【文献】
Ekaney ML., ,Impact of plasma histones in human sepsis and their contribution to cellular injury and inflammation.,Crit Care.,2014年 9月24日,Vol.18 No.5 543,Page.1-9
【文献】
Morita Y,Imaging mass spectrometry of gastric carcinoma in formalin-fixed paraffin-embedded tissue microarray,Cancer Sci.,2010年 1月,Vol.101 No.1,Page.267-273
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のエピトープが、配列番号1のアミノ酸残基22〜30、または配列番号1の残基67〜78、または配列番号1の残基92〜102の配列中に存在し、および/または前記第2のエピトープが、配列番号1のアミノ酸残基46〜102の配列中に存在する、請求項3に記載の方法。
前記遊離ヒストンタンパク質がヒストンH4であり、配列番号2、3、4、5、6、7からなるグループから選択されるヒストンH4の少なくとも1つのペプチドフラグメントを検出して定量する、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
前記感染性と非感染性の病因に関係する炎症性反応が、非感染性SIRS、細菌性、ウイルス性、真菌性の敗血症、重篤な敗血症、敗血症ショック、腹膜炎、出血および/または組織損傷を含む外傷関連障害、火傷損傷、急性膵臓炎、虚血再灌流障害、心筋梗塞、心原性ショック、脳卒中、急性中毒、血栓塞栓症から選ばれる、請求項9に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、被験体の生体サンプルに含まれる遊離ヒストンタンパク質を検出する方法に関する。この方法は、そのヒストンタンパク質のエピトープまたはペプチドフラグメントを検出することに基づいている。
【0029】
本発明は、疾患または病状の診断および/または予後予測および/またはリスク評価および/またはリスク層化および/または治療管理のための方法であって、被験体の生体サンプルに含まれる遊離ヒストンタンパク質またはそのペプチドフラグメントを検出することを含んでいて、そのヒストンタンパク質またはそのペプチドフラグメントの存在が、その疾患または病状を示している方法にも関する。
【0030】
本明細書では、「ポリペプチド」、「ペプチド」、「タンパク質」という用語は交換して使用可能であり、アミノ酸残基のポリマーを意味する。
【0031】
「アミノ酸」という用語は、天然のアミノ酸を意味する。天然のアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされているアミノ酸と、あとから修飾されたアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、O-ホスホセリンである。アミノ酸は、本明細書では、一般に知られている3文字記号、またはIUPAC-IUB生化学命名法委員会が推奨している1文字記号によって呼ぶことができる。
【0032】
本発明のいずれかの方法で検出されるヒストンタンパク質には、カノニカルヒストンとそのアイソフォーム/変異体が含まれる。検出される遊離ヒストンタンパク質またはそのペプチドフラグメントは、H1、H2A、H2B、H3、H4とそのアイソフォームからなるグループから選択されることが好ましく、H2AまたはH4であることがより好ましい。より一層好ましいのは、配列番号23によるヒストンH2Aのアミノ酸残基20〜55または70〜118の配列中のエピトープまたはペプチドフラグメント、または配列番号1によるヒストンH4のアミノ酸残基22〜102、より好ましくは46〜102の配列中のエピトープまたはペプチドフラグメントが検出されることである。
【0033】
本明細書では、ヒストン変異体は、ヒストンのカノニカル変異体または従来の変異体である。非カノニカル(非アレル)ヒストンは、1個または数個(2個、または4個、または6個、または8個まで)のアミノ酸置換があり、対応する従来のヒストンと比べると発現が非常に少ない。ヒストン変異体は、発現、局在、種分布のパターンが特殊であり、ヌクレオソームに新規な構造特性と機能特性を与えて、クロマチンのリモデリングとヒストンの翻訳後修飾に影響を及ぼす。コアヒストンの中では、H2Aが最も多い数の変異体を持ち、その中にはH2A.Z、マクロH2A、H2A-Bbd、H2AvD、H2A.Xが含まれる。その一方でヒストンH4は最も進化が遅いタンパク質の1つであり、ヒストンH4の配列変異体は知られていないようである。
【0034】
本発明の文脈における「遊離ヒストンタンパク質」または「遊離ヒストン」には、ヌクレオソームや好中球細胞外トラップ(NET)などの巨大分子複合体に組み込まれていないヒストンタンパク質が含まれる。したがって本発明の文脈における遊離ヒストンは、モノヌクレオソームや八量体などの組み立てられた化学量論的巨大分子複合体の中にあって近づくことのできないヒストンの領域を本発明の方法を用いて検出できることを特徴とする。この文脈における「化学量論的」は、完全な複合体、例えばモノヌクレオソームや八量体に関係する。「NET」は、好中球細胞外トラップである(Brinkmann V.他、Science 第303巻(5663):1532〜1535ページ、2004年)。NETの骨格は、自殺した好中球から放出されたクロマチンから構成されていて、DNAに基づく糸とケーブルの形を取る。DNAに加え、ヒストンなどのいくつかのタンパク質が、これらNETの中で球状ドメインを形成する。微生物は、NETの生成を促進された好中球培養物によって殺される。「遊離ヒストンタンパク質」にはクロマチンに結合していないヒストンも含まれる。すなわち「遊離ヒストンタンパク質」には、NETに中で絡み合った個別のヒストンタンパク質や非八量体ヒストン複合体も含まれていてよい。遊離ヒストンタンパク質は、単量体ヒストンタンパク質、またはヘテロ二量体ヒストンタンパク質、または四量体ヒストンタンパク質と呼ばれ、核酸に結合したヒストン八量体からなる(「化学量論的」)ヌクレオソーム複合体の中に組み込まれていない。したがって遊離ヒストンは、単量体および/またはホモ二量体および/またはヘテロ二量体および/またはホモ四量体および/またはヘテロ四量体の形態でだけ存在する個別のヒストンと定義されるのに対し、結合したヒストンは、疎水性相互作用によって相互作用するH2A、H2B、H3、H4の各2分子からなるヌクレオソームの八量体コアに組み込まれたヒストンと定義される。後者の場合、ヒストンの中心領域は覆われていて、立体的に近づくことができない。というのも、これらの領域は、個別のヒストン分子間の分子内相互作用に関与しているからである。
【0035】
遊離ヒストンは、一時的に個々のヒストンに結合することができる。ヒストンが例えばH3とH4のホモ二量体を形成したり、H2AとH2Bがヘテロ二量体を形成したりすることができる。本発明の遊離ヒストンは、ホモ四量体またはヘテロ四量体を形成することもできる。ホモ四量体またはヘテロ四量体は、4分子のヒストン、例えばH2Aおよび/またはH2Bおよび/またはH3および/またはH4からなる。典型的なヘテロ四量体は2つのヘテロ二量体から形成されていて、各へテロ二量体はH3とH4からなる。本明細書では、ヘテロ四量体は、H2AとH2Bによって形成することができるとも理解される。本明細書では、ヘテロ四量体は、H3とH4からなる1つのへテロ二量体と、H2AとH2Bからなる1つのへテロ二量体によって形成することができるとも考えられる。本明細書では、遊離ヒストンとしてヒストン変異体が可能であるとか、遊離ヒストンは、ヒストン変異体と会合した状態で見いだされる可能性があると理解される。本発明のいくつかの側面では、遊離ヒストン(例えばヒストンの単量体、二量体、四量体)は、核酸(例えばDNA)と会合している。したがって本発明の抗体と方法は、会合した核酸とは独立に遊離ヒストンを検出することができる。
【0036】
上述のように、本明細書では、遊離ヒストンは、ヌクレオソームと関係した八量体の一部ではない。その八量体はヌクレオソームのタンパク質性コア粒子であり、H2AとH2Bからなる2つの二量体と、H3とH4からなる1つの四量体で構成されている。実施例4にはイムノアッセイに基づく方法が記載されており、その方法で用いる抗体は、ヒストン(例えばH4)がヌクレオソームの八量体コアの一部であるときにはそのヒストンを検出しない。同様に、質量分析に基づく本発明の方法によって検出されるペプチド(例えば配列番号3と4)は、遊離ヒストンに由来する。検出されるこれらパプチドは、ヒストンタンパク質の埋もれていると考えられる部分であるため、ヒストンが八量体の一部であるときには例えばプロテアーゼはその部分に近づくことができない。例えば実施例3と7を参照のこと。
【0037】
また、遊離ヒストンは、プラスに帯電した残基のイオン性相互作用によって駆動されて、豊富な血漿タンパク質(アルブミン、血清アミロイドA、インター-αインヒビタータンパク質、トル様受容体、ペントラキシン(例えば血清アミロイドP、C反応性タンパク質)が含まれる)と主にヒストンのN末端において一時的に相互作用することができる。したがって遊離ヒストンが血漿タンパク質に結合しているとき、その遊離ヒストンには中心領域とC末端に向かう抗体がまだ近づくことができる。
【0038】
添付の実施例に示したように、遊離ヒストンを検出するためのアッセイ、キット、抗体がここに提供される。例えば遊離ヒストンは、八量体などの化学量論的巨大分子複合体の中にあると基本的に近づくことのできないヒストンの例えばH2AやH4という領域を通じて検出される。実施例3と4を参照のこと。本明細書では、ヒストンの領域は、遊離ヒストンでは近づけるが、そのヒストンが八量体などの巨大分子複合体の中にあると基本的に近づくことのできないポリペプチドであると理解される。添付の実施例では、例えばイムノアッセイや、質量分析に基づくアッセイといった方法が遊離ヒストンの検出に適していることが示される。特に、本明細書では、イムノアッセイに基づく方法で用いる代表的な抗体は遊離ヒストンに特異的であることが示される。したがって本発明の抗体は、例えば八量体またはヌクレオソームの中で見いだされる結合したヒストンよりも遊離ヒストンへの結合親和性が大きい。添付の実施例では、例示したその抗体は、遊離ヒストンの場合にだけ近づくことのできるヒストンのさまざまな領域に結合することが示される。特に実施例4では、イムノアッセイに基づく本発明の方法とそこで用いる抗体は、遊離ヒストン(例えばH4)を検出するが、八量体コアの一部であるときにはそのヒストンを検出しないことが明らかにされる。
【0039】
遊離ヒストンは、質量分析法を利用して検出することもできる。イムノアッセイに基づく方法で示したように、遊離ヒストンの開裂産物であるペプチドは、質量分析によって検出することができる。例えば例示としての実施例4を参照のこと。言い換えると、これらペプチドは遊離ヒストンから生成する。理論に囚われないと、質量分析の準備でタンパク質消化を起こさせるため本発明のいくつかの側面で使用できるプロテアーゼは、ヒストンが八量体などの巨大分子複合体の中にあるときには中心領域のペプチドに近づくことができない。言い換えると、プロテアーゼは、立体障害のためにこれら開裂部位に侵入することができない。したがってこのような方法は、遊離ヒストンを代表するペプチド(例えば中心領域のペプチド)を検出する。
【0040】
添付の実施例では、本発明のアッセイ、キット、抗体が、遊離ヒストンの中で近づくことのできる遊離ヒストンのペプチドまたはエピトープを検出することが示される。そうしたアミノ酸列を、本明細書では、ヒストンの中心領域または部分とも呼ぶ。以下の記述では、本明細書に提示した方法を利用して遊離ヒストンを検出するのに使用できるペプチドまたはエピトープを記述する。遊離ヒストンタンパク質を本明細書に提示した方法によって検出するのに使用できるペプチドまたはエピトープの例は、配列番号1によるヒストンH4のアミノ酸残基22〜102の配列中のエピトープまたはペプチドか、配列番号23によるヒストンH2Aのアミノ酸残基20〜118の配列中のエピトープまたはペプチドである。さらに、遊離ヒストンタンパク質を本明細書に提示した方法によって検出するのに使用できるペプチドまたはエピトープの例は、配列番号36によるヒストンH3のアミノ酸残基27〜62の配列中のエピトープまたはペプチドか、配列番号31によるヒストンH2Bのアミノ酸残基41〜69の配列中のエピトープまたはペプチドである。より好ましいのは、遊離ヒストンH4が、配列番号1の残基22〜30、配列番号1の残基67〜78、配列番号1の残基92〜102、配列番号1の残基22〜34、配列番号1の残基46〜102、配列番号1の残基46〜55、配列番号1の残基60〜67、配列番号1の残基80〜91、配列番号1の残基24〜35、配列番号1の残基68〜77のアミノ酸配列からなるグループから選択したペプチドまたはエピトープによって検出されることである。
【0041】
遊離ヒストンH2Aは、配列番号23の残基21〜53、配列番号23の残基21〜29、配列番号23の残基30〜53、配列番号23の残基120〜129、配列番号23の残基21〜29、配列番号23の残基82〜88、配列番号23の残基89〜95、配列番号23の残基100〜118のアミノ酸配列からなるグループから選択したペプチドまたはエピトープによって検出される。
【0042】
遊離ヒストンH2Bは、配列番号31の残基41〜69のペプチドまたはエピトープによって検出されることが好ましい。
【0043】
遊離ヒストンH3は、配列番号36の残基27〜37および/または配列番号36の残基52〜62のペプチドまたはエピトープによって検出されることが好ましい。
【0044】
本明細書では、「クロマチン」という用語は、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造を意味する。細胞クロマチンは、核酸(主にDNA)とタンパク質(ヒストンと非ヒストン染色体タンパク質が含まれる)を含んでいる。真核細胞のクロマチンの大半はヌクレオソームの形態で存在している。その中のヌクレオソームコアは、ヒストンH2A、H2B、H3、H4をそれぞれ2つ含む八量体に会合した約150塩基対のDNAを含んでいて、(生物によって長さがさまざまな)リンカーDNAがヌクレオソームコアの間を延びている。ヒストンH1という分子が一般にリンカーDNAに会合する。「染色体」は、1つの細胞のゲノムのすべてまたは一部を含むクロマチン複合体である。
【0045】
本明細書では、「ヌクレオソーム」または「ヌクレオソーム複合体」という用語は、4つのコアヒストンH3、H4、H2A、H2Bからなる八量体でできていて周囲を約150塩基対のDNAで包まれたクロマチンの基本単位を意味する。
【0046】
検出されるエピトープは、ヒストンがヌクレオソームの中に組み込まれているときには近づくことのできないエピトープであることが好ましい。上述のように、本発明の文脈における「近づくことのできない」は、ヒストンがヌクレオソーム複合体の一部であるとき、エピトープにリガンド(特に抗体)が特異的に結合できないことを意味する。ヒストンがヌクレオソーム複合体の一部であるとき、立体障害のために構造的に近づくことのできないエピトープも含まれる。
【0047】
本発明の文脈における「フラグメント」という用語は、より大きなタンパク質またはペプチドから得ることのできるより小さなタンパク質またはペプチドを意味する。したがってフラグメントには、そのより大きなタンパク質またはペプチドの部分配列が含まれる。そのフラグメントとして、より大きなタンパク質またはペプチドを、その1つ以上のペプチド結合を加水分解することによって得られる。フラグメントは、少なくとも6残基、または9残基、または10残基、または12残基を持つことが好ましい。
