(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、面状発熱体による加熱の範囲は、異物の付着を効果的に抑えるために、より高い精度で特定されることを求められる。
本発明は、異物の付着を効果的に抑えることを可能にした面状発熱体、および、車両用ウインドシールド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための面状発熱体は、外郭線に囲まれた面を覆うように折り返しを繰り返す発熱線を備える。また、面状発熱体は、前記発熱線に電流を供給するための導線であって、前記発熱線の幅よりも大きい幅を有することによって前記発熱線よりも低い電気抵抗率を有し、前記面外に位置して前記外郭線に追従する前記導線を備える。この面状発熱体によれば、導線と発熱線とに電流が流れるとき、導線と発熱線とが互いに等しい電気抵抗率を有する構成と比べて、導線の温度と発熱線の温度との間の温度差が大きい。そのため、面状発熱体による加熱の範囲が、外郭線に囲まれた面に、より高い精度で特定される。
【0006】
上記面状発熱体において、前記発熱線は、前記外郭線に位置する第1端部と、前記外郭線に位置する第2端部と、を備えてもよい。そして、前記導線は、前記第1端部に接続され、前記外郭線のなかで前記第1端部から前記第2端部に向けた部分に追従してもよい。この面状発熱体によれば、面状発熱体に電流を供給するための2つの端部の間の距離が、導線によって短くなる。そのため、面状発熱体に電流を供給するための構成の小型化を図ることが可能ともなる。
【0007】
上記面状発熱体において、前記導線の幅は、前記発熱線の幅の2倍以上であってもよい。この面状発熱体によれば、異物の付着を効果的に抑えることの実効性を高めることが可能ともなる。
【0008】
上記面状発熱体において、前記発熱線と前記導線とが通電部を構成する。そして、面状発熱体は、前記通電部の全部を覆う絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムを挟んで前記通電部の少なくとも一部を覆う面状熱良導体と、をさらに備えてもよい。この面状発熱体によれば、面状熱良導体が通電部を覆う範囲において、面状発熱体が有する温度分布の均一性が高められる。例えば、面状熱良導体が通電部の全てを覆う構成であれば、通電部の全てでの温度分布の均一性が高まる。また、通電部の一部を面状熱良導体が覆う構成であれば、通電部の一部での温度分布の均一性が高まる。
【0009】
上記面状発熱体において、前記面状熱良導体は、前記絶縁フィルムを挟んで前記発熱線の少なくとも一部を覆ってもよい。この構成によれば、発熱線が出力する熱が面状熱良導体に伝わりやすいため、発熱線が出力する熱の均一化に適している。
【0010】
上記面状発熱体において、前記絶縁フィルムは、前記通電部に貼り着けられており、前記面状熱良導体は、前記絶縁フィルムに貼り付けられてもよい。この構成によれば、通電部に対して面状発熱体が位置決めされるため、上述した効果が得られる位置の精度がさらに高められる。
【0011】
上記課題を解決するための車両用ウインドシールド装置は、カメラカバーと、前記カメラカバー内に位置するカメラユニットと、前記カメラカバー内に位置する遮光フードと、前記遮光フードを加熱するための面状発熱体と、を備える。そして、この面状発熱体が、上述した面状発熱体である。
【0012】
上記課題を解決するための車両用ウインドシールド装置は、カメラカバーと、前記カメラカバー内に位置するカメラユニットと、前記カメラカバー内に位置する遮光フードと、前記遮光フードを加熱するための面状発熱体と、を備えた車両用ウインドシールド装置である。この面状発熱体は、通電部と、前記通電部の全部を覆う絶縁フィルムと、を備える。前記通電部は、外郭線に囲まれた面を覆うように折り返しを繰り返す発熱線を備える。また、前記通電部は、前記発熱線に電流を供給するための導線であって、前記発熱線の幅よりも大きい幅を有することによって前記発熱線よりも低い電気抵抗率を有し、前記面外に位置して前記外郭線に追従する前記導線を備える。そして、前記車両用ウインドシールド装置は、前記絶縁フィルムを挟んで前記通電部の少なくとも一部を覆う面状熱良導体をさらに備える。
