(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
結晶構成(52)の加熱によって引き起こされる熱レンズ効果を少なくとも部分的に補償するために、前記制御ユニット(64)は、第1のシャッター素子(48)が開いた後に、テレスコープ構成(20;36)が第1の位置から第2の位置に連続的に移動するように、第1の移動装置(60)を制御するように構成されている、請求項1に記載の光学系(10)。
熱レンズ効果はレーザービーム(14)のビームウェストを光軸(z)に沿って変位させ、前記制御ユニット(64)は、照射ライン(22)の幅及び/又は照射ライン(22)の最大強度が実質的に一定に保たれるように、この変位を補償するように構成されている、請求項2に記載の光学系(10)。
前記制御ユニット(64)は、第1のシャッター素子(48)が開いた後に、結像装置(18)が第1の位置から第2の位置に連続的に移動するように、第2の移動装置(62)を制御するように構成されている、請求項8に記載の光学系(10)。
結晶構成(52)の加熱によって引き起こされる熱レンズ効果を少なくとも部分的に補償するために、第1のシャッター素子(48)が開いた後に、テレスコープ構成(20;36)が第1の位置から第2の位置に連続的に移動する、請求項11に記載の方法。
熱レンズ効果はレーザービーム(14)のビームウェストを光軸(z)に沿って変位させ、前記移動によって照射ライン(22)の幅及び/又は照射ライン(22)の最大強度が実質的に一定に保たれるようにこの変位を補償する、請求項12に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
以下に提示す技術は、例えばレーザーリフトオフ用途に関連して使用できる。レーザーリフトオフ用途は、ガラス製キャリアからプラスチック基板を剥がす。この場合、レーザーライン(すなわち照射ライン)は、透明なガラスを通してプラスチック基板上に集束される。接着はレーザービームで溶解されて、プラスチック基板はガラス基板から非接触で分離される。例えばフレキシブルOLEDディスプレイは、製造のためにガラスプレートに接着されたPIホイル上に作成される。蒸着プロセス及びフォトリソグラフィープロセスを含む製造後、レーザーリフトオフ(LLO)プロセスを用いてガラス製キャリアからディスプレイ基板が剥離される。このプロセスでは、例えば343nm及び355nmのレーザービームを放出し、ポリイミド層若しくは接着層にはよく吸収されるが、ガラスに対してはほぼ透過性のパルス固体レーザーが使用される。
【0003】
LLOプロセスの可能な用途は、例えばガラス製キャリアからフレキシブルOLEDディスプレイ基板を剥離することである。この場合、平らなガラスプレート上に、例えば厚さ0.5mmの数10〜100μmのポリイミドフィルムが接着され、その上にOLEDディスプレイ構造が作成されている。ディスプレイフィルムが完成したら、これをガラス製キャリアから取り外さなければならない。この目的のためにレーザーラインを343nm又は355nmに対して透過性のガラスを通してプラスチックフィルムに集束させる。100−500mJ/cm
2の典型的なエネルギー密度では、幅20−50μmのラインを50−300mm/sの速度でその上を移動させることによって接着が溶解される。このときプラスチック基板は損傷せず、フレキシブルOLEDディスプレイ基板は、例えばスマートフォンでの二次加工のために使用できる。
【0004】
提示された技術の別の用途は、薄膜層の加工に関する。例えば薄膜トランジスタ(英語:Thin Film Transistor、略称:TFT)を製造するために、薄膜層の結晶化にレーザーが使用される。加工される半導体として、特にシリコン(略称:Si)、より正確にはa−Siが使用される。半導体層の厚さは例えば50nmであり、これは通常基板(例えばガラス製キャリア)又はその他のキャリア上にある。
【0005】
上記層はレーザー、例えばパルス固体レーザーの光で照射される。この場合、例えば波長532nm又は515nmの光が照射ラインに整形される。これについては例えば独国特許出願DE102012007601Al号又は国際特許出願WO2013/156384Al号を参照されたい。数年前からこれらのプロセスに波長343nm及び355nmのレーザーも使用されている。ビーム整形装置を使用して、レーザービームのビーム形状が長軸と短軸を有するようにレーザービームを整形できる。続いてレーザービームの光から照射ラインを生成するために、このように整形されたレーザービームは、レーザービームの光路でビーム整形装置の後段に配置された結像装置によって照射ラインとして結像される。相応の光学系は、例えば独国特許出願DE102015002537号に記載されている。
【0006】
詳細には、ビーム整形装置は、例えばアナモルフィック光学系を備えることができ、第1の結像軸と第2の結像軸に関して異なる結像特性を有することができる。特にビーム整形装置は、結像装置の直前の位置でレーザー光からビーム形状が長軸と短軸を有するレーザービームを発生するように構成できる。このビーム形状は長軸において(ほぼ)均質化された(又は実質的に均質な)強度分布を有する。次に結像装置は、ビーム整形装置によって結像装置の直前で生成されたビーム形状の短軸(特に短軸のみ)を集束させて、照射ラインの短軸を生成する。しかしながら結像装置は、(特に)長軸に関しては(実質的に)集束特性を持たないので、結像装置の直前でビーム整形装置によって生成されたビーム形状の長軸は、実質的に変化せずに結像装置を通過でき、したがって照射ラインの長軸に対応できる。
【0007】
これに従い照射ラインは以前に整形されたレーザービームのビーム形状と同様に短軸と長軸を有し、明確化するために言うと、特に結像装置によって結像する前のレーザービームのビーム形状の短軸は照射ラインの短軸に対応し、ビーム形状の長軸は照射ラインの(均質化された)長軸に対応する。長軸に沿った照射ラインの強度分布は理想的には長方形であり、例えば長さ(又は半値幅、英語:Full Width at Half Maximum、略称:FWHM)は100mm、例えば750mm〜1000mm又はそれ以上である。短軸に沿った強度分布は通常はウス分布で、FWHMは約5μm〜100μmである。したがって短軸と長軸は比較的高いアスペクト比を形成する。