【0048】
本明細書では、「サンプル」という用語は生体サンプルである。本明細書では、「サンプル」は、興味の対象である被験体(例えば患者)の診断、予後予測、評価を目的として取得した例えば体液または組織のサンプルを意味する。
【0049】
本明細書では、サンプルは、被験体の体液または組織のサンプルであることが好ましい。体液サンプルが好ましい。好ましい試験サンプルには、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、痰、涙が含まれる。それに加え、当業者であれば、ある種の試験サンプルは、分画手続きまたは精製手続き(例えば全血を分離して血清成分または血漿成分にする)の後により分析しやくなることを認識しているであろう。
【0050】
そのため本発明で用いるサンプルは、血液サンプル、血清サンプル、血漿サンプル、脳脊髄液サンプル、唾液サンプル、尿サンプル、組織サンプルと、上記サンプルのいずれかの抽出物からなるグループから選択されることが好ましい。
【0051】
サンプルは血液サンプルであることが好ましく、血清サンプルまたは血漿サンプルであることがより好ましい。血清サンプルは、本発明の文脈において最も好ましいサンプルである。
【0052】
適切な場合には、液体サンプルを取得するため本発明で使用する前に、サンプルを均質化するか、溶媒を用いて抽出することができる。ここでは液体サンプルとして、溶液または懸濁液が可能である。液体サンプルに対しては、本発明で使用する前に1つ以上の前処理を施すことができる。そのような前処理には、希釈、濾過、遠心分離、濃縮、沈降、沈殿、透析が含まれるが、これらに限定されない。前処理には、溶液への化学物質または生化学物質(例えば酸、塩基、緩衝液、塩、溶媒、反応性染料、洗浄剤、乳化剤、キレータ)の添加も含まれていてよい。
【0053】
本発明の文脈における「血漿」は、抗凝固剤を含む血液を遠心分離した後に得られる実質的に無細胞の上清である。抗凝固剤の例には、カルシウムイオン結合化合物であるEDTAやクエン酸塩、トロンビン阻害剤であるヘパリネートやヒルジンが含まれる。無細胞血漿は、凝固が阻止された血液(例えばクエン酸塩、EDTA、ヘパリンを添加した血液)を例えば少なくとも15分間にわたって2000〜3000 gで遠心分離することによって得ることができる。
【0054】
本発明の文脈における「血清」は、血液を放置して凝固させた後に回収した全血の液体分画である。凝固した血液(塊になった血液)を遠心分離すると、血清を上清として得ることができる。
【0055】
「患者」、「個人」、「被験体」という用語は、本発明全体を通じて同じ意味で用いることができる。本発明の目的での「患者」、「個人」、「被験体」に、ヒトとその他の動物(特に哺乳動物)と、それ以外の生物の両方が含まれる。そのため本発明の方法は、ヒトの診断と動物への応用の両方に適用することができる。好ましい一実施態様では、患者は哺乳動物であり、最も好ましい実施態様では、患者または被験体はヒトである。「患者」という用語は、本明細書では、医療を受けていないか、疾患または病状(特に全身性炎症)があるため医療を受けている最中であるか、医療を受けるはずの生きているヒトまたは非ヒト生物を意味する。その中には、特定の病気を持っておらず、病気の兆候を調べている最中の人が含まれる。したがって本明細書に記載した本発明の方法とアッセイは、ヒトの疾患と動物の疾患の両方に適用できる。
【0056】
本明細書で用いる「エピトープ」という用語は、抗原決定基としても知られており、抗体、B細胞、T細胞いずれかによって認識される抗原の部分を意味する。したがって「エピトープ」は、分子のうちで抗体(例えばポリペプチド)が結合する部分を意味する。立体構造エピトープと直線状エピトープの両方が「エピトープ」という用語に含まれる。
【0057】
本発明の文脈では、本発明の方法で検出される遊離ヒストンタンパク質またはそのペプチドフラグメントは、バイオマーカーと見なすことができる。「バイオマーカー」(生物学的マーカー)という用語は、健康関連と生理学関連の評価(例えば疾患リスク、精神疾患、環境曝露とその効果、疾患の診断、代謝プロセス、薬物乱用、妊娠、細胞系の開発、疫学的研究など)のための指標として役立つ測定可能かつ定量可能な生物学的パラメータ(例えば特定の酵素の濃度、特定のホルモンの濃度、ある集団内の特定の遺伝子の表現型分布、生体物質の存在)に関係する。さらに、バイオマーカーは、正常な生物学的プロセス、病気発生プロセス、治療介入に対する薬理学的応答の指標として客観的に測定され評価される特徴として定義される。バイオマーカーは、(血液試験、尿試験、組織試験として)生体サンプルで測定することができる。バイオマーカーは、一人のヒトから得られる記録(血圧、ECG、ホルター心電図)であってもよい。バイオマーカーは、環境因子への曝露のレベルまたはタイプ、遺伝的感受性、曝露に対する遺伝的応答、無症状疾患または臨床疾患のバイオマーカー、治療に対する応答の指標など、健康または疾患の多彩な特徴を示すことができる。したがってバイオマーカーは、疾患形質(リスク因子またはリスクバイオマーカー)、疾患状態(前臨床または臨床)、罹患率(進行)の指標と考えるのが非常に簡単である。したがってバイオマーカーは、事前判断用バイオマーカー(病気が進展するリスクの同定)、スクリーニング用バイオマーカー(無症状疾患のスクリーニング)、診断用バイオマーカー(明白な疾患の認識)、ステージ判断用バイオマーカー(疾患の重篤度のカテゴリー化)、予後予測用バイオマーカー(再発や治療に対する応答を含む将来の疾患進展の予測と、治療効果のモニタ)に分類することができる。バイオマーカーは、代替エンドポイントとしても機能することができる。代替エンドポイントは、治療法の安全性と効果を評価するため、興味の対象である真の転帰を測定する代わりに臨床試験の転帰として使用できるものである。その背後にある原理は、代替エンドポイントの変化が、興味の対象である転帰の変化を忠実にたどることにある。代替エンドポイントは、評価するのに大規模な臨床試験が必要とされる罹患率や死亡率などのエンドポイントと比べてより短い期間とより少ない費用で集めることができるという利点を有する。代替エンドポイントの別の価値には、興味の対象である曝露/介入により近く、より離れた臨床事象よりも因果関係を関係づけるのがより容易であるという事実が含まれる。代替エンドポイントの1つの重要な欠点は、興味の対象である臨床の転帰が(代替エンドポイントに加えて)多数の因子の影響を受ける場合、残っている交絡因子が代替エンドポイントの有効性を低下させる可能性があることである。代替エンドポイントの有効性は、興味の対象である転帰に対する曝露または介入の効果の少なくとも50%を代替エンドポイントが説明できる場合により大きいことが示唆されている。例えばバイオマーカーとして、タンパク質、ペプチド、核酸分子が可能である。遊離ヒストンタンパク質は、本発明の文脈では、他のバイオマーカーとともに使用することができる。すなわち遊離ヒストンタンパク質は、バイオマーカーパネルの一部であってもよい。
【0058】
本発明の文脈における「診断」は、被験体における疾患または臨床症状の認識と(早期の)検出に関係し、さまざまな診断も含むことができる。いくつかの実施態様では、疾患または臨床症状の重篤度の評価も「診断」という用語に含めることができる。
【0059】
「予後予測」は、特定の疾患または臨床症状に苦しんでいる被験体の転帰または具体的なリスクの予測に関係する。その中には、その被験体の回復の可能性、または好ましくない転帰の可能性の評価を含めることができる。
【0060】
本発明の方法は、モニタリングに用いることもできる。「モニタリング」は、例えば疾患の進行を分析すること、または特定の治療法が疾患または異常の進行に及ぼす影響を分析することを目的として、すでに診断された疾患、異常、合併症、リスクを追跡し続けることに関係する。
【0061】
本発明の文脈における「治療管理」という用語は、患者の治療のモニタリングおよび/または調節を意味する。
【0062】
本発明では、「リスク評価」と「リスク層化」という用語は、被験体をさらなる予後予測に応じて異なるリスク群にグループ分けすることに関係する。リスク評価は、予防措置および/または治療措置を適用するための層化にも関する。
【0063】
それに加え、またはその代わりに、本発明の方法では、検出される遊離ヒストンタンパク質のエピトープまたはペプチドフラグメントは、翻訳後修飾を受けない。
【0064】
本発明の文脈における「翻訳後修飾」または「PTM」という用語は、リボソームによる翻訳が完了した後にタンパク質上で酵素を触媒として起こる修飾を意味する。翻訳後修飾は、一般に、タンパク質に共有結合で官能基を付加することを意味する。本発明の文脈におけるヒストンの「翻訳後修飾」は、例えばアセチルトランスフェラーゼ、リシンメチルトランスフェラーゼ、リシンデメチラーゼによって導入される修飾であることが好ましい。本発明の文脈における翻訳後修飾は、アセチル化、シトルリン化、脱アセチル化、メチル化、脱メチル化、脱イミノ化、アイソマー化、リン酸化、ユビキチン化からなるグループから選択されることが好ましい。
【0065】
本発明の診断法、予後予測法、リスク評価法の文脈では、体温、血圧、心拍数、白血球の値を含むグループから選択した少なくとも1つの臨床パラメータを追加して分析することができる。
【0066】
本発明の診断法、予後予測法、リスク評価法の文脈では、少なくとも1つのバイオマーカーを追加して分析することができる。そのバイオマーカーの選択は、カルシトニン、アドレノメジュリン(ADM/プロADM)、エンドセリン-1(ET-1)、アルギニンバソプレッシン(AVP)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、トロポニン、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、C反応性タンパク質(CRP)、膵石タンパク質(PSP)、骨髄細胞上に発現するトリガリング受容体1(TREM1)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-20(IL-20)、インターロイキン-22(IL-22)、インターロイキン-24(IL-24)、他のインターロイキン、プレセプシン、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、α1-アンチトリプシン、マトリックスメタロプロテイナーゼ2(MMP2)、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)、腫瘍壊死因子α(TNFα)からなるグループからなされる。少なくとも1つのバイオマーカーは、プロカルシトニン(PCT)、アドレノメジュリン(ADM/プロADM)、プレセプシン(sCD14-ST)、C反応性タンパク質(CRP)を含むグループから選択されることが好ましい。
【0067】
本発明の方法のいずれかの疾患または病状は、感染性と非感染性の病因に関係する個人の全身性炎症反応(SIRS)、例えば、微生物、すなわち細菌および/またはウイルスおよび/または真菌および/または寄生生物の刺激によって起こる敗血症、重度の敗血症、敗血症ショックや、外傷性障害および/または出血、虚血再灌流障害、火傷損傷、急性膵臓炎を含む疾患または病状のほか、個人が内皮組織損傷、血栓塞栓症、急性播種性血管凝固(DIC)を起こすリスクがあって、その疾患が進行する間に単臓器不全または多臓器不全(特異急性腎臓損傷、急性肺損傷、肝臓損傷)に至る心肺バイパス、化学療法、放射線療法といった介入措置から選択することができる。
【0068】
本発明の文脈における「全身性炎症」は、生物的因子、化学的因子、遺伝的因子によって起こる可能性がある炎症促進性サイトカインの放出と活性化された自然免疫系を特徴とする症状に関係することが好ましい。重篤な「全身性炎症」は、臓器不全と死につながる可能性がある。
【0069】
本発明の文脈における「SIRS」は、感染症の兆候がない全身性炎症反応症候群である。その中には、以下の臨床的所見:(1)38℃超または36℃未満の体温;(2)1分間に90拍を超える心拍数;(3)1分間に20回を超える呼吸数が現われる速呼吸、またはPaCO
2が32 mm Hg未満であることによって示される過呼吸;(4)12,000/mm
3超、または4,000/mm
3未満、または10%超の未熟な好中球という白血球細胞カウント数の変化、または10%超の未熟な好中球の存在が含まれるが、これらの2つ以上に限定されるわけではない(Bone他、CHEST 第101巻(6):1644〜1655ページ、1992年)。
【0070】
本発明の文脈における「敗血症」は、感染症に対する全身性反応を意味する。あるいは敗血症は、SIRSと慢性感染プロセスの組み合わせと見なすことができる。敗血症は、感染症と全身性炎症反応の両方の存在によって規定される臨床症候群を特徴とすることができる(Levy MM他、2001年SCCM/ESICM/ACCP/ATS/SIS国際敗血症定義会議、Crit Care Med. 2003年4月;第31巻(4):1250〜1256ページ)。本明細書では、「敗血症」という用語に、敗血症、重篤な敗血症、敗血症ショックが含まれるが、これらに限定されない。この文脈における重篤な敗血症は、臓器不全、低灌流異常、敗血症によって誘導される低血圧のいずれかと関係した敗血症を意味する。低灌流異常には、乳酸アシドーシス、尿量過少症、精神状態の急変が含まれる。敗血症によって誘導される低血圧は、収縮期血圧が90 mm Hg未満であることの存在、または低血圧になる他の原因(例えば心原性ショック)がないのに収縮期血圧が基本ラインから40 mm Hg以上低下することの存在によって定義される。敗血症ショックは、体液が十分に復活しているにもかかわらず、敗血症によって誘導される継続した低血圧と、低灌流異常または臓器不全の存在を伴う重篤な敗血症として定義される(Bone他、CHEST 第101巻 (6):1644〜1655ページ、1992年)。本明細書では、「敗血症」という用語は、敗血症が進行している間の可能なあらゆる段階に関係する。
【0071】
本発明の範囲に含まれる上記の「感染症」は、通常は無菌の組織または体液に病原性微生物または潜在的な病原性微生物が侵入することによって起こる病気発生プロセスを意味し、細菌および/または真菌および/または寄生生物および/またはウイルスによって起こる感染症に関係する。
【0072】
本発明の文脈における「膵臓炎」は、膵臓の炎症と見なすことができ、急性(突然の発症;6ヶ月未満の継続期間)から再発性急性(急性膵臓炎のエピソードが2つ異常)へ、そして慢性(6ヶ月超の継続期間)へと進行する。本発明の範囲には、家族性膵臓炎、遺伝性膵臓炎、特発性散発性膵臓炎が含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
本発明の文脈における「多外傷」または「多重外傷」という用語には、身体の少なくとも2つの領域に2つ以上の重篤な外傷を伴う症状、または多数の外傷を有する症状、すなわち1つの身体領域に2つ以上の重篤な外傷を有する症状が含まれる。多外傷は、外傷性ショックおよび/または出血性低血圧と、1つ以上の生命機能の深刻な危機を伴う可能性がある。2つ以上の外傷のうちの少なくとも1つの外傷が、またはすべての外傷の合計が、外傷を受けて多外傷を有する被験体の生命を脅かす(Kroupa J.、Acta Chir Orthop Traumatol Cech. 1990年7月;第57巻(4):347〜360ページ)。本発明の文脈では、疾患または症状は、全身性炎症であることが好ましく、敗血症またはSIRCであることがより好ましい。
【0074】
上述のように、遊離ヒストンタンパク質は、適切な任意の方法を用いて検出することができる。イムノアッセイに基づく方法と質量分析に基づく方法が本発明の文脈では特に好ましいため、それらを以下により詳しく説明することにする。
