(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
殺菌対象は、飲料品又は食品用の容器である。このため、予期しない何らかのトラブルによってフラッシュランプを形成する石英ガラスが割れた場合、容器に挿入した部分のガラス破片が容器内に向かって飛散することは許されない。即ち、ランプを形成するガラス破片の飛散を防止する何らかの対策が必要である。
【0009】
しかし、例えば、ランプのU字管を保護スリーブで覆ってガラス破片の飛散を防止しようとした場合、U字管の発する熱が逃げ場を失い保護スリーブ内にこもり、電極付近の温度が上昇するおそれがある。この温度上昇により、発光管の石英ガラスの劣化、電極部材の温度上昇及び陰極電極のスパッター量が増加し発光管内面に付着して石英ガラスの劣化等を招き、ランプの寿命が短くなるおそれがある。
【0010】
そこで、本発明は、ランプを形成する石英ガラスが割れた場合に容器に挿入した部分のガラス破片の飛散を防止し、且つ従来のランプと同等以上のランプ寿命を有する、容器殺菌用のキセノンフラッシュランプ照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る容器殺菌用のキセノンフラッシュランプ照射装置は、一面に於いて、中央部をU字形状に折り曲げた部分を有する発光管と、前記U字形状に折り曲げた部分を包囲する透光性を有する有底の透光性ジャケットとを備え、前記透光性ジャケット内に冷媒を流して発光管を冷却し、前記U字形状に折り曲げた部分を前記容器の開口部から挿入可能にして該容器の内面を殺菌照射する。
【0012】
更に、上記容器殺菌用のキセノンフラッシュランプ照射装置では、前記発光管は、相対的に管径が太い両端部と、管径が細い中央部とを有する円筒状の石英ガラス管で形成されていてもよい。
【0013】
更に、上記容器殺菌用のキセノンフラッシュランプ照射装置では、前記透光性ジャケットの上端開口部付近の口径が拡がっているようにしてもよい。
【0014】
更に、上記容器殺菌用のキセノンフラッシュランプ照射装置では、前記U字形状に折り曲げた発光管の間に介在するように配置され、前記透光性ジャケットの内部空間を部分的に2つの空間に分ける仕切り板を設け、前記冷媒は、該2つの空間の一方の空間から流入し、他方の空間から流出するようにしてもよい。
【0015】
更に、上記容器殺菌用のキセノンフラッシュランプ照射装置では、前記透光性ジャケットの開口部に更に前記発光管の電極部分まで包囲する樹脂製ジャケットを接続し、前記透光性ジャケットと前記樹脂製ジャケットの内部空間は冷媒が相互に流通可能であり、前記仕切り板は、前記樹脂製ジャケットの内部空間に延伸し、該樹脂製ジャケットの内部空間を部分的に2つの空間に分けるようにしてもよい。
【0016】
更に、上記容器殺菌用のキセノンフラッシュランプ照射装置では、前記U字形状に折り曲げた発光管の間に介在するように冷媒注入管を設け、該冷媒注入管は、該U字形状部の下端まで延伸し、注入した冷媒は、下端を冷却しながら、前記透光性ジャケット内を流通するようにしてもよい。
【0017】
更に、上記容器殺菌用のキセノンフラッシュランプ照射装置では、前記透光性ジャケットの開口部に更に前記発光管の電極部分まで包囲する樹脂製ジャケットを接続し、前記透光性ジャケットと前記樹脂製ジャケットの内部空間は冷媒が相互に流通可能であり、前記冷媒注入管は樹脂製ジャケットから透光性ジャケットに延伸しているようにしてもよい。
【0018】
更に、上記容器殺菌用のキセノンフラッシュランプ照射装置では、前記樹脂製ジャケットに、前記透光性ジャケットから見て電極部分より遠い位置に冷媒の流出口を設けるようにしてもよい。
【0019】
更に、上記容器殺菌用のキセノンフラッシュランプ照射装置では、前記冷媒は、冷却水又は冷却空気であってよい。
【0020】
更に、上記容器殺菌用のキセノンフラッシュランプ照射装置では、前記発光管の外周には、トリガー線が配置されているようにしてもよい。
