特許第6813716号(P6813716)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6813716
(24)【登録日】2020年12月21日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】骨代替材料
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/12 20060101AFI20201228BHJP
   A61L 27/46 20060101ALI20201228BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   A61L27/12
   A61L27/46
   A61L27/50
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-532763(P2020-532763)
(86)(22)【出願日】2018年12月13日
(86)【国際出願番号】EP2018084776
(87)【国際公開番号】WO2019115700
(87)【国際公開日】20190620
【審査請求日】2020年8月12日
(31)【優先権主張番号】17207233.2
(32)【優先日】2017年12月14日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508326459
【氏名又は名称】ガイストリッヒ ファーマ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ツィールマン,クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】バフラー,ミヒャエル
【審査官】 鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−530568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00−27/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代替材料であって、焼結CAPコアと、焼結CAPコアの外表面上に堆積したナノ結晶HAPの少なくとも1つの閉じたエピタキシャル成長層(ここで、エピタキシャル成長ナノ結晶は、ヒト骨塩と同じサイズと形態を有する)とを含み、焼結CAPコアの外表面上に堆積したナノ結晶HAPの閉じたエピタキシャル成長層が、エピタキシャル成長HAPナノ結晶からなる平らな結晶小板の個々のクラスターと、個々のクラスターの間の粗い領域(ここで、個々のクラスターの間の粗い領域の割合は、SEMで測定されるとき表面全体の少なくとも20%である)とを含む不均質な外表面を有する、骨代替材料。
【請求項2】
個々のクラスターの間の粗い領域が、SEMで測定されるとき0.2〜5μmの個々の小板サイズである、HAPナノ結晶の小板からなる、請求項1記載の二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代替材料。
【請求項3】
個々の結晶クラスターの間の粗い領域の割合が、SEMで測定されるとき表面全体の少なくとも30%である、請求項1又は2記載の二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代替材料。
【請求項4】
個々の結晶クラスターの間の粗い領域の割合が、SEMで測定されるとき表面全体の少なくとも40%である、請求項1〜3のいずれか一項記載の二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代替材料。
【請求項5】
焼結CAPコアが、本質的にα−TCPからなる、請求項1〜4のいずれか一項記載の二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代替材料。
【請求項6】
HAPの%が、XRDにより測定されるとき1〜10%である、請求項1〜5のいずれか一項記載の二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代替材料。
【請求項7】
HAPの%が、XRDにより測定されるとき1.5〜3.5%である、請求項1〜5のいずれか一項記載の二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代替材料。
【請求項8】
顆粒の形状である、請求項1〜8のいずれか一項記載の二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代替材料。
【請求項9】
成形体の形状である、請求項1〜8のいずれか一項記載の二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代替材料。
【請求項10】
ポリマーマトリックス中に請求項1記載の二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代替材料の顆粒を含有するパテ。
【請求項11】
顆粒が、250〜5000μmのサイズを有する、請求項10記載のパテ。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか一項記載のCAP/HAP骨代替材料の調製方法であって、以下の工程:
a)焼結CAPコア材料を調製すること、
b)焼結CAPコア材料を10℃と50℃の間の温度で水性緩衝液に浸漬して、CAPからHAPへの変換プロセスを開始し、焼結CAPコア材料表面上にナノ結晶ヒドロキシアパタイトの一様で閉じたエピタキシャル成長層(ここで、エピタキシャル成長ナノ結晶は、ヒト骨塩と同じサイズと形態を有する)を形成すること、
c)HAPの少なくとも1つのナノ結晶層の一様で閉じたコーティングが存在するが、変換プロセスが完全に終わる前の時点で、水性緩衝液から固体材料を分離することによって変換を停止させること、洗浄液として純水及び短鎖脂肪族アルコール溶液を含む洗浄プロトコールを適用することにより、分離した固体材料を洗浄して、焼結CAPコアの外表面が、エピタキシャル成長HAPナノ結晶からなる平らな結晶小板の個々のクラスターと、個々のクラスターの間の粗い領域(ここで、個々のクラスターの間の粗い領域の割合は、SEMで測定されるとき表面全体の少なくとも20%である)とを含む不均質な外表面を有する、CAP/HAP骨代替材料を形成すること、並びに