【0076】
本発明はさらに、本発明のいずれかの方法を用いたイムノアッセイに関する。特に、このイムノアッセイ法は、a)サンプルを、遊離ヒストンタンパク質標的の第1のエピトープに特異的な第1の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体と接触させるとともに、その遊離ヒストンタンパク質標的の第2のエピトープに特異的な第2の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体と接触させる工程と、b)その遊離ヒストンタンパク質に対するそれら2つの抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体の結合を検出する工程を含んでいる。そのようなアッセイの一例はELISAアッセイである。
【0077】
本明細書では、特に断わらない限り、「抗体」という用語に抗原結合フラグメントまたは誘導体も含まれる。
【0078】
あるいは抗体の代わりに、ヒストン配列、ヒストンエピトープ、ヒストンの構造的配置を特異的および/または選択的に認識する他の捕獲分子または分子足場を本発明の範囲に含めることができる。
【0079】
本明細書では、「捕獲分子」または「分子足場」という用語は、サンプルからの標的分子または興味の対象となる分子、すなわち分析物(すなわち本発明の文脈では遊離ヒストンタンパク質)を結合させるのに使用できる分子を含んでいる。したがって捕獲分子は、空間的特徴と表面の特徴(例えば表面電荷、疎水性、親水性、ルイスドナーおよび/またはアクセプターの存在または不在)の両面で、標的分子または興味の対象となる分子を特異的に結合させるのに十分な形になっている必要がある。ここでは、結合は、例えば、イオン性相互作用、ファンデルワールス相互作用、π-π相互作用、σ-π相互作用、疎水性相互作用、水素結合相互作用によって実現するか、これら相互作用の2つ以上の組み合わせによって実現するか、捕獲分子または分子足場と標的分子または興味の対象となる分子の間の共有結合相互作用によって実現することができる。本発明の文脈では、捕獲分子または分子足場は、例えば、核酸分子、炭水化物分子、PNA分子、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質からなるグループから選択することができる。捕獲分子または分子足場には、例えば、アダプタマー、DARピン(設計されたアンキリン反復タンパク質)、アフィマーなどが含まれる。
【0080】
「抗体」という用語には、一般に、モノクローナル抗体、遺伝子改変モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体と、これらの結合フラグメント(特にFcフラグメント)のほか、いわゆる「単鎖抗体」(Bird R. E.他(1988年)Science 第242巻:423〜426ページ)、キメラ抗体、ヒト化抗体、特にCDRグラフト抗体、二重特異性抗体(diabody)または四重特異性抗体(tetrabody)(Holliger P.他(1993年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 第90巻:6444〜6448ページ)が含まれる。抗体として、天然の抗体と非天然の抗体の両方が可能である。さらに、抗体には、全合成抗体、単鎖抗体と、それらのフラグメントが含まれる。抗体として、ヒト抗体または非ヒト抗体が可能である。非ヒト抗体は、組み換え法でヒトにおける免疫原性を低下させることによってヒト化することができる。抗体フラグメントには、FabフラグメントとFcフラグメントが含まれるが、これらに限定されない。「抗体のFc部分」として、免疫グロブリンをパパインで消化させることによって得られる結晶化可能なフラグメントが可能である。これは、2つの重鎖のC末端側の半分がジスルフィド結合によって連結された構成であり、免疫グロブリンの「エフェクター領域」として知られている。「抗体のFc部分」は、重鎖のC末端側の半分のすべて、または実質的にすべても意味することができる。抗体には、例えばファージ提示などの技術を通じて選択されて、サンプルに含まれる興味の対象である分子に特異的に結合する免疫グロブリン様タンパク質も含まれる。この文脈では、「特異的」と「特異的な結合」という用語は、興味の対象である分子またはそのフラグメントに対する抗体を意味する。抗体が特異的であると見なされるのは、興味の対象である分子(ここでは遊離ヒストンタンパク質)または上記のそのフラグメントに対する親和性が、その興味の対象である分子を含むサンプル中の他の分子に対するよりも少なくとも50倍、好ましくは100倍、最も好ましくは少なくとも1000倍大きいときである。本分野では、所定の特異性を有する抗体をどのようにして開発して選択するかは周知である。本発明の文脈では、モノクローナル抗体が好ましい。
【0081】
あとでより詳しく議論するように、本発明の(第1および/または第2の)抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体として、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、遺伝子改変モノクローナル抗体が可能である。
【0082】
遊離ヒストンタンパク質(またはそのフラグメント)への抗体の結合は、適切な条件(すなわち免疫反応を可能にする条件、すなわち遊離ヒストンタンパク質に抗体が結合して免疫複合体を形成することを可能にする条件)下で起こる。そのような条件は当業者に知られており、例えば以下に記述するイムノアッセイの標準的な形式を利用することができる。そのような条件は、生理的な温度、pH、イオン強度のもとであることが好ましく、例えばリン酸緩衝化食塩水(PBS)などの媒体中に生じさせることができる。
【0083】
説明用の実施例1〜4では、遊離ヒストンを検出するため、抗体とイムノアッセイに基づく方法を記述する。添付の実施例では、遊離ヒストンタンパク質を検出するためのエピトープとして、配列番号1によるヒストンH4のアミノ酸残基22〜102、または配列番号23によるヒストンH2Aのアミノ酸残基20〜118の配列中に存在するエピトープが可能であることが示される。さらに、遊離ヒストンタンパク質を検出するためのエピトープとして、配列番号36によるヒストンH3のアミノ酸残基27〜62、または配列番号31によるヒストンH2Bのアミノ酸残基41〜69の配列中に存在するエピトープが可能である。
【0084】
さらに、本発明のイムノアッセイ法では、遊離ヒストンH4のエピトープに特異的な第1および/または第2の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体を用いることが好ましい可能性がある。ただし第1のエピトープおよび/または第2のエピトープは、配列番号1のアミノ酸残基22〜102の配列中に存在するヒストンH4のエピトープである。
【0085】
さらに、本発明のイムノアッセイ法では、遊離ヒストンH2Aのエピトープに特異的な第1および/または第2の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体を用いることが好ましい可能性がある。ただし第1のエピトープおよび/または第2のエピトープは、配列番号23のアミノ酸残基21〜53、または20〜118、または120〜129の配列中に存在するヒストンH2Aのエピトープである。
【0086】
さらに、本発明のイムノアッセイ法では、遊離ヒストンH3のエピトープに特異的な第1および/または第2の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体を用いることが好ましい可能性がある。ただし第1のエピトープおよび/または第2のエピトープは、配列番号36のアミノ酸残基27〜63の配列中に存在するヒストンH3のエピトープである。
【0087】
より好ましいのは、本発明のイムノアッセイ法において、遊離ヒストンH4のエピトープに特異的な第1の抗体および/または第2の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体を用いることである。ただしそのエピトープは、配列番号1のアミノ酸残基22〜30、配列番号1のアミノ酸残基67〜78、配列番号1のアミノ酸残基92〜102、配列番号1のアミノ酸残基22〜34、配列番号1のアミノ酸残基46〜102からなるグループから選択する。
【0088】
さらに、本発明のイムノアッセイ法では、遊離ヒストンH2Aのエピトープに特異的な第1の抗体および/または第2の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体を用いることが好ましい。ただしそのエピトープは、配列番号23のアミノ酸残基21〜53、配列番号23のアミノ酸残基21〜29、配列番号23のアミノ酸残基30〜53、配列番号23のアミノ酸残基120〜129からなるグループから選択する。
【0089】
さらに、本発明のイムノアッセイ法では、配列番号31の残基41〜69を持つ遊離ヒストンH2Bのエピトープに特異的な第1の抗体および/または第2の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体を用いることができる。
【0090】
さらに、本発明のイムノアッセイ法では、配列番号36の残基27〜37および/または配列番号36の残基52〜62を持つ遊離ヒストンH3のエピトープに特異的な第1の抗体および/または第2の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体を用いることができる。
【0091】
さらに、本発明のイムノアッセイ法では、配列番号23によって表わされるヒストンH2A配列のアミノ酸残基21〜53および/または120〜129の配列中に存在する遊離ヒストンH2Aのエピトープに特異的な第1の抗体および/または第2の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体を用いることが好ましい。言い換えると、本発明のイムノアッセイ法では、配列番号23によって表わされるヒストンH2Aのアミノ酸残基21〜53および/または120〜129の配列中に存在するヒストンH2Aのエピトープに特異的な第1の抗体および/または第2の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体を用いることが好ましい可能性がある。
【0092】
さらに、本発明のイムノアッセイ法では、配列番号1のアミノ酸残基22〜102の配列中に存在するヒストンH4のエピトープに特異的な第1の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体と、遊離ヒストンH2A、H2B、H3のいずれか、好ましくはH3のエピトープに特異的な第2の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体を用いることができる。
【0093】
さらに、本発明のイムノアッセイ法では、配列番号23のアミノ酸残基21〜53、または120〜129、または20〜118の配列中に存在するヒストンH2Aのエピトープに特異的な第1の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体と、遊離ヒストンH3、H4、H2Bのいずれか、好ましくはH2Bのエピトープに特異的な第2の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体を用いることができる。
【0094】
さらに、本発明のイムノアッセイ法では、配列番号36のアミノ酸残基27〜62の配列中に存在するヒストンH3のエピトープに特異的な第1の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体と、遊離ヒストンH4、H2A、H2Bのいずれか、好ましくはH2A またはH2Bのエピトープに特異的な第2の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体を用いることができる。
【0095】
本明細書では、ここに提示したイムノアッセイ法の文脈では、「第1の」と「第2の」抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体に関係する接触工程の順番は変えることができると理解される。したがって本明細書では、「第2の」抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体をサンプルに接触させ、その後に「第1の」抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体をサンプルに接触させることができると理解される。本明細書では、それら2つの抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体をサンプルに同時に接触させることもできると理解される。
【0096】
本発明のイムノアッセイ法では、配列番号23のアミノ酸残基21〜29の配列中に存在するヒストンH2Aのエピトープに特異的な第1の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体、および/または配列番号23のアミノ酸残基30〜53の配列中に存在するヒストンH2Aのエピトープに特異的な第2の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体を用いることができる。
【0097】
本発明のイムノアッセイ法では、配列番号1のアミノ酸残基22〜30(ペプチドH4-LI-9、配列番号10に対応)または配列番号1の残基46〜102(配列番号2に対応)または配列番号1の残基22〜34の配列中に存在するヒストンH4のエピトープに特異的な第1の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体と、ヒストンH4(配列番号1)のアミノ酸残基46〜102の配列中のエピトープに特異的な第2の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体も用いることも好ましい可能性がある。
【0098】
本発明のイムノアッセイ法では、配列番号1のアミノ酸残基20〜30、または配列番号1の残基67〜78、または配列番号1の残基92〜102、または配列番号1の残基22〜34、好ましくは配列番号1の残基67〜78の配列中に存在するヒストンH4のエピトープに特異的な第1の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体、および/または配列番号1のアミノ酸残基46〜102の配列中に存在するヒストンH4のエピトープに特異的な第2の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体を用いることができる。
【0099】
好ましい検出法には、さまざまな形式のイムノアッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、化学発光イムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(EIA)、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、蛍光に基づくビーズアレイ、磁性ビーズに基づくアレイ、タンパク質マイクロアレイアッセイ、迅速試験形式(例えばイムノクロマトグラフィストリップ試験)が含まれる。
【0100】
