(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の工作機械に対して、予め設定された1つ以上の共通の位置における温度を監視するために、前記複数の工作機械の内の工作機械において、前記共通の位置の何れかの位置に設置された温度センサにより計測される温度情報を、前記共通の位置の何れかの位置に設置された温度センサが異常と判定された、前記複数の工作機械の内の他の工作機械の当該位置における温度情報として利用させる温度計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態に係る温度計測装置を含む熱変位補正システムを示す全体構成図である。
図2は、第1実施形態に係る温度計測装置の詳細を示す機能ブロック図である。
図3は、第1実施形態に係る温度計測装置で用いる管理テーブルの例を示す表である。
図4は、第1実施形態に係る熱変位補正システムにおいて、工作機械に対する温度センサの設置位置の例を示す図である。
図5は、第1実施形態に係る工作機械及び熱変位補正装置の詳細を示す機能ブロック図である。
【0020】
〔熱変位補正システム100の構成〕
まず、本実施形態に係る温度計測装置を含む熱変位補正システム100の構成について、
図1に基づいて説明する。熱変位補正システム100は、温度計測装置10、工作機械20、熱変位補正装置30、及びネットワーク40を備えている。ここで、工作機械20は複数台であり、温度計測装置10、及び熱変位補正装置30は、1台でも複数台でもよい。
【0021】
温度計測装置10と、工作機械20、熱変位補正装置30とは、それぞれネットワーク40に接続されており、ネットワーク40を介して相互に通信を行うことが可能である。ネットワーク40は、例えば、工場内に構築されたLAN(Local Area Network)や、インターネット、公衆電話網、あるいは、これらの組み合わせである。ネットワーク40における具体的な通信方式や、有線接続及び無線接続のいずれであるか等については、特に限定されない。なお、温度計測装置10と工作機械20とは、ネットワーク40を用いた通信ではなく、接続部を介して直接接続してもよい。工作機械20と熱変位補正装置30とは、ネットワーク40を用いた通信ではなく、接続部を介して直接接続してもよい。温度計測装置10と熱変位補正装置30とは、ネットワーク40を用いた通信ではなく、接続部を介して直接接続してもよい。
ここで、
図1において、n台の工作機械20とn台の熱変位補正装置30とが一対一の組とされ、相互に通信を行うこととしているが、これには限定されず、工作機械20の台数と熱変位補正装置30の台数とは異なっていてもよい。
【0022】
〔温度計測装置10の構成〕
次に、温度計測装置10の機能について、
図2に基づいて説明する。
図2は、温度計測装置10に含まれる機能ブロックを表す機能ブロック図である。
【0023】
温度計測装置10は、通信インタフェース11、記憶部12、及び制御部13を備える。
【0024】
通信インタフェース11は、後述のように、温度情報取得部131が工作機械20に設置された温度センサから温度情報を取得し、温度情報提供部132が工作機械20に対して、温度情報取得部131により取得された温度情報を提供するために用いる通信インタフェースである。
【0025】
記憶部12は、各工作機械中、どの温度センサがどの位置に設置されているかが記載された管理テーブル121を記憶する。
図3は、管理テーブル121の例を示す。ここで、工作機械の台数nが4以上の場合を例示しているが、nが2又は3の場合も同様である。
【0026】
図3に示す管理テーブルでは、工作機械20aにおいて、温度センサID“S1”の温度センサ(なお、以降では、温度センサIDが“Sk”の温度センサを、「温度センサ“Sk”」と称することがある)が位置“L4”に設置され、温度センサ“S2”が位置“L5”に設置されることが記載されている。
また、工作機械20bにおいて、温度センサ“S3”が位置“L1”に設置され、温度センサ“S4”が位置“L2”に設置され、温度センサ“S5”が位置“L4”に設置されることが記載されている。
