特許第6813488号(P6813488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6813488アントラサイクリン誘導体を含む、結合タンパク質薬物複合体(Binding protein drug conjugates)
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6813488
(24)【登録日】2020年12月21日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】アントラサイクリン誘導体を含む、結合タンパク質薬物複合体(Binding protein drug conjugates)
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/706 20060101AFI20201228BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20201228BHJP
   A61K 47/66 20170101ALI20201228BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20201228BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20201228BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20201228BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20201228BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   A61K31/706
   A61K47/65
   A61K47/66
   A61K47/68
   C07K16/28ZNA
   C07K14/47
   A61P35/00
   A61P35/02
【請求項の数】21
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2017-533768(P2017-533768)
(86)(22)【出願日】2015年12月23日
(65)【公表番号】特表2018-504390(P2018-504390A)
(43)【公表日】2018年2月15日
(86)【国際出願番号】EP2015081183
(87)【国際公開番号】WO2016102679
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2018年9月28日
(31)【優先権主張番号】62/095,820
(32)【優先日】2014年12月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515255205
【氏名又は名称】エヌビーイー セラピューティクス アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】グラヴンダー ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】ベールリ ロジャー レンツォ
【審査官】 大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/177055(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/140317(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/099741(WO,A1)
【文献】 SWEE LEE KIM,SORTASE-MEDIATED MODIFICATION 以下省略,PROCEEDINGS OF THE NATIONAL ACADEMY OF SCIENCES OF THE UNITED STATES OF AMERICA,2013年 1月,V110 N4,P1428-1433
【文献】 MADEJ MARIUSZ P.,BIOTECHNOLOGY AND BIOENGINEERING,2012年 6月,V109 N6,P1461-1470
【文献】 TSUKIJI SHINYA,SORTASE-MEDIATED LIGATION: A GIFT FROM GRAM-POSITIVE BACTERIA TO PROTEIN ENGINEERING,CHEMBIOCHEM - A EUROPEAN JOURNAL OF CHEMICAL BIOLOGY [ONLINE],ドイツ,WILEY VCH,2009年 3月23日,V10 N5,P787-798,URL,http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/cbic.200800724/pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
C07K 1/00−19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(i)または式(ii)を有する、アントラサイクリンPNU−159682の誘導体を含む、アントラサイクリン(PNU)誘導体の複合体(conjugate)。
前記複合体(conjugate)は、その波線で、リンカー構造X−L1−L2−L3−Yを含み、ここで、L1乃至L3は、リンカーを表し、そして、L1乃至L3の2つは、必須であり、そして、XおよびYは、さらに、それぞれ、一個以上の所望によるリンカーを表し、および、
オリゴ−グリシンペプチド(Gly)nが、
(a)L1として指定されたアルキレンジアミノリンカーの手段で、式(i)のアントラサイクリン誘導体に結合し、アルキレンジアミノリンカーは、直接または所望のリンカーXを介して、第1のアミド結合の手段により、アントラサイクリン誘導体に結合し、一方、第2のアミド結合によって、アルキレンジアミノリンカーは、オリゴ−グリシンペプチドのカルボキシ末端結合し、アルキレンジアミノリンカーとオリゴ−グリシンペプチドの前記結合は、以下の式(v)を有する
または、
(b)L1として指定されたアルキレンアミノリンカーの手段で、式(ii)のアントラサイクリン誘導体に結合し、アルキレンアミノリンカーは、直接または所望のリンカーXを介して、アミド結合の手段により、オリゴ−グリシンペプチドのカルボキシ末端に結合し、前記アルキレンアミノリンカーとオリゴ−グリシンペプチドの前記結合は、以下の式(vi)を有する、
ここで、波線は、式(i)または式(ii)のアントラサイクリン誘導体への結合を示し、mは、1以上、11以下の整数であり、そして、nは、1以上、21以下の整数である。
【請求項2】
以下の式を有する、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)。
ここで、
・ L1乃至L3は、リンカーを表し、そして、L1乃至L3の2つは必須であり、
・ XおよびYは、各々1つ以上の所望によるリンカーを表し、
・ BPは、結合タンパク質であり、そして、
・ qが、1以上10以下の整数であり、そして、
オリゴ−グリシンペプチド(Gly)nが、
(a)L1として指定されたアルキレンジアミノリンカーの手段で、式(i)のアントラサイクリン誘導体に結合し、アルキレンジアミノリンカーは、直接または所望のリンカーXを介して、第1のアミド結合の手段により、アントラサイクリン誘導体に結合し、一方、第2のアミド結合によって、アルキレンジアミノリンカーは、オリゴ−グリシンペプチドのカルボキシ末端結合し、アルキレンジアミノリンカーとオリゴ−グリシンペプチドの前記結合は、以下の式(v)を有する
または、
(b)L1として指定されたアルキレンアミノリンカーの手段で、式(ii)のアントラサイクリン誘導体に結合し、アルキレンアミノリンカーは、直接または所望のリンカーXを介して、アミド結合の手段により、オリゴ−グリシンペプチドのカルボキシ末端に結合し、前記アルキレンアミノリンカーとオリゴ−グリシンペプチドの前記結合は、以下の式(vi)を有する、
ここで、波線は、式(i)または式(ii)のアントラサイクリン誘導体への結合を示し、mは、1以上、11以下の整数であり、そして、nは、1以上、21以下の整数である。
【請求項3】
請求項2に記載の、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)であって、リンカー構造L3が、ソルターゼ酵素認識モチーフ(sortase enzyme recognition motif)の特異的開裂から生じる、ペプチドモチーフを含む、複合体。
【請求項4】
請求項3に記載の、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)であって、前記ソルターゼ酵素認識モチーフ(sortase enzyme recognition motif)が、ペンタペプチドを含む、複合体。
【請求項5】
請求項3または4に記載の、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)であって、前記ソルターゼ酵素認識モチーフ(sortase enzyme recognition motif)が、以下のアミノ酸配列の少なくとも1つを含む、複合体。
・ LPXTG
・ LPXSG、および/または
・ LAXTG。
【請求項6】
請求項2−5のいずれか1項に記載の、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)であって、アントラサイクリン(PNU)誘導体が、結合タンパク質のカルボキシ末端または少なくとも1つの、そのドメインまたはサブユニットのカルボキシ末端に、一個以上のリンカーを介して、結合する(conjugated)、複合体。
【請求項7】
請求項2−6のいずれか1項に記載の、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)であって、結合タンパク質が、オリゴーグリシンペプチド(Gly)nの遊離アミノ末端に、アミド結合で、結合(conjugated)している、複合体。
【請求項8】
請求項2−7のいずれか1項に記載の、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)であって、結合タンパク質が、抗体、修飾された抗体フォーマット(modified antibody format)、抗体誘導体または断片、抗体ベースの結合タンパク質(antibody−based binding protein)、オリゴペプチド結合剤(oligopeptide binder)および/または抗体模倣物からなる群から選択される少なくとも一つである、複合体。
【請求項9】
請求項2−8のいずれか1項に記載の、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)であって、結合タンパク質が、
*受容体、
*抗体、
*成長因子、
*サイトカイン、および/または
*ホルモン
からなる群から選択される少なくとも一つの主体(entity)と結合する、複合体。
【請求項10】
請求項2−9のいずれか1項に記載の、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)であって、結合タンパク質が、少なくとも2つのサブユニットを有する、複合体。
【請求項11】
請求項10に記載の結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)であって、少なくとも1つのサブユニットが、請求項2のアントラサイクリンPNU−159682の誘導体を含む、複合体。
【請求項12】
請求項2−11のいずれか1項に記載の、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)であって、結合タンパク質がHER−2に結合する、複合体。
【請求項13】
請求項2−12のいずれか1項に記載の、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)であって、結合タンパク質が、HER−2に結合する抗体である、複合体。
【請求項14】
請求項2−13のいずれか1項に記載の、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)であって、結合タンパク質が抗体であり、抗体が
a)トラスツズマブのCDR領域1−6を含む
b)トラスツズマブの重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む
c)a)の領域もしくはb)のドメインと、90%以上のアミノ酸配列同一性を有するまたは
d)トラスツズマブ、もしくはその標的結合誘導体ある、
複合体。
【請求項15】
請求項2−11のいずれか1項に記載の、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)であって、結合タンパク質が、CD30に結合する、複合体。
【請求項16】
請求項2−11または15のいずれか1項に記載の、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)であって、結合タンパク質が、CD30に結合する抗体である、複合体。
【請求項17】
請求項2−11または15−16のいずれか1項に記載の、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)であって、結合タンパク質が抗体であり、抗体が
a)ブレンツキシマブのCDR領域1−6を含むか、
b)ブレンツキシマブの重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含むか、
c)a)の領域もしくはb)のドメインと、90%以上のアミノ酸配列同一性を有するまたは、
d)ブレンツキシマブ、もしくはその標的結合誘導体である、
複合体。
【請求項18】
請求項2−17のいずれか1項に記載の、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)の製造方法であって、ソルターゼ酵素認識モチーフ(sortase enzyme recognition motif)を担う結合タンパク質が、ソルターゼ酵素を用いて、L2として、オリゴ−グリシンペプチド(Gly)nを担持する、請求項1の少なくとも一つのアントラサイクリン誘導体複合体に結合される、方法。
【請求項19】
請求項2−17のいずれか1項に記載の、または、請求項18の方法で生成された、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)の腫瘍性疾患の治療のための医薬品の製造における使用。
【請求項20】
腫瘍性疾患が、
*IHCまたはISHによって決定される、1+、2+または3+のHER−2発現スコアを有する腫瘍で、腫瘍は、好ましくは乳癌であり、
