(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記モノマー組成物は、成分(a)として、(メタ)アクリル酸と前記第1のヒドロキシル化水添ポリブタジエンとの1種以上のエステルを、該モノマー組成物の総重量を基準として15〜35重量%含み、かつ成分(b)として、(メタ)アクリル酸と前記第2のヒドロキシル化水添ポリブタジエンとの1種以上のエステルを、該モノマー組成物の総重量を基準として3〜15重量%含む、請求項1から3までのいずれか1項記載のポリマー。
潤滑剤組成物の粘度指数およびせん断抵抗性を向上させるための潤滑剤組成物用の添加剤としての、請求項1から8までのいずれか1項記載のポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの使用。
前記基油は、ポリアルファオレフィン基油、APIグループIIIの基油、ポリアルファオレフィン基油とAPIグループIIIの基油との混合物、またはAPIグループIIIの基油の混合物である、請求項11記載の組成物。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、異なる平均分子量を有するポリブタジエン系モノマーの組み合わせを含むポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー、該ポリマーを含む潤滑剤組成物、該ポリマーの製造方法、およびせん断抵抗性を向上させるための潤滑剤組成物用の添加剤としての該ポリマーの使用に関する。
【0002】
従来技術の説明
自動車産業界は、ますます厳しくなるCO
2排出規制により、燃費を改善するシステムへの移行に迫られている。ハードウェアは可能な範囲で変更が行われている一方で、燃費を低減するための手段の1つに、トランスミッションまたはエンジンに適用される潤滑剤の粘度の低下させることが挙げられる。しかし、潤滑剤の粘度を定常的に低下させるにしても、その程度には限界がある。というのも、粘度は、金属部分を一定の度合いで保護するために十分な高さが必要であるためである。したがって、粘度を調節して最適な粘度とすることが必要であり、また粘度は、あらゆる温度範囲にわたって可能な限り一定であることが望ましい。
【0003】
粘度指数向上剤(VII)は、潤滑剤の温度依存性を改善するために用いられる。この潤滑剤の温度依存性は、通常は粘度指数(VI)により求められ、同粘度指数は、40℃での動粘度(KV
40)および100℃での動粘度(KV
100)から算出される。VIが高いほど潤滑剤の粘度の温度依存性が低く、すなわち温度間での粘度変化が小さい。
【0004】
加えて、潤滑剤のせん断抵抗性は非常に重要である。より抵抗性の高い潤滑剤を追求することによって潤滑剤の寿命が延長されるが、一方で、新しい潤滑剤の粘度は既に非常に低く、せん断損失によって粘度がさらに低下することにより、金属部分の破損が生じるおそれがある。さらに、せん断損失によって潤滑剤組成物の特定の成分が分解されることにより、不溶性フラグメントが形成されることがあり、こうしたフラグメントによって、例えばフィルタや他のハードウェアが閉塞することがあり、これがトランスミッションの故障を招くことがある。したがって、せん断後に不溶性フラグメントの堆積が生じる傾向を示さない粘度指数向上剤が提供されることが重要である。
【0005】
ポリアルキル(メタ)アクリレートは、潤滑剤において良好な粘度指数向上剤として作用することが知られている。
【0006】
国際公開第2009/007147号(WO2009/007147)および同第2010/142789号(WO2010/142789)には、ポリブタジエン系マクロモノマーを含み、該マクロモノマーが500〜50,000の分子量を有するポリマーを、粘度指数向上剤として使用することが開示されている。しかし、該ポリマーが優れたせん断安定性およびフラグメント安定性を有することは示されていない。
【0007】
国際公開第2007/003238号(WO2007/003238)には、ポリブタジエン系マクロモノマーを含み、該マクロモノマーが500〜50,000g/molの分子量を有するポリマーを、粘度指数向上剤として使用することが記載されている。これらのVIIがせん断安定性に関して有益であることは示されていない。
【0008】
欧州特許出願公開第3093334号明細書(EP3093334A1)には、ポリブタジエン系マクロモノマーを含み、該マクロモノマーが1000〜25,000g/molの分子量を有する、粘度指数向上剤としてのポリマーが開示されている。該出願の実施例では、1,100g/mol、3,000g/molまたは5,000g/molのいずれかの分子量を有するマクロモノマーが1種使用されている。しかし、せん断安定性測定の結果を見ると、分子量が比較的低くなった場合(実施例1、4および7)には、改善を見出すことができない。加えて該出願には、フラグメント安定性を向上させる方法は教示されていない。
【0009】
発明の概要
本発明の目的は、潤滑剤組成物に使用するための粘度指数向上剤であって、従来技術から知られている粘度指数向上剤と比較して、せん断安定性およびせん断後の溶解性の改善を示す粘度指数向上剤を提供することである。特に本発明は、粘度指数が高く、せん断安定性が高く、かつせん断後の溶解性が高いという組み合わせを提供する粘度指数向上剤の提供を目的とする。
【0010】
ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーに、種々の平均分子量を有する水添ポリブタジエンをベースとする2種のモノマーの特定の組み合わせを含ませることにより、該ポリマーの優れたせん断安定性と高い粘度指数(VI)とが得られることが見出された。また、本発明のポリマーは良好なフラグメント安定性をも示し、すなわちせん断後の溶解性が良好である。せん断安定性に優れ、フラグメント安定性に優れ、かつVIが高いというこうした組み合わせは、水添ポリブタジエンをベースとするモノマーを1種しか使用しない場合には得ることができない。これらの効果の達成には、こうした2種のモノマーの組み合わせが不可欠である。
【0011】
発明の詳細な説明
本発明のポリマー
第1の態様では、本発明は、モノマー組成物の重合により得ることができるポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーであって、前記モノマー組成物は、
(a) (メタ)アクリル酸と、500g/mol以上3,000g/mol未満の数平均分子量を有する第1のヒドロキシル化水添ポリブタジエンとの1種以上のエステルを、該モノマー組成物の総重量を基準として5〜35重量%と、
(b) (メタ)アクリル酸と、3,000g/mol以上10,000g/mol以下の数平均分子量を有する第2のヒドロキシル化水添ポリブタジエンとの1種以上のエステルを、該モノマー組成物の総重量を基準として1〜15重量%と、
(c) 1種以上のC
1〜C
30アルキル(メタ)アクリレートを、該モノマー組成物の総重量を基準として4〜98重量%と
を含み、
前記モノマー(a)と(b)との総重量は、前記モノマー組成物の総重量を基準として少なくとも25重量%であり、
前記モノマー(a)、(b)および(c)の総重量は、前記モノマー組成物の総重量を基準として少なくとも35重量%であるポリマーに関する。
【0012】
特に明記しない限り、モノマーの重量は、使用されるモノマーの総量、すなわちモノマー組成物の総重量を基準として示される。
【0013】
好ましくは(a)〜(c)の量は、合計100重量%となる。
【0014】
本発明の文脈におけるポリマーは、第1のポリマー(骨格または主鎖とも呼ばれる)と、多数のさらなるポリマー(側鎖と呼ばれ、該骨格に共有結合している)とを含む。本件では、該ポリマーの骨格は、前記の(メタ)アクリル酸エステルの連結している不飽和基により形成される。アルキル基と(メタ)アクリル酸エステルの水添ポリブタジエン鎖とによって該ポリマーの側鎖が形成される。(メタ)アクリル酸と1種のヒドロキシル化水添ポリブタジエンとの1種以上のエステルの反応生成物(成分(a)または成分(b))は、本発明においてマクロモノマーとも呼ばれる。
【0015】
「(メタ)アクリル酸」という用語は、アクリル酸、メタクリル酸およびアクリル酸とメタクリル酸との混合物を指し、メタクリル酸が好ましい。「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリル酸のエステル、メタクリル酸のエステルまたはアクリル酸のエステルとメタクリル酸のエステルとの混合物を指し、メタクリル酸のエステルが好ましい。
【0016】
本発明によるポリマーは、好ましくは10,000〜1,000,000g/molの重量平均分子量(M
w)を有することができる。種々の重量平均分子量のポリマーを、種々の用途、例えばエンジンオイル、トランスミッションフルードおよびトラクションオイル用の添加剤として使用することができる。該ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは下記表に従って意図した用途に応じて選択することができる。
【0017】
【表1】
【0018】
好ましくは本発明によるポリマーの重量平均分子量(M
w)は、15,000〜350,000g/mol、より好ましくは30,000〜350,000g/mol、さらにより好ましくは40,000〜200,000g/mol、最も好ましくは60,000〜150,000g/molの範囲にある。この重量平均分子量を有するポリマーは、トランスミッションフルード、例えばオートマチックトランスミッションフルード、マニュアルトランスミッションフルードおよびベルト式無段トランスミッションフルードにおける使用に特に適している。
【0019】
好ましくは本発明によるポリマーの数平均分子量(M
n)は、5,000〜50,000g/mol、より好ましくは15,000〜40,000g/mol、最も好ましくは20,000〜35,000g/molの範囲にある。
【0020】
好ましくは本発明によるポリマーの多分散指数(PDI)は、1.5〜4.5、より好ましくは2〜4、最も好ましくは2.7〜3.6の範囲にある。多分散指数は、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(M
w/M
n)として定義される。
【0021】
重量平均分子量および数平均分子量は、市販のポリメチルメタクリレート標準を使用したゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により測定される。この測定は、DIN 55672−1により、溶離液としてTHFを使用したゲルろ過クロマトグラフィー(流量:1mL/分;注入量:100μL)によって行われる。