d)場合により、工程c)からの分離された材料を滅菌すること
を含む方法。
【請求項13】
短鎖脂肪族アルコールが、エタノールである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
分離した固体材料の洗浄が、純水による2〜10洗浄工程と、直後の短鎖脂肪族アルコールによる少なくとも1洗浄工程とを伴う、請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
工程b)が、35〜40℃の温度で、pH7.0〜8.0のリン酸緩衝液中で行われる、請求項12〜14のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不均質な外表面を有するリン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)に基づく二層構造を持つ新しい二相性骨代替材料、その材料の製造方法、並びにヒト又は動物の欠損部位における骨形成、骨再生、骨修復及び/又は骨置換を支持するためのインプラント又はプロテーゼとしてのこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
骨構造の欠損は、外傷、疾患、及び手術のような様々な状況で発生するが、種々の外科分野における骨欠損を効果的に修復する必要が依然として存在する。
【0003】
骨欠損部位の治癒を刺激するために、数多くの天然及び合成の材料及び組成物が使用されてきた。歯周及び顎顔面骨欠損で骨成長を促進する、周知の天然の骨伝導性の骨代替材料は、Geistlich Pharma AGから市販されているGeistlich Bio-Oss(登録商標)である。その材料は、米国特許第5,167,961号に記載されている方法によって自然骨から製造され、自然骨の小柱構造及びナノ結晶構造の保存を可能にして、吸収されないか又は非常にゆっくりと吸収される優れた骨伝導性マトリックスが得られる。
【0004】
リン酸三カルシウム/ヒドロキシアパタイト(TCP/HAP)システム及び骨代替材料としてのこれらの使用は、例えば、US-6,338,752に記載されており、リン酸アンモニウムとHAPとの粉末混合物を1200〜1500℃で加熱して、α−TCP/HAPの二相セメントの調製方法を開示している。
【0005】
欧州特許EP-285826は、インプラント用の金属及び非金属体上のHAPの層を製造する方法であって、α−TCPの層を適用し、80〜100℃でpH2〜7の水との反応によりα−TCP層をHAPに完全に変換することによる方法を記載している。得られた生成物は、HAPの層で覆われた金属又は非金属体である。
【0006】
WO 97/41273は、特にヒドロキシアパタイト(HAP)又は他のリン酸カルシウム(CAP)などの基材を炭酸ヒドロキシアパタイト、即ち、リン酸及び/又はヒドロキシルイオンが重炭酸イオンによって部分的に置換されているヒドロキシアパタイトのコーティングでコーティングする方法であって、(a)50℃未満の温度でカルシウムイオン、リン酸イオン及び重炭酸イオンを含有するpH6.8〜8.0の溶液に基材を浸漬し、(b)基材と接触している溶液の部分をpHが8を超えるまで50〜80℃の温度まで加熱して、(c)基材と工程(b)で得られたアルカリ溶液との接触を維持して、炭酸ヒドロキシアパタイトコーティングを形成し、そして(d)基材を溶液から取り出し、コーティングを乾燥させることを含む方法を記載している。重炭酸イオンは、ヒドロキシアパタイト結晶成長の阻害剤として作用するため、欠損を含み、かつ寸法がかなり小さい、即ち、長さが10〜40nm、幅が3〜10nmの非化学量論的結晶が得られることが開示されている(7ページ、1〜7行目を参照のこと)。
【0007】
リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)システム、特にTCP/HAPシステムの成分は、その熱力学的安定性が異なる。この違いにより、CAP/HAPシステムが哺乳動物、特にヒト患者に埋め込まれると、体液中のTCP及びその他のリン酸カルシウムの溶解度は、HAPの溶解度よりも高い。リン酸カルシウムとHAPの間の溶解度の違いにより、CAP/HAPシステムの不規則な焼結構造が崩壊するが、これは、溶解性の高い方の化合物CAP(例えば、TCP)がHAPよりも速く除去されるためである。高温で生成したCAPとHAPの間の焼結相互接合は、生理環境でのデバイスのより高い溶解度にも大きく貢献しよう。2つの異なるタイプの反応が、このようなセラミックの加速したインビボ分解を支配する:化学溶解及び細胞による生物学的吸収。どちらのプロセスもセラミック材料の溶解を引き起こし、更にはカルシウムイオンの局所的な過飽和を引き起こして、吸着されるカルシウムイオンよりも多くのカルシウムイオンが放出される。カルシウムイオンの自然の平衡は、細胞外マトリックスにも、インプラント周囲の組織にも最早存在しない。カルシウムイオンの過飽和に関する自然のカルシウム平衡の局所的な撹乱は、破骨細胞の活性を上昇させ、ひいてはセラミック材料の制御されない吸収を加速し、特に大量の合成骨代替材料を使用する場合に有害な炎症反応のリスクにつながる。
【0008】
骨代替材料のGeistlich Bio-Ossをヒト患者に埋め込むと、自然のカルシウム平衡は実質的に影響を受けず、材料の表面上及びその局所環境内のカルシウムイオンの濃度はほぼ一定のままである。よって材料の生物学的吸収は起こらないか、又は有害な炎症反応のリスクを伴わない非常に遅い速度で進行する。
【0009】
EP-B1-2445543は、非常に有利なリン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代替材料を開示しているが、これは、骨代替材料のGeistlich Bio-Ossと同様に、体内に設置後、材料の表面上及びその局所環境内のカルシウムイオンの濃度をほぼ一定に維持することができ、よって破骨細胞活性の上昇につながらない。