*IHC、ELISAまたはフローサイトメトリーによって決定される、CD30陽性である腫瘍、好ましくは、リンパ腫、より好ましくはホジキンリンパ腫(HL)または全身性未分化大細胞型リンパ腫(systemic anaplastic large cell lymphoma)(sALCL)である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
請求項2−17のいずれか1項に記載、または、請求項18の方法で製造された、結合タンパク質−薬剤複合体(BPDC)および少なくとも1つの他の薬学的に許容される成分を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アントラサイクリン毒素誘導体を含む、結合タンパク質薬物複合体(binding protein drug conjugates)に関する。
【0002】
[従来の技術]
【0003】
低分子量毒素(分子量は、好ましくは、<2`500ダルトン)が、結合タンパク質、特に、腫瘍細胞に特異的な抗体に、共有結合で結合することは、それらの破壊(destruction)のために、腫瘍細胞を特異的に標的とする強力なツールである。
したがって、このような結合タンパク質薬物複合体(binding protein drug conjugates conjugate)(BPDCs)、特に、抗体薬物複合体(antibody drug conjugates)(ADCs)は、腫瘍の治療のための高い医療上および商業的関心がある。
腫瘍の治療のための有効かつ安全なBPDCsまたはADCsを開発するためには、いくつかの点に対処する必要がある:
まず、結合タンパク質または抗体は、ほとんどあるいは理想的に、正常または健康な組織細胞によって発現されていない所定の腫瘍特異的抗原(TSA)に特異的であることが必要である。
第二に、薬物と結合タンパク質間の共有結合、または結合(linkage)は、循環中に十分に安定である官能基を有する必要があり、血流中において、毒性低分子薬物(payload)の望ましくない放出を阻止し、しかし、腫瘍細胞に結合および/または内部移行(internalization)の際に、薬物を、効果的に放出しなければならない。
第三に、潜在的に限られたTSAの量が、腫瘍細胞に発現され、そして、そのために、ADCの限られた量のみが内部移行(internalize)される場合でさえ、または、腫瘍細胞への結合時、または腫瘍細胞への内部移行(internalization)の際に、毒性低分子薬物(payload)のリリースが、十分に効率的に影響しない場合、毒性低分子薬物(payload)は、腫瘍細胞の破壊を達成するために、十分に高い毒性、または効力が必要である。
【0004】
TSAを介して、腫瘍を標的にすることに成功した第一の態様は、その特異的結合のために開発された、標的生物および標的分子の深い理解に依存するが、最適リンカーおよび毒性低分子薬物(payload)に関連する、第二および第三の態様は、一般的に、結合タンパク質薬物複合体(conjugate)(BPDCs)または抗体薬物複合体(antibody drug conjugates)(ADC)の有効性に、適用される。
【0005】
現在、臨床試験中のすべてのADCs、および、腫瘍の治療のためにFDAに承認されている2個のADCs、すなわち、武田の抗CD30ADC Adcetris(R)(ブレンツキシマブ−ベドチン(brentuxumab−vedotin))、およびロシュ/ジェネンテックの抗HER−2 ADC Kadcyla(R)(トラスツズマブ エムタンシン(trastuzumab emtansine)、またはT−DM1)(ペレスら、2014年参照)は、抗体のリシン残基の一級アミノ基、または、抗体鎖内のジスルフィド架橋の穏やかな還元によって生成された、フリーのチオール基、に対するマレイミドリンカー反応基(maleimide linker chemistry)を含む毒性低分子薬物(payload)の化学的結合(conjugation)によって生成される。
【0006】
化学的結合(conjugation)は、二つの制限を有する:
第一に、化学的マレイミドベースのリンカーは、ヒト血清アルブミンの存在下で望ましくない不安定性と関連しており、そして、したがって、ADCsを含むマレイミドリンカーで治療された患者の循環器において、毒素の放出につながることが見出されている(アリー(Alley)ら、2008年を参照)。
第2に、マレイミドリンカー反応基による古典的な化学的結合(conjugation)は、結合(conjugation)が起こるアミノ基またはチオール基を制御することができないので、均一でない(heterogeneous)、BPDCsまたはADCsを生じる。
したがって、3.5と4の間の範囲の、平均薬物対抗体比(DAR)を、複合化された(conjugated)ADCsが持つように、抗体当たり、共有結合した薬物の数のガウス分布(Gaussian distribution)が得られる。
しかし、個々の複合体(conjugates)は、薬物が抗体に結合していないもの(平均薬物対抗体比(DAR)=0)、または、システイン複合体(conjugates)の場合に、8つまでの薬物が抗体に結合しているもの(平均薬物対抗体比(DAR)=8)、そして、リシン複合体(conjugates)の場合に、抗体当たり、さらにより多くの薬物を有するもの(>平均薬物対抗体比(DAR)=10)がある。
古典的な化学的複合化された(conjugated)ADCsは、したがって、異なる機能的性質を示す、異なる分子の不均質な混合物を表し(Panowskiら、2014年参照)、それは、明らかに、癌患者の治療のためのADCsの開発において、規制の観点から、望ましくない。
【0007】
したがって、部位特異的に結合(site−specific conjugated)し、そして、そのために、薬物対抗体比に関して均一である、ADCsまたはBPDCsを提供する、商業的および医学的必要性がある。
【0008】
さらに、マレイミドリンカー反応基に基づく、伝統的な複合体(conjugates)よりも、血液循環において、より安定なタンパク質結合にして、より安定な薬剤を有する、ADCsまたはBPDCsを提供する、商業的および医学的必要性がある。
【0009】
さらに、現在市場に出回っているADCsまたはBPDCsよりも、高い有効性と少ない副作用を有する、ADCsまたはBPDCsを提供する、商業的および医学的必要性がある。
【0010】
[本発明の一般的特徴]
【0011】
本発明はこれらの問題を解決するものである。
これは、現在、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)において、使用するための毒素と、古典的マレイミドリンカー反応基を回避し、部位特異的な方法で(site−specific manner)、上記結合タンパク質にこれらの毒素を結合するための、必要に応じて、新しい技術を、提供する。
【0012】
これらの2つの機能の一般的な利点を、以下に説明する。
【0013】
[リンカー技術]
化学的に結合し、マレイミドリンカーを含有するBPDCsまたはADCsの、上記の血清における不安定性、および、不均一性の、両方は、患者において、このようなADCsの毒素の非特異的放出(すなわち、「脱薬剤化(de−drugging)」とも呼ばれる)を助長するので、癌患者に対して、これらの薬物の安全性に重要な責任(liabilities)を負う。
【0014】
一方で、古典的なマレイミドリンカーは、ヒト血清中の遊離チオール、特に、最も豊富な血清タンパク質として、ヒト血清中の遊離チオールの最高濃度を提供する、ヒト血清アルブミンのシステイン−34によって分解されることができる。
ヒト血清アルブミンのシステイン−34は、毒素が転送され、そして、共有結合でヒト血清アルブミン(HSA)に結合される、いわゆる逆マイケル反応の方法により、マレイミドリンカーのチオエーテル結合を切断することができる。次いで、毒素−HSA複合体(conjugate)は、腫瘍選択性を有さずに、循環中または体内に、毒素を分布させる(Alleyら、2008年参照)。
【0015】
他方、化学的に結合された、平均薬物対抗体比(DAR)の種(species)が高ければ高いほど、これらのADCsの、より高い疎水性および凝集の傾向のために、不均一のADCsは、より短い血清半減期を有することが知られている。したがって、これらのより高い平均薬物対抗体比(DAR)の種は、陽性の腫瘍細胞を標的とするために、これらのADCの結合に先立って、毒素の、血清からのより速いクリアランス、分解およびリリースに付される。さらに、個々の結合部位が、毒素を運ぶアミノ酸の構造的状況に応じて、異なる脱薬剤化(de−drugging)速度を有するために、より高い平均薬物対抗体比(DAR)種は、また、より速い脱薬剤化(de−drugging)をもたらすことも知られている。
【0016】
腫瘍細胞特異的抗体へのカップリングを介して非常に強力な細胞毒素を、腫瘍細胞に、送達するというコンセプトが魅力的(compelling)であるという事実にもかかわらず、化学的に結合(conjugate)されたADCsの上記の責務は、ADCsの臨床開発への成功を妨げていた。
毒素関連の副作用のために、2000年にFDAで承認されていた最初のADCである、ファイザー/ワイスのマイロターグ(R)(ゲムツズマブ オゾガマイシン)は、FDA承認後10年で市場から回収する必要があった(http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm216448.htm)。
【0017】
したがって、化学的に結合(conjugate)されたADCsの責務は、現在のADCの開発努力を、中程度の細胞毒性を有する毒素(たとえば、チューブリン重合阻害のドラスタチン/アウリスタチンベースおよびメイタンシンベースの薬物)に限定する。実際、現在、臨床評価中の全ADCsの90%以上が、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)またはF(MMAF)またはメイタンシン(たとえば、DM1またはDM4)に関連する毒素を担持している(Mullard(2013年)参照)。
【0018】
しかし、細胞骨格(cellular cytoskeleton)の成分である、チューブリンは、非常に豊富な細胞内タンパク質の標的であり、多くの薬物分子が拡散したり、細胞内に輸送される必要があるので、細胞分裂および生存に必要な細胞内細胞骨格の代謝を停止するために、チューブリン重合阻害薬は、効力を、ナノモル範囲以下まで到達できない。
【0019】
複合体(conjugates)のある程度の「脱薬剤化(de−drugging)」に耐えることができるチューブリン重合阻害薬の中程度の効力、および、分裂および有糸分裂細胞におけるそれらの特異的作用は、ADCsの開発のために、最も普及していた、この特定の作用様式を有する毒素を、製造することができる。
【0020】
しかしながら、TSAsの発現レベルが低い腫瘍に、特異的に対処するためには、はるかに強力な毒素が必要となる。したがって、前臨床開発における未だに、より新しいADC戦略は、高い細胞毒性および異なる作用様式、特に、デュオカルマイシン(Doktorら(2014年)およびピロロベンゾジアゼピン(PBDs)(HartleyおよびHochhauser(2012年)参照)のようなDNA損傷毒性を伴う毒素を含む。
【0021】
[アントラサイクリン誘導体]
腫瘍の治療における化学療法薬として、それらの臨床的有効性が証明されているので、BPDCsまたはADCsの低分子薬物(payload)として使用するための、非常に興味深いクラスのDNAインターカレート毒素は、アントラサイクリンである(Minotti(2004年)参照)。
【0022】
アントラサイクリンは、高い抗腫瘍活性を有する、赤色のポリケタイドであり、もともと、ストレプトミセス種に由来する。過去40年間に、様々な固形および血液腫瘍の化学療法剤として、日常的に使用されているものを含む、たとえば、ドキソルビシン(アドリアマイシンとも呼ばれる)、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシンまたはバルルビシンのような、多くの誘導体が、開示されてきた。
さらに、毒性低分子薬物として、ドキソルビシンを有する、多発性骨髄腫および他の血液腫瘍のための、フェーズI/II臨床試験中の1つの抗CD74 ADCである、ミラツズマブ−ドキソルビシンもある(clinicaltrials.gov identifier: NCT01101594参照)。
【0023】
アントラサイクリンベースの化学療法薬のすべては、遊離薬物としては、ほとんどの腫瘍細胞において、μmol/mlの範囲のIC50sを有する、腫瘍細胞に対して限られた効力を示すことが知られている(CrookeおよびPrestayko、1981年)。
現在、臨床試験で評価されている、最初の、ドキソルビシン−ADCの例にもかかわらず、従来のアントラサイクリンをADC戦略の有毒な低分子薬物(payload)として使用することは困難を極める可能性がある。
【0024】
約10年前に、PNU−159682と呼ばれる新規なアントラサイクリン誘導体が、ネモリビシンの代謝物として開示され(Quintieriら(2005年)Clin Cancer Res.11、1608−1617頁参照)、ピコ乃至フェムトモルの範囲で、1つの卵巣(A2780)と1つの乳癌(MCF7)細胞株に対して、in vitroでの細胞死滅の非常に高い効力を発揮することが、最近、報告された(WO2012/073217A1、カルーソら)。上記の先行技術文献に開示されている、アントラサイクリン誘導体PNU−159682の構造は、参照のために、図2に開示されている。そして、この図には、四環系アグリコン構造の反応性炭素のための公式のアントラサイクリンのナンバリングシステムが付与されている。
【0025】
不均一に化学的に複合体化(conjugated)されたADCsにおける、マレイミド−リンカーの不安定性および、より高い平均薬物対抗体比(DAR)種の脱薬剤化に関して、化学的に複合体化(conjugated)されたADCsについての上記の制限に基づいて、PNU−159682のような高度に強力なアントラサイクリン毒素は、腫瘍細胞の標的化の前に、循環器中で、毒素が放出されるので、古典的な化学的結合(conjugation)の文脈では、非常に問題があると予想される。
【0026】
したがって、患者の循環器において、早期に放出される毒素による副作用を回避または最小化するために、たとえば、PNU−159682のような強力な毒素、定められた薬物動態学的特性を有する均一なADCsおよび、延長された血清安定性が必要とされる。しかし、同時に、低いターゲットの発現を特徴とする腫瘍細胞の特定の死滅は、依然として、可能である必要がある。
【0027】
古典化学的マレイミドリンカーのアプローチによって生成されたADCの低分子薬物(payload)としての、PNU−159682を使用することは、以前に開示されているが(WO2009/099741A1、Cohenら)、この先行技術文献には機能的データは提供されていない。