【0022】
本発明によるポリマーは、そのモル分岐度(「f
branch」)に基づいて特徴付けることができる。モル分岐度は、モノマー組成物中の全モノマーの総モル量を基準とした、使用されるマクロモノマー(成分(a)および(b))の割合(mol%)を指す。使用されるマクロモノマーのモル量は、マクロモノマーの数平均分子量M
nに基づいて算出される。モル分岐度の算出は、国際公開第2007/003238号(WO2007/003238A1)の、特に第13頁および第14頁に詳細に記載されている。同文献は、本明細書に明示的に援用される。
【0023】
好ましくは該ポリマーは、0.1〜5mol%、より好ましくは1〜4.5mol%、最も好ましくは1.5〜2.5mol%のモル分岐度f
branchを有する。
【0024】
ヒドロキシル化水添ポリブタジエン
本発明で使用するためのヒドロキシル化水添ポリブタジエンは、それぞれ500g/mol以上3,000g/mol未満および3,000g/mol以上10,000g/mol以下の数平均分子量M
nを有する。その高分子量ゆえ、ヒドロキシル化水添ポリブタジエンは、本発明の文脈においてマクロアルコールとも呼ばれ得る。(メタ)アクリル酸の対応するエステルは、本発明の文脈においてマクロモノマーとも呼ばれ得る。
【0025】
本発明によるポリマーにおいて、数平均分子量の異なる2種のマクロモノマーを組み合わせることにより、該ポリマーの優れたせん断抵抗性を維持しつつ、せん断後の溶解性の劇的な改善を得ることができる。
【0026】
数平均分子量M
nは、市販のポリブタジエン標準を使用したGPCにより測定される。この測定は、DIN 55672−1により、溶離液としてTHFを使用したゲルろ過クロマトグラフィー(流量:1mL/分;注入量:100μL)によって行われる。
【0027】
好ましくは該モノマー組成物は、より低分子量のマクロモノマー(a)を、より高分子量のマクロモノマー(b)と少なくとも同量かまたはより多くの量含む。このため、モノマー組成物における成分(b)に対する成分(a)の重量比は、好ましくは1以上であり、より好ましくは1.5〜15であり、さらにより好ましくは3〜6であり、最も好ましくは3.5〜6である。
【0028】
好ましくは該モノマー組成物は、成分(a)として、(メタ)アクリル酸と第1のヒドロキシル化水添ポリブタジエンとの1種以上のエステルを、該モノマー組成物の総重量を基準として15〜35重量%含み、より好ましくは20〜30重量%含む。
【0029】
好ましくは該モノマー組成物は、成分(b)として、(メタ)アクリル酸と第2のヒドロキシル化水添ポリブタジエンとの1種以上のエステルを、該モノマー組成物の総重量を基準として3〜15重量%含み、より好ましくは4〜10重量%含む。
【0030】
好ましくは第1のヒドロキシル化水添ポリブタジエンは、1,000〜2,750g/mol、より好ましくは1,500〜2,500g/mol、最も好ましくは1,750〜2,250g/molの数平均分子量を有する。
【0031】
好ましくは第2のヒドロキシル化水添ポリブタジエンは、3,500〜7,000g/mol、より好ましくは4,000〜6,000g/mol、最も好ましくは4,500〜5,000g/molの数平均分子量を有する。
【0032】
好ましくは第1および/または第2のヒドロキシル化水添ポリブタジエンは、少なくとも99%の水添レベルを有する。本発明のポリマーにおいて決定され得る水添レベルの代替的な測定値は、ヨウ素価である。ヨウ素価とは、ポリマー100gに付加され得るヨウ素のグラム数を指す。好ましくは本発明のポリマーは、ポリマー100gあたり5g以下のヨウ素のヨウ素価を有する。ヨウ素価は、DIN 53241−1:1995−05によるWijs法により決定される。
【0033】
好ましいヒドロキシル化水添ポリブタジエンは、英国特許第2270317号明細書(GB2270317)に従って得ることができる。
【0034】
本明細書で使用する場合、「ヒドロキシル化水添ポリブタジエン」という用語は、ヒドロキシル基を1つ以上含む水添ポリブタジエンを指す。ヒドロキシル化水添ポリブタジエンは、さらなる構造単位をさらに含んでもよく、例えばポリブタジエンへのアルキレンオキシドの付加により得られるポリエーテル基、またはポリブタジエンへの無水マレイン酸の付加により得られる無水マレイン酸基をさらに含んでもよい。これらのさらなる構造単位は、ポリブタジエンがヒドロキシル基により官能化される際にポリブタジエンに導入されてもよい。
【0035】
好ましいのは、モノヒドロキシル化水添ポリブタジエンである。より好ましくはヒドロキシル化水添ポリブタジエンは、ヒドロキシエチル基またはヒドロキシプロピル基を末端に有する水添ポリブタジエンである。ヒドロキシプロピル基を末端に有するポリブタジエンが特に好ましい。
【0036】
これらのモノヒドロキシル化水添ポリブタジエンは、まずアニオン重合によるブタジエンモノマーからポリブタジエンへの転化により製造することができる。続いて、ポリブタジエンモノマーとアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドとの反応によりヒドロキシ官能化ポリブタジエンを製造することができる。このポリブタジエンを2つ以上のアルキレンオキシド単位と反応させることも可能であり、その結果、末端ヒドロキシル基を有するポリエーテル−ポリブタジエンブロックコポリマーが得られる。ヒドロキシル化ポリブタジエンを、適切な遷移金属触媒の存在下で水素化することができる。
【0037】
これらのモノヒドロキシル化水添ポリブタジエンは、(例えば米国特許第4,316,973号明細書(US Patent No.4,316,973)に記載の)末端二重結合を有する(コ)ポリマーのヒドロホウ素化により得られた生成物;末端二重結合を有する(コ)ポリマーと、アミノアルコールとのマレイン酸無水物とのエン反応により得られた無水マレイン酸−エン−アミノアルコール付加体;および(例えば特開昭63−175096号(JP Publication No.S63−175096)に記載の)末端二重結合を有する(コ)ポリマーのヒドロホルミル化および後続の水素化により得られた生成物からも選択することができる。
【0038】
本発明で使用するためのマクロモノマーは、アルキル(メタ)アクリレートのエステル交換反応により製造することができる。アルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシル化水添ポリブタジエンとの反応により、本発明のエステルが形成される。反応物質として、メチル(メタ)アクリレートまたはエチル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0039】
このエステル交換反応は、広く知られている。例えばこの目的で、不均一系触媒系、例えば水酸化リチウム/酸化カルシウム混合物(LiOH/CaO)、純粋な水酸化リチウム(LiOH)、リチウムメトキシド(LiOMe)もしくはナトリウムメトキシド(NaOMe)、または均一系触媒系、例えばイソプロピルチタネート(Ti(OiPr)
4)もしくはジオクチルスズオキシド(Sn(OCt)
2O)を使用することが可能である。該反応は、平衡反応である。したがって、放出される低分子量アルコールは、典型的には例えば蒸発により除去される。
【0040】
加えて、マクロモノマーを直接エステル化法により得ることができ、例えば(メタ)アクリル酸もしくは(メタ)アクリル酸無水物から好ましくはp−トルエンスルホン酸もしくはメタンスルホン酸による酸性触媒下で得ることができ、また遊離メタクリル酸からDCC法(ジシクロヘキシルカルボジイミド)により得ることもできる。
【0041】
さらに、本ヒドロキシル化水添ポリブタジエンを、酸塩化物、例えば(メタ)アクリロイルクロリドとの反応によってエステルに転化させることができる。
【0042】
好ましくは上記で詳説した本発明によるエステルの製造において、重合禁止剤、例えば4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシルラジカルおよび/またはヒドロキノンモノメチルエーテルが使用される。
【0043】
アルキル(メタ)アクリレート
「C
1〜30アルキル(メタ)アクリレート」という用語は、(メタ)アクリル酸と1〜30個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルコールとのエステルを指す。この用語には、特定の長さのアルコールと(メタ)アクリル酸との個々のエステルが包含され、またこれと同様に、異なる長さのアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルの混合物も包含される。
【0044】
好ましくは該モノマー組成物は、成分(c)として、1種以上のC
1〜30アルキル(メタ)アクリレートを、該モノマー組成物の総重量を基準として5〜90重量%含み、より好ましくは10〜80重量%含む。
【0045】
好ましくはC
1〜30アルキル(メタ)アクリレートには、C
1〜4アルキル(メタ)アクリレートとC
10〜30アルキル(メタ)アクリレートとの混合物、より好ましくはC
1〜4アルキル(メタ)アクリレートとC
10〜18アルキル(メタ)アクリレートとの混合物、さらにより好ましくはC
1〜4アルキル(メタ)アクリレートとC
12〜14アルキル(メタ)アクリレートとの混合物が含まれる。
【0046】
「C
1〜4アルキル(メタ)アクリレート」という用語は、(メタ)アクリル酸と1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルコールとのエステルを指す。この用語には、特定の長さのアルコールと(メタ)アクリル酸との個々のエステルが包含され、またこれと同様に、異なる長さのアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルの混合物も包含される。
【0047】
適切なC
1〜4アルキル(メタ)アクリレートには、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレートおよびtert−ブチル(メタ)アクリレートが含まれる。特に好ましいC
1〜4アルキル(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレートおよびn−ブチル(メタ)アクリレートである。メチルメタクリレートおよびn−ブチルメタクリレートが特に好ましい。
【0048】
「C