本発明のアッセイとして、均一アッセイまたは不均一アッセイ、競合アッセイと非競合アッセイが可能である。特に好ましい一実施態様では、アッセイは、サンドイッチアッセイの形態である。これは非競合イムノアッセイであり、検出および/または定量する分子を第1の抗体と第2の抗体に結合させる。第1の抗体は、固相(例えばビーズ、ウエルその他の容器の表面、チップ、ストリップ)に結合することができ、第2の抗体は、例えば染料、放射性同位体、反応性部分、触媒活性のある部分で標識した抗体であり、逆も可能である。次に、分析物に結合する標識した抗体の量を適切な方法で測定する。「サンドイッチアッセイ」に関する一般的な組成と手続きは確立しており、当業者に知られている(『イムノアッセイハンドブック』、David Wild編、Elsevier社、オックスフォード;第3版(2005年5月)、ISBN-13:978-0080445267;Hultschig C他、Curr Opin Chem Biol. 2006年2月;第10巻(1):4〜10ページ。PMID:16376134、参照により本明細書に組み込まれている)。
【0101】
本発明の文脈では、アッセイは、2つの捕獲分子を含むことができる。それは、両方とも液体反応混合物の中に分散されて存在する抗体であることが好ましい。その液体反応混合物の中では、蛍光または化学発光の消失または増幅に基づく標識系の一部である第1の標識成分が第1の捕獲分子に付着していて、この標識系の第2の標識成分が、第2の捕獲分子に付着している。そのため両方の捕獲分子が分析物に結合すると測定可能な信号が発生するため、サンプルを含む溶液中に形成されるサンドイッチ複合体の検出が可能になる。
【0102】
標識系は、希土類クリプテートまたは希土類キレートを蛍光染料または化学発光染料(特にシアニン型の染料)と組み合わせて含んでいることが好ましい。
【0103】
本発明の文脈では、蛍光に基づくアッセイは、染料の使用を含むことができる。その染料の選択は、例えば、FAM(5-カルボキシフルオレセインまたは6-カルボキシフルオレセイン)、VIC、NED、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、IRD-700/800、シアニン染料(例えばCY3、CY5、CY3.5、CY5.5、Cy7)、キサンテン、6-カルボキシ-2',4',7',4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、TET、6-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトジフルオレセイン(JOE)、N,N,N',N'-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、5-カルボキシローダミン-6G(R6G5)、6-カルボキシローダミン-6G(RG6)、ローダミン、ローダミングリーン、ローダミンレッド、ローダミン110、BODIPY染料(例えばBODIPY TMR)、オレゴングリーン、クーマリン(例えばウンベリフェロン)、ベンズイミド(例えばヘキスト33258)、フェナントリジン(例えばテキサスレッド、ヤキマイエロー、アレクサフルオル、PET、臭化エチジウム、アクリジニウム染料、カルバゾール染料、フェノキサジン染料、ポルフィリン染料、ポリメチン染料など)を含むグループからなすことができる。
【0104】
本発明の文脈では、化学発光に基づくアッセイは、Kirk-Othmer、『化学技術の百科事典』、第4版、総編集長J.I. Kroschwitz、編集者M. Howe-Grant、John Wiley & Sons社、1993年、第15巻、518〜562ページの中に化学蛍光材料に関して記述されている物理的原理に基づく染料の使用を含んでいる(551〜562ページの引用を含め、参照により本明細書に組み込まれている)。好ましい化学発光染料はアクリジニウムエステルである。遊離ヒストンタンパク質は、例えばB.R.A.H.M.S KRYPTORコンパクトPLUS装置(Thermo Scientific B.R.A.H.M.S社、ヘンニッヒスドルフ/ベルリン、ドイツ国)上の完全に自動化されたサンドイッチイムノアッセイ系を利用して検出することができる。このランダムアクセス分析装置は、2つの蛍光体の間の非放射性移動に基づく高感度の時間分解増幅クリプテート放出(TRACE)技術を利用している。
【0105】
本発明はさらに、一方の抗体(例えば第1の抗体)が標識され、他方の抗体(例えば第2の抗体)が固相に結合するか、選択的に固相に結合できる方法に関する。しかし上述のように、本発明の方法の文脈では、第1と第2の抗体は、液体反応混合物の中に分散されて存在し、蛍光または化学発光に基づく標識系の一部である第1の標識成分が第1の抗体に結合し、その標識系の第2の標識成分が第2の抗体に結合していることが好ましい。そのため、両方の抗体がヒストンタンパク質(またはそのフラグメント)に結合した後に測定可能な信号が発生するため、測定している溶液中に得られるサンドイッチ複合体の検出が可能になる。
【0106】
上述のように、「アッセイ」または「診断アッセイ」は、診断の分野に適用できる任意のタイプが可能である。そのようなアッセイは、検出すべき分析物が、所定の親和性を有する1つ以上の捕獲用プローブに結合することに基づくものが可能である。抗体と標的分子すなわち興味の対象である分子の間の相互作用については、アフィニティ定数が10
8 M
-1よりも大きいことが好ましい。
【0107】
本発明はさらに、すでに詳しく説明したように、遊離ヒストンタンパク質またはそのフラグメントのエピトープに特異的な上記の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体に関する。
【0108】
添付の実施例は、本発明に従って遊離ヒストンをうまく検出するのに用いられる抗体の例を示している。したがって本発明は、遊離ヒストンH4および/またはH2Aおよび/またはH2Bおよび/またはH3のエピトープに特異的な抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体に関する。さらに、本発明は、配列番号1によるヒストンH4のアミノ酸残基22〜102の配列に含まれる遊離ヒストンH4のエピトープに特異的な抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体に関する。
【0109】
さらに、本発明は、配列番号1によるヒストンH4のアミノ酸残基46〜102の配列に含まれる遊離ヒストンH4のエピトープに特異的な抗体または抗原結合フラグメントまたはその誘導体に関する。
【0110】
より好ましいのは、本発明が、配列番号1の残基22〜30、配列番号1の残基67〜78、配列番号1の残基92〜102、配列番号1の残基22〜34、配列番号1の残基46〜102、配列番号1の残基46〜55、配列番号1の残基60〜67、配列番号1の残基80〜91、配列番号1の残基24〜35、配列番号1の残基68〜77の配列からなるグループから選択された配列に含まれる遊離ヒストンH4のエピトープに特異的な抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体に関係することである。
【0111】
さらに、本発明は、配列番号23によるヒストンH2Aのアミノ酸残基20〜118の配列に含まれる遊離ヒストンH2Aのエピトープに特異的な抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体に関する。
【0112】
より好ましいのは、本発明が、配列番号23の残基21〜53、配列番号23の残基21〜29、配列番号23の残基30〜53、配列番号23の残基120〜129、配列番号23の残基21〜29、配列番号23の残基82〜88、配列番号23の残基89〜95、配列番号23の残基100〜118の配列からなるグループから選択された配列に含まれる遊離ヒストンH2Aのエピトープに特異的な抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体に関係することである。
【0113】
さらに、本発明は、配列番号36によるヒストンH3のアミノ酸残基27〜62の配列に含まれる遊離ヒストンH3のエピトープに特異的な抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体に関する。
【0114】
より好ましいのは、本発明が、配列番号36の残基27〜37および/または配列番号36の残基52〜62の配列に含まれる遊離ヒストンH3のエピトープに特異的な抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体に関係することである。
【0115】
さらに、本発明は、配列番号31によるヒストンH2Bのアミノ酸残基41〜69の配列に含まれる遊離ヒストンH2Bのエピトープに特異的な抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体に関する。
【0116】
本発明の文脈で特に好ましいのは、配列番号23によるヒストンH2Aのアミノ酸残基20〜55または70〜118の配列に含まれる遊離ヒストンH2Aのエピトープに特異的な抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体、または配列番号1のアミノ酸残基46〜102の配列中に存在するヒストンH4のエピトープに特異的な抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体である。言い換えると、本発明の好ましい側面では、抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体は、配列番号2に与えられているエピトープに特異的である。
【0117】
本発明はさらに、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体を発現する宿主細胞に関する。
【0118】
本発明の文脈では、「宿主細胞」という用語は、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体を発現するあらゆる細胞を意味する。したがって原核細胞と真核細胞が本発明の範囲に入る。
【0119】
本発明は、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体を含むキットにも関する。本発明の上記抗体を本発明のキットで用いることができる。
【0120】
本発明には、抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体を利用することや、本発明のキットを、疾患または病状の診断および/または予後予測および/またはリスク評価および/またはリスク層化および/または治療管理のための方法で利用することも含まれる。その疾患または病状には、感染性と非感染性の病因に関係する個人の全身性炎症反応(SIRS)、例えば、微生物、すなわち細菌および/またはウイルスおよび/または真菌および/または寄生生物の刺激によって起こる敗血症、重度の敗血症、敗血症ショックや、外傷性障害および/または出血、虚血再灌流障害、火傷損傷、急性膵臓炎のほか、個人が内皮損傷組織、血栓塞栓症、急性播種性血管凝固(DIC)を起こすリスクがあって、その疾患が進行する間に単臓器不全または多臓器不全(特異急性腎臓損傷、急性肺損傷、肝臓損傷)に至るリスクを有する心肺バイパス、化学療法、放射線療法などの介入措置が含まれる。
【0122】
本発明によれば、遊離ヒストン分子は、質量分析(MS)法を利用して検出することができる。したがって本発明により、上記の疾患または病状の診断および/または予後予測および/またはリスク評価および/またはリスク層化および/または治療管理のための方法として、サンプルに含まれる少なくとも1つの遊離ヒストンタンパク質またはそのペプチドフラグメントを質量分析(MS)によって検出することを含む方法も提供される。その結果、本発明は、患者の上記疾患または病状の診断、予後予測、リスク評価、スクリーニング、治療モニタリングへのMSの利用に関する。
【0123】
本発明は、生体サンプルに含まれる遊離ヒストンタンパク質の量を測定する方法にも関する。この方法は、生体サンプル中の1つ以上の修飾された、または修飾されていないヒストンフラグメントペプチドの存在または量、またはそのサンプルからのタンパク質消化物(例えばトリプシン消化物)の存在または量を検出し、場合によってはそのサンプルをクロマトグラフィ法で分離した後、その調製され、場合によっては分離されたサンプルに対してMS分析を実施することを含んでいる。特に少なくとも1つのヒストンペプチドの量を求めるため、例えば、選択反応モニタリング(SRM)質量分析、多重反応モニタリング(MRM)質量分析、並列反応モニタリング(PRM)質量分析をMS分析で利用することができる。
【0124】
本発明のMS分析法の1つの側面では、タンパク質消化の前にサンプル中のタンパク質をあらかじめ分離する必要がない。遊離ヒストンとそのペプチドを信頼性よく検出することは、分離法なしに実現できる。分離法には、脱脂質、クロマトグラフィ、遠心分離、豊富なタンパク質を減らすアフィニティマトリックスが含まれる。
【0125】
本明細書では、「質量分析」または「MS」という用語は、化合物を質量によって同定する分析技術を意味する。MSは、質量対電荷比、すなわち「m/z」に基づいてイオンをフィルタし、検出し、測定する方法を意味する。「MS」技術は、(1)化合物をイオン化して帯電した化合物を生成させることと、(2)帯電した化合物の質量対電荷比を検出することを特徴とする。化合物は一般にイオン化装置によってイオン化され、イオン検出器によって検出される。イオン化装置とイオン検出器は質量分析器に組み込まれている。一般に、興味の対象である1つ以上の分子がイオン化され、そのイオンがその後質量分析器に導入されてイオンがそのm/zに従って分離される。このような分離は、電場(または電場と磁場の組み合わせ)内でのイオンのm/zに依存した挙動に基づいて、または場のない領域における、m/zに依存した運動エネルギーを持つイオンの飛行時間の変動に基づいて実施することができる。例えば、「表面からの質量分析」という名称のアメリカ合衆国特許第6,204,500号;「タンデム質量分析の方法と装置」という名称のアメリカ合衆国特許第6,107,623号;「質量分析に基づくDNA診断」という名称のアメリカ合衆国特許第6,268,144号;「分析物の脱離と検出のための表面増強光解離性の付着と放出」という名称のアメリカ合衆国特許第6,124,137号;Wright他、Prostate Cancer and Prostatic Diseases第2巻:264〜276(1999年);MerchantとWeinberger、Electrophoresis第21巻:1164〜1167ページ(2000年)を参照のこと。
【0126】
一般に、MSによる検出と分析は、分析の目的に応じて異なるやり方で実施することができる。トップ-ダウン・プロテオミクスは完全な分析に関係し、この分析では、分解産物、配列変異体、翻訳後修飾の組み合わせを検出するため、タンパク質が完全な状態であることを維持する。ボトム-アップ・ペプチド分析には、ペプチドフラグメントを評価して分析するため、生成したタンパク質サンプルの還元、アルキル化、消化が含まれる。
【0127】
