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特許6813728パワー半導体モジュール用パッケージの製造方法およびパワー半導体モジュール用パッケージ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6813728
(24)【登録日】2020年12月22日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】パワー半導体モジュール用パッケージの製造方法およびパワー半導体モジュール用パッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20201228BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20201228BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20201228BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20201228BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20201228BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   H01L23/12 J
   H01L25/04 C
   H01L23/14 R
   H01L23/36 C
   H01L23/46 Z
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-119867(P2018-119867)
(22)【出願日】2018年6月25日
(65)【公開番号】特開2020-4765(P2020-4765A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2020年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】320003600
【氏名又は名称】無錫利普思半導体有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 勝好
【審査官】 庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−218617(JP,A)
【文献】 特開2005−347355(JP,A)
【文献】 特開2015−023212(JP,A)
【文献】 特開2001−203313(JP,A)
【文献】 特開2001−332821(JP,A)
【文献】 特開2012−114311(JP,A)
【文献】 特開2012−174965(JP,A)
【文献】 特開2017−034050(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0263880(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1705105(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0141224(US,A1)
【文献】 米国特許第06570099(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0132931(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102479910(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
H01L 23/14
H01L 23/36
H01L 23/473
H01L 25/07
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路パターンと、前記電気回路パターンを囲むダミーパターンとが形成され、パターン間に隙間が備えられている金属層を提供するステップと、
熱伝導性絶縁樹脂で構成される樹脂層を介して、前記金属層と前記樹脂層とを、前記熱伝導性絶縁樹脂のガラス転移点よりも低い温度の下において金属ベースプレート上に仮止めするステップと、
前記パターン間の隙間に硬化性材料を注入して硬化させるステップと、
所定の温度まで温度を上昇させるとともに前記金属層の上方側から所定の圧力を加圧して、前記金属層および前記硬化された硬化性材料を介して前記加圧された圧力を前記樹脂層の全面に伝達させることにより、前記金属層と前記樹脂層、および前記樹脂層と前記金属ベースプレートとを固着させるステップと、
