【実施例1】
【0028】
図1は本発明の実施例1の燃焼システムの全体説明図である。
図1において、火力発電所等で使用される実施例1の燃焼システム(燃焼装置)1では、微粉炭(固体燃料)がバンカ(燃料ホッパ)4に収容されている。バンカ4の固体燃料は、ミル(粉砕機)5で粉砕される。粉砕された燃料は、ボイラ6のバーナ7に燃料配管8を通じて供給されて、燃焼される。なお、バーナ7は、ボイラ6に複数設置されている。なお、固体燃料として、微粉炭に限定されず、例えばバイオマス燃料を使用することも可能である。
ボイラ6には、バーナ7の下流側(上方)に、燃焼用空気を供給する追加ノズル3が設置されている。
【0029】
図2は実施例1のバーナの説明図である。
図3は
図2の矢印III方向から見た図である。
図2、
図3において、実施例1のバーナ(混焼バーナ)7は、混合流が流れる燃料ノズル21を有する。燃料ノズル21の下流端の開口は、ボイラ6の火炉22の壁面(火炉壁、水管壁)23近傍に配置されている。燃料ノズル21の上流側に、燃料配管8が接続される。燃料ノズル21は中空の筒状に形成されており、燃料ノズル21の内部には、固体燃料(微粉炭)と搬送ガスとが流れる流路24が形成されている。
【0030】
燃料ノズル21の外周には、燃焼用空気を火炉22に噴出する内側燃焼用空気ノズル(2次燃焼用空気ノズル)26が設置されている。2次空気ノズル26の内部には、2次空気(2次燃焼用空気)が流れる2次空気流路11が形成されている。
また、内側燃焼用空気ノズル26の外周側には、外側燃焼用空気ノズル(3次燃焼用空気ノズル)27が設置されている。3次燃焼用空気ノズル27の内部には、3次空気(3次燃焼用空気)が流れる3次空気流路12が形成されている。
各燃焼用空気ノズル26,27は、ウインドボックス(風箱)28から空気を火炉22内に向けて噴出する。実施例1では、内側燃焼用空気ノズル26の下流端には、燃料ノズル21の中心に対して径方向外側に傾斜(下流側に行くに連れて径が拡大)するガイドベーン(第2の誘導部材)26aが形成されている。また、外側燃焼用空気ノズル27の下流部には、軸方向に沿ったスロート部27aと、ガイドベーン26aに平行する拡大部27bとが形成されている。したがって、各燃焼用空気ノズル26,27から噴出された燃焼用空気は、軸方向の中心から広がるように噴出される(流路24の混合流から離れるように誘導される)。
【0031】
図2において、内側燃焼用空気ノズル26の上流部には、2次燃焼用空気(2次空気)の流量を調整するためのスライド式のダンパ26cが設置されている。
また、外側燃焼用空気ノズル27の上流部には、3次燃焼用空気(3次空気)に対して、旋回成分を付与する旋回発生器27cが設置されている。
【0032】
また、燃料ノズル21の下流端の開口部には、保炎器31が設置されている。保炎器31の径方向外側には、径方向の外側に向けて延びるガイドベーン(第1の誘導部材)31aが形成されている。したがって、保炎器31のガイドベーン31aによって、流路24を流れる混合流に対して、内側燃焼用空気ノズル26を流れる燃焼用空気が、径方向の外側に分離するように誘導される。
【0033】
図2において、燃料ノズル21の内壁面には、ベンチュリ33が設置されている。ベンチュリ33は、上流側の径縮小部33aと、径縮小部33aの下流側に連続する最小径部33bと、最小径部33bの下流側に連続する径拡大部33cとを有する。径縮小部33aでは、下流側に向かうに連れて、流路24の内径は縮小する。また、径拡大部33cでは下流側に向かうに連れて、流路24の内径は拡大する。
したがって、実施例1のベンチュリ33では、燃料ノズル21に供給された燃料と搬送気体との混合流体が、径縮小部33aを通過する際に、径方向の内側に絞られる。したがって、燃料ノズル21の内壁面近傍に偏った燃料を中心側に移動させることが可能である。
【0034】
ベンチュリ33の下流側には、燃料濃縮器34が設置されている。燃料濃縮器34は、上流側の径拡大部34aと、径拡大部34aの下流側に連続する最大径部34bと、最大径部34bの下流側に連続する径縮小部34cとを有する。径拡大部34aは、下流側に向かうに連れて外径が拡大する。径縮小部34cは、下流側に向かうに連れて外径が縮小する。
したがって、実施例1の燃料濃縮器34では、燃料と搬送ガスとの混合流体に、径拡大部34aを通過する際に、径方向の外側に向かう速度成分が付与される。よって、燃料が燃料ノズル21の内壁面に向かって濃縮される。
【0035】
図2において、ウインドボックス28の外壁の外側には、アンモニア供給管41が配置されている。アンモニア供給管41には、高圧のアンモニアガス(ガス燃料)が供給されている。アンモニア供給管41には、複数のアンモニア供給ノズル42が接続されている。本実施例では、
図3に示すように、アンモニア供給ノズル42は、周方向に沿って間隔をあけて8つ配置されている。