【0028】
腫瘍細胞において、化学的に結合し、および不均一なマレイミド−リンカーを含有する複合体(conjugates)において、異なるリンカーおよびスペーサー構造を有する抗体に連結されたPNU−159682を有するものについて、最初の機能的データは、先行技術文献WO2010/009124A2(Beriaら)に開示されたものの、安全性および薬物動態のデータは提供されなかった。
【0029】
[好ましい実施形態]
最初の好ましい実施形態によれば、アントラサイクリンに特徴的な4環性のアグリコン構造のC14炭素と、それに結合したヒドロキシ基を欠くPNU−159682誘導体を含むアントラサイクリン(PNU)誘導体複合体(conjugates)が記載されている。
第2の好ましい実施形態として、アントラサイクリンの特徴的な4環性アグリコン構造のC13のカルボニル基およびC14のヒドロキシ基を有するC13およびC14炭素の両方を欠いた、アントラサイクリン(PNU)誘導体複合体(conjugates)が記載されている。
【0030】
これらの実施形態では、アントラサイクリン(PNU)誘導体複合体(conjugates)は、以下の式(i)または式(ii)を有する、アントラサイクリンPNU−159682の誘導体を含む。
【0031】
【0032】
上記複合体(conjugates)は、それらの波線で、異なる要素、X−L−L−L−Y、を有することができるリンカー構造を含み、ここで、L乃至Lは、リンカーを表し、そして、L乃至Lの2つは任意であり、そして、XおよびYは、それぞれ、1つまたは複数の任意のリンカーをさらに表す。
【0033】
両方の誘導体は、アントラサイクリンであるネモルビシンの代謝産物であり、そして、Quintieriら(2005年)によって、初めて開示されたPNU−159682とは、著しく異なっている。
【0034】
C13のカルボニル基およびC14のヒドロキシ基を有する、C13およびC14炭素の両方は、PNU−159682の必須の構造的特徴であり、本明細書に開示される誘導体複合体(conjugates)の一部ではない。
【0035】
驚くべきことに、そして初めて、アントラサイクリンの特徴的な4環性アグリコン構造の、C14とそれに結合したヒドロキシ基のない、PNU−誘導体の、たとえば、部位特異的に結合(site−specifically conjugated)した抗体薬剤複合体(conjugates)が、細胞毒性を発揮することが実証された。
その好ましい実施形態は、図3A,6Aおよび6Bに示される。
【0036】
本発明の別の実施形態によれば、以下の式を有する、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)が提供される。
【0037】
【0038】
・ ここで、L乃至Lは、リンカーを表し、2つのL乃至Lは必須であり、
・ XおよびYは、それぞれ、1つ以上の所望のリンカーを表し、
・ BPは、結合タンパク質を示し、そして、
・ nは、≧1と≦10の間の整数である。
【0039】
この構築物において、いくつかのリンカーは、1つの毒素を1つの結合タンパク質に結合する単一鎖を形成することができ、および/または、いくつかのリンカーは、1つの結合タンパク質にいくつかの毒素を連結することができる。同様に、リンカーは、二つ以上の毒素分子に、同じ結合タンパク質の2つ以上のサブユニットを結合することができる。
【0040】
所望のリンカーXは、腫瘍細胞への内部移行(internalization)の際、毒素の特異的放出を可能にするためにADCsに使用されてきた、従来技術で公知の任意の化学的リンカーの構造であることができる(たとえば、DucryおよびStump(2010年)またはMcCombsら(2015年)参照)。
【0041】
先行技術に記載された、そのようなリンカーのいくつかの例を以下に示す。なお、例としてのみ提供されるものであって、これらに限定することを意図しない。
【0042】
【0043】
リンカーL、LおよびLは、以下に説明する。
【0044】
所望のリンカーYは、リンカーX、L、L、Lまたはその変形の単一鎖、特に、Lに、結合タンパク質の最適な結合を可能にする、最大20個のアミノ酸を有するアミノ酸の任意の鎖であってもよい。
【0045】
さらに、適切な結合タンパク質、たとえば、そして好ましくは、抗体に、PNU−誘導体の部位特異的な結合(site−specific conjugation)を可能にする、リンカー構造が提供される。
この誘導体は、このように、抗腫瘍の治療のような治療的用途に使用することができる、部位特異的に結合(site−specific conjugated)された、均質な結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)を製造するために使用することができる。
【0046】
アントラサイクリン(PNU)誘導体の別の好ましい実施形態によれば、リンカー構造は、直接または別のリンカーLによって、前記アントラサイクリン誘導体に、当該オリゴ−グリシン(Gly)ペプチドが遊離アミノ末端を有するように結合された、オリゴ−グリシンペプチド(Gly)を、Lとして含む。そして、ここで、nは、≧1と≦21との間の整数である。
【0047】
それぞれの場合において、(Gly)(本明細書では、また、(Gly)−NHまたはGly−stretchとも呼ぶ)は、オリゴ−グリシンペプチド−ストレッチ(oligo−glycine peptide−stretch)である。特に好ましい一実施形態において、nは、≧3と≦10の間の整数、好ましくは、≧3と≦6である。最も好ましくは、n=5である。
【0048】
すでに、開示されているように、本明細書に開示されたアントラサイクリン(PNU)誘導体は、結合した官能基を有する、炭素原子13および14を欠いているか、または、炭素14のみを欠く、いずれかのPNU−159682の誘導体である。
【0049】
式(i)に関しては、一つの好ましい実施態様は、オリゴ−グリシンペプチド(Gly)(≧1および≦21、好ましくはn=3またはn=5)が、アルキレンジアミノリンカー(NH−(CH−NH、m≧1および≦11、好適にはm=2)によって、アントラサイクリン誘導体と結合し、ここで、リンカーは、炭素13と、最初のアミド結合により、アントラサイクリン誘導体と結合し,そして、次いで、第二のアミド結合によって、オリゴ−グリシンペプチドのカルボキシ末端に結合する。
【0050】
部位特異的に結合(site−specifically conjugated)されたアントラサイクリン(PNU)誘導体複合体を生成するのに有用な好適な化合物である、PNU−EDA−Glyは、図3Aに示される。
【0051】
式(ii)については、好ましい態様は、オリゴ−グリシンペプチド(Gly)(≧1および≦21、好ましくはn=3またはn=5)が、炭素13のカルボニル基が、グリシンペプチドリンカーのカルボキシ末端を表すように、直接、PNU誘導体の環A(またはアントラサイクリンのアグリコン構造の炭素9)に結合される。
【0052】
部位特異的に結合(site−specifically conjugated)されたアントラサイクリン(PNU)誘導体複合体を生成するのに有用な、好適な化合物である、PNU−Glyは、図6Aに示される。
【0053】
式(ii)に関して、別の好ましい実施形態は、オリゴ−グリシンペプチド(Gly)(≧1および≦21、好ましくはn=3またはn=5)が、アミド結合によって、オリゴ−グリシンペプチドのカルボキシ末端に結合する、アルキレンアミンリンカー(−(CH−NH、m≧1および≦11、好適にはm=2)を介して、PNU誘導体の環A(またはアントラサイクリンアグリコン構造の炭素9)に直接、結合される。
【0054】
部位特異的に結合(site−specifically conjugated)されたPNU誘導体複合体を生成するのに有用な、好適な化合物である、PNU−EA−Glyは、図6Bに示される。
【0055】
以下では、上記の説明による、アントラサイクリン誘導体複合体は、また、「PNU−EDA−Gly−NH」、「PNU−Gly−NH」または「PNU−EA−Gly−NH」と呼ばれ、あるいは、それぞれ、また、短く、「PNU−EDA−Gly」、「PNU−Gly」または「PNU−EA−Gly」と、あるいは、5つのグリシン残基を有する、その好適な実施形態においては、それぞれ、「PNU−EDA−Gly5」、「PNU−Gly5」または「PNU−EA−Gly5」と呼ばれる。
【0056】
さらに、本発明は、上記のアントラサイクリン誘導体複合体を含む、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugate)(BPDC)を提供し、その誘導体は、さらに、追加のアミド結合によって、オリゴ−グリシンペプチドの(Gly)の遊離のフリーのアミノ末端に結合する、結合タンパク質を含む。
【0057】
アントラサイクリン(PNU)誘導体または結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)の別の実施形態によれば、Lとして指定された、オリゴ−グリシンペプチド(Gly)は、Lとして指定された、アルキレンジアミノリンカーによって、式(i)のアントラサイクリン誘導体と結合する。そのアルキレンジアミノリンカーは、第1のアミド結合によって、アントラサイクリン誘導体に結合し、一方、第二のアミド結合により、オリゴ−グリシンペプチドのカルボキシ末端に結合する。上記アルキレンジアミノリンカーとオリゴ−グリシンペプチドの結合は、以下の式(v)を有する。
【0058】
【0059】
ここで、波線は、式(i)のアントラサイクリン誘導体との結合を示す。
【0060】
mは、≧1と≦11の間の整数であり、そして、nは、≧1と≦21の間の整数である。好ましくは、mは、≧2および≦4の間の整数である。最も好ましくは、m=2(エチレンジアミノ基、EDA)である。
【0061】
アルキレンジアミノリンカーは、ソルターゼによる結合(sortase conjugation)のための(Gly)リンカーの結合を許容するために使用され、(Gly)ペプチドのC末端を介して、カップリングが起こることができるようにし、したがって、ソルターゼによる結合(sortase conjugation,)のための、最終的な毒素−リンカー付加物の遊離のN末端を提供する。
【0062】
発明を実施するためには、アルキレンジアミノリンカーの任意のCHのメチレン基は、別の安定な結合、たとえば−O−(エーテル)、−S−(チオエーテル)、−NH−(アミン)、または任意の他のアルキル基、ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリール基、またはそれらの任意の組合せで置換されてもよいことを理解すべきである。
【0063】
アントラサイクリン(PNU)誘導体または結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)の別の実施形態によれば、オリゴ−グリシンペプチド(Gly)は、直接、式(ii)のアントラサイクリン誘導体の環A(または炭素9)にカップリングしている。その説明のため、図6Aを参照する。
【0064】
アントラサイクリン(PNU)誘導体または結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)の別の実施形態によれば、オリゴ−グリシンペプチド(Gly)は、Lとして指定されたアルキレンアミノリンカーにより、式(ii)のアントラサイクリン誘導体に結合され、アルキレンアミノリンカーは、アミド結合により、オリゴ−グリシンペプチドのカルボキシ末端に結合される。上記アルキレンアミノリンカーとオリゴ−グリシンペプチドの結合は、以下の式(vi)を有する。
【0065】
【0066】
式中、波線は、式(ii)のアントラサイクリン誘導体、への結合を示し、ここで、mは、≧1と≦11の間の整数であり、そして、nは、≧1と≦11との間の整数である。好ましくは、mは、≧2と≦4の整数であり、最も好ましくは、m=2(エチレンアミノ基、EA)である。
【0067】
アルキレンアミノリンカーは、ソルターゼによる結合(sortase conjugation)のために、(Gly)リンカーの結合を許容するために使用され、(Gly)ペプチドのC末端を介してカップリングが起こることができき、したがって、ソルターゼによる結合(sortase conjugation)のための、最終的な毒素―リンカー付加物の遊離N末端を提供する。
【0068】
発明を実施するために、アルキレンアミノリンカーの任意のCHのメチレン基は、別の安定な結合、たとえば、−O−(エーテル)、−S−(チオエーテル)、−NH−(アミン)、または任意の他のアルキル基、ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリール基、またはそれらの任意の組合せで置換されてもよいことを理解すべきである。
【0069】
結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)の他の実施態様において、リンカー構造Lは、ソルターゼ酵素認識モチーフ(sortase enzyme recognition motif)の特異的開裂から生じるペプチドモチーフを含む。
【0070】
本明細書の他の箇所、ならびに、内容が、参照により本明細書に組み込まれている、WO2014140317に開示される様に、ソルターゼ(sortase)(または、ソルターゼ トランスペプチダーゼ(sortase transpeptidases)とも呼ばれる)は、特定のペプチドモチーフ(peptide motif)を含む特定のソーティングシグナル(sorting signal)を認識して、そして、開裂することによって、表面タンパク質を修飾する、原核生物の酵素(prokaryotic enzymes)のグループを形成する。
【0071】
このペプチドモチーフは、また、本明細書では、「ソルターゼ酵素認識モチーフ(sortase enzyme recognition motif)」、「ソルターゼ タグ(sortase tag)」または「ソルターゼ認識タグ(sortase recognition tag)」とも呼ばれる。通常、与えられたソルターゼ酵素は、認識される1つ以上のソルターゼ酵素認識モチーフ(sortase enzyme recognition motif)を有する。ソルターゼ酵素は、天然に存在し得るか、または遺伝子操作を受けてもよい(Doerrら、2014年)。
【0072】
結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)の好ましい実施形態において、上記ソルターゼ酵素認識モチーフ(sortase enzyme recognition motif)は、ペンタペプチドを含む。
【0073】
結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)の好ましい実施形態では、上記ソルターゼ酵素認識モチーフ(sortase enzyme recognition motif)は、以下のアミノ酸配列の少なくとも1つを含む(N末端→C末端で図示)