10〜30アルキル(メタ)アクリレート」という用語は、(メタ)アクリル酸と10〜30個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルコールとのエステルを指す。この用語には、特定の長さのアルコールと(メタ)アクリル酸との個々のエステルが包含され、またこれと同様に、異なる長さのアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルの混合物も包含される。
【0049】
適切なC
10〜30アルキル(メタ)アクリレートには、例えば2−ブチルオクチル(メタ)アクリレート、2−ヘキシルオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、2−ブチルデシル(メタ)アクリレート、2−ヘキシルデシル(メタ)アクリレート、2−オクチルデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、5−メチルウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−メチルドデシル(メタ)アクリレート、2−ヘキシルドデシル(メタ)アクリレート、2−オクチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、2−デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−ドデシルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5−イソプロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5−エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、2−デシルオクタデシル(メタ)アクリレート、2−テトラデシルオクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、セチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、エイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレート、2−デシル−テトラデシル(メタ)アクリレート、2−デシルオクタデシル(メタ)アクリレート、2−ドデシル−1−ヘキサデシル(メタ)アクリレート、1,2−オクチル−1−ドデシル(メタ)アクリレート、2−テトラデシルオクタデシル(メタ)アクリレート、1,2−テトラデシル−オクタデシル(メタ)アクリレートおよび2−ヘキサデシル−エイコシル(メタ)アクリレート、n−テトラコシル(メタ)アクリレート、n−トリアコンチル(メタ)アクリレートならびに/またはn−ヘキサトリアコンチル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0050】
特定の好ましい一実施形態では、C
1〜30アルキル(メタ)アクリレートには、C
1〜4アルキル(メタ)アクリレートとC
10〜18アルキル(メタ)アクリレートとの混合物が含まれる。
【0051】
「C
10〜18アルキル(メタ)アクリレート」という用語は、(メタ)アクリル酸と10〜18個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルコールとのエステルを指す。この用語には、特定の長さのアルコールと(メタ)アクリル酸との個々のエステルが包含され、またこれと同様に、異なる長さのアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルの混合物も包含される。
【0052】
適切なC
10〜18アルキル(メタ)アクリレートには、例えばデシルメタクリレート、ウンデシルメタクリレート、5−メチルウンデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、2−メチルドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、5−メチルトリデシルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート、ペンタデシルメタクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレートおよび/またはオクタデシル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0053】
特に好ましいC
10〜18アルキル(メタ)アクリレートは、直鎖C
12〜14アルコール混合物の(メタ)アクリル酸エステル(C
12〜14アルキル(メタ)アクリレート)である。
【0054】
好ましくは該モノマー組成物は、成分(c)として、
1種以上のC
1〜4アルキル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として1〜80重量%と、1種以上のC
10〜18アルキル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として0.1〜18重量%とを含み、
好ましくは1種以上のC
1〜4アルキル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として1〜80重量%と、1種以上のC
10〜18アルキル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として0.1〜15重量%とを含み、
より好ましくは1種以上のC
1〜4アルキル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として5〜70重量%と、1種以上のC
10〜18アルキル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として0.1〜10重量%とを含み、
最も好ましくは1種以上のC
1〜4アルキル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として7〜68重量%と、1種以上のC
10〜18アルキル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として0.2〜8重量%とを含む。
【0055】
一実施形態において該モノマー組成物は、成分(c)として、メチル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として0.2〜17重量%と、ブチル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として7〜55重量%と、1種以上のC
10〜18アルキル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として0.2〜8重量%とを含む。
【0056】
一実施形態において該モノマー組成物は、成分(c)として、メチル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として0.2〜17重量%と、ブチル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として10〜54重量%と、1種以上のC
12〜14アルキル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として0.2〜8重量%とを含む。
【0057】
さらなるモノマー
好ましくは該モノマー組成物は、成分(a)〜(c)に加えて、さらなるモノマー(成分d)を含む。
【0058】
本発明において使用可能なさらなるモノマーは、8〜17個の炭素原子を有するスチレンモノマー、アシル基に1〜11個の炭素原子を有するビニルエステル、アルコール基に1〜10個の炭素原子を有するビニルエーテル、分散性の酸素および/または窒素で官能化されたモノマー、複素環式(メタ)アクリレート、複素環式ビニル化合物、共有結合したリン原子を有するモノマー、エポキシ基を有するモノマーおよびハロゲンを有するモノマーからなる群から選択される。
【0059】
8〜17個の炭素原子を有する適切なスチレンモノマーは、スチレン、側鎖にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばα−メチルスチレンおよびα−エチルスチレン、環にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばビニルトルエンおよびp−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、例えばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレンおよびテトラブロモスチレン、ニトロスチレンからなる群から選択され、スチレンが好ましい。
【0060】
アシル基に1〜11個の炭素原子を有する適切なビニルエステルは、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルからなる群から選択され、好ましくはアシル基に2〜9個、より好ましくは2〜5個の炭素原子を含むビニルエステルからなる群から選択される。ここで、該アシル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0061】
アルコール基に1〜10個の炭素原子を有する適切なビニルエーテルは、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテルからなる群から選択され、好ましくはアルコール基に1〜8個、より好ましくは1〜4個の炭素原子を含むビニルエーテルからなる群から選択される。ここで、該アルコール基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0062】
分散性の酸素および/または窒素で官能化されたモノマーから得られる適切なモノマーは、アミノアルキル(メタ)アクリレート、例えばN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノペンチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノヘキサデシル(メタ)アクリレート;アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、例えばN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオール(メタ)アクリレート、p−ヒドロキシスチレン、ビニルアルコール、アルケノール(3〜12個の炭素原子を有する(メチル)アリルアルコール)、多価(3〜8価)アルコール(グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリド、糖類)エーテルまたは(メタ)アクリレート;C