【0013】
上記各車両用ウインドシールド装置によれば、面状熱良導体が通電部を覆う範囲において、面状発熱体が有する温度分布の均一性、ひいては、カメラカバーが有する温度分布の均一性が高められる。
【0014】
上記車両用ウインドシールド装置において、前記遮光フードは、前記面状熱良導体を備えてもよい。この車両用ウインドシールド装置によれば、温度分布の均一化を図る範囲が、遮光フードに位置決めされる。そのため、遮光フードのなかで温度分布の均一化が実現される領域を、面状発熱体の位置の精度に関わらず、遮光フードのなかで固定することが可能ともなる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、面状発熱体、および、車両用ウインドシールド装置の一実施形態を説明する。まず、
図1、および、
図2を参照して、車両用ウインドシールド装置を説明する。次に、
図3から
図10を参照して、面状発熱体を説明する。
【0017】
[車両用ウインドシールド装置]
図1が示すように、車両用ウインドシールド装置は、カメラカバー11、カメラブラケット12、遮光フード13、および、カメラユニット14を備える。
【0018】
カメラカバー11は、椀状を有した樹脂部材である。カメラカバー11は、カメラブラケット12、遮光フード13、および、カメラユニット14を収容する。カメラカバー11は、ウインドシールドWG(
図2を参照)が有する車室側の側面と、カメラカバー11の周縁11Eとを対向させて、車両のウインドシールドWGに取り付けられる。
【0019】
カメラブラケット12は、板状を有した樹脂部材である。カメラブラケット12は、ウインドシールドに沿って広がる形状を有する。カメラブラケット12は、カメラユニット14を支持した状態で、カメラカバー11に嵌着される。カメラユニット14は、カメラブラケット12とカメラカバー11との間に収容される。カメラブラケット12は、カメラユニット14の受光部をウインドシールドに向けて露出させる。
【0020】
遮光フード13は、ウインドシールドから見て、台形状を有した板状の黒色樹脂部材である。なお、遮光フード13は、円形状、楕円形状、多角形状などの各種面形状に変更可能である。遮光フード13は、受光部が受光する光の範囲を定める。遮光フード13は、ウインドシールドWGと対向する表面に、遮光シート13Sを備える。遮光シート13Sは、台形状を有した黒色シートであり、例えば、遮光フード13の表面に貼り付いている不織布である。遮光シート13Sは、太陽光や街灯などの外光を散乱させて、カメラユニット14の受光部に外光が入射することを抑える。
【0021】
ここで、車室の湿度が高い場合や、車外の温度が低い場合には、露、霜、氷などがウインドシールドWGに付着する。車両周囲の他車両による反射光や、車両周囲の障害物による反射光は、ウインドシールドに付着した露、霜、氷などによって散乱されてしまう。そこで、車両用ウインドシールド装置は、車両周囲の他車両や車両周囲の障害物を高い精度で検知するために、面状発熱体20を備える。
【0022】
図2が示すように、遮光フード13の裏面は、例えば、ウインドシールドWGに向けて突き出る屈曲面状や、ウインドシールドWGに向けて緩やかに突き出る曲面状を有する。遮光フード13の裏面は、面状発熱体20によって加熱される対象である。面状発熱体20は、遮光フード13の裏面に位置する。面状発熱体20が加熱する対象領域は、遮光シート13Sとほぼ等しい形状を有する。なお、面状発熱体20が加熱する対象領域は、遮光シート13Sよりも大きくてもよいし、遮光シート13Sよりも小さくてもよい。面状発熱体20が加熱する対象領域は、車両用ウインドシールド装置に求められる要請に応じて適宜変更可能である。面状発熱体20が加熱する対象領域の面積は、例えば、15cm
