【実施例】
【0139】
当然のことながら、本願に記載する実施例及び実施形態は例証のみを目的とし、それらの記載に照らして種々の改変又は変更が当業者に想到され、このような改変又は変更も本開示の趣旨と範囲に含むものとする。
【0140】
出発原料は市販されており、本願に記載する手順、文献に記載されている手順又は有機化学分野の当業者に周知の手順により製造してもよい。記載する試薬/反応体の名称は市販薬瓶に表示されている名称又はIUPAC規則、CambridgeSoft(R)ChemDraw Ultra 12.0、CambridgeSoft(R)Chemistry E−Notebook 11若しくはAutoNom 2000により命名された名称である。当然のことながら、本願に記載する実施例及び実施形態は例証のみを目的とし、それらの記載に照らして種々の改変又は変更が当業者に想到され、このような改変又は変更も本開示の趣旨と範囲に含むものとする。
【0141】
化合物合成及び特性決定用分析法
以下の手順の詳細、一般的な手順の説明又は実施例の表には分析データが含まれている。特に指定しない限り、全ての
1H及び
13C NMRデータはVarian Mercury Plus 400MHz又はBruker AVIII 300MHz機器で取得し、化学シフトは百万分率(ppm)で表す。HPLC分析データについては実験セクションに詳述するか、又は表4に示す方法を使用し、LC/MS及びHPLC条件を箇条書きする。
【0142】
【表4】
【0143】
以下の実施例で使用する略語は以下の通りである。
【0144】
【表5】
【0145】
[実施例1](2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10S,11aR,12aS,12bS)−10−(4−(3−アミノベンジル)フェニル)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a−ジメチル−1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−4H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−4−オンの合成
【0146】
工程1:4−(ブロモメチル)ベンズアルデヒドの合成
【0147】
【化31】
【0148】
水素化ジイソブチルアルミニウム(153mL,153mmol,1Mトルエン溶液)を4−(ブロモメチル)ベンゾニトリル(20g,102mmol)の0℃トルエン(400mL)溶液に1時間かけて滴下した。更にバイアル2本を上記のように準備した。全3本の反応混合液を合わせた。混合液に10%HCl水溶液(1.5L)を加えた。混合液をDCM(3×500mL)で抽出した。有機層をNa
2SO
4で乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液PE:EtOAc=10:1)により精製し、標記化合物(50g,収率82%)を白色固体として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ10.02(s,1H),7.91−7.82(m,2H),7.56(d,J=7.9Hz,2H),4.55−4.45(m,2H)。
【0149】
工程2:3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アニリンの合成
【0150】
【化32】
【0151】
3−ブロモアニリン(40g,233mmol)の1,4−ジオキサン(480mL)溶液に4,4,4’,4’,5,5,5’,5’−テトラメチル−2,2’−ビ(1,3,2−ジオキサボロラン)(94g,372mmol)と、酢酸カリウム(45.6g,465mmol)と、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリ−i−プロピル−1,1’−ビフェニル(8.07g,13.95mmol)と、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(8.52g,9.30mmol)を加えた。得られた混合液を窒素下で80℃に4時間加熱した。バイアルをもう1本上記のように準備した。2本の反応混合液を合わせて濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液PE:EtOAc=10:1)により精製し、標記化合物(60g,収率55.4%)を薄黄色固体として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ7.23−7.13(m,3H),6.80(d,J=7.5Hz,1H),3.82−3.38(m,2H),1.34(s,12H)。
【0152】
工程3:(3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)カルバミン酸tert−ブチルの合成
【0153】
【化33】
【0154】
3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アニリン(実施例1,工程2)(30g,137mmol)と二炭酸ジ−tert−ブチル(38.9g,178mmol)をトルエン(600mL)中にて100℃で24時間混合した。バイアルをもう1本上記のように準備した。2本の反応混合液を合わせて混合液を蒸発させ、EtOAc(1.5L)に溶解し、0.1N HCl(3×2L)とブライン(3L)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、濾過し、減圧濃縮し、標記化合物(50g,収率57%)を赤色固体として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ7.63(br m,2H),7.48(d,J=7.1Hz,1H),7.37−7.28(m,1H),1.52(s,9H),1.34(s,12H)。
【0155】
工程4:(3−(4−ホルミルベンジル)フェニル)カルバミン酸tert−ブチルの合成
【0156】
【化34】
【0157】
4−(ブロモメチル)ベンズアルデヒド(実施例1,工程1)(24.94g,125mmol)と、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンジクロロパラジウム(II)DCM錯体(13.75g,18.80mmol)と、(3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)カルバミン酸tert−ブチル(実施例1,工程3)(20g,62.7mmol)と、炭酸カリウム(43.3g,313mmol)をテトラヒドロフラン(400mL)で調液した混合液を80℃まで12時間加熱した。バイアルをもう1本上記のように準備した。2本の反応混合液を合わせて水(500mL)で希釈した。水性混合液をEtOAc(3×500mL)で抽出した。有機層を合わせてNa
2SO
4で乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液PE:EtOAc=10:1)により精製し、標記化合物(15g,収率38.4%)を白色固体として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ9.95(s,1H),7.78(d,J=7.9Hz,2H),7.33(d,J=7.9Hz,2H),7.27−7.13(m,3H),6.82(d,J=7.1Hz,1H),6.47(br.s.,1H),4.00(s,2H),1.48(s,9H)。
【0158】
工程5:(6S,8S,9R,10S,11S,13S,14S,16R,17S)−6,9−ジフルオロ−11,16,17−トリヒドロキシ−17−(2−ヒドロキシアセチル)−10,13−ジメチル−6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−ドデカヒドロ−3H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−オンの合成
【0159】
【化35】
【0160】
(2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,11aR,12aS,12bS)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a,10,10−テトラメチル−1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−4H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−4−オン(20g,44.2mmol)を40%HBF