質量分析の質量分解能と質量決定能力を向上させるため、MS分析の前にサンプルを処理することができる。したがって本発明は、免疫選択増菌培養技術および/またはサンプルの調製に関係する方法および/またはクロマトグラフィ法と組み合わせることのできる、好ましくは液体クロマトグラフィ(LC)と組み合わせることのできる、より好ましくは高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)または超高性能液体クロマトグラフィ(UHPLC)と組み合わせることのできるMS検出法に関する。サンプル調製法は、サンプルを溶解、分画化、消化してペプチドにする技術、および/または減少させる技術、および/または豊富化する技術、および/または透析する技術、および/または脱塩する技術、および/またはアルキル化する技術、および/またはペプチド還元する技術を含んでいる。しかしこれらの工程はオプションである。本発明の1つの側面では、フラグメント(例えば配列番号2)を測定するのにタンパク質を分解する(例えばトリプシンによる)消化が必要とされない。サンプルには、MS分析の前に免疫選択増菌培養を実施することができる。消化前にThermo Fisher MSIA(登録商標)技術などの質量分析イムノアッセイ技術を適用すること、または消化後にSISCAPA(登録商標)技術を適用することができる。
【0128】
一次元または多次元のHPLCを利用してタンパク質またはペプチドを分離することができる。タンパク質またはペプチドの混合物は、より高い分解能を与える一連のクロマトグラフィ固定相または固定次元を通過させることができる。HPLCは多くの実験法に適合させることができ、興味の対象である特定のクラスのタンパク質またはペプチドを識別する際の適切さと、互いの適合性ならびに検出と同定のための下流の質量分析法とに合わせてさまざまな固定相と移動相を選択することができる。HPLCを利用すると、タンパク質分解酵素によって消化されて対応する酵素産物であるペプチド混合物が生成している臨床サンプル、またはタンパク質分解酵素によって消化されていない臨床サンプルを分離することができる。対応するペプチド混合物は、高い分解能を与える一連のクロマトグラフィ固定相または固定次元を通過させることができる。ペプチドとタンパク質の分離は、ペプチド配列、ペプチド配列の機能群に基づくほか、物理的特性に基づく。
【0129】
したがって質量分析検出は、その質量分析検出の前に実施する液体クロマトグラフィ(LC)の適用と組み合わせることができる。より好ましいのは、質量検出の前に高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)を実施することである。
【0130】
本発明の好ましい側面では、MSに基づく方法は、タンパク質消化の前に実施する予備的タンパク質精製に依存しない。さらに、タンパク質消化の前に生化学成分(例えば脂質、タンパク質、DNA)を除去する必要がない。好ましい側面では、タンパク質をその物理的特性に従って分離する精製工程、すなわちクロマトグラフィまたは遠心分離は、タンパク質消化の前に必要とされない。さらに、豊富なタンパク質、またはある程度豊富なタンパク質をタンパク質消化の前に減少させることは必要とされない。豊富なタンパク質は、Ig-Y12などのマトリックスによって除去することができる。本発明の文脈では、そのような前分離工程は、タンパク質消化の前の前分離と呼ばれる。したがって、血清や血漿などの生体サンプル中の遊離ヒストンタンパク質は、タンパク質消化の前にいかなる前処理または前分離もせずに検出することができる。
【0131】
いくつかの側面では、あらかじめ分離手続きを実施することなく、生体サンプルに対してMS分析を実施することができる。そうすることで、免疫選択増菌培養技術と前処理手続きを実施することができる。このような一実施態様では、サンプルは、静電スプレー原理を利用した直接的な輸液によって、または流れ注入分析によって、またはサンプルの豊富化を伴う流れ注入によって分析することが好ましい。
【0132】
本明細書では、サンプル分子を「イオン化する」またはサンプル分子の「イオン化」という用語は、1以上の電荷単位に等しい正味の電荷を有する分析物イオンを生成させるさまざまな技術を意味する。その技術として、化学的イオン化(CI)、電子イオン化(EI)、高速原子衝撃(FAB)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI)、大気圧化学的イオン化(APCI)、大気圧光イオン化(APPI)、誘導結合プラズマ(ICP)、電界脱離(FD)、サーモスプレー、シリコン上脱離/イオン化(DIOS)、二次イオン質量分析(SIMS)、スパークイオン化、熱イオン化、イオン付着イオン化が可能である。
【0133】
分析物イオンの選択的検出は、タンデム質量分析(MS/MS)を利用して実施することができる。タンデム質量分析は、質量選択工程(本明細書では、「質量選択」という用語は、特定のm/zまたは狭い範囲のm/zを持つイオンの分離を意味する)の後に、選択されたイオンのフラグメンテーションと得られる生成(フラグメント)イオンの質量分析が続くことを特徴とする。
【0134】
前駆分析物イオンは、さまざまな技術を利用してフラグメントにすることができる。その技術は、衝突誘起解離(CID)、多段階活性化(MSA)、パルス式q解離(PQD)、電子移動解離(ETD)、加熱キャピラリー解離(HTD)、電子-捕獲解離(ECD)、赤外多フォトン解離(IRMPD)、高エネルギーCトラップ解離(HCD)から選択することができる。
【0135】
本明細書では、タンデム質量分析は、三連四重極タンデム質量分析器を用いて実施することが好ましい。タンデム質量分析器は、第1と第3の四重極が質量フィルタであること、すなわち望むm/zまたは狭い範囲のm/zのイオンを選択的に送れることを特徴とする。第2の四重極は、衝突誘起解離のために用いられる。前駆分析物イオンは第1の四重極において選択された後、第2の四重極において中性ガスとの衝突を通じて解離する。第3の四重極は、イオン化されたフラグメントをフィルタする。そのフラグメントはその後、場合によっては電子増倍管を備える検出システムによって検出される(Hoffmann E.、Journal of Mass Spectrometry、第31巻、1996年、129〜137ページ)。
【0136】
本明細書に概略を示したように、三連四重極タンデム質量分析器を用いて選択反応モニタリング(SRM)(多重反応モニタリング(MRM)とも呼ばれる)と定量的選択反応モニタリング(qSRM)を実施することができる。
【0137】
あるいは、アッセイでは、標的分析物の検出と定量のために並列反応モニタリング(PRM)を利用することができる。下記のように特徴的なトランジションの間で切り換えることによって異なる生成イオンを順番に検出して定量するMRMとは異なり、PRMは、共通の前駆イオンのフラグメンテーションから得られる2つ以上の生成イオンを同時に検出して定量する。一般に、PRMでは、生成した異なるイオン種を蓄積してその後に質量分析する。非限定的な一例では、PRMは、Thermo Fisher Scientific社(ブレーメン、ドイツ国)から入手できるQ Exactive質量分析器で実施することができる。Q Exactive質量分析器では、四重極質量フィルタによって特定のm/zを持つ前駆イオンが選択的に衝突セルに送られ、その衝突セルで前駆イオンが比較的高エネルギーで中性ガスの分子または原子と衝突し、その結果として衝突誘起解離を起こして生成イオンを形成する。さまざまなm/zを有するさまざまなイオン種が含まれる回収された生成イオンを次に軌道静電トラップ(Orbitrap)質量分析器に送る。その質量分析器は、生成イオンの質量を分析して、複数の生成イオン種のそれぞれの豊富さ(強度)を表わす質量スペクトルを生成させる。
【0138】
検出法は、選択/多重反応モニタリング(SRM/MRM)などの形式のアッセイを含むことができる。
【0139】
この文脈では、SRM/MRMを実施するのに三連四重極タンデム質量分析器を用いることが好ましい。SRMまたは定量性選択反応モニタリング(qSRM)は、複雑な生体サンプル中の化合物(タンパク質)を高レベルの選択性と感度で正確に分析して定量する技術である。本明細書では、「qSRM」は、以下に記述するように、選択されたペプチドが、同位体で標識した参照ペプチド、または完全長タンパク質を用いることによって定量される選択反応モニタリングを意味する。
【0140】
本明細書では、「SRM」という用語は、質量分析器の中で特別な前駆分析物(標的タンパク質の代替物としてのペプチドであり、ここでは検出する遊離ヒストンタンパク質)を選択して単離する技術と規定される。イオン化された前駆分析物はフラグメントにされ、イオン化されたそのフラグメントはモニタされて、その質量対電荷比に基づいて検出、定量される。前駆イオンとフラグメントイオンに付随する特定のm/z値のペアは、「トランジション」と呼ばれる。
【0141】
その「トランジション」は、第1と第3の四重極がチューニングしている前駆体/フラグメントイオンのm/z値の特定のペアを意味する。その「トランジション」は、複雑なタンパク質消化物に含まれる興味の対象であるタンパク質の代替物である特定のペプチドを同定して定量する上で極めて重要である。平均して、代替物と合成同位体標識参照ペプチドの2〜4つのトランジションが、qSRMアッセイで測定される。SRM/qSRM測定を適用するには、各ペプチドについて少なくとも2つのトランジションを用いることで、特異性を保証するとともに、標的とする物質の同定に間違いがないことを保証することが推奨される。
【0142】
一般に、SRM/MRMアッセイの確立は、興味の対象であるタンパク質を消化した後に1つまたは複数のペプチドを選択することから始まる。適切なペプチド(前駆分析物)は、非常に大きな質量分析信号応答を示す。第2に、前駆分析物に特異的なペプチドフラグメントを選択する。それぞれの前駆分析物-フラグメントについて、特定のMSパラメータ(衝突エネルギー、イオンの光学的設定、滞留時間が含まれる)を最適化することができる。その後トランジションを確認することにより、生体サンプル(例えば血漿/血清)中の検出可能性を確認するとともに、バックグラウンドを評価する。同位体標識した標準ペプチドを添加することにより、前駆分析物を定量することができる。ペプチドとフラグメントを選択するため、予測ツール(例えば、アルゴリズム式予測を備えたソフトウエアプログラム、データベース)を用いて最適なトランジションの選択を助けることができる。
【0143】
上に概略を示したように、本発明は、1つの側面では、生体サンプルに含まれる遊離ヒストンタンパク質の検出および/または定量に関するものであり、液体クロマトグラフィの適用と、遊離ヒストンタンパク質の代替物としてのヒストンペプチドを特異的に検出するSRMおよび/またはqSRMアッセイの適用を含む方法を利用する。
【0144】
いくつかの実施態様では、遊離ヒストンタンパク質またはそれに由来するペプチドから形成された前駆および/または生成イオンの検出と測定に高分解能の/正確な質量(HRAM)質量分析器を用いると有利である可能性がある。HRAM質量分析器は、典型的には15Kを超える分解能、典型的には5パーミリオン(ppm)未満の質量精度で質量スペクトルを取得することのできる質量分析器である。HRAM質量分析器の例に、フーリエ変換/イオンサイクロトロン共鳴(FT-ICR)分析器、Orbitrap軌道静電トラップ分析器、多重反射または長距離飛行時間(TOF)分析器が含まれる。HRAM質量分析器を組み込んだ質量分析装置に、Thermo Fisher Scientific社(ブレーメン、ドイツ国)から入手できるQ Exactive生成ラインが含まれる。一般に、HRAM質量分析器により、質量スペクトルの中で、非常によく似たm/zを持っていて邪魔をするイオン種から標的分析物を識別することが可能になり、そのことによって標的分析物(例えば遊離ヒストンまたはその代替ペプチドから形成されるイオン)の信頼性ある同定と定量が容易になる。このようにして、複雑な生物マトリックス(例えば血漿)の中で標的分析物を高感度で検出して測定することができる。HRAM質量分析器を用いると、サンプル中に存在していると質量分析による標的分析物の測定を混乱させる可能性のある邪魔な諸成分から標的分析物を単離するためのサンプルの調製・分離技術を省略したり簡単化したりすることが可能になる。いくつかの用途では、HRAM質量分析器を用いることで、(例えば全MSスペクトルに現われる強度に基づいて)豊富な前駆イオンを用いて標的分析物を信頼性よく検出して定量することが可能になるため、フラグメンテーション工程が不要になる。
【0145】
相対的定量「rSRM」は、以下のようにして実施できる。
【0146】
1.生体サンプル中で検出された所与のヒストンペプチドからのSRMシグネチャピーク面積を、少なくとも1つの第2、第3、第4以下の生体サンプル中の同じヒストンフラグメントペプチドの同じSRMシグネチャピーク面積と比較することにより、遊離ヒストンタンパク質の存在の増加または減少を求める。
【0147】
2.生体サンプル中で検出された所与のヒストンペプチドからのSRMシグネチャピーク面積を、異なる別々の生物源に由来する他のサンプル中の他のタンパク質からのペプチドフラグメントから求めたSRMシグネチャピーク面積と比較することにより、遊離ヒストンタンパク質の存在の増加または減少を求める。ただし、1つのペプチドフラグメントに関する2つのサンプル間のSRMシグネチャピーク面積の比較結果は、例えば各サンプル中で分析したタンパク質の量で規格化する。
【0148】
3.ヒストンタンパク質の変化するレベルを、さまざまな細胞条件下で発現のレベルが変化しない他のタンパク質のレベルに規格化するため、所与のヒストンペプチドに関するSRMシグネチャピーク面積を、同じ生体サンプル中の異なるタンパク質に由来する他のペプチドフラグメントからのSRMシグネチャピーク面積と比較することにより、ヒストンタンパク質の存在の増加または減少を求める。
【0149】
4.これらのアッセイは、ヒストンタンパク質の修飾されていないペプチドフラグメントと修飾されたペプチドフラグメントの両方に適用することができる。なお修飾には、リン酸化および/またはグリコシル化および/またはアセチル化および/またはメチル化(モノ、ジ、トリ)および/またはシトルリン化および/またはユビキチン化が含まれるが、これらに限定されない。また、修飾されたペプチドの相対レベルは、修飾されていないペプチドの相対量を求めるのと同じようにして求まる。
【0150】
所与のペプチドの絶対的定量は、以下のようにして実施できる。
【0151】
1.個別の生体サンプルに含まれるヒストンタンパク質からの所与のペプチドフラグメントのSRM/MRMシグネチャピーク面積を、生体サンプルからのタンパク質ライセートに添加した内部標準ペプチドフラグメントのSRM/MRMシグネチャピーク面積と比較する。
【0152】
内部標準として、調べているヒストンタンパク質からのペプチドフラグメントの標識した合成バージョンまたは標識した組み換えタンパク質が可能である。消化前(組み換えタンパク質では絶対に)または消化後に、既知量のこの標準をサンプルに添加し、SRM/MRMシグネチャピーク面積を内部標準ペプチドフラグメントと生体サンプル中の本来のペプチドフラグメントの両方について別々に求めた後、両方のピーク面積を比較することができる。これは、修飾されていないペプチドフラグメントと修飾されたペプチドフラグメントに適用することができる。なお修飾には、リン酸化および/またはグリコシル化および/またはアセチル化および/またはメチル化(モノ、ジ、トリ)および/またはシトルリン化および/またはユビキチン化が含まれるが、これらに限定されない。また、修飾されたペプチドの絶対レベルは、修飾されていないペプチドの絶対レベルを求めるのと同じようにして求めることができる。
【0153】
2.ペプチドは、外部較正曲線を用いて定量することもできる。正規曲線のアプローチでは、内部標準としての一定量の重いペプチドと、サンプルに添加される可変量の軽い合成ペプチドを用いる。マトリックス効果を説明する標準曲線を構成するには、試験サンプルのマトリックスに似た代表的なマトリックスを用いる必要がある。さらに、逆曲線法では、一定量の軽いペプチドを内在性分析物の上に添加して内部標準を作り出し、可変量の重いペプチドを添加されて一群の濃度標準を作り出すことで、マトリックス中の内在性分析物の問題を回避する。正規曲線または逆曲線と比較する試験サンプルは、較正曲線を作るために用いるマトリックスに添加する内部標準と同量の標準ペプチドとともに添加される。
