特許第6813655号(P6813655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6813655センサを保持するための固定装置並びにセンサの固定及び調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6813655
(24)【登録日】2020年12月21日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】センサを保持するための固定装置並びにセンサの固定及び調整方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 11/30 20060101AFI20201228BHJP
【FI】
   G01D11/30 S
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-231227(P2019-231227)
(22)【出願日】2019年12月23日
(65)【公開番号】特開2020-118680(P2020-118680A)
(43)【公開日】2020年8月6日
【審査請求日】2020年2月28日
(31)【優先権主張番号】10 2019 101 273.2
(32)【優先日】2019年1月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トルステン ノイハウザー
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル クルーガー
【審査官】 細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−042081(JP,A)
【文献】 実開昭57−054033(JP,U)
【文献】 特開平08−014949(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/047105(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 11/24,11/30
G12B 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動位置にセンサ(S)を保持するための固定装置(1)であって、
第1の貫通孔(2a)を備え且つホルダに固定可能な本体(2)と、
第2の貫通孔(3a)を備え且つ第1及び第2の位置と保持位置との間でスライドできるように前記本体内(2)に可動に配置されている少なくとも1つの保持要素(3)と
を含み、前記第1の位置においては前記第1及び第2の貫通孔(2a及び3a)が互いに一直線にならずに位置合わせされ、前記第2の位置においては前記第1及び第2の貫通孔(2a及び3a)が互いに一直線になって位置合わせされ、前記保持位置では前記保持要素(3)が前記第1及び第2の貫通孔(2a及び3a)の内部に配置可能なセンサ(2)を前記本体(2)に押し付けるような固定装置(1)において、
前記第2の貫通孔(3a)には半径方向に内側へ向き且つ前記第2の貫通孔(3a)の中心軸に対して傾いた調整要素(4)が設けられ、該調整要素(4)が前記センサ(S)の外側面(AF)と噛み合っており、その噛み合いは、前記保持要素(3)が前記第2の位置と前記保持位置との間に存在する調整位置にあるときに前記センサ(S)がセンサ中心軸(SA)を中心として回転可能であり且つ該センサ(S)が回転すると前記調整要素(4)が中心軸(MA)に沿って該センサ(S)を移動させる、というような噛み合いであることを特徴とする固定装置(1)。
【請求項2】
前記センサ(S)が、前記調整要素(4)が噛み込む雄ネジを前記外側面(AF)に有する測定用センサ、又は円柱状のセンサを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の固定装置(1)。
【請求項3】
前記調整要素(4)が、前記第2の貫通孔(3a)の内面の円周の一部(3b)を占める不連続な数本の部分ネジ溝から成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の固定装置(1)。
【請求項4】
前記調整要素(4)が、前記第2の貫通孔(3a)の内面のうち前記第1の位置よりも前記第2の位置に近い側にあることを特徴とする請求項3に記載の固定装置(1)。
【請求項5】