また、工作機械20cに対しては、温度センサが1台も設置されないことが記載されている。
更に、工作機械20nにおいて、温度センサ“Sk−1”が位置“L2”に設置され、温度センサ“Sk”が位置“L3”に設置されることが記載されている。
【0027】
図4は、上記の位置“L1”〜“L5”の例を示す。位置“L1”は、主軸モータ付近の位置である。位置“L2”は、主軸モータの回転軸付近の位置である。位置“L3”は、主軸モータの支持部内の位置である。位置“L4”は、Z軸モータの支持部の土台付近の位置である。位置“L5”は、Z軸モータの支持部内の位置である。これらの設置位置は、工作機械20a〜20nで共通である。
【0028】
また、
図4においては、黒丸によって温度センサの設置される位置が示され、白丸によって温度センサの設置されない位置が示される。
図4に記載のように、工作機械20aにおいて、位置“L4”及び“L5”に温度センサが設置され、位置“L1”〜“L3”には温度センサは設置されない。工作機械20bにおいて、位置“L1”、“L2”及び“L4”に温度センサが設置され、位置“L3”及び“L5”に温度センサは設置されない。工作機械20cには1台の温度センサも設置されない。工作機械20d〜20n−1の図示は省略する。工作機械20nにおいて、位置“L2”及び“L3”に温度センサが設置され、位置“L1”、“L4”、及び“L5”に温度センサは設置されない。
【0029】
なお、
図4において、工作機械20a〜20nは、同等の機種であり、同等の環境に設置され、同等の加工を行うことを前提とする。これにより、工作機械20a〜20nで同一位置への設置が仮定される温度センサからの出力は、概ね等しくなる。
ここで、機種とは、例えば、工作機械20a〜20nの型番、バージョン、オプション等を指す。そして、同等の機種とは、予め設定される所定の基準に基づいて判断される。例えば、同等の機種とは、機種が同じものをいい、オプションの相違等、多少のバージョン相違を含んでもよい。なお、これは、一例であって、これに限定されない。ユーザは、所定の基準を予め任意に設定することができる。
また、同等の環境についても、予め設定される所定の基準に基づいて判断される。具体的には、例えば、複数の工作機械20a〜20nは、同じ製造ラインにおいて作業を行う機械である。また、複数の工作機械20a〜20nが、異なる製造ラインにおいて作業を行う機械であっても、同じ工場内にあって、空調によって同じ温度に保たれていれば、それらの複数の工作機械20a〜20nは、同等の環境であるとしてもよい。これらは、一例であって、これに限定されない。ユーザは、所定の基準を予め任意に設定することができる。
また、同等の加工についても、予め設定される所定の基準に基づいて判断される。すなわち、複数の工作機械20a〜20nの各々は、加工処理を行うための加工プログラムを記憶している。例えば、同等の加工動作としては、同等の加工プログラムを備え、同等の加工プログラムにより、同等の加工を同時に行うことができるものであってもよい。ここで、例えば、同等の加工プログラムとは、加工プログラムが同一であることの他、プログラムのバージョン相違であって、実質的な処理が同じ加工プログラム等を含むものとしてもよい。これらは、一例であって、これに限定されない。ユーザは、所定の基準を予め任意に設定することができる。
このように、第1実施形態で説明する複数の工作機械20a〜20nは、機種が同等であり、設置環境が同等とみなせる場所に設けられ、同等の加工動作をするものである。
【0030】
制御部13は、CPU、ROM、RAM、CMOSメモリ等を有し、これらはバスを介して相互に通信可能に構成される、当業者にとって公知のものである。
CPUは温度計測装置10を全体的に制御するプロセッサである。該CPUは、ROMに格納されたシステムプログラム及びアプリケーションプログラムを、バスを介して読み出し、該システムプログラム及びアプリケーションプログラムに従って温度計測装置10全体を制御することで、