更に、本発明に係る容器殺菌用のキセノンフラッシュランプ照射装置は、一面に於いて、垂直方向に延在する比較的太い管径の両端部分、Y字形状の細い管径の中央部、及び垂直方向に延在する細い管径のU字形状部から形成されている発光管を備えている。
更に、上記キセノンフラッシュランプ照射装置では、更に、前記発光管の全体を覆う1つの石英製ジャケットを備えていてもよい。
更に、上記キセノンフラッシュランプ照射装置では、冷媒注入管が、前記石英製ジャケット上部の発光管取付部から前記発光管のU字形状部近傍まで延伸していてもよい。
更に、本発明に係る大量の容器を短時間で殺菌処理するに適した殺菌処理システムは、一面に於いて、所定の速度で回転するターンテーブルと、前記ターンテーブルの円周に沿って取り付けられた複数個のキセノンフラッシュランプ照射装置と、前記ターンテーブルの回転に同期して回転する昇降シリンダー、該昇降シリンダーに接続された容器保持部材とを備え、前記ターンテーブルが回転するにしたがって、前記容器保持部材に保持された容器が上昇して前記キセノンフラッシュランプ照射装置に徐々に接近し、該キセノンフラッシュランプ照射装置の発光管U字形状部を収納した段階で殺菌処理を行い、更に、該キセノンフラッシュランプ照射装置から徐々に離れる殺菌処理システムである。
更に、キセノンフラッシュランプ照射装置では、ランプ近傍に取り付けた光センサを備え、ランプ点灯動作中に不点灯を起こしたランプを検出してもよい。
更に、キセノンフラッシュランプ照射装置では、ランプ近傍に取り付けた照度センサを備え、システム稼働中、ランプ照度が規定の照度範囲にあるかを確認してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ランプを形成する石英ガラスが割れた場合にガラス破片の飛散を防止し、且つ従来のランプと同等以上のランプ寿命を有する、容器殺菌用のキセノンフラッシュランプ照射装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る容器殺菌用のキセノンフラッシュランプ照射装置の実施形態に関し、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同じ要素に対しては同じ参照符号を付して、重複する説明を省略する。
本実施例に係る容器殺菌用のキセノンフラッシュランプ照射装置の特徴は、従来のキセノンフラッシュランプ照射装置と比較して、ランプの一部又は全部がジャケットで包まれている点にある。従って、本実施例に係るキセノンフラッシュランプ照射装置の理解を容易にするため、最初に、従来のキセノンフラッシュランプ及びこれを利用した照射装置に関して簡単に説明する。
【0024】
[従来技術]
(キセノンフラッシュランプ)
図1は、従来のキセノンフラッシュランプを説明する図である。従来のキセノンフラッシュランプ110aは、希ガスのキセノンを封入した発光管102の両端に、陽極電極104aと陰極電極104bとが対向して配置された構造となっている。発光管102は、紫外線透過率の高い石英ガラスから成り、両端が封止された一定の太さの直線状の円筒形に成形されている。
【0025】
発光管102の外周面に沿って、トリガー線(「始動用補助電極」ともいう。)108が配置されている。トリガー線108は、各々が発光管102の外周面に密着しながら発光管を取り囲む複数個のリング部ワイヤ108−1と、発光管の軸線に沿って延在して複数個のリング部ワイヤ108−1を連結する連結部ワイヤ108−2とから成る。
【0026】
陽極電極104aは、電極リード棒104a−1の先端部(発光管側)を円柱状に成形加工した陽極大径部104a−2を備えるタングステンロッドによって形成されている。一方、陰極側電極104bは、電極リード棒104b−1の先端部(発光管側)を円柱状に成形加工して陰極大径部104b−2とし、この陰極大径部の端部上面に電子放出性物質から成る円柱状の焼結体(「エミッタ部」ともいう。)104b−3が固着されたタングステンロッドによって形成されている。エミッタ部104b−3の先端周囲にリング部ワイヤ108−1が位置決めされている。電極リード棒104a−1,104b−1の発光管と反対側は、リードワイヤ103a,103bに夫々接続されている。