・ LPXTG
・ LPXSG、および/または
・ LAXTG。
【0074】
上記の最初の二つのソルターゼ酵素認識モチーフ(sortase enzyme recognition motif)は、野生型黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のソルターゼAによって認識される。二番目は、また、黄色ブドウ球菌から組み換えた、ソルターゼA 4S9によっても認識され、そして、三番目は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)から組み換えた、ソルターゼA 2A−9により認識される(Doerrら、2014年)。
3つすべての場合において、Xは、20種類のペプチド生成(peptidogenic)アミノ酸のいずれかであり得る。
【0075】
これらのソルターゼ酵素認識モチーフ(sortase enzyme recognition motif)は、たとえば、遺伝子融合(genetic fusion)によって、結合タンパク質、またはそのドメインもしくはサブユニットのC末端に融合され(fused)、そして、それとともに、共発現される(co−expressed)。前記融合は、直接、または、本明細書の他の箇所に記載されている、追加のリンカーYを介して、間接に、行うことができる。
【0076】
一度、リンカー構造に統合され、Lに結合すると、Lは、ソルターゼ酵素認識モチーフ(sortase enzyme recognition motif)の5番目のアミノ酸残基(C末端は、G)を欠くということは注目に値する。表1において、前記C末端のGは、したがって、括弧内に示されている。ソルターゼ酵素認識モチーフ(sortase enzyme recognition motif)がペンタペプチドである場合、Lは、したがって、テトラペプチドである。
【0077】
ソルターゼによる結合(sortase conjugation)に先立ち、C末端が、ソルターゼ酵素認識モチーフ(sortase enzyme recognition motif)に融合した他のタグ、たとえば、His−tags、Myc−tagsまたはStrep−tags(その内容は、参照により本明細書に組み込まれている、WO2014140317の図4a参照)を、ソルターゼ酵素認識モチーフ(sortase enzyme recognition motif)は、さらに担持していてもよい。
【0078】
しかし、ソルターゼ酵素認識モチーフ(sortase enzyme recognition motif)の第4番目と5番目のアミノ酸の間のペプチド結合は、ソルターゼの媒介する結合(sortase mediated comjugation)の際に開裂されるので、これらの追加のタグは、最終的には、完全に結合されたBPDCからは、除去される。
【0079】
ソルターゼ酵素認識モチーフ(sortase enzyme recognition motif)は、本明細書およびWO2014140317に開示された、ソルターゼ技術の手段によって、アントラサイクリン誘導体に結合された(conjugated)(Gly)リンカーに結合することができる。結合(conjugation)プロセスの間に、(Gly)リンカーから、1つのグリシン残基が放出される。
【0080】
これらの3つのペプチドストレッチ(peptide stretch)は、上記のように、古典的なN末端→C末端の方向で示されるが、L残基は、結合タンパク質のC末端、またはリンカーYのC末端に、ペプチド結合で融合されたものであることに言及することは注目に値する。Lの4番目のTまたはSのアミノ酸残基は、実際、(Gly)のペプチドのN末端に結合される(conjugated)ものである一方、Lの5番目のアミノ酸残基(G)は、(Gly)ペプチドに結合する際に、除去される。
【0081】
次の表は、示されたL乃至Lを有する、本発明の結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)の好適な実施形態の概要を示す。
【0082】
【0083】
論じたように、一度、そのリンカー構造に統合され、そして、Lに結合すると、Lは、5番目のアミノ酸残基(C末端のG)を欠く。従って、表1において、上記C末端のGは、括弧内に示されていることは注目すべきである。
【0084】
結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)の他の実施形態によれば、アントラサイクリン(PNU)誘導体は、一個の以上のリンカーにより、結合タンパク質のカルボキシ末端または、そのドメインまたはサブユニットのカルボキシ末端に結合する。
【0085】
別の好ましい実施形態において、オリゴ−グリシン(Gly)ペプチドリンカーにおける、nは、≧3と≦11の間の整数であり、より好ましくは、≧3と≦7、好ましくは、n=3、またはn=5である。最も好ましくは、オリゴ−グリシン(Gly)ペプチドリンカーにおけるnは、5である。
【0086】
好ましい一実施形態では、低分子薬物(payload)は、式(i)の一つである。
第二の好ましい実施形態では、低分子薬物(payload)は、式(ii)の一つである。
【0087】
結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)の別の実施形態によれば、結合タンパク質は、アミド結合により、オリゴ−グリシンペプチド(Gly)の遊離アミノ末端に結合する。
【0088】
結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)の別の実施形態によれば、結合タンパク質は、以下からなる群から選択される少なくとも1つである:
・ 抗体、
・ 修飾された抗体フォーマット(modified antibody format)、
・ 標的結合特性を有する、抗体誘導体またはフラグメント、
・ 抗体ベースの結合タンパク質(antibody−based binding protein)、
・ オリゴペプチド バインダー(oligopeptide binder)、および/または
・ 抗体模倣物(antibody mimetic)。
【0089】
本明細書で使用される、用語「結合タンパク質」は、本発明者が、(ソルターゼ酵素結合(conjugation)技術に関して、さらなる技術的詳細、開示および実行可能性を提供する付録1を含む)、他の刊行物で使用する用語「免疫リガンド(immunoligand)」に相当する。
【0090】
「免疫グロブリン」(Ig)と同義的に呼ばれる「抗体」は、一般に、2つの重鎖(H)および2つの軽鎖(L)の4つのポリペプチド鎖を含み、そして、したがって、多量体タンパク質またはその等価なIgホモログ(たとえば、重鎖のみを有する、ラクダのナノボディ(camelid nanobody)、重鎖または軽鎖のいずれかに由来し得る単一ドメイン抗体(dAbs))であり、その全長機能的突然変異体、そのバリアント(variants)または誘導体(ネズミ(murine)、キメラ(chimeric)、ヒト化(humanized)および完全ヒト抗体(fully human antibodies)を含み、それらに限定されず、それらは、Ig分子の本質的なエピトープ結合特性を保持する。および、二重特異性(dual specific)、二重特異性(bispecific)、多重特異性(multispecific)、および複可変領域型免疫グロブリン(dual variable domain immunoglobulins)を含み、免疫グロブリン分子は、任意のクラス(たとえば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、またはサブクラス(たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)およびアロタイプでありうる。
【0091】
結合タンパク質が抗体である場合、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)は、抗体薬物複合体(antibody drug conjugate)(ADC)である。
【0092】
以下では、本発明に係るADCsはまた、「PNU−EDA−Gly−Ab」、「PNU−Gly−Ab」または「PNU−EA−Gly−Ab」と呼ぶ。
【0093】
「抗体ベースの結合タンパク質(antibody−based binding protein)」は、本明細書では、他の非免疫グロブリンの、少なくとも1つの抗体由来のVH、またはC免疫グロブリンドメイン、または非抗体由来のコンポーネントを含む、任意のタンパク質を表す。そのような抗体ベースのタンパク質は、
(i)免疫グロブリンのCドメインの全てまたは部分を有する、受容体または受容体成分を含む、結合タンパク質のF−融合タンパク質、
(ii)VおよびまたはVドメインが、代替の分子骨格(alternative molecular scaffolds)にカップリングされた、結合タンパク質、または、
(iii)免疫グロブリンVおよび/またはV、および/またはCドメインが、通常、天然で見出されない抗体または抗体断片では見い出せない様式で、組み合わされ、および/または組み立てられている分子、
を含むが、これらに限定されない。
【0094】
本明細書で使用される「抗体誘導体または断片」は、完全長ではない抗体に由来する、少なくとも1つのポリペプチド鎖を含む分子に関し、
(i)可変軽(V)、可変重(V)、定常軽(C)および定常重1(C1)ドメインからなる、一価の断片であるFab断片;
(ii)ヒンジ領域で、ジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab’)2断片;
(iii)VおよびC1のドメインからなるFab(F)断片の重鎖部分;
(iv)抗体の単一アームの、VおよびVドメインからなる可変断片(F)断片;
(v)単一可変ドメインを含む、ドメイン抗体(dAb)断片;
(vi)単離された相補性決定領域(CDR);
(vii)単鎖F断片(scF
(viii)VおよびVドメインが、単一のポリペプチド鎖上に発現されるが、同じ鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用して、それにより、ドメインが、他の鎖の相補的ドメインと対をつくることを強いて、2つの抗体の結合部位を製造する、二価の二重特異性抗体であるダイアボディ;
および
(ix)相補性の軽鎖ポリペプチドと、一緒に、抗原結合領域の対を形成する、タンデム(tandem)Fvセグメント(V−C1−V−CH1)の対を含む線形抗体;および
(x)免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖、または突然変異体(mutants)、変異体(variants)、もしくはその誘導体の他の非全長部分であって、単独でまたは任意の組み合わせ;
を含み、これらに限定されない。
いずれの場合においても、上記誘導体または断片は、標的結合特性を維持する。
【0095】
本明細書で使用する、用語「修飾された抗体フォーマット(modified antibody format)」は、抗体−薬物複合体(conjugates)、ポリアルキレンオキシド変性scFv(Polyalkylene oxide−modified scFv)、モノボディー、ダイアボディー、ラクダ抗体(Camelid Antibodies)、ドメイン抗体、二重または三重特異性抗体(bi− or trispecific antibodies)、IgA、または、J鎖および分泌成分によって加わった、二つのIgG構造(two IgG structures joined by a J chain and a secretory component)、サメ抗体(shark antibodies)、新世界霊長類フレームワーク(new world primate framework)+非新世界霊長類CDR(non−new world primate CDR)、ヒンジ領域が除去されたIgG4抗体(IgG4 antibodies with hinge region removed)、CH3ドメインに操作された二つの追加的な結合部位を有するIgG(IgG with two additional binding sites engineered into the CH3 domains)、Fcγ受容体に対する親和性を高めるために改変されたFc領域を有する抗体(antibodies with altered Fc region to enhance affinity for Fc gamma receptors)、CH3+VL+VHを含む二量化構築物(dimerised constructs comprising CH3+VL+VH)、などを包含する。
【0096】
本明細書で使用する用語、「抗体模倣体(antibody mimetic)」は、免疫グロブリンファミリーに属さないタンパク質、および、アプタマー、または合成ポリマーのような非タンパク質さえ指す。いくつかのタイプは、抗体のようなβシート構造を有する。「抗体模倣体」または「代替足場(alternative scaffolds)」の、抗体に比べた、潜在的な利点は、良好な溶解性、より高い組織浸透性、熱および酵素に対するより高い安定性、および比較的低い製造コストである。
【0097】
抗体模倣物のうちのいくつかは、想像できる標的それぞれに対する特定の結合候補を与える大規模ライブラリーの状態で提供される場合がある。抗体の場合と同様に、標的特異的抗体模倣物も、たとえばファージディスプレー、細菌ディスプレー、酵母または哺乳類ディスプレーのような確立されたディスプレー技術および、高処理スクリーニング(HTS)技術によって開発することができる。最近開発された抗体模倣物には、たとえば、アンキリン反復タンパク質(DARPinsと呼ばれている)、C型レクチン、黄色ブドウ球菌のAドメインタンパク質、トランスフェリン、リポカリン、フィブロネクチンの10番目のIII型ドメイン、クニッツドメインプロテアーゼ阻害剤、ユビキチン由来結合剤(アフィリンと呼ばれている)、γクリスタリン由来結合剤、システインノットまたはノッチン、チオレドキシンA足場を基礎とする結合剤、SH−3ドメイン、ストラドボディ(stradobody)、ジスルフィド結合とCa2+によって安定化した膜受容体の「Aドメイン」CTLA4ベースの化合物、Fyn SH3、およびアプタマー(特定の標的分子に結合するペプチド分子)が包含される。
【0098】
本明細書で使用する用語「オリゴペプチドバインダー(oligo peptide binder)」は、所定の標的に対して、高い親和性で、結合する能力を有するオリゴペプチドに関する。用語「オリゴ」は、5〜50アミノ酸残基を有するペプチドを指す。
【0099】
結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)の別の実施形態によれば、結合タンパク質は、以下からなる群から選択される少なくとも1つのエンティティ(entity)に結合する。
