【文献】
Shell NEODOLTM, NEODOL Alcohols Typical Properties,Shell Chemicals,2006年 6月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<組成物>
当該組成物は、エステル(1)及び
/又はエステル(2)を含有する。当該組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、エステル(1)及び
/又はエステル(2)以外の任意成分を含有していてもよい。
【0012】
当該組成物は、潤滑油として好適に用いることができ、特に、切削油等の金属加工油として、より好適に用いることができる。
【0013】
当該組成物は、エステル(1)及び
/又はエステル(2)を含有することで、低動粘度、高引火点及び低流動点の全てを高いレベルで実現させることができる。当該組成物が、上記構成を備えることで上記効果を奏する理由としては必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。すなわち、エステル(1)及び
/又はエステル(2)は、式(1)及び
/又は式(2)で表される分岐数が1の特定構造を有する炭素数12及び炭素数13のアルコールとオレイン酸とのエステルである。当該組成物は、このような特有の分子構造及び分子量を有するエステル(1)及び
/又はエステル(2)の混合物を用いることにより、動粘度をより低く、引火点をより高く、かつ流動点をより低くできる。
以下、各成分について説明する。
【0014】
[エステル(1)]
エステル(1)は、式(1)で表されるアルコール(以下、「アルコール(1)」ともいう)とオレイン酸とのエステルである。
【0015】
(アルコール(1))
アルコール(1)は、下記式(1)で表される化合物である。アルコール(1)は、炭素数12の分岐数が1の1価の1級アルコールである。アルコールの「分岐数」とは、例えばアルキル鎖における分岐数をいい、アルコールの
1H−NMR分析により求めたメチル基の数から、主鎖の末端メチル基に相当する1を減ずることで算出することができる。
【0017】
上記式(1)中、m1は、0〜8の整数である。n1は、0〜8の整数である。p1は、1〜9の整数である。但し、m1+n1+p1は9である。
【0018】
m1としては、1〜8が好ましく、2〜8がより好ましく、4〜8がさらに好ましい。
【0019】
n1としては、0〜6が好ましく、0〜5がより好ましく、0〜3がさらに好ましい。
【0020】
p1としては、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1又は2がさらに好ましく、1が特に好ましい。
【0021】
アルコール(1)としては、例えば、
2−メチルウンデカン−1−オール、2−エチルデカン−1−オール、2−ブチルオクタン−1−オール、2−ペンチルヘプタン−1−オール等の上記式(1)のp1が1である化合物;
3−メチルウンデカン−1−オール、3−エチルデカン−1−オール、3−ブチルオクタン−1−オール、3−ペンチルヘプタン−1−オール等の上記式(1)のp1が2である化合物;
4−メチルウンデカン−1−オール、4−エチルデカン−1−オール、4−ブチルオクタン−1−オール、4−ペンチルヘプタン−1−オール等の上記式(1)のp1が3である化合物などが挙げられる。
【0022】
アルコール(1)は、例えば、炭素数11のα−オレフィンのオキソ反応及び水素化等により製造することができる。アルコール(1)は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0023】
(オレイン酸)
「オレイン酸」とは、(Z)−9−オクタデセン酸を意味する。オレイン酸を主成分として含む脂肪酸混合物の市販品としては、例えば、「Evyap Oleo O−1875」、「Evyap Oleo O−1875 P」(以上、Evyap Sabun Malaysia社)、「NAA−34」、「NAA−35」(以上、日油社)等が挙げられる。
【0024】
上記脂肪酸混合物中のオレイン酸の含有率の下限としては、70質量%が好ましく、75質量%がより好ましく、80質量%がさらに好ましい。上記脂肪酸混合物中のオレイン酸の含有率の上限は、100質量%であってもよい。
【0025】
エステル(1)は、例えば、アルコール(1)とオレイン酸とを用い、酸化スズ等を触媒としてエステル化反応を行うことにより得ることができる。
【0026】
