特許第6813712号(P6813712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6813712グルココルチコイド受容体作動薬及びそのイムノコンジュゲート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6813712
(24)【登録日】2020年12月21日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】グルココルチコイド受容体作動薬及びそのイムノコンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20201228BHJP
   A61K 31/665 20060101ALI20201228BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20201228BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20201228BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20201228BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20201228BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20201228BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20201228BHJP
【FI】
   A61K47/68
   A61K31/665
   A61K39/395 UZNA
   A61K39/395 L
   A61P43/00 111
   A61P43/00 121
   A61P43/00 123
   A61P17/00
   A61P29/00
   A61P19/02
   !C07K16/28
【請求項の数】5
【全頁数】55
(21)【出願番号】特願2020-512845(P2020-512845)
(86)(22)【出願日】2018年11月29日
(65)【公表番号】特表2021-501124(P2021-501124A)
(43)【公表日】2021年1月14日
(86)【国際出願番号】IB2018059482
(87)【国際公開番号】WO2019106609
(87)【国際公開日】20190606
【審査請求日】2020年4月30日
(31)【優先権主張番号】62/593,776
(32)【優先日】2017年12月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/595,054
(32)【優先日】2017年12月5日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512212195
【氏名又は名称】アッヴィ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホブソン,エイドリアン・ディー
(72)【発明者】
【氏名】マクファーソン,マイケル・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワエゲル,ウェンディ
(72)【発明者】
【氏名】ゴエス,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】エルナンデス,アクセル・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ルー
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ルー
(72)【発明者】
【氏名】マービン,クリストファー・シー
(72)【発明者】
【氏名】サントラ,リング・シー
【審査官】 参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/153401(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/68
A61K 31/665
A61K 39/395
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】
(式中、Aは配列番号3に記載の重鎖と配列番号4に記載の軽鎖とを含む抗TNFα抗体であり、nは1〜10の整数である。)の抗体薬物複合体。
【請求項2】
nが4である、請求項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項3】
nが2である、請求項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項4】
式:
【化2】
(式中、Aはアダリムマブであり、nは4である。)の抗体薬物複合体。
【請求項5】
式:
【化3】
(式中、Aはアダリムマブであり、nは2である。)の抗体薬物複合体。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
腫瘍壊死因子α(TNFα)は数種のヒト疾患の病態生理において中心的な役割を果たしており、抗TNFα剤は関節リウマチ、乾癬及び炎症性腸疾患等の自己免疫疾患及び炎症性疾患の治療における治療効用を臨床的に検証されている。抗TNFαバイオ医薬品は臨床で成功しているが、患者で達成可能な最大効力がまだ限られており、より強力で有効な治療薬の同定と開発が必要である。抗TNFαバイオ医薬品を投与した患者が治療薬に対して免疫応答を生じる可能性もあるため、その有効性が制限されている。従って、疾患を更に防除するためには、免疫原性が低く且つ効力の高い抗TNFα治療薬が有用であろう。
【0002】
合成グルココルチコイド受容体作動薬は炎症性疾患の治療に使用される強力な類の低分子であるが、疾患の慢性治療におけるその効用は強い副作用により制限されている。抗TNF抗体に比較して効力が強く、作用時間が長く、望ましくない作用を最小限に抑えた治療薬を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は自己免疫疾患の治療に有用なグルココルチコイド受容体作動薬イムノコンジュゲートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1態様において、本開示は、
(a)配列番号3に記載の重鎖と配列番号4に記載の軽鎖とを含む抗TNFα抗体;及び(b)式:
【0005】
【化1】
により表される基を含むグルココルチコイド受容体作動薬を含む抗体薬物複合体を提供するものであり、前記抗体は式:
【0006】
【化2】
により表されるリンカーを介して前記グルココルチコイド受容体作動薬と連結されている。
【0007】
1実施形態において、本開示は式:
【0008】
【化3】
の抗体薬物複合体を提供し、式中、Aは前記抗体であり、nは1〜10の整数である。
【0009】
1態様において、本開示は、
(a)配列番号3に記載の重鎖と配列番号4に記載の軽鎖とを含む抗TNFα抗体;及び(b)式:
【0010】
【化4】
により表される基を含むグルココルチコイド受容体作動薬を含む抗体薬物複合体を提供するものであり、前記抗体は式:
【0011】
【化5】
により表されるリンカーを介して前記グルココルチコイド受容体作動薬と連結されている。
【0012】
1実施形態において、本開示は式:
【0013】
【化6】
の抗体薬物複合体を提供し、式中、Aは前記抗体であり、nは1〜10の整数である。
【0014】
1実施形態において、本開示は上記実施形態のいずれかの抗体薬物複合体であって、薬物負荷が1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であるものを提供する。1実施形態において、本開示は上記実施形態のいずれかの抗体薬物複合体であって、薬物負荷が4であるもの、例えば上記抗体薬物複合体の式中のnが4であるものを提供する。1実施形態において、本開示は上記実施形態のいずれかの抗体薬物複合体であって、薬物負荷が2であるもの、例えば上記抗体薬物複合体の式中のnが2であるものを提供する。
【0015】
1実施形態において、本開示は上記実施形態のいずれかの抗体薬物複合体の製造方法として、前記抗体を前記グルココルチコイド受容体作動薬と連結する工程を含む方法を提供する。1実施形態において、本開示は上記実施形態の方法であって、前記抗体を前記グルココルチコイド受容体作動薬と連結する前に、前記グルココルチコイド受容体作動薬にPO部分を導入する工程を更に含む方法を提供する。1実施形態において、本開示は上記実施形態のいずれかの方法であって、前記連結工程が前記抗体を部分的に還元する工程、及び前記部分的に還元した抗体を式:
【0016】
【化7】
の化合物でアルキル化する工程を含む方法を提供する。
【0017】
1実施形態において、本開示は上記実施形態のいずれかの抗体薬物複合体、及び薬学的に許容される基剤を含有する医薬組成物を提供する。1実施形態において、本開示は上記実施形態のいずれかの医薬組成物であって、薬物抗体比(DAR)が1〜10であるものを提供する。
【0018】
好ましい1実施形態において、本開示は式:
【0019】
【化8】
の抗体薬物複合体を提供し、式中、Aはアダリムマブであり、nは4である。
【0020】
好ましい1実施形態において、本開示は式:
【0021】
【化9】
の抗体薬物複合体を提供し、式中、Aは配列番号3に記載の重鎖と配列番号4に記載の軽鎖を含む抗TNFα抗体であり、nは4である。
【0022】
別の好ましい実施形態において、本開示は式:
【0023】
【化10】
の抗体薬物複合体を提供し、式中、Aはアダリムマブであり、nは2である。別の好ましい実施形態において、本開示は式:
【0024】
【化11】
の抗体薬物複合体を提供し、式中、Aは配列番号3に記載の重鎖と配列番号4に記載の軽鎖とを含む抗TNFα抗体であり、nは2である。
【0025】
好ましい1実施形態において、本開示は上記実施形態のいずれかの医薬組成物であって、薬物抗体比(DAR)が2.0であるものを提供する。
【0026】
好ましい1実施形態において、本開示は上記実施形態のいずれかの医薬組成物であって、薬物抗体比(DAR)が4.0であるものを提供する。
【0027】
1実施形態において、本開示は対象における関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、局面型乾癬、潰瘍性大腸炎、成人クローン病、小児クローン病、ぶどう膜炎、化膿性汗腺炎及び若年性特発性関節炎から選択される疾病の治療方法として、有効量の上記実施形態のいずれかの抗体薬物複合体又は上記実施形態のいずれかの医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法を提供する。
【0028】
1実施形態において、本開示は関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、局面型乾癬、潰瘍性大腸炎、成人クローン病、小児クローン病、ぶどう膜炎、化膿性汗腺炎及び若年性特発性関節炎から選択される疾病の治療用としての、上記実施形態のいずれかの抗体薬物複合体又は上記実施形態のいずれかの医薬組成物を提供する。
【0029】
1実施形態において、本開示は関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、局面型乾癬、潰瘍性大腸炎、成人クローン病、小児クローン病、ぶどう膜炎、化膿性汗腺炎及び若年性特発性関節炎から選択される疾病の治療用医薬の製造用としての、上記実施形態のいずれかの抗体薬物複合体又は上記実施形態のいずれかの医薬組成物の使用を提供する。
【0030】
1実施形態において、本開示は(a)上記実施形態のいずれかの抗体薬物複合体又は上記実施形態のいずれかの医薬組成物を収容した容器;及び(b)前記1個以上の容器に添付又は付属されたラベル又は添付文書を含むキットを提供し、前記ラベル又は添付文書は前記抗体薬物複合体又は医薬組成物が関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、局面型乾癬、潰瘍性大腸炎、成人クローン病、小児クローン病、ぶどう膜炎、化膿性汗腺炎及び若年性特発性関節炎から選択される疾病の治療用であることを指示している。
【0031】
1実施形態において、本開示はTNFα発現細胞へのグルココルチコイド受容体作動薬の送達方法として、前記細胞を上記実施形態のいずれかの抗体薬物複合体と接触させる段階を含む方法を提供する。1実施形態において、本開示は抗体薬物複合体の抗炎症活性の測定方法として、(a)TNFα発現細胞を上記実施形態のいずれかの抗体薬物複合体と接触させる段階;及び(b)対照細胞と比較して前記細胞からの炎症性サイトカインの放出を測定する段階を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施例7で実施・記載するBrAc−Gly−Glu−グルココルチコイド受容体モジュレーター(GRM)−POのクロマトグラフィー分離を示す。図面から明らかなように、このADCは薬物リンカー分子2個が結合したADCと、薬物リンカー分子4個が結合したADCとを含む異種ADC混合物である。
図2】アダリムマブをBrAc−Gly−Glu−グルココルチコステロイド−POと連結した場合のデコンボリューションMSデータを示す。図面から明らかなように、連結が達せられた。
図3】実施例7で実施・記載するマウスコラーゲン誘発性関節炎(CIA)の関節炎モデルにおける高用量及び低用量のADC1の効力を抗TNFαmAb(高用量)又は溶媒と比較して実証するグラフである。図面から明らかなように、抗TNFaグルココルチコステロイドADC1を単回投与すると、抗TNFamAb又は溶媒単独に比較して約28日間の足腫脹の改善により作用時間が延長した。
図4】実施例7で実施・記載するカニクイザルにおける閉環体及び開環体ADCの濃度(μg/ml)の経時変化を示すグラフである。図面から明らかなように、閉環体はインビボで逆マイケル反応とそれに伴うリンカー−薬物の減少を起こし易い。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本願ではグルココルチコイド受容体作動薬イムノコンジュゲート、グルココルチコイド受容体作動薬並びにその製造方法及び使用方法を提供する。
【0034】
本願では式:
【0035】
【化12】
の抗体薬物複合体を提供し、式中、Aはアダリムマブであり、nは4である。下記実施例7で実証するように、このADC(即ち下記ADC4)はインビトロ活性、血漿中安定性を示し、凝集を最小限に抑えられることが明らかである。