前記部分ネジ溝の高さが、ネジ歯の断面の頂点とそれに対向する前記第2の貫通孔(3a)の内面との間の距離(A)が前記第1の貫通孔(2a)の直径(d)と一致するように、選ばれていることを特徴とする請求項3又は4に記載の固定装置(1)。
【請求項6】
前記保持要素(3)を前記第1の位置へ押す少なくとも1つのバネ(5)が前記本体(2)に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の固定装置(1)。
【請求項7】
固定要素が設けられ、前記保持要素(3)が前記保持位置にあるときに該固定要素が前記保持要素を前記本体(3)に螺着されるか、あるいは前記本体(2)及び前記保持要素(3)を貫通して前記センサ(S)に圧力をかけることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の固定装置(1)。
【請求項8】
前記固定要素がネジを含んでいることを特徴とする請求項7に記載の固定装置(1)。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の固定装置(1)を用いて作動位置においてセンサ(S)を固定及び調整する方法であって、
前記保持要素(3)を第2の位置へスライドさせる手順、
前記第1及び第2の貫通孔(2a及び3a)を通して前記センサ(S)を前記固定装置(1)に差し込む手順、
前記保持要素(3)を前記調整位置へスライドさせることで前記調整要素(4)を前記センサ(S)の外側面(AF)と噛み合わせる手順、
前記センサ(S)を前記作動位置に微調整するために該センサ(S)をセンサ中心軸(SA)を中心として回転させる手順、及び、
前記保持要素(3)を前記保持位置へスライドさせることで、該保持要素(3)が前記センサ(S)を前記本体(2)に押し付けるようにする手順
を含んでいることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブルに記載の、作動位置にセンサを保持するための固定装置、並びにセンサの固定及び調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、物理的又は化学的な量を検出する多くの様々な応用でセンサが用いられている。センサは作動位置に取り付けられる。そのためにはセンサを保持する固定装置が必要となる。
【0003】
特許文献1から、本願請求項1のプレアンブルに記載の特徴に適合した固定装置が知られている。特にこの固定装置は貫通開口を有する固定ベースを含んでおり、これを用いて、貫通開口に差し込まれたセンサを作動位置に取り付けることができる。固定ベースは貫通穴を有する固定用スライダを備えている。該スライダは第1の位置と第2の位置の間で移動可能である。
【0004】
固定用スライダを第1の位置へ移動させると、固定ベースの貫通開口と固定用スライダの貫通穴が互いに一直線になって位置合あわせされるため、貫通開口と貫通穴にセンサを挿通することができる。固定用スライダはバネの弾性力により第2の位置へ移動することができる。これにより固定用スライダがセンサを固定ベースに押し付け、その結果、センサは固定装置によって作動位置に保持される。
【0005】
前述した固定装置には、例えば固定装置がセンサを所要の作動位置からずれた位置又は間隔をあけた位置に保持しているとき、固定装置内でそれ以上センサの微調整ができないという欠点がある。つまり、固定装置がセンサをその検出対象領域に近すぎる位置又は該領域から遠すぎる位置に位置決めしてしまったら、固定装置を緩めて新たに固定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP 2 985 573 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
故に本発明の課題は、請求項1のプレアンブルに記載の特徴に適合した、作動位置にセンサを保持するための固定装置を、該固定装置内でのセンサの微調整ができるように改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は本発明により請求項1に記載の特徴を有する固定装置を用いて解決される。
【0009】