【0008】
照射ラインは、約1mm/s〜50mm/s、好ましくは10mm/s〜20mm/秒の送り速度で短軸の方向で半導体層上を案内される。光ビームの強度(連続波レーザーの場合)若しくはパルスエネルギー(パルスレーザーの場合)は、半導体層が短時間(すなわち約50ns〜100μsの時間スケール)溶融し、電気特性が改善された結晶層として再び固化するように調整される。
【0009】
LLO及び薄膜トランジスタの製造に関連して上述した応用分野と並んで、基板を照射するために高アスペクト比の照射ラインの生成が必要であるその他の一連の応用分野がある。
【0010】
生成された照射ラインの品質は、特に短軸及び/又は長軸に沿って統合された空間的強度分布に依存し、照射ラインで処理される基板の材料に影響を及ぼす。アモルファスシリコン層の結晶化の際に、長軸に沿った強度分布のわずかな不均質性、例えば1桁の低いパーセンテージ範囲(例えば、約2%)の(理想的な)均質な強度分布からの絶対強度の局所的な偏差又は変調でも、照射ラインを送る際にそれ自体が結晶構造内に(例えば粒径の局所的なばらつきにより)空間的不均質性を引き起こし、これは薄膜層の品質に、ひいては薄膜トランジスタの品質にも影響を及ぼす。ここから次の関係が生じる。照射ラインの強度分布が均質(すなわち均一)であればあるほど、薄膜層の結晶構造はより均質(より均一)であり、それから形成される最終製品、例えばディスプレイ装置(画面、モニターなど)の画面領域のTFTの特性はより均質(より均一)である。
【0011】
上述した照射ラインの強度の空間的均質性と並んで、強度の時間的均質性(スキャン中の強度の時間的変化を意味する)は比較的重要である。照射ラインの一時的な強度の変動により、照射される材料で照射ラインが案内される領域が異なる(すなわち不均質又は不均一な)強度で照射されて、形成された最終製品の望ましくない不均一な特性を招く可能性がある。
【0012】
このような背景で、生成された照射ラインの光学特性を時間的にできるだけ一定に保つことが望ましい。特に照射ラインの強度(特に全体の強度分布又は少なくとも最大強度)及び短軸に沿った照射ラインの半値幅(FWHM)を、時間的にできるだけ一定に保つことが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、それゆえ高品質で時間的に一定の照射ラインの生成を可能にする、特に薄膜層を加工する設備用の照射ラインを生成するための改善された光学系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題は、請求項1に記載の光学系に基づき、及び請求項12に記載の方法に基づき解決される。
【0015】
第1の態様によれば、照射ラインを生成するための(特に薄膜層を加工するための設備用の)光学系が提供される。光学系は、光軸に沿ってレーザービームを発生するためのレーザービーム源を含む。さらに光学系は、レーザービームのビーム形状が長軸と(特に長軸に対して垂直に配向される)短軸を有するようにレーザービームを整形するように構成されたビーム整形装置と、このように整形されたレーザービーム(特にこのように整形されたレーザービームの短軸)を照射ラインとして(又はその上に)結像するように構成されて、レーザービームのビーム経路内でビーム整形装置の後段に配置されている(特に円筒形の)結像装置とを備える。ビーム整形装置は、第1のレンズ群と第2のレンズ群を含む少なくとも1つのテレスコープ構成を備えており、第1のレンズ群と第2のレンズ群は少なくとも短軸に関して光学的屈折力を有する。光学系は、第1のレンズ群と第2のレンズ群の少なくとも一方を光軸に沿って移動させるための第1の移動装置を有する。光学系はさらに、レーザービーム源がレーザービームを発生する間に第1のレンズ群と第2のレンズ群の少なくとも一方が移動するように、第1の移動装置を制御するように構成された制御ユニットを備える。
【0016】
レーザービームのビーム形状は、特に結像装置の前の(特に直前の)レーザービームのビーム形状として理解される。テレスコープ構成は望遠鏡構成とも呼ばれ、この構成のレンズ群又はレンズの光学構成及びそれらの光学特性を表す。特にテレスコープ構成は以下で詳細に説明するように、ケプラーテレスコープ又はガリレオテレスコープであることができる。テレスコープ構成は、少なくとも第1のレンズ群と第2のレンズ群を含む。「レンズ群」という用語は、ここではそれぞれ単一のレンズ(例えば集束レンズ又は拡散レンズ)又は複数の(例えば接合された)レンズから構成されるレンズ群であってよいと理解すべきである。したがって最も単純なケースでは、テレスコープ構成は2つの個々のレンズからなることができ、それぞれが単一のレンズとして固有のレンズ群を形成する。テレスコープ構成は、第1のレンズ群の焦点が第2のレンズ群の焦点と空間的に一致するように構成できる。第1のレンズ群は、例えば単一のシリンダーレンズからなるか、又は複数のシリンダーレンズから構成できる。同様のことは第2のレンズ群に対する第1レンズ群の配置に関わらず該当する。
【0017】
光軸は、本明細書で使用する慣例に従いz軸に沿って延びる。したがって第1の移動装置は、第1のレンズ群、第2のレンズ群、又は両レンズ群をz軸に沿って移動するように構成されている。この目的のために第1の移動装置は、例えばリニアサーボモーター又はピエゾ素子を含むことができる。
【0018】
例えば「第1の移動装置」及び後述する「第2の移動装置」に関連して使用される「第1」及び「第2」という用語は、単にそれらを区別するためだけに用いられ、それ以上の意味を有するものではない。代替として、例えば「第1の移動装置」は「移動装置」と呼び、「第2の移動装置」は「別の移動装置」と呼ぶこともできる。
【0019】
制御ユニットは、例えば少なくとも1つのプロセッサと少なくとも1つのメモリを備えることができる。メモリには、制御ユニットに第1の移動装置を所定のシーケンスに従って制御させる命令を格納できる。さらに制御ユニットは、例えばレーザービーム源及び後述する両シャッター素子など光学系の他の要素を制御するために使用することもできる。
【0020】