を含むパワー半導体モジュール用パッケージの製造方法。
【請求項2】
前記隙間は前記硬化性材料が注入される前の前記樹脂層を露出させる側の幅が前記硬化性材料が注入される側の幅より大きい切欠きの形状を有することを特徴とする、請求項1に記載のパワー半導体モジュール用パッケージの製造方法。
【請求項3】
前記隙間の比較的大きい幅を有する部分の高さが比較的小さい幅を有する部分の高さより高いことを特徴とする、請求項2に記載のパワー半導体モジュール用パッケージの製造方法。
【請求項4】
前記隙間に前記硬化性材料を、該硬化性材料が前記金属層上に流れ込まないように、前記金属層の高さよりわずかに高い高さまで注入し、
前記硬化性材料を硬化させた後、前記金属層より高い部分の硬化性材料を研削して除去するステップをさらに含む、
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のパワー半導体モジュール用パッケージの製造方法。
【請求項5】
前記硬化性材料はエポキシ樹脂、フェノール樹脂またはシリコン樹脂のいずれか一つまたはこれらの組合せであり、前記熱伝導性絶縁樹脂はエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂または液晶ポリマーのいずれか一つまたはこれらの組合せであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のパワー半導体モジュール用パッケージの製造方法。
【請求項6】
前記硬化性材料の硬化は、温度が100度〜200度、硬化時間が0.5h〜2hの条件において行われ、
前記金属層と前記樹脂層、および前記樹脂層と前記金属ベースプレートとを固着させるステップにおいて、前記所定の温度は150度〜200度、前記所定の圧力は2MPa〜10MPa、固着させるための固着時間は1h〜3hである、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のパワー半導体モジュール用パッケージの製造方法。
【請求項7】
前記金属ベースプレートはピンフィンの構造を有するまたは液体が流れる通路が設けられている、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のパワー半導体モジュール用パッケージの製造方法。
【請求項8】
前記金属ベースプレートの前記樹脂層と接する面には前記隙間の位置に対向して前記隙間の前記硬化性材料が注入される前の前記樹脂層を露出させる側の幅と同等またはわずかに広めの溝が形成されており、該溝には硬化性材料が注入され硬化されている、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のパワー半導体モジュール用パッケージの製造方法。
【請求項9】
電気回路パターンと、前記電気回路パターンを囲むダミーパターンとを有し、パターン間の隙間は硬化性材料により充填された金属層と、
上表面が前記金属層の底面に固着された熱伝導性絶縁樹脂層と、
前記熱伝導性絶縁樹脂層の下表面に固着された金属ベースプレートと、
を含み、
前記隙間は前記金属層の底面における幅がその上表面における幅より大きい切欠きの形状を有するパワー半導体モジュール用パッケージ。
【請求項10】
前記金属ベースプレートの前記熱伝導性絶縁樹脂と接する面には前記隙間の位置に対向して前記隙間の前記金属層の底面における幅と同等またはわずかに広めの溝を有し、該溝には硬化性材料により充填されている、ことを特徴とする請求項9に記載のパワー半導体モジュール用パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーエレクトロニクス技術分野に関し、特にパワー半導体モジュール用パッケージの製造方法およびパワー半導体モジュール用パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より電源およびパワーエレクトロニクスの技術分野では、Si,SiC,GaN等を用いたパワー半導体(たとえば、IGBT、MOSFET等)が広く使用されており、大電流を扱う場合では、モジュールタイプのものがよく使用されている。
【0003】
図4は、従来技術において広く使用されているモジュールタイプパワー半導体の構造の一例を示す図である。図に示すように、パワー半導体モジュール(以下、「パワーモジュール」とも称する)は、ケース1、ピンフィン構造を有するベースプレート2、半導体チップ3、ボンディングワイヤ4、DBC(Direct Bonding Copper)基板5、充填用シリコン材料6および半田7などから構成されている。