4水溶液(440mL)に懸濁し、混合液を25℃で48時間攪拌した。反応の完了後、水2Lを加え、固形物を濾取した。この固形物を水洗(1L)した後、MeOH(200mL)で洗浄し、標記化合物(11g,収率60.3%)を白色固体として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ7.25(d,J=10.1Hz,1H),6.28(d,J=10.1Hz,1H),6.10(s,1H),5.73−5.50(m,1H),5.39(br.s.,1H),4.85−4.60(m,2H),4.50(d,J=19.4Hz,1H),4.20−4.04(m,2H),2.46−2.06(m,6H),1.87−1.75(m,1H),1.56−1.30(m,6H),0.83(s,3H)。
【0161】
工程6:(2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−10−(4−(3−アミノベンジル)フェニル)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a−ジメチル−1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−4H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−4−オンの合成
【0162】
【化36】
【0163】
(6S,8S,9R,10S,11S,13S,14S,16R,17S)−6,9−ジフルオロ−11,16,17−トリヒドロキシ−17−(2−ヒドロキシアセチル)−10,13−ジメチル−6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−ドデカヒドロ−3H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−オン(実施例1,工程5)(4.4g,10.67mmol)とMgSO
4(6.42g,53.3mmol)のMeCN(100mL)懸濁液を20℃で1時間攪拌した。(3−(4−ホルミルベンジル)フェニル)カルバミン酸tert−ブチル(実施例1,工程4)(3.65g,11.74mmol)のMeCN(100mL)溶液を一度に加えた。氷浴を使用して内部温度を25℃未満に維持しながらトリフルオロメタンスルホン酸(9.01mL,53.3mmol)を滴下した。滴下後、混合液を20℃で2時間攪拌した。更にバイアル3本を上記のように準備した。全4本の反応混合液を合わせて濃縮し、残渣を分取HPLCにより精製し、標記化合物(4.5g,収率14.2%)を黄色固体として得た。LCMS(方法a,表4)R
t=2.65分;MS m/z=606.2(M+H)
+;
1H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ7.44−7.17(m,5H),6.89(t,J=7.7Hz,1H),6.44−6.25(m,4H),6.13(br.s.,1H),5.79−5.52(m,2H),5.44(s,1H),5.17−4.89(m,3H),4.51(d,J=19.4Hz,1H),4.25−4.05(m,2H),3.73(s,2H),3.17(br.s.,1H),2.75−2.55(m,1H),2.36−1.97(m,3H),1.76−1.64(m,3H),1.59−1.39(m,4H),0.94−0.78(m,3H)。分取HPLC法:機器:Gilson 281セミ分取HPLCシステム;移動相:A:ギ酸/H
2O=0.01%v/v;B:MeCN;カラム:Luna C18 150*25 5μm;流速:25mL/分;モニター波長:220及び254nm。
【0164】
【表6】
【0165】
[実施例2](6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−10−(4−(3−アミノベンジル)フェニル)−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a−ジメチル−1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−4H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−4−オンの合成
【0166】
【化37】
【0167】
実施例2は(8S,9S,10R,11S,13S,14S,16R,17S)−11,16,17−トリヒドロキシ−17−(2−ヒドロキシアセチル)−10,13−ジメチル−6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−ドデカヒドロ−3H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−オンを使用して実施例1と同様の手順で合成した。
1H NMR(400MHz,DMSO−d
6)δ7.36(d,J=7.9Hz,2H),7.31(d,J=10.1Hz,1H),7.20(d,J=7.9Hz,2H),6.89(t,J=7.9Hz,1H),6.39−6.28(m,3H),6.16(dd,J=1.5,9.9Hz,1H),5.93(s,1H),5.39(s,1H),5.08(t,J=5.7Hz,1H),4.98−4.87(m,3H),4.78(d,J=3.1Hz,1H),4.49(dd,J=6.2,19.4Hz,1H),4.29(br.s.,1H),4.17(dd,J=5.5,19.6Hz,1H),3.74(s,2H),2.61−2.53(m,1H),2.36−2.26(m,1H),2.11(d,J=11.0Hz,1H),2.07(s,1H),2.02(d,J=12.8Hz,1H),1.83−1.54(m,5H),1.39(s,3H),1.16−0.96(m,2H),0.85(s,3H)。LCMS(方法a,表4)R
t=2.365分;m/z=570.2(M+H)
+。
【0168】
[実施例3](6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−10−(4−(3−アミノベンジル)フェニル)−6b−フルオロ−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a−ジメチル−1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−4H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−4−オンの合成
【0169】
【化38】
【0170】
実施例3は(8S,9R,10S,11S,13S,14S,16R,17S)−9−フルオロ−11,16,17−トリヒドロキシ−17−(2−ヒドロキシアセチル)−10,13−ジメチル−6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−ドデカヒドロ−3H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−オンを使用して実施例1と同様の手順で合成した。
【0171】
1H NMR(400MHz,DMSO−d
6)δ7.37−7.26(m,3H),7.21(d,J=7.9Hz,2H),6.89(t,J=7.7Hz,1H),6.43−6.30(m,3H),6.23(d,J=10.1Hz,1H),6.04(s,1H),5.75(s,1H),5.44(s,2H),5.09(t,J=5.7Hz,1H),4.93(br.s.,3H),4.50(dd,J=6.2,19.4Hz,1H),4.28−4.09(m,2H),3.74(s,2H),2.73−2.54(m,2H),2.35(d,J=13.2Hz,1H),2.25−2.12(m,1H),2.05(d,J=15.0Hz,1H),1.92−1.77(m,1H),1.74−1.58(m,3H),1.50(s,3H),1.45−1.30(m,1H),0.87(s,3H)。LCMS(方法a,表4)R
t=2.68分;m/z=588.1(M+H)
+。
【0172】
[実施例4](S)−4−(2−(2−ブロモアセトアミド)アセトアミド)−5−((3−(4−((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−8b−(2−(ホスホノオキシ)アセチル)−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸の合成