上述した技術は、レーザービームの生成中に生じる光学系の光学的変化をテレスコープ構成の移動若しくは調節によって補償できるという効果及び利点を有する。特にレーザービームによって引き起こされる光学系の光学コンポーネントの加熱に起因する熱レンズ効果は、第1の移動装置の移動によって補償されるか又は少なくとも低減され得る。
【0021】
レーザービーム源は、レーザー共振器、ビーム経路内でレーザー共振器の後段に配置された周波数逓倍結晶構成、及びビーム経路内でレーザー共振器と結晶構成の間に配置された第1のシャッター素子を含むことができる。さらに制御ユニットは、第1のシャッター素子の開放状態に応じて第1の移動装置を(特に制御ユニットのメモリに記憶されている制御データに基づいて)制御するように構成できる。
【0022】
レーザー共振器は、例えば特に赤外範囲でレーザービームを放出する固体レーザーであることができる。レーザー共振器は、例えばNd:YAGレーザーを含むことができる。周波数逓倍結晶構成は、例えば周波数倍増のための結晶(SHG結晶とも)及び/又は周波数3倍化のための結晶(THG結晶とも)を含み得る。第1の移動装置の制御と並んで、制御ユニットは第1のシャッター素子を制御するように構成できる。第1のシャッター素子は、例えば機械的シャッターを含むことができる。シャッター素子は、レーザービームを遮断してレーザービーム源がレーザービームを発生しない状態にあるか、又は(例えば機械的シャッターがビーム経路外に移動することにより)レーザービームを通過させるので、レーザービーム源がレーザービームを発生する状態にあるように制御できる。換言すれば、第1のシャッター素子は周波数が逓倍されたレーザービームのためのレーザービーム源のオン/オフスイッチとして捉えることができ、第1のシャッター素子を制御することにより、レーザービーム源にレーザービームを発生させるか、又はレーザービームの発生を停止させることができる。したがってシャッター素子を用いて周波数逓倍結晶構成がレーザービームに曝露される時間を、レーザービームが基板(例えば薄膜層)の照射に実際に使用される時間に短縮できる。
【0023】
第1のシャッター素子の開放状態に応じた制御とは、第1及び/又は第2のレンズ群の移動の時間的シーケンスが第1のシャッター素子の閉鎖又は開放に依存する(特にトリガーされる)ことを意味する。換言すれば、シャッター素子の開放の制御は、第1の移動装置の制御と所定の時間的関連にあることができる。特に第1の移動装置の制御は、シャッター素子の開放(又は開放コマンド)によってトリガーされ得る。
【0024】
制御ユニットは、(特にレンズ内の)結晶構成の加熱によって引き起こされる熱レンズ効果を少なくとも部分的に補償するために、第1のシャッター素子が開いた後に(特に直後に)テレスコープ構成が第1の位置から第2の位置に連続的に移動するように、第1の移動装置を制御するように構成できる。
【0025】
制御ユニットは、第1のシャッター素子と第1の移動装置の制御を引き受けることができ、制御ユニットに第1のシャッター素子が開いた直後にテレスコープ構成を第1の位置から第2の位置に移動させる制御データが制御ユニットのメモリに格納されている。
【0026】
熱レンズ効果により、例えばレーザー中に発生するレーザービームのビームウェストが光軸に沿って変位することがある。この変位は、照射ラインを生成するための光学系では、基板における焦点幅及び焦点位置、ひいては強度が変化することにつながる。制御ユニットは、(特に短軸に沿った)照射ラインの幅及び/又は照射ラインの強度が実質的に一定に保たれるように、この変位を補償するように構成できる。
【0027】
制御ユニットのメモリには、例えばシミュレートされたデータ又は熱レンズ効果の時間依存性を記述する較正データに基づく制御データを格納できる。第1の移動ユニットを制御するための制御データは、この熱レンズ効果を可能な限り最良の方法で補償するように設計できる。
【0028】
少なくとも1つのテレスコープ構成は、例えばケプラーテレスコープ又はガリレオテレスコープであってよい。テレスコープ構成は、実質的にコリメートされた入射レーザービームを実質的にコリメートされたレーザービームとして出射させるように構成できる。ケプラーテレスコープの場合、テレスコープ構成は正の屈折力を持つ2つのレンズ群、特に2つの個々の集束レンズからなることができる。ここで(ビーム経路内で第2のレンズ群の前に配置されている)第1のレンズ群の像側焦点は、(テレスコープ構成の少なくとも1つの可能な位置で)第2のレンズ群の物体側焦点と実質的に一致することができる。ガリレオテレスコープの場合、テレスコープ構成は負の屈折力を有する(ビーム経路内で第2のレンズ群の前に配置された)第1のレンズ群と、正の屈折力を有する第2のレンズ群からなることができる。ここで第1のレンズ群の物体側焦点は(テレスコープ構成の少なくとも1つの可能な位置で)第2のレンズ群の物体側焦点と実質的に一致することができる。したがってガリレオテレスコープはビームエキスパンダー(例えば1:5ビームエキスパンダー若しくは1:5テレスコープ)を表すことができる。
【0029】
テレスコープ構成は、第1のレンズ群と第2のレンズ群が同じ焦点距離を有するケプラーテレスコープであることができる。代替として、第2のレンズ群が第1のレンズ群より大きい焦点距離を有することができ、その際に第2のレンズ群はビーム経路内で第1のレンズ群の後ろに配置されているので、テレスコープ構成に入射するレーザービームは拡大されたレーザービームとして出射する。このテレスコープ構成に加えて、ビーム経路内でテレスコープ構成の前又は後ろに別のテレスコープ構成を配置できる。例えばビーム経路内でテレスコープ構成の後ろに別のテレスコープ構成を設けて、テレスコープ構成は第1のレンズ群と第2のレンズ群が同じ焦点距離を有するテレスコープ構成であり、別のテレスコープ構成はビームを拡大するテレスコープ構成(例えば1:5テレスコープ)であるようにすることができる。
【0030】
第2のレンズ群はビーム経路内で第1のレンズ群の後ろに配置でき、第1の移動装置は第1のレンズ群を移動するように構成されており、第2のレンズ群は(特にビーム整形装置の他の要素に対して、レーザービーム源及び/又は結像装置に対して)動かないように支持されている。
【0031】