【0036】
ADC4の製造方法と使用方法も提供する。
【0037】
I.定義
本開示を理解し易くするために、多数の用語と語句について以下に定義する。
【0038】
「抗TNFαタンパク質」なる用語は、(i)TNFαと結合し、(ii)可溶性TNFαと細胞表面TNF受容体(p55及び/又はp75)の結合を阻害すること及び/又は補体の存在下に表面TNFα若しくはTNFα受容体発現細胞をインビトロで溶解させることが可能なタンパク質を意味する。ある実施形態において、抗TNF抗体は細胞の表面のTNFαと結合し、内在化することができる。例えば、その開示内容全体を本願に援用するUS2014/0294813は、細胞表面ヒトTNFと結合すると、細胞内在化を示す抗TNF抗体を開示している。抗TNFαタンパク質としては、例えば抗TNFα抗体(例えばアダリムマブ、インフリキシマブ及びゴリムマブ)が挙げられる。抗TNFα抗体は単球由来DC上の膜貫通型TNFと結合すると、活発に内在化され、迅速にリソソームに取り込まれ、分解される(Deora et.al.MABS,2017,Vol.9,No.4,680−694)。
【0039】
本願で使用する「抗体」なる用語は、ジスルフィド結合により相互に結合した2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖の4本のポリペプチド鎖から成る免疫グロブリン分子を意味する。各重鎖は重鎖可変領域(本願ではHCVR又はVHと略称する。)と重鎖定常領域とから構成される。重鎖定常領域はCH1、CH2及びCH3の3個のドメインから構成される。各軽鎖は軽鎖可変領域(本願ではLCVR又はVLと略称する。)と軽鎖定常領域とから構成される。軽鎖定常領域は1個のドメインCLから構成される。VH領域とVL領域は相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域とその間に配置されたフレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存度の高い領域に更に分けることができる。各VH及びVLはアミノ末端からカルボキシ末端に向かってFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配置された3個のCDRと4個のFRから構成される。
【0040】
「抗TNFα抗体」又は「TNFαと結合する抗体」なる用語は、例えばTNFαを標的とする治療剤として有用であるために十分な親和性でTNFαと結合することが可能な抗体を意味する。抗TNFα抗体が無関係の非TNFαタンパク質と結合する程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した場合に前記抗体とTNFαの結合の約10%未満に抑えることができる。所定の実施形態において、TNFαと結合する抗体は解離定数(Kd)が≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、又は≦0.1nMである。
【0041】
本願で使用する「イムノコンジュゲート」、「コンジュゲート」、「抗体薬物複合体」、又は「ADC」なる用語は、細胞結合性物質(例えば抗TNFα抗体)等のタンパク質と連結された化合物又はその誘導体を意味する。このようなイムノコンジュゲートは一般式(SM−L−Q)−Aにより表すことができ、式中、SM=低分子グルココルチコイド受容体作動薬から誘導される基、例えばグルココルチコステロイド、L=リンカー、Q=ヘテロ二官能基又は不在、A=タンパク質(例えば抗体)、n=1〜10である。イムノコンジュゲートは順序を逆にした一般式A−(Q−L−SM)により表すこともできる。
【0042】
本開示において、「リンカー」なる用語は抗TNFαタンパク質(例えば抗体)をグルココルチコステロイドと連結することが可能な化学部分を意味する。リンカーはグルココルチコステロイドを放出し易くするように、切断し易いものとすることができる(「切断可能なリンカー」)。例えば、このような切断可能なリンカーはグルココルチコステロイド及び/又は抗体が活性状態に保たれる条件下でペプチダーゼにより切断され易いものとすることができる。
【0043】
特に、本願に開示する切断可能なリンカー成分はアミノ酸残基数が2〜3個のペプチド(ジペプチド又はトリペプチド)を含み、具体的には、アラニン−アラニン(Ala−Ala)、グリシン−グルタミン酸(Gly−Glu)、グルタミン酸−アラニン−アラニン(Glu−Ala−Ala)及びグリシン−リジン(Gly−Lys)から成る群から選択されるジペプチド及びトリペプチドである。このようなペプチドはプロテアーゼによりリンカーを切断できるため、リソソーム酵素等の細胞内プロテアーゼに暴露されると、グルココルチコステロイドを放出し易い(Doronina et al.(2003)Nat.Biotechnol.21:778−784)。
【0044】
本開示において、「グルココルチコステロイド」なる用語はグルココルチコイド受容体と相互作用する天然又は合成ステロイドホルモンを意味し、本願では特定のグルココルチコステロイドについて詳細に開示する。「グルココルチコステロイド基」は親グルココルチコステロイドから1個以上の水素原子を取り除くことにより誘導される。水素原子を取り除くと、親グルココルチコステロイドをリンカーに結合し易くなる。本開示では、親グルココルチコステロイドのいずれかの適切な−NH基から水素原子を取り除く。特に、「グルココルチコステロイド基」は親グルココルチコステロイドから水素原子1個を取り除くことにより誘導される一価基である。
【0045】
本開示において、「ヘテロ二官能基」なる用語はリンカーと抗TNFαタンパク質(例えば抗体)を連結する化学部分を意味する。ヘテロ二官能基はこの化学部分の両端に異なる反応性基をもつことを特徴とする。
【0046】
「薬物抗体比」又は「DAR」なる用語はA(例えば抗体)と連結されたSM(例えば低分子グルココルチコイド受容体作動薬から誘導される基、例えばグルココルチコステロイド)の数を意味する。従って、一般式(SM−L−Q)−Aを有するイムノコンジュゲートにおいて、DARは抗体薬物複合体1分子当たりの薬物負荷、例えば、「n」により表される。
【0047】
個々のイムノコンジュゲートを表すものとしての式(SM−L−Q)−Aを有する化合物について言う場合、「化合物DAR」なる用語は個々のAと連結されたSMの数(例えば1〜10の整数としての薬物負荷又はn)を意味する。
【0048】
イムノコンジュゲートの集合体を表すものとしての式(SM−L−Q)−Aを有する化合物について言う場合、「集合体DAR」なる用語はAと連結されたSMの平均数(例えば1〜10±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1の整数又は分数としての薬物負荷又はn)を意味する。
【0049】
「対象」なる用語は特定の治療を受けるヒト、非ヒト霊長類等を意味する。一般的に、「対象」及び「患者」なる用語は本願ではヒト対象について同義に使用する。
【0050】
「医薬製剤」なる用語は有効成分の生物学的活性を有効に発揮できるような形態であり、製剤を投与する対象に対して許容できないほど毒性となる他の成分を含有していない製剤を意味する。製剤は無菌とすることができる。
【0051】
本願に開示するイムノコンジュゲートの「有効量」は具体的に明記する目的を達成するために十分な量である。「有効量」は明記する目的に応じて決定することができる。
【0052】
「治療有効量」なる用語は対象又は哺乳動物における疾患又は障害を「治療する」ために有効なイムノコンジュゲートの量を意味する。「予防有効量」とは所望の予防結果を達成するために有効な量を意味する。
【0053】
「治療する」又は「治療」又は「治療すること」又は「緩和する」又は「緩和すること」等の用語は、診断後の病態又は障害の1種以上の症状を治癒、緩和、軽減、及び/又はその進行を遅延若しくは阻止する治療手段を意味する(「治療処置」)。従って、治療処置を必要とする者としては、既に障害をもつと診断された者又はその疑いのある者が挙げられる。予防又は防止手段とは、標的病態又は障害の発症を防ぐ手段を意味する(「予防処置」)。従って、予防処置を必要とする者としては、障害に冒され易い者や、障害を予防すべき者が挙げられる。
【0054】
II.グルココルチコイド受容体作動薬と連結するためのタンパク質
本開示はグルココルチコイド受容体作動薬をタンパク質(例えば抗体)と連結したイムノコンジュゲートを提供する。ある実施形態において、前記抗体はヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体又はマウス抗体である。ある実施形態において、前記タンパク質(例えば抗体)は細胞の表面の標的と結合して内在化することができる。
【0055】
本開示はグルココルチコイド受容体作動薬を抗TNFαタンパク質と連結したイムノコンジュゲートも提供する。所定の実施形態において、前記抗TNFαタンパク質は抗体である。所定の実施形態において、前記抗TNFαタンパク質はTNFα(例えば可溶性TNFα及び/又は膜結合型TNFα)と結合する抗体である。所定の実施形態において、前記抗TNFαタンパク質は可溶性TNF受容体タンパク質(例えば重鎖定常領域と融合させた可溶性TNF受容体タンパク質)である。ある実施形態において、前記抗TNFαタンパク質(例えば抗TNFα抗体)は細胞の表面でTNFαと結合して内在化する。例えば、本願に援用する米国特許出願公開第2014/0294813号は細胞表面ヒトTNFαと結合すると、細胞内在化を示す抗TNFαタンパク質を開示している。
【0056】
所定の実施形態において、前記抗体はヒト及び/又はマウスTNFαと結合する。
【0057】
膜結合型ヒトTNFαの全長アミノ酸配列は、
【0058】
【化13】
である。可溶性ヒトTNFαは配列番号1のアミノ酸77〜233を含む。膜結合型マウスTNFαの全長アミノ酸配列は、
【0059】
【化14】
である。可溶性マウスTNFαは配列番号2のアミノ酸80〜235を含む。
【0060】
ある実施形態において、前記抗TNFα抗体はヒトTNFαと結合する。
【0061】
ある実施形態において、前記抗TNFα抗体はマウスTNFαと結合する。
【0062】
所定の実施形態において、前記抗TNFα抗体は以下の効果の1種以上をもつ:インビトロL929アッセイにおいて1×10−7M以下のIC50でヒトTNFα細胞毒性を中和する;TNFαとp55及びp75細胞表面受容体の相互作用を阻止する;並びに/又は補体の存在下に表面TNF発現細胞をインビトロで溶解させる。
【0063】
所定の実施形態において、前記抗TNFα抗体はTNFβと結合しない。
【0064】
抗TNFα抗体としては、例えば、組換えヒト抗体であるアダリムマブが挙げられる。アダリムマブのCDRと可変領域に対応するアミノ酸配列は米国特許第6,258,562号に抗体D2E7について記載されている(即ち配列番号1〜8)。
【0065】
医薬品の国際一般名(INN)であるアダリムマブはWHO INN収載場所であるYear 2000,List 44(WHO Drug Information(2000)Vol.14(3))に収載されている。
【0066】
所定の実施形態において、抗TNFα抗体はアダリムマブの配列、例えば相補性決定領域(CDR)、重鎖可変領域(VH)、及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含む。代表的な配列を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
所定の実施形態において、前記抗TNFα抗体は配列番号3及び4のCDRを含む。ある実施形態において、前記CDRは配列番号7又は8、9、10又は11、12、13及び14を含む。所定の実施形態において、前記抗TNFα抗体は配列番号3の重鎖及び/又は配列番号4の軽鎖を含む。
【0069】
本開示は更に本願に記載する抗TNFα抗体に実質的に対応する変異体及び等価物も包含する。これらは例えば保存置換突然変異、即ち1個以上のアミノ酸を類似アミノ酸で置換したものを含むことができる。例えば、保存置換とは、あるアミノ酸を同一の一般分類内の別のアミノ酸で置換すること、例えば1個の酸性アミノ酸を別の酸性アミノ酸で置換すること、1個の塩基性アミノ酸を別の塩基性アミノ酸で置換すること、又は1個の中性アミノ酸を別の中性アミノ酸で置換することを意味する。保存アミノ酸置換が意味することは当技術分野で周知である。
【0070】
本願に記載する単離抗TNFα抗体は当技術分野で公知のあらゆる適切な方法により生産することができる。このような方法は直接タンパク質合成法に始まり、単離ポリペプチド配列をコードするDNA配列を作製してこれらの配列を適切な形質転換宿主で発現させる方法までに至る。ある実施形態では、目的の野生型タンパク質をコードするDNA配列を単離又は合成することにより組換え技術を使用してDNA配列を作製する。任意に、部位特異的突然変異導入法により前記配列に突然変異を導入し、その機能的類似体とすることもできる。例えば、Zoeller et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 81:5662−5066(1984)及び米国特許第4,588,585号参照。
【0071】
ある実施形態では、オリゴヌクレオチド合成装置を使用して化学合成法により目的の抗体をコードするDNA配列を作製する。このようなオリゴヌクレオチドは目的とするポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて設計することができ、目的の組換えポリペプチドが産生される宿主細胞で優先されるコドンを選択する。標準方法を適用し、目的の単離ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド配列を合成することができる。
【0072】
所定の実施形態では、組換え発現ベクターを使用して抗TNFα抗体をコードするDNAを増幅・発現させる。多様な発現宿主/ベクター組合せを利用することができる。真核宿主に有用な発現ベクターとしては、例えばSV40、ウシパピローマウイルス、アデノウイルス及びサイトメガロウイルスに由来する発現制御配列を含むベクターが挙げられる。細菌宿主に有用な発現ベクターとしては、pCR1、pBR322、pMB9及びそれらの誘導体を含む大腸菌に由来するプラスミド等の公知細菌プラスミドと、M13や繊維状一本鎖DNAファージ等のより広範な宿主範囲のプラスミドが挙げられる。
【0073】
