【課題を解決するための手段】
【0009】
有効性の確認を目的として、交通標識には付加的な識別特徴が付与されており、それらの識別特徴を自動的かつ電子的に検査することができる。識別特徴は、例えば、ディジタル符号化された情報を含んでいる。ディジタル符号化された情報を、交通標識から、基本的には暗号化せずに提供することができるが、ディジタル符号化された情報の少なくとも一部を、例えば不正操作を困難にするために暗号化して提供することも可能である。識別特徴は、種々のやり方で提供することができ、例えば付加的な光学的な特徴として、または交通標識から対応する受信器に無線で伝送される特徴として提供することができる。すなわち、交通標識の有効性の確認または検証は、カメラ画像における交通標識の意味論的な内容の単なる視覚的な識別を超えた独立したやり方で取得される特徴に基づいて実施される。別の特徴は、特に、交通標識の所在地、有効期間、向きおよび意味論的な内容を表す情報を含んでいる。
【0010】
交通標識の内容および設置位置を検証するための本発明による方法は、少なくとも1つのカメラの1つまたは複数の画像内で交通標識を検出するステップを有する。カメラによって記録され、交通標識が識別された少なくとも1つの画像から、画像解析によって、人間にとっては視覚的に識別することができる、画像に結像された交通標識の内容が特定される。交通標識の検出、および人間にとっては視覚的に識別することができる、交通標識の内容の特定を、慣例のやり方で行うことができる。
【0011】
さらに、交通標識の設置位置が特定され、また、交通標識から提供され、かつ少なくとも交通標識の内容および設置位置を表す、人間にとっては直接的に識別することができないかまたは解釈することができないデータが取得される。「表す」という語句には、例えばデータベースからの対応する情報の取得を実現するデータによって間接的に表すことも含まれる。最後に、特定されたデータと、取得されたデータとの比較が実施される。
【0012】
交通標識の設置位置の特定を、例えば、本方法を実施する車両のナビゲーションシステムによって行うことができ、このナビゲーションシステムは、いずれにせよ、車両のその都度の現在位置を継続的に、または連続する短い時間間隔で特定する。その種のナビゲーション装置には、例えば、衛星ナビゲーション装置および/またはデッドレコニング装置が含まれると考えられる。例えば、地表上の位置を表すデータを、ディジタルマップおよびそこに含まれる交通路と照合することによって、正確な位置を求めるように、ナビゲーション装置を設計することができる。交通標識が識別されると即座に、交通標識の画像を記録したカメラの既知の光学的な特性と、交通標識の画像を記録した時点での車両の位置とから、交通標識の位置を特定することができる。
【0013】
方法の1つの態様によれば、交通標識から提供されるデータが、少なくとも1つのカメラを用いて取得される。この場合、カメラは、交通標識を識別するために使用されたカメラと同一のカメラであってよい。人間にとっては直接的に識別することができないかまたは解釈することができないデータは、例えば、交通標識の構成要素である、1次元または2次元のバイナリコードの形態で存在すると考えられる。1次元のバイナリコードの例はバーコードであり、2次元のバイナリコードの例はいわゆるQRコード(Quick Response Code)である。本発明のこの態様によれば、バーコードまたはQRコードが、交通標識の表側に取り付けられている。コードは、交通標識の内容および設置位置に関する情報、または交通標識の識別子、および交通標識に関する対応する情報が呼び出し可能に記憶されているデータベースへの参照を含んでいる。コードは、さらに、複数ある車線のうちのどの車線に対して交通標識が有効であるか、どの進行方向、またはどの認証局が交通標識を認証したかに関する情報も含むことができる。進行方向を、例えばコンパスの指示の形態で、すなわち北を基準とした角度表示の形態で、または進行方向に位置する場所の記述、例えば「フランクフルト方面」として表すことができる。
【0014】
方法の1つの態様によれば、交通標識から提供されるデータが、感光性のセンサを用いて取得される。感光性のセンサは、この場合、人間にとって可視であるスペクトルにおいて感度を有するものであってよいが、感光性のセンサが、人間にとって不可視であるスペクトルにおいて、例えば赤外線スペクトルにある光に対して感度を有するものであってもよい。交通標識には、相応の光源が備え付けられており、その光源から、符号化されたデータが、光源から送出される光の適切な変調によって伝送され、その光が感光性のセンサによって受信され、車両にて復調および復号される。とりわけ、データ伝送は赤外線スペクトルにおいて行われるので、光源によって車両のドライバの注意が逸れることが回避される。車両内に交通標識識別のために設けられているカメラが、赤外線スペクトルにおいて十分な感度を有しており、また画像記録速度が十分に高い限り、そのようなカメラを、交通標識から提供されるデータを受信するためのセンサとして使用することができる。