【0154】
上に説明したように、生体サンプル中の遊離ヒストンタンパク質の量は、その生体サンプルからのタンパク質消化物中の修飾された、または修飾されていない1つ以上のヒストンフラグメントペプチドの量を検出し、場合によってはそのサンプルをクロマトグラフィ法で分離し、その調製され、場合によっては分離されたサンプルに対して選択反応モニタリング(SRM)タンデム質量分析を実施して少なくとも1つのヒストンペプチドの量を求めることによって測定できる。
【0155】
本発明は、生体サンプルに含まれる遊離ヒストンタンパク質の量を測定する方法として、その生体サンプルからのタンパク質消化物中の修飾された、または修飾されていない1つ以上のヒストンフラグメントペプチドの量を検出し、場合によってはそのサンプルをクロマトグラフィ法で分離し、その調製され、場合によっては分離されたサンプルに対して選択反応モニタリング(SRM)タンデム質量分析を実施して少なくとも1つのヒストンペプチドの量を求めることを含む方法にも関する。ヒストンフラグメントペプチドの定量は、rSRMによる相対的定量、または絶対的定量が可能である。
【0156】
本発明により、生体サンプルに含まれる遊離ヒストンタンパク質の量を測定する方法として、タンパク質消化の前に生体サンプルをあらかじめ分離することなく、その生体サンプルからのタンパク質消化物中の1つ以上のヒストンフラグメントペプチドの量を検出し、分離されたペプチドに対して選択反応モニタリング(SRM)タンデム質量分析を実施して少なくとも1つのヒストンペプチドの量を求めることを含む方法も提供される。
【0157】
本発明は、生体サンプルに含まれる遊離ヒストンタンパク質の量を測定する方法として、タンパク質消化の前に生体サンプルをあらかじめ分離することなく、その生体サンプルからのタンパク質消化物中の修飾された、または修飾されていない1つ以上のヒストンフラグメントペプチドの量を検出し、分離されたペプチドに対して選択反応モニタリング(SRM)タンデム質量分析を実施して少なくとも1つのヒストンペプチドの量を求めることを含む方法にも関する。
【0158】
さらに本発明は、生体サンプルに含まれる遊離ヒストンタンパク質の量を測定する方法として、タンパク質消化の前に生体サンプルをあらかじめ分離することなく、そのサンプルからのタンパク質消化物中の修飾されていない1つ以上のヒストンフラグメントペプチドの量を検出し、分離されたペプチドに対して選択反応モニタリング(SRM)タンデム質量分析を実施して少なくとも1つのヒストンペプチドの量を求めることを含む方法に関する。
【0159】
さらに本発明は、生体サンプルに含まれる遊離ヒストンタンパク質の量を測定する方法として、その生体サンプルからのタンパク質消化はないが、そのサンプルをあらかじめ分離する前に前処理手続きまたは免疫選択増菌培養手続きを適用した修飾されていない1つ以上のヒストンフラグメントペプチドの量を検出し、分離されたペプチドに対して選択反応モニタリング(SRM)タンデム質量分析を実施して少なくとも1つのヒストンペプチドの量を求めることを含む方法に関する。
【0160】
したがって本発明は、タンパク質消化(例えばトリプシン消化)を実施していないサンプルに含まれる遊離ヒストンタンパク質の量を測定する方法として、選択反応モニタリング(SRM)タンデム質量分析によって1つ以上のヒストンフラグメントペプチドの量を検出し、少なくとも1つのヒストンペプチドの量を求めることを含む方法にも関する。ただしこの方法では、サンプルに対して検出前に前処理手続きまたは免疫選択増菌培養手続きを実施している。
【0161】
以下の例示としてのアッセイは、本発明の文脈でも利用できるが、他のアッセイも同様に適用することができる。サンプルは、好ましくはプロテアーゼ(例えばトリプシン)を添加することによってタンパク質を消化させる。その結果としてサンプルがヒストンタンパク質に特異的なヒストンペプチド(代替ペプチド)を含むことになる。代替ペプチドを正確に定量するため、決められた量の内部標準をサンプルに添加する。したがって同位体で標識した合成ペプチドは、添加されると代替ペプチドの相手方となる。内部標準は、タンパク質消化の前に添加してもよい。代替ペプチドならびに対応する内部標準を含む消化されたサンプルは、今や、適切なLC/HPLCプロトコル(HPLCカラム、勾配、溶離時間)を適用してクロマトグラフィによって分離される。本明細書では、クロマトグラフィによる分離はオンラインで実施され、そのことによってカラム溶離液は質量分析器の第1のイオン化ユニットに直接移される。あるいはさまざまな溶離液を最初に回収してあとで分析してもよい。液体クロマトグラフィ以外に、サンプル分離のためのさまざまな技術(例えば前の段落に記載したような技術)を適用することができる。分離工程の後、選択された代替ペプチドならびに対応するフラグメントの質量を質量分析器によって、好ましくはタンデム質量分析器によって求めることになる。ヒストンペプチドを含んでいるサンプルを質量分析器の中でイオン化し、得られたイオンを第1の質量フィルタに供給する。上述のように、興味の対象となる質量対電荷比(m/z)を持つイオン化されたペプチドだけが衝突ユニットに選択的に導入されて、その衝突ユニットで前駆ペプチドが衝突ガスとの衝突によりフラグメンテーションを受ける。選択されたペプチドフラグメントイオンはさらに第2の質量フィルタに送られる。検出後、信号が発生する。その信号は、送られてきたヒストンペプチドフラグメントイオンの量を表わしている。
【0162】
本発明のイムノアッセイ法の文脈で記載されている抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体は、MS分析の前に遊離ヒストンの免疫沈降/免疫精製に用いることもできる。そのときプロテアーゼによる消化は、適用しても適用しなくてもよい。
【0163】
したがって本発明は、生体サンプルに含まれる遊離ヒストンタンパク質の存在または量を測定する方法として、そのヒストンタンパク質に含まれるエピトープに特異的な抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体を用いて遊離ヒストンタンパク質を免疫精製し、クロマトグラフィ法でそのサンプルを分離し、その生体サンプルからの修飾された、または修飾されていない1つ以上のヒストンフラグメントペプチドの量を検出し、その調製されたサンプルに対してMS分析を実施することを含む方法に関する。
【0164】
上に概略を示したように、MSに基づく本発明の方法では、MS分析の前にサンプルに対してプロテアーゼ消化、好ましくはトリプシン消化を実施することができる。しかし本発明の別の側面では、MS分析の前にサンプルに対してプロテアーゼ消化、好ましくはトリプシン消化を実施しない。
【0165】
上記の説明によれば、MSに基づく本発明の方法では、場合によっては以下の工程の1つ以上を含むことができる:
(i)サンプルに対して化学物質または生化学物質の添加などの前処理を実施する;
(ii)サンプルに対して還元および/またはアルキル化反応を実施する;
(iii)MS分析の前かつトリプシン消化の後にクロマトグラフィ法でサンプルを分離する;
(iv)イムノアフィニティ装置(例えばThermo Scientific MSIA(登録商標)技術)を用いてサンプルを豊富にするか、除去カラムを用いて望まない成分を減少させる;
(v)少なくとも1つの内部参照基準を添加する。その参照基準は、検出すべきペプチドまたはタンパク質を同位体で標識したバージョンである。
【0166】
MSに基づく本発明の方法では、遊離ヒストンタンパク質として、ヒストンH2Aと、その少なくとも1つのペプチドフラグメントであって配列番号24、28、29、30からなるグループから選択されるものが可能である。配列番号24と28から選択されるペプチドフラグメントが検出されて、場合によっては定量されることが好ましい。
【0167】
MSに基づく本発明の方法では、遊離ヒストンタンパク質として、ヒストンH4と、その少なくとも1つのペプチドフラグメントであって配列番号2、3、4、5、6、7からなるグループから選択されるものも可能である。配列番号3と4から選択されるペプチドフラグメントが検出されて、場合によっては定量されることが好ましい。
【0168】
本発明の文脈における好ましいペプチドフラグメントとトランジションを表4と表5に掲載する。
【0169】
本明細書で引用するあらゆる参考文献は、学術文献と特許文書を含め、参照によって本明細書に組み込まれている。
【実施例】
【0176】
以下の実施例と図面は、本発明をより詳しく説明するために用いるのであり、本発明がその実施例と図面に限定されることはない。
【0177】
実施例1:抗体の生成
【0178】
A.ペプチド
ヒストンH4アミノ酸配列に関係するペプチドが、Thermo Fisher Scientific社(ウルム、ドイツ国)、またはNew England Peptide社(ガードナー、マサチューセッツ州、アメリカ合衆国)、またはJPT Peptide Technologies社によって化学的に合成されて精製された(90%超)。免疫化ペプチドは、スルホ-MBS(m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)を用いてウシ血清アルブミン(BSA、Sigma Aldrich社)に共役させるか、追加のN末端システインを介してスカシガイのヘモシアニン(KLH、Thermo Fisher Scientific社)に共役させた。抗体のアフィニティ精製に用いるペプチドは、免疫化に用いるペプチドと比べて1つまたは2つの追加のC末端アミノ酸を含むとともに、SulfoLinkカップリング樹脂に固定化するための追加の1個のN末端システインを含んでいた。
【0179】
B.ポリクローナル抗体の開発
H4-LI-9(ヒストンH4のアミノ酸22〜30、配列番号10)、H4-EE-13(ヒストンH4のアミノ酸52〜63、配列番号15)、H4-RR-13(ヒストンH4のアミノ酸67〜78、配列番号17)、H4-RG-9(ヒストンH4のアミノ酸92〜99、配列番号21)に対するヒツジのポリクローナル抗体を標準的な手続き(EP 1488209 A1、EP 1738178 A1を参照のこと)に従って生成させた。簡単に述べると、MBSを用い、追加の1個のN末端システインを介してペプチドを担体タンパク質KLHにカップルさせた。以下のスキームに従い、共役体を用いてヒツジを免疫化した:最初に100μgの共役体(質量は、共役体のペプチド部分を意味する)を用いてヒツジを免疫化し、その後は4週間の間隔で50μgを用いて追加免疫化した。最初に免疫化してから4ヶ月後、300 mlの抗血清をヒツジから取得した。
【0180】
HA-AR-10(ヒストンH2Aタイプ1のアミノ酸21〜29、配列番号24)とHA-IL-23(ヒストンH2Aタイプ1のアミノ酸30〜51、配列番号26)に対するウサギのポリクローナル抗体を標準的な手続きに従って生成させた。簡単に述べると、MBSを用い、追加の1個のN末端システインを介してペプチドをKLHにカップルさせた。以下のスキームに従い、共役体を用いてウサギを免疫化した:最初に800μgの共役体(質量は、共役体のペプチド部分を意味する)を用いてウサギを免疫化し、4週目からその後は1週間の間隔で500μgを用いて3回の追加免疫化を開始した。最初に免疫化してから2ヶ月後、20 mlの抗血清をウサギから取得した。
【0181】
それぞれの抗血清から以下のようにして抗原特異的抗体を精製した:5 mgの精製ペプチド(以下の表1参照)を5 mlのSulfoLinkゲル(Pierce社、ロックフォード、イリノイ州、アメリカ合衆国)にカップルさせた。50 mlの抗血清をゲルとともにバッチ式で室温にて4時間インキュベートした。懸濁液をカラム(空のNAP25カラム、GE Healthcare Life sciences社)に移した。フロースルーを廃棄した後、カラムを100 mlの洗浄用緩衝液(100 mM KPi、0.1%トゥイーン20、pH 6.8)で洗浄し、特異的に結合した抗体を50 mMクエン酸、pH 2.7を用いて溶離させた。溶離液を50 mM NaPi、100 mM NaCl、pH 8.0に対して透析した。
【0182】
【表1】
【0183】
C.モノクローナル抗体の開発
H4-GR-17(ヒストンH4のアミノ酸2〜17、配列番号8)、H4-LI-9(ヒストンH4のアミノ酸22〜30、配列番号10)、H4-EE-13(ヒストンH4のアミノ酸52〜63、配列番号15)、H4-RR-13(ヒストンH4のアミノ酸67〜78、配列番号17)、H4-TK-13(ヒストンH4のアミノ酸80〜91、配列番号19)、H4-RG-12(ヒストンH4のアミノ酸92〜102、配列番号22)、完全長ヒストンH3(Sigma Aldrich社 SRP0177、配列番号36)に対するモノクローナル抗体を標準的な手続き(Lane, R. D. J Immunol Methods、1985年、第81巻(2):223〜228ページ)によって生成させた。この研究では、リンパ球-骨髄腫細胞混合物をフソゲン(融合因子)に曝露する時間が全ハイブリドーマコロニーの収率とモノクローナル抗体を分泌したハイブリドーマコロニーの収率に及ぼす影響を評価した。Sp2/0骨髄腫細胞とFOX-NY骨髄腫細胞を、時間をさまざまに変えて、ヒツジ赤血球細胞で免疫化したマウス脾臓リンパ球と融合させた。最適な融合時間は、フソゲン(5.0 mlのKodak 1450 PEG、0.5 mlのジメチルスルホキシド、4.5 mlのリン酸緩衝化食塩水、pH 7.0)を37℃で45秒間かけて細胞混合物に添加することであった。融合プロセスは、混合物を50 mlのRPMI-1640に徐々に希釈することによって停止させた。10分後、細胞を遠心分離し、フィーダーマクロファージとともに選択培地に再懸濁させて培養した。一般的なより長時間の融合技術と比較すると、この手続きにより、融合パートナーとしてSp2/0細胞を用いたときには生成するハイブリッドの数が約5倍になり、FOX-NY細胞を用いたときには生成するハイブリッドの数が約30倍になる。どちらの場合にも、実質的にすべてのウエルがモノクローナル抗体を分泌するハイブリッドコロニーを含んでいる。この高効率の融合技術は、弱い免疫原に対するモノクローナル抗体を生成させるのに、またはより強い免疫原を用いて免疫化に必要な時間を短くするのに非常に有用である可能性がある。
【0184】
簡単に述べると、本明細書では、スルホ-MBS(m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)を用いてペプチドをBSAに共役させた。これらの共役体とヒストンH3を用いてBalb/cマウスの免疫化と追加免疫を行ない、脾臓細胞をSp2/0骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマ細胞系を生成させた。細胞系を、固相ポリスチレンを覆ったスクリーニングペプチド(表2参照)と組み換え完全長ヒストンタンパク質に結合する抗体を分泌する能力に関してスクリーニングした。(H4-GR-17に対する)モノクローナル抗体AK 654/F3と654/H10、(H4-LI-9に対する)モノクローナル抗体AK 602/F11と602/G3、(ヒストンH3に対する)モノクローナル抗体AK 660/D2、AK 660/G9、AK 660/F6、AK 660/E9、AK 660/G3、AK 660/F7を分泌する細胞系を生成させた。
【0185】
さらに、ヒストンH4の残基50〜102内の領域に対するマウスモノクローナル抗体をAbcam社(# ab31830)から購入した。
【0186】
【表2】
【0187】
D.抗体の標識化
【0188】