2である。
【0023】
カメラユニット14は、カメラユニット14の受光部14Sを遮光シート13SよりもウインドシールドWGの側に向ける。カメラユニット14は、カメラユニット14の前方に位置する物体が反射した光を、ウインドシールドWGを通して受光する。受光部が受光する光の範囲は、受光部が備えるレンズの画角、および、上述した遮光フード13の形状によって定められる。
【0024】
[面状発熱体20]
図3が示すように、面状発熱体20は、面状熱良導体21、表側絶縁フィルム22、通電部23、裏側絶縁フィルム24、保護回路25、固定テープ26、第1弾性シート27、および、第2弾性シート28を備える。なお、以下では、面状発熱体20における層構成を説明する便宜上、面状発熱体20において、面状発熱体20に対する遮光フード13の側を表側、表側とは反対側を裏側と称する。
【0025】
面状熱良導体21は、金属製フィルムや金属テープ、高熱伝導性樹脂製フィルムや高熱伝導性樹脂製テープである。面状熱良導体21は、例えば、厚さが0.5mmのアルミニウムフィルム、あるいは、アルミニウムテープである。面状熱良導体21が有する熱伝導率は、表側絶縁フィルム22、裏側絶縁フィルム24、固定テープ26、第1弾性シート27、および、第2弾性シート28よりも高い。面状熱良導体21は、面状発熱体20の表面において、面状熱良導体21が位置する範囲での温度分布の均一性を高める。
【0026】
表側絶縁フィルム22は、面状発熱体20の使用温度において、絶縁性、および、耐熱性を有したフィルムである。表側絶縁フィルム22は、例えば、厚さが0.1mmのポリイミドフィルムである。表側絶縁フィルム22の裏面(
図3における紙面手前側の面)は、粘着剤を備える。表側絶縁フィルム22は、通電部23と他の導体との電気的な接続を絶縁して、通電部23の電気的な特性を保護する。また、表側絶縁フィルム22は、面状発熱体20の表側から発熱部231に伝わる衝撃を軽減して、通電部23の機械的な特性を保護する。
【0027】
通電部23は、1本の発熱線から構成される発熱部231と、2本の導線から構成される配線部232A,232Bとを備える。発熱部231を構成する発熱線は、表側絶縁フィルム22の裏面に追従した形状を有する。
【0028】
配線部232Aは、熱収縮チューブを通して、一方のリード線25Cに接続されている。配線部232Bは、熱収縮チューブに収容されて、保護回路25に接続されている。発熱部231は、リード線25C、および、配線部232A,232Bを通じて外部の回路から電流を供給されて、定格量の熱を発熱する。発熱部231が発熱する定格量の熱は、例えば、0.5W/cm
2である。
【0029】
裏側絶縁フィルム24は、面状発熱体20の使用温度において、絶縁性、および、耐熱性を有したフィルムである。裏側絶縁フィルム24は、通電部23と他の導体との電気的な接続を絶縁して、通電部23の電気的な特性を保護する。裏側絶縁フィルム24は、表側絶縁フィルム22よりも薄く、例えば、厚さが0.03mmのポリイミドフィルムである。
【0030】
保護回路25は、面状発熱体20の温度を所定の範囲内に抑制する。保護回路25は、温度ヒューズから構成される。温度ヒューズの一端部は、熱収縮チューブに収容されて、配線部232Bに接続されている。温度ヒューズの他端部は、他方のリード線25Cに接続されている。
【0031】
各リード線25Cは、通電部23、および、保護回路25を外部の回路に接続する。各熱収縮チューブ25A,25Bは、各熱収縮チューブ25A,25Bに通される通電部23とリード線25Cとを、熱収縮チューブ25A,25Bの収縮によって締結する。固定テープ26は、裏側絶縁フィルム24に保護回路25を固定する。固定テープ26は、絶縁性、および、耐熱性を有した、例えばポリイミドテープである。
【0032】
