特許第6813498号(P6813498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6813498人工皮膚培養容器およびこれを利用した人工皮膚の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6813498
(24)【登録日】2020年12月21日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】人工皮膚培養容器およびこれを利用した人工皮膚の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20201228BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20201228BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20201228BHJP
   A61L 27/60 20060101ALN20201228BHJP
【FI】
   C12M1/00 C
   C12M3/00 A
   !C12N5/071
   !A61L27/60
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-550773(P2017-550773)
(86)(22)【出願日】2016年3月22日
(65)【公表番号】特表2018-512848(P2018-512848A)
(43)【公表日】2018年5月24日
(86)【国際出願番号】KR2016002879
(87)【国際公開番号】WO2016159555
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2018年12月28日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0045499
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
(73)【特許権者】
【識別番号】515238183
【氏名又は名称】スンシル ユニバーシティー リサーチ コンソーシアム テクノ−パーク
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミン, テ ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ, ソン フン
(72)【発明者】
【氏名】イ, ヘ クァン
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ジェ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リュ, ヒ ウク
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒ ジン,
【審査官】 坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】 特表平05−507112(JP,A)
【文献】 特表2009−524414(JP,A)
【文献】 特開2012−080874(JP,A)
【文献】 特開2006−115723(JP,A)
【文献】 特開2012−235921(JP,A)
【文献】 特開平08−243156(JP,A)
【文献】 特開平06−292568(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/051228(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12M 3/00
A61L 27/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル形態の寒天(agar)を含み、
前記寒天は、一部が疎水性に改質されたものであり、
前記寒天のうち疎水性に改質された寒天(Hydrophobically‐modified agar)は、寒天に含まれるアガロース(agarose)の一つ以上の水素が疎水性分子で置換されたものであり、
前記疎水性分子は、炭素数12〜18のアルキル(alkyl)鎖のうち一つ以上であり、
前記人工皮膚培養容器の総寒天質量に対する、疎水性に改質された寒天の割合は、5〜50質量%であ
前記寒天は、微細気孔を含むものである、
人工皮膚培養容器。
【請求項2】
前記寒天がゲル化される前の寒天粉末100個を1ユニット(unit)とし、1ユニットあたりの寒天粉末に置換された疎水性分子数を置換度(Degree of substitution,%)とするとき、前記人工皮膚培養容器の寒天に対する疎水性分子置換度は、5.0%〜20%である、請求項1に記載の人工皮膚培養容器。
【請求項3】
前記微細気孔の平均粒径は、0.1〜10μmである、請求項に記載の人工皮膚培養容器。