標準的な手続き(EP 1488209 A1、EP 1738178 A1)に従って抗体に標識した。精製した各抗体の濃度を1 g/lに調節し、モル比1:5で化学発光標識MACN-アクリジニウム-NHS-エステル(1 g/l;InVent社、ヘンニッヒスドルフ、ドイツ国)とともに室温で20分間インキュベートすることによって抗体を標識した。反応は、1/10の体積の50 mMグリシンを室温で10分間添加することによって停止させた。NAP-5カラム(GE Healthcare Life sciences社)とBio-Sil(登録商標)SEC-400-5 HPLCカラム(Bio-Rad社)でのサイズ排除クロマトグラフィにより、標識化された抗体を遊離標識から分離した。
【0189】
実施例2:遊離ヒストンイムノアッセイの開発
【0190】
A.抗体の被覆
【0191】
標準的な手続き(EP 1488209 A1、EP 1738178 A1)に従って抗体を被覆した。ポリスチレンスターチューブ(Greiner社)を精製した抗体(チューブごとに、300μlの10 mMトリス、100 mM NaCl、pH 7.8の中に2μgの抗体)で22℃にて一晩被覆した。次に、チューブを、30g/lのカリオンFP(Merck社)と5 g/lの無プロテアーゼBSA(Sigma Aldrich社)を含む10 mM NaPi(pH 6.5)でブロックし、凍結乾燥させた。
【0192】
B.ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、市販のモノクローナル抗体を用いた参照ヒストンH4アッセイ
【0193】
ヒストンH4:上記のポリクローナル成分とモノクローナル成分を用いるとともに、組み換えヒト完全長ヒストンH4(Sigma Aldrich社 # SRP0178、配列番号1)を用い、いくつかのサンドイッチヒストンイムノアッセイを実施した。最良の信号は、血清サンプルとEDTA血漿サンプルにおいて、チューブの中で被覆された抗H4-LI-9(変異体V1)と抗H4-RR-13(変異体V2)を用いた組み合わせと、ヒストンH4のアミノ酸50〜102内の残基に対するAbcam抗ヒストンH4 ab31830を用いて観察された。健康なボランティアからのサンプルでは信号が見られなかった(信号は機能アッセイの感度に達しなかった)が、プロカルシトニンのレベルが高くて重度の細菌感染または敗血症を示唆する患者からのサンプルはすべて、信号が機能アッセイの感度(FAS)よりも上であった(
図1)。アッセイの両方の組み合わせは相関していたが、組み合わせH4-LI-9を用いると、より低いレベルが測定された。それはおそらく、領域H4-LI-9(配列番号10)と領域H4-RR-13(配列番号17)の間で分析物(配列番号1)がタンパク質分解して、ヒストンH4のより長いフラグメントの濃度が、より短いC末端フラグメントの濃度よりも低くなっためであろう(
図2と
図3)。
【0194】
50μlの標準(Sigma Aldrich社からの組み換えヒト完全長ヒストンH4、# SRP0178、配列番号1)または患者からのサンプルと、MACNで標識した抗体を含む200μlの緩衝液を、被覆したチューブ(300 mM KPi、pH 7.0、50 mM NaCl、10 mM EDTA、0.09%NaN
3、0.1%BSA、0.1%非特異的ウシIgG、0.1%非特異的IgG、0.01%非特異的マウスIgG)の中で混合した。MACNで標識した抗体は、200μlにつき0.5×10
6相対発光単位(RLU)含まれていた。チューブを室温で18〜24時間インキュベートした。その後、チューブを1 mlのB.R.A.H.M.S 50×普遍的洗浄溶液(TRIS 400 mM、NaCl 3 M、Tween20 1%、シリコーン消泡剤0.001%(Thermo Fisher Scientific, B.R.A.H.M.S社、ヘンニッヒスドルフ、ドイツ国))で4回洗浄し、結合した化学発光をLB925T発光測定装置(Berthold社)でチューブごとに1秒間測定した。ソフトウエアMulticalc(Spline Fit社)を用いてサンプルの濃度を計算した。
【0195】
C.用量-反応曲線
【0196】
上記の2つのイムノアッセイにおいて組み換えヒストンH4(Sigma Aldrich社 # SRP0178、配列番号1)を標準材料として用いて用量-反応曲線を作成した。典型的な用量-反応曲線を
図4に示す。
【0197】
実施例3:SRMとイムノアッセイの間の相関
【0198】
本発明のイムノアッセイで試験したのとまったく同じサンプルを以下に記載する本発明のSRMアッセイで評価した。
【0199】
図5は、本発明のヒストンH4 LIAアッセイとSRMアッセイが、0.95というピアソン相関係数で非常によく相関していることを示している。これは、両方のアッセイが同じ分析物を測定していることを示している。ヒストンH4の中心部に位置する残基に特異的な抗体は、そのヒストンが八量体の中で複合体となっているときには結合できないのと同じ理由で、トリプシンプロテアーゼは、その領域内の潜在的に開裂可能な部位に到達することができない。したがって遊離ヒストンだけが中心部で開裂可能であるため、その領域に由来する検出可能なペプチド(例えば配列番号3と4)は、遊離ヒストンからだけ生じることができる。
【0200】
実施例4:本発明のサンドイッチイムノアッセイおよびSRMアッセイと、Roche社から市販されている、比較ヌクレオソームに対するELISAの比較
図4に示した標準曲線を作成するのに用いた組み換え完全長ヒストンH4を、Roche社から市販されているELISAで試験した。Roche細胞死検出ELISA(#11544675001)は、細胞ライセートの細胞質分画に含まれるモノヌクレオソームとオリゴヌクレオソームを特異的に求める設計であるという事実にもかかわらず、ヒストンH2A、H2B、H3、H4はヌクレオソームの八量体コアを形成しているという理由で、そのELISAの性能を血清サンプルとEDTA血漿サンプルで試験した。このアッセイは、哺乳動物のヒストンH2A、H2B、H3、H4に対する抗体とDNAに対する検出抗体で被覆した微量滴定プレートを含んでいる。キットは標準材料を含んでいないため、天然のヌクレオソーム(BPS Bioscience社 #52015)を用いてマトリックスの濃度を評価した。
図1に示したヒストンH4の濃度を調べたのとまったく同じサンプルを用いると、プロカルシトニンのレベルが高い患者では、ヌクレオソームのレベルは、上昇するか、検出不能であった(
図6)。したがってヌクレオソームのレベルと遊離ヒストンH4のレベルの間には相関がないことを結論できる(
図7)。それに加え、ゼロ血清に添加した市販の分析物、すなわち、組み換えヒトヒストンH2A(Sigma Aldrich社 #SRP0406、配列番号23)、組み換えヒトヒストンH3(Sigma Aldrich社 #SRP0177、配列番号36)、ヒストンH4(Sigma Aldrich社 #SRP0178、配列番号1)、天然のヒトヌクレオソーム(BPS Bioscience社 #52015)を試験した。表3に、BRAHMSヒストンH4 LIAまたはRoche細胞死検出ELISAによってどの分析物を検出できたかを掲載してある。ヒストンH4 LIAはヒトヒストンH4に特異的であるため、ヒストンH2AとH3は検出せず、重要なことだが、天然のヌクレオソームも検出しなかった。これは、ヒストンH4がヌクレオソームの八量体コアの一部になっているとき、本発明に記載したイムノアッセイで用いる抗体によって認識されるヒストンH4のエピトープには近づけないことを示唆している。しかしヒストンH4が溶液中で遊離していると、ヒストンH4 LIAは、血清とEDTA血漿を含むマトリックス中のヒストンH4のレベルを検出することができる。逆に、Roche細胞死検出ELISAは、ヌクレオソームを検出するが、どのヒストンも検出しない。
【0201】
【表3】
【0202】
実施例5:質量分析に基づく選択反応モニタリング(SRM)
SRMは、非常に複雑な背景(例えば血液由来の血清または血漿)で検出可能な所定のフラグメンテーション特性を持つ以前に選択された標的タンパク特異的ペプチドを標的とした検出と定量のためのMSに基づく技術である。
【0203】
ヒストンH4とヒストンH2A(H4、H2Aと呼ぶ)に由来する特定のペプチドをLC-MS/MS技術(TSQ vantage質量分析器(MS);Thermo Fisher Scientific社)によって検出した。発見した結果をSRM分析によって確認すると、血流感染の進行とともにH4由来のペプチドが変化することがわかった。各ペプチドについて同定されたペプチド配列とそのフラグメンテーションイオン(いわゆるトランジション)は、血液サンプル中のH4タンパク質とH2Aタンパク質のレベルをモニタするための代理として有用であることが見いだされた。
【0204】
以下に記載する定量SRMアッセイを開発して、血漿タンパク質または血清タンパク質のトリプシン消化によって生成した修飾されていないヒストンに由来するペプチドの相対的定量レベルを測定した。
【0205】
Sigma社から購入した組み換えタンパク質に対して最適化を実施した。可能なすべてのトリプシン消化ペプチドをスクリーニングし、信号対雑音比に関して最良のペプチドを選択した(表4と表5を参照のこと)。少なくとも4つの最良のトランジションについて最適な保持時間、滞留時間、衝突エネルギーを設定した。
【0206】
ペプチドVFLENVIR(配列番号4)での一例を
図9に示す。
【0207】
実施例6:ヒストンタンパク質に関するSRM/MRMアッセイの設定
個々のペプチドフラグメントに関する三連四重極質量分析器でのSRM/MRMアッセイ
SRMは、非常に複雑な背景(例えば血液由来の血清または血漿)で検出可能な所定のフラグメンテーション特性を持つ以前に選択された標的タンパク特異的ペプチドを標的とした検出と定量のためのMSに基づく技術である。
【0208】
以下に記載する定量SRMアッセイを開発して、血漿タンパク質または血清タンパク質のトリプシン消化によって生成した修飾されていないヒストンに由来するペプチドの定量レベルを測定した。
【0209】
ヒストンH4とヒストンH2Aに由来する特異的ペプチドをLC-MS/MS技術(TSQ vantage質量分析器(MS)とTSQ Quantiva質量分析器;Thermo Fisher Scientific社)によって検出した。各ペプチドについて同定されたペプチド配列とそのフラグメンテーションイオン(いわゆるトランジション)は、血液サンプル中のH4タンパク質とH2Aタンパク質のレベルをモニタするための代理として有用であることが見いだされた。
【0210】
Sigma社から購入した組み換えタンパク質に対して最適化を実施した。可能なすべてのトリプシン消化ペプチドをスクリーニングし、信号対雑音比に関して最良のペプチドを選択した(表4と表5を参照のこと)。少なくとも4つの最良のトランジションについて最適な保持時間、滞留時間、衝突エネルギーを設定した。
【0211】
相対的定量および/または絶対的定量を臨床サンプルで実施することができる。アッセイの性能を正規曲線または逆曲線を用いて評価した。
【0212】
実施例7:MS定量の実例/ペプチドとトランジションの選択
A.サンプルの調製
血漿サンプル(12μl)を氷の上で解凍し、50μlの8 M尿素/2.5% n-プロパノール/200 mMトリス-HCl/10 mM DTT pH 8.5と混合した。サンプルを37℃で1時間インキュベートした。次にサンプルを、5μlの500 mMヨード酢酸を含む1 M炭酸水素アンモニウム用いてアルキル化し、暗所で室温にて1時間インキュベートした。次に、残ったアルキル化剤を3.3μlの500 mM DTTと反応させた。次にサンプルを260μlの50 mMトリス-HCl、5 mM CaCl
2緩衝液 pH 8で希釈した。次に150μlのトリプシン(Pierce社、25 mM酢酸の中に20μg)を各サンプルに添加し、トリプシン:タンパク質の比を1:50にした。サンプルを37℃で18時間放置して消化させた。発見操作のために300 ngのサンプルを50 mm×1 mm 1.9μmのHypersil Goldカラム(Thermo Fisher Scientific社)に装填した後、質量分析を実施した。
【0213】
Vantage三連四重極質量分析器、Surveyor MSポンプ、CTC PAL Autosampler、高流量金属針付きIonMax Source(Thermo Fisher Scientific社)上で、またはHPLCUltimate 3000(Thermo Fisher Scientific社)がカップルしたTSQ Quantiva上で、SRMアッセイを開発した。逆相分離を、5%から40%までの Bという20分間直線勾配の中で、合計40分間実施した(溶媒A:水0.2%FA(ギ酸)、溶媒B:ACN(アセトニトリル)0.2%FA)。その直線勾配実施中の流量は240μl/分に設定した。全注入体積は、曲線上のすべてのサンプルと点について160μlであった。ACCUCORE 2.6μM AQ 150×2.1 mmカラム(Thermo Fisher Scientific社)を50℃の温度で作動させた。
【0214】
5μlの各臨床血漿サンプルを20μlの8 M尿素/2.5% n-プロパノール/300 mMトリス-HCl/10 mM DTT pH 8.5に添加し、37℃で1時間インキュベートした。1 M炭酸水素アンモニウムの中に調製した500 mMヨード酢酸を各サンプルウエルに添加し、暗所で室温にて1時間インキュベートした。113μlの50 mMトリス-HCl/5 mMのCaCl
2 pH 8を各ウエルに添加した。トリプシン(Pierce社、Thermo Fisher Scientific社)を150μlの25 mM酢酸で再度水和し、1:10の比(全タンパク質含量:プロテアーゼ)で添加し、37℃で20時間インキュベートした。2μlのギ酸を添加して消化を最終的に止めた。次に、グルカゴン(1 ng/μl)と標準重ペプチドを添加した後に注入した。
【0215】
C末端がリシンまたはアルギニンである同位体標識ペプチドが、Thermo Fisher Scientific社(ウルム、ドイツ国)またはNew England Peptide社(ガードナー、マサチューセッツ州、アメリカ合衆国)によって化学的に合成されて精製された(95%超のペプチド純度、99%超の同位体純度)。
【0216】
発見MS実験から得られた保持時間の情報をPinpoint(Thermo Fisher Scientific社)に入力し、最適化のための予備的なスケジュール式SRM法を構築した。個々の装置パラメータ(例えば衝突エネルギー、チューブのレンズ、滞留時間、予想保持時間)をすべてのトランジションについて自動的に試験した。多数回繰り返した後、ペプチドとトランジションの最適化された(すなわち強度信号が最大で、他のトランジションとの重複が最少の)リストを最終化し、タンパク質1つにつき少なくとも2つの標的タンパク特異的ペプチドと、ペプチド1つにつき少なくとも4つのフラグメントトランジションを選択した。
【0217】
表4と表5に、ヒトのH4タンパク質とH2Aタンパク質に関して分析したすべてのペプチドを掲載してある。ヒストンH4に関しては合計で6個のペプチドを、ヒストンH2Aに関しては6個のペプチドをスクリーニングした。
【0218】
ヒストンH4に関しては、5個のペプチドについてトランジション分析を詳細に行なった。配列番号3と4のペプチドを重標識ペプチドとして分析し、各ペプチドについて4〜5つのトランジションをモニタした。
【0219】
ヒストンH2Aに関しては、4個のペプチドについてトランジション分析を詳細に行なった。配列番号24と28のペプチドを重標識ペプチドとして分析し、各ペプチドについて4〜5個のトランジションをモニタした。
【0220】
クロマトグラフィ分離において軽標識トランジションと重標識トランジションをともに溶離することによってペプチドを同定した。時間アラインメント、トランジションの相対的定量、と標的タンパク質の定量にPinpointソフトウエア(Thermo Fisher Scientific社)またはSkylineソフトウエア(オープンソース)を使用した。