・ 受容体
・ 抗原
・ 成長因子、
・ サイトカイン、および/または
・ ホルモン。
【0100】
このリストは、結合タンパク質が結合することができる、異なるターゲットの種類を定義する。本明細書で使用される、用語「受容体」は、細胞表面分子を意味し、好適には、
(i)特異的シグナル伝達分子または、シグナル伝達分子の特異的なグループ(すなわち、たとえば、VEGF受容体のような受容体)に結合し、および/または、
(ii)既知のリガンド(すなわち、たとえばHER2/neuのようなオーファン受容体)を有しない、
細胞表面分子を意味する。
【0101】
天然の受容体は、細胞集団の表面上に発現されるか、または、それらは単に、そのような分子の細胞外ドメインか(そのような形態が天然に存在するか否か)、またはプラズマ中、或いは細胞または器官内において、天然の結合機能を実行する、可溶性分子を表す。
好ましくは、そのような受容体は、特定の病原性プロセス(たとえば、増殖因子のシグナル伝達カスケードに属する受容体)に関与する、または、たとえば、腫瘍細胞のような病理学的プロセスに関与する細胞または粒子の表面上に発現される、シグナル伝達カスケードのメンバーである。
【0102】
本明細書で使用される、用語「抗原」は、特異的免疫応答を誘導する能力を有する物質を意味し、そして、表面タンパク質またはタンパク質複合体(complexes)(たとえば、イオンチャネル)を含むことができる。多くの場合、抗原は病原性の実体(pathogenic entities)、たとえば、腫瘍細胞に関連する。
【0103】
本明細書で使用する場合、用語「サイトカイン」は、多数の細胞によって分泌され、かつ、細胞間通信に広く使用されるシグナル伝達分子のカテゴリーである、小細胞シグナル伝達タンパク質分子を意味する。サイトカインは、タンパク質、ペプチド、または糖タンパク質として分類することができる。用語「サイトカイン」は、多様な発生学的起源の細胞によって、身体全体に生成した、レギュレーターの広くかつ多様なファミリーを包含する。
【0104】
本明細書で使用される、用語「成長因子」は、細胞の成長、増殖および細胞分化を刺激することができる、天然発生の物質に関する。通常、成長因子は、タンパク質またはステロイドホルモンである。成長因子は、種々の細胞プロセスを調節するために重要である。
【0105】
本明細書で使用する場合、用語「ホルモン」は、生物体の他の部分の細胞に影響を与えるメッセージを送出する、身体の一部における、細胞、腺、または器官によって放出される化学物質に関係する。この語は、ステロイドホルモンを含む、ペプチドホルモン、脂質やリン脂質由来ホルモン、およびモノアミンを包含する。
【0106】
結合タンパク質が、受容体または抗原に結合する場合、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)は、たとえば、(たとえば、低分子薬物(payload)(たとえば、毒素)が送達される、腫瘍細胞のような、たとえば病原体(pathogenic entity)のような特定の部位に仕向ける(directed)ことができる。
したがって、作用部位での後者の局所濃度は上昇する一方、毒素または化学療法剤の全身毒性は低減され、したがって、副作用を低減しながら、より良好な効力を提供する。さらに、それぞれのシグナル伝達カスケードは、結合タンパク質の結合により阻害することができる。低分子薬物(payload)が、マーカーである場合、後者は、したがって、特定の部位(たとえば、診断のため、結合タンパク質によって検出された、所定の表面抗原によって特徴付けられる腫瘍細胞のような)をマークするために使用することができる。
【0107】
結合タンパク質が、成長因子、サイトカイン、および/またはホルモンに結合する場合、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)は、たとえば、部位特異的に(site−specific manner)、低分子薬物(payload)を送達するために、通常、成長因子、サイトカインまたはホルモンが結合する部位に仕向けることができる。さらに、それぞれのシグナル伝達カスケードは、結合タンパク質の結合により阻害することができる。
【0108】
本明細書で使用される場合、「結合する(bind)」という用語は、結合タンパク質、たとえば、抗体、または抗体フラグメント、およびそれらの標的との間の十分に理解されている相互作用または他の非ランダムな相互作用を意味する。
好ましくは、そのような結合反応は、標的に対する高い特異性および/または感度によって特徴付けられる。好ましくは、結合反応は、解離定数(Kd)≦10−3M、好ましくは、≦10−4M、≦10−5M、≦10−6M、≦10−7M、≦10−8M、≦10−9M、そして最も好ましくは、≦10−10で、特徴づけられる。
【0109】
別の実施形態によれば、結合タンパク質は、少なくとも二つのサブユニットを有する。
【0110】
本実施形態では、1つサブユニットは、本明細書に開示された、アントラサイクリンである、PNU−159682の誘導体に結合させることができる(図3Aおよび図6Aおよび図6Bを参照)。
【0111】
好ましくは、少なくとも二つの異なる薬物は、部位特異的に(site−specifically)、少なくとも二つのサブユニットに結合(conjugated)させることができる。このオプションは、多種多様の異なる結合タンパク質−薬物構築物(binding protein−drug constructs)を作成することが可能な、汎用性の高いツールボックスを提供する。
【0112】
好ましくは、少なくとも二つの異なる薬剤は、異なる細胞経路を妨害する薬物である。これは、本明細書に開示されたアントラサイクリン誘導体複合体(conjugate)の隣に、同じ結合タンパク質の別のサブユニットに、第二の毒素を、結合できることを意味する。
【0113】
そのような実施形態は、たとえば、二つの異なるソルターゼ酵素を利用して、完全長抗体の2つの軽鎖および、完全長の抗体の2つの重鎖に、二つの異なる薬物を、それぞれ結合させ、異なるソルターゼ認識モチーフ(「ソルターゼ タグ(sortase tag)」)、プラス、上記異なるソルターゼ酵素のためのそれぞれの認識モチーフを含む、重鎖および軽鎖の異なるC末端の修飾を含有する抗体を、認識することによって、達成することができる。
【0114】
このように、上記重鎖および軽鎖に、共有結合で結合する異なる低分子薬物(payload)を含む、それぞれ2つの完全長Ig軽鎖およびIg重鎖から構成される、抗体薬物複合体(conjugate)を、作成することができる。
【0115】
このような実施形態は、好ましくは、上記サブユニットの各々に対する、部位特異的(site−specific)で、等しい低分子薬物(payload)結合を有する、結合タンパク質薬物複合体(binding protein drug conjugates)の結合を生成するため、少なくとも二つのサブユニットの部位特異的結合(site−specific conjugation)を齎す。
【0116】
結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)の一の実施形態において、結合タンパク質は、HER−2に結合する。好ましくは、結合タンパク質は、HER−2に特異的な抗体である。
【0117】
この実施形態では、HER−2特異的抗体は、好ましくは、
a)トラスツズマブ(ヒト化hu4D5)のCDR領域1−6を含み、
b)トラスツズマブの重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含み、
c)a)またはb)領域またはドメインと90%以上のアミノ酸配列同一性を有し、
d)トラスツズマブ、または、その標的結合フラグメントまたは誘導体であり、および/または
e)HER−2への結合のために、トラスツズマブと競合する。
【0118】
抗HER−2モノクローナル抗体である、トラスツズマブは、HER−2のドメインIVに結合する。好ましくは、抗HER−2抗体は、図11Aの、IgHおよびIgL鎖の一次アミノ酸配列を含む(配列番号1および2)。
トラスツズマブの配列はまた、薬物バンク アクセッション番号DB00072(BIOD00098、BTD00098)で開示されており、本明細書に、参照して取り込まれており、また、IMGTデータベースにも開示されている(VH:http://www.imgt.org/3Dstructure−DB/cgi/details.cgi?pdbcode=7637&Part=Chain&Chain=7637H そして、VL:http://www.imgt.org/3Dstructure−DB/cgi/details.cgi?pdbcode=7637&Part=Chain&Chain=7637L)。
【0119】
結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)の別の実施形態において、結合タンパク質は、CD30に結合する。好ましくは、結合タンパク質は、CD30に特異的な抗体である。
【0120】
この実施形態では、抗体は、好ましくは
a)ブレンツキシマブ(キメラcAc10)のCDR領域1−6を含み、
b)ブレンツキシマブの重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含み、
c)a)またはb)の領域またはドメインと、90%以上のアミノ酸配列の同一性を有し、
d)ブレンツキシマブまたは、その標的結合フラグメントまたはその誘導体であり、および/または
e)ブレンツキシマブと、CD30と結合するために、競合する。
【0121】
認可された薬物Adcetris/ブレンツキシマブ ベドチン(Brentuximab vedotin)の抗体成分である、ブレンツキシマブ(クローンcAc10)の配列は、US2008213289A1に開示されている。
好ましくは、抗CD30抗体は、図11のIgHおよびIgL鎖の一次アミノ酸配列を含む(配列番号3および4)。
【0122】
好ましくは、これらの実施形態において、毒素は、式(i)の一つであり、
・ Lが、エチレンジアミノリンカーであり、
・ Lが、オリゴ−グリシン(Gly)ペプチドリンカー(nは、5個のアミノ酸の好ましい長さである)であり、および
・ Lが、(Gly)ペプチドの結合(conjugation)によって除去された、処理されたソルターゼ タグ(sortase tag)ペンタペプチドモチーフ(すなわち、ソルターゼ媒介のC末端のG残基(5番目のアミノ酸残基)の欠損)のアミノ酸残基1−4を示し、
・ リンカーXは存在せず、および
・ Yは、好ましくはアミノ酸配列GGGGSを有する、Ig軽鎖およびLのC末端間の5個のアミノ酸リンカーである。
【0123】
あるいは、毒素は、式(ii)の一つであり、一方
・ L1は、エチレンアミノリンカー、
・ L2は、オリゴ−グリシン(Gly)ペプチドリンカー(nは、好適には、5個のアミノ酸の長さである)、
・ Lは、(Gly)ペプチドの結合(conjugation)によって除去された、処理されたソルターゼ タグ(sortase tag)ペンタペプチドモチーフ(すなわち、ソルターゼ媒介のC末端のG残基(5番目のアミノ酸残基)の欠損)のアミノ酸残基1−4を示し、
・ リンカーXは存在せず、そして、
・ Yは、好ましくは、アミノ酸配列GGGGSを有する、Ig軽鎖およびL3のC末端との間の5つのアミノ酸リンカーである。
【0124】
さらに、本発明は、上記に従って、結合タンパク質−薬物複合体(binding protein drug conjugates)(BPDC)の製造方法を提供する。ここで、ソルターゼ酵素認識モチーフ(sortase enzyme recognition motif)を保有する結合タンパク質が、ソルターゼ酵素を用いて、Lとして、オリゴ−グリシンペプチド(Gly)を担う、少なくとも一つのアントラサイクリン誘導体複合体(conjugate)に、結合される。
【0125】
ソルターゼ技術は、その利点(部位特異的結合(site−specific conjugation)、毒素および結合タンパク質の間の化学量論的に定義された関係、結合(conjugation)の高い効率)は、WO2014140317A1出願に、詳細に説明されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。ソルターゼ タグ(sortase tag)に関する更なる説明は、上述の通りである。
【0126】
結合タンパク質のC末端に、好ましくは、抗体または免疫グロブリン鎖のC末端に、少なくとも一つのIg軽またはIg重鎖に、SMAC技術によって、PNU−誘導体低分子薬物(payload)を結合することは、本発明の好ましい実施形態である。
【0127】
これは、結合タンパク質のC末端、または多量体結合タンパク質(たとえば、抗体のような)のポリペプチドサブユニットに続いて、直接、ソルターゼ酵素のC末端ペンタペプチド認識モチーフをコードする、結合タンパク質または免疫グロブリンのサブユニットのための哺乳動物細胞発現構築物(mammalian cell expression constructs)を生成することによって達成される。
【0128】
LPXTGまたはLPXSGであり、以前に述べた、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のソルターゼAのペンタペプチドモチーフは、非限定的な例として提供されたのみであり、そして、ペンタペプチドモチーフのNPQTNを認識する、黄色ブドウ球菌のソルターゼBのような、他の種または他のクラスのソルターゼ酵素によって認識される任意の他のペンタペプチド モチーフによって置換されてもよい、ことを理解すべきである。
また、たとえば、最近、Dorrら、(2014年)によって開示された、黄色ブドウ球菌のソルターゼAの操作されたバージョンによって認識される、たとえば、LAETGのような、操作されたソルターゼ酵素によって認識される認識モチーフを使用することもできる。
【0129】
WO2014140317は、また、SMAC技術(ソルターゼ媒介抗体結合技術)と呼ばれている、ソルターゼによる結合(sortase conjugation)技術に関して、さらに、技術的な詳細、開示および実施可能性を提供する。この技術は、すなわち、(Gly)nストレッチ(本明細書の上記毒素に関して説明したように)でマークされたもの、および、たとえば結合タンパク質と結合することができるペプチドタグである、いわゆるソルターゼ タグ(sortase tag)を有するもの、の2つの主体の結合を許容する。
【0130】
これらのソルターゼ タグ(sortase tag)は、オリゴペプチドであり、前記ソルターゼ タグ(sortase tag)オリゴペプチドのC末端がフリーであるように、通常、第2の主体(ここでは、アントラサイクリン誘導体)に結合されるべき、第1の主体(ここでは、結合タンパク質)に融合されたペンタペプチドモチーフである。