第1弾性シート27は、面状発熱体20の使用温度において、断熱性、断水性、グリップ性などを有する。第1弾性シート27は、例えば、発泡樹脂フィルム、あるいは、ゴムフィルムである。第1弾性シート27は、第2弾性シート28よりも高い衝撃吸収性を備える。第1弾性シート27は、例えば、難燃性を備えた、厚さが2mmのウレタンフィルムである。第1弾性シート27は、裏側絶縁フィルム24と第2弾性シート28とに密着する。また、第1弾性シート27は、固定テープ26と第2弾性シート28とに密着する。
【0033】
第2弾性シート28は、面状発熱体20の使用温度において、断熱性、耐衝撃性などを有する。第2弾性シート28は、例えば、発泡樹脂フィルム、あるいは、ゴムフィルムである。第2弾性シート28は、第1弾性シート27よりも高い非透湿性を備える。第2弾性シート28は、例えば、防塵性を兼ね備えた、厚さが1mmのポリオレフィン発泡フィルムである。
【0034】
図4が示すように、通電部23と、保護回路25とは、1つの直列回路を構成する。直列回路が備える入力端子と出力端子とは、別々のリード線25Cを介して、外部コネクター29に接続されている。外部コネクター29における一方の端子は、接地電位に接続されている。外部コネクター29における他方の端子は、イグニッション電源に接続されている。
【0035】
[通電部23]
図5は、通電部23が有する構造の一例を示す。
図6は、通電部23が有する構造の他の例を示す。
【0036】
図5、および、
図6に示すように、通電部23は、1本の発熱線が面状に張り巡らされた発熱部231と、発熱部231に電力を供給する配線部232A,232Bとを備える。発熱部231と、配線部232A,232Bとは、互いに同一の材料から構成された帯状を有する1体の導体として構成される。発熱部231は、直線状部231Lと折り返し部231Eとを備える。発熱部231は、1本の発熱線が面状に面様を有する。直線状部231Lは、相互に平行な複数の直線上に位置する。折り返し部231Eは、発熱部231の周縁上に位置し、相互に隣り合う直線状部231Lの端部を接続する。
【0037】
発熱部231を構成する発熱線は、例えば、帯状を有し、かつ、0.03mmの厚さを有する。発熱部231を構成する発熱線は、例えば、SUS304から構成される。発熱部231の形状、および、大きさは、遮光シート13Sの形状、および、大きさとほぼ等しい。なお、発熱部231の形状は、遮光シート13Sと異なる形状に変更可能である。また、発熱部231の大きさは、遮光シート13Sよりも大きくてもよいし、遮光シート13Sよりも小さくてもよい。
【0038】
発熱部231において、発熱線の幅WLは、相互に隣り合う直線状部231Lの間の幅WPよりも広い。相互に隣り合う直線状部231Lの間の幅WPは、例えば、0.4mm以上0.6mm以下である。発熱線の幅WLは、例えば、相互に隣り合う直線状部231Lの間の幅WPの1.4倍以上1.6倍以下である。なお、発熱線の幅WLは、発熱線の延在方向と直交する方向での発熱線の長さである。相互に隣り合う直線状部231Lの間の幅WPは、直線状部231Lの延在方向と直交する方向での相互に隣り合う直線状部231Lの間隙の長さである。
【0039】
配線部232A,232Bは、それぞれ導線である。各導線が有する一方の端部は、発熱部231の端部と接続されている。1つの導線の端部が接続される発熱部231の端部と、別の導線の端部が接続される発熱部231の端部とは、相互に異なる。各導線は、発熱部231の外側で、相互に異なる箇所に引き回されている。1つの導線における他方の端部と、別の導線における他方の端部とは、発熱部231の外側で、隙間を空けて並んでいる。
【0040】
配線部232A,232Bのなかの少なくとも一方は、発熱部231の外郭線に追従している。
図5では、発熱部231の外郭線は、全ての折り返し部231Eを通る等脚台形を示す。発熱部231における2つの端部は、それぞれ等脚台形における左側の脚の上端と下端とに位置する。