【請求項4】
前記人工皮膚培養容器の気孔率は、人工皮膚培養容器の総寒天体積に対して5〜50体積%である、請求項に記載の人工皮膚培養容器。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の人工皮膚培養容器で人工皮膚を製造する方法であって、
前記人工皮膚培養容器の内部に無細胞コラーゲン(Acellular Collagen)溶液を導入するステップ;
前記無細胞コラーゲン溶液を培養して、前記導入された無細胞コラーゲン溶液を、前記人工皮膚培養容器の寒天内部へ進入(invasion)させるステップ;
前記人工皮膚培養容器の内部に、線維芽細胞(Human dermal fibroblast)溶液を導入し、前記コラーゲン溶液をゲル化させるステップ;および
前記線維芽細胞溶液を培養しつつ、前記人工皮膚培養容器の外部から培養液を供給するステップ;
を含む人工皮膚の製造方法。
【請求項6】
前記導入された無細胞コラーゲン溶液を、前記人工皮膚培養容器の寒天内部へ進入(invasion)させるステップは、前記コラーゲン溶液のコラーゲン線維が人工皮膚培養容器に含まれている微細気孔に進入して、人工皮膚培養容器の疎水性に改質された寒天と結合して固定されるステップを含む、請求項に記載の人工皮膚の製造方法。
【請求項7】
前記人工皮膚培養容器の外部から培養液を供給するステップは、前記人工皮膚培養容器をチャンバ内部に位置させてからチャンバ内に培養液を供給して、前記培養液を前記人工皮膚培養容器の側面部および下部から供給するステップを含む、請求項に記載の人工皮膚の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工皮膚を培養するための培養容器、およびこれを利用して人工皮膚を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、身体の外部を覆っている器官で、外側から表皮、真皮および皮下脂肪層の3つの層で構成されている。表皮は、重層扁平上皮の角質形成細胞が大部分を占めている。コラーゲン線維や弾力線維といった基質タンパク質からなる真皮は、表皮の下に位置し、真皮には血管、神経、汗腺等がある。皮下脂肪層は、脂肪細胞で構成されている。皮膚は、前記のような多様な細胞や構成物質が相互作用してその形態を維持し、体温調節や外部環境に対するバリアとしての機能等、多様な機能を示す。
【0003】
人工皮膚(artificail skin)は、皮膚細胞と皮膚構成物質であるコラーゲン、エラスチン等を利用して3次元的に前記のような皮膚を再構成したものであり、生きている線維芽細胞と角質形成細胞で構成されることから、実際の皮膚と類似した構造的、機能的特性を示すため、皮膚等価体(skin equivalentまたはreconstructed skin)とも呼ばれる。人工皮膚は、主に弾力、強度、物質透過等において皮膚と類似した物性を示す高分子複合体であり、皮膚のような生命現象を示さないという点で相違点がある。人工皮膚は、火傷、外傷等の損傷を負った皮膚の代替(永久生着型)または再生(一時被覆型)のために利用されるだけでなく、皮膚生理研究、皮膚刺激評価、皮膚効能評価等、多様な領域で利用されている。
【0004】
しかし、既存の人工皮膚は、製造過程において、コラーゲンと真皮線維芽細胞を混ぜた後に固めて真皮層を作り、これを培養することになるが、この組織培養中に、コラーゲンと線維芽細胞の相互作用によって不可避的に真皮が次第に収縮する現象が現れるという問題があった。結局、人工皮膚の製造過程において人工皮膚の真皮層が培養容器から脱落することになり、さらに真皮の収縮が深刻な場合には、人工皮膚組織の構造に全体的な変形が起こり、組織の生理学的な異常を招いて、廃棄しなければならないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8‐243156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記のような問題点を解決するために、人工皮膚の製造時に現れる真皮の収縮現象を防止することができる新規な人工皮膚の培養容器を提供し、これを利用して製造された、構造的、機能的に実際の皮膚と高い人体相関性を有する人工皮膚を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による具現例は、ゲル形態の寒天(agar)を含み、前記寒天は、一部が疎水性に改質されたものである、人工皮膚培養容器を提供する。
【0008】