【0173】
工程1:(S)−2−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)−5−(tert−ブトキシ)−5−オキソペンタン酸の合成
【0174】
【化39】
【0175】
2−クロロトリチルクロリド樹脂(30g,92mmol)と、トリエチルアミン(46.4g,458mmol)と、(S)−2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−(tert−ブトキシ)−5−オキソペンタン酸(25.5g,60mmol)を無水DCM(200mL)で調液した混合液に20℃で8時間N
2をバブリングした。混合液を濾過し、樹脂をDCM(2×200mL)、MeOH(2×200mL)及びDMF(2×200mL)で洗浄した。樹脂をピペリジン:DMF溶液(1:4,400mL)に加え、混合液に8分間N
2をバブリングした後、濾過した。この操作を5回繰り返し、Fmoc保護基を完全に除去した。樹脂をDMF(5×500mL)で洗浄し、樹脂に結合した(S)−2−アミノ−5−(tert−ブトキシ)−5−オキソペンタン酸を得た。2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)酢酸(13.38g,45.0mmol)と、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(7.86mL,45mmol)と、ヒドロキシベンゾトリアゾール(6.89g,45mmol)と、2−(6−クロロ−1H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルイソウロニウムヘキサフルオロホスフェート(V)(18.62g,45.0mmol)をDMF(200mL)で調液した混合液を20℃で30分間攪拌した。樹脂に結合した(S)−2−アミノ−5−(tert−ブトキシ)−5−オキソペンタン酸を混合液に加え、得られた混合液に25℃で1.5時間N
2をバブリングした。混合液を濾過し、樹脂をDMF(4×500mL)とDCM(2×500mL)で洗浄した。混合液に1%TFA/DCM(5×500mL)を加え、5分間N
2をバブリングした。混合液を濾過し、濾液をNaHCO
3の飽和溶液(200mL)に直接加えた。混合液を合わせて分離し、有機相を飽和クエン酸水溶液(4×400mL)とブライン(2×300mL)で洗浄した。最終有機溶液をNa
2SO
4(20g)で乾燥し、濾過し、減圧濃縮し、標記化合物(10g,収率20%)を薄黄色固体として得た。
【0176】
1H NMR:(CDCl
3,400MHz)δ=7.75(d,J=7.5Hz,2H),7.59(br d,J=7.5Hz,2H),7.41−7.36(m,2H),7.30(t,J=7.0Hz,2H),5.82(br s,1H),4.57(br d,J=4.8Hz,1H),4.38(br d,J=7.5Hz,2H),4.27−4.15(m,1H),4.06−3.83(m,2H),2.50−2.29(m,2H),2.26−2.13(m,1H),2.06−2.02(m,1H),1.43(s,9H)。
【0177】
工程2:(S)−4−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)−5−((3−(4−((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸tert−ブチルの合成
【0178】
【化40】
【0179】
(S)−2−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)−5−(tert−ブトキシ)−5−オキソペンタン酸(実施例4,工程1)(424mg,0.878mmol)のDMF(3.5mL)溶液に(6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−10−(4−(3−アミノベンジル)フェニル)−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a−ジメチル−1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−4H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−4−オン(実施例2)(500mg,0.878mmol)とトリエチルアミン(0.3mL,2.63mmol)を25℃にて加えた。溶液を0℃まで冷却した後、2,4,6−トリプロピル−1,3,5,2,4,6−トリオキサトリホスフィナン2,4,6−トリオキシド(1.12g,1.755mmol)を加えた。反応混合液を25℃で12時間攪拌した。LCMSにより反応が完了したことを確認した。更にバイアル14本を上記のように準備した。全15本の反応混合液を合わせた。混合液を逆相カラムにより精製し、標記化合物(5g,収率38.4%)を黄色固体として得た。逆相カラム法:機器:島津LC−8A分取HPLC;カラム:Phenomenex Luna C18 200*40mm*10
μm;移動相:A:H
2O(0.05%TFA);B:MeCN;濃度勾配:30分間で30%→100%B;流速:60mL/分;波長:220及び254nm。
【0180】
LCMS(方法a,表4)R
t=1.34分;m/z1016.6(M+H−18)
+。
【0181】
工程3:(S)−4−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)−5−((3−(4−((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−8b−(2−((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸tert−ブチルの合成
【0182】
【化41】
【0183】
(S)−4−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)−5−((3−(4−((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸tert−ブチル(実施例4,工程2)(400mg,0.387mmol)のDMF(2.5mL)溶液に1H−テトラゾール(271mg,3.87mmol)とジ−tert−ブチルジエチルホスホロアミダイト(1.16g,4.64mmol)を加えた。反応液を室温で2.5時間攪拌後、0℃まで冷却した。得られた混合液に過酸化水素(241mg,2.127mmol)を加え、室温まで昇温し、1時間攪拌後、LCMSにより反応が完了したことを確認した。更にバイアル11本を上記のように準備した。全12本の反応混合液を合わせた。混合液を逆相カラムにより精製し、標記化合物(4.4g,収率64.2%)を黄色固体として得た。逆相カラム法:機器:島津LC−8A分取HPLC;カラム:Phenomenex Luna C18 200*40mm*10
μm;移動相:A:H
2O;B:MeCN;濃度勾配:30分間で50%→100%B;流速:60mL/分;波長:220及び254nm。LCMS(方法a,表4)R
t=1.41分;m/z1226.7(M+H)
+。
【0184】
工程4:(S)−4−(2−アミノアセトアミド)−5−((3−(4−((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−8b−(2−((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸tert−ブチルの合成
【0185】
【化42】
【0186】
(S)−4−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)−5−((3−(4−((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−8b−(2−((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸tert−ブチル(実施例4,工程3)(1.1g,0.897mmol)のMeCN(6mL)溶液に25℃にてピペリジン(0.75mL,7.58mmol)を加えた。反応液を室温で20分間攪拌後、LCMSにより反応が完了したことを確認した。更にバイアル3本を上記のように準備した。全4本の反応混合液を合わせた。混合液を濃縮して残渣を得、2時間攪拌下にPE(10mL)で処理した。得られた固形物を濾取し、減圧乾燥し、標記化合物(3.8g,収率90%)を黄色固体として得た。