したがって第1のレンズ群を移動装置によって移動できる一方、第2のレンズ群はビーム整形装置の他の(光学)要素と共にそれらの場所にとどまる。熱レンズ効果はテレスコープ構成の第1のレンズ群を変位することにより特に効果的に補償できることが分かった。
【0032】
制御ユニットは、第1のシャッター素子が開いた後、第1のレンズ群をビーム経路の方向で光軸に沿って変位するように構成できる。
【0033】
光学系はさらに、結像装置を光軸に沿って移動するための第2の移動装置を備えることができる。結像装置は、例えば基板の直前にある円筒形集束レンズ又は円筒形対物レンズを意味することができる。制御ユニットは、結像装置が第1のレンズ群と第2のレンズ群の少なくとも一方と同時に移動するように、第2の移動装置を制御するように構成できる。
【0034】
結像装置の移動は、熱レンズ効果及び/又は第1の移動装置の移動によって引き起こされる、焦点位置の光軸に沿った(短軸に対する)変位を補償する働きをすることができる。制御ユニットのメモリには、第1及び/又は第2の移動装置の移動の時間的及び空間的シーケンスを規定する相応の制御データを格納できる。これらの制御データは、以前のキャリブレーション又は以前のシミュレーションに基づいて得ることができる。
【0035】
制御ユニットは、第1のシャッター素子が開いた後、結像装置が第1の位置から第2の位置に連続的に移動するように、第2の移動装置を制御するように構成できる。
【0036】
結像装置は、照射ラインの短軸の焦点位置が光軸の方向で(特に基板に向かって)変位するのを補償するために、特に第1の位置から第2の位置に移動する。この焦点位置の変位は、例えば熱レンズ効果及び/又は第1の移動装置の移動によって引き起こされる。第2の移動装置の移動により、光軸の方向における焦点位置、したがって結像平面(照射される基板の平面)における照射ラインの幅(FWHM)及び強度が一定に保たれることを保証できる。
【0037】
光学系はさらに、ビーム経路内で結晶構成の後ろに配置された第2のシャッター素子を含むことができる。制御ユニットは、第2のシャッター素子が閉じている間に最初に第1のシャッター素子が開き、所定の時間が経過したら第2のシャッター素子が開くように制御するように構成できる。
【0038】
したがって第1の移動装置によって実行される補正に加えて、第1のシャッター素子が開いた直後に、この時点で第2のシャッター素子はまだ閉じているので、光学系の光学特性の変化が照射ラインに影響を及ぼさないことが保証され得る。熱レンズ効果がある程度「落ち着いた」若しくは安定した場合にのみ第2のシャッター素子が開き、熱レンズ効果のわずかな変化は第2のシャッター素子が開いた状態で第1の移動装置によって補償でき、又はこの変化は十分小さいのでプロセスにとって重要ではない。
【0039】
第2の態様によれば、照射ラインを生成するための方法が提供される。この方法は、光軸に沿ってレーザービームを発生すること、レーザービームのビーム形状が長軸と短軸を有するようにレーザービームを整形すること、このように整形されたレーザービームを照射ラインとして結像すること、及びレーザービームを発生する間にテレスコープ構成の第1レンズ群又は第2のレンズ群の少なくとも一方を光軸に沿って移動することを含み、第1のレンズ群と第2のレンズ群は少なくとも短軸に関して光学的屈折力を有する。
【0040】
上で第1の態様の光学系についてなされた説明は、第2の態様の方法にも同様に該当する。特に第2の態様の方法は第1の態様の光学系を用いて実行することができ、第1の態様のすべての詳細は可能な限り第2の態様にも適用できる。
【0041】
レーザービームを発生するレーザービーム源は、レーザー共振器と、ビーム経路内でレーザー共振器の後段に配置された周波数逓倍結晶構成と、ビーム経路内でレーザー共振器と結晶構成の間に配置された第1のシャッター素子とを含むことができる。第1のレンズ群又は第2のレンズ群は第1のシャッター素子の開放状態に応じて移動できる。
【0042】
結晶構成の加熱によって引き起こされる熱レンズ効果を少なくとも部分的に補償するために、第1のシャッター素子が開いた後に、テレスコープ構成は第1の位置から第2の位置に連続的に移動できる。
【0043】
熱レンズ効果はレーザービームのビームウェストを光軸に沿って変位させることがある。移動によって、照射ラインの幅及び/又は照射ラインの強度(特に全体の強度分布又は少なくとも最大強度)が実質的に一定に保たれるようにすることができる。
【0044】
以下に本発明を添付の図面を参照して説明する。
【発明を実施するための形態】
【0046】
薄膜層を加工するための設備用の光学系は、
図1a及び
図1bに示され、一般的に10で表される。以下では薄膜層を加工するための設備用の光学系10について述べるが、記載された光学系10は照射ラインが必要とされる他のあらゆる用途に使用できる。光学系10は、レーザービーム14のビーム形状16が長軸と短軸を有するようにレーザービーム14を整形するように構成されたビーム整形装置12と、レーザービーム14のビーム経路内でビーム整形装置12の後段に配置されて、このように整形されたレーザービーム14を照射ライン22として結像するように構成された結像装置18とを備える。したがって結像装置18は、ビーム整形装置12によって形成されたレーザービーム14の短軸から、照射ライン22の短軸を生成する。
【0047】
慣例により、図中で短軸はx軸に平行に、長軸はy軸に平行に、そして光学系10の光軸はz軸に平行に延びるものとする。
図1aには、例えば上方(x方向に沿った視線方向)から見た光学系10が示されており、
図1bには、例えば(y方向に沿った視線方向)から見た光学系10が示されている。
【0048】
ビーム整形装置12は、例えば独国特許出願DE102012007601A1号の
図4〜
図6に示されたアナモルフィック光学系42をなすか又は含むことができる。特にビーム整形装置12は、独国特許出願DE10201200760A1号の
図4〜
図6に示された構成要素20、54、56、58、62、66、68、74の1つ以上を含むことができる。
【0049】