【0004】
ここで、DBC基板5は、たとえば、図5に示されるように、Alなどのような絶縁材料からなるセラミック層8の両面にCuのような金属層を直接接合させて作られる。下部銅層9は、パワーモジュールのベースプレート2と接続する面であり、上部銅層10は、たとえばケミカルエッチング等により回路化され、必要に応じて隙間11が形成されている。半導体チップ3で発生した熱は、主にDBC基板5を経由してベースプレート2からモジュールの外部に放出される。
【0005】
なお、パワーモジュールにおいて、図4に示すようなピンフィン構造のベースプレート2は、自動車産業においてよく使用されるが、図6図7に示されるような構造を有するベースプレートも多用されている。図6に示されるような構造は、一般産業において多用されるもので、底面がフラットな形状を有し、図7に示されるような構造は、電気自動車のモーター駆動用パワーモジュールのような高発熱性なものに使用され、底面がフラットであるが、内部には水または冷却用液体が流れる通路が設けられている。このように、ベースプレート2は、半導体チップ3の発熱量に応じて使い分けされている。
【0006】
しかしながら、上記のようなパワーモジュールの構造では、DBC基板とベースプレートとの間における金属のそれよりも熱伝導率が遥かに低い半田層で比較的高い熱抵抗が生じ、モジュールの放熱効果が低下される。また、DBC基板の熱膨張係数とベースプレートの熱膨張係数との差異によっても、DBC基板やベースプレートが変形されたり、接合される部品に熱疲労が生じてパワーモジュールの寿命が縮められたり、水冷構造を有する場合は、漏水の問題も生じたりする。
【0007】
DBC基板における上記問題点に対し、下記特許文献1に記載されている発明では、DBC基板に替えて、熱伝導性絶縁樹脂層を採用しており、半田による熱抵抗の悪化を低減できるとともに、熱伝導性絶縁樹脂の材料組成をベースプレートの熱膨張係数に合わせるように最適化すれば接合部品が変形される問題などを解決できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−165281号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献1に記載された発明では、依然として、熱伝導性絶縁樹脂層上にパターニングされた上部金属層を介して半導体チップを搭載する必要があり、パワーモジュールの製造時において次のような問題点が生じる。
【0010】
まず、上部金属層を化学的エッチング工程によりパターニングする場合、主に二つの検討事項が生じる。
一つ目の検討事項は、金属層が厚いほど配線抵抗が少なく、電流定格の大きい(たとえば、数十A〜数千A)モジュールでは、その厚さが重要であるが、電流定格によっては、0.3〜3mmとなることがある。一方、電圧定格の高いパワーモジュールでは、その定格電圧に応じて、配線間の絶縁距離を取る必要がある。たとえば600VのIGBTを300Vで動作させる場合、配線間の絶縁距離として1mm〜2mmの沿面距離を確保する必要があるが、片面から化学エッチングを行う場合、図8に示すように金属層10の上部の開口部の幅と熱伝導性絶縁樹脂層12の表面の幅とは当然異なる。たとえば、厚さ1mmの上部金属層10を使用する場合、1mmの絶縁距離(隙間)を確保するためには、上部の開口部が1.8mmとなることもあり、上部金属層10の厚さとモジュールの定格電圧によっては、上部開口部の幅が5.4mmに達することもある。これではパワーモジュール自身が大きくなり、半導体応用装置の小型化を目指したパワーモジュールの開発が出来ず、モジュール化の意味が無くなる。
【0011】
二つ目の検討事項は、エッチングプロセスにおいて、エッチングしない領域をエッチング防止膜13で保護する必要があり、ピンフィン付きのベースプレートの場合、そのピンフィンがあるために、既存のエッチング装置によりピンフィンの構造までエッチング防止膜13を形成することが極めて困難となる。
【0012】
次に、上記らの問題点に対し、上部金属層の厚さが厚い場合には、接着してからエッチングするのではなく、予めエッチング、打ち抜きまたは他の方法で形成された上部金属層を利用して、上部金属層と熱伝導性絶縁樹脂とベースプレートとを接着する方法が考えられる。特に打ち抜かれた上部金属層を利用する場合は、上部開口部の幅を、必要な沿面距離を確保した上で、片面エッチングにより小さく保つことができる。
【0013】
しかしながら、図9に示すように、プレスして接着する際、上部金属層10の回路の隙間には金属層がないため、押さえることができず、熱伝導性絶縁樹脂層12の中に気泡14が残り、熱伝導性絶縁樹脂の絶縁耐圧が減少し、パワーモジュールの信頼性が低下されてしまう。