【0027】
(キセノンフラッシュランプ照射装置)
図2は、容器の内面を光照射して殺菌する従来のキセノンフラッシュランプ照射装置110bの概要を説明する図である。なお、図を簡略化して分かり易くするためトリガー線は省略しているが、実際は
図1と同様にトリガー線が発光管2の外周面に沿って存在している。
【0028】
図2に示す照射装置に使用されているランプは、
図1に示す従来のキセノンフラッシュランプ110aと比較すると、次の相違点が有る。発光管102が、全体としてT字形状に形成されている。T字形状の発光管102は、水平部分の両端部分102a,102c
の管径が、中央部102b及び垂直部分(U字形状部分)102b−1の管径より太い点で相違する。両端部分102a,102cの管径を
図1に示すランプの管径と同じにする
ことで、従来の電極を使用することができ、発光出力も従来と同じに維持できる。一方、U字形状部分102b−1の管径が比較的細く形成されているので、容器12の開口部から内部に挿入可能となる。
【0029】
発光管102の両端部分102a,102c、中央部102b、及びU字形状部分102b−1は、同じ放電空間が形成されるように接続されている。陽極電極104aと陰極電極104bは、両端部分102a,102cに夫々成形され、端部は封止されている。これら電極構造は、従来のキセノンフラッシュランプ110aと同様である。
【0030】
本発明者等の試作したこのT字形状発光管の仕様は、次の通りである。但し、これに限定されない。
発光管:材質は一般石英管、
中央部:外径d=φ6.0、肉厚t=1.0mm
両端部:外径d=φ16、肉厚t=1.0mm
ガス圧:Xeガス500 torr
電極:φ13
【0031】
(殺菌対象の容器)
図3は、殺菌対象の容器の代表例であるプリフォームを説明する図である。
図3(A)は、プリフォーム12、
図3(B)は、プリフォームから整形されたペットボトル14、
図3(C)は、ペットボトルに飲料を充填した商品16を示している。プリフォーム12は、ペットボトルとして膨らませる前段階の中間製品であり、ペットボトルに比べて1/5
〜1/10の体積であるため、輸送コストと環境負荷の低減に貢献するため広く用いられている。
【0032】
図示していないが、プリフォーム12は加熱され、ペットボトル形状の雌型金型に配置され、延伸ロッドを開口部から内部に挿入してエアーを注入してボトルの形状に成形されてペットボトル14となり、飲料を充填して商品16となる。
【0033】
なお、殺菌対象の容器は、プリフォームに限定されない。キセノンフラッシュランプを利用した閃光殺菌処理は、殺菌効果が強力であり、発光のパルス制御が容易であり、非接触のため残留物が発生せず、極めて短時間のパルス照射のため処理対象物(容器等)への影響が少ない等の利点を有している。その反面、閃光パルス殺菌処理は、光が照射できる部分しか殺菌できないという欠点がある。そのため、容器の外部からキセノンフラッシュランプを照射しても、容器内面の一部(例えば、容器の底面、開口の小さいボトル形状の肩部内面)に光が届かず、十分な殺菌が行われないおそれがある。従来の
図2に示す照射装置及び
図4〜5に示す本実施形態に係る照射装置は、このような外部照射で十分な殺菌が行われない形状の容器に対して、内部から照射するために開発されている。従って、殺菌対象の容器は、外部照射で十分な殺菌が行われない形状の任意の容器が対象となる。
【0034】
以下、本発明の実施形態に関して説明するが、
図4〜
図6に夫々示す第1〜3実施形態に係るキセノンフラッシュランプ照射装置20a〜20cは、図を簡略化するため、トリガー線は省略し、各電極形状も簡略化している。しかし、実際は、トリガー線が発光管2の外周面に沿って存在し、陽極・陰極の電極構造4a、4bは