1〜8−アルキルオキシ−C
2〜4−アルキル(メタ)アクリレート、例えばメトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシ−ブチル(メタ)アクリレート、メトキシヘプチル(メタ)アクリレート、メトキシヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシペンチル(メタ)アクリレート、メトキシオクチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシ−ブチル(メタ)アクリレート、エトキシヘプチル(メタ)アクリレート、エトキシヘキシル(メタ)アクリレート、エトキシペンチル(メタ)アクリレート、エトキシオクチル(メタ)アクリレート、プロポキシメチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、プロポキシブチル(メタ)アクリレート、プロポキシヘプチル(メタ)アクリレート、プロポキシヘキシル(メタ)アクリレート、プロポキシペンチル(メタ)アクリレート、プロポキシオクチル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、ブトキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシヘプチル(メタ)アクリレート、ブトキシヘキシル(メタ)アクリレート、ブトキシペンチル(メタ)アクリレートおよびブトキシオクチル(メタ)アクリレートからなる群から選択され、エトキシエチル(メタ)アクリレートおよびブトキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0063】
適切な複素環式(メタ)アクリレートは、2−(1−イミダゾリル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−モルホリニル)エチル(メタ)アクリレート、1−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリドン、N−メタクリロイルモルホリン、N−メタクリロイル−2−ピロリジノン、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリジノン、N−(3−メタクリロイルオキシプロピル)−2−ピロリジノンからなる群から選択される。
【0064】
適切な複素環式ビニル化合物は、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリジン、3−ビニルピロリジン、N−ビニル−カプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルオキサゾールおよび水素化ビニルオキサゾールからなる群から選択される。
【0065】
共有結合したリン原子を有するモノマーは、2−(ジメチルホスファト)プロピル(メタ)アクリレート、2−(エチレンホスファイト)プロピル(メタ)アクリレート、ジメチルホスフィノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルホスホノエチル(メタ)アクリレート、ジエチル(メタ)アクリロイルホスホナート、ジプロピル(メタ)アクリロイルホスホナート、2−(ジブチルホスホノ)エチル(メタ)アクリレート、ジエチルホスファトエチル(メタ)アクリレート、2−(ジメチルホスファト)−3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(エチレンホスファイト)−3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルジエチルホスホナート、3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルジプロピルホスホナート、3−(ジメチルホスファト)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(エチレンホスファイト)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−ヒドロキシプロピルジエチルホスホナート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−ヒドロキシプロピルジプロピルホスホナートおよび2−(ジブチルホスホノ)−3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートからなる群から選択される。
【0066】
エポキシ基を有する適切なモノマーは、例えばグリシジル(メタ)アクリレートおよびグリシジル(メタ)アリルエーテル等である。
【0067】
ハロゲンを有する適切なモノマーは、例えば塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリルおよびハロゲン化スチレン(ジクロロスチレン等)等である。
【0068】
好ましくは該モノマー組成物は、成分(d)として、さらなるモノマーを、該モノマー組成物の総重量を基準として0〜65重量%、より好ましくは0.1〜65重量%、さらにより好ましくは0.2〜65重量%、最も好ましくは0.2〜60重量%含む。
【0069】
好ましくは該さらなるモノマーは、8〜17個の炭素原子を有するスチレンモノマーである。
【0070】
一実施形態において該モノマー組成物は、成分(d)として、8〜17個の炭素原子を有する1種以上のスチレンモノマーを、該モノマー組成物の総重量を基準として0.1〜65重量%、より好ましくは0.2〜65重量%、最も好ましくは0.2〜60重量%含む。
【0071】
好ましくは成分(a)〜(d)の量は、合計100重量%となる。
【0072】
好ましいモノマー組成物
一実施形態において、該モノマー組成物は、
(a) (メタ)アクリル酸と、1,000〜2,750g/molの数平均分子量を有する第1のヒドロキシル化水添ポリブタジエンとの1種以上のエステルを、該モノマー組成物の総重量を基準として5〜35重量%、より好ましくは15〜35重量%、最も好ましくは20〜30重量%と、
(b) (メタ)アクリル酸と、3,500〜7,000g/molの数平均分子量を有する第2のヒドロキシル化水添ポリブタジエンとの1種以上のエステルを、該モノマー組成物の総重量を基準として1〜15重量%、より好ましくは3〜15重量%、最も好ましくは4〜10重量%と、
(c) 1種以上のC
1〜4アルキル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として1〜80重量%と、1種以上のC
10〜18アルキル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として0.1〜15重量%と、より好ましくは1種以上のC
1〜4アルキル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として5〜70重量%と、1種以上のC
10〜18アルキル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として0.1〜10重量%と、最も好ましくは1種以上のC
1〜4アルキル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として7〜68重量%と、1種以上のC
10〜18アルキル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として0.2〜8重量%と、
(d) 8〜17個の炭素原子を有する1種以上のスチレンモノマーを、該モノマー組成物の総重量を基準として0〜65重量%、より好ましくは0.1〜65重量%、最も好ましくは0.2〜65重量%と、
を含み、
モノマー(a)と(b)との総重量は、該モノマー組成物の総重量を基準として少なくとも25重量%であり、
モノマー(a)、(b)および(c)の総重量は、該モノマー組成物の総重量を基準として少なくとも35重量%である。
【0073】
一実施形態において、該モノマー組成物は、
(a) (メタ)アクリル酸と、1,000〜2,750g/molの数平均分子量を有する第1のヒドロキシル化水添ポリブタジエンとの1種以上のエステルを、該モノマー組成物の総重量を基準として20〜30重量%と、
(b) (メタ)アクリル酸と、3,500〜7,000g/molの数平均分子量を有する第2のヒドロキシル化水添ポリブタジエンとの1種以上のエステルを、該モノマー組成物の総重量を基準として2〜10重量%と、
(c) 1種以上のC
1〜4アルキル(メタ)アクリレートを、該モノマー組成物の総重量を基準として7〜68重量%と、1種以上のC
10〜18アルキル(メタ)アクリレートを、該モノマー組成物の総重量を基準として0.2〜8重量%と、
(d) 8〜17個の炭素原子を有する1種以上のスチレンモノマーを、該モノマー組成物の総重量を基準として0.2〜65重量%と、
を含み、
モノマー(a)と(b)との総重量は、該モノマー組成物の総重量を基準として少なくとも25重量%であり、
モノマー(a)、(b)および(c)の総重量は、該モノマー組成物の総重量を基準として少なくとも35重量%である。
【0074】
一実施形態において、該モノマー組成物は、
(a) (メタ)アクリル酸と、1,000〜2,750g/molの数平均分子量を有する第1のヒドロキシル化水添ポリブタジエンとの1種以上のエステルを、該モノマー組成物の総重量を基準として20〜30重量%と、
(b) (メタ)アクリル酸と、3,500〜7,000g/molの数平均分子量を有する第2のヒドロキシル化水添ポリブタジエンとの1種以上のエステルを、該モノマー組成物の総重量を基準として2〜10重量%と、
(c) メチル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として0.2〜17重量%と、ブチル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として7〜55重量%と、1種以上のC
10〜18アルキル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として0.2〜8重量%と、
(d) 8〜17個の炭素原子を有する1種以上のスチレンモノマーを、該モノマー組成物の総重量を基準として0.2〜65重量%と、