【0041】
配線部232Aは、等脚台形の外側、すなわち、外郭線に囲まれた面外に位置する。配線部232Aは、等脚台形における左側の脚の上端から同脚の中間に向けて引かれている。等脚台形における左側の脚の上端は、配線部232Aに接続される第1端部の一例である。また、配線部232Aにおいて、等脚台形における左側の脚の下端は、第2端部の一例である。配線部232Aは、外郭線のなかで配線部232Aに接続された第1端部から第2端部に向けた部分に追従する。
【0042】
配線部232Bは、等脚台形の外側、すなわち、外郭線に囲まれた面外に位置する。配線部232Bは、等脚台形における左側の脚の下端から同脚の中間に向けて引かれている。等脚台形における左側の脚の下端は、配線部232Bに接続される第1端部の一例である。また、配線部232Bにおいて、等脚台形における左側の脚の上端は、第2端部の一例である。配線部232Bは、外郭線のなかで配線部232Bに接続された第1端部から第2端部に向けた部分に追従する。
【0043】
各配線部232A,232Bは、等脚台形における左側の脚の中間から等脚台形の左側に向けて引かれている。
図6では、発熱部231の外郭線は、全ての折り返し部231Eを通る等脚台形を示す。発熱部231における一方の端部は、等脚台形における左側の脚の中間に位置する。発熱部231における他方の端部は、等脚台形における下底の右端に位置する。
【0044】
配線部232Aは、等脚台形の外側、すなわち、外郭線に囲まれた面外に位置する。配線部232Aは、等脚台形における左側の脚の中間から、等脚台形の左側に向けて引かれている。等脚台形における左側の脚の中間は、配線部232Aに接続されている。
【0045】
配線部232Bは、等脚台形の外側、すなわち、外郭線に囲まれた面外に位置する。配線部232Bは、等脚台形における下底の右端から左端に向けて引かれて、さらに、等脚台形における左側の脚の中間に向けて引かれている。等脚台形における下底の右端は、配線部232Bに接続される第1端部の一例である。また、配線部232Bにおいて、等脚台形における左側の脚の中間は、第2端部の一例である。配線部232Bは、外郭線のなかで配線部232Bに接続された第1端部から第2端部に向けた部分に追従する。
【0046】
各配線部232A,232Bは、等脚台形における左側の脚の中間から等脚台形の左側に向けて引かれている。
配線部232A,232Bを構成する導線は、例えば、帯状を有し、かつ、0.03mmの厚さを有する。配線部232A,232Bを構成する導線は、SUS304から構成される。導線の幅WCは、発熱線の幅WLよりも広く、例えば、2mm以上4mm以下である。発熱線の幅WLが、例えば、0.4mm以上0.6mm以下である場合、導線の幅WCは、発熱線の幅WLの2倍以上である。配線部232A,232Bが有する電気抵抗率は、発熱部231が有する電気抵抗率と比べて十分に低い。電気抵抗率は、発熱線の単位長さあたりの電気抵抗値、および、導線の単位長さあたりの電気抵抗値である。配線部232A,232Bが有する電気抵抗率は、発熱部231が発熱するときに、通電部23が有する温度分布に影響を及ぼさない程度である。
【0047】
[面状熱良導体21]
図7は、面状熱良導体21が有する構造の一例を示す。
図8は、面状熱良導体21が有する構造の他の例を示す。
【0048】
図7が示すように、面状熱良導体21の一例は、表側絶縁フィルム22とほぼ等しい形状、および、大きさを有する。面状熱良導体21は、発熱部231の全てを覆う。面状熱良導体21は、配線部232A,232Bの一部を覆い、当該一部は、発熱部231に接続された部分を含む。配線部232A,232Bのなかで面状熱良導体21に覆われた部分は、配線部232A,232Bのなかで発熱部231の外郭線に追従した部分である。面状熱良導体21は、金属製フィルムや高熱伝導性樹脂製フィルムであって、遮光フード13と表側絶縁フィルム22とに挟まれている。あるいは、面状熱良導体21は、金属テープや高熱伝導性樹脂製テープであって、表側絶縁フィルム22に貼り付けられて、表側絶縁フィルム22に位置決めされている。