換言すると、ビーム整形装置12は、(座標系のx軸に平行な)第1の結像軸x、第1の結像軸xに垂直な第2の結像軸y、及び第1の結像軸xと第2の結像軸yに垂直な(座標系のz軸に平行な)光軸zにより表すことができる。(例えばアナモルフィック光学系としての)ビーム整形装置12は、第1の結像軸xと第2の結像軸yに関して異なる結像特性を有する。ビーム整形装置12は、結像装置18の前の位置「16」(例えば
図1a及び
図1b参照)でレーザー光からビーム形状16が長軸(y)と短軸(x)を有するレーザービーム14を発生するように構成でき、ビーム形状は長軸(y)においてほぼ均質化された(又は実質的に均質な)強度分布を有する。
【0050】
詳細に見ると、ビーム整形装置12は(特にアナモルフィック光学系)は、次のものを含むことができる(
図1a及び
図1b参照)。
−短軸xに関して光学的に作用する、すなわち短軸xに関して屈折力を有する第1のテレスコープ構成20。この第1のテレスコープ構成20は、第1のレンズ群である第1のシリンダーレンズ23と、第2のレンズ群である第2のシリンダーレンズ24から構成される。第1のシリンダーレンズ23は、レーザービーム源26からレーザービーム14を受け取り、それを短軸xに関して第1の中間像28に集束させる。第2のシリンダーレンズ24は、ビーム経路内で第1のシリンダーレンズ23の後ろに配置され、第1の中間像28の光線をコリメートする。
図1bに示されているように、第1のテレスコープ構成20はケプラーテレスコープとして設計された1:1テレスコープである。ここでは第1のシリンダーレンズ23と第2のシリンダーレンズ24は、それぞれ焦点距離が実質的に等しい集光レンズである。第1のシリンダーレンズ23の像側焦点は、第2のシリンダーレンズの物体側焦点と実質的に一致する。
−ビーム経路内で第1のテレスコープ構成20の後ろに配置され、長軸yに関して屈折力を有するシリンダーレンズ30。シリンダーレンズ30はレーザービーム源26から、長軸yに関して第1のテレスコープ構成20によって影響されなかったレーザービーム14を受け取り、中間画像32に集束させる。
−ビーム経路内でシリンダーレンズ30の後ろに配置され、長軸yに関して屈折力を有するシリンダーレンズ34。シリンダーレンズ34は中間像32の光線をコリメートする。
図1aに示すように、シリンダーレンズ30とシリンダーレンズ34は、長軸yに関してレーザービーム14を拡大する働きをするケプラーテレスコープを形成する。
−ビーム経路内でシリンダーレンズ34の後ろに配置され、短軸xに関して光学的に作用する、すなわち短軸xに関して屈折力を有する第2のテレスコープ構成36。第2のテレスコープ構成36は、第1のレンズ群である第1のシリンダーレンズ38と、ビーム経路内で第1のシリンダーレンズ38の後ろに配置された第2のレンズ群である第2のシリンダーレンズ40から構成される。第1のシリンダーレンズ38は、レーザービーム14を短軸xに関して拡大し、第2のシリンダーレンズ40はこの拡大されたレーザービームを再びコリメートする。
図1bに示すように、第2のテレスコープ構成36はガリレオテレスコープとして設計されたビームを拡大するテレスコープ(例えば、1:5テレスコープ)である。ここでは第1のシリンダーレンズ38は拡散レンズであり、第2のシリンダーレンズ40は集束レンズであり、第1のシリンダーレンズ38と第2のシリンダーレンズ40の焦点は実質的に一致するか若しくは上下に重なっている。ビーム経路内で第1のシリンダーレンズ38の前に仮想的な第2の中間像(図示せず)が生じる。
−ビーム経路内で第2のテレスコープ構成36の後ろに配置され、長軸yに関してレーザービーム14を(大部分)均質化するためアナモルフィック均質化光学系42。
−ビーム経路内でアナモフィック均質化光学系42の後ろに配置され、照射ライン22上の均質化されたレーザービームと重畳するために長軸yに関して屈折力を有する集光シリンダーレンズ44。
【0051】
集光シリンダーレンズ44の後ろのビーム経路内に結像装置18がある。結像装置18は、例えば独国特許出願DE102012007601A1号の
図4〜
図6に示されている構成要素66を含むか、又は構成要素66をなすことができる。後者の場合、結像装置18は、例えば集光シリンダーレンズ44の後ろのビーム経路内に配置され、軸xに関してレーザービーム14を照射ライン22に集束させる働きをする集束シリンダーレンズ光学系66をなす。
【0052】
したがってビーム整形装置12の後段に配置された結像装置18は、結像装置18の前でビーム形状16をピックアップし、レーザービーム14を照射ライン22として整形し、その際にビーム形状16の均質化された長軸yにではなく、単に(より正確には専ら)ビーム形状16の短軸xに集束される。結像装置18は、典型的には回折が制限されずに結像するが、幾つかの実施形態では回折が制限されて結像することもできる。
【0053】
光学系10によって生成される照射ライン22は、薄膜層の結晶化、例えば薄膜トランジスタ(英語:Thin Film Transistor、略称:TFT)の製造のために使用できる。この場合、加工される半導体層に照射ライン22が照射されて半導体層21上を案内される。その際に照射ライン22の強度は、半導体層が短時間溶融して、電気特性が改善された結晶層として再び固化するように調整されている。
【0054】
上述したように、レーザーラインビーム形状を生成するためにアナモルフィック光学構成が使用される。ここでは例えば1つの(長)ビーム軸yにおいてレーザービーム源26から放出されたレーザービーム14がシリンダーレンズアレイを用いて均質化される。他の(短)軸xは、ガウシアンビームとして光学的に処理され、レーザービーム源26のビームウェストは均質化の平面に転写される。典型的な構成が
図1a及び
図1bに示されており、上で詳細に説明された。
【0055】
均質化される軸yにおいて、レーザービーム14は円筒状に(典型的には2〜4倍)拡大され、2つの連続するレンズアレイ上に案内される。集光シリンダーレンズ44の焦点距離に均質化された長ビーム軸yが生じる。レーザービーム源26で形成されたレーザービーム14のビームウェストは、円筒形1:1テレスコープ20で再コリメートされ、別のテレスコープ36で拡大されて、集束レンズ18により所望の幅のガウス小ビーム軸を生成する。
【0056】
図2は、
図1a及び