アンモニア供給ノズル42は、直管状のノズル本体43と、ノズル本体43とアンモニア供給管41とを接続する湾曲するノズル接続部44とを有する。
【0036】
図4は本実施例のバーナのアンモニア供給ノズルの先端部分の拡大図である。
図5はアンモニア供給ノズルの先端部の末端部断面図である。
図2において、ノズル本体43は、アンモニア供給管41に、図示しないガイド管及びシールを介して、軸方向43bを中心として回転可能に支持されている。ノズル本体43は、ウインドボックス28や外側燃焼用空気ノズル27、内側燃焼用空気ノズル26の壁面を貫通している。
図2、
図4において、ノズル本体43の下流端43aは、燃焼用空気の流れ方向に対して、内側燃焼用空気ノズル26末端部に設置のガイドベーン26aよりも下流側、且つ、保炎器31に設置のガイドベーン31aよりも上流側に配置されている。
【0037】
図6はアンモニア供給ノズルの本体と湾曲するノズル接続部との連結部分の詳細説明図である。
図7はアンモニアの供給方向の説明図であり、
図7(A)は
図2に対応する説明図、
図7(B)は中心軸方向斜めにアンモニアを噴射する場合の説明図、
図7(C)は中心軸から逸れて斜めにアンモニアを噴射する場合の説明図である。
【0038】
図5において、ノズル本体43の先端部には、軸方向43bに対して角度θで傾斜する噴射口43cが形成されている。また、
図6において、実施例のノズル本体43は、接続部44に固定支持された受部46に対して軸方向43bを中心として回転可能に支持されている。なお、ノズル本体43と接続部44とは、Oリング47を介してシール(密閉)されている。ノズル本体43には、回転調整のためのハンドル48が設置されている。試運転時やメンテナンス時に、ハンドル48を手動で操作して回転調整することにより、
図7(B)及び
図7(C)に示すように噴射方向を自在に設定可能である。
【0039】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1のバーナ7では、微粉炭と搬送空気の混合流体は、燃料ノズル21から火炉22内に噴出される。また、燃焼用空気は、内側燃焼用空気(2次空気)と、外側燃焼用空気(3次空気)に分かれて火炉22に供給される。2次空気は保炎器31に設置のガイドベーン31aで外側に広げられ、3次空気は内側燃焼用空気ノズル26に設置のガイドベーン26aで外側に広げられて供給されるため、混合流体と2次空気および3次空気からなる外周空気51との間には、循環渦52が形成される。火炉22内の高温ガスは循環渦52内の循環流に乗ってバーナ7の出口部に戻されるため、混合流体はバーナ7の出口近傍で急速に着火される。
【0040】
ここで、燃料ノズル21から供給される微粉炭は、燃料濃縮器34で外周側(燃料ノズルの内壁面近傍)に濃縮され、微粉炭濃縮域を形成する。そして、火炉22内の高温ガスは、微粉炭濃縮域の近傍に戻されるため、急速着火の性能がさらに高められている。
急速着火でバーナ7の出口の中心軸近傍には、1次燃焼領域53が形成される。外周空気51は1次燃焼領域53から離れて供給されているため、1次燃焼領域53は、燃料過剰(空気不足)の還元条件となっている。
【0041】
具体的には、急速着火でバーナ7の出口部から形成された1次燃焼領域53の内部では、急速な燃焼反応が進行する。燃焼の進行により酸素(O
2)が急速に消費される。そして、燃料(微粉炭)中のN分からは窒素酸化物(NO)が生成され、燃焼の主成分からは中間生成物としての炭化水素ラジカル(・HC)が急激に生成される。O
2低下後の還元強化条件下では、発生した窒素酸化物(NO)と炭化水素ラジカル(・HC)との反応で、窒素元素を含むラジカル(・NX)が生成され、・NXとNOとの反応により、NOはN
2へと還元される。
この還元領域(1次燃焼領域)53中にアンモニア(NH
3)を噴出すると、・NHラジカルを経て優先的にN
2への還元反応が進行する。
したがって、実施例1のバーナ7では、固体燃料とアンモニアとを混焼しつつ窒素酸化物の上昇が抑制される。
【0042】
また、実施例1のバーナ7では、混合流体と燃焼用空気(外周空気51)の隔壁(燃料ノズル21)先端部に、保炎器31のガイドベーン31aが設置されており、外周空気51(の2次空気)を混合流体から確実に分離している。したがって、分離されない場合に比べて、還元条件の強い還元領域53が生成可能である。
【0043】
さらに、実施例1のバーナ7では、内側燃焼用空気ノズル26のガイドベーン26aでも外周空気51の混合流からの分離が強化されている。よって、ガイドベーン26aを設けない場合に比べて、還元条件の強い還元領域53が生成可能である。
また、実施例1のバーナ7では、外側燃焼用空気ノズル27に旋回発生器27cが設置されており、3次空気(外周空気51)が混合流に混合されにくく、混合流からの分離が強化されている。したがって、旋回発生器27cを設けない場合に比べて、還元条件の強い還元領域53が生成可能である。