【0187】
LCMS(方法a,表4)R
t=1.16分;m/z1004.6(M+H)
+。
【0188】
工程5:(S)−4−(2−(2−ブロモアセトアミド)アセトアミド)−5−((3−(4−((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−8b−(2−((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸tert−ブチルの合成
【0189】
【化43】
【0190】
2−ブロモ酢酸(97mg,0.697mmol)のDMF(2.5mL)溶液に室温にてEEDQ(172mg,0.697mmol)を加えた。混合液を室温で1時間攪拌した。(S)−4−(2−アミノアセトアミド)−5−((3−(4−((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−8b−(2−((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸tert−ブチル(実施例4,工程4)(350mg,0.349mmol)を加え、得られた溶液を2.5時間攪拌後、LCMSにより反応が完了したことを確認した。更にバイアル7本を上記のように準備した。全8本の反応混合液を合わせた。反応液をDCM(100mL)で希釈し、HBr水溶液(1M,2×80mL)、NaHCO
3水溶液(60mL)及びブライン(60mL)で洗浄した。有機層をNa
2SO
4で乾燥し、濾過し、減圧濃縮し、標記化合物(2g,収率63.7%)を黄色油状物として得た。
【0191】
LCMS(方法a,表4)R
t=1.30分;m/z1124.2,1125.9(M+H)
+。
【0192】
工程6:(S)−4−(2−(2−ブロモアセトアミド)アセトアミド)−5−((3−(4−((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−8b−(2−(ホスホノオキシ)アセチル)−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸の合成
【0193】
【化44】
【0194】
(S)−4−(2−(2−ブロモアセトアミド)アセトアミド)−5−((3−(4−((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−8b−(2−((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸tert−ブチル(実施例4,工程5)(2g,1.778mmol)のDCM(16mL)溶液にTFA(8mL,104mmol)を加え、得られた混合液を室温で40分間攪拌後、LCMSにより反応が完了したことを確認した。溶媒を減圧除去した。得られた残渣を分取HPLCにより精製した。移動相を直接凍結乾燥し、標記化合物(640mg,収率35.3%)を黄色固体として得た。分取HPLC法:機器:島津LC−8A分取HPLC;カラム:Phenomenex Luna C18 200*40mm*10μm;移動相:A:H
2O(0.09%TFA);B:MeCN;濃度勾配:20分間で30%→40%B;流速:60mL/分;波長:220及び254nm。
【0195】
1H NMR:(DMSO−d6,400MHz)δ=9.88(s,1H),8.52(s,1H),8.24(br d,J=8.4Hz,1H),7.46(br d,J=7.9Hz,1H),7.42(s,1H),7.36(br d,J =7.9Hz,2H),7.30(br d,J=9.7Hz,1H),7.23−7.17(m,3H),6.90(br d,J=6.8Hz,1H),6.16(br d,J=10.4Hz,1H),5.93(s,1H),5.47(s,1H),4.96−4.85(m,3H),4.58(br dd,J=7.9,18.7Hz,1H),4.38(br d,J=5.3Hz,1H),4.29(br s,1H),3.93(s,2H),3.89(s,2H),3.80(br s,2H),2.30−2.22(m,2H),2.16−1.91(m,4H),1.85−1.62(m,6H),1.39(s,3H),1.00(br s,2H),0.87(s,3H)。LCMS(方法a,表4)R
t=2.86分;m/z956.0,958.0(M+H)
+。
【0196】
[実施例5]リン酸二水素2−((2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−10−(4−(3−((S)−6−アミノ−2−(2−(2−ブロモアセトアミド)アセトアミド)ヘキサンアミド)ベンジル)フェニル)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−1,2,4,6a,6b,7,8,8a,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−8bH−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−8b−イル)−2−オキソエチルの合成
【0197】
工程1:((S)−5−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)−6−((3−(4−((2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−6−オキソヘキシル)カルバミン酸tert−ブチルの合成
【0198】
【化45】
【0199】
N
2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)グリシル)−N6−(tert−ブトキシカルボニル)−L−リジン(5.58g,8.26mmol)のDMF(60mL)溶液に0℃にて2,4,6−トリプロピル−1,3,5,2,4,6−トリオキサトリホスフィナン2,4,6−トリオキシド(10.51g,16.51mmol)とトリエチルアミン(3.45mL,24.77mmol)を加えた。得られた混合液を室温で1時間攪拌し、(2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−10−(4−(3−アミノベンジル)フェニル)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a−ジメチル−1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−4H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−4−オン(実施例1,工程6)(5g,8.26mmol)を加えた。得られた混合液を室温で5時間攪拌後、LCMSにより反応が完了したことを確認した。更にバイアル6本を上記のように準備した。全7本の反応混合液を合わせた。反応液を逆相カラムにより精製し、標記化合物(24g,収率24.62%)を白色固体として得た。逆相カラム法:機器:島津LC−8A分取HPLC;カラム:Phenomenex Luna C18 200*40mm*10
μm;移動相:A:H
2O(0.05%TFA);B:MeCN;濃度勾配:30分間で30%→100%B;流速:60mL/分;波長:220及び254nm。
【0200】
LCMS(方法a,表4)R
t=1.29分;m/z1095.6(M+H−18)
+。
【0201】
工程2:((S)−5−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)−6−((3−(4−((2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−8b−(2−((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−6−オキソヘキシル)カルバミン酸tert−ブチルの合成
【0202】
【化46】
【0203】
((S)−5−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)−6−((3−(4−((2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−6−オキソヘキシル)カルバミン酸tert−ブチル(実施例5,工程1)(3g,2.69mmol)のDMF(30mL)溶液に1H−テトラゾール(1.888g,26.9mmol)とジ−tert−ブチルジエチルホスホロアミダイト(8.06g,32.3mmol)を加え、反応液を室温で3.5時間攪拌した。過酸化水素(224mg,1.97mmol)を反応液に加え、0.5時間攪拌後、LCMSにより反応が完了したことを確認した。更にバイアル6本を上記のように準備した。全7本の反応混合液を合わせた。反応液を逆相カラムにより精製し、標記化合物(10g,純度78%,収率37.1%)を白色固体として得た。逆相カラム法:機器:島津LC−8A分取HPLC;カラム:Phenomenex Luna C18 200*40mm*10