【0010】
実際、最適な骨再生に必要な自然のカルシウム平衡は乱されたり破壊されたりしない。更に、自然のカルシウム濃度の平衡は、再生プロセスが完了するまで、骨代替材料によって永続的に支持される。これらの条件が満たされると、破骨細胞活性が上昇しないため、有害な炎症反応のリスクがない。
【0011】
EP-B1-2445543の発明は、焼結CAPコアと、焼結CAPコアの上に堆積したナノ結晶HAPの少なくとも1つの均質で閉じたエピタキシャル成長層(ここで、エピタキシャル成長ナノ結晶は、ヒト骨塩と同じサイズと形態、即ち、長さ30〜46nm及び幅14〜22nmを有する)とを含む、二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代替材料に関する。
【0012】
焼結CAPコアは、リン酸三カルシウム(TCP)、特にα−TCP(α−Ca(PO)又はβ−TCP(β−Ca(PO)、及び/又はリン酸四カルシウム(TTCP)Ca(POOを含んでもよい。
【0013】
頻繁に使用される実施態様では、焼結CAPコアは、本質的にTCPからなり、α−TCPが好ましい。
【0014】
ナノ結晶HAPのエピタキシャル成長層は、構造的及び化学的に天然のヒト骨塩とほぼ同一である。
【0015】
ナノ結晶HAPのエピタキシャル成長層は一般に、少なくとも15〜50nm、好ましくは少なくとも20〜40nm、更に好ましくは少なくとも25〜35nmの厚さを有する。その最小厚さは、エピタキシャル配向のHAPナノ結晶の1つの層に対応する。
【0016】
ナノ結晶HAPのエピタキシャル成長層は、エピタキシャル配向のHAPナノ結晶の単層又は多層を含むことができる。エピタキシャル配向のHAPナノ結晶のそのような層の数に関連する、ナノ結晶HAPのエピタキシャル成長層の厚さは、身体の負荷が異なる部位におけるインプラント又はプロテーゼとしての骨代替材料の意図される用途により選択されよう。その発明の骨代替材料は確かに、焼結CAPコアをサイズと形態がヒト骨塩に類似したヒドロキシアパタイトへと徐々に変換する生体様システムとしてインビボで機能するように設計されており、その変換速度は、焼結CAPコアによるカルシウム放出の速度に依存し、そして大部分はナノ結晶HAPのエピタキシャル成長層の厚さによって制御される。
【0017】
CAP/HAP骨代替材料の特性は、大部分は結晶HAPのエピタキシャル成長層の厚さによって制御される。「特性」という用語は、CAP/HAP骨代替品が一定濃度のカルシウムイオンをインビトロ及びインビボで局所環境に放出する能力を含む。
【0018】
ナノ結晶HAPのエピタキシャル成長層の厚さは、焼結CAPコア材料対HAPの比に関連し、前記比は、一般に5:95〜95:5の間、好ましくは10:90〜90:10である。
【0019】
CAP/HAP骨代替材料は、粒子状又は顆粒状であってよく、この粒子又は顆粒は所望のサイズと形状を有する。一般に、粒子又は顆粒は、ほぼ球形であり、そして直径250〜5000μmである。
【0020】
CAP/HAP骨代替材料はまた、成形体、例えば、ネジ、釘、ピン、又は特に、股関節、鎖骨、肋骨、下顎骨若しくは頭蓋骨のような、骨性身体部分の輪郭を有する構造であってもよい。そのようなネジ、釘、又はピンは、例えば、膝又は肘の骨に靭帯を固定するための整形外科再建手術において使用されてもよい。骨性身体部分の輪郭を有するそのような構造は、消失又は欠損の骨又は骨部分を置換するためのプロテーゼとして整形外科手術において使用されてもよい。
【0021】
EP-B1-2445543のそのCAP/HAP骨代替材料は、以下の工程:
a)焼結CAPコア材料を調製すること、
b)焼結CAPコア材料を10℃と50℃の間の温度で水溶液に浸漬して、CAPからHAPへの変換プロセスを開始し、それによって焼結CAPコア材料表面上にナノ結晶ヒドロキシアパタイトの均質で閉じたエピタキシャル成長層(ここで、エピタキシャル成長ナノ結晶は、ヒト骨塩と同じサイズと形態を有する)が形成されること、
c)HAPの少なくとも1つのナノ結晶層の均質で閉じたコーティングが存在するが、変換プロセスが完全に終わる前の時点で、水溶液から固体材料を分離することによって変換を停止させること、
d)場合により、工程c)からの分離された材料を滅菌すること
を含むプロセスによって得られることが教示されている。
【0022】
焼結CAPコア材料の調製は、最初にリン酸水素カルシウム(CaHPO)、炭酸カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの粉末を混合し、次に適切な温度範囲内で混合物をか焼及び焼結し、これによってバルク焼結CAPコア材料が与えられることを含む、当技術分野において公知の方法によって実施され得る(例えば、Mathew M. et al., 1977, Acta. Cryst. B33: 1325; Dickens B. et al., 1974, J. Solid State Chemistry 10, 232; and Durucan C. et al., 2002, J. Mat. Sci., 37:963を参照のこと)。
【0023】
よってバルク焼結TCPコア材料を、リン酸水素カルシウム(CaHPO)、炭酸カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの粉末を化学量論比で混合し、混合物を1200〜1450℃の範囲の温度、好ましくは1400℃でか焼及び焼結することによって得てもよい。
【0024】
バルク焼結TTCPコア材料もまた、上記プロセスによって得てもよい。
【0025】
そのような方法によって調製されたバルク焼結CAP材料は、2〜80体積%の空隙率及び細孔の幅広い分布を有する多孔質であってよい。空隙率パラメーターは、CAP/HAP骨代替材料の意図される用途に応じて選択されよう。
【0026】
工程b)に使用される焼結CAPコア材料は、
−上記のとおり調製されたバルク焼結CAPコア材料であるか、
−上記のとおり調製されたバルク焼結CAPコア材料から、破砕、磨砕及び/又は粉砕、並びに篩い分けのような従来の方法を使用して得られた、焼結CAPコア材料の粒子又は顆粒であるか、あるいは