【0015】
方法の前述の態様の1つの変形例では、交通標識の光源が、マトリクスの適切な符号化によってデータを伝送するマトリクス光源である。マトリクスの大きさに応じて、マトリクスの連続的な制御によって、より多くのデータを、連続する異なるパターンの表示のために伝送することができる。マトリクスは、方法のこの変形例でも、可視スペクトルまたは赤外線スペクトルにある光を送出することができる。この場合、相応の感光性のセンサは、少なくとも、マトリクスの個々の素子を区別可能に検出できるものでなければならない。方法のこの変形例でも、車両内に交通標識識別のために設けられているカメラが、交通標識から送出される光スペクトルにおいて十分な感度を有しており、また連続的なパターンが逐次的に伝送される場合には、画像記録速度が十分に高い限り、そのようなカメラを検出に使用することができる。
【0016】
方法の1つの態様によれば、交通標識から提供されるデータが、無線受信器を用いて取得される。適切な無線区間は、例えば、IEEE802.11規格で規定されており、またWLANまたはWiFi(登録商標)の名称で公知である伝送システムのヴァリエーションであるが、IEEE802.15.1規格で規定されている、Bluetoothの名称で公知である伝送システムのヴァリエーションであってもよい。他の無線伝送システム、とりわけZ−WaveまたはZigBeeの名称で公知である通信規格も、到達距離およびデータ伝送速度ならびにコネクションの確立に必要とされる時間が十分である限りは、同様に使用することができる。交通標識には、この場合、相応の送信器が備え付けられており、また車両には、適切な受信器が装備されている。
【0017】
交通標識から取得された情報は、交通標識の一義的な識別子、内容および設置位置の代わりに、またはそれらの他に、検証にとって重要なデータに関するハッシュ値を含むことができる。ハッシュ値のみが交通標識から提供される場合には、このハッシュ値を、データベースから取得される、交通標識の地理的な位置に対して有効なハッシュ値と比較することができる。ハッシュ値の使用は、データベースから取得されて比較に使用されるデータの量を低減することができる。
【0018】
データベースへのアクセスが行われる本方法の態様では、交通標識から取得された情報を比較するためのデータを、基本的には、車両内部または車両外部のデータベースに記憶することができる。データベースには、交通標識から取得された情報、または識別された交通標識の地理的な位置を使用して、アクセスすることができる。
【0019】
方法の1つの態様によれば、交通標識から取得されるデータの少なくとも一部が、符号化に加えて暗号化もされている。暗号化を、交通標識から提供されるデータの不正操作を困難にするために使用することができる。その種の不正操作は、例えば、ある場所から盗まれて別の場所に設置された交通標識が、その新たな設置位置に応じてデータを提供するようにするためには必要になると考えられる。
【0020】
方法のこの態様の1つの実施形態では、交通標識から提供されたデータの内容に関して、同様に交通標識から提供される付加的情報の構成要素であるハッシュ値が求められる。ハッシュ値は、例えば、信頼に足る公式の部署にて、秘密鍵を用いて作成される。交通標識の内容を検査するために、検査を行うユニットには、例えば交通標識を識別して検査を行おうとする車両には、暗号化されたハッシュ値を復号することができるようにするために、秘密鍵に対応する公開鍵が既知でなくてはならない。
【0021】
1つまたは複数の公開鍵を、車両における相応のメモリまたは相応のデータベースに記憶することができる。車両に記憶されている公開鍵の、検査を行うユニットへの配布、または車両に記憶されている公開鍵の、検査を行うユニットにおける更新を、例えば、所定の時間に毎日行うことができ、例えば車両が無線ネットワークの到達範囲内に入ったときや、例えば車両が車両所有者のWLANネットワークの到達範囲内にある住居のガレージに停車されたときに行うことができる。伝送すべき、また記憶すべき公開鍵の数を少数に維持するために、特定の領域に関する鍵だけ、または予定されているルートに関する鍵だけをロードすることもできる。この場合、ロードされる鍵の対象となる領域を動的に、過去に行われた走行の分析によって、また種々のユーザに関して適合させることができる。
【0022】
しかしながら、公開鍵を、状況に応じて必要時にロードすることもでき、例えば、交通標識が識別された時にロードすることもできる。この場合、特定の、今まさに識別された交通標識に関する鍵をロードすることもできるし、または識別された交通標識の近傍に位置する交通標識に関する鍵が付加的にロードされる。これによって、車両には設けられていないデータベースまたはサーバとのコネクションの確立に関するプロセスの数を低減することができ、その際に、車両におけるメモリのサイズに対して非常に高い要求が課されることがない。