【0049】
そして、発熱部231が発熱するとき、発熱部231が出力する熱は、まず、面状熱良導体21に伝わる。面状熱良導体21に伝わる熱は、面状熱良導体21の全体で均一化が図られながら放熱される。結果として、通電部23が有する温度分布は、発熱線が引かれたルート上のみを高温とすることなく、面状熱良導体21が位置する範囲、すなわち、通電部23の全体で均一化が図られる。
【0050】
図8が示すように、面状熱良導体21の他の例は、表側絶縁フィルム22と相似形であって、表側絶縁フィルム22よりも小さい。面状熱良導体21は、発熱部231のなかで中央部を含む一部を覆う。面状熱良導体21は、配線部232A,232Bとは重ならない位置に配置されている。面状熱良導体21は、金属テープや高熱伝導性樹脂製テープであって、表側絶縁フィルム22に貼り付けられて、表側絶縁フィルム22に位置決めされている。
【0051】
そして、発熱部231が発熱するとき、発熱部231が出力する熱は、発熱部231の一部から面状熱良導体21に伝わり、発熱部231の他部からは表側絶縁フィルム22を通して放熱される。面状熱良導体21に伝わる熱は、面状熱良導体21の全体で均一化が図られながら放熱される。結果として、通電部23が有する温度分布は、面状熱良導体21が位置する範囲、すなわち、発熱部231の中央部を含む一部のみで、発熱線が引かれたルート上のみを高温とすることなく、均一化が図られる。
【0052】
上記実施形態によれば、以下の列挙する効果が得られる。
(1)露、霜、氷などの異物の付着を抑える観点では、車両用ウインドシールド装置が搭載される位置に応じて、加熱される対象領域の全体を、より均一に加熱することが求められる場合もあれば、加熱される対象領域のなかの一部のみを、他の部分よりも均一に加熱することが求められる場合もある。この点、上記実施形態によれば、面状発熱体20による加熱に際して、面状熱良導体21が発熱部231の全てを覆う構成であれば、加熱される対象領域の全てで温度分布の均一化が図られる。
【0053】
(2)面状発熱体20による加熱に際して、面状熱良導体21が発熱部231の一部のみを覆う構成であれば、加熱される対象領域内において所望の範囲のみで温度分布の均一化が図られる。
【0054】
(3)表側絶縁フィルム22と遮光フード13とが面状熱良導体21を挟む、あるいは、表側絶縁フィルム22に面状熱良導体21を貼り付けることによって、上記(1)、(2)に準じた効果が得られる。したがって、面状発熱体20の主たる製造工程を変更することなく、温度分布の均一化を図ることが可能ともなる。
【0055】
(4)面状発熱体20による加熱の開始に際しては、相互に隣り合う発熱線の間隙などを含む、面状熱良導体21が配置された範囲の全てで、昇温の応答性を高めることが可能となる。結果として、車両用ウインドシールド装置による検知などの機能を車両の運転開始時から発揮することが可能となる。
【0056】
(5)金属が固有に有する展性を面状熱良導体21が面状発熱体20のほぼ全体に付与するため、面状発熱体20が有する面形状を平面から曲面に変えることが可能ともなる。結果として、遮光フード13の形状に面状発熱体20を追従させることが容易ともなる。
【0057】
(6)面状熱良導体21が表側絶縁フィルム22に貼り付けられる構成であれば、面状熱良導体21が通電部23に位置決めされる。そのため、面状熱良導体21によって温度分布の均一化が図られる範囲の位置が、面状発熱体20において安定する。
【0058】
(7)面状熱良導体21がフィルムである場合には、あるいは、面状熱良導体21がテープである場合には、面状熱良導体21の熱容量が過大になることが抑えられる。そのため、温度分布の均一化の実効性を高めることが可能であって、かつ、昇温時、および、降温時における温度の応答性が向上可能ともなる。