−所望の形状とサイズ、例えば、ネジ、釘、ピン、又は骨性身体部分の輪郭を有する構造を有する焼結CAPコア材料のプリフォームであってもよい。
【0027】
このような任意の所望の形状とサイズのプリフォームを、CNCフライス加工又は3D印刷のような周知のプロトタイピング技術を使用して、上記のとおり調製されたバルク焼結コア材料から得てもよい(例えば、Bartolo P. et al., 2008, Bio-Materials and Prototyping Applications in Medicine, Springer Science New York, ISBN 978-0-387-47682-7; Landers R. et al., 2002, Biomaterials 23(23), 4437; Yeong W.-Y. et al., 2004, Trends in Biotechnology, 22 (12), 643; and Seitz H. et al., 2005, Biomed. Mater. Res. 74B (2), 782を参照のこと)。
【0028】
工程b)の水溶液は、純水、人工体液又は緩衝液であると教示されている。重要なのは、工程b)の浸漬溶液のpH値がほぼ中性であり、変換プロセス全体を通じて、好ましくは5.5〜9.0のpH範囲内で安定を保つことである。
【0029】
「人工体液」という用語は、体液を模倣する任意の溶液のことをいう。好ましくは、人工体液は、血漿のそれと同様のイオン濃度を有する。
【0030】
緩衝液は、上記のpH範囲の任意の緩衝液であり得るが、好ましくは、カルシウム、マグネシウム及び/又はナトリウムを含むか含まないリン酸緩衝液である。
【0031】
実施例で使用される緩衝液(実施例4及び5を参照のこと)は、水性リン酸緩衝液である。
【0032】
工程b)の温度範囲は、一般に10℃〜50℃、好ましくは25〜45℃、更に好ましくは35℃〜40℃である。
【0033】
浸漬工程b)は、第1段階でCAPコア材料の一次相転移を誘導し、したがってHAPナノ結晶前駆体の核形成を誘導する。第2段階中に、第1段階から得られたHAP前駆体は成長して、閉じた(即ち、完全にコーティングしている)エピタキシャルナノ結晶複合層を確立する。最初のHAPナノ結晶層は、均質で閉じており、かつ焼結CAPコア材料にエピタキシャルに接合されている必要がある。
【0034】
第3段階中に、新しく形成された二重複合層内で一次相転移が進行して、焼結CAPコア材料(TCP又はTTCP)をナノ結晶HAPに更に変換し得る。相転移のこの第3工程中に、焼結CAPコア材料の一部がナノ結晶HAPに変換されるまで、遅延拡散制御プロセスによって制御可能な時間、カルシウムイオンが放出されよう。HAP層の厚さ、したがってカルシウム放出の速度は、変換時間の変動によって制御され得る。
【0035】
適切な厚さのエピタキシャル成長ナノ結晶HAP層は、インビトロで調製されるが、ここでHAPへのCAPの変換は、完了する前に停止させる。
【0036】
CAP/HAP骨代替材料がインビボに設置されると直ぐに、HAPへのCAPの変換プロセスは、体液との接触により再活性化され、骨代替材料は、ヒト骨塩にサイズと形態が類似する新しいヒドロキシアパタイトを形成する生体様システムとして機能しよう。インビボ相変態プロセス中に、輸送されたカルシウムイオンは、骨再生プロセスにとって重要かつ有益である局所カルシウム平衡を支持する局所環境へと放出されよう。
【0037】
身体の負荷が異なる部位では骨欠損の再生時間が異なるため、カルシウム放出の速度を制御できることが重要である。これは、ヒドロキシアパタイトのエピタキシャル成長層の厚さを変えることによって達成され得る。
【0038】
したがって工程c)は非常に重要な工程である。工程b)の水溶液における曝露時間は、所望のHAP層の厚さに基づく。エピタキシャル配向のナノ結晶HAPの少なくとも1つの層が必要である。CAPからHAPへの変換が完了していないことは不可欠である。
【0039】
所望の厚さによる適切な曝露時間は、リン酸カルシウム、セメント及びコンクリート化学の分野の当業者に周知の幾つかの熱力学的微分方程式を使用することによって計算され得る。
【0040】
例えば:Pommersheim, J.C.; Clifton, J.R. (1979) Cem. Conc. Res.; 9:765; Pommersheim, J.C.; Clifton, J.R. (1982) Cem. Conc. Res.; 12:765; and Schlussler, K.H. Mcedlov-Petrosjan, O.P.; (1990): Der Baustoff Beton, VEB Verlag Bauwesen, Berlinを参照のこと。
【0041】
上記の微分方程式の解をCAP/HAPシステムに代入すると、CAPのHAPへの相転移及び層の厚さを予測できるため、HAPのエピタキシャル層を安定で再現性あるやり方で調製することができる。
【0042】
工程c)の最後の水溶液からの固体材料の分離は、当技術分野で周知の技術を使用して、濾過、洗浄及び乾燥によって通常実施される。
【0043】
EP-B1-2445543の実施例(即ち、実施例4[0057]及び実施例5[0058])において、洗浄は、緩衝液から残留物を取り出すために骨代替材料の分離した顆粒を精製水で3回洗浄することによって実施される。
【0044】
オプションの滅菌工程d)は、ガンマ線照射又はX線照射のような当技術分野で周知の手法によって実施され得る。
【0045】
EP-B1-2445543の実施例4及び5に教示されているとおり、工程b)の水溶液用の水性リン酸緩衝剤と精製水とを使用して、工程c)の最後に分離した顆粒を3回洗浄すると、焼結CAPコアと、焼結CAPコアの外表面上に堆積したナノ結晶HAPの一様で閉じたエピタキシャル成長層(ここで、エピタキシャル成長ナノ結晶は、ヒト骨塩と同じサイズと形態を有する)とを含む、二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代替材料が得られるが、ここで、焼結CAPコアの外表面上に堆積したナノ結晶HAPの閉じたエピタキシャル成長層は、エピタキシャル成長HAPナノ結晶からなる平らな結晶小板の個々の(分離した)クラスターと、平らな結晶小板の個々のクラスターの間の滑らかな領域とを含む、不均質な外表面を有しており、平らな結晶小板の個々のクラスターの間の滑らかな領域が占める表面の%は、所与の変換条件での変換時間に依存する。