【0023】
方法の1つの態様に関して既に上記で言及したように、交通標識から提供されるデータは、交通標識の設置位置および内容を呼び出すことができるデータベースへのリンクを含むことができる。好適には、交通標識から提供されるデータは、交通標識の一義的な識別子も含んでいる。
【0024】
方法の1つの態様によれば、交通標識の周囲に存在する、視覚的に識別することができるランドマークと、データベース内の対応する画像との照合によって、設置位置の特定が行われる。この場合、交通標識から、データベースへの対応リンクが提供され、このリンクを用いて、交通標識の周囲の1つまたは複数の画像を、データベースから取得することができる。ランドマークとは、好適には、顕著な変化が見込まれないか、または非常に緩慢にまたは稀にしか変化せず、またカメラによって記録された画像において容易に再識別することができる物体または地形的な特徴である。ランドマークは、道路に永続的に付け加えられたマーキングを含むことができる。この場合、交通標識の識別に使用される車両のカメラは、記録された画像が、比較に適した十分に大きい、交通標識の周囲の領域を含むように構成されている。代わりに、比較に適した画像を提供する、1つまたは複数の別のカメラを車両に設けることができる。それらのカメラを、例えば、自律的もしくは半自律的または自動的な走行モードに関して、車両の周囲を検出するためにも設けることができる。
【0025】
本発明による方法の1つの態様によれば、2つの交通標識間の区間の長さが、それぞれ次の交通標識を検証するために使用される。この場合、車両における交通標識識別が、先ず1つの交通標識を識別し、その交通標識を例えば、方法の前述の態様のうちの1つに従い検証する。検証の過程において、次の交通標識までの区間の長さ、または交通標識の設置位置および交通標識の内容が車両に伝送される。次の交通標識が識別されると、先ず、最後に交通標識を識別してから通過した区間が、伝送された値またはその交通標識の設置位置から特定された値と一致するか否かが検査される。区間の長さを特定するために、いずれにせよ継続的に動作する、車両の走行距離計を使用することができる。この態様では、固定的に設置されている2つの交通標識間に、一時的に交通標識が設置される場合には、それらの一時的な交通標識自体が、自身が単に一時的に設定されたものであって、その種の検証に関しては無視されるべきであることを表す情報を伝送することができる。
【0026】
本発明によれば、特定されたデータと取得されたデータとが一致する場合には、交通標識の内容が、車両のドライバに情報提供のために表示されるかまたは報知される。代わりにまたは加えて、交通標識の内容を、車両制御を行うシステムに供給することができる。一致しない場合には、別の自動的な妥当性検査またはドライバへの問合せ、または車両外部のデータベースへの対応する通知を行うことができる。
【0027】
方法の1つの態様によれば、移動する交通標識または一時的に設置された交通標識から提供されるデータから、交通標識の特別な特性に関する情報を通知する情報が抽出される。一時的に設置された交通標識の場合には、それらの付加的な情報を例えば、検証を目的としたデータベースへのアクセスの試みが失敗したとしても、交通標識を信頼に足るものとして分類するために使用することができる。そのようなアクセスの試みの失敗は、例えば、データベースとのコネクションを確立することができなかった場合に生じる。しかしながらまた、データベースへのアクセスの試みの失敗は、交通標識に関して、例えばその交通標識を設置した際に1つまたは複数の対応する画像を記録してデータベースに保存することが忘れられていたため、比較を目的とした周囲の画像を取得することができない場合にも生じると考えられる。
【0028】
この態様では、データベースへのアクセスが成功した後に完全な検証が行われた場合よりも低い信頼度を割り当てることができる。より低い信頼度は、例えば、自律的または自動的な走行にとって重要な、交通標識の内容の考慮の範囲に影響を及ぼす可能性があり、また例えば、車両に関する制御をドライバに引き渡す可能性がある。
【0029】
移動する交通標識では、例えば交通標識の変化する位置が交通標識から伝送されるデータにおいて考慮される場合には、交通標識から提供されるデータを、時間と共に変更してもよい。交通標識の場合、通常は、固定の設置位置を前提としているので、時間にわたり変化する位置データはエラーと理解される可能性があり、また交通標識は無効なものと解釈される可能性がある。移動する交通標識では、その移動する交通標識の特別な特性に関する対応する情報が提供されるか、またはその都度最新の位置データが提供されるので、位置データが時間にわたり変化しても、自動的に、その交通標識が無効であると解釈されることはなくなる。