また、本発明による具現例は、前記人工皮膚培養容器で人工皮膚を製造する方法であって、前記人工皮膚培養容器の内部に無細胞コラーゲン(Acellular Collagen)溶液を導入するステップ;前記無細胞コラーゲン溶液を培養して前記導入された無細胞コラーゲン溶液を、前記人工皮膚培養容器の寒天内部へ進入(invasion)させるステップ;前記人工皮膚培養容器の内部に線維芽細胞(Human dermal fibroblast)溶液を導入し、前記コラーゲン溶液をゲル化させるステップ;および、前記線維芽細胞溶液を培養しながら、前記人工皮膚培養容器の外部から培養液を供給するステップを含む人工皮膚の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明による人工皮膚培養容器は、一部が疎水性に改質され、3次元微細気孔が形成された寒天を含むことにより、人工皮膚の作製過程において、人工皮膚の真皮層に存在するコラーゲンと線維芽細胞の相互作用により発生する真皮層の収縮および培養容器からの脱落問題を解決することができる。これにより、既存の細胞培養容器を代替して前記培養容器を利用すると、人工皮膚を安定的に培養することができ、人体の皮膚と類似した人工皮膚を製造することができる。
【0010】
また、本発明による人工皮膚培養容器は、寒天を含むので、培養容器の底面だけでなく側面部を介しても培養液を供給することができ、3次元的に培養液の供給が可能であるため、人工皮膚を効果的に培養することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】アガロースのゲル構造を示した図である。
図2】人工皮膚培養容器の模式図およびその内部構造に形成された3次元微細気孔の様子を撮影したSEM(scanning electron microscope)写真を示した図である。
図3】本発明の一具現例による人工皮膚培養容器を使用して人工皮膚を製造する方法を順次的に示した図である。
図4】一般的な人工皮膚培養容器である比較例2、純粋寒天で製造された比較例1、本発明による実施例1の疎水性寒天培養容器で人工皮膚細胞を7日間培養した様子を撮影して示した図である。
図5】人工皮膚を比較例1の一般的な寒天培養容器で培養した場合に、人工皮膚が容器から脱落した様子(左側の2枚の写真)と、人工皮膚を実施例1の疎水性に改質された寒天培養容器で培養した場合の、人工皮膚が容器から脱落することなく密接に結合された様子(右側の2枚の写真)を示した図である。
図6】人工皮膚を、実施例1の疎水性に改質された寒天培養容器で培養した場合に、真皮層のコラーゲンファイバーが培養容器の内側に配向されて進入した様子を、凍結乾燥後にSEM(scanning electron microscope)で撮影した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、「人工皮膚(artificail skin)」とは、皮膚細胞と皮膚構成物質であるコラーゲン等を利用して3次元的に皮膚を再構成したものを意味し、実際の皮膚と類似した構造的、機能的特性を示す高分子複合体であれば、あらゆるものを含む最広義の意味である。
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明による具現例は、ゲル形態の寒天(agar)を含み、前記寒天は、一部が疎水性に改質されたものである人工皮膚培養容器を提供してよい。
【0015】
前記寒天(agar)は、テングサ等の紅藻海藻から分離したガラクトースが主成分である硫酸基を含む細胞間粘性多糖の多糖体の一種であり、寒天藻としては、テングサ属(Gelidium)の他、ムカデノリ属(Grateloupia)、オゴノリ属(Gracilaria)、イバラノリ属(Hypnea)、スギノリ属(Gigartina)等に属する紅藻類と、数種の属に属する紅藻が知られている。寒天の主構成成分は、アガロース(約70%)とアガロペクチン(約30%)で、白色かつ透明で、光沢があり、冷水には溶けないが、温水には溶けてゾル(sol)状態となる。具体的に、寒天粉末を水溶液に混合して約100〜140℃で恒温加圧した後、これを常温で冷ましてやると(cooling or ageing)、寒天粉末内の分子の物理的結合により、ゾル状態からゲル(gel)状態へとゲル化される。このゲルは、約85℃以下では溶けず、特殊な細菌以外には作用せず、塩類には溶けない。酸には弱いが、アルカリには強い。下記化学式1は、寒天内アガロースの構造を示したものであり、図1は、アガロースのゲル構造を示した図である。図1は、Laas T., Acta University 1975に記載されたアガロースのゲル構造であり、前記文献は、その全体が本明細書に参考として統合される。
【0016】
【化1】
【0017】
本発明の具現例は、前記人工皮膚培養容器を構成する寒天の一部アガロース(agarose)の一つ以上の水素が疎水性分子で置換されて疎水性に改質された寒天(Hydrophobically‐modified agar)を含んでよい。前記疎水性分子は、炭素数12〜18のアルキル(alkyl)、アルケニル(alkenyl)およびアシル(acyl)鎖のうち一つ以上;ポリプロピレングリコール(Polypropylene glycol,PPG);および、ポリカプロラクトン(polycaprolactone,PCL)からなる群より選択されたものを例として挙げることができるが、寒天を疎水性に改質することができるものであれば、これに限定されない。