【0044】
また、実施例1のバーナ7では、アンモニア供給ノズル42の下流端が、保炎器31のガイドベーン31aよりも上流側に配置されている。アンモニア供給ノズル42が保炎器31よりも火炉22の内部まで伸びていると、アンモニア供給ノズル42が焼損する恐れがある。これに対して、実施例1では、アンモニア供給ノズル42がガイドベーン31aよりも上流側に配置されており、上流側から送り込まれる2次空気によるシールで炎から保護されるとともに、2次空気で冷却される。したがって、アンモニア供給ノズル42の焼損が抑制される。
さらに、実施例1のバーナ7では、アンモニア供給ノズル42の下流端が、内側燃焼用空気ノズル26のガイドベーン26aよりも下流側に配置されている。そのため、ガイドベーン26aに沿って広がる燃焼用空気の流れの影響を受けることなくアンモニアを供給可能であり、還元域へアンモニアを供給し易くなる。
【0045】
また、実施例1のバーナ7では、アンモニア供給ノズル42の噴射方向が調整可能に構成されている。したがって、
図7(A)に示すように、還元領域53の中心部にアンモニアを集中させることも可能である。また、
図7(B)に示すように、還元領域53の外縁部にアンモニアを寄せることも可能である。よって、還元領域53内において、アンモニアの集中、分散を自在に調整可能である。したがって、使用する微粉炭の種類やN分の割合、燃焼用空気の量等、使用環境に応じて、アンモニア中のN分を効率的にN
2に還元するために適切な分散度合に応じて、噴射方向を調整することが可能である。
【0046】
さらに、実施例1ではアンモニア供給管41の上流部には図示しない制御弁が設けられており、アンモニアの供給量を制御することが可能である。したがって、固体燃料とアンモニアとの割合(混合比)を、アンモニア中のN分を効率的にN
2に還元するために適切な割合に応じて調整、制御することが可能である。
特に、アンモニアの燃焼による入熱の比率が50%以下となるように、微粉炭とアンモニアとの割合を制御することが望ましい。アンモニアの入熱を多くして、微粉炭を減らしすぎると、火炎が安定しなくなる恐れがあるため、アンモニアの燃焼による入熱の比率が50%以下となるように、調整することが望ましい。
【0047】
また、実施例1では、火炉22において、バーナ7よりも下流側に燃焼用空気を供給する追加ノズル3が設置されている。したがって、バーナ7での燃焼の後、追加ノズル3の位置以降でも燃焼(2段燃焼)を行うことで、火炉22内での窒素酸化物の発生を低減することができる。
さらに、実施例1では、バーナ7から供給される全空気量(燃料ノズル21からの混合流体に含まれる空気や2次空気、3次空気の総量)が、還元領域53での還元反応で必要な理論空気量以下となるように設定されている。したがって、空気が多くて還元領域53での還元が弱くなってNOxの発生量が上昇することを抑制できる。
【0048】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H04)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、アンモニア供給ノズル42は、噴射方向を調整可能な構成とすることが望ましいが、これに限定されない。噴射方向が調整不能な構成とすることも可能である。また、ノズル本体43を回転させて噴射方向を調整する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、先端部に、複数の噴射口を形成し、各噴射口をシャッタで開閉可能な構成としておいて、噴射方向に応じて、シャッタを開閉するような構成等、任意の構成を採用可能である。
【0049】
(H02)前記実施例において、アンモニア供給ノズル42の下流端は、保炎器31のガイドベーン31aよりも上流側、且つ、内側燃焼用空気ノズル26のガイドベーン26aよりも下流側とすることが望ましいが、これに限定されない。焼損対策を行った上で保炎器31のガイドベーン31aよりも下流側に配置したり、アンモニアの噴射圧力を高くして内側燃焼用空気ノズル26のガイドベーン26aよりも上流側とすることも可能である。
【0050】
(H03)前記実施例において、旋回発生器27cを設けることが望ましいが、設けない構成とすることも可能である。また、旋回発生器27cは、外側燃焼用空気ノズル27の上流部に設置する構成を例示したが、下流部(出口付近)に設けることも可能である。
(H04)前記実施例において、ガイドベーン26a,31aの形状や大きさは、実施例に例示した構成に限定されず、設計や仕様等に応じて任意に変更可能である。また、ガイドベーン26a,31aを設けることが望ましいが、設けない構成とすることも可能である。