WO2014140317に開示されているように、これは、ペンタペプチドソルターゼ タグ(sortase tag)の追加のアミノ酸をコードする発現ベクターから、結合タンパク質を発現することによって達成することができる。
【0131】
そのようなソルターゼ タグ(sortase tag)は、たとえば、Xは20個の天然アミノ酸のいずれかである、LPXTGまたはLPXSG(黄色ブドウ球菌からのソルターゼAについて)、LPXSG(Dorrら、2014年に記載された黄色ブドウ球菌から、操作したソルターゼA 4S9について)またはLAXTG(Dorrら、2014年に記載された黄色ブドウ球菌から、操作したソルターゼA 2A9について)である。
しかしながら、そのようなソルターゼ タグ(sortase tag)は、WO2014140317および先行技術(Spirigら、2011年)に開示されているように、他の細菌種からのソルターゼ酵素、またはソルターゼ クラスにおいて、配列が異なっていてもよい。
【0132】
第2のエンティティ(entity)は、遊離N末端(−NH)を有するグリシンストレッチ(glycine−stretch)(Gly−stretch)を含み、Gly−stretchは、オリゴ−グリシンペプチドである。好ましくは、nは、≧1と≦21の整数である。特に好ましい一実施形態では、nは、≧3と≦10の間の整数であり、好適には、n=3またはn=5である。最も好ましくは、n=5である。
【0133】
ソルターゼ酵素は、その後、転移ペプチド反応の手段によって、互いに、2つのエンティティを融合することが可能である。その間、C末端アミノ酸残基(たとえば、LPXTGにおけるG)は、開裂され、そして、その後、上記グリシンストレッチ(glycine−stretch)の最初のグリシンによって置き換わる。
【0134】
別の好ましい実施形態において、ペンタペプチド認識モチーフは、直接、免疫グロブリンの軽鎖または重鎖の最後の天然に存在するC末端アミノ酸に付加することができる。ヒト免疫グロブリンκの場合は、軽鎖は、C末端システイン残基であり、ヒト免疫グロブリンλの場合は、軽鎖は、C末端セリン残基であり、そして、ヒト免疫グロブリンIgGの場合、重鎖は、ヒトFcγ1 cDNAによりコードされるC末端リシン残基であってもよい。
【0135】
しかし、別の好ましい実施形態は、また、直接、ヒトFcγ1 cDNAによりコードされた、最後から二番目のC末端グリシン残基に、ソルターゼ ペンタペプチド モチーフを付加することである。通常、抗体の重鎖の末端リシン残基は、哺乳動物細胞における、翻訳後の(prosttranslational)修飾によって切り取られるからである。したがって、90%以上で、天然のヒトIgG1は、IgG1重鎖のC末端リジン残基を欠いている。
【0136】
別の好ましい実施形態において、ペンタペプチド認識モチーフは、ヒト免疫グロブリンIgG重鎖のC末端に付加することができ、ここで、ヒトFcγ1 cDNAによってコードされるC末端リシン残基は、リシン以外のアミノ酸残基によって置換される。
【0137】
我々は、ある場合(たとえば、Igκ軽鎖のC末端で)には(Beerliら、2015年)、結合タンパク質のC末端およびソルターゼ タグ、Lの間に、追加のアミノ酸を追加することが有益であることを以前に説明した。これは、結合タンパク質への低分子薬物(payload)のソルターゼ酵素結合(conjugation)効率を改善することが示されている。Igκ軽鎖の場合には、Igκ軽鎖のC末端の最後のシステインアミノ酸とソルターゼ タグの間に、5個のアミノ酸(GGGGS)を追加することにより、結合(conjugation)の動力学(kinetics)を改善し、Igκ軽鎖およびIg重鎖のC末端が、同様の動力学(kinetics)で結合(conjugate)することができることが、観察された(Beerliら(2015年)参照)。したがって、結合タンパク質または抗体サブユニットの最後のC末端アミノ酸と、ソルターゼ タグ、Lの間に、1≧および≦21のリンカーYを、所望により、含むことは、別の好ましい実施形態である。
【0138】
本発明は、さらに、上記説明に従って、または、上記の説明の方法に従って製造された、結合タンパク質−薬剤複合体(BPDC)の、
特定の病態
・ を罹患している、
・ の発症するリスクがある、および/または
・ であると診断された。
ヒトまたは動物被験体の治療のための使用を提供する。
【0139】
本発明は、さらに、
特定の病態
・ を罹患している、
・ の発症するリスクがある、および/または
・ であると診断された。
ヒトまたは動物被験体の治療のための医薬品の製造についての上記説明に従った、結合タンパク質−薬剤複合体の使用を提供する。
【0140】
好ましくは、病態は、腫瘍性疾患である。より好ましくは、腫瘍性疾患は、
・ IHCまたはISHによって決定される、1+、2+または3+のHER−2発現スコアを有する腫瘍で、その癌は、好ましくは乳癌であり
・ IHC、ELISAまたはフローサイトメトリーによって決定される、CD30陽性である腫瘍で、より好ましくは、リンパ腫であり、より好ましくはホジキンリンパ腫(HL)または全身性未分化大細胞型リンパ腫(systemic anaplastic large cell lymphoma)(sALCL)
である。
【0141】
HER−2ステータスの決定は、たとえば、ASCO/CAPガイドラインに応じて決定され、ウォルフ(Wolff)ら、2013年に記載されている。
【0142】
CD30ステータスの決定は、たとえば、ヤング(Young)、2014年の方法に従って決定される。
【0143】
本発明は、さらに、上記の説明または上記説明の方法によって製造された、結合タンパク質−薬物複合体(BPDC)および少なくとも1つの他の薬学的に許容される成分を含む医薬組成物を提供する。
【0144】
[発明の詳細な説明]
BPDCsとADCsの生成のために、伝統的なマレイミドリンカーの化学(chemistry)の主な制限を克服するために、我々は、以前に、BPDCsとADCsの生成のために、配列特異的なトランスペプチダーゼ酵素を用い、ソルターゼ酵素か、または、いわゆる、分割−インテイン(split−inteins)のいずれかを用いる、酵素的アプローチを開発した(WO2014140317A1を参照)。
【0145】
特に、抗体の文脈において、SMAC技術(ソルターゼ媒介抗体結合技術(sortase−mediated antibody conjugation technology))と呼ばれる、ソルターゼ酵素による、小分子である低分子薬物(payload)の部位特異的結合(site−specific conjugation)が、同じ結合タンパク質と同じ低分子薬物(payload)が使用される場合、in vitroで腫瘍細胞を死滅することにおいて、化学的に結合されたADCsと同等に強力である、ADCsを齎すことを実証することができた。
【0146】
さらに、同じ標的抗体(抗HER−2トラスツズマブ)と同じ毒性の低分子薬物(payload)(DM1)が用いられた場合、HER−2標的に特異的なADCsを生成したSMAC技術は、異種移植モデル(xenotransplantation models)において、強力な腫瘍退縮を導いた(WO2014140317A1)。しかしながら、第一に、SMACで生成されたADCsにおいては、マレイミドリンカー化学(chemistry)は採用されず、そして、第二に、結合反応は、抗体のIgH遺伝子またはIgL鎖のいずれかのC末端に、部位特異的(site−specific)な方法で行われるので、より均質な(homogeneous)ADCsが得られた。
【0147】
SMAC技術の場合には、部位特異的結合(site−specific conjugation)は、たとえば、特異的に、LPXTGまたはLPXSGのペンタペプチド モチーフ(X=20の天然のアミノ酸のいずれか)を認識し、そして、結合を意図する組換え抗体に付加する(append)ことができる、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の組換え(recombinant)ソルターゼA酵素によって効果を上げることができる。
【0148】
その後、ソルターゼAは、ペプチド転移反応を触媒する求核剤として、オリゴ−グリシンストレッチ(oligo−glycine−stretch)を使用し、それによって、オリゴ−グリシンのアミノ基は、LPXTGまたはLPXSGのペンタペプチドモチーフの、スレオニンまたはセリンと、グリシンの間のペプチド結合に対する求核攻撃に効果を示す。これは、そのペプチド結合開裂と、オリゴ−グリシンペプチド(図1参照)のN末端グリシンとの間の新たなペプチド結合形成、すなわち、ペプチド転移反応を齎す。
【0149】
ソルターゼ媒介性結合(conjugation)によって生成される、トラスツズマブ−DM1複合体(conjugates)は、化学的に結合されたDM1複合体(conjugates)(既に医院に供給されている、T−DM1、またはKadcyla(R))に匹敵する効力を有することが開示されているが、SMAC技術のより、生成されたADCsのより高い効力は、達成されていない(WO2014140317A1)。これは、 同じ標的抗体と同じ低分子薬物(payload)が採用されているので、予期できなかった。
【0150】
これ、および、また、HER−2標的より、腫瘍細胞において、潜在的に、より低いレベルで、発現され、または、ADC結合により、潜在的に、より低い効率で、内部移行(internalized)される(データは示さない)、他のTSAsに特異的に結合する、異なるモノクローナル抗体を用いた他の実験に基づき、メイタンシンより高い効力を有する、および/または、潜在的に異なる作用機序を有する、毒性低分子薬物(payload)が、十分に、効果的なADCsを、生成するために必要とされることが明らかになった。
【0151】
また、低分子薬物(payload)の、LPXTG−またはLPXSG−修飾結合タンパク質へのソルターゼ結合(sortase conjugation)を可能にするように、オリゴ−グリシンペプチドの付加を許容すべく、低分子薬物(payload)は、少なくとも1個の反応基で、修飾を受けやすくなければならない。
【0152】
最後に、より高い効力の毒素が使用される場合、循環中に、毒性の低分子薬物(payload)の望ましくない放出を防止するために、修飾は、グリシンストレッチ(glycine−stretch)および低分子薬物(payload)の間の安定な結合を齎さなければならないが、同時に、特異的結合およびBPDCまたはADCの腫瘍細胞への内部移行(internalization)の際に、腫瘍細胞の効果的な死滅を、依然として、齎さなければならない。
【0153】
SMAC技術の文脈において、先行技術に記載された、異なる毒性低分子薬物(payload)の経験的評価は、エチレンジアミン−スペーサーで修飾された、PNU−159682と呼ばれる、ネモルビシンの非常に強力なアントラサイクリン誘導体(Quintieriら、2005年)(図2も参照)は、ペンタグリシンストレッチ(glycine−stretch)の付加を可能にするために、LPXTGで修飾された抗体に、非常に効果的に、SMAC技術によって、結合することができ、ほぼ完全に、結合された(conjugated)ADCsを製造した、という知見を齎した。これは、HIC(疎水性相互作用クロマトグラフィー)および逆相クロマトグラフィー(データは示さない)による生成物の分析に基づいた。
【0154】
また、PNU−EDA−Glyと呼ばれる、この修飾されたPNU−159682誘導体は、以下に提供される、実施例において記載されるように、種々のモノクローナル抗体に、SMAC結合(conjugated)される場合、腫瘍細胞の、非常に強力かつTSA依存的死滅を齎した。特に、HER−2低発現のヒト乳癌細胞は、SMAC−技術で結合されたPNU−EDA−Glyを用いて、インビトロで、効率的に死滅させることができた。一方、メイタンシン−毒素複合体(maytansine−toxin conjugates)は、ほとんど効果的でなかった。
【0155】
これは、好ましくは、PNU−EDA−Gly、または、それに結合された少なくとも2つのグリシンを有する、オリゴ−グリシンペプチドを有する任意のPNU−誘導体を含む、強力なBPDCsおよびADCsを生成するための、PNU−EDA−Gly誘導体の潜在的な有用性を実証する。
【0156】
また、それは、癌疾患の治療のための低分子薬物(payload)として、好ましくは、PNU−EDA−Gly、または、オリゴ−グリシンペプチドを有する任意のPNU−誘導体を含む、BPDCsおよびADCsの有用性を実証する。
【0157】
アントラサイクリン誘導体である、PNU−159682(図2)および、化学的結合の文脈におけるその使用、およびADCsは、従来技術(たとえば、本明細書中に、参考文献として提供されている、WO2009099741A1、WO2010009124、WO2012073217)に開示されているが、本明細書に開示されている、PNU−EDA−Glyに類似した化合物、またはソルターゼによる結合(sortase conjugated)されたPNU−EDA−Glyを含有するADCsは、まだ、先行技術に記載されておらず、また、EDAスペーサーとGlyリンカーを有する、PNU−誘導体の特定の構造は、いかなる先行文献においても、開示もクレームもされていない。
【0158】
PNU誘導体が、エステル結合およびマレイミドリンカーによってではなく、ペプチド結合を介して、タンパク質に安定に連結されている、安定な付加物は、さらに以下の実施例に開示されているように、一般的に、血清中のペプチド結合の高い安定性のために、インビボにおける安定性および薬物動態学的挙動という観点で、より優れていると証明できる。また、SMAC−技術による結合後に安定した薬物複合体(conjugates)を示すことが期待される、グリシン−ストレッチ(Gly−stretch)を有するPNU−誘導体は、図6Aおよび図6Bに開示されている。
【0159】
[実験と図]
本発明を、図面および前述の説明において、詳細に、図示および説明してきたが、そのような図示および説明は、例示または代表であって、限定的なものではないと考えられるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。開示された実施態様についての他の変形は、図面、開示、および添付の特許請求の範囲の研究から、クレームされた発明を実施する際に、当業者によって、理解され、そして実施されることができる。
特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という単語は、他の要素またはステップを排除せず、そして、不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外しない。
特定の手段が、相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが、有利に使用できないことを示すものではない。