【0018】
一具現例として、前記寒天がゲル化される前の寒天粉末100個を1ユニット(unit)とし、1ユニットあたりの寒天粉末に置換された疎水性分子数を置換度(Degree of substitution(DS),%)とするとき、前記人工皮膚培養容器を構成する寒天に対する疎水性分子置換度は、1.0%〜40%、より具体的には5.0%〜20%であってよい。前記疎水性分子置換度が5.0%未満であると、疎水性が弱くコラーゲンゲルとの結合力が微々たるものであり、20%超過であっても、寒天とコラーゲンゲルの親和性が低下するという問題がある。
【0019】
他の一具現例としては、前記人工皮膚培養容器の総寒天質量に対する、疎水性に改質された寒天の割合は、5.0〜50質量%、より具体的には、5.0〜20質量%であってよい。前記のような質量比に基づいて人工皮膚培養容器の疎水性が決定され、目的とする疎水性の程度に応じて、前記質量比に限定されることなく、疎水性に改質された寒天の割合を調節することが可能である。また、前記疎水性に改質された寒天の割合は、培養する人工皮膚の線維芽細胞の数に応じて選択してよい。たとえば、疎水性に改質された寒天の割合が高い培養容器を使用すれば、コラーゲンとの結合力が高いので、多数の線維芽細胞を収縮現象なしに培養して人工皮膚を製造することができる。
【0020】
一具現例として、前記人工皮膚培養容器の側面部および下部の寒天ゲルの厚さは0.5〜50mm、人工皮膚を培養する内部底部の径(diameter)は0.3〜20.0mmを例として挙げることができるが、これに限定されない(図2の培養容器の模式図を参照)。
【0021】
本発明の実施形態によれば、前記寒天は、微細気孔を含んでよく、前記微細気孔の平均粒径は、0.1〜10μmを例として挙げることができる。また、前記人工皮膚培養容器の気孔率は、人工皮膚培養容器の総寒天体積に対して5〜50体積%であってよいが、これに限定されず、前記気孔率および微細気孔の平均粒径は、本発明に含まれる寒天の濃度に応じて調節が可能である。
【0022】
前記微細気孔は、前記寒天の一部が疎水性に改質されつつ形成されたものを含むが、前記粒径は、寒天の疎水性に影響を受けない。前記培養容器内で人工皮膚を培養する際、前記微細気孔を介して人工皮膚のコラーゲン線維が培養容器内部へ進入することになり、コラーゲン線維が疎水性分子との3次元結合を通じて培養容器に固定されて結合力が増進することにより、人工皮膚の製造過程において真皮層の線維芽細胞とコラーゲン線維の相互作用により真皮層が収縮し、培養の途中に真皮層が容器から脱落する問題を防止することができる。また、前記培養容器を利用して人工皮膚を製造する際、前記微細気孔を介して培養液を自由に供給することができる。これにより、正常的な組織と生理学的機能を有する人工皮膚を効果的に製造することができる(図2の右側の写真参照)。図2は、前記のような本発明の具現例による人工皮膚培養容器の模式図と、その内部構造に3次元微細気孔が導入されたSEM(scanning electron microscope)写真を示した図であり、本発明の人工皮膚培養容器の製造方法は、当業界において通常的に使用される寒天ゲルの製造方法を適用して製造されてよいが、これらに限定されない。
【0023】
一方、本発明の具現例は、前記人工皮膚培養容器で人工皮膚を製造する方法でであって、
前記人工皮膚培養容器の内部に無細胞コラーゲン(Acellular Collagen)溶液を導入するステップ;
前記無細胞コラーゲン溶液を培養して、前記導入された無細胞コラーゲン溶液を、前記人工皮膚培養容器の寒天内部へ進入(invasion)させるステップ;
前記人工皮膚培養容器の内部に、皮膚線維芽細胞(Human dermal fibroblast)溶液を導入し、前記コラーゲン溶液をゲル化させるステップ;および
前記皮膚線維芽細胞溶液を培養しつつ、前記人工皮膚培養容器の外部から培養液を供給するステップ;
を含む人工皮膚の製造方法を提供してよい。
【0024】
添付された図3は、本発明の具現例による人工皮膚培養容器を使用して人工皮膚を製造する方法の例を図示したものである。図3を参照しつつ説明すると、前記導入されるコラーゲンの濃度は、3mg/ml〜6mg/mlを例として挙げることができるが、これに限定されず、調整が可能である。また、前記導入されたコラーゲン溶液を培養するステップは、1〜10℃、または3〜5℃で一晩インキュベーション(overnight incubation)することを含んでよい。一具現例として、前記導入された無細胞コラーゲン溶液を、前記人工皮膚培養容器の寒天内部へ進入(invasion)させるステップは、前記コラーゲン溶液のコラーゲン線維が人工皮膚培養容器に含まれている微細気孔に進入して、人工皮膚培養容器の疎水性に改質された寒天と結合して固定されるステップを含んでよい。図3の3番目のステップのボックスの下の写真を参照すると、コラーゲン溶液のコラーゲン線維が寒天からなる容器方向に配向して内部へ進入したことを確認することができる。