エステル(1)の含有量の下限としては、当該組成物の総質量に対して、10質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましく、50質量%が特に好ましい。エステル(1)の含有量の上限としては、当該組成物の総質量に対して、99.9質量%が好ましく、99質量%がより好ましく、98質量%がさらに好ましく、90質量%が特に好ましい。エステル(1)の含有量を上記範囲とすることで、低動粘度、高引火点及び低流動点をより高いレベルで実現させることができる。
【0027】
当該組成物は、エステル(1)を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0028】
[エステル(2)]
エステル(2)は、式(2)で表されるアルコール(以下、「アルコール(2)」ともいう)とオレイン酸とのエステルである。
【0029】
(アルコール(2))
アルコール(2)は、下記式(2)で表される化合物である。アルコール(2)は、炭素数13の分岐数が1の1価の1級アルコールである。
【0031】
上記式(2)中、m2は、0〜9の整数である。n2は、0〜9の整数である。p2は、1〜10の整数である。但し、m2+n2+p2は10である。
【0032】
m2としては、1〜9が好ましく、2〜9がより好ましく、4〜9がさらに好ましい。
【0033】
n2としては、0〜6が好ましく、0〜5がより好ましく、0〜3がさらに好ましい。
【0034】
p2としては、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1又は2がさらに好ましく、1が特に好ましい。
【0035】
アルコール(2)としては、例えば、
2−メチルドデカン−1−オール、2−エチルウンデカン−1−オール、2−ブチルノナン−1−オール、2−ペンチルオクタン−1−オール等の上記式(2)のp2が1である化合物;
3−メチルドデカン−1−オール、3−エチルウンデカン−1−オール、3−ブチルノナン−1−オール、3−ペンチルオクタン−1−オール等の上記式(2)のp2が2である化合物;
4−メチルドデカン−1−オール、4−エチルウンデカン−1−オール、4−ブチルノナン−1−オール、4−ペンチルオクタン−1−オール等の上記式(2)のp2が3である化合物などが挙げられる。
【0036】
アルコール(2)は、例えば、炭素数12のα−オレフィンのオキソ反応及び水素化等により製造することができる。アルコール(2)は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0037】
エステル(2)は、例えば、アルコール(2)とオレイン酸とを用い、酸化スズ等を触媒としてエステル化反応を行うことにより得ることができる。
【0038】
エステル(2)の含有量の下限としては、当該組成物の総質量に対して、0.1質量%が好ましく、1質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましく、30質量%が特に好ましい。エステル(2)の含有量の上限としては、当該組成物の総質量に対して、99質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、75質量%がさらに好ましく、60質量%が特に好ましい。エステル(2)の含有量を上記範囲とすることで、低動粘度、高引火点及び低流動点をより高いレベルで実現させることができる。
【0039】
当該組成物は、エステル(2)を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0040】
アルコール(1)及び/又はアルコール(2)を含むアルコールとしては、α−オレフィン由来のアルコール、すなわち、α−オレフィンからオキソ反応及び水素化等により製造されたアルコールが好ましい。ブテン由来のアルコール又はプロピレン由来のアルコール、すなわち、ブテン又はプロピレンの多量化により得られたオレフィンからオキソ反応及び水素化等により製造されたアルコールは、通常、分岐数が1.5〜2.9のアルコールである。このような分岐数が1より大きい多分岐のアルコールとオレイン酸とのエステルでは、組成物の動粘度は増大し、かつ引火点は低下する。
【0041】
アルコール(1)とアルコール(2)とを含むアルコールの市販品としては、例えば、「ISALCHEM」、「ISOFOL」、「SAFOL」(以上、SASOL社)等が挙げられる。
【0042】
エステル(1)とエステル(2)との割合としては、エステル(1)/エステル(2)(質量比)の下限として、30/70が好ましく、40/60がより好ましく、50/50がさらに好ましく、60/40が特に好ましく、70/30がさらに特に好ましく、80/20が最も好ましい。エステル(1)/エステル(2)(質量比)の上限として、99.9/0.1が好ましく、99/1がより好ましく、95/5がさらに好ましく、90/10が特に好ましい。エステル(1)とエステル(2)との割合を上記範囲とすることで、低動粘度、高引火点及び低流動点をより高いレベルで実現させることができる。