【0030】
交通標識の周囲の画像と、データベースから取得された対応する画像との照合による検証は、移動する交通標識の場合にはほぼ不可能である。データベースへの対応する問合せは、ほぼ毎回失敗することになる。この場合でも、移動する交通標識が自身の特別な特性に関する対応する情報を提供するので、画像比較が失敗に終わっても、それによって自動的に、交通標識が無効であると解釈されることはない。しかしながら、この場合でも、交通標識に低い信頼度を対応付けることができ、これは、上記で説明した、一時的に設置された交通標識の例と同様に、相応の処理オプションを与える。
【0031】
本方法を実施するための装置は、少なくとも1つのカメラと、メインメモリおよび不揮発性メモリを備えた少なくとも1つのマイクロプロセッサと、地表上の現在位置を特定するための少なくとも1つの装置と、を備えている。不揮発性メモリは、コンピュータプログラム命令を有しており、このコンピュータプログラム命令は、マイクロプロセッサによってメインメモリにおいて実行されると、本方法の1つまたは複数の態様の方法ステップを実行する。
【0032】
本方法の幾つかの態様を実施するために、装置は、交通標識から提供されるデータを受信することができる、1つまたは複数の感光性のセンサおよび/または1つまたは複数の無線受信器をさらに備えている。
【0033】
ここで、本方法を実施するための装置は、必ずしも単一の機器で実現する必要はない。方法の個々の作業ステップを、データ伝送のためのネットワークによって接続されている別個の機器で実行することも可能であり、この場合には、ネットワークによって接続されており、方法の個々の作業ステップを実行する各装置が全体で1つの装置を形成する。この場合、種々の方法ステップ、例えば交通標識の設置位置の特定および交通標識の内容の特定を並行して、また必要に応じて、接続されている異なる機器で実行することができる。
【0034】
本方法によって検証することができる交通標識は、その物理的な存在の他に、すなわち公知のやり方で種々の材料を使用して、対象物である「交通標識」に調和された形状および色の他に、少なくとも交通標識の内容および設置位置を表し、また人間にとっては直接的に識別または解釈することができないデータを提供するための少なくとも1つの装置を備えている。データを提供するための装置を、その形相による静的な形態で、例えばバーコードまたはQRコードの形態でデータを提供するように設計することができる。しかしながら、データを提供するための装置を、時間的に連続する一連の信号としてデータを提供するように、例えば変調された光信号または無線信号の形態でデータを提供するように設計することができる。この場合、データの完全な検出のためには、一連のすべての信号が特定の期間にわたり検出されなければならない。
【0035】
交通標識に関して、データの提供が持続的に中断せずに行われるか否か、または、要求に応じてまた必要に応じてコネクション確立に関するプロトコルの実行後に初めて提供が行われるか否かは、重要ではない。
【0036】
本発明によるシステムは、少なくとも1つの、本方法によって検証することができる交通標識と、本方法の1つまたは複数の態様を実施するための、車両に配置されている少なくとも1つの装置と、を含む。
【0037】
方法および装置は、有利には、周囲からの信頼に足る情報に依存する、自律的または自動的に走行する車両を、公知の光学的な手段を用いて識別された交通標識の有効性を付加的に検証できるようにすることに適している。ここでは、特に、交通標識の内容および設置位置を検証することができる。この検証によって、自律的または自動的に走行するシステムには、しかしながらまた人間のドライバにも、表示されている標識または識別された標識を信頼することができる保証が提供される。この場合、認証のエラー、または失敗に終わった認証が、必ずしも不正操作を示唆する必要はない。しかしながら、認証または検証のエラーは、自律的または自動的に走行する車両の、識別された交通標識に対する反応に影響を及ぼす可能性がある。例えば、認証されなかった標識の内容が現時点の走行状況と余りに大きく矛盾する場合、例えば30km/hの制限速度を示す交通標識がアウトバーンの走行時に識別された場合には、自律的または自動的に走行する車両自体で、認証されなかった標識を信用するか否かを判断することができる。本方法に従い検証されない交通標識では、そのような場合以外は休止状態にある別のセンサがスイッチオンされること、または加速度、制動過程の強度、安全距離などについての設定値を、より大きい安全マージンが得られる値にセットすることも考えられる。
【0038】
以下では、本発明の態様を、図面を参照しながら説明する。