図1に関連して説明したものと同様である。更に、本実施形態の特徴を理解するに必要な要素は、中線又は太線で描かれ、それ以外の要素は細線で描かれている。
【0035】
[第1実施形態]
図4(A)は、第1実施形態に係るキセノンフラッシュランプ照射装置20aを説明する断面図、
図4(B)は、そのIV-IV断面図である。IV-IV断面図は、分かり易くするため、
図4(A)に示す発光管のU字形状部の管径より太く描かれていることに注意されたい。この照射装置20aの特徴は、次の通りである。
(1)発光管2のU字形状部分2b−1が、ジャケット6aで覆われている。
(2)発光管2の冷却は、自然空冷である。
【0036】
以下、説明する。全体的に見て、照射装置20aは、ランプハウス18の内部に、ランプ設置台19が配置されている。各電極線はランプハウス18内に設置されている円錐台碍子にそれぞれ接続されており、トリガー線は陰極電極線と共に円錐台碍子に取り付けられているが、各電極線及びトリガー線自体は図示を省略している。以下の実施形態も同様である。更に、ランプハウス18とランプ設置台19には、同じ箇所に開口18a,19aが形成されている。
【0037】
発光管2のU字形状部分2b−1(
図2参照)は、ジャケット6aで覆われている。なお、図では、ジャケット6aは破線で描かれているが、他の要素と識別し易くするためであり、破線自体に意味は無い。これ以降の実施形態に関しても同様である。
図4(B)に示す発光管2のU字形状部分2b−1のIV-IV断面図で分かるとおり、中心から、2本のU字形状部分
2b−1の周囲をジャケット6aが包囲し、これがプリフォーム12内に挿入されている。
【0038】
各要素について説明する。ランプハウス18は、例えば、SUS(ステンレス鋼)で形成
されているが、これに限定されない。ランプ設置台19は、耐熱性及び絶縁性を有する材料、例えば、石英、磁器、ガラス等で形成されているが、これに限定されない。
【0039】
ジャケット6aは、ランプの発光を通すため透光性が必要であり、代表的には石英で形成されているが、これに限定されない。ジャケット6aは、下端部が閉じられた円筒形で
ある。発光管2を効率よく冷却するため、図示するように、上端開口部付近の口径を拡げて、ジャケット6a内に空気が流入し易くすることが好ましい。
【0040】
第1実施形態の利点・効果は、ランプ2のU字形状部分2b−1をジャケット6aで包
囲することで、ランプの石英ガラスが割れた場合、容器12に向かって飛散するガラス破片をジャケット6a内に取り込み、容器に到達するのを防ぐことが出来る。ジャケット6aは、上端開口部付近の口径を拡げることにより、冷却空気の流入を容易にしている。
【0041】
[第2実施形態]
図5(A)は、第2実施形態に係るキセノンフラッシュランプ照射装置20bを説明する断面図、
図5(B)は、そのV-V断面図である。V-V断面図は、相対的に拡大されて描かれていることに注意されたい。この照射装置20bの特徴は、次の通りである。
(1)発光管2の略全体が、ジャケット6a及び6bで覆われている。
(2)発光管2の冷却は、強制冷却である。水冷及び空冷のいずれでもよい。なお、水
冷を例にとって以下説明するが、空冷の場合には、給水口→給気口、排水口→排気口、給水管→給気管、のように読み替えて頂きたい。
(3)給水口からジャケット6a及び6b内に流入した冷却水が、発光管のU字形状部
分全体を有効に冷却出来るように、冷却水仕切り板36が設けられている。
【0042】
以下、説明する。全体的に見て、照射装置20bのランプハウス18には、給水口18aと排水口18cが形成されている。発光管2の略全体が、ジャケット6a及び6bで覆
われている。但し、陽極4a及び陰極4bに繋がるリード線、発光管2の外周面に沿って延在するトリガー線に繋がるトリガー・リード線の部分は除かれている。
【0043】
ジャケット6a,6bは、適当な手段で接続され、冷却水が相互に流通可能な内部冷却空間を形成している。照射装置20bのランプハウス18には、給水口18aと排水口1