【0043】
エステル(1)及び
/又はエステル(2)の合計含有量の下限としては、当該組成物中のエステルの総質量に対して、70質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましく、95質量%が特に好ましい。エステル(1)及び
/又はエステル(2)の合計含有量の上限としては、例えば100質量%であり、99質量%が好ましい。「エステル」とは、アルコールと脂肪酸とのエステルを意味する。
【0044】
エステル(1)及び
/又はエステル(2)の合計含有量の下限としては、当該組成物の総質量に対して、30質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましく、80質量%が特に好ましく、90質量%がさらに特に好ましく、95質量%が最も好ましい。エステル(1)及び
/又はエステル(2)の合計含有量の上限としては、例えば100質量%であり、99質量%が好ましい。
【0045】
[任意成分]
任意成分としては、例えば、エステル(1)及び
/又はエステル(2)以外のエステル(以下、「エステル(3)」ともいう)、添加剤等が挙げられる。当該組成物は、任意成分を1種又は2種以上含有することができる。
【0046】
(エステル(3))
エステル(3)としては、例えばアルコール(1)と炭素数が17以下又は19以上の脂肪酸とのエステル、アルコール(2)と炭素数が17以下又は19以上の脂肪酸とのエステル、分岐数が1超の分岐ドデシルアルコール又は直鎖ドデシルアルコールと脂肪酸とのエステル、分岐数が1超の分岐トリデシルアルコール又は直鎖トリデシルアルコールと脂肪酸とのエステル等が挙げられる。
【0047】
当該組成物がエステル(3)を含有する場合、エステル(3)の含有量の上限としては、当該組成物中のエステルの総質量に対して、50質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましく、3質量%が特に好ましい。エステル(3)の含有量の下限としては、当該組成物中のエステルの総質量に対して、例えば0.1質量%である。
【0048】
当該組成物がエステル(3)を含有する場合、エステル(3)の含有量の上限としては、当該組成物の総質量に対して、60質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、15質量%がさらに好ましく、5質量%が特に好ましい。エステル(3)の含有量の下限としては、当該組成物の総質量に対して、例えば0.1質量%である。
【0049】
当該組成物がエステル(3)を含有する場合、エステル(1)、エステル(2)及びエステル(3)の合計含有量の下限としては、当該組成物の総質量に対して、70質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましく、95質量%が特に好ましい。エステル(1)、エステル(2)及びエステル(3)の合計含有量の上限としては、例えば100質量%であり、99.9質量%が好ましく、99質量%がより好ましい。
【0050】
(添加剤)
添加剤としては、公知の添加剤を用いることができ、例えば、フェノール系の酸化防止剤;ベンゾトリアゾ−ル、チアジアゾール、ジチオカーバメート等の金属不活性化剤;エポキシ化合物、カルボジイミド等の酸捕捉剤;リン系の極圧剤;ポリアルキルメタクリレート(例えば、アクルーブ132、アクルーブ146等)の流動点降下剤などが挙げられる。
【0051】
当該組成物が添加剤を含有する場合、添加剤の含有量の上限としては、当該組成物の総質量に対して、30質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、5質量%がさらに好ましい。
【0052】
当該組成物は、添加剤を実質的に含まず、実質的にエステルからなる場合、潤滑油基油又は金属加工油基油として有用である。組成物が「添加剤を実質的に含まない」とは、例えば、添加剤の合計含有量が5質量%未満であることをいう。組成物が「実質的にエステルからなる」とは、例えば、エステル(1)、エステル(2)及びエステル(3)の合計含有量が95質量%以上であることをいう。
【0053】
当該組成物の40℃における動粘度としては、14.0mm
2/s未満が好ましく、13.5mm
2/s未満がより好ましく、13.0mm
2/s未満がさらに好ましい。当該組成物の40℃における動粘度としては、例えば10.0mm
2/s以上であり、11.0mm