図2に示すように、制御部13が温度情報取得部131及び温度情報提供部132の機能を実現するように構成される。RAMには一時的な計算データや表示データ等の各種データが格納される。CMOSメモリは図示しないバッテリでバックアップされ、温度計測装置10の電源がオフされても記憶状態が保持される不揮発性メモリとして構成される。
【0031】
温度情報取得部131は、工作機械20ごとに、
図4に例示される工作機械20間で共通の位置(
図4の“L1”〜“L5”)の何れかの位置に設置された温度センサにより計測される温度情報を取得する。
【0032】
温度情報提供部132は、管理テーブル121に基づいて、温度情報取得部131により取得された、複数の工作機械20間で共通の位置の何れかの位置に設置された温度センサにより計測される温度情報を、工作機械20間で共通の位置の何れかの位置に温度センサの設置されていない他の工作機械20に対して、当該位置における温度情報として提供する。
【0033】
例えば、
図3に例示する管理テーブル121に基づく場合、温度情報提供部132は、工作機械20aの位置“L4”の温度センサ“S1”により計測された温度情報を、位置“L4”に温度センサが設置されていない工作機械20に対し、当該工作機械20の位置“L4”の温度情報として提供する。また、温度情報提供部132は、工作機械20aの位置“L5”の温度センサ“S2”により計測された温度情報を、位置“L5”に温度センサが設置されていない工作機械20に対し、当該工作機械20の位置“L5”の温度情報として提供する。また、温度情報提供部132は、工作機械20bの位置“L1”の温度センサ“S3”により計測された温度情報を、位置“L1”に温度センサが設置されていない工作機械20に対し、当該工作機械20の位置“L1”の温度情報として提供する。また、温度情報提供部132は、工作機械20bの位置“L2”の温度センサ“S4”により計測された温度情報を、位置“L2”に温度センサが設置されていない工作機械20に対し、当該工作機械20の位置“L2”の温度情報として提供する。また、温度情報提供部132は、工作機械20bの位置“L4”の温度センサ“S5”により計測された温度情報を、位置“L4”に温度センサが設置されていない工作機械20に対し、当該工作機械20の位置“L4”の温度情報として提供する。
【0034】
また、工作機械20cには温度センサが設置されていないため、温度情報取得部131は、工作機械20cから温度情報を取得することがない。一方で、温度情報提供部132は、工作機械20c以外の工作機械20の位置“L1”〜“L5”に設置された温度センサにより計測された温度情報を、工作機械20cに対し、工作機械20cの位置“L1”〜“L5”の温度情報として提供する。
【0035】
工作機械20d〜20n−1についての説明は省略する。
温度情報提供部132は、工作機械20nの位置“L2”の温度センサ“Sk−1”により計測された温度情報を、位置“L2”に温度センサが設置されていない工作機械20に対し、当該工作機械20の位置“L2”の温度情報として提供する。また、温度情報提供部132は、工作機械20nの位置“L3”の温度センサ“Sk”により計測された温度情報を、位置“L3”に温度センサが設置されていない工作機械20に対し、当該工作機械20の位置“L3”の温度情報として提供する。
【0036】
なお、例えば、
図4の位置“L2”及び“L4”のように、複数の工作機械20間で同一位置の温度センサが複数存在する場合には、当該位置の温度情報として、これらの温度センサにより計測された複数の温度情報の平均値を用いてもよく、あるいはこれらの温度センサにより計測された複数の温度情報のうち最大値を用いてもよい。
複数の工作機械20間で、同一位置の温度センサが複数存在することにより、これらの温度センサのうち何れかが故障しても、他の温度センサで代用することが可能となり、延いては温度センサ故障のリスクを低減することが可能となる。
【0037】
温度計測装置10は、上記の構成を有することにより、複数の工作機械20に対して、予め設定された1つ以上の共通の位置における温度を監視するために、工作機械20ごとに共通の位置の何れかの位置に設置された温度センサにより計測される温度情報を、共通の位置の何れかの位置に温度センサの設置されていない、他の工作機械20の当該位置における温度情報として利用させる。