【0059】
(8)相互に隣り合う直線状部231Lの間の幅WPが、0.4mm以上0.6mm以下であり、発熱線の幅WLが、相互に隣り合う発熱線の間の幅WPの1.4倍以上1.6倍以下である場合には、発熱線の配置が均一かつ緻密になる。そのため、面状発熱体20における単位面積当たりの発熱量の均一性を高めることが可能ともなる。
【0060】
(9)通電部23に電流が流れるとき、導線と発熱線とが互いに等しい電気抵抗率を有する構成と比べて、導線の温度と発熱線の温度との間の温度差が大きい。そのため、面状発熱体20による加熱の範囲が、外郭線に囲まれた面に、より高い精度で特定される。
【0061】
(10)
図5に示す例のように、配線部232Aは、第1端部に接続され、外郭線のなかで第1端部から第2端部に向けた部分に追従する。また、配線部232Bは、配線部232Bに接続され、外郭線のなかで第1端部から第2端部に向けた部分に追従する。そのため、各熱収縮チューブ25A,25Bのように、通電部23に電流を供給するための2つの端部の間の距離が、配線部232A,232Bによって短くなる。これにより、面状発熱体20に電流を供給するための構成の小型化を図ることが可能ともなる。
【0062】
(11)発熱部231を構成する発熱線の幅WLが、例えば、0.4mm以上0.6mm以下であり、配線部232A,232Bを構成する導線の幅WCが2mm以上4mm以上である場合、導線の幅が発熱線の幅の2倍以上となる。これにより、上記(9)に準じた効果を得ることの実効性を高めることが可能ともなる。
【0063】
上述した実施形態は、以下のように適宜変更して実施できる。
[発熱部231]
・発熱部231は、2本以上の発熱線から構成されてもよい。例えば、発熱部231は、発熱部231の外周部に位置する1つの発熱線と、外周部よりも内側に位置する内周部に位置する別の発熱線とによって構成可能である。また例えば、発熱部231は、発熱部231と対向する方向から見て、右側半分に位置する1つの発熱線と、左側半分に位置する別の発熱線とによって構成可能でもある。
【0064】
これらの構成によれば、1つの発熱線から構成される発熱要素と、別の発熱線から構成される発熱要素との間で、発熱量を異ならせることも可能となる。なお、1つの発熱線から構成される発熱要素と、別の発熱線から構成される発熱要素との間に面状熱良導体21が位置する場合には、1つの発熱要素と別の発熱要素との隙間での急激な温度変化を抑えることが可能ともなる。
【0065】
・発熱部231は、直線状部231Lを曲線状や波線状に変更することも可能である。
[配線部232A,232B]
・配線部232Aの端部と、配線部232Bの端部とは、発熱部231の外縁上である外郭線のなかで相互に異なる辺や角に位置していてもよい。また、発熱線の端部に接続された各導線は、当該接続された点から発熱部231の外側に延び、そして、各リード線25Cに接続されてもよい。
【0066】
[面状熱良導体21]
・面状熱良導体21を構成する材料は、アルミニウム、銅、銀などの金属の他、炭素、無機酸化物のセラミックス、あるいは、これらの複合材料を用いることも可能である。また、面状熱良導体21を構成する材料は、圧延されたフィルムの他に、多数の繊維から構成されるシートを用いることも可能である。
【0067】
・面状熱良導体21の大きさは、通電部23、または、遮光フード13と比べて、十分に大きくてもよい。また、面状熱良導体21の形状は、遮光フード13の有する台形状に限らず、円形状、楕円形状、多角形状などの幾何学形状、さらには、不定形状を含む各種面形状に変更してもよい。
【0068】
・面状熱良導体21は、通電部23のなかで発熱部231以外の部分のみを覆うことも可能である。この構成によれば、発熱部231以外の部位、例えば、加熱の対象領域を囲い一定の低温が求められる領域のように、発熱部231の周囲において温度分布の均一化を図ることが可能ともなる。加熱の対象領域を囲う領域は、例えば、配線部232A,232Bを含む。要は、面状熱良導体21は、通電部23の少なくとも一部を覆っていればよい。