図1bの光学系10のレーザービーム源26の詳細を示す。レーザービーム源26は、レーザービーム14を発生するためのレーザー共振器46を含んでおり、これは例えば赤外固体レーザー、特にNd:YAGレーザーであってよい。さらにレーザービーム源26は、例えばレーザー共振器46の後ろのビーム経路内に第1のシャッター素子48を含んでおり、これはレーザービーム14を遮断又は通過させるように構成された電子制御可能な機械的シャッターである。レーザービーム源26はさらにビーム経路内で第1のシャッター素子48の後ろに、集束レンズ50の後ろのビーム経路内に配置された周波数逓倍結晶構成52にレーザービーム14を集束させる集束レンズ50を含む。周波数逓倍結晶構成52は、レーザービーム14の周波数を2倍にする(若しくは波長を半分にする)ためのSHG結晶及び/又はレーザービーム14の周波数を3倍にするためのTHG結晶を含む。
【0057】
レーザービーム源26はさらに、再コリメーションレンズ54として集束レンズを含む。再コリメーションレンズ54は、レーザービーム14を大部分コリメートするのに適している。
【0058】
レーザービーム源26を操作するための可能な動作モードは、レーザー共振器46を永続的に(若しくは少なくとも複数の照射プロセスを含む長時間にわたり)オンに切り替えたままにして、時間的に非常に一定の連続赤外レーザービーム14を生成することである。しかしながら敏感な結晶構成52(UVレーザー光の発生による寿命の制限)及び場合によっては光学系10の別の構成要素を不必要に長く(場合により損傷若しくは破損を与える)レーザービームに曝露しないために、第1のシャッター素子48は、照射ライン22が実際に基板を照射するために必要とされる場合のみ開く。換言すれば、例えばちょうど照射される基板が交換されるときにレーザービーム14が必要とされない場合、第1のシャッター素子48を閉じることによりレーザービーム14をオフに切り替えることができる。このようにして結晶構成52がレーザービーム14に曝露される時間を最小にすることができ、有効耐用年数を延ばすことができる。
【0059】
必要に応じて第1のシャッター素子48が開く上記のレーザービーム源26の動作モードは、以下バーストモードとも呼ばれる。以下において、レーザービーム源26がレーザービーム14を放射する/放射しない、又はレーザービーム源26がオン/オフに切り替えられていると述べる場合、これは第1のシャッター素子48がその時間開いている/閉じていることを意味する。
【0060】
照射ラインを例えばリフトオフ用途(ガラス上に接着されたフィルムをガラス越しに照射する)で使用するために、また薄膜シリコン結晶化用途でも、レーザービーム14が一定の(すなわち時間的に変わらない)幅(FWHM)とピーク強度を有することが重要である。
【0061】
バーストモードの使用は、レーザー動作時間を、したがって運用コストを削減して最適化するために重要である。大きいガラス製キャリアに対する典型的なリフトオフプロセスでは、例えばサイクルタイムは60〜100秒の範囲にあるが、レーザービーム自体はガラス製キャリア基板からプラスチック基板を剥離するのに約20〜30秒しか必要ない。バーストモードとは反対に、レーザービーム源26の連続動作ではプロセスシャッター(以下でさらに説明する第2シャッター素子66参照)が開閉され、レーザービーム源26は永続的に動作し、結晶構成52を永続的に照射することになろう。
【0062】
バーストモード動作ではUVレーザー動作を60〜100秒から20〜30秒に短縮でき、操作コストを2〜4分の1に削減する可能性を提供する。
【0063】
上述した外部(レーザー共振器46の外部)の周波数逓倍レーザービーム源26がバーストモードで操作されると、パルスシーケンスの開始とともに(すなわち第1のシャッター素子48が開いた直後に)逓倍結晶(SHG及びTFIG)52内に最初の10〜20秒で熱レンズが形成され(半径方向温度プロファイルは屈折率の変化を引き起こす)、その後パルスシーケンスが終了するまで実質的に安定した状態にある。この熱レンズはレーザービームを特徴付ける(ビーム品質、位置、ウェスト径、拡散角)レーザービームウェストをレーザー内の別の場所に光学的に発生させる。この場合ビーム位置は、IRレーザービーム14の周波数逓倍結晶構成52への集束がどのように設計されているかに応じて数cmないし0.5メートル又はそれ以上変化することが可能である。
図2には、ビームウェストの位置がパルスシーケンスの開始直後(t=0、第1のシャッター素子48が開いたとき)の位置56から、約t=10〜20秒後に位置58に移動したことが示されている。位置58では、光学系10、特に形成された熱レンズは熱平衡状態にあり、第1のシャッター素子48が開いたままビームウェストの位置は大きく変化しない。
【0064】
放出されたレーザービーム14の仮想起源(ウェスト)は、熱レンズによって(特に光軸に沿ったz方向に)変位される。
【0065】
ビームウェスト位置の変化は、均質化される長ラインビーム軸yに実質的に影響を与えない。
【0066】
しかしながら、ラインビームの短ビーム軸xの生成はガウスビーム伝搬を利用し、その結果としてレーザービーム源26におけるウェスト位置が、対物レンズ18の焦点におけるビームウェストに影響を与える。
【0067】
図1及び
図2に示すようなラインビーム構成において、典型的に10〜100μmFWHM(半値全幅)のライン幅が(短軸xに沿って)生成される。この目的のためにレーザービームは1:1テレスコープ(第1のテレスコープ構成20)内で光学的に輸送され、続いて別のテレスコープ(第2のテレスコープ構成36)内で1:1から1:5に拡大される。レーザービーム14はシリンダーレンズ18によって均質化された平面に集束される(
図1bに従う構成を示す
図3参照)。
【0068】
この構成は、ビームウェスト位置の変化が、調整された被写界深度内で集束レンズ18の後ろの焦点の位置に事実上影響を及ぼさないように設計されている。しかしながら基本的に焦点の位置は(光軸zに沿って)変位する。しかしレーザービーム源26におけるビームウェストの位置の変化は、円筒形集束レンズ18(結像装置18)の照射に顕著な影響を与える。ガウスビーム伝搬の場合、焦点直径は次の式に従う。
d(l/e
2)=4fλM
2/(nD(l/e