を含み、
モノマー(a)と(b)との総重量は、該モノマー組成物の総重量を基準として少なくとも25重量%であり、
モノマー(a)、(b)および(c)の総重量は、該モノマー組成物の総重量を基準として少なくとも35重量%である。
【0075】
一実施形態において、モノマー組成物は、
(a) (メタ)アクリル酸と、1,000〜2,750g/molの数平均分子量を有する第1のヒドロキシル化水添ポリブタジエンとの1種以上のエステルを、該モノマー組成物の総重量を基準として20〜27重量%と、
(b) (メタ)アクリル酸と、3,500〜7,000g/molの数平均分子量を有する第2のヒドロキシル化水添ポリブタジエンとの1種以上のエステルを、該モノマー組成物の総重量を基準として4〜6重量%と、
(c) メチル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として0.2〜17重量%と、ブチル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として10〜54重量%と、1種以上のC
12〜14アルキル(メタ)アクリレートを該モノマー組成物の総重量を基準として0.2〜8重量%と、
(d) 8〜17個の炭素原子を有する1種以上のスチレンモノマーを該モノマー組成物の総重量を基準として0.2〜61重量%と、
を含み、
モノマー(a)と(b)との総重量は、該モノマー組成物の総重量を基準として少なくとも25重量%であり、
モノマー(a)、(b)および(c)の総重量は、該モノマー組成物の総重量を基準として少なくとも35重量%である。
【0076】
好ましくは上記で言及された(メタ)アクリル酸エステルは、メタクリル酸のエステルである。
【0077】
製造方法
また本発明は、上記で言及されたポリマーの製造方法であって、
(a) 上記のモノマー組成物を準備する工程と、
(b) 該モノマー組成物においてラジカル重合を開始する工程と
を含む方法に関する。
【0078】
標準的なフリーラジカル重合は、特に、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Sixth Editionに詳述されている。一般的には、重合開始剤および場合により連鎖移動剤がこの目的に使用される。
【0079】
ATRP法自体は公知である。これは、「リビング」フリーラジカル重合であると考えられるが、この機序の説明は何ら制限を意図するものではない。このプロセスにおいて、遷移金属化合物が移動性原子基を有する化合物と反応する。この反応は、移動性原子基の遷移金属化合物への移動によるものである。その結果、金属が酸化される。この反応によってフリーラジカルが形成され、これがエチレン性基に付加する。一方で、該原子基の遷移金属化合物への移動は可逆的であるため、該原子基は、成長中のポリマー鎖に戻される。その結果、制御された重合系が形成される。したがって、該ポリマーの形成、分子量および分子量分布を制御することができる。
【0080】
この反応の概要は、例えばJ.−S. Wang, et al., J. Am. Chem. Soc, vol. 117, p. 5614−5615 (1995)、Matyjaszewski, Macromolecules, vol. 28, p. 7901−7910 (1995)に記載されている。加えて、国際公開第96/30421号(WO96/30421)、同第97/47661号(WO97/47661)、同第97/18247号(WO97/18247)、同第98/40415号(WO98/40415)および同第99/10387(WO99/10387)には、上記で説明したATRPの変形例が開示されている。加えて、本発明のポリマーを例えばRAFT法によっても得ることができる。この方法は、例えば国際公開第98/01478号(WO98/01478)および同第2004/083169号(WO2004/083169)に詳細に記載されている。
【0081】
該重合は、標準圧力下で行われてもよいし、減圧下で行われてもよく、また昇圧下で行われてもよい。該重合の温度も重要ではない。ただし総じて、該重合の温度は、−20〜200℃の範囲にあり、好ましくは50〜150℃の範囲にあり、より好ましくは80〜130℃の範囲にある。
【0082】
好ましくは工程(a)で準備されるモノマー組成物に油を添加して希釈することによって反応混合物が製造される。反応混合物の総重量に対するモノマー組成物の量、すなわち、モノマーの総量は、好ましくは20〜90重量%であり、より好ましくは40〜80重量%であり、最も好ましくは50〜70重量%である。
【0083】
好ましくはモノマー組成物の希釈に使用される油は、APIグループI、II、III、IVもしくはVの油またはそれらの混合物である。好ましくはグループIIIの油またはその混合物がモノマー組成物の希釈に使用される。
【0084】
好ましくは工程(b)は、ラジカル開始剤の添加を含む。
【0085】
適切なラジカル開始剤は、例えばアゾ開始剤、例えばアゾビス−イソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)および1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリルならびにペルオキシ化合物、例えばメチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、tert−ブチルペル−2−エチルヘキサノアート、ケトンペルオキシド、tert−ブチルペルオクトアート、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾアート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノアート、ジクミルペルオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシドおよびビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートである。
【0086】
好ましくはラジカル開始剤は、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、tert−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノアート、1,1−ジ−tert−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロへキサン、tert−ブチルペルオキシベンゾアートおよびtert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノアートからなる群から選択される。特に好ましい開始剤は、tert−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノアートおよび2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタンである。
【0087】
好ましくはモノマー組成物の総重量に対するラジカル開始剤の総量は、0.01〜5重量%であり、より好ましくは0.02〜1重量%であり、最も好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0088】
ラジカル開始剤の全量を1ステップで加えてもよいし、ラジカル開始剤を重合反応の過程で複数のステップで加えてもよい。好ましくはラジカル開始剤は、複数のステップで加えられる。例えば、ラジカル開始剤の一部を添加してラジカル重合を開始させ、この最初の計量供給から0.5〜3.5時間後にラジカル開始剤の第2の部分を添加することができる。
【0089】
好ましくは工程(b)は、連鎖移動剤の添加も含む。適切な連鎖移動剤は、特に、油溶性メルカプタン、例えばn−ドデシルメルカプタンもしくは2−メルカプトエタノールまたはテルペンのクラスの別の連鎖移動剤、例えばテルピノレンである。n−ドデシルメルカプタンの添加が特に好ましい。
【0090】
好ましくはラジカル重合の総反応時間は、2〜10時間であり、より好ましくは3〜9時間である。
【0091】
ラジカル重合の完了後、得られたポリマーを上記で言及された油によりさらに希釈して所望の粘度とすることが好ましい。好ましくは、該ポリマーを希釈して、ポリマー濃度を5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%、最も好ましくは20〜40重量%とする。
【0092】
本発明によるポリマーの使用
また、本発明は、潤滑剤組成物の粘度指数およびせん断抵抗性を向上させるための潤滑剤組成物用の添加剤としての、上記で言及されたポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの使用に関する。これにより、本発明のポリマーを、潤滑油組成物に高いVIを提供しつつ、潤滑油組成物への溶解性が非常に高く、また潤滑油組成物の優れた特性、例えば優れたせん断抵抗性を維持することができる粘度指数向上剤として使用することができる。
【0093】
本発明のポリマーおよび本発明によるポリマーを含む潤滑剤組成物は、好ましくは駆動系潤滑油(例えばマニュアルトランスミッションフルード、差動装置油、オートマチックトランスミッションフルードおよびベルト式無段トランスミッションフルード、車軸液配合物、二段クラッチトランスミッションフルードおよび専用のハイブリッドトランスミッションフルード)、作動油(例えば機械用の作動油、パワーステアリング油、ショックアブソーバー油)、エンジンオイル(ガソリンエンジン用およびディーゼルエンジン用)ならびに工業用油配合物(例えば風力タービン)に使用される。
【0094】
本発明によるポリマーの動粘度の観点から、潤滑剤組成物におけるポリマーの重量割合は、好ましくは潤滑剤組成物の総重量を基準として、1重量%〜50重量%、好ましくは1重量%〜35重量%の範囲で構成される。
【0095】
本発明による潤滑剤組成物がエンジンオイルとして使用される場合、該潤滑剤組成物は、本発明によるポリマーを、該潤滑剤組成物の総重量を基準として好ましくは1重量%〜20重量%、より好ましくは1重量%〜15重量%含み、これによって、ASTM D445による100℃での動粘度が4mm
2/s〜10mm
2/sの範囲となる。
【0096】
本発明の潤滑剤組成物が自動車用ギヤ油として使用される場合、該潤滑剤組成物は、本発明によるポリマーを、該潤滑剤組成物の総重量を基準として好ましくは1重量%〜35重量%、より好ましくは1重量%〜25重量%含み、これによって、ASTM D445による100℃での動粘度が2mm