8cが形成され、ジャケット6bに対して給水及び排水が出来る。即ち、ジャケット6a,6bは、給水口18bと排水口18c部分を除き、強制水冷の場合には液密封止構造であり、強制空冷の場合には気密封止構造となっている。比較的低温の冷却水の給水口を陰極電極4c側に設け、比較的高温の冷却水の排水口を陽極電極4a側に設けることが好ましい。しかし、これに限定されず、逆であってもよい。
【0044】
ジャケット6bに、ジャケット6aから見て電極部分4a、4bより遠い位置に冷媒の給水口18b及び排水口18cが設けられている。給水口からジャケット6b内に流入した冷却水が、発光管のU字形状部分を有効に冷却出来るように、ジャケット6a及び6bの冷却空間を陰極側(図で見て右半分)と陽極側(左半分)の2つの空間に部分的に分ける冷却水仕切り板36が設けられている。冷却水仕切り板36は、図で見て、ジャケット6bの上端部から始まり、ジャケット6a内は発光管2のU字形状部分2b−1(
図2参照)の間を延在し、U字形状部分2b−1の下端の曲がり部付近まで設置され、下端部で2つの空間は流通可能になっている。
【0045】
図5(B)に示す発光管2のU字形状部分2b−1のV-V断面図で分かるとおり、2本
のU字形状部分2b−1の間に冷却水仕切り板36が配置され、これらの周囲をジャケット6aが包囲し、これがプリフォーム12内に挿入されている。
【0046】
各要素に関して説明する。発光管2のU字形状部分2b−1を包囲するジャケット6aは、第1実施形態と同様に、代表的には石英で形成されていが、これに限定されない。T字形状の発光管2の水平部分を包囲するジャケット6bは、フッ素系樹脂、典型的には、テフロン(登録商標)から形成されている。ジャケット6bは、テフロン(登録商標)の膜又はテフロン(登録商標)の管体のいずれでもよい。冷却水仕切り板36は、耐熱性、
透光性が必要であるため、典型的には石英板から形成される。
【0047】
第2実施形態の利点・効果は、第1実施形態の利点・効果に加えて、ランプ全体を効果的に冷却することが出来る。ランプ点灯中の最高温度は、電極付近、特に陰極電極付近であるため、電極付近も効果的に冷却することが出来る。更に、冷却水仕切り板36を設けたことにより、新しい冷却水が、発光管2のU字形状部分2b−1の先端部付近まで到達して冷却する。U字形状部分2b−1の先端の折り曲げ部内側は、高温に達してガラス管の失透現象、孔が開いてリークする現象が発生する場合があった。第2実施形態では、この折り曲げ部付近も効果的に冷却することが出来る。
【0048】
[第3実施形態]
図6(A)は、第3実施形態に係るキセノンフラッシュランプ照射装置20cを説明する断面図、
図6(B)は、そのVI-VI断面図である。VI-VI断面図は、分かり易くするため、相対的に拡大されて描かれていることに注意されたい。この照射装置20cの特徴は、次の通りである。
(1)発光管2の略全体が、ジャケット6a及び6bで覆われている。
(2)発光管2の冷却は、強制冷却である。水冷及び空冷のいずれでもよい。
(3)給水口に接続する給水管(冷媒注入管)18dが、発光管のU字形状部分の折り
曲げ付近の給水管端部18d−1まで延在している。
【0049】
以下、説明する。全体的に見て、照射装置20cのランプハウス18には、給水口18bと2箇所の排水口18cが形成されている。給水口18bには、給水管(冷媒注入管)18dが設けられ、その端部18d−1は、発光管2のU字形状部分の折り曲げ付近にあり、ここからジャケット6a内に給水される。給水された冷却水は、U字形状部分2b−1を包囲するジャケット6a内を圧送されて上昇し、ジャケット6bに到達し、2箇所の排水口18cから排出する。
【0050】
図6(B)に示す発光管2のU字形状部分2b−1(
図2参照)のVI-VI断面図で分かるとおり、給水管18d及び2本のU字形状部分2b−1の周囲をジャケット6aが包囲し、これがプリフォーム12内に挿入されている。
【0051】