μm;移動相:A:H
2O;B:MeCN;濃度勾配:30分間で50%→100%B;流速:60mL/分;波長:220及び254nm。
【0204】
LCMS(方法a,表4)R
t=1.42分;m/z1305.7(M+H)
+。
【0205】
工程3:((S)−5−(2−アミノアセトアミド)−6−((3−(4−((2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−8b−(2−((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−6−オキソヘキシル)カルバミン酸tert−ブチルの合成
【0206】
【化47】
【0207】
((S)−5−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)−6−((3−(4−((2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−8b−(2−((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−6−オキソヘキシル)カルバミン酸tert−ブチル(実施例5,工程2)(2.5g,1.969mmol)のMeCN(10mL)溶液にピペリジン(2mL,1.969mmol)を加え、反応液を室温で1時間攪拌後、LCMSにより反応が完了したことを確認した。更にバイアル3本を上記のように準備した。全4本の反応混合液を合わせた。反応液を濃縮して粗生成物を得、PE(30mL)中にて2時間攪拌した。得られた固形物を濾取し、減圧乾燥し、標記化合物(7g,純度83%,収率70.4%)を黄色固体として得た。
【0208】
LCMS(方法a,表4)R
t=1.17分;m/z1083.5(M+H)
+。
【0209】
工程4:((S)−5−(2−(2−ブロモアセトアミド)アセトアミド)−6−((3−(4−((2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−8b−(2−((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−6−オキソヘキシル)カルバミン酸tert−ブチルの合成
【0210】
【化48】
【0211】
2−ブロモ酢酸(0.929g,6.68mmol)のDMF(35mL)溶液に2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン(1.653g,6.68mmol)を加え、得られた混合液を室温で1時間攪拌した。実施例5,工程3の生成物(3.5g,3.34mmol)を加え、得られた混合液を室温で2時間攪拌した。LCMSにより反応が完了したことを確認した。反応液をDCM(100mL)で希釈し、HBr水溶液(1M,2×80mL)、NaHCO
3水溶液(60mL)及びブライン(60mL)で洗浄した。有機層をNa
2SO
4で乾燥し、濾過し、減圧濃縮し、標記化合物(2g,収率51.2%)を黄色油状物として得た。
【0212】
LCMS(方法a,表4)R
t=1.32分;m/z1205.5(M+H)
+。
【0213】
工程5:リン酸二水素2−((2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−10−(4−(3−((S)−6−アミノ−2−(2−(2−ブロモアセトアミド)アセトアミド)ヘキサンアミド)ベンジル)フェニル)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−1,2,4,6a,6b,7,8,8a,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−8bH−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−8b−イル)−2−オキソエチルの合成
【0214】
【化49】
【0215】
((S)−5−(2−アミノアセトアミド)−6−((3−(4−((2S,6aS,6bR,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−8b−(2−((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)−2,6b−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−6−オキソヘキシル)カルバミン酸tert−ブチル(実施例5,工程3)(2g,1.661mmol)のDCM(10mL)溶液にTFA(5mL,64.9mmol)を加え、反応液を室温で40分間攪拌後、LCMSにより反応が完了したことを確認した。溶媒を減圧除去し、粗生成物を分取HPLCにより精製した。移動相を直接凍結乾燥し、標記化合物(550mg,純度96.9%,収率32.3%)をオフホワイト固体として得た。分取HPLC法:機器:島津LC−8A分取HPLC;カラム:Phenomenex Luna C18 200*40mm*10
μm;移動相:A:H
2O(0.09%TFA);B:MeCN;濃度勾配:20分間で30%→40%B;流速:60mL/分;波長:220及び254nm。
【0216】
1H NMR:(DMSO−d6,400MHz)δppm 0.90(s,3H)1.19−1.41(m,2H)1.43−1.62(m,7H)1.64−1.77(m,3H)1.84(br d,J=14.55Hz,1H)1.95−2.07(m,1H)2.18−2.36(m,3H)2.65−2.78(m,3H)3.71−3.86(m,3H)3.89(s,2H)3.93(s,2H)4.20(br d,J=9.48Hz,1H)4.33−4.41(m,1H)4.59(br dd,J=18.41,8.05Hz,1H)4.81(br dd,J=18.52,8.60Hz,1H)4.94(d,J=4.63Hz,1H)5.50(s,1H)5.54−5.76(m,1H)6.13(s,1H)6.29(dd,J=10.14,1.32Hz,1H)6.95(d,J=7.72Hz,1H)7.15−7.28(m,4H)7.30−7.41(m,3H)7.51(br d,J=7.94Hz,1H)7.72(br s,3H)8.21(br d,J=7.72Hz,1H)8.54(t,J=5.62Hz,1H)9.93(br d,J=2.65Hz,1H)。LCMS(方法a,表4)R
t=2.31分。
【0217】
[実施例6](S)−2−((2−(2−ブロモアセトアミド)エチル)アミノ)−N−((S)−1−((3−(4−((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)−7−ヒドロキシ−8b−(2−ヒドロキシアセチル)−6a,8a−ジメチル−4−オキソ−2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b−ドデカヒドロ−1H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−10−イル)ベンジル)フェニル)アミノ)−1−オキソプロパン−2−イル)プロパンアミドの合成
実施例6の生成物はN−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)エチル)−N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−アラニル−L−アラニン(下記工程S1及びS2の生成物)を実施例2のアミノ生成物とカップリングした後に工程S4〜S6:(1)Fmoc脱保護、(2)2−ブロモ酢酸とのカップリング、及び(3)Boc脱保護を行うことにより合成することができる。Fmoc=フルオレニルメチルオキシカルボニル;Boc=tert−ブトキシカルボニル。
【0218】
【化50】
【0219】
一般的なシステイン連結プロトコール
PBS緩衝液(pH6〜7.4)で目的とする抗体の約5〜20mg/mL溶液を調製した。TCEP等の選択した還元剤をH