抗TNFα抗体の発現に適した宿主細胞としては、適切なプロモーターの存在下の原核生物、酵母、昆虫又は高等真核細胞が挙げられる。原核生物としては、グラム陰性生物又はグラム陽性生物、例えば大腸菌やバシラス属細菌が挙げられる。高等真核細胞としては、哺乳動物由来の樹立細胞株が挙げられる。無細胞翻訳システムも利用できる。細菌、真菌、酵母及び哺乳動物細胞宿主で使用するのに適切なクローニング・発現ベクターはPouwelsらにより記載されている(Cloning Vectors:A Laboratory Manual,Elsevier,N.Y.,1985)。抗体生産を含むタンパク質生産方法に関するその他の情報については、例えば米国特許公開第2008/0187954号、米国特許第6,413,746号及び6,660,501号、並びに国際特許公開第WO04009823号を参照されたい。
【0074】
III.グルココルチコイド受容体作動薬を含むイムノコンジュゲート
グルココルチコイド受容体作動薬を含むイムノコンジュゲートも提供する。ある実施形態において、イムノコンジュゲートはFcγ受容体と結合する。ある実施形態において、イムノコンジュゲートはGRE膜貫通型TNFαレポーターアッセイにおいて活性である(本願で使用する「GRE膜貫通型TNFαレポーターアッセイ」とは下記実施例7で使用するアッセイを意味する。)。ある実施形態において、イムノコンジュゲートはこのイムノコンジュゲートにおけるタンパク質(例えば抗体)単独と比較した場合に免疫原性の低下(抗薬物免疫応答(ADA)の低下)を示す。
【0075】
1実施形態において、本願では式I−a:
(SM−L−Q)−A I−a
を有する化合物を開示し、式中、
Aは抗腫瘍壊死因子(TNF)α抗体、抗TNFαモノクローナル抗体又はアダリムマブであり;
Lはリンカーであり;
Qはヘテロ二官能基であり;又は
Qは不在であり;
nは1〜10であり;
SMは下式:
(1)式II−a:
【0076】
【化15】
【0077】
(2)式II−b:
【0078】
【化16】
【0079】
(3)式II−c:
【0080】
【化17】
【0081】
(4)式II−d:
【0082】
【化18】
のいずれか1種を有するグルココルチコステロイドの一価基である。
【0083】
別の実施形態において、本願に開示するのは式I−aを有する化合物であって、式中、SMが式II−a、II−b、II−c又はII−dのいずれか1種を有するグルココルチコステロイドの一価基であり、Lがジペプチド又はトリペプチドを含む切断可能なリンカーであり、Qがヘテロ二官能基であるか又はQが不在であり、nが1〜10である化合物である。特に、Lはアラニン−アラニン(Ala−Ala)、グリシン−グルタミン酸(Gly−Glu)、グルタミン酸−アラニン−アラニン(Glu−Ala−Ala)及びグリシン−リジン(Gly−Lys)から成る群から選択されるジペプチド及びトリペプチドを含む。
【0084】
別の実施形態において、本願に開示するのは式I−aを有する化合物であって、式中、SMが式II−a、II−b、II−c及びII−dのいずれか1種を有するグルココルチコステロイドの一価基であり、Qが式:
【0085】
【化19】
(式中、mは0又は1である。)により表されるヘテロ二官能基である化合物である。
【0086】
別の実施形態において、mは0であり、Qは式:
【0087】
【化20】
により表される。
【0088】
別の実施形態において、mは1であり、Qは式:
【0089】
【化21】
により表される。
【0090】
別の実施形態において、本願に開示するのは式I−aを有する化合物であって、式中、SMが式II−a、II−b、II−c及びII−dのいずれか1種を有するグルココルチコステロイドの一価基であり、−L−Q−が表2の化学構造のいずれか1種である化合物である。
【0091】
【表2】
【0092】
別の実施形態において、本願に開示するのは式I−aを有する化合物であり、例えば、式I−aを有する化合物であって、式中、SMが式II−a、II−b、II−c及びII−dのいずれか1種を有するグルココルチコステロイドの一価基であり、nが2〜8である化合物である。別の実施形態において、nは1〜5である。別の実施形態において、nは2〜5である。別の実施形態において、nは1である。別の実施形態において、nは2である。別の実施形態において、nは3である。別の実施形態において、nは4である。別の実施形態において、nは5である。別の実施形態において、nは6である。別の実施形態において、nは7である。別の実施形態において、nは8である。
【0093】
別の実施形態において、本願に開示するのは式I−aを有する化合物であり、例えば、式I−aを有する化合物であって、式中、SMが式II−a、II−b、II−c及びII−dのいずれか1種を有するグルココルチコステロイドの一価基であり、Aが抗体である化合物である。
【0094】
別の実施形態において、本願に開示するのは式I−aを有する化合物であり、例えば、式I−aを有する化合物であって、式中、SMが式II−a、II−b、II−c及びII−dのいずれか1種を有するグルココルチコステロイドの一価基であり、前記抗体がマウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体である化合物である。
【0095】
別の実施形態において、本願に開示するのは式I−aを有する化合物であり、例えば、式I−aを有する化合物であって、式中、SMが式II−a、II−b、II−c及びII−dのいずれか1種を有するグルココルチコステロイドの一価基であり、Aがアダリムマブ、インフリキシマブ、セルトリズマブペゴル及びゴリムマブから成る群から選択される抗体とTNFαの結合を競合的に阻害する化合物である。
【0096】
別の実施形態において、本願に開示するのは式I−aを有する化合物であり、例えば、式I−aを有する化合物であって、式中、SMが式II−a、II−b、II−c及びII−dのいずれか1種を有するグルココルチコステロイドの一価基であり、Aがアダリムマブ、インフリキシマブ、セルトリズマブペゴル、アフェリモマブ、ネレリモマブ、オゾラリズマブ、プラクルマブ及びゴリムマブから成る群から選択される抗体と同一のTNFαエピトープと結合する化合物である。
【0097】
別の実施形態において、本願に開示するのは式I−aを有する化合物であり、例えば、式I−aを有する化合物であって、式中、SMが式II−a、II−b、II−c及びII−dのいずれか1種を有するグルココルチコステロイドの一価基であり、Aが夫々配列番号7又は8、配列番号9、及び配列番号10又は11の重鎖可変領域CDR1、CDR2及びCDR3配列と、夫々配列番号12、配列番号13及び配列番号14の軽鎖可変領域CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む化合物である。
【0098】
別の実施形態において、本願に開示するのは式I−aを有する化合物であり、例えば、式I−aを有する化合物であって、式中、SMが式II−a、II−b、II−c及びII−dのいずれか1種を有するグルココルチコステロイドの一価基であり、Aが配列番号5に記載の重鎖可変領域と配列番号6に記載の軽鎖可変領域を含む抗TNFα抗体である化合物である。
【0099】
別の実施形態において、本願に開示するのは式I−aを有する化合物であり、例えば、式I−aを有する化合物であって、式中、SMが式II−a、II−b、II−c及びII−dのいずれか1種を有するグルココルチコステロイドの一価基であり、Aが配列番号3に記載の重鎖と配列番号4に記載の軽鎖を含む抗TNFα抗体である化合物である。
【0100】
別の実施形態において、本願に開示するのは式I−aを有する化合物であり、例えば、式I−aを有する化合物であって、式中、SMが式II−a、II−b、II−c及びII−dのいずれか1種を有するグルココルチコステロイドの一価基であり、AがTNFαとp55及びp75細胞表面受容体との相互作用を阻止する化合物である。
【0101】
別の実施形態において、本願に開示するのは式I−aを有する化合物であり、例えば、式I−aを有する化合物であって、式中、SMが式II−a、II−b、II−c及びII−dのいずれか1種を有するグルココルチコステロイドの一価基であり、Aが補体の存在下に表面TNF発現細胞をインビトロで溶解させる化合物である。
【0102】
別の実施形態において、本願に開示するのは式I−aを有する化合物であり、例えば、式I−aを有する化合物であって、式中、SMが式II−a、II−b、II−c及びII−dのいずれか1種を有するグルココルチコステロイドの一価基であり、Aがエタネルセプトである化合物である。
【0103】
別の実施形態において、本願に開示するのは式I−aを有する化合物であり、例えば、式I−aを有する化合物であって、式中、SMが式II−a、II−b、II−c及びII−dのいずれか1種を有するグルココルチコステロイドの一価基であり、Aがアダリムマブである化合物である。
【0104】
別の実施形態において、本願では表3の化学構造のいずれか1種である式I−aを有する化合物を開示する。
【0105】
【表3】
【0106】
別の実施形態において、本願では式:
【0107】
【化22】
の抗体薬物複合体を開示し、式中、Aはアダリムマブであり、nは4である。下記実施例7で実証するように、このADC(即ち下記ADC4)はインビトロ活性、血漿中安定性を示し、凝集を最小限に抑えられることが明らかである。
【0108】
IV.イムノコンジュゲート及び合成中間体の製造方法
本開示の種々のイムノコンジュゲートの一般合成法は下式III−a、III−b、III−c又はIII−dのいずれかのNHで官能基化された低分子(SM)をリンカー部分と反応させる工程、及び得られた化合物を官能基化し、ブロモアセトアミドて官能基化された中間体とする工程を含む。その後、ブロモアセトアミドで官能基化された中間体をHS−Aと反応させる(なお、HS−Aは還元された鎖間ジスルフィド結合数の少ない抗体、例えばアダリムマブである。)。
【0109】
(1)式III−a:
【0110】
【化23】
【0111】
(2)式III−b:
【0112】
【化24】
【0113】
(3)式III−c:
【0114】
【化25】
【0115】
(4)式III−d:
【0116】
【化26】
【0117】
別の実施形態において、本願では式IV−a:
【0118】
【化27】
を有する化合物の製造方法を開示し、式中、
Aはアダリムマブであり;
Lはリンカーであり;
nは1〜10であり;
SMは式III−a〜III−dのいずれか1種を有するグルココルチコステロイド基であり;
前記方法は、
a)式V:
【0119】
【化28】
を有する化合物を抗腫瘍壊死因子(TNF)αタンパク質又はタンパク質と連結する工程;及び
b)式IV−aを有する化合物を単離する工程を含む。
【0120】
ある実施形態において、本願に開示する方法は更に式IV−aの化合物を精製する工程を含む。所定の実施形態では、(実施形態によってはリンカーのペプチド部分の荷電部分、及び/又は実施形態によってはSMのリン酸基を利用して)異なるDAR種を効率的に分離することができるアニオン交換クロマトグラフィー(AEC)を使用する。
【0121】
ある実施形態において、本願に開示する方法は標準マレイミド系リンカー化学に依存する方法よりも合成工程が少なくて済む。特に、標準マレイミド系リンカー化学に依存する方法は適切なDAR種の精製後に実施する後続工程としてスクシンイミド開環加水分解工程が必要になる場合がある。従って、所定の実施形態において、本願に開示する方法は標準マレイミド系リンカー化学よりも連結プロトコールが著しく短縮される。
【0122】
別の実施形態において、本願では式VI−a:
【0123】
【化29】
を有する化合物の製造方法を開示し、式中、
Aはアダリムマブであり;
nは1〜10であり、
前記方法は、
a)式VII−a:
【0124】
【化30】
の化合物を部分的に還元されたアダリムマブと連結する工程;及び
b)例えばクロマトグラフィーにより、式VI−aを有する化合物を単離する工程を含む。
【0125】
別の実施形態において、本願では式IV−a又は式VI−aを有する化合物であって、式中、nが1〜7である化合物の製造方法を開示する。別の実施形態において、nは1〜5である。別の実施形態において、nは2〜4である。別の実施形態において、nは1である。別の実施形態において、nは2である。別の実施形態において、nは3である。別の実施形態において、nは4である。別の実施形態において、nは5である。別の実施形態において、nは6である。別の実施形態において、nは7である。別の実施形態において、nは8である。
【0126】
別の実施形態において、本願では式IV−a又はVI−aを有する化合物であって、式中、
Aがアダリムマブであり;
nが1〜10である化合物を開示する。
【0127】
別の実施形態において、本願では式IV−a又はVI−aを有する化合物であって、式中、nが1〜7である化合物を開示する。別の実施形態において、nは1〜5である。別の実施形態において、nは2〜4である。別の実施形態において、nは1である。別の実施形態において、nは2である。別の実施形態において、nは3である。別の実施形態において、nは4である。別の実施形態において、nは5である。別の実施形態において、nは6である。別の実施形態において、nは7である。別の実施形態において、nは8である。
【0128】
本願ではイムノコンジュゲートの製造に有用な合成中間体も提供する。
【0129】
1実施形態において、本願に開示する合成中間体は式V又はVII−aのいずれか一方を有する化合物である。
【0130】
VI.使用方法及び医薬組成物
本願ではインビトロ又はインビボで使用することができる式I−aを有する(例えば表3に示す式を有する)コンジュゲートを提供する。従って、生理的に許容される基剤、賦形剤又は安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990)Mack Publishing Co.,Easton,PA)中に所望の純度を有するコンジュゲート又はグルココルチコイド受容体作動薬を含有する組成物、例えば所定のインビボ用途の医薬組成物も提供する。許容される基剤、賦形剤又は安定剤は利用される用量と濃度で被投与者に非毒性である。
【0131】
インビボ投与用組成物(例えば医薬組成物)は無菌とすることができ、例えば滅菌濾過膜で濾過することにより実施することができる。インビボ投与用組成物(例えば医薬組成物)は防腐剤を含有することができる。
【0132】