各要素に関して説明する。給水管18dは、耐熱性、透光性を有することが必要であるため、典型的には石英板から形成される。
【0052】
第3実施形態の利点・効果は、第2実施形態の利点・効果に加えて、新しい冷却水が、最初に、発光管2のU字形状部分2b−1の先端部まで到達して冷却することにある。発光管2のU字形状部分2b−1の先端の折り曲げ部内側は、高温に達してガラス管の失透、孔が開いてリークする現象が発生する場合がある。第3実施形態では、この折り曲げ部付近も最も低温な冷却水で効果的に冷却することが出来る。
【0053】
[キセノンフラッシュランプの点灯回路]
図7は、第1〜3実施形態に示すキセノンフラッシュランプの点灯回路30の一例を説明する図である。ここで、符号10aはランプであり、符号8はトリガー線である。点灯回路30は、商用交流電源22と、これを昇圧し整流する充電用高圧電源回路24と、この出力を蓄電する充放電用コンデンサ26と、波形調整用コイル28とを備え、ランプ10にパルス電圧を給電している。更に、始動用外部トリガー発生回路32と、トリガーパルスを昇圧してトリガー線8に送るパルス昇圧トランス34とを備えている。
【0054】
[殺菌工程]
図8は、第1〜3実施形態に示すキセノンフラッシュランプ照射装置を使用した殺菌工
程50を説明する図である。
図8(A)は、殺菌工程50を上方から見た平面図、(B)は、ステップのフロー図である。この殺菌工程50は、大別すると、容器12を搬入する際の搬入コンベヤ40と、容器内面を殺菌処理する際のターンテーブル(「回転円盤」ともいう。)44と、容器12を搬出する際の搬出コンベヤ42とを備えている。なお、容器12の外周面を殺菌処理する工程は省略されている。外周面の殺菌処理は、搬入コンベヤ40、ターンテーブル44、搬出コンベヤ42のいずれかにおいて、又はその他の段階で行われる。
【0055】
ターンテーブル44は、中心軸48により一定方向に回転している。容器12の移動を制御する内側ガイド46i及び外側ガイド46oは、ターンテーブル44の回転に同期して回転している。この回転は、所望により、連続的であっても、回転−停止を繰り返す段階状であってもよい。
【0056】
ステップS1で、容器12は、搬入コンベヤ40によってターンテーブル44に搬入される。
ステップS2で、容器12が、例えば適当な画像診断装置によって、所定の位置に搬入されたかチェックされる。必要に応じて、搬入位置の修正が行われる。
ステップS3で、必要に応じて、容器12の内部の液体洗浄処理が行われる。
ステップS4で、液体洗浄後の乾燥処理が行われる。
ステップS5で、キセノンフラッシュランプ照射装置の発光管2のU字形状部2bが、容器12の内部に挿入される。
ステップS6で、発光管2から容器内面に対して光照射が行われる。
ステップS7で、発光管2のU字形状部2bが、容器12から引き抜かれる。
ステップS8で、容器12は、作動装置48により、ターンテーブル44から搬出コンベヤ42に移動させられる。
【0057】
第1〜3実施形態に係るキセノンフラッシュランプ照射装置を利用して、殺菌工程50により、容器12の内面は、連続的に殺菌処理される。
【0058】
[第4実施形態]
第4実施形態は、第1〜3実施形態に係るキセノンフラッシュランプ照射装置を基に、大量の容器(例えば、プリフォーム)を短時間で殺菌処理するに適したキセノンフラッシュランプ照射装置に関する。
【0059】
第4実施形態の特徴は、大量の容器の短時間処理の要請に応じて、次の通りである。
(1)ランプ発光管は、変形Y字形状を採用する。
(2)Y字形状のランプ全体を覆う1つの石英製ジャケットを採用する。
以下、図面に沿って説明する。
【0060】
図9は、第4実施形態に係るキセノンフラッシュランプ照射装置20dを説明する断面図であり、
図9(A)は、電極を装着した発光管のランプ軸線に沿った断面図であり、(B)は,発光管をジャケット6に挿入し、ジャケット保持部54で保持し、発光管取付部に取り付けた発光管の断面図であり、(C)はそのVII断面図である。