2O、DMSO、DMA又はDMF等の溶媒で希釈又は溶解し、濃度範囲1〜25mMの溶液とした。還元剤約2〜3.5当量を加えて短時間混合し、0〜4℃で一晩インキュベートすることにより抗体(抗hTNF hIgG1(D2E7)又は抗mTNF mIgG2a(8C11;McRae BL et al.J Crohns Colitis 10(1):69−76(2016))を部分的に還元した。次にトリス緩衝液(pH8〜8.5)(20〜50mM)を加えた後、リンカー−薬物のDMSO又はDMA溶液(合計15%未満)を加え、混合液を室温で2〜3時間インキュベートした。次に、過剰のリンカー−薬物と有機溶媒を精製により除去した。その後、精製したADC試料をSEC、HIC及び還元条件下の質量分析法により分析した。
【0220】
ADC分析手順
アニオン交換クロマトグラフィー(AEC)又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によりADCをプロファイリングし、ADCの連結度と純度を求めた。
【0221】
AEC。4×250mm Propac(TM)WAX−10カラム(Tosoh Bioscience,カタログ番号054999)を取付けたUltimate 3000デュアルLCシステム(Thermo Scientific)にADC約20μgをロードした。20mM MES(pH6.7)を緩衝液Aとし、20mM MES,500mM塩化ナトリウム(pH6.7)を緩衝液Bとし、カラムを100%緩衝液Aで平衡化し、流速1.0mL/分で18分間かけて100%緩衝液Aから100%緩衝液Bに変化させる直線濃度勾配を使用して溶出させた。
【0222】
HIC。4.6×35mmブチル−NPRカラム(Tosoh Bioscience,カタログ番号14947)を取付けたUltimate 3000デュアルLCシステム(Thermo Scientific)にADC約20
μgをロードした。25mMリン酸ナトリウム、1.5M硫酸アンモニウム(pH7.0)を緩衝液Aとし、25mMリン酸ナトリウム、25%イソプロパノール(pH7.0)を緩衝液Bとし、カラムを100%緩衝液Aで平衡化し、流速0.8mL/分で12分間かけて100%緩衝液Aから100%緩衝液Bに変化させる直線濃度勾配を使用して溶出させた。
【0223】
SEC。7.8×300mm TSK−gel 3000SW
XLカラム(Tosoh Bioscience,カタログ番号08541)を取付けたUltimate 3000デュアルLCシステム(Thermo Scientific)を使用してサイズ排除SECによりADCのサイズ分布をプロファイリングした。ADC約20μgをカラムにロードし、100mM硫酸ナトリウム、100mMリン酸ナトリウム(pH6.8)のアイソクラティック濃度勾配を使用して流速1.0mL/分で17分間かけて溶出させた。
【0224】
MS。還元した試料(10μL)を温度調節機能付き(5℃)CTCオートサンプラーによりAgilent 6550 Q−TOF LC/MSシステムに注入した。Waters C−4,3.5μm,300Å,内径2.1×50mm HPLCカラムで試料溶出を行った。移動相はA:0.1%ギ酸水溶液、B:0.1%ギ酸MeCN溶液とし、流速は0.45mL/分とし、カラムコンパートメントを40℃に維持した。
【0225】
HPLC濃度勾配は表5に示す通りである。
【0226】
【表7】
【0227】
[実施例7]アダリムマブをグルココルチコステロイドと連結した抗体薬物複合体の作製
アダリムマブのジスルフィド還元後にブロモアセトアミドグリシン−グルタミン酸ステロイド(実施例4)でアルキル化(連結)する2段階化学反応プロセスにより、集合体DARが4.0であるアダリムマブとBrAc−Gly−Glu−ステロイド−PO
4のADCを作製した。
【0228】
【化51】
【0229】
濃度20mg/mLのアダリムマブ100mgをジフェニルホスフィノ酢酸(2.9〜3.0当量)で0℃にて一晩還元した。部分的に還元したアダリムマブを次にDMSO中にて実施例4(10当量)と室温で3時間連結させた。複数のNAP−25脱塩カラムを使用して連結混合物を先ず20mMトリス緩衝液,50mM NaCl(pH7.8)に緩衝液交換した。脱塩したADC溶液をAECにより精製し、ADCのDAR4成分を得た。AECクロマトグラフィー法:機器:Akta pure;カラム:Hitrap Q HP 5mL×2本;移動相:A:20mMトリス緩衝液(pH7.8);B:20mMトリス緩衝液,1M NaCl(pH7.8);濃度勾配:60分間で0%→25%B;流速:5mL/分;波長:280及び214nm。
【0230】
得られたADC製剤のクロマトグラフィー分離を
図1に示すが、同図によると、ADCは還元された鎖間ジスルフィド結合数に応じて抗体に薬物リンカー分子2個が結合したもの(「DAR2」ピーク)と、薬物リンカー分子4個が結合したもの(「DAR4」ピーク)の異種混合物である。
図1で使用したAEC条件は以下の通りであった。カラムはPropac(TM)WAX−10,4×250mm(Thermo Fisher Scientific,カタログ番号054999)とし、カラム温度は37℃とした。波長は280nmとし、ランタイムは18分とし、注入量は20μgとし、流速は1.0mL/分とした。移動相A:20mM MES(pH6.7)、移動相B:20mM MES,500mM NaCl(pH6.7)。濃度勾配プロファイルは以下の通りである(表6)。
【0231】
【表8】
【0232】
図2は精製したADCのデコンボリューション質量スペクトルを示す。このADCは抗体1分子に薬物リンカー分子4個を連結したものである。左側のピークは分子量24284.74Daであり、薬物リンカー1個が軽鎖1本に結合した結果である。右側のピークは分子量51513.96Daであり、薬物リンカー1個が重鎖1本に結合した結果である。上記手順に従って表7及び8のADCを作製した。
【0233】
【表9】
【0234】
【表10】
【0235】
ヒト及びマウス膜貫通型TNFαGREレポーター細胞株の作製
親細胞株を作製するために、完全増殖培地(RPMI,10%FBS,1%L−グルタミン,1%ピルビン酸Na及び1%MEM NEAA)2mLを加えた6ウェルプレート(Costar:3516)にK562細胞をウェル当たり500,000個の割合で37℃、5%CO
2下に24時間播種した。翌日、pGL4.36[Luc2P/MMTV/Hygro](Promega:E316)1.5
μgと、pGl4.75[hRLuc/CMV](Promega:E639A)1.5μgと、PLUS試薬(Invitrogen:10964−021)3μLをOpti−MEM(Gibco:31985−070)244
μLで希釈し、室温で15分間インキュベートした。pGL4.36[luc2P/MMTV/Hygro]ベクターはグルココルチコイド受容体やアンドロゲン受容体等の数種の核内受容体の活性化に応答してルシフェラーゼレポーター遺伝子luc2Pの転写を誘導するMMTV LTR(Mammary Tumor Virus Long Terminal Repeat:マウス乳がんウイルス末端反復配列)を含む。pGL4.75[hRluc/CMV]ベクターはルシフェラーゼレポーター遺伝子hRluc(Renilla reniformis)をコードし、発現性が高く且つ異常転写が少なくなるように設計されている。
【0236】
インキュベーション後、希釈DNA溶液を1:1リポフェクタミンLTX溶液(Invitogen:94756)(13.2
μL+Opti−MEM256.8
μL)と共にプレインキュベートし、室温で25分間インキュベートし、DNA−リポフェクタミンLTX複合体を形成した。インキュベーション後、細胞を入れたウェルにDNA−リポフェクタミン複合体500
μLを直接加えた。K562細胞に37℃、5%CO
2下で24時間トランスフェクトした。インキュベーション後、細胞をPBS3mLで洗浄し、ハイグロマイシンB(Invitrogen:10687−010)125
μg/mLを添加した完全増殖培地で2週間選択した。「K562pGL4.36[Luc2P/MMTV/Hygro]_pGL4.75[hRLuc/CMV]」細胞が生成された。
【0237】
マウス膜貫通型TNFαGREレポーター細胞株を作製するために、完全増殖培地(RPMI,10%FBS,1%L−グルタミン,1%ピルビン酸Na及び1%MEM NEAA)2mLを加えた6ウェルプレート(Costar:3516)に親細胞であるK562pGL4.36[Luc2P/MMTV/Hygro]_pGL4.75[hRLuc/CMV]をウェル当たり500,000個の割合で37℃、5%CO