本願に記載する抗体薬物複合体及び/又は抗体薬物複合体を含有する医薬組成物は表面TNFαを発現する細胞を(インビトロ又はインビボで)溶解させるのに有用であり得、及び/又はTNFα増加(例えば滑液中のTNFα増加)を特徴とする疾患若しくは障害を治療するのに有用であり得る。ある実施形態において、前記抗体薬物複合体及び/又は組成物はサイトカイン放出を(インビトロ又はインビボで)抑制するのに有用であり、及び/又は自己免疫疾患若しくは炎症性疾患を治療するのに有用である。ある実施形態において、前記抗体薬物複合体及び/又は組成物はクローン病の治療(例えば回腸及び/若しくは上行結腸を病変部とする中等症から重症の活動期クローン病の治療並びに/又は回腸及び/若しくは上行結腸を病変部とする中等症から重症の活動期クローン病の3カ月間までの臨床的寛解の維持)に使用される。ある実施形態において、前記抗体薬物複合体及び/又は組成物は潰瘍性大腸炎の治療(例えば中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎患者における寛解の誘導)に使用される。ある実施形態において、前記抗体薬物複合体及び/又は組成物は関節リウマチ(RA)の治療に使用される。ある実施形態において、前記抗体薬物複合体及び/又は組成物は若年性特発性関節炎(JA)の治療に使用される。ある実施形態において、前記抗体薬物複合体及び/又は組成物は乾癬性関節炎(PsA)の治療に使用される。ある実施形態において、前記抗体薬物複合体及び/又は組成物は強直性脊椎炎(AS)や体軸性脊椎関節炎(axSpA)等の脊椎関節症の治療に使用される。ある実施形態において、前記抗体薬物複合体及び/又は組成物は成人クローン病(CD)の治療に使用される。ある実施形態において、前記抗体薬物複合体及び/又は組成物は小児クローン病の治療に使用される。ある実施形態において、前記抗体薬物複合体及び/又は組成物は潰瘍性大腸炎(UC)の治療に使用される。ある実施形態において、前記抗体薬物複合体及び/又は組成物は局面型乾癬(Ps)の治療に使用される。ある実施形態において、前記抗体薬物複合体及び/又は組成物は化膿性汗腺炎(HS)の治療に使用される。ある実施形態において、前記抗体薬物複合体及び/又は組成物はぶどう膜炎の治療に使用される。ある実施形態において、前記抗体薬物複合体及び/又は組成物はベーチェット病の治療に使用される。ある実施形態において、前記抗体薬物複合体及び/又は組成物は局面型乾癬を含めた乾癬の治療に使用される。ある実施形態は本願に記載する疾患又は障害の治療用医薬の製造用としての薬物コンジュゲート及び/又は医薬組成物の使用を含む
【0133】
ある実施形態はTNFα発現細胞へのグルココルチコイド受容体作動薬の送達方法を含む。このような方法は本願に記載する抗体薬物複合体とTNFα発現細胞を接触させる段階を含むことができる。ある実施形態はTNFα発現細胞へのグルココルチコイド受容体作動薬のインビトロ送達方法を含む。
【0134】
抗体薬物複合体の抗炎症活性の測定方法も提供する。このような方法は本願に記載する抗体薬物複合体とTNFα発現細胞を接触させる段階を含むことができる。ある実施形態は本願に記載する抗体薬物複合体とTNFα発現細胞を接触させる段階と、対照細胞と比較して前記細胞からの炎症性サイトカインの放出の減少を測定する段階を含む。ある実施形態は抗体薬物複合体の抗炎症活性のインビトロ測定方法を含む。
【0135】
ある実施形態は細胞(例えばTNFα発現細胞)を抗体薬物複合体と直接又は間接的に接触させる段階と、例えば細胞形態若しくは生存率、マーカーの発現、分化若しくは脱分化、細胞呼吸、ミトコンドリア活性、膜完全性、成熟、増殖、生存性、アポトーシス又は細胞死の変化により判断して前記抗体薬物複合体が細胞の活性又は機能を変化させるか否かを判定する段階を含むスクリーニング法(例えばインビトロ法)を含む。直接相互作用の1例は物理的相互作用であり、間接相互作用としては、例えば、組成物が中間分子に作用し、この中間分子が指定対象物(例えば細胞又は細胞培養物)に作用する場合が挙げられる。
【0136】
VII.製品
本開示は1個以上の容器を含む医薬パック及びキットも包含し、1個の容器に1回分以上の用量の本願に記載する抗体薬物複合体又は組成物を収容することができる。所定の実施形態において、前記パック又はキットは1種以上の他の薬剤の存在下又は不在下で単位用量即ち規定量の組成物又は抗体薬物複合体を含む。
【0137】
前記キットは1個以上の容器と、前記容器に添付又は付属されており、収容した組成物が選択された病態の治療用であることを指示したラベル又は添付文書を含むことができる。適切な容器としては、例えばボトル、バイアル、シリンジ等が挙げられる。容器はガラスやプラスチック等の種々の材料から形成することができる。容器は滅菌開封口を備えることができ、例えば、容器は皮下注射針で穴を開けることができるストッパー付きの静注溶液バッグ又はバイアルとすることができる。
【0138】
ある実施形態において、前記キットは前記抗体と任意に含まれる成分を患者に投与するための手段を含むことができ、例えば1本以上の針若しくは(プレフィルド又は空の)シリンジ、点眼器、ピペット又は他の同様の装置が挙げられ、これらの装置から製剤を対象に注射若しくは導入すること又は患部に塗布することができる。本開示のキットは更に一般的にはバイアル等と他のコンポーネントを市販用に密封するための手段を含み、例えば所望のバイアルと他の装置をブロー成形プラスチック容器に入れて保持する。
【実施例】
【0139】
当然のことながら、本願に記載する実施例及び実施形態は例証のみを目的とし、それらの記載に照らして種々の改変又は変更が当業者に想到され、このような改変又は変更も本開示の趣旨と範囲に含むものとする。
【0140】
出発原料は市販されており、本願に記載する手順、文献に記載されている手順又は有機化学分野の当業者に周知の手順により製造してもよい。記載する試薬/反応体の名称は市販薬瓶に表示されている名称又はIUPAC規則、CambridgeSoft(R)ChemDraw Ultra 12.0、CambridgeSoft(R)Chemistry E−Notebook 11若しくはAutoNom 2000により命名された名称である。当然のことながら、本願に記載する実施例及び実施形態は例証のみを目的とし、それらの記載に照らして種々の改変又は変更が当業者に想到され、このような改変又は変更も本開示の趣旨と範囲に含むものとする。
【0141】
化合物合成及び特性決定用分析法
以下の手順の詳細、一般的な手順の説明又は実施例の表には分析データが含まれている。特に指定しない限り、全てのH及び13C NMRデータはVarian Mercury Plus 400MHz又はBruker AVIII 300MHz機器で取得し、化学シフトは百万分率(ppm)で表す。HPLC分析データについては実験セクションに詳述するか、又は表4に示す方法を使用し、LC/MS及びHPLC条件を箇条書きする。
【0142】
【表4】
【0143】
以下の実施例で使用する略語は以下の通りである。
【0144】
【表5】
【0145】
[実施例1](2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10S,11aR,12aS,12bS)−10−(4−(3−アミノベンジル)フェニル)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a−ジメチル−1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−4H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−4−オンの合成
【0146】
工程1:4−(ブロモメチル)ベンズアルデヒドの合成
【0147】
【化31】
【0148】
水素化ジイソブチルアルミニウム(153mL,153mmol,1Mトルエン溶液)を4−(ブロモメチル)ベンゾニトリル(20g,102mmol)の0℃トルエン(400mL)溶液に1時間かけて滴下した。更にバイアル2本を上記のように準備した。全3本の反応混合液を合わせた。混合液に10%HCl水溶液(1.5L)を加えた。混合液をDCM(3×500mL)で抽出した。有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液PE:EtOAc=10:1)により精製し、標記化合物(50g,収率82%)を白色固体として得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ10.02(s,1H),7.91−7.82(m,2H),7.56(d,J=7.9Hz,2H),4.55−4.45(m,2H)。
【0149】
工程2:3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アニリンの合成
【0150】
【化32】
【0151】
3−ブロモアニリン(40g,233mmol)の1,4−ジオキサン(480mL)溶液に4,4,4’,4’,5,5,5’,5’−テトラメチル−2,2’−ビ(1,3,2−ジオキサボロラン)(94g,372mmol)と、酢酸カリウム(45.6g,465mmol)と、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリ−i−プロピル−1,1’−ビフェニル(8.07g,13.95mmol)と、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(8.52g,9.30mmol)を加えた。得られた混合液を窒素下で80℃に4時間加熱した。バイアルをもう1本上記のように準備した。2本の反応混合液を合わせて濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液PE:EtOAc=10:1)により精製し、標記化合物(60g,収率55.4%)を薄黄色固体として得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.23−7.13(m,3H),6.80(d,J=7.5Hz,1H),3.82−3.38(m,2H),1.34(s,12H)。
【0152】
工程3:(3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)カルバミン酸tert−ブチルの合成
【0153】
【化33】
【0154】
3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アニリン(実施例1,工程2)(30g,137mmol)と二炭酸ジ−tert−ブチル(38.9g,178mmol)をトルエン(600mL)中にて100℃で24時間混合した。バイアルをもう1本上記のように準備した。2本の反応混合液を合わせて混合液を蒸発させ、EtOAc(1.5L)に溶解し、0.1N HCl(3×2L)とブライン(3L)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮し、標記化合物(50g,収率57%)を赤色固体として得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.63(br m,2H),7.48(d,J=7.1Hz,1H),7.37−7.28(m,1H),1.52(s,9H),1.34(s,12H)。
【0155】
工程4:(3−(4−ホルミルベンジル)フェニル)カルバミン酸tert−ブチルの合成
【0156】
【化34】
【0157】
4−(ブロモメチル)ベンズアルデヒド(実施例1,工程1)(24.94g,125mmol)と、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンジクロロパラジウム(II)DCM錯体(13.75g,18.80mmol)と、(3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)カルバミン酸tert−ブチル(実施例1,工程3)(20g,62.7mmol)と、炭酸カリウム(43.3g,313mmol)をテトラヒドロフラン(400mL)で調液した混合液を80℃まで12時間加熱した。バイアルをもう1本上記のように準備した。2本の反応混合液を合わせて水(500mL)で希釈した。水性混合液をEtOAc(3×500mL)で抽出した。有機層を合わせてNaSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液PE:EtOAc=10:1)により精製し、標記化合物(15g,収率38.4%)を白色固体として得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ9.95(s,1H),7.78(d,J=7.9Hz,2H),7.33(d,J=7.9Hz,2H),7.27−7.13(m,3H),6.82(d,J=7.1Hz,1H),6.47(br.s.,1H),4.00(s,2H),1.48(s,9H)。
【0158】
工程5:(6S,8S,9R,10S,11S,13S,14S,16R,17S)−6,9−ジフルオロ−11,16,17−トリヒドロキシ−17−(2−ヒドロキシアセチル)−10,13−ジメチル−6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−ドデカヒドロ−3H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−オンの合成
【0159】
【化35】
【0160】
(2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,11aR,12aS,12bS)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a,10,10−テトラメチル−1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−4H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−4−オン(20g,44.2mmol)を40%HBF水溶液(440mL)に懸濁し、混合液を25℃で48時間攪拌した。反応の完了後、水2Lを加え、固形物を濾取した。この固形物を水洗(1L)した後、MeOH(200mL)で洗浄し、標記化合物(11g,収率60.3%)を白色固体として得た。H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ7.25(d,J=10.1Hz,1H),6.28(d,J=10.1Hz,1H),6.10(s,1H),5.73−5.50(m,1H),5.39(br.s.,1H),4.85−4.60(m,2H),4.50(d,J=19.4Hz,1H),4.20−4.04(m,2H),2.46−2.06(m,6H),1.87−1.75(m,1H),1.56−1.30(m,6H),0.83(s,3H)。