2/s〜15mm
2/sの範囲となる。
【0097】
本発明の潤滑剤組成物が自動車用トランスミッションオイルとして使用される場合、該潤滑剤組成物は、本発明によるポリマーを、該潤滑剤組成物の総重量を基準として好ましくは1重量%〜25重量%、より好ましくは1重量%〜18重量%含み、これによって、ASTM D445による100℃での動粘度が2mm
2/s〜6mm
2/sの範囲となる。
【0098】
本発明の潤滑剤組成物が工業用ギヤ油として使用される場合、該潤滑剤組成物は、本発明によるポリマーを、該潤滑剤組成物の総重量を基準として好ましくは10重量%〜50重量%、より好ましくは10重量%〜35重量%含み、これによって、ASTM D445による100℃での動粘度が10mm
2/s〜40mm
2/sの範囲となる。
【0099】
好ましくは該ポリマーは、せん断後の潤滑剤の動粘度の低下を防ぐために使用される。
【0100】
動粘度は、ASTM D445により測定することができる。好ましくは動粘度は、100℃、40℃および/または−10℃の温度で測定される。
【0101】
せん断抵抗性は、好ましくは、潤滑剤をDIN 51350の第6部によるせん断に供した前後の潤滑剤の特性を測定することにより評価される。好ましくはせん断は、DIN 51350の第6部によるテーパーローラーベアリングを使用して、1450rpm、60℃で192時間にわたって行われる。
【0102】
好ましくは該ポリマーは、せん断後の40℃および/または−10℃での動粘度に対するせん断前の40℃および/または−10℃での動粘度の比が、1超、より好ましくは1〜1.15、最も好ましくは1〜1.05となるようにするために使用される。
【0103】
組成物
また、本発明は、
(a) 基油と、
(b) 上記で言及されたポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーと
を含む組成物に関する。
【0104】
本発明によるポリマーの存在により、該組成物は優れたせん断安定性を示し、一方で本発明のポリマーは、潤滑剤組成物においてせん断後にその溶解性を維持する。このため、本発明による組成物は、好ましくはトランスミッションフルードとして使用され得る。
【0105】
該組成物は、本発明によるポリマーと、希釈剤としての基油とを含む、添加剤組成物でもよい。該添加剤組成物を、例えば潤滑剤に粘度指数向上剤として加えることができる。典型的には該添加剤組成物は、本発明によるポリマーを比較的多量に含む。
【0106】
また該組成物は、本発明によるポリマーと、基油と、場合により以下で論じるさらなる添加剤とを含む潤滑剤組成物を表すこともできる。該潤滑剤組成物を、例えばトランスミッションフルードまたはエンジンオイルとして使用することができる。典型的には該潤滑剤組成物は、本発明によるポリマーを、前述の添加剤組成物よりも少ない量で含む。
【0107】
該組成物が添加剤組成物として使用される場合、基油(成分a)の量は、該添加剤組成物の総重量を基準として好ましくは40〜80重量%であり、より好ましくは50〜70重量%であり、該ポリマー(成分b)の量は、該添加剤組成物の総重量を基準として好ましくは20〜60重量%であり、より好ましくは30〜50重量%である。
【0108】
該組成物が潤滑剤組成物として使用される場合、基油(成分a)の量は、該潤滑剤組成物の総重量を基準として好ましくは50〜99.5重量%であり、より好ましくは65〜99.5重量%であり、さらにより好ましくは75〜97重量%であり、該ポリマー(成分b)の量は、該潤滑剤組成物の総重量を基準として好ましくは0.5〜50重量%であり、より好ましくは0.5〜35重量%であり、さらにより好ましくは3〜25重量%である。
【0109】
好ましくは(a)および(b)の量は、合計100重量%となる。
【0110】
該組成物に使用される基油には、好ましくは潤滑粘度の油が含まれる。このような油は、天然油および合成油、水添分解、水添およびハイドロフィニッシングにより得られた油、未精製油、精製油、再精製油またはそれらの混合物を含む。
【0111】
また、基油は、米国石油学会(API)によって規定された通りに定められてもよい(April 2008 version of 「Appendix E−API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils」, section 1.3 Sub−heading 1.3. 「Base Stock Categories」を参照のこと)。
【0112】
現在、APIにより、潤滑剤ベースストックの5つのグループが定められている(API 1509, Annex E − API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils, September 2011)。グループI、IIおよびIIIは、飽和分および硫黄分ならびにその粘度指数により分類される鉱油であり、グループIVは、ポリアルファオレフィンであり、グループVは、他のすべてのものであり、例えばエステル油を含む。以下の表に、これらのAPI分類を例示する。
【0113】
【表2】
【0114】
本発明による潤滑剤組成物の製造への使用に適した無極性基油の100℃での動粘度(KV
100)は、ASTM D445によれば、好ましくは1mm
2/s〜10mm
2/sの範囲にあり、より好ましくは2mm
2/s〜8mm
2/sの範囲にある。
【0115】
本発明で使用することができるさらなる基油は、グループII、IIIのフィッシャー・トロプシュ系基油である。
【0116】
フィッシャー・トロプシュ系基油は、当技術分野において公知である。「フィッシャー・トロプシュ系」という用語は、基油がフィッシャー・トロプシュ法の合成生成物であるか、または同合成生成物から得られることを意味する。フィッシャー・トロプシュ系基油は、GTL(Gas to Liquid、ガス液化)基油とも呼ばれる場合がある。本発明の潤滑剤組成物において基油として好都合に使用することのできる適切なフィッシャー・トロプシュ系基油は、例えば欧州特許第0776959号明細書(EP0776959)、同第0668342号明細書(EP0668342)、国際公開第97/21788号(WO97/21788)、同第00/15736号(WO00/15736)、同第00/14188号(WO00/14188)、同第00/14187号(WO00/14187)、同第00/14183号(WO00/14183)、同第00/14179号(WO00/14179)、同第00/08115号(WO00/08115)、同第99/41332号(WO99/41332)、欧州特許第1029029号明細書(EP1029029)、国際公開第01/18156号(WO01/18156)、同第01/57166号(WO01/57166)および同第2013/189951号(WO2013/189951)に開示された基油である。
【0117】
特に、トランスミッションオイル配合物について、APIグループIIIの基油および種々のグループIIIの油の混合物が使用される。好ましい一実施形態では、基油は、ポリアルファオレフィン基油であってもよいし、ポリアルファオレフィン基油とAPIグループIIIの基油との混合物であってもよいし、APIグループIIIの基油の混合物であってもよい。
【0118】
本発明による潤滑剤組成物は、40℃以下の温度でのその動粘度が低いことによりさらに特徴付けられる。KV
40は、好ましくは25mm
2/s未満であり、より好ましくは18〜24mm
2/sであり、最も好ましくは20〜23mm
2/sである。KV
40は、40℃での動粘度であり、ASTM D445により測定することができる。
【0119】
該潤滑剤組成物は、好ましくは150超の粘度指数を有する。粘度指数は、ASTM D2270により測定することができる。
【0120】
該潤滑剤組成物は、好ましくはトランスミッションフルードまたはエンジンオイルである。
【0121】
本発明による潤滑剤組成物は、成分(c)として、摩擦調整剤、分散剤、消泡剤、界面活性剤、酸化防止剤、流動点降下剤、耐摩耗性添加剤、極圧添加剤、耐食添加剤、染料およびそれらの混合物からなる群から選択される、さらなる添加剤をも含んでもよい。
【0122】
適切な分散剤には、ポリ(イソブチレン)誘導体、例えばポリ(イソブチレン)スクシンイミド(PIBSI、ホウ素化PIBSIを含む);およびN/O官能性を有するエチレン・プロピレンオリゴマーが含まれる。
【0123】
分散剤(ホウ素化分散剤を含む)は、好ましくは潤滑剤組成物の総量を基準として0〜5重量%の量で使用される。
【0124】
適切な消泡剤は、シリコーン油、フルオロシリコーン油、フルオロアルキルエーテル等である。
【0125】
消泡剤は、好ましくは潤滑剤組成物の総量を基準として0.005〜0.1重量%の量で使用される。
【0126】
好ましい界面活性剤は、金属含有化合物、例えばフェノキシド;サリチレート;チオホスホナート、特に、チオピロホスホナート、チオホスホナートおよびホスホナート;スルホナートおよびカーボネートを含む。金属として、これらの化合物は特に、カルシウム、マグネシウムおよびバリウムを含有してもよい。これらの化合物は、好ましくは中性または過塩基化形態で使用することができる。
【0127】
界面活性剤は、潤滑剤組成物の総量を基準として好ましくは0.2〜1重量%の量で使用される。
【0128】
適切な酸化防止剤には、例えばフェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤が含まれる。
【0129】