2/s以上が好ましい。当該組成物の動粘度を上記範囲とすることで、金属加工等における精度、冷却性などをより改善することができる。
【0054】
動粘度は、例えば、JIS K−2283に準拠して測定することができる。
【0055】
当該組成物の引火点の下限としては、240℃が好ましく、250℃がより好ましく、254℃がさらに好ましく、256℃が特に好ましく、258℃がさらに特に好ましく、260℃が最も好ましい。当該組成物の引火点の上限としては、例えば270℃であり、265℃が好ましい。当該組成物の引火点を上記範囲とすることで、安全性をより向上させることができ、使用時において揮発する油による汚れや臭気などの作業環境の悪化をより改善することができる。
【0056】
引火点は、例えば、JIS K−2265に準拠し、クリーブランド式オープンカップ法にて測定することができる。
【0057】
当該組成物の流動点の上限としては、−20℃が好ましく、−25℃がより好ましく、−30℃がさらに好ましく、−35℃が特に好ましく、−40℃がさらに特に好ましく、−45℃が最も好ましい。当該組成物の流動点の下限としては、例えば−60℃であり、−50℃が好ましい。当該組成物の流動点を上記範囲とすることで、低温環境下においてもより固化し難く、加熱用の設備が不要となる。
【0058】
流動点は、例えば、JIS K−2269に準拠して測定することができる。
【0059】
当該組成物の水酸基価の上限としては、2mgKOH/gが好ましく、1mgKOH/gがより好ましい。当該組成物の水酸基価の下限としては、例えば0mgKOH/gであり、0.1mgKOH/gが好ましい。
【0060】
「水酸基価」は、例えば通常の水酸基価の測定方法により求めることができるが、その他に、ガスクロマトグラフィー(GC)、ガスクロマトグラフィー−質量分析法(GC−MS)等により、遊離アルコールの含有量を測定することにより求めることもできる。
【0061】
[組成物の製造方法]
当該組成物は、例えば、アルコール(1)及びアルコール(2)と、オレイン酸とを反応させてエステルを得る工程(以下、「エステル化工程」ともいう)を備える製造方法により製造することができる。
【0062】
当該組成物の製造方法は、エステル化工程後に、得られたエステルから低沸点成分を除去してエステル化粗物を得る工程(以下、「低沸点成分除去工程」ともいう)をさらに備えることが好ましく、低沸点成分除去工程後に、得られたエステル化粗物を処理剤で処理する工程(以下、「処理工程」ともいう)をさらに備えていてもよい。
以下、各工程について説明する。
【0063】
(エステル化工程)
本工程では、アルコール(1)及びアルコール(2)と、オレイン酸とを反応させてエステルを得る。より具体的には、アルコール(1)及びアルコール(2)を含むアルコール成分と、オレイン酸を含む脂肪酸成分とを混合し、必要に応じて触媒を加え、加熱し、生成した水を除去しながらエステル化反応を行う。
【0064】
アルコール成分と脂肪酸成分との当量比として、アルコール成分1モルに対し、脂肪酸成分としては、0.8〜1.5モルが好ましく、生産効率と経済性の観点から、0.9〜1.2モルがより好ましい。アルコール成分中のアルコール(1)及びアルコール(2)のモル数は、アルコール成分のガスクロマトグラフィー分析により、アルコール(1)及びアルコール(2)の各面積割合(GC%)を測定し、2−ブチル−1−オクタノールのファクターを用いることにより算出することができる。
【0065】
触媒としては、例えば、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのプロトン酸、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、スズ、亜鉛等の元素を含むルイス酸などの酸触媒などが挙げられる。触媒の使用量としては、アルコール成分及び脂肪酸成分の合計に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜1質量%がより好ましい。
【0066】
エステル化反応の温度の下限としては、160℃が好ましく、200℃がより好ましく、215℃がさらに好ましく、230℃が特に好ましい。エステル化反応の温度の上限としては、例えば240℃であり、235℃が好ましい。
【0067】
エステル化反応は、常圧下で行っても、減圧下で行ってもよいが、生成水の除去容易の観点から、減圧下が好ましい。減圧時の圧力の下限としては、例えば1Torrであり、10Torrが好ましく、50Torrがより好ましい。減圧時の圧力の上限としては、例えば200Torrであり、150Torrが好ましい。
【0068】