より具体的には、温度計測装置10は、工作機械20の各々に対し、自工作機械に前記温度センサが設置されていない箇所の温度情報として、他の工作機械に設置された温度センサからの温度情報を利用させる。
【0038】
なお、工作機械20の台数は複数台であれば特に制限はなく、任意の複数台数の工作機械20間で温度情報を共有してもよい。すなわち、温度計測装置10は、任意の複数台の工作機械20間で共通の位置の何れかの位置に設置された温度センサにより計測される温度情報を、共通の位置の何れかの位置に温度センサの設置されていない工作機械20の当該位置における温度情報として利用させる。熱変位補正システム100が2台の工作機械20a及び工作機械20bを備える態様において、工作機械20の台数は最小となる。
また、
図3の管理テーブル121に示す工作機械20cのように、温度センサを1台も設置しない工作機械20が存在してもよい。
【0039】
〔工作機械20及び熱変位補正装置30の構成〕
次に、熱変位補正システム100に含まれる工作機械20及び熱変位補正装置30の構成例について、
図5に基づいて説明する。
図5は、工作機械20及び熱変位補正装置30に含まれる機能ブロックを表す機能ブロック図の例である。
【0040】
工作機械20は、
図5に示すように、刃物が取り付けられて主軸モータ27で回転する主軸26と、この主軸26を送り出す送り軸28とによって切削加工を行う。すなわち、この刃物は、主軸26を駆動する主軸モータ27により回転し、送り軸28を駆動する送り軸モータ29によって送り出される。なお、実施例では、工作機械20を切削機械として説明するが、これに限定されない。
【0041】
工作機械20には、ワークの加工内容に応じて定まる複数の加工プログラム21が格納されている。そして、工作機械20は、加工プログラム21を読み取って解釈することにより、切削加工の条件(例えば、主軸の加減速の頻度、回転数、切削負荷、切削時間)を抽出して位置指令データ等を熱変位補正装置30に出力するプログラム読取解釈部22と、熱変位補正装置30から出力される熱変位補正後の位置指令データに基づいて、工作機械20の主軸モータ27及び送り軸モータ29を駆動する動作指令を作成するモータ制御部23と、動作指令を増幅して工作機械20の主軸モータ27に出力するモータ駆動アンプ24A、及び、送り軸モータ29に出力するモータ駆動アンプ24Bと、を備えている。また、回転数や切削時間等に関して、工作機械20は、主軸モータ27及び/又は送り軸モータ29からリアルタイムに得られた情報を熱変位補正装置30に出力してもよい。
【0042】
また、工作機械20には、温度情報を取得するための温度センサが、予め設定された1つ以上の位置であって、複数の工作機械20間で共通の位置における温度を監視するために、共通の位置のうち何れかの位置に設置される。
【0043】
更に、図示はしないが、工作機械20は、自身に設置された温度センサを用いて温度を計測する温度計測部と、自身に温度センサが設置されていない位置の温度情報を、温度計測装置10に要求する温度情報要求部とを備える。
【0044】
熱変位補正装置30は、
図5に示すように、補正量算出手段としての補正量算出部32と、補正実行手段としての補正部34とを備える。
補正量算出部32は、工作機械20から提供される温度情報を用いて、機械要素の熱変位量に対応する補正量を算出する。
補正部34は、補正量算出部32によって算出された機械要素の補正量に基づき、機械要素の機械位置を補正する。又は、補正部34は、この機械要素の補正量を工作機械20に送信する。より具体的には、補正部34は、
図5に示すように、この機械要素の補正量を用いて、工作機械20のプログラム読取解釈部22から出力される切削加工の条件を補正した上で、モータ制御部23に位置指令データを出力する。
【0045】
〔第1実施形態が奏する効果〕