【0161】
工程6:(2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−10−(4−(3−アミノベンジル)フェニル)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a−ジメチル−1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−4H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−4−オンの合成
【0162】
【化36】
【0163】
(6S,8S,9R,10S,11S,13S,14S,16R,17S)−6,9−ジフルオロ−11,16,17−トリヒドロキシ−17−(2−ヒドロキシアセチル)−10,13−ジメチル−6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−ドデカヒドロ−3H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−オン(実施例1,工程5)(4.4g,10.67mmol)とMgSO(6.42g,53.3mmol)のMeCN(100mL)懸濁液を20℃で1時間攪拌した。(3−(4−ホルミルベンジル)フェニル)カルバミン酸tert−ブチル(実施例1,工程4)(3.65g,11.74mmol)のMeCN(100mL)溶液を一度に加えた。氷浴を使用して内部温度を25℃未満に維持しながらトリフルオロメタンスルホン酸(9.01mL,53.3mmol)を滴下した。滴下後、混合液を20℃で2時間攪拌した。更にバイアル3本を上記のように準備した。全4本の反応混合液を合わせて濃縮し、残渣を分取HPLCにより精製し、標記化合物(4.5g,収率14.2%)を黄色固体として得た。LCMS(方法a,表4)R=2.65分;MS m/z=606.2(M+H)H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ7.44−7.17(m,5H),6.89(t,J=7.7Hz,1H),6.44−6.25(m,4H),6.13(br.s.,1H),5.79−5.52(m,2H),5.44(s,1H),5.17−4.89(m,3H),4.51(d,J=19.4Hz,1H),4.25−4.05(m,2H),3.73(s,2H),3.17(br.s.,1H),2.75−2.55(m,1H),2.36−1.97(m,3H),1.76−1.64(m,3H),1.59−1.39(m,4H),0.94−0.78(m,3H)。分取HPLC法:機器:Gilson 281セミ分取HPLCシステム;移動相:A:ギ酸/HO=0.01%v/v;B:MeCN;カラム:Luna C18 150*25 5μm;流速:25mL/分;モニター波長:220及び254nm。
【0164】
【表6】
【0165】
[実施例2](6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−10−(4−(3−アミノベンジル)フェニル)−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a−ジメチル−1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−4H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−4−オンの合成
【0166】
【化37】
【0167】
実施例2は(8S,9S,10R,11S,13S,14S,16R,17S)−11,16,17−トリヒドロキシ−17−(2−ヒドロキシアセチル)−10,13−ジメチル−6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−ドデカヒドロ−3H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−オンを使用して実施例1と同様の手順で合成した。H NMR(400MHz,DMSO−d)δ7.36(d,J=7.9Hz,2H),7.31(d,J=10.1Hz,1H),7.20(d,J=7.9Hz,2H),6.89(t,J=7.9Hz,1H),6.39−6.28(m,3H),6.16(dd,J=1.5,9.9Hz,1H),5.93(s,1H),5.39(s,1H),5.08(t,J=5.7Hz,1H),4.98−4.87(m,3H),4.78(d,J=3.1Hz,1H),4.49(dd,J=6.2,19.4Hz,1H),4.29(br.s.,1H),4.17(dd,J=5.5,19.6Hz,1H),3.74(s,2H),2.61−2.53(m,1H),2.36−2.26(m,1H),2.11(d,J=11.0Hz,1H),2.07(s,1H),2.02(d,J=12.8Hz,1H),1.83−1.54(m,5H),1.39(s,3H),1.16−0.96(m,2H),0.85(s,3H)。LCMS(方法a,表4)R=2.365分;m/z=570.2(M+H)
【0168】
[実施例3](6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−10−(4−(3−アミノベンジル)フェニル)−6b−フルオロ−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a−ジメチル−1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−4H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−4−オンの合成
【0169】
【化38】
【0170】
実施例3は(8S,9R,10S,11S,13S,14S,16R,17S)−9−フルオロ−11,16,17−トリヒドロキシ−17−(2−ヒドロキシアセチル)−10,13−ジメチル−6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−ドデカヒドロ−3H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−オンを使用して実施例1と同様の手順で合成した。
【0171】
H NMR(400MHz,DMSO−d)δ7.37−7.26(m,3H),7.21(d,J=7.9Hz,2H),6.89(t,J=7.7Hz,1H),6.43−6.30(m,3H),6.23(d,J=10.1Hz,1H),6.04(s,1H),5.75(s,1H),5.44(s,2H),5.09(t,J=5.7Hz,1H),4.93(br.s.,3H),4.50(dd,J=6.2,19.4Hz,1H),4.28−4.09(m,2H),3.74(s,2H),2.73−2.54(m,2H),2.35(d,J=13.2Hz,1H),2.25−2.12(m,1H),2.05(d,J=15.0Hz,1H),1.92−1.77(m,1H),1.74−1.58(m,3H),1.50(s,3H),1.45−1.30(m,1H),0.87(s,3H)。LCMS(方法a,表4)R=2.68分;m/z=588.1(M+H)
【0172】
[実施例4](S)−4−(2−(2−ブロモアセトアミド)アセトアミド)−5−((3−(4−((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−8b−(2−(ホスホノオキシ)アセチル)−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸の合成
【0173】
工程1:(S)−2−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)−5−(tert−ブトキシ)−5−オキソペンタン酸の合成
【0174】
【化39】
【0175】
2−クロロトリチルクロリド樹脂(30g,92mmol)と、トリエチルアミン(46.4g,458mmol)と、(S)−2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−(tert−ブトキシ)−5−オキソペンタン酸(25.5g,60mmol)を無水DCM(200mL)で調液した混合液に20℃で8時間Nをバブリングした。混合液を濾過し、樹脂をDCM(2×200mL)、MeOH(2×200mL)及びDMF(2×200mL)で洗浄した。樹脂をピペリジン:DMF溶液(1:4,400mL)に加え、混合液に8分間Nをバブリングした後、濾過した。この操作を5回繰り返し、Fmoc保護基を完全に除去した。樹脂をDMF(5×500mL)で洗浄し、樹脂に結合した(S)−2−アミノ−5−(tert−ブトキシ)−5−オキソペンタン酸を得た。2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)酢酸(13.38g,45.0mmol)と、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(7.86mL,45mmol)と、ヒドロキシベンゾトリアゾール(6.89g,45mmol)と、2−(6−クロロ−1H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルイソウロニウムヘキサフルオロホスフェート(V)(18.62g,45.0mmol)をDMF(200mL)で調液した混合液を20℃で30分間攪拌した。樹脂に結合した(S)−2−アミノ−5−(tert−ブトキシ)−5−オキソペンタン酸を混合液に加え、得られた混合液に25℃で1.5時間Nをバブリングした。混合液を濾過し、樹脂をDMF(4×500mL)とDCM(2×500mL)で洗浄した。混合液に1%TFA/DCM(5×500mL)を加え、5分間Nをバブリングした。混合液を濾過し、濾液をNaHCOの飽和溶液(200mL)に直接加えた。混合液を合わせて分離し、有機相を飽和クエン酸水溶液(4×400mL)とブライン(2×300mL)で洗浄した。最終有機溶液をNaSO(20g)で乾燥し、濾過し、減圧濃縮し、標記化合物(10g,収率20%)を薄黄色固体として得た。
【0176】
H NMR:(CDCl,400MHz)δ=7.75(d,J=7.5Hz,2H),7.59(br d,J=7.5Hz,2H),7.41−7.36(m,2H),7.30(t,J=7.0Hz,2H),5.82(br s,1H),4.57(br d,J=4.8Hz,1H),4.38(br d,J=7.5Hz,2H),4.27−4.15(m,1H),4.06−3.83(m,2H),2.50−2.29(m,2H),2.26−2.13(m,1H),2.06−2.02(m,1H),1.43(s,9H)。
【0177】
工程2:(S)−4−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)−5−((3−(4−((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸tert−ブチルの合成
【0178】
【化40】
【0179】
(S)−2−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)−5−(tert−ブトキシ)−5−オキソペンタン酸(実施例4,工程1)(424mg,0.878mmol)のDMF(3.5mL)溶液に(6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−10−(4−(3−アミノベンジル)フェニル)−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a−ジメチル−1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−4H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−4−オン(実施例2)(500mg,0.878mmol)とトリエチルアミン(0.3mL,2.63mmol)を25℃にて加えた。溶液を0℃まで冷却した後、2,4,6−トリプロピル−1,3,5,2,4,6−トリオキサトリホスフィナン2,4,6−トリオキシド(1.12g,1.755mmol)を加えた。反応混合液を25℃で12時間攪拌した。LCMSにより反応が完了したことを確認した。更にバイアル14本を上記のように準備した。全15本の反応混合液を合わせた。混合液を逆相カラムにより精製し、標記化合物(5g,収率38.4%)を黄色固体として得た。逆相カラム法:機器:島津LC−8A分取HPLC;カラム:Phenomenex Luna C18 200*40mm*10μm;移動相:A:HO(0.05%TFA);B:MeCN;濃度勾配:30分間で30%→100%B;流速:60mL/分;波長:220及び254nm。
【0180】
LCMS(方法a,表4)R=1.34分;m/z1016.6(M+H−18)
【0181】
工程3:(S)−4−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)−5−((3−(4−((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−8b−(2−((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸tert−ブチルの合成
【0182】
【化41】
【0183】
(S)−4−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)−5−((3−(4−((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸tert−ブチル(実施例4,工程2)(400mg,0.387mmol)のDMF(2.5mL)溶液に1H−テトラゾール(271mg,3.87mmol)とジ−tert−ブチルジエチルホスホロアミダイト(1.16g,4.64mmol)を加えた。反応液を室温で2.5時間攪拌後、0℃まで冷却した。得られた混合液に過酸化水素(241mg,2.127mmol)を加え、室温まで昇温し、1時間攪拌後、LCMSにより反応が完了したことを確認した。更にバイアル11本を上記のように準備した。全12本の反応混合液を合わせた。混合液を逆相カラムにより精製し、標記化合物(4.4g,収率64.2%)を黄色固体として得た。逆相カラム法:機器:島津LC−8A分取HPLC;カラム:Phenomenex Luna C18 200*40mm*10μm;移動相:A:HO;B:MeCN;濃度勾配:30分間で50%→100%B;流速:60mL/分;波長:220及び254nm。LCMS(方法a,表4)R=1.41分;m/z1226.7(M+H)