本固定装置は、第1の貫通孔を備え且つホルダに固定可能な本体と、第2の貫通孔を備え且つ第1及び第2の位置と保持位置との間でスライドできるように前記本体内に可動に配置されている少なくとも1つの保持要素とを含み、第1の位置においては第1及び第2の貫通孔が互いに一直線にならずに位置合わせされ、第2の位置においては第1及び第2の貫通孔が互いに一直線になって位置合わせされ、保持位置では保持要素が第1及び第2の貫通孔の内部に配置可能なセンサを本体に押し付け、第2の貫通孔には半径方向に内側へ向き且つ第2の貫通孔の中心軸に対して傾いた調整要素が設けられ、該調整要素がセンサの外側面と噛み合っており、その噛み合いは、保持要素が第2の位置と保持位置との間に存在する調整位置にあるときにセンサがセンサ中心軸を中心として回転可能であり且つ該センサが回転すると調整要素が中心軸に沿ってセンサを移動させる、というような噛み合いである。
【0010】
このようにすれば、調整位置においてセンサを簡単に且つ工具なしで回転させることができ、その際に該センサの位置が微調整される、という利点が得られる。特に、調整要素が第2の貫通孔の中心軸に対して傾いていることから、該調整要素がスクリューコンベアのように作用してセンサを一方又は他方の方向にスライドさせる。
【0011】
好ましい一実施例では、前記センサは、調整要素が噛み込む雄ネジを外側面に有する測定用センサ、又は円柱状のセンサを含んでいる。これにより正確な調整が可能になる。なぜなら、調整要素はセンサの雄ネジに沿って案内されるからである。外側面に雄ネジがない円柱状のセンサの場合、センサの回転時に該センサの中心軸に沿って該センサをスライドさせるために、その外側面を変形可能な材料で形成して該外側面に調整要素が噛み込むことができるようにすることが好ましい。特に前記材料はプラスチックから成る。
【0012】
また、好ましい一実施例では、調整要素が、第2の貫通孔の内面の円周の一部を占める不連続な数本の部分ネジ溝から成り、その結果、固定装置内での調整要素の製造又は設置が保持要素の一部領域に限定される。このようにすれば、保持要素が第2の位置にあるときには調整要素すなわち部分ネジ溝が第1の貫通孔よりも沈み込むような形で第1及び第2の貫通孔が互いに中心を位置合わせされた状態になる、という利点が得られる。これにより、本センサは、邪魔になり得る外形により妨害されることなく両方の貫通孔に挿通可能になる。有利な形態では、調整要素が、第2の貫通孔の内面のうち第1の位置よりも第2の位置に近い側にある。
【0013】
別の好ましい実施例では、前記部分ネジ溝の高さが、ネジ歯の断面の頂点とそれに対向する第2の貫通孔の内面との間の距離が第1の貫通孔の直径と一致するように、選ばれている。このようにすれば、保持要素を第2の位置にスライドさせたときに調整要素を第1の貫通孔よりも完全に沈み込ませることができるため、センサが第1及び第2の貫通孔に挿通される際に邪魔な外形により妨害されることがない。
【0014】
更にまた、好ましい一実施形態では保持要素を第1の位置へ押す少なくとも1つのバネが本体に設けられる。前記バネは平バネ又は平たく形成された波形バネとして構成されていることが好ましい。
【0015】
特に、好ましい一実施例では固定要素が設けられ、保持要素が保持位置にあるときに該固定要素が保持要素を本体内で支持するか、本体に対する保持要素の予圧を追加的に高めるか、あるいは本体及び保持要素を貫通してセンサに圧力をかける。このようにすれば保持要素が過って保持位置から押し出されることが防止される。固定要素はネジ、特に止めネジを含んでいることが好ましい。
【0016】
本発明の更なる課題は、固定装置を用いて作動位置においてセンサを固定及び調整する方法であって、固定装置内でのセンサの微調整を可能にする方法を提供することである。
【0017】
この課題は本発明により請求項9に記載の特徴を有する方法を用いて解決される。該方法は、前述の固定装置を用いて作動位置においてセンサを固定及び調整する方法であって、
保持要素を第1の位置へスライドさせる手順、
第1及び第2の貫通孔を通してセンサを固定装置に差し込む手順、
保持要素を第3の位置へスライドさせることで調整要素をセンサの外側面と噛み合わせる手順、
センサを作動位置に微調整するために該センサをその中心軸を中心として回転させる手順、及び、
保持要素を第2の位置へスライドさせることで、該保持要素がセンサを本体に押し付けるようにする手順
を含む。
【0018】
本発明に係る固定装置及び方法は同じようなやり方で更なる特徴を加えながら構成することが可能であり、それにより同様の効果を奏する。そうした特徴の模範例は本願の独立請求項に続く従属請求項に記載されているが、それに限定されるものではない。
【0019】
以下、本発明について、更なる利点及び特徴をも考慮しつつ、模範的な実施形態に基づき、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る固定装置の好ましい第1の実施例をセンサとともに示す概略斜視図。