第1実施形態における温度計測装置10は、複数の工作機械20間で共通の位置の何れかの位置に設置された温度センサにより計測される温度情報を、共通の位置の何れかの位置に温度センサの設置されていない、他の工作機械20の当該位置における温度情報として利用させる。
【0046】
また、第1実施形態において、複数の工作機械20は、全て同等の機種であり、同等の環境に設置され、同等の加工を行い、温度計測装置10は、工作機械20の各々に対し、自工作機械20に温度センサが設置されていない位置の温度情報として、他の工作機械20に設置された温度センサからの温度情報を利用させる。
【0047】
これにより、複数の工作機械間で温度センサの出力値を共有し、トータルの温度センサ数を削減することで、トータルコストを抑えると共に、工作機械に設置した温度センサ故障のリスクを低減することが可能となる。
【0048】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
図6は、第2実施形態に係る熱変位補正システムにおいて、工作機械中の発熱の影響を受ける部位を示す図である。
図7は、第2実施形態に係る熱変位補正システムにおいて、工作機械中の切削液の影響を受ける部位を示す図である。
図8は、第2実施形態に係る熱変位補正システムにおいて、工作機械に対する温度センサの設置位置の例を示す図である。
【0049】
第2実施形態において、温度計測装置10、工作機械20、及び熱変位補正装置30、及びそれらを備える熱変位補正システム100の構成自体は、第1実施形態と基本的に同一であるため、その図示と説明を省略する。
【0050】
第2実施形態においては、複数の工作機械20は、同等の機種であり、同等の環境に設置されるが、同等の加工を行うか否かは問わない。また、複数の工作機械20において、発熱及び冷却の影響を受けにくい箇所に設置される温度センサは、複数の工作機械20のうち一部の工作機械にのみ設置される。
【0051】
更に、第2実施形態において、温度センサの位置は、工作機械20の動作に伴う発熱及び冷却の影響を受ける位置と、工作機械20の動作に伴う発熱及び冷却の影響を受けにくい位置に区分けされ、複数の工作機械20間で、発熱及び冷却の影響を受けにくい位置にある温度センサの温度情報のみを、工作機械20間で共有する。
【0052】
工作機械20の動作に伴う発熱及び冷却の影響を受ける位置には、モータの発熱の影響を受ける位置、摺動による発熱の影響を受ける位置、及び切削液の影響を受ける位置が含まれる。
【0053】
モータの発熱の影響を受ける位置は、主軸モータや、各軸モータの付近の位置であり、各モータが動作した際に生じるモータの発熱の影響を受ける。
【0054】
摺動による発熱の影響を受ける位置は、各送り軸の動作によって、ボールねじやリニアガイドが摺動する際に生じる発熱の影響を受ける位置である。
【0055】
切削液の影響を受ける位置は、切削液が直接かかったり、飛散した切削液がかかったり、切削液のミストが充満したりする空間に存在し、切削液による冷却の影響を受ける位置である。
【0056】
一方、発熱や冷却の影響を受けにくい位置は、モータや摺動部から離れていて、発熱源からの発熱の影響を受けにくく、切削液と接する空間外の位置である。発熱及び冷却の影響を受けにくい位置にある温度センサとしては、例えば、外気温を測定する温度センサを含んでもよい。
【0057】
図6は、工作機械20中の発熱の影響を受ける位置を示す。
図6中のハッチング部が、発熱の影響を受ける位置である。
【0058】
“S1”は、発熱源である主軸モータの位置に対応する。“S2”は、“S1”に隣接し発熱源である主軸モータからの熱伝導の影響を受ける位置である。
“X1”は、発熱源であるX軸モータの位置に対応する。“X2”は、“X1”に隣接し、発熱源であるX軸モータからの熱伝導の影響を受ける位置である。“P1”はX軸モータによって駆動される送り軸の動作によって、ボールねじやリニアガイドが摺動する位置に対応する。“P2”は、“P1”に隣接し、ボールねじやリニアガイドからの熱伝導の影響を受ける位置である。