【0046】
図1A[滑らかな領域が、SEM(走査型電子顕微鏡法)で測定されるとき外表面全体の約70%に相当する、30分の変換時間を有する、プロトタイプ1(1〜2mm顆粒)のSEM写真を表す];及び図1B[滑らかな領域が、SEMで測定されるとき外表面全体の約50%に相当する、40分の変換時間を有する、プロトタイプ2(1〜2mm顆粒)のSEM写真を表す]を参照のこと。
【0047】
EP-B1-2445543に開示された二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代替材料の調製において、骨移植片代替品の調製の工程c)において分離した顆粒に特定の洗浄プロトコールを適用することにより、平らな結晶小板の個々のクラスターの間の不均質な外表面の滑らかな領域が、粗い領域によって置き換えられることが今や見い出された。特定の洗浄プロトコールは、最初に純水による規定の洗浄プロトコールと、直後の短鎖脂肪族アルコールによる規定の洗浄プロトコールとを含む。平らな結晶小板の個々のクラスターの間のこれらの粗い領域は一般に、SEMで測定されるとき個々の小板サイズが0.2〜5μmの小板の連結ネットワークを形成するエピタキシャル成長ヒドロキシアパタイト小板を含む。
【0048】
平らな結晶小板の個々のクラスターの間の粗い領域が、SEMで測定されるとき外表面全体の少なくとも20%に相当する場合、EP-B1-2445543に開示された、同じ条件下で変換されたが、異なる洗浄プロトコールで洗浄されて、平らな結晶小板の個々のクラスターの間に滑らかな領域が得られる骨代替材料と比較して、骨刺激(新骨形成を誘導する骨代替材料の能力)が有意に増強されていることが更に見い出された。これは、特に移植3週間後のウサギモデルにおける大腿顆の骨面密度の測定によって示される。
【0049】
発明の要約
よって本発明は、焼結CAPコアと、焼結CAPコアの外表面上に堆積したナノ結晶HAPの少なくとも1つの閉じたエピタキシャル成長層(ここで、エピタキシャル成長ナノ結晶は、ヒト骨塩と同じサイズと形態を有する)とを含む、二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代替材料に関するが、ここで、焼結CAPコアの外表面上に堆積したナノ結晶HAPの閉じたエピタキシャル成長層は、平らな結晶小板(エピタキシャル成長HAPナノ結晶の凝集体からなる)の個々のクラスターと、平らな結晶小板の個々のクラスターの間の粗い領域(ここで、平らな結晶小板の個々のクラスターの間の粗い領域の割合は、SEMで測定されるとき外表面全体の少なくとも20%である)とを含む不均質な外表面を有する。
【0050】
その二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代替材料は、骨形成を誘導する能力の増大を示す。
【0051】
一般に、個々のクラスターの間の粗い領域は、SEMで測定されるとき0.2〜5μmの個々の小板サイズのHAPナノ結晶のエピタキシャル成長小板からなる。
【0052】
好ましくは個々の結晶クラスターの間の粗い領域の割合は、SEMで測定されるとき表面全体の少なくとも30%、更に好ましくは外表面全体の少なくとも40%である。
【0053】
一般に、XRDで測定されるとき上記二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代替材料におけるHAPの割合は、多くとも10%である。実際、その割合が10%を超える場合、エピタキシャル成長HAPナノ結晶の平らな結晶小板の個々のクラスターは一般に、外表面に過度の空間を占め過ぎて、SEMで測定されるとき個々の結晶クラスターの間の粗い領域の割合が表面全体の20%を下回る。
【0054】
好ましくはXRDで測定されるときHAPの割合は、1〜5%、更に好ましくは1.5〜3.5%である。
【0055】
焼結CAPコアは、リン酸三カルシウム(TCP)、特にα−TCP(α−Ca(PO)又はβ−TCP(β−Ca(PO)、及び/又はリン酸四カルシウム(TTCP)Ca(POOを含む。
【0056】
頻繁に使用される実施態様では、焼結CAPコアは、本質的にTCPからなり、α−TCPが好ましい。
【0057】
ナノ結晶HAPのエピタキシャル成長層は、構造的に天然のヒト骨塩とほぼ同一である。
【0058】
CAP/HAP骨代替材料は、粒子状又は顆粒状であってよく、この粒子又は顆粒は所望のサイズ及び形状を有する。一般に、粒子又は顆粒は、250〜5000μm、好ましくは1000〜2000μmのサイズを有する。
【0059】
CAP/HAP骨代替材料はまた、成形体、例えば、ネジ、釘、ピン、又は特に、股関節、鎖骨、肋骨、下顎骨若しくは頭蓋骨のような、骨性身体部分の輪郭を有する構造であってもよい。そのようなネジ、釘又はピンは、例えば、膝又は肘の骨に靭帯を固定するための整形外科再建手術において使用されてもよい。骨性身体部分の輪郭を有するそのような構造は、消失又は欠損の骨又は骨部分を置換するためのプロテーゼとして整形外科手術において使用されてもよい。
【0060】
本発明はまた、一般に天然又は合成ポリマーを含む、適切なマトリックス中に上記のCAP/HAP骨代替品の粒子又は顆粒を含むパテに関する。一般に、粒子又は顆粒は、250〜5000μm、好ましくは1000〜2000μmのサイズを有する。
【0061】
本発明は更に、上記のCAP/HAP骨代替材料の調製方法であって、以下の工程:
a)焼結CAPコア材料を調製すること、
b)焼結CAPコア材料を10℃と50℃の間の温度で水性緩衝液に浸漬して、CAPからHAPへの変換プロセスを開始し、それによって焼結CAPコア材料表面上にナノ結晶ヒドロキシアパタイトの一様で閉じたエピタキシャル成長層(ここで、エピタキシャル成長ナノ結晶は、ヒト骨塩と同じサイズと形態を有する)が形成されること、