【0069】
・面状熱良導体21を備えた面状発熱体20は、遮光フード13がカメラカバー11に組みつけられることによって、カメラカバー11と遮光フード13とに挟まれて、それによって、カメラカバー11に保持されてもよい。
【0070】
・遮光フード13が面状熱良導体21を備える場合、面状熱良導体21を遮光フード13の裏面に貼り付ける構成の他に、遮光フード13の表側であって、かつ、遮光シート13Sの裏側に面状熱良導体21を保持する構成、または、遮光フード13と一体に面状熱良導体21をインサート形成する構成が採用可能である。
【0071】
[配線部232A,232B]
・配線部232A,232Bの少なくとも一方は、導線を備えず、発熱線の端部に直接接続された面状を有してもよい。
【0072】
例えば、
図9が示すように、通電部23を構成する発熱部231の外郭線が、三角形を有する。配線部232A,232Bは、三角形の内部に位置する。こうした構成であっても、面状熱良導体21が発熱部231の全てを覆う構成であれば、外郭線に囲まれた三角形状の面の全てで、温度分布の均一化が図られる。
【0073】
なお、
図9が示す変更例のように、外郭線に囲まれた面内に配線部232A,232Bが位置する構成では、配線部232A,232Bが位置する範囲で、発熱量が低まる。そのため、上記実施形態の配線部232A,232Bのように、配線部232A,232Bは、発熱部231の外郭線に追従して、外郭線に囲まれた面外に位置することが好ましい。この構成によれば、外郭線に囲まれた面を効果的に加熱すること、ひいては、異物の付着を効果的に抑えることが可能となる。
【0074】
・配線部232A,232Bの少なくとも一方は、外郭線に追従した導線を備えず、外郭線に囲まれた面外に向けて発熱線の端部から延在してもよい。
例えば、
図10が示すように、通電部23を構成する発熱部231の外郭線が、等脚台形を有する。発熱線が備える1つの端部は、等脚台形における上底の右端部に位置する。発熱線が備える別の端部は、等脚台形における下底の左端部に位置する。配線部232A,232Bは、等脚台形の外側、すなわち、外郭線に囲まれた面外に位置する。配線部232Aは、等脚台形における上底の右端部から右斜め上方に向けて延在している。配線部232Bは、等脚台形における下底の左端部から左方に向けて延在している。こうした構成であっても、面状熱良導体21が発熱部231の全てを覆う構成であれば、外郭線に囲まれた等脚台形状の面の全てで、温度分布の均一化が図られる。
【0075】
なお、
図10が示す変更例のように、配線部232Aと配線部232Bとが、互いに離れるように延在する構成では、配線部232A,232Bが延在する分だけ、通電部23に電流を供給するための2つの端部もまた離れる。そのため、上記実施形態の配線部232A,232Bのように、配線部232A,232Bの少なくとも一方は、第1端部に接続され、外郭線のなかで第1端部から第2端部に向けた部分に追従することが好ましい。この構成によれば、上記(10)に準じた効果を得ることが可能ともなる。
【0076】
・面状発熱体20が備える複数の導線のなかの少なくとも1つの導線が対象となる導線であり、面状発熱体20は、対象となる導線の幅が全ての発熱線の幅よりも大きいことによって、対象となる導線の電気抵抗率が発熱線よりも低い電気抵抗率を有し、対象となる導線が外郭線に追従する構成であればよい。この構成であっても、上記(9),(11)に準じた効果を得ることは可能である。
【0077】
・上記実施形態、および、各変更例における面状発熱体20は、面状熱良導体21を備えない構成であって、導線の幅が発熱線の幅よりも大きいことによって、導線の電気抵抗率が発熱線よりも低い電気抵抗率を有し、導線が外郭線に追従する構成であってもよい。