“Y1”は、発熱源であるY軸モータの位置に対応する。“Y2”は、“Y1”に隣接し、発熱源であるY軸モータからの熱伝導の影響を受ける位置である。“Q1”はY軸モータによって駆動される送り軸の動作によって、ボールねじやリニアガイドが摺動する位置に対応する。“Q2”は、“Q1”に隣接し、ボールねじやリニアガイドからの熱伝導の影響を受ける位置である。
“Z1”は、発熱源であるZ軸モータの位置に対応する。“Z2”は、“Z1”に隣接し、発熱源であるZ軸モータからの熱伝導の影響を受ける位置である。“R1”はY軸モータによって駆動される送り軸の動作によって、ボールねじやリニアガイドが摺動する位置に対応する。“R2”は、“R1”に隣接し、ボールねじやリニアガイドからの熱伝導の影響を受ける位置である。
【0059】
図7は、工作機械20中の切削液による冷却の影響を受ける位置を示す。
図7中のハッチング部“C1”が、切削液による冷却の影響を受ける位置である。より具体的には、
図7中の“C1”は、カバー等で覆われた加工空間内に対応し、切削液が直接かかったり、飛散した切削液がかかったり、切削液のミストが充満したりする空間である。
【0060】
図6及び
図7に示される例において、温度センサの位置は、ハッチングが記載された、発熱及び冷却の影響を受ける位置と、ハッチングが記載されない、発熱及び冷却の影響を受けにくい位置に区分けされ、複数の工作機械20間で、ハッチングが記載されていない位置にある温度センサの温度情報のみを、工作機械20間で共有する。
【0061】
図8は、発熱及び冷却の影響を受ける位置が
図6及び
図7に示されるケースにおける、温度センサの設置位置の例を示す。発熱及び冷却の影響を受ける位置“L1”〜“L3”に関しては、全ての工作機械20a〜20nにおいて温度センサが設置される。一方、発熱及び冷却の影響を受けにくい位置である“L4”及び“L5”に関しては、工作機械20a〜20nのうち一部の工作機械20にのみ温度センサが設置され、工作機械20a〜20n間で温度情報を共有する。
【0062】
〔第2実施形態が奏する効果〕
第2実施形態において、複数の工作機械20は、同等の機種であり、同等の環境に設置され、工作機械20において、発熱及び冷却の影響を受けにくい位置に設置される前記温度センサは、複数の工作機械20のうち一部の工作機械にのみ設置される。
【0063】
これにより、複数の工作機械20の動作がほぼ同等とならない場合でも、第1実施形態と同様に、複数の工作機械間で温度センサの出力値を共有し、トータルの温度センサ数を削減することで、トータルコストを抑えると共に、工作機械に設置した温度センサ故障のリスクを低減することが可能となる。
【0064】
〔変形例1〕
第1実施形態及び第2実施形態において、温度計測装置10と工作機械20とは別体であるとしたが、これには限定されない。例えば、工作機械20が温度計測装置10を含む構成としてもよい。この場合、複数の工作機械20のうち、温度計測装置10を含む工作機械20をマスタとし、他の工作機械20をスレーブとしてもよい。
【0065】
〔変形例2〕
第1実施形態及び第2実施形態において、工作機械とは別体となった温度計測装置が、ある工作機械に設置された温度センサで計測された温度情報を、他の工作機械に提供する構成としたが、これには限定されない。例えば、工作機械Aが、自身のある位置に設置された温度センサを用いて、事前に設定されたサンプリングタイムで温度情報をサンプリングすると共に、共有の記憶装置に提供し、工作機械Bが、自身に温度センサが設置されていない当該位置の温度情報を当該記憶装置から取得し、当該位置の温度情報として利用する構成としてもよい。
【0066】
〔変形例3〕
第1実施形態及び第2実施形態において、工作機械とは別体となった温度計測装置が、複数の工作機械間で温度情報を仲介する構成としたが、これには限定されない。例えば、温度計測部と温度情報要求部とを有する工作機械Aが、自身のある位置に設置された温度センサを用いて、事前に設定されたサンプリングタイムで温度情報をサンプリングすると共に、この温度情報を他の工作機械Bに提供し、自身に温度センサが設置されていない位置の温度情報を、当該位置に温度センサが設置された他の工作機械Cから取得する構成としてもよい。更に、各工作機械は、自身に設置された温度センサにより計測された温度情報を、他の工作機械に対して、例えばピア・トゥ・ピアにより送信するようにしてもよい。