【0184】
工程4:(S)−4−(2−アミノアセトアミド)−5−((3−(4−((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−8b−(2−((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸tert−ブチルの合成
【0185】
【化42】
【0186】
(S)−4−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)−5−((3−(4−((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−8b−(2−((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸tert−ブチル(実施例4,工程3)(1.1g,0.897mmol)のMeCN(6mL)溶液に25℃にてピペリジン(0.75mL,7.58mmol)を加えた。反応液を室温で20分間攪拌後、LCMSにより反応が完了したことを確認した。更にバイアル3本を上記のように準備した。全4本の反応混合液を合わせた。混合液を濃縮して残渣を得、2時間攪拌下にPE(10mL)で処理した。得られた固形物を濾取し、減圧乾燥し、標記化合物(3.8g,収率90%)を黄色固体として得た。
【0187】
LCMS(方法a,表4)R=1.16分;m/z1004.6(M+H)
【0188】
工程5:(S)−4−(2−(2−ブロモアセトアミド)アセトアミド)−5−((3−(4−((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−8b−(2−((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸tert−ブチルの合成
【0189】
【化43】
【0190】
2−ブロモ酢酸(97mg,0.697mmol)のDMF(2.5mL)溶液に室温にてEEDQ(172mg,0.697mmol)を加えた。混合液を室温で1時間攪拌した。(S)−4−(2−アミノアセトアミド)−5−((3−(4−((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−8b−(2−((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸tert−ブチル(実施例4,工程4)(350mg,0.349mmol)を加え、得られた溶液を2.5時間攪拌後、LCMSにより反応が完了したことを確認した。更にバイアル7本を上記のように準備した。全8本の反応混合液を合わせた。反応液をDCM(100mL)で希釈し、HBr水溶液(1M,2×80mL)、NaHCO水溶液(60mL)及びブライン(60mL)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮し、標記化合物(2g,収率63.7%)を黄色油状物として得た。
【0191】
LCMS(方法a,表4)R=1.30分;m/z1124.2,1125.9(M+H)
【0192】
工程6:(S)−4−(2−(2−ブロモアセトアミド)アセトアミド)−5−((3−(4−((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−8b−(2−(ホスホノオキシ)アセチル)−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸の合成
【0193】
【化44】
【0194】
(S)−4−(2−(2−ブロモアセトアミド)アセトアミド)−5−((3−(4−((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−8b−(2−((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸tert−ブチル(実施例4,工程5)(2g,1.778mmol)のDCM(16mL)溶液にTFA(8mL,104mmol)を加え、得られた混合液を室温で40分間攪拌後、LCMSにより反応が完了したことを確認した。溶媒を減圧除去した。得られた残渣を分取HPLCにより精製した。移動相を直接凍結乾燥し、標記化合物(640mg,収率35.3%)を黄色固体として得た。分取HPLC法:機器:島津LC−8A分取HPLC;カラム:Phenomenex Luna C18 200*40mm*10μm;移動相:A:HO(0.09%TFA);B:MeCN;濃度勾配:20分間で30%→40%B;流速:60mL/分;波長:220及び254nm。
【0195】
H NMR:(DMSO−d6,400MHz)δ=9.88(s,1H),8.52(s,1H),8.24(br d,J=8.4Hz,1H),7.46(br d,J=7.9Hz,1H),7.42(s,1H),7.36(br d,J =7.9Hz,2H),7.30(br d,J=9.7Hz,1H),7.23−7.17(m,3H),6.90(br d,J=6.8Hz,1H),6.16(br d,J=10.4Hz,1H),5.93(s,1H),5.47(s,1H),4.96−4.85(m,3H),4.58(br dd,J=7.9,18.7Hz,1H),4.38(br d,J=5.3Hz,1H),4.29(br s,1H),3.93(s,2H),3.89(s,2H),3.80(br s,2H),2.30−2.22(m,2H),2.16−1.91(m,4H),1.85−1.62(m,6H),1.39(s,3H),1.00(br s,2H),0.87(s,3H)。LCMS(方法a,表4)R=2.86分;m/z956.0,958.0(M+H)
【0196】
[実施例5]リン酸二水素2−((2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−10−(4−(3−((S)−6−アミノ−2−(2−(2−ブロモアセトアミド)アセトアミド)ヘキサンアミド)ベンジル)フェニル)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−1,2,4,6a,6b,7,8,8a,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−8bH−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−8b−イル)−2−オキソエチルの合成
【0197】
工程1:((S)−5−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)−6−((3−(4−((2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−6−オキソヘキシル)カルバミン酸tert−ブチルの合成
【0198】
【化45】
【0199】
−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)グリシル)−N6−(tert−ブトキシカルボニル)−L−リジン(5.58g,8.26mmol)のDMF(60mL)溶液に0℃にて2,4,6−トリプロピル−1,3,5,2,4,6−トリオキサトリホスフィナン2,4,6−トリオキシド(10.51g,16.51mmol)とトリエチルアミン(3.45mL,24.77mmol)を加えた。得られた混合液を室温で1時間攪拌し、(2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−10−(4−(3−アミノベンジル)フェニル)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a−ジメチル−1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−4H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−4−オン(実施例1,工程6)(5g,8.26mmol)を加えた。得られた混合液を室温で5時間攪拌後、LCMSにより反応が完了したことを確認した。更にバイアル6本を上記のように準備した。全7本の反応混合液を合わせた。反応液を逆相カラムにより精製し、標記化合物(24g,収率24.62%)を白色固体として得た。逆相カラム法:機器:島津LC−8A分取HPLC;カラム:Phenomenex Luna C18 200*40mm*10μm;移動相:A:HO(0.05%TFA);B:MeCN;濃度勾配:30分間で30%→100%B;流速:60mL/分;波長:220及び254nm。
【0200】
LCMS(方法a,表4)R=1.29分;m/z1095.6(M+H−18)
【0201】
工程2:((S)−5−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)−6−((3−(4−((2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−8b−(2−((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−6−オキソヘキシル)カルバミン酸tert−ブチルの合成
【0202】
【化46】
【0203】
((S)−5−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)−6−((3−(4−((2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−6−オキソヘキシル)カルバミン酸tert−ブチル(実施例5,工程1)(3g,2.69mmol)のDMF(30mL)溶液に1H−テトラゾール(1.888g,26.9mmol)とジ−tert−ブチルジエチルホスホロアミダイト(8.06g,32.3mmol)を加え、反応液を室温で3.5時間攪拌した。過酸化水素(224mg,1.97mmol)を反応液に加え、0.5時間攪拌後、LCMSにより反応が完了したことを確認した。更にバイアル6本を上記のように準備した。全7本の反応混合液を合わせた。反応液を逆相カラムにより精製し、標記化合物(10g,純度78%,収率37.1%)を白色固体として得た。逆相カラム法:機器:島津LC−8A分取HPLC;カラム:Phenomenex Luna C18 200*40mm*10μm;移動相:A:HO;B:MeCN;濃度勾配:30分間で50%→100%B;流速:60mL/分;波長:220及び254nm。
【0204】
LCMS(方法a,表4)R=1.42分;m/z1305.7(M+H)
【0205】
工程3:((S)−5−(2−アミノアセトアミド)−6−((3−(4−((2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−8b−(2−((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−6−オキソヘキシル)カルバミン酸tert−ブチルの合成
【0206】
【化47】
【0207】
((S)−5−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)−6−((3−(4−((2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−8b−(2−((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−6−オキソヘキシル)カルバミン酸tert−ブチル(実施例5,工程2)(2.5g,1.969mmol)のMeCN(10mL)溶液にピペリジン(2mL,1.969mmol)を加え、反応液を室温で1時間攪拌後、LCMSにより反応が完了したことを確認した。更にバイアル3本を上記のように準備した。全4本の反応混合液を合わせた。反応液を濃縮して粗生成物を得、PE(30mL)中にて2時間攪拌した。得られた固形物を濾取し、減圧乾燥し、標記化合物(7g,純度83%,収率70.4%)を黄色固体として得た。
【0208】
LCMS(方法a,表4)R=1.17分;m/z1083.5(M+H)
【0209】
工程4:((S)−5−(2−(2−ブロモアセトアミド)アセトアミド)−6−((3−(4−((2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−8b−(2−((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−6−オキソヘキシル)カルバミン酸tert−ブチルの合成
【0210】
【化48】
【0211】
2−ブロモ酢酸(0.929g,6.68mmol)のDMF(35mL)溶液に2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン(1.653g,6.68mmol)を加え、得られた混合液を室温で1時間攪拌した。実施例5,工程3の生成物(3.5g,3.34mmol)を加え、得られた混合液を室温で2時間攪拌した。LCMSにより反応が完了したことを確認した。反応液をDCM(100mL)で希釈し、HBr水溶液(1M,2×80mL)、NaHCO水溶液(60mL)及びブライン(60mL)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮し、標記化合物(2g,収率51.2%)を黄色油状物として得た。
【0212】
LCMS(方法a,表4)R=1.32分;m/z1205.5(M+H)
【0213】
工程5:リン酸二水素2−((2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−10−(4−(3−((S)−6−アミノ−2−(2−(2−ブロモアセトアミド)アセトアミド)ヘキサンアミド)ベンジル)フェニル)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−1,2,4,6a,6b,7,8,8a,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−8bH−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−8b−イル)−2−オキソエチルの合成
【0214】
【化49】
【0215】