【0025】
また、前記人工皮膚培養容器の外部から培養液を供給するステップは、前記人工皮膚培養容器をチャンバ内部に位置させてからチャンバ内に培養液を供給し、前記培養液を前記人工皮膚培養容器の側面部および下部から供給することにより、既存の容器の下部からのみ供給されていたこととは異なり、3次元的に供給するステップを含んでよい。その後、前記人工皮膚を培養容器内で約7日間培養するステップをさらに含んでよい。このとき、培養される人工皮膚の線維芽細胞数は、1.0×10〜1.0×10(cells/a culture insert)であってよいが、これに限定されない。
【0026】
以下、本発明を、下記の実施例を通じて説明する。実施例は、本発明をより詳細に説明するためのものであって、本発明の範囲が下記の実施例の範囲に制限されるものではない。また、以下に記述されている比較例は、実施例と対比するためのものとして記載されたものであるに過ぎず、従来の技術として記載したものではない。また、この技術分野の通常の知識を有する者であれば、誰でもこの発明の技術思想の範疇を逸脱することなく、添付した特許請求の範囲内において多様な変形および模倣が可能である。
【0027】
[実施例1]
本発明の一実施例として、疎水性に改質されていない寒天(Agar,extra pure reagents,Yakuri pure chemicals Co., Ltd,Japan)とオクタデシル(octadecyl,Sigma Aldrich)疎水性分子で改質された寒天を10:2の質量比で含み、寒天を人工皮膚培養容器に対して3(w/v)%で含む寒天ゲルからなる人工皮膚培養容器を準備した。前記寒天培養容器の厚さは2mm、内部底部の径(diameter)は12mmであり、内部微細気孔の大きさは約0.5μmであった。
【0028】
[比較例1]
本発明の比較例として、寒天(Agar,extra pure reagents,Yakuri pure chemicals Co., Ltd,Japan)を、人工皮膚培養容器に対して3(w/v)%で含む寒天ゲルからなる、純粋寒天で構成された人工皮膚培養容器を準備した。前記寒天培養容器の厚さは2mm、内部底部の径(diameter)は12mmであり、内部微細気孔の大きさは約0.5μmであった。
【0029】
[比較例2]
本発明のまた別の比較例としては、既存に一般的に使用されている人工皮膚培養容器である、径12mm、底面細孔サイズ0.4μmを有するトランズウェル(Transwell,Corning,NY,14831,USA)を準備した。
【0030】
[試験例1]人工皮膚の培養1
前記製造した実施例1、比較例1および2の人工皮膚培養容器を使用して、人工皮膚を下記の方法に従ってそれぞれ培養した。
【0031】
このとき製造される人工皮膚モデルは、真皮層と表皮層で構成された、生きている再構成皮膚(Amorepacific Reconstructed Skin)であるアモーレスキン(AmoReSkin(商標)、(株)アモーレパシフィックグループ)であって、前記人工皮膚モデルは、コラーゲンと皮膚線維芽細胞を利用して真皮層を形成し、その上で角質形成細胞を増殖、分化させることにより、実際の皮膚と構造/機能的に類似した特徴を持っている。
【0032】
まず、前記製造された実施例1および比較例1の培養容器を、それぞれ常温乾燥を通じて水分含量を80%以下にまで下げた。6mg/mlのコラーゲン溶液を、乾燥させた寒天培養容器に0.5ml導入し、4℃で一晩の間インキュベーション(overnight incubation)した。インキュベーションを通じてコラーゲン溶液を寒天培養容器の内部へ進入させた後、1.0×10個の皮膚線維芽細胞をコラーゲン溶液に混合して、60μlのコラーゲン溶液(reconstitution solution,0.22g NaHCO,0.477g HEPES,0.4ml 1N NaOH in 10ml HO)でコラーゲンをゲル化させた。人工皮膚培養容器をチャンバ内部に位置させた後、チャンバ内に培養液(DMEM)を供給して、3次元的に培養液を供給する中で7日間培養して、人工皮膚の真皮層を形成した。
【0033】
また、前記比較例2には、6mg/mlのコラーゲン溶液を0.5ml導入し、1.0×10個の皮膚線維芽細胞を混合したコラーゲン溶液(reconstitution solution,0.22g NaHCO、0.477g HEPES,0.4ml 1N NaOH in 10ml HO)でコラーゲンをゲル化させた。トランズウェルをチャンバ内に位置させた後、チャンバ内に培養液(DMEM)を供給して、培養液をトランズウェルの下部を通じて供給する中で7日間培養して、人工皮膚の真皮層を形成した。
【0034】