図2】第1の実施例をセンサなしで示す概略斜視図。
図3】第1の実施例をセンサなしで示す別の概略斜視図。
図4】第1の実施例の斜視断面図。
図5】第1の実施例の横断面図。
図6】本発明に係る固定装置の好ましい第2の実施例をセンサとともに示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明の好ましい第1の実施例による固定装置1にセンサSを取り付けたものを示す概略斜視図である。固定装置1は本体2を含むが、図示した第1の実施例ではその本体2が2つのフランジ部2bを備えている。この2つのフランジ部2bを介して本体2、つまり固定装置1は、好ましくは位置が固定されたホルダ(図示せず)に固定可能であり、その結果センサSが作動位置にくる。もっとも、本体2を角石状に構成してホルダに例えば接着又は溶接する場合にはフランジ部2bはなくてもよい。
【0022】
更に固定装置1は本体2の凹部内に配置された保持要素3を含んでいる。
【0023】
図2はセンサSのない状態で第1の実施例を示す斜視図であるが、この図に描いたように本体2は第1の貫通孔2aを備えている。保持要素3も同様に第2の貫通孔3aを備えており、図2に描いたような第1の位置と図3に描いたような第2の位置との間でスライド可能な形で本体2内に可動に配置されている。
【0024】
保持要素3が第1の位置にあるとき、第1及び第2の貫通孔2a及び3aは互いに一直線にならずに位置合わせされている。これは、保持要素3が第1の位置にあるときにはセンサSを固定装置1に差し込むことができないということを意味する。保持要素3が図3に描いたように第2の位置にあるとき、第1及び第2の貫通孔2a及び3aは互いに一直線になって位置合わせされているため、保持要素3がこの第2の位置にあるときにはセンサSを固定装置1内に差し込む又は抜き取ることができる。
【0025】
また、保持要素3は図1に描いたような保持位置へスライド可能である。この位置では保持要素3が第1及び第2の貫通孔2a及び3a内に配置可能なセンサSを本体2に押し付ける。その結果、センサSは作動位置に配置される。
【0026】
本発明に従い、第2の貫通孔3aには半径方向に内側へ向き且つ第2の貫通孔3aの中心軸MAに対して傾いた調整要素4が設けられている。調整要素は図1に示したようなセンサSの外側面AFと噛み合っている。この噛み合いは、保持要素3が第2の位置と保持位置との間に存在する調整位置にあるときにセンサSがセンサ中心軸SAを中心として回転可能であり且つ該センサSが回転すると調整要素4が中心軸MAに沿ってセンサSを移動させる、というような噛み合いである。
【0027】
言い換えると、保持要素3が調整位置にあるときには、調整要素4がセンサSの外側面AFに噛み込んだ状態になるまで第1の貫通孔2a内に突出するため、センサSは固定装置1から外れない。一方、調整要素4はセンサSの外側面AFとあまり強く噛み合ってはいないため、センサSは保持要素3によって本体2に押し付けられてはいない。従ってセンサSは回転可能なままである。
【0028】
好ましくは、センサSが測定用センサであり、その外側面FAに雄ネジを備えている。調整要素4はセンサSの外側面FAの雄ネジに噛み込み、その結果、センサSの回転によって調整要素4と雄ネジが協働してセンサSをスライドさせる。従って、固定装置1に差し込まれたセンサSがまだ最適な作動位置にないとき、すなわちセンサSが検出対象領域からまだ遠すぎる又は該領域に近すぎるときには、センサSを回転させればよい。すると、センサSが調整要素4の回転により第2の貫通孔3aの中心軸MAに沿って一方又は他方の方向に動かされる。これにより、最適な作動位置を取るためにセンサSを固定装置1内で調整することができる。
【0029】
センサSが測定用ではなく円柱状のセンサである場合、外側面AFには雄ネジがないため、センサSの外側面AFは変形可能な材料で形成される。このようにすれば、調整要素4はセンサSの変形可能な外側面AFに噛み込み、センサSの回転の際に前述の働きをすることができる。
【0030】
調整後は保持要素3を保持位置にスライドさせることができる。その結果、保持要素3が調整要素4を介してセンサSを本体2に押し付け、該センサSを作動位置で確実に把持する。
【0031】
図4は固定装置1の第1の実施例を第2の貫通孔3の中心軸MAに沿って切断した斜視断面図である。保持要素3は第2の位置にあるため、第1及び第2の貫通孔2a及び3aは互いに一直線になって位置合わせされている。調整要素4は、好ましくは、第2の貫通孔3aの内面の円周の一部3bを占める不連続な数本の部分ネジ溝から成る。前記一部3bは円周の約1/4を占めるものとすることができる。