【0221】
【表4】
【0222】
【表5】
【0223】
B.MS分析
SRM/MRM質量分析からの唯一のSRM/MRMシグネチャピーク面積の関数として検出されるヒストンタンパク質のペプチドフラグメントの量が特定のサンプルに含まれるタンパク質の相対量と絶対量を示すようにするため、SRM/MRM分析を実施した。
【0224】
実施例8:感度を評価するための較正曲線の生成
一定量の軽いペプチドを内在性分析物の上部に添加して内部標準を作成し、可変量の重いペプチドを添加して一連の濃度標準を作成した。曲線の作成に用いる変化する重いペプチドの信号には未知量の内在性分析物からの寄与がないため、測定が定量的に意味を持つようになる点である定量限界(LOQ)値を求めることが可能である。このLOQに対する分析物の応答は、同定可能であり、離散的であり、20%の精度かつ80〜120%の正確さで再現可能である。
【0225】
血漿サンプルのプールを背景マトリックスとして用いて逆較正曲線を作成した。較正曲線上の各点(と分析したすべてのサンプル)は、100フェムトモルの重い標識化ペプチドを含んでいた。カラム上の背景マトリックスの量は、分析した全サンプルで、較正曲線上の各点につき20μgであった。消化後に重い標準ペプチド(C末端がリシンまたはアルギニンである同位体標識化ペプチドが、Thermo Fisher Scientific社(ウルム、ドイツ国)またはNew England Peptide社(ガードナー、マサチューセッツ州、アメリカ合衆国)によって化学的に合成され、ペプチド純度95%超、同位体純度99%超に精製された)を添加した。それに加え、すべてのサンプルを、水/0.2%FAの中に1μg/mlのグルカゴンを含む溶液の中で育ててプラスチック面への結合を最少にした。
【0226】
図10は、ヒストンH4からのペプチドVFLENVIR(配列番号4)の較正曲線を示している。組み換えH4の消化から得られる一定量の軽いペプチドと、可変量の対応する重いペプチドを添加して一群の濃度標準を作成する。
【0227】
実施例9:ヒトのデータセットに関する相対的定量rSRM
SRM/MRM質量分析からの唯一のSRM/MRMシグネチャピーク面積の関数として検出されるヒストンタンパク質のペプチドフラグメントの量が特定のサンプル中のタンパク質の相対量と絶対量を示すようにするため、SRM/MRM分析を実施した。
【0228】
相対的定量rSRMは、以下のようにして実施することができる。
【0229】
1.生体サンプル中で検出された所与のヒストンペプチドからのSRMシグネチャピーク面積を、少なくとも1つの第2、第3、第4以下の生体サンプル中の同じヒストンフラグメントペプチドの同じSRMシグネチャピーク面積と比較することによって遊離ヒストンタンパク質の存在の増加または減少を求める。
【0230】
2.生体サンプル中で検出された所与のヒストンペプチドからのSRMシグネチャピーク面積を、異なる別々の生物源に由来する他のサンプル中の他のタンパク質からのペプチドフラグメントから求めたSRMシグネチャピーク面積と比較することにより、遊離ヒストンタンパク質の存在の増加または減少を求める。ただし、1つのペプチドフラグメントに関する2つのサンプル間のSRMシグネチャピーク面積の比較結果は、例えば各サンプル中で分析したタンパク質の量で規格化する。
【0231】
3.ヒストンタンパク質の変化するレベルを、さまざまな細胞条件下で発現のレベルが変化しない他のタンパク質のレベルに規格化するため、所与のヒストンペプチドに関するSRMシグネチャピーク面積を、同じ生体サンプル中の異なるタンパク質に由来する他のペプチドフラグメントからのSRMシグネチャピーク面積と比較することにより、ヒストンタンパク質の存在の増加または減少を求める。
【0232】
4.これらのアッセイは、ヒストンタンパク質の修飾されていないペプチドフラグメントと修飾されたペプチドフラグメントの両方に適用することができる。なお修飾には、リン酸化および/またはグリコシル化および/またはアセチル化および/またはメチル化(モノ、ジ、トリ)および/またはシトルリン化および/またはユビキチン化が含まれるが、これらに限定されない。また、修飾されたペプチドの相対レベルは、修飾されていないペプチドの相対量を求めるのと同じようにして求まる。
【0233】
生体サンプル中で検出された所与のヒストンペプチドからのSRMシグネチャピーク面積を、少なくとも第2、第3、第4以下の生体サンプル中の同じヒストンペプチドフラグメントの同じSRMシグネチャピーク面積と比較することによってヒストンタンパク質の増加または減少を求めることにより、相対的定量rSRMを実現した。
図9参照。
【0234】
所与のペプチドの絶対的定量は、以下のようにして実施することができる。
【0235】
個別の生体サンプルに含まれるヒストンタンパク質からの所与のペプチドフラグメントのSRM/MRMシグネチャピーク面積を、生体サンプルからのタンパク質ライセートに添加した内部標準ペプチドフラグメントのSRM/MRMシグネチャピーク面積と比較する。
【0236】
内部標準として、調べているヒストンタンパク質からのペプチドフラグメントの標識した合成バージョンまたは標識した組み換えタンパク質が可能である。消化前(組み換えタンパク質では絶対に)または消化後に、既知量のこの標準をサンプルに添加し、SRM/MRMシグネチャピーク面積を内部標準ペプチドフラグメントと生体サンプル中の本来のペプチドフラグメントの両方について別々に求めた後、両方のピーク面積を比較することができる。
【0237】
これは、修飾されていないペプチドフラグメントと修飾されたペプチドフラグメントに適用することができる。なお修飾には、リン酸化および/またはグリコシル化および/またはアセチル化および/またはメチル化(モノ、ジ、トリ)および/またはシトルリン化および/またはユビキチン化が含まれるが、これらに限定されない。また、修飾されたペプチドの絶対レベルは、修飾されていないペプチドの絶対レベルを求めるのと同じようにして求めることができる。
【0238】
図8は、20人の健康なボランティアからの血清サンプルと、敗血症を患っている患者からの29個のサンプルで、ペプチドVFLENVIR(配列番号4)のSRM測定によって求めたヒストンH4の濃度の結果を示している。
【0239】
本発明のいくつかの項目
以下に、本発明のいくつかの項目を列挙する。
【0240】
1.被験体の生体サンプルに含まれる遊離ヒストンタンパク質を検出するため、そのヒストンタンパク質のエピトープまたはペプチドフラグメントを検出する方法。
【0241】
2.疾患または病状の診断および/または予後予測および/またはリスク評価および/またはリスク層化および/または治療管理のための方法であって、
被験体の生体サンプルに含まれる遊離ヒストンタンパク質またはそのペプチドフラグメントを検出することを含んでいて、
前記遊離ヒストンタンパク質またはそのペプチドフラグメントの存在が、前記疾患または病状の存在を示している方法。
【0242】
3.前記ヒストンがヌクレオソームの中に組み込まれているとき、検出されるエピトープは近づくことができない、項1または2に記載の方法。
【0243】
4.前記エピトープが翻訳後修飾を受けない、項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【0244】
5.前記疾患または病状の選択が、感染性と非感染性の病因に関係する炎症反応を含む疾患または病状、例えば非感染性SIRS、細菌性、ウイルス性、真菌性の敗血症、重篤な敗血症、敗血症ショック、腹膜炎、出血および/または組織損傷を含む外傷関連障害、火傷損傷、急性膵臓炎、虚血再灌流障害、心筋梗塞、心原性ショック、脳卒中、急性中毒、血栓塞栓症のほか、心肺バイパスや腫瘍治療などの介入措置からなされる、項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【0245】
6.前記生体サンプルが体液または組織サンプルである、項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【0246】
7.前記体液が、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液からなるグループから選択され、好ましくは血漿または血清である、項6に記載の方法。
【0247】
8.前記遊離ヒストンタンパク質またはそのペプチドフラグメントがカノニカルヒストンまたはそのアイソフォームに由来する、項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【0248】
9.前記遊離ヒストンタンパク質またはそのペプチドフラグメントが、H1、H2A、H2B、H3、H4と、これらのアイソフォームからなるグループから選択され、好ましくはヒストンH2AまたはヒストンH4である、項8に記載の方法。
【0249】
10.配列番号23による遊離ヒストンH2Aのアミノ酸残基20〜118の配列中のエピトープまたはペプチドフラグメントを検出する、項9に記載の方法。
【0250】
11.配列番号1による遊離ヒストンH4のアミノ酸残基22〜102の配列中のエピトープまたはペプチドフラグメントを検出する、項9に記載の方法。
【0251】
12.a)サンプルを
(i)前記遊離ヒストンタンパク質の第1のエピトープに特異的な第1の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体、ならびに
(ii)前記遊離ヒストンタンパク質の第2のエピトープに特異的な第2の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体
と接触させる工程と、
b)前記遊離ヒストンタンパク質に対する前記2つの抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体の結合を検出する工程を含むイムノアッセイ法である、項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【0252】
13.前記第1および/または第2のエピトープが、配列番号23のアミノ酸残基21〜53の配列中に存在するヒストンH2Aのエピトープである、項12に記載の方法。
【0253】
14.前記第1のエピトープが、配列番号23のアミノ酸残基21〜29の配列中に存在し、および/または前記第2のエピトープが、配列番号23のアミノ酸残基30〜53の配列中に存在する、項13に記載の方法。
【0254】
15.前記第1および/または第2のエピトープが、配列番号1のアミノ酸残基22〜102の配列中に存在するヒストンH4のエピトープである、項12に記載の方法。
【0255】
16.前記第1のエピトープが、配列番号1のアミノ酸残基22〜30、または配列番号1の残基67〜78、または配列番号1の残基92〜102の配列中に存在し、および/または前記第2のエピトープが、配列番号1のアミノ酸残基46〜102の配列中に存在する、項12に記載の方法。
【0256】
17.ラインイムノアッセイ(LIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、化学発光イムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(EIA)、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、蛍光に基づくビーズアレイ、磁性ビーズに基づくアレイ、タンパク質マイクロアレイアッセイ、迅速試験形式、希土類クリプテートアッセイからなるグループから選択される、項12〜16のいずれか1項に記載の方法。
【0257】
18.前記アッセイを均一相または不均一相で実施する、項17に記載の方法。
【0258】
19.一方の抗体を標識し、他方の抗体を固相に結合させるか、選択的に固相に結合させることができる、項18に記載の方法。
【0259】
20.前記第1と第2の抗体が液体反応混合物の中に分散されて存在し、蛍光または化学発光の消失または増幅に基づく標識系の一部である第1の標識成分がその第1の抗体に結合し、その標識系の第2の標識成分が第2の抗体に結合していて、検出される前記遊離ヒストンタンパク質またはそのフラグメントに両方の抗体が結合した後、測定溶液中に得られるサンドイッチ複合体の検出を可能にする測定可能な信号が発生する、項19に記載の方法。
【0260】
21.前記標識系が、希土類クリプテートまたは希土類キレートを、蛍光染料または化学発光染料、特にシアニン型染料と組み合わせて含んでいる、項20に記載の方法。
【0261】
22.前記遊離ヒストンタンパク質またはそのフラグメントを質量分析(MS)によって検出する、項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【0262】
23.前記MS分析法が、反応モニタリング(SRM)、多重反応モニタリング(MRM)、並列反応モニタリング(PRM)のいずれかである、項12に記載の方法。
【0263】
24.a)サンプルをトリプシンで消化する工程と;
b)MS分析の前かつトリプシン消化の後に、そのサンプルをクロマトグラフィ法で分離する工程を含む、項22または23に記載の方法。
【0264】
25.イムノアフィニティ装置を用いてサンプルを豊富にするか、除去カラムを用いて望まない成分を減少させる工程を含む、項22〜24のいずれか1項に記載の方法。
【0265】
26.少なくとも1つの内部参照標準を添加する工程を含んでいて、その参照標準が、検出するペプチドまたはタンパク質の同位体標識バージョンである、項22〜25のいずれか1項に記載の方法。
【0266】
27.前記サンプルの前処理工程および/またはタンパク質消化を含まない、項22〜26のいずれか1項に記載の方法。
【0267】
28.遊離ヒストンタンパク質がヒストンH2Aであり、配列番号24、28、29、30からなるグループから選択されるヒストンH2Aの少なくとも1つのペプチドフラグメントを検出して定量する、項22〜27のいずれか1項に記載の方法。
【0268】
29.遊離ヒストンタンパク質がヒストンH4であり、配列番号2、3、4、5、6、7からなるグループから選択されるヒストンH4の少なくとも1つのペプチドフラグメントを検出して定量する、項22〜27のいずれか1項に記載の方法。
【0269】
30.配列番号23によるアミノ酸残基20〜55、70〜118の配列に含まれるヒストンH2Aのエピトープに特異的な抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体。
【0270】
31.配列番号1によるアミノ酸残基46〜102の配列に含まれるヒストンH4のエピトープに特異的な抗体または抗原結合フラグメント、またはそれらの誘導体。
【0271】
32.項30または31に記載の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体を発現する宿主細胞。
【0272】
33.項30または31に記載の抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは誘導体を含むキット。
【0273】
34.感染性と非感染性の病因に関係する炎症性反応、例えば非感染性SIRS、細菌性、ウイルス性、真菌性の敗血症、重篤な敗血症、敗血症ショック、腹膜炎、出血および/または組織損傷を含む外傷関連障害、火傷損傷、急性膵臓炎、虚血再灌流障害、心筋梗塞、心原性ショック、脳卒中、急性中毒、血栓塞栓症のほか、心肺バイパスや腫瘍治療などの介入措置を含む疾患または病状から選択した疾患または病状の診断および/または予後予測および/またはリスク評価および/または治療管理の方法における項30または31に記載の抗体、または項33に記載のキットの利用。