2下に24時間播種した。翌日、タグなしマウスTNFをコードするmFL_TNFaDNA(Origene:MC208048)3
μgと、PLUS試薬(Invitogen:10964−021)3
μLをOpti−MEM(Gibco:31985−070)244
μLで希釈し、室温で15分間インキュベートした。インキュベーション後、希釈DNA溶液を1:1リポフェクタミンLTX溶液(Invitogen:94756)(13.2
μL+Opti−MEM256.8
μL)と共にプレインキュベートし、室温で25分間インキュベートし、DNA−リポフェクタミンLTX複合体を形成した。インキュベーション後、細胞を入れたウェルにDNA−リポフェクタミン複合体500
μLを直接加えた。親細胞であるK562pGL4.36[Luc2P/MMTV/Hygro]_pGL4.75[hRLuc/CMV]細胞に37℃、5%CO
2下で24時間トランスフェクトした。インキュベーション後、細胞をPBS3mLで洗浄し、ハイグロマイシンB(Invitrogen:10687−010)125
μg/mLとG418(Gibco:10131−027)250
μg/mLを添加した完全増殖培地で2週間選択した。「K562マウスFL−TNFaGRE(pGL4.36[luc2P/MMTV/Hygro])」細胞が生成された。
【0238】
ヒト膜貫通型TNFαGREレポーター細胞株を作製するために、親細胞であるK562pGL4.36[Luc2P/MMTV/Hygro]_pGL4.75[hRLuc/CMV]にプラスミドとしてhTNFΔ1−12C−Myc pcDNA3.1(−)プラスミドコンストラクトをトランスフェクトした。このプラスミドはtace耐性膜貫通型TNF(即ち配列番号1からアミノ酸77〜88を欠失したもの)をコードするpcDNA3.1(Thermofisherカタログ番号V79020)である。(tace耐性膜貫通型TNFについてはPerez C et al.Cell 63(2):251−8(1990)参照。)。その後、これらの細胞株を以下の実施例に記載するTNFαレポーターアッセイで使用した。
【0239】
GRE膜貫通型TNFαレポーターアッセイにおける抗TNFαイムノコンジュゲートの活性
K562親GRE(pGL4.36[luc2P/MMTV/Hygro])細胞と、K562mFL−TNF−a又はhTNFΔ1−12GRE(pGL4.36[luc2P/MMTV/Hygro])細胞を組織培養処理済み96ウェル白プレート(Costar:3917)でアッセイ培地(RPMI,1%CSFBS,1%L−グルタミン,1%ピルビン酸Na及び1%MEAA)50μLにウェル当たり50,000個の割合で播種した。細胞をアッセイ培地で3倍ずつ段階希釈したマウス若しくはヒト抗TNFa抗体薬物複合体、ステロイド化合物又は培地単独25μLで処理し、37℃、5%CO
2下に48時間インキュベートした。48時間インキュベーション後に細胞をDual−Gloルシフェラーゼアッセイシステム(Promega−E2920)75μLで10分間処理し、Microbeta(PerkinElmer)を使用して発光を測定した。4パラメータ曲線当てはめを使用してデータを解析し、EC
50値を推定した。100nMデキサメタゾンを基準にして最大活性化率%を正規化した。マウスTNFα細胞株を使用した結果を下表9に示し、ヒトTNFα細胞株を使用した結果を下表10に示す。下表9中、ADCにおける抗体は抗マウスTNFα抗体8C11である。下表10中、ADCにおける抗体は抗ヒトTNFα抗体アダリムマブである。モノマー百分率(%)は上述したようにSECにより求めた(ADC分析手順参照)。
【0240】
【表11】
【0241】
【表12】
【0242】
リポ多糖刺激によるヒトPBMCサイトカイン放出アッセイにおける抗hTNFαイムノコンジュゲートの活性
ヒト初代末梢血単核細胞(PBMC)をBiological Specialty Corporation(カタログ番号214−00−10)から購入し、PBS50mLで洗浄し、5%DMSOを添加したFBSに再懸濁し、分取し、使用時まで液体窒素で凍結保存した。PBMCを解凍し、2%FBSと1%ペニシリン−ストレプトマイシンを添加したRPMI培地に再懸濁し、細胞アッセイプレート(Costar #3799)に播種した。次に種々の濃度の抗TNF ADCを加えて37℃、5%CO
2下に4時間インキュベートした。その後、LPS100ng/mLで細胞を一晩刺激した。翌日、プレートを1000rpmで5分間遠心し、上清培地100μLを別の96ウェルプレートに直接移し、IL−6(MSD,#K151AKB)とIL−1β(MSD,#K151AGB)の濃度を測定した。非線形回帰を使用して用量反応データをシグモイド曲線に当てはめ、GraphPad 5.0(GraphPad Software,Inc.)によりIC
50値を計算した。表11に示す結果から明らかなように、抗TNF ADCは活性化させた初代免疫細胞からの炎症性サイトカインIL−6及びIL−1βの放出を抑制する強力な活性をもつ。
【0243】
【表13】
【0244】
接触過敏モデルにおける抗mTNFαイムノコンジュゲートの活性
感作物質(フルオレセインイソチオシアネート(FITC))の塗布により(T細胞により誘導される)遅延型過敏(DTH)反応を使用して急性皮膚炎症を誘発する急性接触過敏モデルで抗TNFαステロイドADCを評価した。耳介腫脹抑制能により抗TNFaステロイドADCの効力を測定した。ステロイドバイオマーカーであるコルチコステロンと1型プロコラーゲンN末端プロペプチド(P1NP)も読み取りデータに加え、夫々視床下部−下垂体−副腎(HPA)軸と骨代謝に及ぼす抗TNFaステロイドADC投与の推定影響を評価した。
【0245】
耳介腫脹
0日目にマウスに全身麻酔し、腹部を剃毛した。マイクロピペッターを使用し、FITC溶液(1.5%1:1アセトン:DBP溶液)400μLを腹部に皮膚塗布することによりマウスを感作した。6日後に、FITCによる耳介チャレンジの1時間前にマウスに溶媒又は治療剤を投与した。耳介チャレンジでは、マウスに全身麻酔し、FITC20μLを右耳介に塗布してチャレンジした。チャレンジから24時間後にマウスに全身麻酔し、その耳介厚をキャリパーで測定した。チャレンジした耳介とチャレンジしていない耳介の差を計算した。耳介チャレンジから72時間後に、マウスにACTHを1mpkの用量でIP注射し、ACTHの30分後に放血致死させた。血漿を採取し、P1NP、コルチコステロン、遊離ステロイド及び大分子の濃度を測定した。
【0246】
遊離ステロイドと内因性コルチコステロンの放出量の定量
最終濃度が8種類の異なる濃度値で0.03nM〜0.1μMとなるようにマウス血漿でステロイドの較正曲線を作成した。PBS緩衝液で調液した70mg/mLウシ血清アルブミン溶液で最終コルチコステロン濃度が0.3nM〜1μMとなるようにコルチコステロン較正曲線を作成した。0.1%ギ酸を添加したMeCN溶液160μLを試験血漿試料又は較正標準40μLに加えた。上清を蒸留水で希釈し、最終試料溶液30μLをLC/MS分析用に注入した。
【0247】
正イオンモードで動作するエレクトロスプレーイオン源とインターフェースで接続した島津AC20 HPLCシステムにAB Sciex 5500トリプル四重極質量分析計を接続し、遊離ステロイドとコルチコステロンの放出量の定量を行った。Waters XBridge BEH C18,2.1×30mm,3.5μmカラムをクロマトグラフィー分離に使用した。移動相Aは0.1%ギ酸Milli Q HPLC用水溶液とし、移動相Bは0.1%ギ酸MeCN溶液とした。2%移動相Bから98%移動相Bに変化させる直線濃度勾配を0.6〜1.2分間適用した。合計ランタイムは流速0.8mL/分で2.6分とした。質量分析計はイオン源温度700℃にて正イオンMRMモードで運転させた。
【0248】
血漿中P1NPの定量
タンパク質トリプシン消化に基づくLCMSプラットフォームで血漿中P1NPの定量を行った。血漿試料を部分的に沈降させ、MeCN/0.1M重炭酸アンモニウム/DTT混合液を加えることにより完全に還元させた。上清を採取し、ヨード酢酸を加えることによりアルキル化した。アルキル化したタンパク質をトリプシンにより消化し、得られたトリプシンペプチドをLCMSにより分析した。ウマ血清(非干渉性代替マトリックス)にスパイクした合成トリプシンペプチドを使用することにより較正曲線を作成した。MeCN/DTTタンパク質沈降混合液に加える内部標準として、安定同位体で標識したフランキングペプチド(トリプシンペプチドの両末端の3〜6アミノ酸延長部分)を使用し、消化効率とLCMS注入量を正規化した。
【0249】