【0014】
本願発明は、上記のような事情に鑑みて成されたものであり、熱伝導性絶縁樹脂中の気泡をなくして絶縁耐圧の信頼性を向上させることができるパワー半導体モジュール用パッケージの製造方法およびパワー半導体モジュール用パッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)電気回路パターンと、前記電気回路パターンを囲むダミーパターンとが形成され、パターン間に隙間が備えられている金属層を提供するステップと、
熱伝導性絶縁樹脂で構成される樹脂層を介して、前記金属層と前記樹脂層とを、前記熱伝導性絶縁樹脂のガラス転移点よりも低い温度の下において金属ベースプレート上に仮止めするステップと、
前記パターン間の隙間に硬化性材料を注入して硬化させるステップと、
所定の温度まで温度を上昇させるとともに前記金属層の上方側から所定の圧力を加圧して、前記金属層および前記硬化された硬化性材料を介して前記加圧された圧力を前記樹脂層の全面に伝達させることにより、前記金属層と前記樹脂層、および前記樹脂層と前記金属ベースプレートとを固着させるステップと、
を含むパワー半導体モジュール用パッケージの製造方法。
【0016】
(2)前記隙間は前記硬化性材料が注入される前の前記樹脂層を露出させる側の幅が前記硬化性材料が注入される側の幅より大きい切欠きの形状を有することを特徴とする、上記(1)に記載のパワー半導体モジュール用パッケージの製造方法。
【0017】
(3)前記隙間の比較的大きい幅を有する部分の高さが比較的小さい幅を有する部分の高さより高いことを特徴とする、上記(2)に記載のパワー半導体モジュール用パッケージの製造方法。
【0018】
(4)前記隙間に前記硬化性材料を、該硬化性材料が前記金属層上に流れ込まないように、前記金属層の高さよりわずかに高い高さまで注入し、
前記硬化性材料を硬化させた後、前記金属層より高い部分の硬化性材料を研削して除去するステップをさらに含む、
ことを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のパワー半導体モジュール用パッケージの製造方法。
【0019】
(5)前記硬化性材料はエポキシ樹脂、フェノール樹脂またはシリコン樹脂のいずれか一つまたはこれらの組合せであり、前記熱伝導性絶縁樹脂はエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂または液晶ポリマーのいずれか一つまたはこれらの組合せであることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のパワー半導体モジュール用パッケージの製造方法。
【0020】
(6)前記硬化性材料の硬化は、温度が100度〜200度、硬化時間が0.5h〜2hの条件において行われ、
前記金属層と前記樹脂層、および前記樹脂層と前記金属ベースプレートとを固着させるステップにおいて、前記所定の温度は150度〜200度、前記所定の圧力は2MPa〜10MPa、固着させるための固着時間は1h〜3hである、
ことを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載のパワー半導体モジュール用パッケージの製造方法。
【0021】
(7)前記金属ベースプレートはピンフィンの構造を有するまたは液体が流れる通路が設けられている、ことを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載のパワー半導体モジュール用パッケージの製造方法。
【0022】
(8)前記金属ベースプレートの前記熱伝導性絶縁樹脂層と接する面には前記隙間の位置に対向して前記隙間の前記硬化性材料が注入される前の前記樹脂層を露出させる側の幅と同等またはわずかに広めの溝が形成されており、該溝には硬化性材料が注入され硬化されている、ことを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載のパワー半導体モジュール用パッケージの製造方法。
【0023】
(9)電気回路パターンと、前記電気回路パターンを囲むダミーパターンとを有し、パターン間の隙間は硬化性材料により充填された金属層と、
上表面が前記金属層の底面に固着された熱伝導性絶縁樹脂層と、
前記熱伝導性絶縁樹脂層の下表面に固着された金属ベースプレートと、
を含み、
前記隙間は前記金属層の底面における幅がその上表面における幅より大きい切欠きの形状を有するパワー半導体モジュール用パッケージ。
【0024】