フェノール系酸化防止剤には、例えばオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート;4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール);4,4’−ビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール);4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール);4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール);2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール);2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−エチル−フェノール;2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール;2,6−ジ−t−アミル−p−クレゾール;2,6−ジ−t−ブチル−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール);4,4’チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール);4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール);2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール);ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンジル)スルフィド;ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド;n−オクチル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオナート;n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオナート;2,2’−チオ[ジエチル−ビス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等が含まれる。中でも、ビス−フェノール系酸化防止剤およびエステル基含有フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0130】
アミン系酸化防止剤には、例えばモノアルキルジフェニルアミン、例えばモノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン等;ジアルキルジフェニルアミン、例えば4,4’−ジブチルジフェニルアミン、4,4’−ジペンチルジフェニルアミン、4,4’−ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’−ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、4,4’−ジノニルジフェニルアミン等;ポリアルキルジフェニルアミン、例えばテトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミン等;ナフチルアミン、具体的には、α−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミンおよびさらにアルキル置換されているフェニル−α−ナフチルアミン、例えばブチルフェニル−α−ナフチルアミン、ペンチルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘキシルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘプチルフェニル−α−ナフチルアミン、オクチルフェニル−α−ナフチルアミン、ノニルフェニル−α−ナフチルアミン等が含まれる。中でも、ジフェニルアミンとしては、その酸化防止作用の観点からナフチルアミンが好ましい。
【0131】
適切な酸化防止剤は、硫黄およびリンを含有する化合物、例えばジチオリン酸金属塩、例えばジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、「OOSトリエステル」=ジチオリン酸とオレフィン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン、α−ピネン、ポリブテン、アクリル酸エステル、マレイン酸エステルからの活性化された二重結合との反応生成物(燃焼時に無灰);有機硫黄化合物、例えばジアルキルスルフィド、ジアリールスルフィド、ポリスルフィド、変性チオール、チオフェン誘導体、ザンテート、チオグリコール、チオアルデヒド、硫黄含有カルボン酸;複素環式硫黄/窒素化合物、特にジアルキルジメルカプトチアジアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール;ビス(ジアルキルジチオカルバミン酸)亜鉛およびメチレンビス(ジアルキルジチオカルバマート);有機リン化合物、例えばトリアリールホスファイトおよびトリアルキルホスファイト;有機銅化合物、ならびに過塩基性カルシウム系およびマグネシウム系のフェノキシドおよびサリチレートからなる群からさらに選択されてもよい。
【0132】
酸化防止剤は、潤滑剤組成物の総量を基準として0〜15重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%の量で使用される。
【0133】
流動点降下剤には、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィン・ナフタレン縮合物、塩素化パラフィン・フェノール縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン等が含まれる。5,000〜200,000g/molの重量平均分子量を有するポリメタクリレートが好ましい。
【0134】
流動点降下剤の量は、潤滑剤組成物の総量を基準として好ましくは0.1〜5重量%である。
【0135】
好ましい耐摩耗性添加剤および極圧添加剤には、硫黄含有化合物、例えばジチオリン酸亜鉛、ジ−C
3〜12−アルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、リン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、ジスルフィド、硫化オレフィン、硫化油および脂肪、硫化エステル、チオカーボネート、チオカルバマート、ポリスルフィド等;リン含有化合物、例えばホスファイト、ホスファート、例えばトリアルキルホスファート、トリアリールホスファート、例えばトリクレシルホスファート、アミンで中和したモノアルキルホスファート、アミンで中和したジアルキルホスファート、エトキシル化モノアルキルホスファート、エトキシル化ジアルキルホスファート、ホスホナート、ホスフィン、それらの化合物のアミン塩または金属塩等;硫黄およびリン含有耐摩耗性剤、例えばチオホスファイト、チオホスファート、チオホスホナート、それらの化合物のアミン塩または金属塩等が含まれる。
【0136】
耐摩耗性剤は、潤滑剤組成物の総量を基準として0〜3重量%、好ましくは0.1〜1.5重量%、より好ましくは0.5〜0.9重量%の量で存在することができる。
【0137】
好ましい摩擦調整剤には、機械的に活性な化合物、例えばモリブデンジスルフィド、グラファイト(フッ素化グラファイトを含む)、ポリ(トリフルオロエチレン)、ポリアミド、ポリイミド;吸着層を形成する化合物、例えば長鎖カルボン酸、脂肪酸エステル、エーテル、アルコール、アミン、アミド、イミド;摩擦化学反応によって層を形成する化合物、例えば飽和脂肪酸、リン酸およびチオリン酸エステル、キサントゲナート、硫化脂肪酸;ポリマー様層を形成する化合物、例えばエトキシル化ジカルボン酸部分エステル、ジアルキルフタレート、メタクリレート、不飽和脂肪酸、硫化オレフィンおよび有機金属化合物、例えばモリブデン化合物(ジチオリン酸モリブデンおよびジチオカルバミン酸モリブデンMoDTC)ならびにZnDTPとのそれらの組み合わせ、銅含有有機化合物が含まれ得る。
【0138】
上記に列記した一部の化合物は、複数の機能を果たしてもよい。ZnDTPは、例えば主に耐摩耗性添加剤および極圧添加剤であるが、酸化防止剤および腐食防止剤(ここでは、金属不動態化剤/不活性化剤)の特性も示す。
【0139】
上記に詳述された添加剤は、特にT. Mang, W. Dresel (eds.): “Lubricants and Lubrication”, Wiley−VCH, Weinheim 2001; R. M. Mortier, S. T. Orszulik (eds.): “Chemistry and Technology of Lubricants”に詳細に記載されている。
【0140】
好ましくは、1種以上の添加剤(c)の総濃度は、潤滑剤組成物の総重量を基準として、最高で20重量%であり、より好ましくは0.05重量%〜15重量%であり、より好ましくは5重量%〜15重量%である。
【0141】
好ましくは、(a)〜(c)の量は、合計100重量%となる。
【0142】
例
本発明を、以下の例により説明する。
【0143】
略称
C
1 AMA C
1−アルキルメタクリレート(メチルメタクリレート;MMA)
C
4 AMA C
4−アルキルメタクリレート(n−ブチルメタクリレート)
C
12/14 AMA C
12/14−アルキルメタクリレート
C
16/18 AMA C
16/18−アルキルメタクリレート
CTA 連鎖移動剤(ドデシルメルカプタン)
f
branch 分岐度(mol%)
K40係数 ASTM D445により測定されたせん断前後の40℃での動粘度の比
K−10係数 ASTM D445により測定されたせん断前後の−10℃での動粘度の比
KRL テーパーローラーベアリング
KV
−10 ASTM D445により測定された−10℃での動粘度
KV
40 ASTM D445により測定された40℃での動粘度
KV
100 ASTM D445により測定された100℃での動粘度
MA−1 水添ポリブタジエンのマクロアルコール(M
n=2,000g/mol)
MA−2 水添ポリブタジエンのマクロアルコール(M
n=4,750g/mol)
MM−1 メタクリレート官能性を有する水添ポリブタジエンのマクロモノマー(M
n=2,000g/mol)
MM−2 メタクリレート官能性を有する水添ポリブタジエンのマクロモノマー(M
n=4,750g/mol)
M
n 数平均分子量
M
w 重量平均分子量
NB3020 Nexbase(登録商標)3020、NesteのグループIIIの基油(2.2cStのKV
100を有する)
NB3043 Nexbase(登録商標)3043、NesteのグループIIIの基油(4.3cStのKV
100を有する)
OEM 相手先商標製造会社
PDI 多分散指数、M
w/M
nにより算出された分子量分布
PSSI100 永久せん断安定性指数(せん断前後のKV100に基づいて算出)
RC9300 ADDITIN(登録商標)RC9300、LanxessのDIパッケージ
VI ASTM D2270により測定された粘度指数
【0144】
試験法
本発明によるポリマーおよび比較例を、その分子量およびPDIについて特性決定した。
【0145】
該ポリマーの分子量を、市販のポリメチルメタクリレート(PMMA)標準を使用したGPCにより測定した。この測定を、溶離液としてTHFを使用したゲルろ過クロマトグラフィー(流量:1mL/分;注入量:100μL)により行う。
【0146】
マクロモノマーの数平均分子量M