2))
【0069】
ここで、dは焦点における直径、Dは焦点距離fの結像装置18におけるレーザービーム14の直径(1/e
2)、M
2はレーザービーム14のビーム品質番号、λは波長である。
【0070】
ビームウェストの変位(
図2及び
図3参照)により集束レンズ18で直径Dが小さくなると、焦点直径dは大きくなる。その結果としてガウス分布のピーク強度は、照射ライン22の平面内で低下する。
【0071】
この挙動は、
図1a及び
図1bによる光学系でレーザービーム源26からのレーザービーム14で観察されたものである。パルスシーケンスがオンに切り替えられると(第1のシャッター素子48が開くと)、通常10〜20秒以内に焦点の幅dが約10%大きくなるのが観察される。その後で焦点の幅と強度が安定する。
【0072】
結晶構成52内で生成された熱レンズの結果であるこの挙動は、
図4に示されている。時点t=720秒で第1のシャッター素子48が開き、レーザービーム源26がレーザービーム14を発生する。
図4の上の曲線(強度、左目盛り)から分かるように、照射ライン22の初期強度は最初の約10秒以内に最大値から、その後の照射の過程で(第1のシャッター素子48は開いたまま)ほぼ一定のままの値に低下する。同様に照射ライン22の短軸xに沿った幅(下の曲線、FWHM、右目盛り)はレーザービーム14がオンに切り替えられるとすぐに初期値になり、続いて最初の約10秒以内にその後の照射の過程でほぼ一定のままの値に上昇する。
【0073】
図5に示すように、上述した照射ライン22の挙動は再現可能であり、レーザービーム源26のオン/オフの切り替えを繰り返しても、すなわち(反復バーストモードで)第1のシャッター素子48を繰り返し開閉しても発生する。
【0074】
周波数変換を効率的に調整するために(屈折率の適合)、レーザービーム源26内の結晶構成52は、目標温度に能動的に安定化される。種々のバーストモードシーケンスに対して、やや異なる平衡状態が生じることができる。
【0075】
本発明によれば、光学系10は、照射ライン22の強度と幅(FWHM)の変化の上述した効果を低減し、最良の場合はそれを完全に補償するために適した第1の移動装置60(例えば
図1a及び
図1b参照)を含んでいる。
【0076】
換言すると、本発明によれば1:1テレスコープ(第1のテレスコープ構成20)及び/又は1:1…5テレスコープ(第2のテレスコープ構成36)は意図的に離調され、それによって上述したビームウェスト位置の変化を、基板における(すなわち照射ライン22の平面内の)ピーク強度とビーム幅が変化しないか又はわずか(例えば1%未満)しか変化しないように補償することができる。
【0077】
調査した設計では、これには第1のテレスコープ構成20(1:1テレスコープ)が特に適していることが示された。特定の構成では0.1〜0.2mmの調節で十分である。定義されたバーストモードシーケンスに対するビームウェスト位置の変化の時間的挙動は再現可能なので、パルスシーケンスの開始とともに(すなわち第1のシャッター素子48が開くとともに)第1レンズ群23(すなわち
図1a及び
図1bでレーザービーム源26の近傍に位置決めされた第1のテレスコープ構成20の集束レンズ23の配置構成)を利用できる。第1の移動装置60としてリニアドライブ、又は例えばピエゾドライブが適している。
【0078】
集束レンズ18の後ろで短軸xに関する焦点の変位の量は、光軸zに沿って典型的に20〜100μmであり、通常の被写界深度の微小部分である。しかしながら基本的には、第2の移動装置62を用いて結像装置18(集束レンズ18)を同時に移動することも可能である。
【0079】
図6に、実際のビーム経路内でのガウスビーム伝搬が示されている。ビーム伝搬を用いて、レーザービーム源26におけるそれぞれのウェスト開始位置に対してビーム径及び焦点位置を決定できる。
【0080】
図7に、ビームウェスト変化の補償のために第1のシリンダーレンズ38の調節と、同時に
図6に示された構成のための結像装置18の関連する調節が例示されている。結像装置18の同時変位は、被写界深度が調節よりも著しく大きくない場合に必要になることがある。被写界深度の範囲は、レーザービーム14のビーム品質(係数M
2)若しくは場合によってはビーム変換光学系によるビーム品質の上昇/低下によって決定される。
【0081】
図7は、第1のテレスコープ構成20の第1のシリンダーレンズ23の位置の適当な変化(「テレスコープレンズの変位」、右目盛り)を詳細に示す。さらに結像装置18の位置の適当な変化(「集束レンズの変位」、右目盛り)を示す。結果として生じる短軸xに関する照射ライン22の半値全幅(「FWHM」)も
図7に示されており、ここから半値全幅は実質的に一定のままであり、したがって熱レンズの効果をほぼ完全に補償できることが見て取れる。
【0082】
図8は、
図7と同じ第1のテレスコープ構成20と結像装置18の変化と、さらにビームウェストの位置(「レーザー内のウェスト位置」、左目盛り)の変化を示す。
【0083】
したがって本発明によれば、レーザービーム源26がオンに切り替えられるとすぐに、すなわちレーザービーム源26の第1のシャッター素子48が開くとすぐに(若しくは直後に)、シリンダーレンズ23、24、38及び40の少なくとも1つが関連する第1の移動装置60によって光軸zに沿って動かされる。ここで第1のテレスコープ構成20の第1のシリンダーレンズ23が変位することが有利であることが分かっており、その代わりに又は追加でシリンダーレンズ24、38及び/又は40の1つを動かすことができる。
【0084】
さらに
図7及び
図8の上記の例では、第2の移動装置62を用いた結像装置18の変位が説明されているが、これは任意選択である。
【0085】
第1の移動装置60及び場合によっては第2の移動装置62(
図1a及び
図1b参照)の移動を制御するために、制御ユニット64が設けられている。それぞれの移動装置60、62の移動の制御と並んで、制御ユニット64がレーザービーム源26の制御を受け持つ。より正確に言えば、制御ユニット64は、レーザービーム源26のオン/オフの切り替え若しくは第1のシャッター素子48の開閉の時間的順序を制御する。以下に説明する任意選択の第2のシャッター素子66も、制御ユニット64によって制御できる。