【0032】
調整要素4、つまり部分ネジ溝は、第2の貫通孔3aの内面のうち第1の位置よりも第2の位置に近い側にある。すなわち、調整要素4は、第1の貫通孔2aの内面において、保持要素3が保持位置にあるときに該保持要素3によりセンサSが押し付けられる側とは反対側に設けられている。このようにすると、調整要素4は本体2に対するセンサSの押圧を促進するだけでなく、センサSが第2の貫通孔3aの中心軸MAに沿って相対的に移動することを防止する。これは、調整要素4がセンサSの外側面AFに噛み込んでいるからである。
【0033】
また、調整要素4の拡大詳細図で示したように、調整要素4、つまり部分ネジ溝の高さhは、ネジ歯の断面の頂点とそれに対向する第2の貫通孔3aの内面との間の距離Aが第1の貫通孔2aの直径dと一致するように選ばれている。
【0034】
言い換えると、調整要素4は、保持要素3が第2の位置にスライドしているときには第1の貫通孔2aよりも沈み込むように配置されている。このようにすれば、センサSが第1及び第2の貫通孔2a及び3aを通じて固定装置1に挿通されるときに、調整要素4が邪魔な外形を成さない。保持要素3が保持位置にスライドされると、調整要素4がセンサSの外側面AFに噛み込み、センサSを本体2の第1の貫通孔2aの内面に追加的に押し付ける。
【0035】
保持要素3が調整位置にあると、調整要素4はセンサSがもはや引き抜き不能になるような程度まで第1の貫通孔2aの内部へ突出する。
【0036】
また、調整要素4の傾きは、該傾きが第2の貫通孔3aの中心軸MAよりも小さくなればなるほどより微細にセンサSの調整ができるように選ばれている。
【0037】
更に本体2は少なくとも1つのバネ5を備えている。このバネ5は保持要素3を第1の位置へ押すように本体2内に配置されている。バネ5は好ましくは平バネ又は平たく形成された波形バネとして構成され、保持要素3の下に配置されているため、保持要素3には弾性負荷がかかっている。そのため、保持要素3を第2の位置へスライドさせるには保持要素3をバネ5の弾性力に逆らって押さなければならない。
【0038】
図5は固定装置1の第1の実施例を第2の貫通孔2aの中心軸MAに垂直な面に沿って切断した断面図であるが、この図に示したように、保持要素3が可動に配置された本体2の凹部の内面には角部2cが設けられている。この角部2cは半径方向に内方へ向いており、保持要素3が第1の位置にあるとき、該角部2cはそれに対応して保持要素3に設けられた爪3cと接触している。このようにすれば、保持要素3がバネ5の弾性力で本体2から押し出されることなく本体2内に留まることが確実になる。
【0039】
また、図5に明らかに示したように、調整要素4は、前述のように、保持要素3が第2の位置にあるときに第1の貫通孔2aと第2の貫通孔3a(調整要素4を含む)が互いに一直線になって位置合わせされ、その結果、センサSが邪魔されずに固定装置1内へ差し込むことができるように構成されている。
【0040】
調整要素4のネジ歯の断面の頂点は第2の貫通孔3aの内周を補っている。保持要素3がセンサSの導入後に解放されると、バネ5が保持要素3を第1の位置へ押し戻す。その結果、保持要素3は調整要素4とともにセンサSを第1の貫通孔2aの内面ひいては本体2に押し付け、センサSを作動位置に保持する。
【0041】
すなわち、作動位置におけるセンサSの固定及び調整は以下のように行われる。まず保持要素3を第1の位置からバネ5の弾性力に逆らって第2の位置へ向けて押す。これにより、第1及び第2の貫通孔2a及び3aが互いに一直線になって位置合わせされる。次にセンサSを第1及び第2の貫通孔2a及び3aに挿通する。
【0042】
その後、保持要素3をバネ5の弾性力に逆らって調整位置へスライドする。ここで、第2の位置と保持位置との間には調整位置がある。調整位置では第1及び第2の貫通孔2a及び3aがもはや一直線に並ばなくなるまで調整要素4が第1の貫通孔2aの内側に突出するため、センサSはもはや固定装置1から外れることができなくなるが、保持要素3はまだセンサSを本体2に押し付けていない。そのためセンサSは、保持要素3がこの調整位置にあるときにはまだ回転可能である。
【0043】
センサSがまだ最適な作動位置になければ、センサ中心軸SAを中心としてセンサSを回転させることでセンサSの位置を微調整する。このとき調整要素4はスクリューコンベアのように作用し、センサ中心軸SAを中心としたセンサSの回転方向に応じてセンサSを第2の貫通孔3aの中心軸MAに沿ってスライドさせる。その結果、センサSの検出対象領域までの距離が連続的に非常に微細な間隔で近づく又は遠ざかるようにセンサSが移動する。