請求項におけるいかなる参照符号(Any reference signs)も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0160】
本明細書に開示される全てのアミノ酸配列は、N末端からC末端に示されている。本明細書中に開示されるすべての核酸配列は、5`から、3`として開示される。
【0161】
実施例1
ソルターゼ媒介抗体結合技術(sortase mediated antibody conjugation technology)(SMAC技術)により、部位特異的に(site−specifically)に、C末端で、PNU−EDA−Gly−低分子薬物(payload)が結合した、モノクローナル抗体、ブレンツキシマブとトラスツズマブの生成。
【0162】
モノクローナル抗体である、ヒトCD30の標的に特異的なブレンツキシマブ(クローンのcAc10)の重鎖および軽鎖の可変領域配列を、特許US2008213289A1から得た。
市販の抗体であるハーセプチン(トラスツズマブ)中に含まれる、ヒトHER−2特異的トラスツズマブ抗体または、それに由来するADC Kadcyla(R)のそれらは、オンラインIMGTデータベースから得られた((VH: http://www.imgt.org/3Dstructure−DB/cgi/details.cgi?pdbcode=7637&Part= Chain&Chain=7637H および、VL:http://www.imgt.org/3Dstructure−DB/cgi/ details.cgi?pdbcode=7637&Part=Chain&Chain=7637L。
キメラのモノクローナル抗体のcAc10および、ヒト化モノクローナル抗体トラスツズマブは、ソルターゼA認識配列(Sortase A recognition sequence)および追加のStrep IIアフィニティー精製タグ(Strep II affinity purification tag)(HCタグ配列:LPETGGWSHPQFEK;LCタグ配列:GGGGSLPETGGWSHPQFEK)で、C末端がタグ付けされた、それらの重鎖と軽鎖を有して、当業者に公知の方法を用いて作製された(図11Aおよび11Bを参照)。
【0163】
アントラサイクリン誘導体PNU−EDA−Gly図3A)は、Levana バイオファーマ、サンディエゴ、CAによって提供され、そこでは、図3Bの合成スキームに従って、エチレンジアミノ(EDA)リンカーを介して、PNU159682のカルボニル基に、ペンタグリシンペプチドを結合した。このために、市販のPNU159682は、最初に、NaIOの60%メタノール溶液で、3時間、室温で、酸化し、そのカルボン酸(図3Bの1)を得た。
その後、N−ヒドロキシサクシンイミド(N−hydroxysuccidimide)(NHS、46mg、400μmol)およびエチル(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC、100mg、523μmol)のジクロロメタン(DCM)溶液を、1(51mg、81μmol)の6mlDCM溶液に添加した。30分後、混合物を、水(2x6mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、そして、蒸発させた。
【0164】
次いで、アミン(図3Bの2、トリフルオロ酢酸塩として、55mg、81μmol)の添加に先立って、残渣を、ジメチルホルムアミド(DMF)2mLに溶解し、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、50μL)を加えた。
【0165】
混合物を、ピペリジンの添加(40μL)の前に、1時間撹拌し、さらに、攪拌を20分間、続けて行った。混合物を、HPLCにより精製して、PNU−EDA−Gly図3Bの3、34mg、44%)を、赤色固体として得た。
MS m/z 955.2(M+H)。
【0166】
PNU−EDA−Glyを、LPETGタグ化mAbの[10μM]と、PNU−EDA−Gly[200μM]を、0.62μMソルターゼA(50mMのヘペス、150mMの塩化ナトリウム、5mMの塩化カルシウムで 、pH値7.5)の存在下に、25℃で、3.5時間、インキュベートすることによって、モノクローナル抗体に結合した。
【0167】
反応は、プロテインA HiTrapカラム(GEヘルスケア)を通過させることにより停止させ、25mMのリン酸ナトリウム(pH7.5)で平衡化し、続いて、5倍のカラム容量(CVs)のバッファーで洗浄した。
【0168】
結合した複合体(conjugate)を、5倍のカラム容量(CVs)の溶出バッファー(0.1Mコハク酸、pHが2.8)で溶出し、酸を中和するために、25%(v/v)の1Mトリス塩基を含有するチューブに、1つのCV画分を集めた。タンパク質含有画分をプールし、NAP 25カラム(GEヘルスケア)を使用した、G25カラムクロマトグラフィーによって、製造者の指示に従って、pH5.0の10mMのコハク酸ナトリウム、100mg/mLのトレハロース、0.1%w/vのポリソルベートまたはリン酸塩(phosphate)20で、製剤化(formulated)した。
【0169】
各複合体(conjugate)の凝集物含有量を、10%のIPA、0.2Mリン酸カリウム、0.25M塩化カリウム、pH6.95を用い、0.5mL/分で、TOSOH TSKゲルG3000SWXL 7.8ミリメートルx30センチメートル、5μmのカラムでのクロマトグラフィーにより評価した。
薬物負荷は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)と、逆相クロマトグラフィーの両方によって評価した。
HICは、TOSOHの、ブチルNPR 4.6ミリメートルx3.5センチメートル、2.5μmのカラムを使用し、0.8ml/分で、A(1.5Mの(NHSO、25mMのNaPi、pH値=6.95±0.05)とB(75%の25mMのNaPi、pH値=6.95±0.05、25%のIPA)の間の12分間の直線勾配で溶出して、実施した。
逆相クロマトグラフィーは、ポリマー ラボ PLRP 2.1ミリメートルx5センチメートル、5μmのカラムを使用して、1mL/分/80℃で、0.05%のTFA/HOと、0.04%のTFA/CHCNとの間の、25分間の直線勾配で溶出して行った。サンプルは、DTTと共に、15分間、37℃、pH8.0でインキュベートすることにより最初に還元した(reduced)。PNU−EDA−GlyベースのADCsの両方は、主に単量体であり、そして、それぞれ、最大理論量の4に近接する薬物対抗体比(drug−to−antibody−ratio)を有した。
【0170】
表2に、ADCの製造の結果を纏めた。
【0171】
【0172】
実施例2
ソルターゼA結合 ブレンツキシマブ−PNU−EDA−Glyおよびトラスツズマブ−PNU−EDA−Glyの ADCsを用いた、インビトロの細胞毒性アッセイ。
ブレンツキシマブ−PNU−EDA−Glyの細胞毒性は、Karpas−299(CD30を高レベルで発現する非ホジキンリンパ腫細胞株)およびL428(CD30のレベルは低〜中程度の発現のホジキンリンパ腫細胞株)を用いて調べた(図4)。
対照として、cAc10−PNU−EDA−Glyの効果は、市販のCD30特異的cAc10−vcPAB−MMAE複合体(conjugate)である、Adcetris(R)(陽性対照として)および、市販のHER−2特異的トラスツズマブ−DM1複合体(conjugate)である、Kadcyla(R)(陰性対照として)の効果と比較した。
【0173】
このために、細胞は、96ウェルプレート上に、100μl RPMI/10%FCSで、ウェル当たり10個の細胞密度で、置かれ、そして、5%のCO雰囲気下に、加湿インキュベーター中、37℃で増殖させた。一日インキュベーションした後、25μlの培地を、注意深く、各ウェルから除去し、そして、20μg/mlから0.25ng/mlの範囲の最終ADCの濃度を齎すように、増殖培地中の各ADCの3.5倍の連続希釈液25μlで置き換えた。各希釈は、重複して行われた。さらに4日後、プレートをインキュベーターから取り出し、そして、室温で平衡化した(equilibrated)。約30分後、100μlのセルタイター−グロ(R)(CellTiter−Glo(R))発光溶液(プロメガ社、カタログ番号G7570)を、各ウェルに加え、そして、5分間、450rpmでプレートを振盪した後、続いて、振盪せずに、10分間インキュベートし、発光を、各ウェル、1秒の積分時間(integration time)で、テカン インフィニティ F200で測定した。
【0174】
予想通り、陽性対照として使用された、抗CD30 ADC Adcetris(R)は、CD30LO L428細胞の死滅効果は十分ではなかったが(図4B)、強力に、CD30HI カーパス−299(CD30HI Karpas−299)細胞を、8.2ng/mlのEC50で、死滅させた(図4A)。
【0175】
対照的に、陰性対照として使用された、抗HER−2 ADC Kadcyla(R)は、特異的細胞死を示さず、そして、いずれかの細胞株にも無効だった(図4)。
【0176】
有意に、ソルターゼにより結合させたADC、cAc10−PNU−EDA−Glyは、強力に、CD30HI カーパス(Karpas)−299細胞を、6.9ng/mlのEC50値で死滅させた(図4A)。
【0177】
cAc10−PNU−EDA−Glyは、CD30LO L428細胞を、より高い濃度でのみ、死滅させた。これは、使用した、対照のADCsと同様であり、このADCの効力は、実際、特異的で、CD30結合に媒介されていることを示す(図4B)。
【0178】
したがって、PNU−EDA−Glyのソルターゼ媒介性結合(Sortase−mediated conjugation)は、対照のADC、Adcetris(R)のそれを上回る、非常に高い効力さえ有するADCを齎した。
【0179】
SMACで生成したトラスツズマブ−PNU−EDA−GlyADCの腫瘍細胞死滅の効力は、SKBR3細胞(HER−2を過剰発現するヒト乳癌細胞株)および、T47D細胞(自然に、HER−2の低いレベルを発現する乳癌細胞株)を用いて調べた。そして、これは、市販のHER−2特異的ADCである、トラスツズマブ−DM1複合体(conjugate)のKadcyla(R)と比較した(図5)。このために、細胞は、96のウェルプレートに、100μlのDMEM/10%FCS中で、ウェル当たり10個の細胞密度で置かれ、そして、上記のように、アッセイを同様に行った。
【0180】
予想通り、陽性対照のADCである、Kadcyla(R)は、HER−2LO T47D細胞を十分に、死滅させなかったが(図5B)、強力に、23.7ng/mlのEC50で、HER−2過剰発現のヒトSKBR3乳癌細胞を死滅させた(図5A)。
【0181】
重要なことに、SMAC技術によって生成された、トラスツズマブ−PNU−EDA−Glyは、優れた細胞毒性を示し、そして、HER−2を過剰発現するSKBR3細胞だけでなく、HER2LO T47D細胞も、それぞれ、4.8および11.0ng/mlのEC50値で死滅させた(図5)。
したがって、トラスツズマブに対する、PNU−EDA−Glyのソルターゼの媒介する結合は、商業的に入手可能であり、そして、FDAで承認された対照物である、ADC Kadcyla(R)のそれを超える、非常に高い効力を有するADCを齎し、さらに、HER2LO ヒト乳癌細胞にさえ効果的である。
【0182】
実施例3
トラスツズマブ エムタンシン(Kadcyla(R))を含むマレイミドリンカーと比較した、ソルターゼ Aで結合されたcAc10−PNU−EDA−GlyADCの、インビトロの血清安定性。
【0183】
ブレンツキシマブ−PNU−EDA−Gly(cAc10−PNU−EDA−Gly)およびKadcyla ADCsのインビトロの血清安定性は、ELISAベースの血清安定性アッセイにおいて評価された。
簡潔に述べると、cAc10−PNU−EDA−Glyは、マウス(シグマ社、M5905)、ラット(シグマ社、R9759)およびヒトの血清(シグマ社、H6914)で希釈され、そして、37℃でインキュベートされた。試料は、0、3、7、14日目に、液体窒素中でスナップ凍結(snap−frozen)され、そして、ELISA分析まで、−80℃で保存された。
【0184】
げっ歯類の血清について、cAc10−PNU−EDA−Glyの血清サンプルの希釈系列を、ADCに結合させるために、マウス抗PNUモノクローナル抗体(ヒトIgG−PNU複合体(conjugate)で、マウスを免疫化し、そして、BSA−PNU複合体(conjugate)でスクリーニングすることによって、社内で製造した)の2μg/mlでコーティングされたELISAプレート上で捕捉し、また、全IgGに結合させるために、抗ヒトFcF(ab‘)2(ジャクソン イムノリサーチ)を用い、そして、HRP−標識(HRP−conjugated)抗ヒトIgG F(ab’)2(ジャクソン イムノリサーチ)の1:2500希釈液で検出した。
【0185】
霊長類の(primate)血清については、ELISAプレート上に、2μg/mlの組換えヒトCD30(シノ バイオロジカル社、10777−H08H)でコーティングし、そして、HRP−標識抗ヒトIgG F(ab’)2(ジャクソン イムノリサーチ)の1:2500希釈液または1μg/mlのマウスの抗PNU IgG(内製)、続いて、HRP−標識抗マウスFc F(ab’)2(ジャクソン イムノリサーチ)を、それぞれ、総IgGおよびADCの検出のために使用した。
【0186】
Kadcylaの場合には、ADCに結合する、内製の抗メイタンシンmAbを用いる以外は、上記と同一のプロトコルを使用して、マウス、ラットおよびヒトの血清中での安定性を決定した。
ADCの血清濃度と総IgGsは、既知濃度の同じADCのサンプルとの比較により、試料滴定の半最大値(half maximal values of the sample titrations)から計算した。
【0187】
図7Aは、cAc10−PNU−EDA−GlyADCの、特に、マレイミドリンカーを含有するKadcyla(図7B)のそれと比べた、優れた安定性を示し、テストされた4種のいかなる血清中でも、全実験を通して、ADCレベルにおいて、実質的に減少がなかった。
0日目と14日目の間の時間点を、0の最終濃度を達成するように規定された(constrained)、一相指数関数的減衰関数(one−phase exponential decay function)にフィットさせることによって、各血清において、cAc10−PNU−EDA−GlyおよびKadcylaの半減期の値を決定した。Kadcylaの半減期は、それぞれ、マウス、ラットおよびヒトの血清において、3.7日、4.4日および2.9日であったのに対して、cAc10−PNU−EDA−Glyの半減期は、マウス、ラットおよびヒト血清に対し、14日より大きかった。
【0188】
実施例4
マウスにおける、ソルターゼAで結合された(conjugated)、Ac10−Gly5−PNUの、インビボでの安定性。