((S)−5−(2−アミノアセトアミド)−6−((3−(4−((2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−8b−(2−((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−6−オキソヘキシル)カルバミン酸tert−ブチル(実施例5,工程3)(2g,1.661mmol)のDCM(10mL)溶液にTFA(5mL,64.9mmol)を加え、反応液を室温で40分間攪拌後、LCMSにより反応が完了したことを確認した。溶媒を減圧除去し、粗生成物を分取HPLCにより精製した。移動相を直接凍結乾燥し、標記化合物(550mg,純度96.9%,収率32.3%)をオフホワイト固体として得た。分取HPLC法:機器:島津LC−8A分取HPLC;カラム:Phenomenex Luna C18 200*40mm*10μm;移動相:A:HO(0.09%TFA);B:MeCN;濃度勾配:20分間で30%→40%B;流速:60mL/分;波長:220及び254nm。
【0216】
H NMR:(DMSO−d6,400MHz)δppm 0.90(s,3H)1.19−1.41(m,2H)1.43−1.62(m,7H)1.64−1.77(m,3H)1.84(br d,J=14.55Hz,1H)1.95−2.07(m,1H)2.18−2.36(m,3H)2.65−2.78(m,3H)3.71−3.86(m,3H)3.89(s,2H)3.93(s,2H)4.20(br d,J=9.48Hz,1H)4.33−4.41(m,1H)4.59(br dd,J=18.41,8.05Hz,1H)4.81(br dd,J=18.52,8.60Hz,1H)4.94(d,J=4.63Hz,1H)5.50(s,1H)5.54−5.76(m,1H)6.13(s,1H)6.29(dd,J=10.14,1.32Hz,1H)6.95(d,J=7.72Hz,1H)7.15−7.28(m,4H)7.30−7.41(m,3H)7.51(br d,J=7.94Hz,1H)7.72(br s,3H)8.21(br d,J=7.72Hz,1H)8.54(t,J=5.62Hz,1H)9.93(br d,J=2.65Hz,1H)。LCMS(方法a,表4)R=2.31分。
【0217】
[実施例6](S)−2−((2−(2−ブロモアセトアミド)エチル)アミノ)−N−((S)−1−((3−(4−((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−1−オキソプロパン−2−イル)プロパンアミドの合成
実施例6の生成物はN−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)エチル)−N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−アラニル−L−アラニン(下記工程S1及びS2の生成物)を実施例2のアミノ生成物とカップリングした後に工程S4〜S6:(1)Fmoc脱保護、(2)2−ブロモ酢酸とのカップリング、及び(3)Boc脱保護を行うことにより合成することができる。Fmoc=フルオレニルメチルオキシカルボニル;Boc=tert−ブトキシカルボニル。
【0218】
【化50】
【0219】
一般的なシステイン連結プロトコール
PBS緩衝液(pH6〜7.4)で目的とする抗体の約5〜20mg/mL溶液を調製した。TCEP等の選択した還元剤をHO、DMSO、DMA又はDMF等の溶媒で希釈又は溶解し、濃度範囲1〜25mMの溶液とした。還元剤約2〜3.5当量を加えて短時間混合し、0〜4℃で一晩インキュベートすることにより抗体(抗hTNF hIgG1(D2E7)又は抗mTNF mIgG2a(8C11;McRae BL et al.J Crohns Colitis 10(1):69−76(2016))を部分的に還元した。次にトリス緩衝液(pH8〜8.5)(20〜50mM)を加えた後、リンカー−薬物のDMSO又はDMA溶液(合計15%未満)を加え、混合液を室温で2〜3時間インキュベートした。次に、過剰のリンカー−薬物と有機溶媒を精製により除去した。その後、精製したADC試料をSEC、HIC及び還元条件下の質量分析法により分析した。
【0220】
ADC分析手順
アニオン交換クロマトグラフィー(AEC)又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によりADCをプロファイリングし、ADCの連結度と純度を求めた。
【0221】
AEC。4×250mm Propac(TM)WAX−10カラム(Tosoh Bioscience,カタログ番号054999)を取付けたUltimate 3000デュアルLCシステム(Thermo Scientific)にADC約20μgをロードした。20mM MES(pH6.7)を緩衝液Aとし、20mM MES,500mM塩化ナトリウム(pH6.7)を緩衝液Bとし、カラムを100%緩衝液Aで平衡化し、流速1.0mL/分で18分間かけて100%緩衝液Aから100%緩衝液Bに変化させる直線濃度勾配を使用して溶出させた。
【0222】
HIC。4.6×35mmブチル−NPRカラム(Tosoh Bioscience,カタログ番号14947)を取付けたUltimate 3000デュアルLCシステム(Thermo Scientific)にADC約20μgをロードした。25mMリン酸ナトリウム、1.5M硫酸アンモニウム(pH7.0)を緩衝液Aとし、25mMリン酸ナトリウム、25%イソプロパノール(pH7.0)を緩衝液Bとし、カラムを100%緩衝液Aで平衡化し、流速0.8mL/分で12分間かけて100%緩衝液Aから100%緩衝液Bに変化させる直線濃度勾配を使用して溶出させた。
【0223】
SEC。7.8×300mm TSK−gel 3000SWXLカラム(Tosoh Bioscience,カタログ番号08541)を取付けたUltimate 3000デュアルLCシステム(Thermo Scientific)を使用してサイズ排除SECによりADCのサイズ分布をプロファイリングした。ADC約20μgをカラムにロードし、100mM硫酸ナトリウム、100mMリン酸ナトリウム(pH6.8)のアイソクラティック濃度勾配を使用して流速1.0mL/分で17分間かけて溶出させた。
【0224】
MS。還元した試料(10μL)を温度調節機能付き(5℃)CTCオートサンプラーによりAgilent 6550 Q−TOF LC/MSシステムに注入した。Waters C−4,3.5μm,300Å,内径2.1×50mm HPLCカラムで試料溶出を行った。移動相はA:0.1%ギ酸水溶液、B:0.1%ギ酸MeCN溶液とし、流速は0.45mL/分とし、カラムコンパートメントを40℃に維持した。
【0225】
HPLC濃度勾配は表5に示す通りである。
【0226】
【表7】
【0227】
[実施例7]アダリムマブをグルココルチコステロイドと連結した抗体薬物複合体の作製
アダリムマブのジスルフィド還元後にブロモアセトアミドグリシン−グルタミン酸ステロイド(実施例4)でアルキル化(連結)する2段階化学反応プロセスにより、集合体DARが4.0であるアダリムマブとBrAc−Gly−Glu−ステロイド−POのADCを作製した。
【0228】
【化51】
【0229】
濃度20mg/mLのアダリムマブ100mgをジフェニルホスフィノ酢酸(2.9〜3.0当量)で0℃にて一晩還元した。部分的に還元したアダリムマブを次にDMSO中にて実施例4(10当量)と室温で3時間連結させた。複数のNAP−25脱塩カラムを使用して連結混合物を先ず20mMトリス緩衝液,50mM NaCl(pH7.8)に緩衝液交換した。脱塩したADC溶液をAECにより精製し、ADCのDAR4成分を得た。AECクロマトグラフィー法:機器:Akta pure;カラム:Hitrap Q HP 5mL×2本;移動相:A:20mMトリス緩衝液(pH7.8);B:20mMトリス緩衝液,1M NaCl(pH7.8);濃度勾配:60分間で0%→25%B;流速:5mL/分;波長:280及び214nm。
【0230】
得られたADC製剤のクロマトグラフィー分離を図1に示すが、同図によると、ADCは還元された鎖間ジスルフィド結合数に応じて抗体に薬物リンカー分子2個が結合したもの(「DAR2」ピーク)と、薬物リンカー分子4個が結合したもの(「DAR4」ピーク)の異種混合物である。図1で使用したAEC条件は以下の通りであった。カラムはPropac(TM)WAX−10,4×250mm(Thermo Fisher Scientific,カタログ番号054999)とし、カラム温度は37℃とした。波長は280nmとし、ランタイムは18分とし、注入量は20μgとし、流速は1.0mL/分とした。移動相A:20mM MES(pH6.7)、移動相B:20mM MES,500mM NaCl(pH6.7)。濃度勾配プロファイルは以下の通りである(表6)。
【0231】
【表8】
【0232】
図2は精製したADCのデコンボリューション質量スペクトルを示す。このADCは抗体1分子に薬物リンカー分子4個を連結したものである。左側のピークは分子量24284.74Daであり、薬物リンカー1個が軽鎖1本に結合した結果である。右側のピークは分子量51513.96Daであり、薬物リンカー1個が重鎖1本に結合した結果である。上記手順に従って表7及び8のADCを作製した。
【0233】
【表9】
【0234】
【表10】
【0235】
ヒト及びマウス膜貫通型TNFαGREレポーター細胞株の作製
親細胞株を作製するために、完全増殖培地(RPMI,10%FBS,1%L−グルタミン,1%ピルビン酸Na及び1%MEM NEAA)2mLを加えた6ウェルプレート(Costar:3516)にK562細胞をウェル当たり500,000個の割合で37℃、5%CO下に24時間播種した。翌日、pGL4.36[Luc2P/MMTV/Hygro](Promega:E316)1.5μgと、pGl4.75[hRLuc/CMV](Promega:E639A)1.5μgと、PLUS試薬(Invitrogen:10964−021)3μLをOpti−MEM(Gibco:31985−070)244μLで希釈し、室温で15分間インキュベートした。pGL4.36[luc2P/MMTV/Hygro]ベクターはグルココルチコイド受容体やアンドロゲン受容体等の数種の核内受容体の活性化に応答してルシフェラーゼレポーター遺伝子luc2Pの転写を誘導するMMTV LTR(Mammary Tumor Virus Long Terminal Repeat:マウス乳がんウイルス末端反復配列)を含む。pGL4.75[hRluc/CMV]ベクターはルシフェラーゼレポーター遺伝子hRluc(Renilla reniformis)をコードし、発現性が高く且つ異常転写が少なくなるように設計されている。
【0236】
インキュベーション後、希釈DNA溶液を1:1リポフェクタミンLTX溶液(Invitogen:94756)(13.2μL+Opti−MEM256.8μL)と共にプレインキュベートし、室温で25分間インキュベートし、DNA−リポフェクタミンLTX複合体を形成した。インキュベーション後、細胞を入れたウェルにDNA−リポフェクタミン複合体500μLを直接加えた。K562細胞に37℃、5%CO下で24時間トランスフェクトした。インキュベーション後、細胞をPBS3mLで洗浄し、ハイグロマイシンB(Invitrogen:10687−010)125μg/mLを添加した完全増殖培地で2週間選択した。「K562pGL4.36[Luc2P/MMTV/Hygro]_pGL4.75[hRLuc/CMV]」細胞が生成された。
【0237】
マウス膜貫通型TNFαGREレポーター細胞株を作製するために、完全増殖培地(RPMI,10%FBS,1%L−グルタミン,1%ピルビン酸Na及び1%MEM NEAA)2mLを加えた6ウェルプレート(Costar:3516)に親細胞であるK562pGL4.36[Luc2P/MMTV/Hygro]_pGL4.75[hRLuc/CMV]をウェル当たり500,000個の割合で37℃、5%CO下に24時間播種した。翌日、タグなしマウスTNFをコードするmFL_TNFaDNA(Origene:MC208048)3μgと、PLUS試薬(Invitogen:10964−021)3μLをOpti−MEM(Gibco:31985−070)244μLで希釈し、室温で15分間インキュベートした。インキュベーション後、希釈DNA溶液を1:1リポフェクタミンLTX溶液(Invitogen:94756)(13.2μL+Opti−MEM256.8μL)と共にプレインキュベートし、室温で25分間インキュベートし、DNA−リポフェクタミンLTX複合体を形成した。インキュベーション後、細胞を入れたウェルにDNA−リポフェクタミン複合体500μLを直接加えた。親細胞であるK562pGL4.36[Luc2P/MMTV/Hygro]_pGL4.75[hRLuc/CMV]細胞に37℃、5%CO下で24時間トランスフェクトした。インキュベーション後、細胞をPBS3mLで洗浄し、ハイグロマイシンB(Invitrogen:10687−010)125μg/mLとG418(Gibco:10131−027)250μg/mLを添加した完全増殖培地で2週間選択した。「K562マウスFL−TNFaGRE(pGL4.36[luc2P/MMTV/Hygro])」細胞が生成された。
【0238】
ヒト膜貫通型TNFαGREレポーター細胞株を作製するために、親細胞であるK562pGL4.36[Luc2P/MMTV/Hygro]_pGL4.75[hRLuc/CMV]にプラスミドとしてhTNFΔ1−12C−Myc pcDNA3.1(−)プラスミドコンストラクトをトランスフェクトした。このプラスミドはtace耐性膜貫通型TNF(即ち配列番号1からアミノ酸77〜88を欠失したもの)をコードするpcDNA3.1(Thermofisherカタログ番号V79020)である。(tace耐性膜貫通型TNFについてはPerez C et al.Cell 63(2):251−8(1990)参照。)。その後、これらの細胞株を以下の実施例に記載するTNFαレポーターアッセイで使用した。
【0239】
GRE膜貫通型TNFαレポーターアッセイにおける抗TNFαイムノコンジュゲートの活性