【0067】
〔変形例4〕
第1実施形態及び第2実施形態において、温度計測装置が温度情報取得部と温度情報提供部とを備え、温度情報取得部が、工作機械Aに設置した温度センサにより計測された温度情報を取得し、温度情報提供部が、当該設置位置に温度センサが設置されていない工作機械Bにこの温度情報を提供するとしたが、これには限定されない。例えば、工作機械Aのある位置に設置された温度センサ自体が、例えばピア・トゥ・ピアにより自身の計測した温度情報を工作機械Bに提供し、工作機械Bがこの温度情報を当該位置の温度情報として利用する構成としてもよい。
【0068】
〔変形例5〕
第1実施形態及び第2実施形態において、温度計測装置10が、工作機械20ごとに共通の位置の何れかの位置に設定された温度センサにより計測される温度情報を、当該位置に温度センサが設置されていない他の工作機械20に、当該位置の温度情報として利用させるとしたが、これには限定されない。例えば、複数の工作機械20に対して、予め設定された1つ以上の共通の位置における温度を監視するために、温度計測装置10は、複数の工作機械20の内の工作機械20において、前記共通の位置の何れかの位置に設置された温度センサにより計測される温度情報を、前記共通の位置の何れかの位置に設置された温度センサが異常と判定された、複数の工作機械20の内の他の工作機械20の当該位置における温度情報として利用させてもよい。
【0069】
例えば、複数の工作機械20が、同等の機種であり、同等の環境に設置され、同等の加工を行い、複数の工作機械20の内の工作機械20に設置された温度センサが異常と判定された場合に、温度計測装置10は、当該工作機械20に、異常と判定された温度センサの設置箇所の温度情報として、複数の工作機械の内の他の工作機械20において同一箇所に設置された温度センサからの温度情報を利用させてもよい。
【0070】
また、複数の工作機械20が、同等の機種であり、同等の環境に設置され、複数の工作機械20の内の工作機械20において、発熱及び冷却の影響を受けにくい箇所に設置された温度センサが異常と判定された場合に、温度計測装置10は、当該工作機械20に、異常と判定された温度センサの設置箇所の温度情報として、複数の工作機械20の内の他の工作機械20において同一箇所に設置された温度センサからの温度情報を利用させてもよい。
【0071】
図8を参照して説明すると、工作機械20aの位置L5の温度センサに異常が生じた場合、位置L5は、工作機械の発熱及び冷却の影響を受けない箇所であるため、同等の機種で同等の環境に設置されている他の工作機械20内で、位置L5に設置された温度センサ(例えば工作機械20nの位置L5の温度センサ)で計測された温度情報を用いて、工作機械20aにおける温度情報を補間してもよい。
また、工作機械20aの位置L1の温度センサに異常が生じた場合、位置L1は、工作機械の発熱及び冷却の影響を受ける箇所であるため、同等の機種で同等の環境に設置され、同等の加工を行う他の工作機械20内で、位置L1に設置された温度センサ(例えば工作機械20bの位置L1の温度センサ)で計測された温度情報を用いて、工作機械20aにおける温度情報を補間してもよい。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0073】
温度計測装置10による制御方法は、ソフトウェアにより実現される。ソフトウェアによって実現される場合には、このソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ(温度計測装置10)にインストールされる。また、これらのプログラムは、リムーバブルメディアに記録されてユーザに配布されてもよいし、ネットワークを介してユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。更に、これらのプログラムは、ダウンロードされることなくネットワークを介したWebサービスとしてユーザのコンピュータ(温度計測装置10)に提供されてもよい。