(10)前記金属ベースプレートの前記熱伝導性絶縁樹脂と接する面には前記隙間の位置に対向して前記隙間の前記金属層の底面における幅と同等またはわずかに広めの溝を有し、該溝には硬化性材料により充填されている、ことを特徴とする請求項9に記載のパワー半導体モジュール用パッケージ。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るパワー半導体モジュール用パッケージの製造方法およびパワー半導体モジュール用パッケージによれば、金属層のパターン間の隙間の直下の熱伝導性絶縁樹脂中の気泡は製造工程時に排除され、ピンフィン付きのベースプレートを用いても金属層のパターン間の隙間を小さくすることができ、金属層の厚さが厚くても、隙間の狭い電気回路を形成でき、熱抵抗が小さく、変形が少なく、信頼性の高いパワーモジュールを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態1に係るパワー半導体モジュール用パッケージの製造工程を説明するための図である。
図2】実施形態2に係るパワー半導体モジュール用パッケージの製造工程を説明するための図である。
図3】実施形態3に係るパワー半導体モジュール用パッケージの製造工程を説明するための図である。
図4】従来技術において使用されているモジュールタイプパワー半導体の構造の一例を示す図である。
図5図4におけるDBC基板の構造を示す図である。
図6】従来技術において使用されているモジュールタイプパワー半導体の構造の他の一例を示す図である。
図7】従来技術において使用されているモジュールタイプパワー半導体の構造の他の一例を示す図である。
図8】片面から化学エッチングを行う場合の問題点を説明するための図である。
図9】熱伝導性絶縁樹脂中に気泡が残されている問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明のパワー半導体モジュール用パッケージの製造方法およびパワー半導体モジュール用パッケージの実施形態を詳細に説明する。
【0028】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係るパワー半導体モジュール用パッケージの製造工程を説明するための図である。
【0029】
<パッケージの構造>
パワー半導体モジュール用パッケージ100は、金属層101と、熱伝導性絶縁樹脂層102と、金属ベースプレート103と、硬化性材料104と、を含む。
【0030】
金属層101は、電気回路パターン101aおよびダミーパターン101bを有する。電気回路パターン101aは、パワー半導体モジュールの機能に応じて必要な電気回路に形成されたパターンであって、その上に半田付されるパワー半導体チップと電気的に接続される。なお、電気回路パターン101a上に直接またはボンディングワイヤを介してパワー半導体モジュールの外部からアクセスされる電極を構成する。一方、ダミーパターン101bは、電気回路パターン101aを囲んで形成されたパターンであって、パワー半導体モジュールの機能には寄与しないが、硬化性材料104の注入のために使用される。パワー半導体モジュールの動作時、ダミーパターン101bには電圧が印加されないため、金属ベースプレート103からの絶縁距離を考慮する必要はない。図に示されるように、パターン間は隙間を有し、隙間に硬化性材料104を注入して硬化させることにより互いに絶縁されている。金属層101は、たとえば厚さが0.3mm〜3mmの銅層であり、パターン間の隙間(すなわち、絶縁距離)は1mm〜2mmである。
【0031】
熱伝導性絶縁樹脂層102は、上表面が金属層101および硬化性材料104の底面に固着されており、たとえば、窒化ホウ素(BN)フィラーを含む熱伝導性絶縁樹脂材料で構成される薄膜を硬化させて形成される。なお、本発明はこれに限らず、熱伝導性絶縁樹脂層102は、たとえば、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ケイ素などのフィラーの材料により構成されてもよい。熱伝導絶縁樹脂層は、温度が150度〜200度、圧力が2MPa〜10MPaの条件において、1h〜3hの時間で硬化される。
【0032】
金属ベースプレート103は、モジュールが動作しているときに主に放熱に使用されるヒートシンクであり、上表面は熱伝導性絶縁樹脂層102と固着されており、底面は風冷しやすいピンフィン構造を有している。なお、本発明はこれに限らず、底面が平らな構造を有してもよく、水冷するための構造を有してもよい。金属ベースプレートは、たとえば、ピンフィン部分を除き厚さが2mm〜4mmの銅ペースプレートである。
【0033】