c)HAPの少なくとも1つのナノ結晶層の一様で閉じたコーティングが存在するが、変換プロセスが完全に終わる前の時点で、水性緩衝液から固体材料を分離することによって変換を停止させること、洗浄液として純水及び短鎖脂肪族アルコール溶液を含む特定の洗浄プロトコールを適用することにより、分離した固体材料を洗浄すること、並びに
d)場合により、工程c)からの分離された材料を滅菌すること
を含む方法に関する。
【0062】
分離した固体材料の工程c)の特定の洗浄プロトコールは、純水による1〜10洗浄工程、更に好ましくは3〜7洗浄工程と、直後の脂肪族アルコール溶液による少なくとも1洗浄工程、更に好ましくは少なくとも2洗浄工程を含む。
【0063】
適切な短鎖脂肪族アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール及びブタノールからなる群より選択され得る。
【0064】
好ましくは短鎖脂肪族アルコールは、エタノールである。
【0065】
工程b)に使用される水性緩衝液は、工程b)の浸漬溶液のpH値が、ほぼ中性であり、そして変換プロセス全体を通じて、好ましくは5.5〜9.0、更に好ましくは7.0〜8.0のpH範囲内で安定を保つように選択される。
【0066】
緩衝剤は、上記pH範囲内の任意の緩衝剤であってよいが、好ましくはカルシウム、マグネシウム及び/又はナトリウムを含むか又は含まないリン酸緩衝剤である。適切な緩衝液は、例えば、7.45±0.1のpH値を持つリン酸二水素ナトリウム(NaHPO)の0.4M水溶液である。
【0067】
工程b)の温度範囲は一般に、10℃と50℃の間、好ましくは25℃と45℃の間、更に好ましくは35℃と40℃の間である。
【0068】
好ましくは工程b)は、35〜40℃の温度で、pH7.0〜8.0のリン酸緩衝液中で行われる。
【0069】
焼結CAPコア材料の調製は、最初にリン酸水素カルシウム(CaHPO)、炭酸カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの粉末を混合し、次に適切な温度範囲内で混合物をか焼及び焼結し、これによってバルク焼結CAPコア材料が与えられることを含む、当技術分野において公知の方法によって実施され得る(例えば、Mathew M. et al., 1977, Acta. Cryst. B33: 1325; Dickens B. et al., 1974, J. Solid State Chemistry 10, 232; and Durucan C. et al., 2002, J. Mat. Sci., 37:963を参照のこと)。
【0070】
よってバルク焼結TCPコア材料を、リン酸水素カルシウム(CaHPO)、炭酸カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの粉末を化学量論比で混合し、混合物を1200〜1450℃の範囲の温度、好ましくは約1400℃でか焼及び焼結することによって得てもよい。
【0071】
バルク焼結TTCPコア材料もまた、上記プロセスによって得てもよい。
【0072】
そのような方法によって調製されたバルク焼結CAP材料は、2〜80体積%の空隙率及び細孔の幅広い分布を有する多孔質であってよい。空隙率パラメーターは、CAP/HAP骨代替材料の意図される用途に応じて選択されよう。
【0073】
工程b)に使用される焼結CAPコア材料は、
−上記のとおり調製されたバルク焼結CAPコア材料であるか、
−上記のとおり調製されたバルク焼結CAPコア材料から、破砕、磨砕及び/又は粉砕、並びに篩い分けのような従来の方法を使用して得られた、焼結CAPコア材料の粒子又は顆粒であるか、あるいは
−所望の形状とサイズ、例えば、ネジ、釘、ピン、又は骨性身体部分の輪郭を有する構造を有する焼結CAPコア材料のプリフォームであってもよい。
【0074】
このような任意の所望の形状とサイズのプリフォームを、CNCフライス加工又は3D印刷のような周知のプロトタイピング技術を使用して、上記のとおり調製されたバルク焼結コア材料から得てもよい(例えば、Bartolo P. et al., 2008, Bio-Materials and Prototyping Applications in Medicine, Springer Science New York, ISBN 978-0-387-47682-7; Landers R. et al., 2002, Biomaterials 23(23), 4437; Yeong W.-Y. et al., 2004, Trends in Biotechnology, 22 (12), 643; and Seitz H. et al., 2005, Biomed. Mater. Res. 74B (2), 782を参照のこと)。
【0075】
浸漬工程b)は、第1段階でCAPコア材料の一次相転移を誘導し、したがってHAPナノ結晶前駆体の核形成を誘導する。第2段階中に、第1段階から得られたHAP前駆体は成長して、閉じた(即ち、完全にコーティングしている)エピタキシャルナノ結晶複合層を確立する。最初のHAPナノ結晶層は、均質で閉じており、かつ焼結CAPコア材料にエピタキシャルに接合されている必要がある。
【0076】
第3段階中に、新しく形成された二重複合層内で一次相転移が進行して、焼結CAPコア材料(TCP又はTTCP)をナノ結晶HAPに更に変換することができる。相転移のこの第3工程中に、焼結CAPコア材料の一部がナノ結晶HAPに変換されるまで、遅延拡散制御プロセスによって制御可能な時間、カルシウムイオンが放出されよう。HAP層の厚さ、ひいてはカルシウム放出の速度は、変換時間の変動によって制御され得る。
【0077】
適切な厚さのエピタキシャル成長ナノ結晶HAP層は、インビトロで調製されるが、ここでHAPへのCAPの変換は、完了する前に停止させる。
【0078】
CAP/HAP骨代替材料がインビボに設置されると直ぐに、HAPへのCAPの変換プロセスは、体液との接触により再活性化され、骨代替材料は、ヒト骨塩にサイズと形態が類似する新しいヒドロキシアパタイトを形成する生体様システムとして機能しよう。インビボ相変態プロセス中に、輸送されたカルシウムイオンは、骨再生プロセスにとって重要かつ有益である局所カルシウム平衡を支持する局所環境へと放出されよう。