前記のように形成された真皮層の上に、1.5×10個の角質形成細胞(human neonatal keratinocyte,HEKn,Cascade Biologics)を植え付け、培養挿入体の内部と外部にいずれも角質形成細胞培養培地(EpiLife,Cascade Biologics)を入れ、一晩の間培養した後、細胞の付着状態を確認した。その後、二日に一回ずつ培地を交換しながら約一週間培養して、表皮細胞の増殖を誘導した。表皮細胞が十分に増殖して真皮層の上部をすべて覆うと、培地に1.2mMの濃度のCa2+を添加して二日間角質形成細胞の分化を誘導した。その後、培地をすべて取り除き、培養挿入体の外部にのみ培地を入れ与えて、角質形成細胞を空気中に露出させた。毎日培地を替えてやりつつ一週間空気露出培養を行い、表皮層を生成させて、人工皮膚を完成した。
【0035】
前記のように7日間人工皮膚の真皮層を培養する間、真皮層の収縮程度を観察し、最終的に完成された人工皮膚の様子を撮影して、図4に示した。
【0036】
その結果、図4に示されるように、一般的な人工皮膚培養容器である比較例2の場合、真皮層の激しい収縮により人工皮膚の組織形態を維持することができず、純粋寒天で製造された比較例1の培養容器もまた、コラーゲンと線維芽細胞の相互作用により、人工皮膚が培養容器から脱落したことが分かる。一方、本発明による実施例1の疎水性寒天培養容器は、コラーゲン線維が培養容器と高い結合力を有することにより、真皮層の収縮および培養容器からの脱落が防止されたことを確認することができる。
【0037】
[試験例2]人工皮膚の培養2
前記製造した実施例1および比較例1の人工皮膚培養容器を使用して、人工皮膚を下記の方法に従ってそれぞれ培養した。
【0038】
このとき製造される人工皮膚モデルは、真皮層と表皮層で構成された、生きている再構成皮膚(Amorepacific Reconstructed Skin)であるアモーレスキン(AmoReSkin(商標)、(株)アモーレパシフィックグループ)であって、前記人工皮膚モデルは、コラーゲンと皮膚線維芽細胞を利用して真皮層を形成し、その上で角質形成細胞を増殖、分化させることにより、実際の皮膚と構造的、機能的に類似した特徴を持っている。
【0039】
まず、前記製造された実施例1および比較例1の培養容器を、それぞれ常温乾燥を通じて水分含量を80%以下にまで下げた。6mg/mlのコラーゲン溶液を、乾燥させた寒天培養容器に0.5ml導入し、4℃で一晩の間インキュベーション(overnight incubation)した。インキュベーションを通じてコラーゲン溶液を寒天培養容器の内部へ進入させた後、1.0×10個の皮膚線維芽細胞をコラーゲン溶液に混合して、60μlのコラーゲン溶液(reconstitution solution,0.22g NaHCO,0.477g HEPES,0.4ml 1N NaOH in 10ml HO)でコラーゲンをゲル化させた。人工皮膚培養容器をチャンバ内部に位置させた後、チャンバ内に培養液(DMEM)を供給して、3次元的に培養液を供給する中で人工皮膚を7日間培養して、人工皮膚の真皮層を形成した。
【0040】
前記のように形成された真皮層の上に、1.5×10個の角質形成細胞(human neonatal keratinocyte,HEKn,Cascade Biologics)を植え付け、培養挿入体の内部と外部にいずれも角質形成細胞培養培地(EpiLife,Cascade Biologics)を入れ、一晩の間培養した後、細胞の付着状態を確認した。その後、二日に一回ずつ培地を交換しながら約一週間培養して、表皮細胞の増殖を誘導した。表皮細胞が十分に増殖して真皮層の上部をすべて覆うと、培地に1.2mMの濃度のCa2+を添加して二日間角質形成細胞の分化を誘導した。その後、培地をすべて取り除き、培養挿入体の外部にのみ培地を入れ与えて、角質形成細胞を空気中に露出させた。毎日培地を替えてやりつつ一週間空気露出培養を行い、表皮層を生成させて、人工皮膚を完成した。
【0041】
その次に、最終培養された人工皮膚の寒天培養容器と真皮層の脱落および結合の様子を撮影して、図5および図6に示した。
【0042】
図5の左側の2枚の写真は、人工皮膚を比較例1の一般的な寒天培養容器で培養した場合に、人工皮膚が容器から脱落したことを示しており、右側の2枚の写真は、人工皮膚を実施例1の疎水性に改質された寒天培養容器で培養した場合に、人工皮膚が容器から脱落することなく密接に結合されていることを示している。また、図6は、人工皮膚を実施例1の疎水性に改質された寒天培養容器で培養した場合に、真皮層のコラーゲンファイバーが培養容器の内側に配向されて進入した様子を撮影したものである。
【0043】
このことから、本発明に係る人工皮膚培養容器は、人工皮膚培養の際に人工皮膚と密接に結合することにより、人工皮膚が培養される過程で発生する収縮による容器からの脱落を防止して、効果的に人工皮膚を培養することが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6