【0061】
図9(A)に示すように、発光管2は、垂直方向に延在する比較的太い管径の両端部分2a、Y字形状の細い管径の中央部2b、及び垂直方向に延在する細い管径のU字形状部2cから形成されている。本出願書類では、この形状を「変形Y字形状」という。
【0062】
変形Y字形状の発光管2は、第1〜3実施形態に係るT字形状の発光管と比較して、平面図的に見て(ランプ上方から見た場合)占有面積が小さいという特徴を有する。そのため、多数のランプを取り付けた第5実施形態で説明する殺菌処理システムでは、ランプの個数を一層増やすことが出来る。また、ランプの個数が少ない殺菌処理システムでは、システム自体の小型化が実現できる効果を有している。
【0063】
図9(B)に示すように、発光管取付部52により、ジャケット6の上端開口部が固定され、ジャケット6内に変形Y字形状発光管2が挿入されている。発光管取付部52には、図示を省略するが冷媒の給水口と排水口が形成され、冷媒の給水口につながる冷媒注入管18dは、発光管のU字形状部分2cの途中まで延在している。冷媒は、典型的には水であるが、空気であってもよい。即ち、ランプの冷却方法は、強制冷却の水冷又は空冷である。本出願書類では、
図9(B)に示すランプの状態を、「ランプユニット」という。更に、発光管取付部52には、電源供給リード線、トリガー線108等を通す開孔も形成されているが、図示を省略する。
【0064】
ジャケット6は、発光管のU字形状部2cの上端部で、ジャケット保持部54により保持されている。第5実施形態で説明するターンテーブルに取り付け回転した場合に、上下に移動したり振動したりせず、所定の位置に保持するためである。
【0065】
図9(B)に示すように、ジャケット6は、変形Y字形状のランプ2の全体を覆う1つの石英製ジャケットを採用している。第2及び3実施形態では、発光管2のU字形状部分2b−1を包囲するジャケット6aは石英製であり、水平部分を包囲するジャケット6bはフッ素系樹脂であり、これらを接続した2ピース構造である(
図5,6参照)。これに対し、第4実施形態では、1ピース構造の石英製ジャケットを採用している。1ピース構造ジャケットを採用したことにより、2ピース構造ジャケットに比較して、低コスト化を図ることができる。
【0066】
[第5実施形態]
第5実施形態は、第4実施形態に係るキセノンフラッシュランプ照射装置を基に、大量の容器(例えば、プリフォーム)を短時間で殺菌処理するに適した殺菌処理システムに関する。現在、例えば大量のプリフォームの殺菌処理として、基本的には500〜1000 bt/m(1分間あたりの処理ボトル)が望まれている。第5実施形態の特徴は、大量の容器の短時間処理の要請に応じて、次の通りである。
(1)多数のランプを取り付けたターンテーブルと、ランプの回転に同期しながら下方からプリフォームを上昇し、ランプのU字形状部をプリフォームが収納した段階で殺菌処理を行い、その後プリフォームを下降する、殺菌処理システムを提供する。
(2) この殺菌処理システムでは、ランプ近傍に光センサが取り付けてある。ランプ点灯動作中に不点灯を起こしたランプを検出し、未殺菌の容器を取り除き、適切な対処をすることが出来る。
(3) この殺菌処理システムでは、発光管の照度を検出する照度センサが取り付けてある。
以下、図面に沿って説明する。
【0067】
図10は、大量のプリフォームを短時間で殺菌処理するに適した殺菌処理システムを説明する図である。回転軸62には、ランプユニット20dを取り付けるターンテーブル60と、ランプユニット20dに給電するためのランプ給電用円盤68と、プリフォーム12を取り付け、ランプユニット20dまで上昇し、殺菌処理後に下降して排出するプリフォーム供給円盤63が取り付けられている。回転軸62が回転すると、各円盤68,60,63は、同一方向に同速度で回転する。
【0068】
回転軸62に取り付けられたターンテーブル60の円周端領域に、発光管取付部52を使って、