【0079】
身体の負荷が異なる部位では骨欠損の再生時間が異なるため、カルシウム放出の速度を制御できることが重要である。これは、ヒドロキシアパタイトのエピタキシャル成長層の厚さを変えることによって達成され得る。
【0080】
したがって工程c)は非常に重要な工程である。工程b)の水溶液中の曝露時間は、所望のHAP層の厚さに基づく。エピタキシャル配向のナノ結晶HAPの少なくとも1つの層が必要である。CAPからHAPへの変換が完了していないことは不可欠である。
【0081】
所望の厚さによる適切な曝露時間は、リン酸カルシウム並びにセメント及びコンクリート化学の分野の当業者に周知の幾つかの熱力学的微分方程式を使用することによって計算され得る。
【0082】
例えば、Pommersheim, J.C.; Clifton, J.R. (1979) Cem. Conc. Res.; 9:765; Pommersheim, J.C.; Clifton, J.R. (1982) Cem. Conc. Res.; 12:765; and Schlussler, K.H. Mcedlov-Petrosjan, O.P.; (1990): Der Baustoff Beton, VEB Verlag Bauwesen, Berlinを参照のこと。
【0083】
上記の微分方程式の解をCAP/HAPシステムに代入すると、CAPのHAPへの相転移及び層の厚さを予測できるため、HAPのエピタキシャル層を安定で再現性あるやり方で調製することができる。
【0084】
水溶液からの固体材料の分離は、当技術分野で周知の技術を使用して、濾過及び乾燥によって通常実施される。
【0085】
オプションの滅菌工程d)は、ガンマ線照射又はX線照射のような当技術分野で周知の手法によって実施され得る。
【0086】
本発明はまた、一般に粒子又は成形体の形の、ヒト又は動物の欠損部位における骨形成、骨再生、骨修復及び/又は骨置換を支持するためのインプラント又はプロテーゼとしての上記CAP/HAP骨代替材料の使用に関する。
【0087】
本発明はまた、一般に粒子又は成形体の形の、上記CAP/HAP骨代替材料を移植することによる、ヒト又は動物の欠損部位における骨形成、骨再生及び/又は骨修復を促進する方法に関する。
【0088】
本発明のCAP/HAP骨代替材料の利点
移植3週間後のウサギモデルにおける大腿顆の骨面密度の測定によって示されるとおり、エピタキシャル成長HAPナノ結晶からなる平らな結晶小板の個々の(分離した)クラスターと、平らな結晶小板の個々のクラスターの間の粗い領域とを含む不均質な外表面を有する、本発明の二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代替材料は、平らな結晶小板の個々のクラスターと、平らな結晶小板の個々のクラスターの間の滑らかな領域とを含む不均質な外表面を呈するEP-B1-2445543に開示された骨代替材料と比較して、骨形成を誘導する能力の増大を示す。
【0089】
これは、R.A. GittensらがBiomaterials 2011 May, 32(13): 3395-3403に発表した結果と一致しているが、この文献は、マイクロ−サブマイクロスケールの粗度と組合せたナノスケール構造の導入により骨芽細胞の分化と局所因子の産生が改善されることを示しており、これにより、インビボでのインプラントのオッセオインテグレーション(osseointegration)の改善の可能性が示唆される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
本発明は、本発明の好ましい実施態様の説明例及び添付の図面を参照して、本明細書の以下に更に詳細に記載される。
図1A図1Aは、EP-B1-2445543の開示の実施例1で調製された、平らな結晶小板の個々のクラスターの間の滑らかな領域が、SEMで測定されるとき外表面全体の約70%に相当する、30分の変換時間を有する先行技術の骨代替品のプロトタイプ1のSEM写真を表す。
図1B図1Bは、EP-B1-2445543の開示の実施例1で調製された、平らな結晶小板の個々のクラスターの間の滑らかな領域が、SEMで測定されるとき外表面全体の約50%に相当する、40分の変換時間を有する骨代替品のプロトタイプ2のSEM写真を表す。
図2A図2Aは、実施例2で調製された、平らな結晶小板の個々のクラスターの間の粗い領域が、SEMで測定されるとき外表面全体の約70%に相当する、30分の変換時間を有する本発明の骨代替材料のプロトタイプ3のSEM写真を表す。
図2B図2Bは、実施例2で調製された、平らな結晶小板の個々のクラスターの間の粗い領域が、SEMで測定されるとき外表面全体の約50%に相当する、40分の変換時間を有する本発明の骨代替材料のプロトタイプ4のSEM写真を表す。
図3図3は、本発明の実施例2の骨代替材料(プロトタイプ3)、EP-B1-2445543の実施例1の骨代替材料(プロトタイプ1及び2)並びに2種の周知の市販骨代替材料:ACTIFUSE(登録商標)及びNOVABONE(登録商標)の移植3週間後のウサギモデルにおける大腿顆の骨面密度の測定を示す図を表す。
【0091】
詳細な説明
以下の実施例により、本発明の範囲を限定することなく本発明を説明する。
【実施例1】
【0092】
EP-B1-2445543の二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代替材料の調製。
EP-B1-2445543の実施例1、2及び4と同様に、α−TCPのバルク焼結材料、1.0〜2.0mmの粒径のその多孔質顆粒、及びエピタキシャル成長HAPコーティングを有する変換顆粒を調製した。
実験室用撹拌機を用いて、364g リン酸二カルシウム無水物粉末、136g 炭酸カルシウム粉末、及び220ml 脱イオン水を700rpmで5分間混合した。混合プロセスからのスラリーを、直ちに高温安定なプラチナカップに移した。充填プラチナカップを低温炉に入れた。1時間当たり100℃の加熱速度を使用して、炉を1400℃に加熱した。この温度を12時間保持し、そして炉を1時間当たり500℃の冷却速度で800℃まで冷却し、次に1時間当たり125℃の冷却速度で300℃まで冷却し、最後に炉の切り替えにより室温まで冷却した。バルク焼結材料(相純粋なα−TCP、即ち、α−Ca(PO)を炉及びプラチナカップから取り出した。相純度の制御は、粉末X線回折分析法を用いて実施された。