硬化性材料104は、たとえばエポキシ樹脂やフェノール樹脂の材料であり、温度が100度〜200度、硬化時間が0.5h〜2hの条件において硬化される。
【0034】
<パッケージの製造方法>
図1の(a)〜(c)を参照しながら、実施形態1に係るパワー半導体モジュール用パッケージの製造工程を説明する。
【0035】
まず、ケミカルエッチング工程やプレス打ち抜き工程などにより電気回路パターンとダミーパターンとが形成された金属層を提供する。続いて、熱伝導性絶縁樹脂層を介して、金属層と熱伝導性樹脂層とを共に金属ベースプレート上に接着させ、熱伝導性絶縁樹脂のガラス転移点よりも低い温度の下において仮止めする。続いて、パターン間の隙間に硬化性材料を注入して硬化させる。硬化性材料を注入する際は、硬化性材料が金属層上に流れ込まないように、金属層の高さよりわずかに高い高さまで注入するほうが好ましい。こうすることで、隙間内部が完全に硬化性材料により充填される。なお、硬化性材料の硬化は、温度が100度〜200度、硬化時間が0.5h〜2hの条件において行われる。また、熱伝導性絶縁樹脂を硬化させないように、硬化性材料のガラス転移点は熱伝導性絶縁樹脂のガラス転移点より低いものを選ぶ必要がある。図1の(a)には、このように硬化性材料が脱気・硬化された後のパワー半導体モジュール用パッケージの様子が示されている。
【0036】
続いて、金属層より高い部分の硬化性材料を研削して除去する。図1の(b)には、研削された後のパワー半導体モジュール用パッケージの様子が示されている。
【0037】
続いて、図1の(c)に示すように、温度を150度〜200度まで上昇させるとともに、金属層の上方側から2MPa〜10MPaの圧力を1h〜3hの時間を加圧して金属層と樹脂層、および樹脂層と金属ベースプレートとを固着させる。
【0038】
以上のようなパワー半導体モジュール用パッケージの製造工程によれば、加圧過程においては、金属層および硬化された硬化性材料を介して金属層側に加圧された圧力が熱伝導性樹脂層の全面に伝達されるため、熱伝導性絶縁樹脂中の気泡がなくされ、パワーモジュールの絶縁耐圧の信頼性が向上される。
【0039】
〔実施形態2〕
図2は、実施形態2に係るパワー半導体モジュール用パッケージの製造工程を説明するための図である。
【0040】
<パッケージの構造>
パワー半導体モジュール用パッケージ200は、金属層201と、熱伝導性絶縁樹脂層202と、金属ベースプレート203と、硬化性材料204と、を含み、金属層201は、電気回路パターン201aおよびダミーパターン201bを有する。実施形態2に係るパワー半導体モジュール用パッケージと、実施形態1に係るパワー半導体モジュール用パッケージとは、金属層201における隙間の形状が異なり、その他の構成部分は同様である。以下、金属層201における隙間の形状の異なる点についてのみ説明する。
【0041】
実施形態2において、隙間は切欠きの形状を有し、具体的には、正方形の形状を有し、熱伝導性絶縁樹脂層202側の隙間の幅が金属層201の上面側の隙間の幅よりも大きい。また、隙間の比較的大きい幅を有する部分の高さが比較的小さい幅を有する部分の高さより高く設けられている。なお、実施形態2はこれに限らず、切欠きの形状は、金属層201に加えられる機械的力を硬化した材料に伝えることができるのであれば、他の形状であってもよい。
【0042】
<パッケージの製造方法>
図2の(a)〜(c)を参照しながら、実施形態2に係るパワー半導体モジュール用パッケージの製造工程を説明する。
【0043】
まず、ケミカルエッチング工程やプレス打ち抜き工程などにより電気回路パターンとダミーパターンとが形成された金属層を提供する。続いて、熱伝導性絶縁樹脂層を介して、金属層と熱伝導性樹脂層とを共に金属ベースプレート上に接着させ、熱伝導性絶縁樹脂のガラス転移点よりも低い温度の下において仮止めする。図2の(a)には、仮止めた後のパワー半導体モジュール用パッケージの様子が示されている。
【0044】
続いて、パターン間の隙間に硬化性材料を注入して硬化させる。この際、実施形態1の場合では、金属層の高さよりわずかに高い高さまで硬化性材料を注入したが、実施形態2では切欠きの高さより高い高さまで硬化性材料を注入すればよい。。なお、硬化性材料の硬化は、温度が100度〜200度、硬化時間が0.5h〜2hの条件において行われる。また、熱伝導性絶縁樹脂を硬化させないように、硬化性材料のガラス転移点は熱伝導性絶縁樹脂のガラス転移点より低いものを選ぶ必要がある。図2の(b)には、このように硬化性材料が脱気・硬化された後のパワー半導体モジュール用パッケージの様子が示されている。
【0045】