【0189】
Ac10−Gly5−PNU ADCを室温で解凍し、そして、1mg/kgでの投与濃度のために、滅菌PBSで、0.2mg/mlに希釈した。サンプルは、9匹の雌のスイスウェブスターマウスに、5ミリリットル/kgの容量で、ivで注入された。血液を、1時間、24時間、72時間、7日、14日、および21日後に、動物から採取した。個々の動物は、倫理基準に従って、少なくとも1週間あけて、2回の採血時点でのみ使用した。したがって、トータルで、1群あたり9匹のマウスにおいて、3匹のマウスは、1時間後と7日目に採血され、3匹の異なるマウスは、24時間後および14日後に採血され、そして、3匹の追加の異なるマウスは、72時間後および21日後に採血された。動物の各グループにおいて、約200μLの血液が、最初の採血の間、顎下静脈(submandibular vein)のランセット穿刺(lancet−puncture)によって収集され、そして、最後の採血(最後の出血(terminal bleed))の間、顎下静脈(submandibular vein)のランセット穿刺(lancet−puncture)によって、約600μLの血液が集められた。全ての血液は、K2−EDTAを含むチューブに回収された。血漿を、10分間、1500gの遠心分離により血液から単離し、そして、実施例4に記載したように、ELISAによる分析まで、−80℃で貯蔵するための滅菌凍結バイアル(cryovials)に移した。
【0190】
図8のデータは、SMAC技術によって生成されたADCの高い安定性を示す。実験の全期間、ADCの濃度は、総IgGについて測定されたものよりもわずかに低く、これは、薬物と抗体との間のリンカーが、インビボで、安定していることを意味する。0の最終濃度に到達するように規定された一相指数関数的減衰関数(one−phase exponential decay function)に、3日目と21日目の間の時間点をフィットさせることによって、インビボでの、スローフェイズ(slow phase)の半減期は、それぞれ、総IgGおよびADCについて、8.3および7.8日と決定した。
【0191】
実施例5
HER−2を発現するEMT−6クローンの概要および特徴。
【0192】
抗HER−2 ADCsの細胞毒性は、ヒトHER−2を過剰発現するように操作された、マウス乳腺腫瘍細胞株のEMT−6を用いて調べた。EMT−6細胞は、FCS(ウシ胎児血清)10%(v/v)、1万IU/mLのペニシリン−ストレプトマイシン1%(v/v)および200mMのL−グルタミン1%(v/v)で、補充された、DMEM(ダルベッコの改変イーグル培地−高グルコース)中で、単層として培養された。
【0193】
EMT−6細胞は、ヒトHER−2遺伝子をコードする発現ベクターとピューロマイシン耐性マーカーを用いてエレクトロポレートされ、そして、ヒトHER−2を安定に発現するセル・プール(cell pools)を、当業者に公知の方法を用いて選択した。
【0194】
HER−2の発現を、フローサイトメトリーにより確認した。簡潔に述べると、トリプシン処理(trypzinization)に続いて、10個の細胞を、FACSチューブ中で遠心分離した。得られたペレットを、2%のFCSを補充したPBS(リン酸緩衝生理食塩水)に再懸濁した。続いて、細胞は、抗HER−2抗体トラスツズマブと(30分、4℃)でインキュベートし、次いで、遠心分離および洗浄(2%FCSを有するPBSの3mL)した。次いで、細胞を、以前のように再懸濁し、そして、暗所で、抗ヒトIgG抗体(Fcγ特異的)PE(エビオサイエンス社)とインキュベートし(30分、4℃)、洗浄(2%FCSを含む4mLのPBS)した。フローサイトメトリーは、その後、FACSキャリバー(FACS Calibur)(BD社)で行われた。
【0195】
HER−2トランスフェクトされたEMT−6細胞(HER−2−transfected EMT−6 cell)は、単一細胞クローンを単離するために、FACS ARIA IIを用いたフローサイトメトリーによって選別された、単一の細胞である。これらは、増殖し(expanded)、そして、HER−2の発現は、フローサイトメトリーにより確認した。
【0196】
図9は、インビボの研究のために選択されたクローンのFACS分析データを示す(実施例6)。
【0197】
実施例6
同所性乳癌モデル(orthotopic breast cancer model)における、ソルターゼ Aでコンジュゲートされた(conjugate)トラスツズマブ−PNU−EDA−GlyADCのインビボでの効果。
【0198】
トラスツズマブ−PNU−EDA−Glyのin vivoでの効果は、HER−2陽性乳癌の免疫応答性同所性マウスモデル(immunocompetent orthotopic mouse model)において評価した。このために、in vivoの増殖に適すると以前に決定されていた、10のヒトHER−2を発現するマウス乳癌細胞のEMT6を(実施例6)、雌Balb/cマウスの右乳腺脂肪パッド(right mammary fat pads)に、移植した。さらに、対照動物には、HER−2陰性EMT6細胞を移植した。続いて、原発腫瘍の容積を、厚さ測定(calipering)により測定した。13日後、100〜150ミリメートルの平均腫瘍体積に到達したとき、担癌動物を、腫瘍の大きさに応じて、各6匹の動物の群に無作為に分けた。
【0199】
動物は、同日(13日目、無作為化の日)および7日後(20日目)に、対照であるADC Kadcyla(R)(15mg/kg)、トラスツズマブ−PNU−EDA−Gly(1mg/kg)またはビヒクル対照を、静脈内注射によって処理した。腫瘍サイズは、厚さ測定(calipering)でモニターされ、そして、その腫瘍容積が、1000〜1500ミリメートルに達した動物は終了させた(図10)。
【0200】
ビヒクル対照マウスの腫瘍は急速に増殖し、細胞の移植後30日以内に、約千mmの平均サイズに達した(図10A)。Kadcyla(R)による治療は、ほとんどの動物における腫瘍増殖にほとんど影響を及ぼさなかった。唯一、6匹の動物のうちの一匹が、腫瘍増殖において、有意な遅延を示した(図10C)。
著しく対照的に、トラスツズマブ−PNU−EDA−Glyで処置した全ての動物において、腫瘍は、治療の間に、退縮し続け、そして、細胞の移植後30日目までには、本質的に検出不能となった(図10D)。腫瘍は、60日目までに、ほとんどの動物で検出可能ではなかった。そして、腫瘍の再発は、40日目位に、一匹の動物だけで観察された。
【0201】
顕著に、トラスツズマブ−PNU−EDA−Glyの抗腫瘍活性は、非常に特異的であり、そして、HER−2陰性の腫瘍を担持するマウスの治療は、腫瘍退縮をもたらさなかった(図10B)。
纏めると、データは、ソルターゼ媒介の部位特異的に結合(site−specifically conjugated)された、トラスツズマブ−EDA−Gly−PNU ADCsは、ベンチマークのADCである、Kadcyla(R)よりはるかに優れた、インビボの腫瘍細胞死滅活性を有するADCを齎すことを、実証している。
【図面の簡単な説明】
【0202】
図1図1は、部位特異的なソルターゼ媒介抗体結合(SMAC−技術)の模式図である。モノクローナル抗体は、C末端に、LPXTGのソルターゼのタグを有して生成する必要がある。毒性低分子薬物(payload)は、連続して(in a row)、特定の数のグリシン残基(nは、≧1および≦21、好ましくは、nは、≧3および≦10、好ましくはn=3またはn=5、最も好ましくは、n=5)を有する、オリゴグリシンペプチドストレッチ(oligoglycine peptide stretch )(Gly−stretch)を含むように生成される必要がある。黄色ブドウ球菌のソルターゼA酵素は、LPXTGのペンタペプチドモチーフを、特異的に認識し、そして、オリゴ−グリシンペプチドストレッチの、LPXTGのスレオニン−グリシンペプチド結合への、ペプチド転移反応を触媒し、それによって、スレオニンおよびオリゴグリシンストレッチ(glycine−stretch)のN末端のグリシンとの間の新たな安定なペプチド結合を生成する。
図2図2は、先行技術(たとえばWO2009099741)またはQuintieriら(2005年))に記載されている、PNU−159682の構造であって、四環のアグリコン構造の反応性炭素の公式なアントラサイクリンのナンバリングシステムを含む。
図3A図3Aは、本明細書の実施例に開示されているように、ソルターゼ酵素を用いて、C末端のLPETGソルターゼ タグ化されたモノクローナル抗体に、SMAC技術の結合(conjugation)のために利用される、本明細書では、「PNU−EDA−Gly」と呼ばれる、PNU誘導体−EDA−Glyの構造を示す。
図3B図3Bは、アントラサイクリン誘導体PNU−EDA−Glyの合成スキームを示す。
図4図4Aは、細胞表面上で、CD30標的の高レベルを発現する、ヒト非ホジキンリンパ腫細胞株カーパス−299に対する、示されたADCsの細胞毒性の用量反応を示す。Adcetrisは、市販の抗CD30 ADCのブレンツキシマブ−ベドチン(vedotin)を指す。Kadcylaは、市販の抗HER−2/neu ADC T−DM1(トラスツズマブ エムタンシン)を指す。両方の細胞株は、HER−2/neuについて陰性であり、そして、このため、Kadcylaは、標的特異的な方法で、細胞死滅を齎さない陰性対照のADCとして作用する。細胞を、4日間、ADCの連続希釈液とともにインキュベートし、その後、CellTiter−Glo(R)発光溶液(Promega社)を添加し、次いで、生存細胞を、テカン インフィニティ F200で発光を測定することによって定量した。図4Bは、細胞表面における、CD30標的の非常に低いレベルを発現する、ヒトホジキンリンパ腫細胞株L428細胞に対する、示されたADCsの細胞毒性の用量反応を示す。Adcetrisは、市販の抗CD30 ADCのブレンツキシマブ−ベドチン(vedotin)を指す。Kadcylaは、市販の抗HER−2/neu ADC T−DM1(トラスツズマブ エムタンシン)を指す。両方の細胞株は、HER−2/neuについて陰性であり、そして、このため、Kadcylaは、標的特異的な方法で、細胞死滅を齎さない陰性対照のADCとして作用する。細胞を、4日間、ADCの連続希釈液とともにインキュベートし、その後、CellTiter−Glo(R)発光溶液(Promega社)を添加し、次いで、生存細胞を、テカン インフィニティ F200で発光を測定することによって定量した。
図5図5Aは、HER−2/neuの高レベルを発現する、ヒト乳癌細胞株SKBR3に対する、示されたADCの細胞毒性効果の用量反応を示す。細胞を、4日間、ADCsの連続希釈液とともにインキュベートし、その後、CellTiter−Glo(R)発光溶液(Promega社)を添加し、次いで、生存細胞を、テカン インフィニティ F200で発光を測定することによって定量した。図5Bは、HER−2/neuの低レベルの発現をするヒト乳癌細胞株T47Dに対する、示されたADCsの細胞毒性効果の用量反応を示す。細胞を、4日間、ADCsの連続希釈液とともにインキュベートし、その後、CellTiter−Glo(R)発光溶液(Promega社)を添加し、次いで、生存細胞を、テカン インフィニティ F200で発光を測定することによって定量した。
図6図6は、BPDCsまたはADCsを生産するSMAC−技術により、LPXTGでタグ化された結合タンパク質または抗体に対する、部位特異的結合(site−specific conjugation)のために有用な、追加のPNU−159682関連のアントラサイクリン誘導体を示す。Gly5−ストレッチを有する好ましいバージョンのみを示す。図6Aは、Gly5アミノ酸ストレッチが、直接、PNU誘導体の4環のアグリコン構造のA環に、そのカルボキシ末端を介してカップリングされている、誘導体示す。図6Bは、好ましいエチレン−アミノリンカーとGly5アミノ酸ストレッチが、直接、PNU誘導体の4環のアグリコン構造のA環にパップリングされた誘導体を示す。
図7A図7Aは、14日に亘る、ブレンツキシマブ−PNU−EDA−GlyADC(「cAc10−PNU ADC」と表記)のインビトロの濃度と、マウス(A)、ラット(B)、ヒト(C)血清における総IgG量の測定を示す。
図7B図7Bは、14日に亘る、トラスツズマブ エムタンシン(Kadcyla(R))ADCのインビトロの濃度と、マウス(A)、ラット(B)およびヒト(C)血清における総IgG量の測定を示す。
図8図8は、マウスにおいて、Ac10−Gly5−PNU ADCの投与後21日間に亘って、6時点で測定した、ADCのインビボ血漿濃度および総IgG量を示す。
図9図9は、抗HER−2抗体である、トラスツズマブとのインキュベーション、および、その後、フルオロフォアを含有する抗ヒトIgG抗体(Fcγ特異的)PEとのインキュベーションに続いて、インビボの研究のために選択された、EMT−6 HER−2クローンのFACS分析のデータを示す。
図10図10は、HER2−陽性乳癌の免疫応答性同所性マウスモデル(immunocompetent orthotopic mouse model)における、HER−2特異的ADCsのインビボ評価を示す。ヒトHER−2(A、C、D)または無関係な抗原ROR−1を発現する、EMT6マウス乳癌細胞は、 Balb/cマウスの乳腺脂肪体(mammary fat pads)において増殖させた。13および20日目に、動物を、ビヒクル対照(A)、1mg/kgのトラスツズマブ−PNU159682(B、D)、または15mg/kgのKadcyla(C)で、ivで処置した。動物が倫理的な理由のために、犠牲にされなければならなかった時点まで、腫瘍の増殖をモニターした。
図11A図11Aは、ソルターゼ酵素結合に続く、ペプチド結合を介して、ソルターゼ タグ(太字印刷で強調)の4番目のアミノ酸に、Gly5−ストレッチのアミノ基を通って、リンクしている、図3Bに示されているPNU誘導体を含む、トラスツズマブのPNU−トキシン誘導体を含む、研究に使用されるADCsの、C末端での、SMAC−技術TMで結合されたIgHおよびIgL鎖のアミノ酸組成物を示す。
図11B図11Bは、ソルターゼ酵素結合に続く、ペプチド結合を介して、ソルターゼ タグ(太字印刷で強調)の4番目のアミノ酸に、Gly5−ストレッチのアミノ基を通って、リンクしている、図3Bに示されているPNU誘導体を含む、ブレンツキシマブのPNU−トキシン誘導体を含む、研究に使用されるADCsの、C末端での、SMAC−技術TMで結合されたIgHおよびIgL鎖のアミノ酸組成物を示す。
【0203】
参考文献:
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図1
図2
図3A
図3B
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図11B
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]