K562親GRE(pGL4.36[luc2P/MMTV/Hygro])細胞と、K562mFL−TNF−a又はhTNFΔ1−12GRE(pGL4.36[luc2P/MMTV/Hygro])細胞を組織培養処理済み96ウェル白プレート(Costar:3917)でアッセイ培地(RPMI,1%CSFBS,1%L−グルタミン,1%ピルビン酸Na及び1%MEAA)50μLにウェル当たり50,000個の割合で播種した。細胞をアッセイ培地で3倍ずつ段階希釈したマウス若しくはヒト抗TNFa抗体薬物複合体、ステロイド化合物又は培地単独25μLで処理し、37℃、5%CO下に48時間インキュベートした。48時間インキュベーション後に細胞をDual−Gloルシフェラーゼアッセイシステム(Promega−E2920)75μLで10分間処理し、Microbeta(PerkinElmer)を使用して発光を測定した。4パラメータ曲線当てはめを使用してデータを解析し、EC50値を推定した。100nMデキサメタゾンを基準にして最大活性化率%を正規化した。マウスTNFα細胞株を使用した結果を下表9に示し、ヒトTNFα細胞株を使用した結果を下表10に示す。下表9中、ADCにおける抗体は抗マウスTNFα抗体8C11である。下表10中、ADCにおける抗体は抗ヒトTNFα抗体アダリムマブである。モノマー百分率(%)は上述したようにSECにより求めた(ADC分析手順参照)。
【0240】
【表11】
【0241】
【表12】
【0242】
リポ多糖刺激によるヒトPBMCサイトカイン放出アッセイにおける抗hTNFαイムノコンジュゲートの活性
ヒト初代末梢血単核細胞(PBMC)をBiological Specialty Corporation(カタログ番号214−00−10)から購入し、PBS50mLで洗浄し、5%DMSOを添加したFBSに再懸濁し、分取し、使用時まで液体窒素で凍結保存した。PBMCを解凍し、2%FBSと1%ペニシリン−ストレプトマイシンを添加したRPMI培地に再懸濁し、細胞アッセイプレート(Costar #3799)に播種した。次に種々の濃度の抗TNF ADCを加えて37℃、5%CO下に4時間インキュベートした。その後、LPS100ng/mLで細胞を一晩刺激した。翌日、プレートを1000rpmで5分間遠心し、上清培地100μLを別の96ウェルプレートに直接移し、IL−6(MSD,#K151AKB)とIL−1β(MSD,#K151AGB)の濃度を測定した。非線形回帰を使用して用量反応データをシグモイド曲線に当てはめ、GraphPad 5.0(GraphPad Software,Inc.)によりIC50値を計算した。表11に示す結果から明らかなように、抗TNF ADCは活性化させた初代免疫細胞からの炎症性サイトカインIL−6及びIL−1βの放出を抑制する強力な活性をもつ。
【0243】
【表13】
【0244】
接触過敏モデルにおける抗mTNFαイムノコンジュゲートの活性
感作物質(フルオレセインイソチオシアネート(FITC))の塗布により(T細胞により誘導される)遅延型過敏(DTH)反応を使用して急性皮膚炎症を誘発する急性接触過敏モデルで抗TNFαステロイドADCを評価した。耳介腫脹抑制能により抗TNFaステロイドADCの効力を測定した。ステロイドバイオマーカーであるコルチコステロンと1型プロコラーゲンN末端プロペプチド(P1NP)も読み取りデータに加え、夫々視床下部−下垂体−副腎(HPA)軸と骨代謝に及ぼす抗TNFaステロイドADC投与の推定影響を評価した。
【0245】
耳介腫脹
0日目にマウスに全身麻酔し、腹部を剃毛した。マイクロピペッターを使用し、FITC溶液(1.5%1:1アセトン:DBP溶液)400μLを腹部に皮膚塗布することによりマウスを感作した。6日後に、FITCによる耳介チャレンジの1時間前にマウスに溶媒又は治療剤を投与した。耳介チャレンジでは、マウスに全身麻酔し、FITC20μLを右耳介に塗布してチャレンジした。チャレンジから24時間後にマウスに全身麻酔し、その耳介厚をキャリパーで測定した。チャレンジした耳介とチャレンジしていない耳介の差を計算した。耳介チャレンジから72時間後に、マウスにACTHを1mpkの用量でIP注射し、ACTHの30分後に放血致死させた。血漿を採取し、P1NP、コルチコステロン、遊離ステロイド及び大分子の濃度を測定した。
【0246】
遊離ステロイドと内因性コルチコステロンの放出量の定量
最終濃度が8種類の異なる濃度値で0.03nM〜0.1μMとなるようにマウス血漿でステロイドの較正曲線を作成した。PBS緩衝液で調液した70mg/mLウシ血清アルブミン溶液で最終コルチコステロン濃度が0.3nM〜1μMとなるようにコルチコステロン較正曲線を作成した。0.1%ギ酸を添加したMeCN溶液160μLを試験血漿試料又は較正標準40μLに加えた。上清を蒸留水で希釈し、最終試料溶液30μLをLC/MS分析用に注入した。
【0247】
正イオンモードで動作するエレクトロスプレーイオン源とインターフェースで接続した島津AC20 HPLCシステムにAB Sciex 5500トリプル四重極質量分析計を接続し、遊離ステロイドとコルチコステロンの放出量の定量を行った。Waters XBridge BEH C18,2.1×30mm,3.5μmカラムをクロマトグラフィー分離に使用した。移動相Aは0.1%ギ酸Milli Q HPLC用水溶液とし、移動相Bは0.1%ギ酸MeCN溶液とした。2%移動相Bから98%移動相Bに変化させる直線濃度勾配を0.6〜1.2分間適用した。合計ランタイムは流速0.8mL/分で2.6分とした。質量分析計はイオン源温度700℃にて正イオンMRMモードで運転させた。
【0248】
血漿中P1NPの定量
タンパク質トリプシン消化に基づくLCMSプラットフォームで血漿中P1NPの定量を行った。血漿試料を部分的に沈降させ、MeCN/0.1M重炭酸アンモニウム/DTT混合液を加えることにより完全に還元させた。上清を採取し、ヨード酢酸を加えることによりアルキル化した。アルキル化したタンパク質をトリプシンにより消化し、得られたトリプシンペプチドをLCMSにより分析した。ウマ血清(非干渉性代替マトリックス)にスパイクした合成トリプシンペプチドを使用することにより較正曲線を作成した。MeCN/DTTタンパク質沈降混合液に加える内部標準として、安定同位体で標識したフランキングペプチド(トリプシンペプチドの両末端の3〜6アミノ酸延長部分)を使用し、消化効率とLCMS注入量を正規化した。
【0249】
Columnex Chromenta BB−C18,2.1×150mm,5μmカラムをクロマトグラフィー分離に使用した。移動相Aは0.1%ギ酸Milli Q HPLC用水溶液とし、移動相Bは0.1%ギ酸MeCN溶液とした。2%移動相Bから65%移動相Bに変化させる直線濃度勾配を0.6〜3分間適用した。合計ランタイムは流速0.45mL/分で8分とした。AB Sciex 4000Qトラップ型質量分析計をイオン源温度700℃にて正イオンMRMモードで使用し、P1NPペプチドを定量した。
【0250】
結果
結果を下表12に示す。
【0251】
【表14】
【0252】
コラーゲン誘発性関節炎における抗mTNFαイムノコンジュゲートの活性
抗mTNFaステロイドADC(ADC1)が疾患に作用する能力をコラーゲン誘発性関節炎(CIA)の関節炎モデルで評価した。
【0253】
これらの実験では、雄性DBA/1JマウスをJackson Labs(Bar Harbor,ME)から入手した。マウスを6〜8週齢で使用した。温度と湿度を一定に保ちながら全動物を12時間明暗サイクル下で飼育し、げっ歯類飼料チャウ(Lab Diet 5010 PharmaServ,Framingham,MA)と水を自由に摂取させた。アッヴィ社(AbbVie)はAAALAC(Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care:実験動物ケア評価認証協会)から認証を取得しており、全手順は動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee:IACUC)により承認され、主治獣医師の監督下に行われた。体重と健康状態をチェックし、>20%体重減少を示す場合には動物を安楽死させた。
【0254】
0.1N酢酸に溶解したII型ウシコラーゲン(MD Biosciences)100μgと加熱死菌結核菌(Mycobacterium tuberculosis)H37Ra(完全フロイントアジュバント,Difco,Laurence,KS)200μgを含有するエマルジョン100μLを雄性DBA/Jマウスの尾基部に皮内(i.d.)投与により免疫した。コラーゲン免疫から21日後にチモサンA(Sigma,St.Louis,MO)1mgをPBSで調液してマウスに腹腔内投与することによりブーストした。ブースト後、マウスを関節炎について週3〜5回チェックした。Dyerスプリングキャリパー(Dyer 310−115)を使用して後肢の足腫脹を評価した。
【0255】
最初に疾患の臨床徴候が現れた24〜28日目にマウスをリストに登録し、関節炎重症度が同等のグループに分けた。登録時に早期治療処置を開始した。
【0256】
抗mTNFmAb(高用量)又は抗mTNFステロイドADC(高用量及び低用量mpk)を0.9%生理食塩水で調液し、動物に1回腹腔内(i.p.)投与した。投与から24時間後と72時間後にテールニック法により抗体暴露用に採血した。終末時点で病理組織試験用に足を採取した。終末時点で心臓穿刺により全血球計数(Sysmex XT−2000iV)用に採血した。ANOVAにより統計的有意差を判定した。
【0257】
結果を図3に示すが、抗TNFaステロイドADCを単回投与すると、抗TNFamAb又は溶媒単独に比較して約28日間の足腫脹の改善により作用時間を延長できることが明らかである。
【0258】
血漿中のADC安定性
マレイミド系リンカーのインビボ安定性を高めるために加水分解が利用されているが、一般に塩基性pHに暴露する必要があるため、抗体の変性(例えば脱アミド化)、不均一性増加、収率低下等に繋がる恐れがある(Shen et al.,Nature Biotechnology 30:184-189(2012)(マレイミドを加水分解して薬物の早期放出と薬物全身暴露を避ける);Strop et al.,Chemistry & Biology 20(2):161−167(2013)(同様の報告);Tumey et al.,Bioconjugate Chem 25(10):1871−1880(2014)(塩基性条件下の環加水分解を可能にするために近位PEG鎖を使用する);Lyon et al.,Nature Biotechnology 32:1059−1062(2014)(スクシンイミド加水分解物の生成を助長する方法);Christie et al.,J Control Release 220(PtB):660−70(28 Dec 2015)(塩基性条件下のスクシンイミド環加水分解を助長するためにN−アリールマレイミドを使用する);Dovgan et al.,Scientific Reports 6:1(2016)(長期間にわたって弱塩基性条件下の環加水分解を助長するために2−(マレイミドメチル)−1,3−ジオキサンを使用する);及びJ Pharm Sci 2013:102(6)1712−1723(アスパラギンの脱アミド化は緩衝液種、pH及び温度に依存する))。一方、マレイミド(連結とその後の塩基性pHでの環加水分解)では数日間を要するが、ブロモアセトアミドを使用した典型的な連結条件は数時間以内で完了する。更に、システインとブロモアセトアミドの反応中に形成される2−メルカプトアセトアミドは逆マイケル反応を生じにくく、下表13でADC4について実証するように、リンカーと抗体の安定した結合が得られる。
【0259】
【表15】
【0260】
溶液中のADC安定性
長期安定性を評価するために、バイオ医薬品で加速ストレス試験を実施した。この試験のプロトコールは40℃の15mMヒスチジン中で100mg/mLのバイオ医薬品を21日間保温する。ADC4でこの試験を行った処、凝集増加率は<5%であったが、これに対して米国特許出願公開第2018/012600号(公開日2018年5月10日)のADC203の凝集増加率は18%であった(表14)。これは、Gly−Gluリンカーとペイロードのリン酸プロドラッグによりADC4の性質が改善されたことを実証するものである。米国特許出願公開第2018/012600号のADC203は以下の通りである。
【0261】
【化52】
式中、n=4であり、Aは抗ヒトTNFa抗体アダリムマブを表す。
【0262】
【表16】
【0263】
リン酸プロドラッグには、DARに基づく精製にアニオン交換クロマトグラフィーを使用できるという利点もある。その結果、疎水性相互作用クロマトグラフィーに比較してピーク分離が改善され、DARに基づいて精製されたADCの収率が高くなる。
【0264】
製剤化用緩衝液中で、ADC203の加水分解されたスクシンイミド環は閉環体と平衡状態にある。閉環体はカニクイザルにおいてインビボで逆マイケル反応とそれに伴うリンカー−薬物の減少を起こし易い(図4)。
【0265】
【化53】
【0266】
標準液体保存条件下で開環形のコンフォメーションにおけるスクシンイミド結合は6ヶ月後に閉環形のコンフォメーションに比較して5℃で5%超、25℃で15%超改善されるであろう(表15)。
【0267】
【表17】
【0268】
当然のことながら、発明を実施するための形態のセクションは特許請求の範囲を解釈するために使用するものであるが、発明の概要と要約のセクションはそうではない。発明の概要と要約のセクションは本発明者らが想定する本開示の代表的な実施形態の全部ではなく、1例以上を明示するものであり、従って、如何なる点においても本開示と以下の特許請求の範囲を制限するものではない。
【0269】
以上、特定機能の実施と機能間の関係を具体的に示す機能的構成要素により本開示について説明した。これらの機能的構成要素の適用範囲については説明の便宜のために本願中で任意に定義した。特定機能とその関係が適切に達成される限り、別の適用範囲を定義することもできる。
【0270】
特定の実施形態に関する上記記載から本開示の一般的な特性が完全に明らかになり、第三者は本開示の一般概念から逸脱しない限り、当業者の技能の範囲内の知識を適用することにより、過度の実験を必要とせずにこのような特定の実施形態を種々の用途に合わせて容易に改変及び/又は応用することができる。従って、このような応用及び改変も、本願に提示する教示と手引きに基づき、本願に開示する実施形態の等価物の意味と範囲に含むものとする。当然のことながら、本願における術語及び用語は説明を目的としており、制限を目的とするものではなく、本明細書の用語及び術語は本願の教示と手引きに照らして当業者により解釈されるべきである。
【0271】
本開示の領域及び範囲は上記の代表的な実施形態のいずれにも制限されるべきではなく、以下の特許請求の範囲とその等価物によってのみ限定されるべきである。
【0272】
資料援用
特許及び出願公開を含めて発明の詳細な説明で引用した全刊行物はその開示内容全体を本願に援用する。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]