Columnex Chromenta BB−C18,2.1×150mm,5μmカラムをクロマトグラフィー分離に使用した。移動相Aは0.1%ギ酸Milli Q HPLC用水溶液とし、移動相Bは0.1%ギ酸MeCN溶液とした。2%移動相Bから65%移動相Bに変化させる直線濃度勾配を0.6〜3分間適用した。合計ランタイムは流速0.45mL/分で8分とした。AB Sciex 4000Qトラップ型質量分析計をイオン源温度700℃にて正イオンMRMモードで使用し、P1NPペプチドを定量した。
【0250】
結果
結果を下表12に示す。
【0251】
【表14】
【0252】
コラーゲン誘発性関節炎における抗mTNFαイムノコンジュゲートの活性
抗mTNFaステロイドADC(ADC1)が疾患に作用する能力をコラーゲン誘発性関節炎(CIA)の関節炎モデルで評価した。
【0253】
これらの実験では、雄性DBA/1JマウスをJackson Labs(Bar Harbor,ME)から入手した。マウスを6〜8週齢で使用した。温度と湿度を一定に保ちながら全動物を12時間明暗サイクル下で飼育し、げっ歯類飼料チャウ(Lab Diet 5010 PharmaServ,Framingham,MA)と水を自由に摂取させた。アッヴィ社(AbbVie)はAAALAC(Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care:実験動物ケア評価認証協会)から認証を取得しており、全手順は動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee:IACUC)により承認され、主治獣医師の監督下に行われた。体重と健康状態をチェックし、>20%体重減少を示す場合には動物を安楽死させた。
【0254】
0.1N酢酸に溶解したII型ウシコラーゲン(MD Biosciences)100μgと加熱死菌結核菌(Mycobacterium tuberculosis)H37Ra(完全フロイントアジュバント,Difco,Laurence,KS)200μgを含有するエマルジョン100μLを雄性DBA/Jマウスの尾基部に皮内(i.d.)投与により免疫した。コラーゲン免疫から21日後にチモサンA(Sigma,St.Louis,MO)1mgをPBSで調液してマウスに腹腔内投与することによりブーストした。ブースト後、マウスを関節炎について週3〜5回チェックした。Dyerスプリングキャリパー(Dyer 310−115)を使用して後肢の足腫脹を評価した。
【0255】
最初に疾患の臨床徴候が現れた24〜28日目にマウスをリストに登録し、関節炎重症度が同等のグループに分けた。登録時に早期治療処置を開始した。
【0256】
抗mTNFmAb(高用量)又は抗mTNFステロイドADC(高用量及び低用量mpk)を0.9%生理食塩水で調液し、動物に1回腹腔内(i.p.)投与した。投与から24時間後と72時間後にテールニック法により抗体暴露用に採血した。終末時点で病理組織試験用に足を採取した。終末時点で心臓穿刺により全血球計数(Sysmex XT−2000iV)用に採血した。ANOVAにより統計的有意差を判定した。
【0257】
結果を
図3に示すが、抗TNFaステロイドADCを単回投与すると、抗TNFamAb又は溶媒単独に比較して約28日間の足腫脹の改善により作用時間を延長できることが明らかである。
【0258】
血漿中のADC安定性
マレイミド系リンカーのインビボ安定性を高めるために加水分解が利用されているが、一般に塩基性pHに暴露する必要があるため、抗体の変性(例えば脱アミド化)、不均一性増加、収率低下等に繋がる恐れがある(Shen et al.,Nature Biotechnology 30:184-189(2012)(マレイミドを加水分解して薬物の早期放出と薬物全身暴露を避ける);Strop et al.,Chemistry & Biology 20(2):161−167(2013)(同様の報告);Tumey et al.,Bioconjugate Chem 25(10):1871−1880(2014)(塩基性条件下の環加水分解を可能にするために近位PEG鎖を使用する);Lyon et al.,Nature Biotechnology 32:1059−1062(2014)(スクシンイミド加水分解物の生成を助長する方法);Christie et al.,J Control Release 220(PtB):660−70(28 Dec 2015)(塩基性条件下のスクシンイミド環加水分解を助長するためにN−アリールマレイミドを使用する);Dovgan et al.,Scientific Reports 6:1(2016)(長期間にわたって弱塩基性条件下の環加水分解を助長するために2−(マレイミドメチル)−1,3−ジオキサンを使用する);及びJ Pharm Sci 2013:102(6)1712−1723(アスパラギンの脱アミド化は緩衝液種、pH及び温度に依存する))。一方、マレイミド(連結とその後の塩基性pHでの環加水分解)では数日間を要するが、ブロモアセトアミドを使用した典型的な連結条件は数時間以内で完了する。更に、システインとブロモアセトアミドの反応中に形成される2−メルカプトアセトアミドは逆マイケル反応を生じにくく、下表13でADC4について実証するように、リンカーと抗体の安定した結合が得られる。
【0259】
【表15】
【0260】
溶液中のADC安定性
長期安定性を評価するために、バイオ医薬品で加速ストレス試験を実施した。この試験のプロトコールは40℃の15mMヒスチジン中で100mg/mLのバイオ医薬品を21日間保温する。ADC4でこの試験を行った処、凝集増加率は<5%であったが、これに対して米国特許出願公開第2018/012600
0号(公開日2018年5月10日)のADC203の凝集増加率は18%であった(表14)。これは、Gly−Gluリンカーとペイロードのリン酸プロドラッグによりADC4の性質が改善されたことを実証するものである。米国特許出願公開第2018/012600
0号のADC203は以下の通りである。
【0261】
【化52】
式中、n=4であり、Aは抗ヒトTNFa抗体アダリムマブを表す。
【0262】
【表16】
【0263】
リン酸プロドラッグには、DARに基づく精製にアニオン交換クロマトグラフィーを使用できるという利点もある。その結果、疎水性相互作用クロマトグラフィーに比較してピーク分離が改善され、DARに基づいて精製されたADCの収率が高くなる。
【0264】
製剤化用緩衝液中で、ADC203の加水分解されたスクシンイミド環は閉環体と平衡状態にある。閉環体はカニクイザルにおいてインビボで逆マイケル反応とそれに伴うリンカー−薬物の減少を起こし易い(
図4)。
【0265】
【化53】
【0266】
標準液体保存条件下で開環形のコンフォメーションにおけるスクシンイミド結合は6ヶ月後に閉環形のコンフォメーションに比較して5℃で5%超、25℃で15%超改善されるであろう(表15)。
【0267】
【表17】
【0268】
当然のことながら、発明を実施するための形態のセクションは特許請求の範囲を解釈するために使用するものであるが、発明の概要と要約のセクションはそうではない。発明の概要と要約のセクションは本発明者らが想定する本開示の代表的な実施形態の全部ではなく、1例以上を明示するものであり、従って、如何なる点においても本開示と以下の特許請求の範囲を制限するものではない。
【0269】
以上、特定機能の実施と機能間の関係を具体的に示す機能的構成要素により本開示について説明した。これらの機能的構成要素の適用範囲については説明の便宜のために本願中で任意に定義した。特定機能とその関係が適切に達成される限り、別の適用範囲を定義することもできる。
【0270】
特定の実施形態に関する上記記載から本開示の一般的な特性が完全に明らかになり、第三者は本開示の一般概念から逸脱しない限り、当業者の技能の範囲内の知識を適用することにより、過度の実験を必要とせずにこのような特定の実施形態を種々の用途に合わせて容易に改変及び/又は応用することができる。従って、このような応用及び改変も、本願に提示する教示と手引きに基づき、本願に開示する実施形態の等価物の意味と範囲に含むものとする。当然のことながら、本願における術語及び用語は説明を目的としており、制限を目的とするものではなく、本明細書の用語及び術語は本願の教示と手引きに照らして当業者により解釈されるべきである。
【0271】
本開示の領域及び範囲は上記の代表的な実施形態のいずれにも制限されるべきではなく、以下の特許請求の範囲とその等価物によってのみ限定されるべきである。
【0272】
資料援用
特許及び出願公開を含めて発明の詳細な説明で引用した全刊行物はその開示内容全体を本願に援用する。