ジョークラッシャーを使用してバルク生成物を粉砕した(ジョー距離は10〜1mmで変動した)。生成したα−TCP顆粒を、2mm及び1mmのメッシュ開口を有する篩い機及び篩いインサートを使用して篩い分けした。篩い分け後、顆粒をエタノールで濯いで、顆粒に吸着した微粉末残留物を分離した。多孔質顆粒をキャビネット乾燥機で80℃で1時間乾燥させた。濯ぎ後の粒子表面の清浄度は、走査型電子顕微鏡法(SEM)を用いる表面観察によって制御された。
0.4mol/l リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)を蒸留水に溶解して、コーティング及び相変態プロセスに適した緩衝液を調製した。水酸化ナトリウム(NaOH)を使用して、溶液のpHを室温で7.45に調整した。前の段落で生成した顆粒を調製溶液中に浸漬し、温かい水浴(40℃)内でそれぞれ30分間(プロトタイプ1)及び40分間(プロトタイプ2)保存した。浸漬後、顆粒を蒸留水で3回濯ぎ、相変態プロセスを停止させ、緩衝液から残留物を取り出した。多孔質顆粒を、キャビネット乾燥機内で100℃で2時間乾燥させた。
プロトタイプ1及び2のコーティング及び相変態プロセス後の結晶クラスターの表面形態及び表面被覆度は、走査型電子顕微鏡法(SEM)によって観測した(図1A及び図1Bを参照のこと)。
図1A及び1Bから明らかなように、顆粒の外表面は、エピタキシャル成長HAPナノ結晶からなる平らな結晶小板の個々のクラスターとクラスター間の滑らかな領域を含む不均質なものである。
プロトタイプ1及びプロトタイプ2の各々についてSEM写真上で個々のクラスターとその間の滑らかな領域とが占める表面を測定することにより、滑らかな領域がプロトタイプ1では外表面の約70%、そしてプロトタイプ2では外表面の約50%に相当することが判定された。
【実施例2】
【0093】
本発明の二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代替材料の調製。
上記の実施例1のとおり、相純粋なα−TCPの1〜2mmサイズの多孔質顆粒を製造した。
相変態及びコーティング工程は、40℃に設定された水浴に入れたガラスフラスコ中で実施された。変換緩衝液は、pH値7.45±0.1のリン酸二水素ナトリウム(NaHPO)の0.4M 水溶液とした。
ガラスフラスコに変換緩衝液を充填し、α−TCP顆粒を1:40(顆粒対変換溶液)の比で加えた。顆粒を変換溶液に40℃で30分間(プロトタイプ3)又は40分間(プロトタイプ4)浸漬した。浸漬後、顆粒を脱イオン水(顆粒対水の比は重量で1:10)で5回濯ぎ、エタノール(99.9%、顆粒対エタノールの比は重量で1:10)で2回濯いで、相変態プロセスを停止させ、粗い領域の形成を誘導して、緩衝液から残留物を取り出した。多孔質顆粒を、キャビネット乾燥機内で100℃で2時間乾燥させた。
プロトタイプ3及び4のコーティング及び相変態プロセス後の結晶クラスターの表面形態及び表面被覆度を、走査型電子顕微鏡法(SEM)によって観察した(図2A及び図2Bを参照のこと)。
図2A及び2Bから明らかなように、顆粒の外表面は、エピタキシャル成長HAPナノ結晶からなる平らな結晶小板の個々の(分離した)クラスターとクラスター間の粗い領域を含む不均質なものである。
プロトタイプ3及びプロトタイプ4の各々についてSEM写真上で個々のクラスターとクラスター間の粗い領域とが占める表面を測定することにより、粗い領域がプロトタイプ3では外表面の約70%、そしてプロトタイプ4では外表面の約50%に相当することが判定された。
【実施例3】
【0094】
ウサギ試験。
新しく開発された骨代替材料のインビボ性能を評価するために、ウサギの大腿顆モデルが選択された。大腿顆欠損ウサギモデルは、代替生体材料を試験するために最も一般的に使用される動物モデルの1つである(Li Y. et al. Bone defect animal models for testing efficacy of bone substitute biomaterials, Journal of Orthopaedic Translation (2015) 3, 94-104)。
プロトタイプ1、2及び3、更には競合材料のACTIFUSE及びNOVABONEを、ニュージーランドホワイトウサギ(28週齢)の大腿顆の臨界サイズの欠損部(5mm×10mm)に埋め込んだ。移植の3週間後、様々なプロトタイプについて欠損部の骨面密度、インプラント面密度、線維面密度及び骨髄面密度を測定することにより、様々な生体材料の性能を分析した。定量分析を行うために、試料を10%中性緩衝ホルマリン液(NBF)中に固定し、PMMAに包埋し、EXACTシステムを使用して切断して、変性Paragonで染色した。
図3に示されるとおり、移植3週間後にウサギ大腿顆モデルで新しく形成された骨の量は、プロトタイプ1及び2並びに競合材料ACTIFUSE及びNOVABONEと比較して、プロトタイプ3の方が有意に多かった。
【要約】
骨形成を誘導する能力の増大を示す、二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代替材料であって、焼結CAPコアと、焼結CAPコアの外表面上に堆積したナノ結晶HAPの少なくとも1つの閉じたエピタキシャル成長層(ここで、エピタキシャル成長ナノ結晶は、ヒト骨塩と同じサイズと形態を有する)とを有し、焼結CAPコアの外表面上に堆積したナノ結晶HAPの閉じたエピタキシャル成長層が、エピタキシャル成長HAPナノ結晶からなる平らな結晶小板の個々のクラスターと、個々のクラスターの間の粗い領域(ここで、個々のクラスターの間の粗い領域の割合は、SEMで測定されるとき表面全体の少なくとも20%である)とを含む不均質な外表面を有する骨代替材料、及びその調製方法。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3