nを、市販のポリブタジエン標準を使用したGPCにより測定した。この測定を、DIN 55672−1により、溶離液としてTHFを使用したゲルろ過クロマトグラフィーによって行う。
【0147】
本発明によるポリマーを含む添加剤組成物および比較例を、ASTM D2270によるその粘度指数(VI)、ASTM D445による−10℃での動粘度(KV
−10)、40℃での動粘度(KV
40)および100℃での動粘度(KV
100)について特性決定した。
【0148】
せん断安定性を、DIN 51350の第6部によるKRL(Kegelrollenlager、テーパーローラーベアリング(tapered roller bearing))を使用して、1450rpm、60℃で192時間にわたって調べた。
【0149】
添加剤組成物のせん断安定性を明らかにするために、ASTM D6022−01(永久せん断安定性指数算出のための標準的技法)によりPSSI(永久せん断安定性指数)を算出した。
【0150】
マクロアルコール(ヒドロキシル化水添ポリブタジエン)MA−1およびMA−2の合成
20〜45℃でブチルリチウムを用いた1,3−ブタジエンのアニオン重合により、マクロアルコールを合成した。所望の重合度に到達した時点でプロピレンオキシドを加えることにより、この反応を停止させ、メタノールを用いて沈殿させることによりリチウムを除去した。次いで、該ポリマーを、水素雰囲気下に、貴金属触媒の存在下で、最高温度140℃で200barの圧力において水素化した。水素化の完了後に貴金属触媒を除去し、減圧下で有機溶媒を排出した。最後に、NB3020によりMA−2を希釈して、ポリマー含量を70重量%とした。MA−1は、100%のまま維持した。表1に、MA−1およびMA−2の特性データをまとめる。
【0151】
表1:使用したマクロモノマーの特性データ
【表3】
【0152】
マクロモノマーMM−1およびMM−2の合成
サーベル型スターラー、空気導入管、コントローラを備えた熱電対、加熱マントル、3mmスパイラルワイヤの不規則充填物を有するカラム、蒸気分離装置、上部温度計、還流冷却器および基材冷却器を備えた2L撹拌装置において、上記のマクロアルコール1000gをメチルメタクリレート(MMA)中、60℃で撹拌することにより溶解させる。この溶液に、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルラジカル20ppmおよびヒドロキノンモノメチルエーテル200ppmを加える。安定化のために空気を通過させながらMMAを加熱還流(底部温度 約110℃)した後、MMA約20mLを留去して、共沸乾燥を行う。95℃に冷却した後にLiOCH
3を加え、この混合物を再度加熱還流する。反応時間が約1時間経過した後、メタノールの形成により、上部温度が約64℃に下がっていた。約100℃の一定の上部温度が再度確立されるまで、形成されたメタノール/MMA共沸混合物を留去し続ける。この温度で、この混合物をさらに1時間反応させる。さらなる後処理のために、大部分のMMAを減圧下で排出する。不溶性の触媒残留物を、加圧ろ過(Seitz T1000デプスフィルタ)により除去する。
【0153】
表2に、マクロモノマーMM−1およびMM−2の合成に使用したマクロアルコール、MMAおよびLiOCH
3の量をまとめる。
【0154】
表2:マクロモノマーのエステル交換反応のための、マクロアルコール、MMAおよび触媒の量
【表4】
【0155】
本発明によるポリマーの合成
4ッ口フラスコおよび精密ガラスサーベル型スターラーを備えた装置に、表3に示されたモノマー組成物を装入し、重合油NB3020を加えて油中のモノマー濃度を60重量%とする。窒素下で115℃に加熱した後、NB3020中のtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアートおよびドデシルメルカプタンの10重量%溶液を一定の添加速度で3時間以内に加える。この反応を、該開始剤添加の終了後0.5時間から3.5時間にわたって115℃で維持し、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタンを(モノマーの総量に対して)0.2%加える。この反応混合物を115℃でさらに2時間撹拌し、NB3020で希釈してポリマーの30重量%油溶液とすることによって、最終的なVIIを得る。
【0156】
表3に、実施例および比較例の製造に使用した反応混合物を示す。モノマー成分は、合計100%となるものとする。開始剤および連鎖移動剤の量は、モノマーの総量を基準として示したものである。モノマー量は、最終的なVIIの30重量%であり、残りの70重量%は、該ポリマーの製造に用いた全般的な手順において上述した希釈油(NB3020)である。
【0157】
【表5】
【0158】
MM−1と少量のMM−2とを含む本発明による7つの実施例を製造した(例1、4、7、10、14、15および16)。対応する比較例(例2、3、5、6、8、9、11、12および13)は、理論的には実施例と同一の分岐度を示すが、MM−1またはMM−2のいずれかのみをベースとしたものであり、両マクロモノマーの混合物をベースとしたものではない。比較例17および18は、両マクロモノマーMM−1およびMM−2を使用して製造したものであるが、その量は、本発明において特許請求の範囲に記載した成分(a)および(b)についての重量範囲を逸脱している。
【0159】
比較可能なせん断データを得るために、実施例および対応する比較例が同等の重量平均分子量(M
w)を示すようにこれらの例を製造した。各例について得られた値およびその多分散指数(PDI)を、表4に示す。
【0160】
表4:実施例および比較例の重量平均分子量(M
w)および多分散指数(PDI)
【表6】
【0161】
VI向上剤候補の評価
本発明による、比較的長鎖のマクロモノマーと比較的短鎖のマクロモノマーとの双方の混合物を含むポリマーの、せん断抵抗性における改善された効果およびせん断後のその改善された溶解性を実証するため、基油中のポリマーの、対応する添加剤組成物を製造して、対応する永久せん断損失およびせん断後の溶解性を調べた。結果を表5にまとめる。
【0162】
永久せん断損失を、DIN 51350の第6部によるKRLを使用して、1450rpm、60℃で192時間にわたって測定した。せん断後の溶解性を、目視検査により決定した。溶解性についてのさらなる第1の指標は、せん断前後のKV40値とKV−10値との比較である。低温では、該ポリマーのせん断された極性部分が会合し始め、この会合によって、KV40およびKV−10は、せん断前の値よりもせん断後の値の方が高くなる。せん断中に分子量が低下するため、通常は、KV100およびKV40もせん断後に低下する。KV40についての比較的高い値、またはさらにはKV−10でのより際立った値が見られた場合、これは、せん断後のポリマーの溶解性が既にボーダーラインにあることの指標である。したがって、溶解性が釣り合ったものとなるためには、せん断前の40℃での動粘度とせん断後の40℃での動粘度との比として定義されるK40係数が、1より大きくなる必要がある。せん断前の−10℃での動粘度とせん断後の−10℃での動粘度との比として定義されるK−10係数についても同様である。
【0163】
すべてのポリマーをNB3043に溶解させ、配合物のKV100が5.5cStとなるように添加量を調節した。さらに、KRLの保護のみを目的として、0.6%のDIパッケージ(RC9300)を加えた。該配合物の動粘度データ、PSSI100、外観およびK係数を表5に示す。
【0164】
MM−2を単独のマクロモノマーとして含む比較例3は、良好なK40係数およびK−10係数を有しており、これはせん断後の溶解性が十分であることを示す。しかし、VIは比較的低く、PSSI100値は実施例よりも高い。したがって、単独のマクロモノマーを使用した場合には、2種の異なるマクロモノマーを組み合わせて使用した場合よりも全体的な性能が低下する。
【0165】
同様の結果が、比較例6および9により得られる。さらにこれらの例では、K係数が1超であるにもかかわらず、せん断後に濁った溶液が得られ、これはせん断安定性が不十分であることを示す。これは、せん断後に不溶性の分解生成物が存在することを示す。こうした不溶性生成物の存在は、KV測定値には影響を与えない。したがってKV値は、実際に適用する際のシナリオにおける潤滑剤の性能を反映しておらず、これをVII性能の判断に用いることはできない。
【0166】
総括すると、純粋なMM−2系ポリマーは、VIが高く、せん断安定性が非常に良好であり、かつせん断後の溶解性が非常に良好である、という目標とするバランスがとれたものではない。
【0167】
MM−1を単独のマクロモノマーとして含む比較例(比較例2、5、8、11〜13)は、VIおよびせん断安定性については、MM−2系と組み合わせた場合の性能をはるかに上回る。しかしその欠点は、K40係数またはK−10係数のいずれにおいても分かるように、せん断後の溶解性である。言及されたMM−1系の例については、これらの2つの値のうち少なくとも一方が1を下回る。加えて、例5および13も、せん断後に濁る。このことは、純粋なMM−1系のポリマーについてのせん断後の溶解性は十分ではないことを示す。
【0168】
驚くべきことに、少量のMM−1をMM−2に置き換えることにより、分岐度を一定に維持しつつ、せん断後の溶解性が改善され、またVIおよびせん断安定性の性能にはわずかにしか影響が生じないことから、全体的な性能において最良のバランスがとれた系が得られることが見出された。実施例1、4、7、10、14、15および16は、純粋なMM−1系ポリマーに匹敵する高いVI値および優れたせん断安定性を示し、一方で、せん断後の溶解性についてはこれらのポリマーを上回る。このため、MM−1と少量のMM−2との混合物によるポリマーによって、VI、せん断安定性およびせん断後の溶解性における優れた性能が得られる。
【0169】
比較例17は、多量のMM−2、すなわち本発明による成分(b)についての15重量%の上限値よりも高い22重量%のMM−2を有する。比較例17は、VIが比較的低く、PSSIが比較的高い。このことは、VIおよびせん断挙動が実施例と同様には良好ではなく、バランスがとれていないことを示す。
【0170】
比較例18は、多量のMM−1、すなわち本発明による成分(a)についての35重量%の上限値よりも高い40重量%のMM−1を有する。比較例18は、VIが低く、せん断安定性が低い。
【0171】
比較例から、VIの増加、せん断安定性およびせん断後のフラグメント安定性に関するVIIのすべての要求を満たすためには、各モノマーの量が全体としてバランスがとれている必要があることが分かる。
【0172】
【表7】