【0086】
制御ユニット64は、制御データが格納されたメモリを備えており、それらの制御データに基づいて第1の移動装置60(及び場合によっては第2の移動装置62)が第1のシリンダーレンズ23(及び場合によっては結像装置18)の移動を実行する。特にそれぞれの移動装置60、62の移動の時間的順序を定義するデータを格納できる。したがって制御ユニット64のメモリに格納されたデータは、
図7及び
図8に第1のシリンダーレンズ23の位置と時間との関係を示す曲線で表現されている。同じことは、結像装置18の位置と時間の関係を示す曲線にも該当する。
【0087】
制御データは、
図6に関連して説明したように、以前の較正に基づいて得るか、あるいは計算及び/又はシミュレーションによって得ることができる。
【0088】
特に、制御ユニット64は、第1のシリンダーレンズ23を(特に第1のシャッター素子48が開いた直後に)所定の位置−時間関係に従って移動するように構成できる。任意選択で、制御ユニット64は、結像装置18を(特に第1のシャッター素子48が開いた直後に)所定の位置と時間の関係に従って、動かすように構成できる。
【0089】
制御ユニット64はさらに光学系10若しくは光学系10を包含する設備のその他の機能及び/又は要素を制御できる。
【0090】
上述したテレスコープ構成20及び36の一方のレンズを変位させる技術に加えて、一実施形態による光学系10は任意選択で第2のシャッター素子66を含むことができる(
図1a及び
図1b参照)。第2のシャッター素子66は、ビーム経路内で結晶構成の任意の位置に、例えばレーザービーム源26のすぐ後ろにあることができる。第2のシャッター素子66は、制御ユニット64によって制御される。
【0091】
より正確に言えば、制御ユニット64は、第2のシャッター素子が閉じている間に最初に第1のシャッター素子が開き、所定の時間(例えば10〜20秒の範囲)が経過したら第2のシャッター素子66が開くように、第1のシャッター素子48と第2のシャッター素子66を制御するように構成されている。この順序によりレーザービーム源26をオンに切り替えられた直後(すなわち第1シャッター素子48が開いた直後)のウェスト位置の強い変化が、照射ライン22のビーム強度若しくはビーム幅の強い変化を招かないことを保証できる。なぜならこの強い初期変化の時点で(例えば第1のシャッター素子48が開いてから最初の10秒間)、第2のシャッター素子66は閉じたままであり、この時点では照射ライン22は生成されないからである。熱レンズの効果がある程度安定した後で初めて、第2のシャッター素子66が開いて照射ライン22が生成され、その強度と幅はほぼ一定のままである。この所定の時間の後でもビームウェストの位置で発生し得るわずかな変化は、上記の説明に従い第1の移動装置60、及び場合によっては第2の移動装置62の移動によって補償される。
【0092】
上述した第2のシャッター素子66を使用する技術が、
図9に示されている。この図では、照射ライン22の強度が時間に対してプロットされている。分かりやすいように、
図9はまた、第2のシャッター素子66が閉じており、したがって照射ライン22が全く生成されない時点での照射ライン22の強度も示している。これらの時点で示されている強度は、第2のシャッター素子66が開いている場合に照射ライン22が有するであろう強度である。
【0093】
図9には、レーザービーム源26がオンに切り替えられている、すなわち第1のシャッター素子48が開いている時間68が示されている。この時間中、強度は最初は最大値にあり、最初の10〜20秒以内に急激に低下して、ほぼ安定した状態に達するであろう(
図4及び5も参照)。しかしながら時間70によって示されているように、最初に(第1のシャッター素子48が開いてから所定の時間72の間)、第2のシャッター素子66はまだ閉じられており、照射ライン22は生成されない。時間72の後で初めて時間74に第2のシャッター素子66(プロセスシャッター)が開き、照射ライン22が生成される。照射ライン22の強度及び/又は幅(FWHM)の変動は、上で詳細に説明したように、少なくとも1つのテレスコープ構成20、36の少なくとも1つのレンズ群23、24、38、40を動かすことによって補償される。
【0094】
しかしながら一例では、
図9に関連して説明したように、第1の移動装置60も第2の移動装置62も設けず、第2のシャッター素子66を制御するだけで熱レンズの影響を補償することも可能である。
【0095】
上述した技術は、熱レンズの効果、及び特にそれに伴うレーザービーム14のビームウェストの変位を確実に、容易かつ再現可能に補償する可能性を提供する。このようにして基板を一定の強度と一定のビーム幅で照射することができ、このことは安定した材料特性と、したがって改善された材料品質につながる。
【0096】
図又は図の部分は必ずしも縮尺どおりと見なすべきではない。したがって例えば
図1bでビーム形状16の短軸xは、
図1aの長軸yよりも長く見えることがある。
【0097】
特に明記しない限り、図中の同一の参照記号は同一の又は同一に作用する要素を表す。さらに図に示された特徴の任意の組み合わせも考えられる。
照射ラインを生成するための光学系が提供される。光学系は、光軸に沿ってレーザービームを発生するためのレーザービーム源を含む。さらに光学系は、レーザービームのビーム形状が長軸と短軸を有するようにレーザービームを整形するように構成されたビーム整形装置と、そのように整形されたレーザービームを照射ラインとして結像するように構成されて、レーザービームのビーム経路内でビーム整形装置の後段に配置されている結像装置とを備える。ビーム整形装置は、第1のレンズ群と第2のレンズ群を含む少なくとも1つのテレスコープ構成を備えており、第1のレンズ群と第2のレンズ群は少なくとも短軸に関して光学的屈折力を有する。光学系は、第1のレンズ群と第2のレンズ群の少なくとも一方を光軸に沿って移動するための第1の移動装置を備える。光学系はさらに、レーザービーム源がレーザービームを発生する間に第1のレンズ群と第2のレンズ群の少なくとも一方が移動するように、第1の移動装置を制御するように構成された制御ユニットを備える。さらに照射ラインを生成するための方法も提供される。