【0044】
微調整が終了したら保持要素3を保持位置へスライドさせる。その結果、保持要素3がバネ5の弾性力によってセンサSを本体2に押し付け、調整要素4によってセンサSを固定装置1内で設定位置に保持する。
【0045】
図6は固定装置1の第2の好ましい実施例を概略的に示している。第2の実施例では、ホルダへの固定装置1の取り付けに利用できるフランジ部2bが固定装置1の本体2に設けられていない。
【0046】
本実施例ではセンサSをホルダ金具HWに取り付けるために2つの固定装置1が用いられる。
【0047】
このようにすれば、ホルダ金具HWにセンサSを取り付けるために2つのナットをホルダ金具HWの別々の側からセンサSに螺着するという公知の方法を使わずに済む。
【0048】
第2の実施例の各固定装置1は前述した第1の貫通孔2aを有する本体2と前述した第2の貫通孔3aを有する保持要素3とを含む。保持要素3は本体2内に可動に配置されている。
【0049】
つまり言い換えれば、フランジ部2bを除くと第2の実施例の固定装置1は第1の実施例の固定装置1と違いはない。従って、既に説明したのと同じやり方でセンサSを図示した2つの固定装置1に差し込み、ホルダ金具HWに取り付けることができる。当然ながら、今の場合、まず一方の固定装置1をホルダ金具HWの一方の側でセンサSに取り付け、次に他方の固定装置1をホルダ金具HWの他方の側で取り付ける必要がある。
【0050】
その後、一方の固定装置1を用いて最適な作動位置を設定することによりセンサSの微調整を達成できる。その際、第2の固定装置1は微調整されたセンサSをホルダ金具HWへ取り付けるために用いられる。
【0051】
迅速な取り付けのため、好ましくは、固定装置1の第2の実施例では2つの保持要素3を本体2の対向する両側に設ける。そのため、両方の保持要素3を同時に押すことで固定装置1を素早くセンサSに装着できる。ここで、2つの保持要素3の一方にはバネで予め負荷をかけてあるため、バネによる負荷のかかった保持要素3を押すことにより両方の保持要素3aの第2の貫通孔3aが第1の貫通孔2aと位置合わせされる。なお、弾性負荷のかかっていない保持要素3は受動的に一緒に押される。
【0052】
あるいは、両方の保持要素3に対称的にそれぞれ予めバネで負荷をかけておくことで、両方の保持要素3が同じ強度で押圧されるようにしてもよい。
【0053】
更に、固定装置1の第1及び第2の実施例に対し、保持要素3を本体2へ押し付けることで該保持要素3を該本体2に対して追加的に固定するような固定要素(図示せず)が特に設けられる。そのために、保持要素3を通って本体2の方向へ向かうネジ通路が、第2の貫通孔3aに加えて、該第2の貫通孔3aの中心軸MAに垂直に設けられる。
【0054】
固定要素はネジ通路を通って、つまり保持要素3を通って本体2の表面に螺入される。その結果、保持要素3は本体2上でも支えられる。このようにすれば、固定装置1内のセンサSが衝撃及び振動に非常に強くなるため、該センサSがその調整済みの作動位置からずれることはできなくなる。
【0055】
好ましくは、横方向に本体2を貫通するネジ通路と保持要素3内の長穴とを設けることができる。そして、保持要素3が保持位置にあるときに固定要素、例えばネジ、特に止めネジを本体2に螺入させると、該ネジが本体2を貫通し、保持要素3の長穴を可動に通り抜けてセンサSを押すようにすることができる。このようにしても調整済みの作動位置におけるセンサSの耐衝撃性及び耐振動性が改善される。
【0056】
好ましくは、本体2と保持要素3を異なる材料で作製することで、センサSに対して異なる摩擦作用を生じさせる。この場合、柔らかい材料(例えばプラスチック)から成る調整要素4を第2の貫通孔3aの内面に塗布する(特に噴霧又は接着する)ことができる。このようにすれば保持要素3の製造が容易になる。
【符号の説明】
【0057】
1…固定装置
2…本体
2a…第1の貫通孔
2b…フランジ部
2c…エッジ
3…保持要素
3a…第2の貫通孔
3b…第2の貫通孔の円周の一部
3c…爪
4…調整要素
5…バネ
A…距離
AF…センサの外側面
d…第1の貫通孔の直径
h…部分ネジ溝の高さ
HW…ホルダ金具
MA…第2の貫通孔の中心軸
S…センサ
SA…センサ中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6