棒部241の外周面に溝部245Bが形成されている。しかし、本実施形態では、溝部245Bは、第3実施形態の場合と異なり、第1弁棒部241の外周面において周方向の全体をリング状に囲うようには形成されていない。本実施形態の溝部245Bは、第1弁棒部241の外周面において周方向の一部に形成されている。弁棒24の第1弁棒部241において軸24Jから外周面までの距離は、溝部245Bが形成された部分の距離(R2)の方が、溝部245Bが形成された部分以外の部分の距離(R1)よりも短くなっている(R2<R1)。
【0071】
本実施形態において、弁棒24は、更に、円筒部材41が嵌合される嵌合空間245Cが外周面に形成されている。ここでは、嵌合空間245Cは、第1弁棒部241の外周面において周方向の全体をリング状に囲うように形成されている。第1弁棒部241において嵌合空間245Cが形成された部分の半径は、円筒部材41の内周面の半径R3と同じである。弁棒24の第1弁棒部241において軸24Jから外周面までの距離は、溝部245が形成された部分の距離(R2)よりも、円筒部材41の内周面の半径R3の方が長くなっている(R3>R2)。このため、第1弁棒部241の嵌合空間245Cに嵌合された円筒部材41と、第1弁棒部241において溝部245が形成された部分との間には、間隙が介在している。この間隙の幅GXは、円筒部材41の外周面とブッシュ221の内周面との間に介在する間隙の幅Gによりも広い(GX=R3−R2,GX>G)。
【0072】
上記の蒸気弁V1を全閉状態から開けるときの開動作に関して説明する。
【0073】
図10および
図11に示したように、第3実施形態の場合と同様に、円筒部材41と、第1弁棒部241のうち溝部245Bが形成された部分との間に介在する間隙の幅GXは、円筒部材41の外周面とブッシュ221の内周面との間に介在する間隙の幅Gよりも広い(GX>G)。このため、全閉状態である蒸気弁V1について開動作の開始を行う際には、高圧の蒸気Fは、その狭い幅Gの間隙よりも、その広い幅GXの間隙へ多く流入する。
【0074】
そして、その広い幅GXの間隙に流入した高圧の蒸気Fは、溝部245Bおよび切り欠き部41Kによって更に広い幅GTになった間隙を介して、内部空間21Cからステムリーク成分としてステムリーク流路31へ流れる。そして、ステムリーク成分は、第1ステムリーク流路311から環状空間312aを介して第2ステムリーク流路312を流れ、復水器(図示省略)などの外部へ排出される。
【0075】
その結果、本実施形態では、上記の実施形態の場合と同様に、弁体25が弁座26に押し付けられる閉鎖力が減少するので、蒸気弁V1について開動作の開始を行う際に弁体25を駆動させるのに必要な駆動力を低減することができる。
【0076】
図示を省略しているが、本実施形態において蒸気弁V1の開動作が開始された後から蒸気弁V1が全開状態になるまでの間は、弁棒24の外周面のうち溝部245Bが形成された部分が、上記の実施形態の場合と同様に、ステムリーク流路31の入口部分以外の部分に対面する。これにより、ブッシュ221の内周面と弁棒24の外周面との間の間隙は、ステムリーク流路31の入口部分よりも弁体25側(下側)の部分が、狭い幅Gになる(G=R0−R1)。このため、高圧の蒸気Fは、狭い幅Gの間隙を経由して、ケーシング21の内部空間21Cからステムリーク成分としてステムリーク流路31へ流れる。
【0077】
その結果、ステムリーク成分の流量は、蒸気弁V1が全閉状態であるときの流量よりも少なく、上記した関連技術の場合と同様になる。したがって、十分に高いタービン効率を実現することができる。
【0078】
なお、本実施形態では、第3実施形態の場合と異なり、溝部245Bは、第1弁棒部241の外周面において周方向の全体をリング状に囲っておらず、周方向の一部に形成されている。このため、蒸気弁V1の開動作が開始された後にステムリーク成分が漏れる流量について、第3実施形態の場合よりも更に効果的に低減することができる。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。