続いて、図2の(c)に示すように、温度を150度〜200度まで上昇させるとともに、金属層の上方側から2MPa〜10MPaの圧力を1h〜3hの時間を加圧して金属層と樹脂層、および樹脂層と金属ベースプレートとを固着させる。
【0046】
以上のような実施形態2のパワー半導体モジュール用パッケージの製造工程によれば、加圧過程においては、金属層および金属層の切欠きを介して金属層側に加圧された圧力が硬化された硬化性材料に伝達され、さらに熱伝導性樹脂層の全面に伝達されるため、熱伝導性絶縁樹脂中の気泡がなくされ、パワーモジュールの絶縁耐圧の信頼性が向上される。
【0047】
また、実施形態2のパワー半導体モジュール用パッケージの製造工程は実施形態1のパワー半導体モジュール用パッケージの製造工程に比べて、金属層より高い部分の硬化性材料を研削して除去するステップがないため、製造工程がよりシンプルである。
【0048】
〔実施形態3〕
図3は、実施形態3に係るパワー半導体モジュール用パッケージの製造工程を説明するための図である。
【0049】
<パッケージの構造>
実施形態3に係るパワー半導体モジュール用パッケージは、実施形態1および実施形態2係るパワー半導体モジュール用パッケージに比べて、金属ベースプレート303の構造が異なり、金属層301のパターン間の隙間に硬化性材料を注入して硬化させる必要性がなくてもよい点で異なる。なお、実施形態3はこれに限らず、実施形態1および実施形態2係るパワー半導体モジュール用パッケージと同様に金属層301のパターン間の隙間に硬化性材料注入して硬化させてもよいことは言うまでもない。以下では、金属層301のパターン間の隙間に硬化性材料が注入されて硬化されていないケースについてのみ説明する。
【0050】
金属ベースプレート303の熱伝導性絶縁樹脂層と接する面には、金属層301のパターン間の隙間の位置に対向して該隙間の熱伝導性絶縁樹脂層側の幅と同等またはわずかに広めの溝が形成されており、該溝には硬化性材料304が注入され硬化されている。なお、硬化性材料304およびその注入・硬化の条件は実施形態1における硬化性材料104と同様の材料、条件であってよい。
【0051】
<パッケージの製造方法>
図3の(a)〜(c)を参照しながら、実施形態3に係るパワー半導体モジュール用パッケージの製造工程を説明する。
【0052】
まず、ケミカルエッチング工程やプレス打ち抜き工程などにより電気回路パターンとダミーパターンとが形成された金属層を提供する。続いて、ケミカルエッチング工程やプレス打ち抜き工程などにより金属層301のパターン間の隙間の位置に対向して該隙間の熱伝導性絶縁樹脂層側の幅と同等またはわずかに広めの溝が形成された金属ベースプレートを提供する。図3の(a)には、溝が形成された後の金属ベースプレートの様子が示されている。
【0053】
続いて、金属ベースプレートの溝に硬化性材料を注入して硬化させる。硬化性材料の注入および硬化の条件は、実施形態1における金属層のパターン間の隙間に硬化性材料を注入し硬化させる場合と同じであってよい。すなわち、硬化性材料が金属ベースプレート上に流れ込まないように、金属ベースプレートの高さよりわずかに高い高さまで注入するほうが好ましい。続いて、金属ベースプレートより高い部分の硬化性材料を研削して除去する。図3の(b)には、研削された後の金属ベースプレートの様子が示されている。
【0054】
続いて、図3の(c)に示すように、温度を150度〜200度まで上昇させるとともに、金属層の上方側から2MPa〜10MPaの圧力を1h〜3hの時間を加圧して金属層と樹脂層、および樹脂層と金属ベースプレートとを固着させる。この際、実施形態1および実施形態2の場合と異なって、金属層301のパターン間の隙間に硬化性材料が充填されていないため、熱伝導性絶縁樹脂層には気泡が残存される場合があるが、気泡の直下の金属ベースプレートの溝に充填された硬化性材料によってパワーモジュールの絶縁耐圧の信頼性が向上される。
【0055】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 ケース、
2 ベースプレート、
3 半導体チップ、
4 ボンディングワイヤ、
5 DBC基板、
6 シリコン材料、
7 半田、
8 セラミック層、
9 下部金属層、
10 上部金属層、
11 隙間、
12 熱伝導性絶縁樹脂層、
13 エッチング防止膜、
14 気泡、
100、200、300 パワー半導体モジュール用パッケージ、
101、201、301 金属層、
102、202、302 熱伝導性樹脂層、
103、203、303 金属ベースプレート、
104、204、304 硬化性材料。
図1
図2
図3
図4
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図9