図9のランプユニット20dのジャケット6が取り付けられる。ジャケット6をターンテーブル60に取り付ける際、ジャケット保持部54は、コレットチャック構造を採用して、ターンテーブル60に対して発光管のU字形状部2cが垂直に固定されている。
ランプ給電用円盤68に設置された陽極用給電端子4a−2、陰極用給電端子4c−2、トリガー線給電端子108aから、ランプユニット20dの夫々の端子に給電される。更に、図示していないが、ランプユニット20dに対する給水用配管、排水用配管も設置される。一旦、ターンテーブル60に設置した各ランプユニット20dは、不点灯等の故障がない限り、交換等はない。
【0069】
プリフォーム12は、プリフォーム供給円盤63に取り付けられる。円盤63の円周端領域に、プリフォーム12を昇降する昇降シリンダー64が取り付けられている。昇降シリンダー64の頂部に、プリフォーム保持部66が取り付けられ、プリフォーム12は、プリフォーム保持部66に保持される。
【0070】
最初に、
図10の左図に示すように、昇降シリンダー64は最下位に位置している(例えば、
図11の位置Sに対応する。)。この位置Sで、図示していないプリフォーム取付・取外し装置により、プリフォーム12が、プリフォーム保持部66に取り付けられる。昇降シリンダー64は、回転に合わせて上昇し、右図に示すように最上位では、プリフォーム12内の底部付近まで、ジャケット6で覆われた発光管U字形状部2cが挿入された状態になる。更に回転するに合わせて下降し、左図の最下位の位置まで戻る(例えば、
図11の位置Eに対応する。)。この位置Eで、図示していないプリフォーム取付・取外し装置により、プリフォーム12が、プリフォーム保持部66から取り外される。このように、プリフォーム供給円盤63に取り付けたプリフォームは、円盤63が1回転すると、殺菌処置が完了し、取り外される。殺菌対象は、プリフォームに限定されない。一端が開口され、発光管ユニットが挿入可能な容器であれば、この殺菌処理システムで処理が可能である。
【0071】
図に示していないが、ランプ近傍に照度センサを取り付け、ランプ点灯動作時において、規定の照度範囲にあるかを確認している。規定の範囲外の場合、供給電圧を増減して、照度を範囲内になるように調整する。全ての発光管に照度センサを取り付ける必要は無く、典型的には1箇所取り付ければよい。
【0072】
図11は、
図10で説明したランプユニット20dのターンテーブル60上の配置を説明する平面図である。
図11に示す殺菌処理システムでは、ランプユニット20dが、ターンテーブル60の円周端部に沿って、回転中心から見て角度15度ごとに、30個配置されている。例えば、900 bt/mの場合、1分間に30回転、2秒間に1回転して30個のプリフォームを殺菌処理している。
【0073】
発光管2を変形Y字形状にすることにより、ターンテーブル60の円周に沿って配置された場合に、占有面積を小さくすることが出来る。各ランプユニット20dのランプ近傍には、光センサ(図示せず)が取り付けられ、ランプ点灯動作中に不点灯を起こしたランプを検出し、未殺菌の容器を取り除き、不点灯ランプの交換など適切な対処をすることが出来る。なお、ランプユニット20dの配置個数は、30個に限定されず、ユーザの要求によって決定される。
【0074】
図には示していないが、各ランプユニット20dの上端は、碍子製の蓋で覆われている。蓋には、ランプ給電用リード線及びトリガー線、給水口、排水口の開孔が形成され、Oリングのパッキンを使って密封され、ネジ止めされている。ネジを緩めて蓋を外すことにより、ジャケット6内にあるランプの交換が容易にできる。
【0075】
[結び]
以上、本発明に係る容器殺菌用のキセノンフラッシュランプの実施形態に関し説明したが、これらは例示であって、本発明の範囲を何等限定するものではない。本実施形態に対して当業者が容易に成し得る追加、削除、変更、改良等は、本発明の範囲内である。本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の記載によって定められる。