エステル化反応の時間の下限としては、10分が好ましく、30分がより好ましく、1時間がさらに好ましく、2時間が特に好ましい。エステル化反応の時間の上限としては、24時間が好ましく、12時間がより好ましく、8時間がさらに好ましく、5時間が特に好ましい。
【0069】
エステル化反応は、例えば、反応液の酸価を測定しながら行うことが好ましい。反応液の酸価としては、5mgKOH/g以下が好ましく、1〜3mgKOH/gがより好ましい。酸価は、例えば、JOCS(日本油化学会) 2.3.1に準拠して測定することができる。
【0070】
(低沸点成分除去工程)
本工程では、得られたエステルから低沸点成分を除去してエステル化粗物を得る。ここでの「低沸点成分」とは、エステルを構成する脂肪酸の炭素数が17以下であるエステル(低沸点エステル)、遊離のアルコール(1)、遊離のアルコール(2)、遊離のオレイン酸、遊離の炭素数17以下の脂肪酸を含む。
【0071】
本工程は、具体的には、170℃〜230℃の温度、0Torr超100Torr以下の圧力の減圧下で、低沸点成分を留去する。
【0072】
(処理工程)
本工程では、得られたエステル化粗物を処理剤で処理する。
【0073】
処理剤としては、例えば、活性炭、活性白土等が挙げられる。処理剤の使用量としては、例えばエステル化粗物に対して、通常0.01〜5質量%であり、0.1〜1質量%が好ましい。
【0074】
処理の方法としては、例えば、エステル化粗物に処理剤を投入し、50℃〜100℃で、10分〜2時間程度攪拌し、次いで10分〜2時間程度減圧下で攪拌した後、処理剤を濾過して除去する方法等が挙げられる。
【0075】
エステル化反応を行う前に、例えば、エステルの原料の脂肪酸から、炭素数が17以下である脂肪酸を除去する精製工程を行ってもよいが、行わなくてもよい。
【0076】
エステル化粗物中の余剰の遊離の脂肪酸を除去するために、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリによる脂肪酸の中和精製工程を行ってもよいが、行わなくてもよい。
【0077】
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的範囲内において、上述の構成を種々組み合わせた態様を含む。
【実施例】
【0078】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0079】
実施例及び比較例の組成物の製造におけるエステル化反応の反応液の酸価は、JOCS(日本油化学会) 2.3.1に準拠して測定した。
【0080】
<組成物の製造>
実施例1〜3で用いた「C12/C13混合アルコール」は、α−オレフィン由来の炭素数12のアルコール(アルコール(1))及び炭素数13のアルコール(アルコール(2))の混合物である。
実施例1〜3並びに比較例1及び2で用いた「オレイン酸含有脂肪酸混合物」は、Evyap Sabun Malaysia社の「Evyap Oleo O−1875」である。オレイン酸含有率は75質量%以上である。
【0081】
[実施例1]
攪拌器、温度計及び冷却管付きディーンスターク管を備えた1Lの4つ口フラスコに、オレイン酸含有脂肪酸混合物380g、C12/C13混合アルコール313.9g、及び触媒としての酸化スズを総量に対し0.1質量%仕込み、窒素雰囲気下で230℃まで昇温した。230℃到達後、減圧し、留出してくる生成水をディーンスターク管で除去しながら、エステル化反応を行った。酸価が1.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了した。反応終了後、過剰のアルコールと低沸点成分とを留去してエステル化粗物を得た。得られたエステル化粗物に対してそれぞれ0.2質量%の活性炭と活性白土を投入し、80℃で30分攪拌した後、1時間減圧下で攪拌した。その後、常圧に戻し、濾過してそれらを除去し、組成物Aを得た。
【0082】
[実施例2]
攪拌器、温度計及び冷却管付きディーンスターク管を備えた1Lの4つ口フラスコに、オレイン酸含有脂肪酸混合物380g、2−ブチル−1−オクタノール68.7g(0.37モル)、C12/C13混合アルコール245.2g、及び触媒としての酸化スズを総量に対し0.1質量%仕込み、窒素雰囲気下で230℃まで昇温した。230℃到達後、減圧し、留出してくる生成水をディーンスターク管で除去しながら、エステル化反応を行った。酸価が1.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了した。反応終了後、過剰のアルコールと低沸点成分とを留去してエステル化粗物を得た。得られたエステル化粗物に対してそれぞれ0.2質量%の活性炭と活性白土を投入し、80℃で30分攪拌した後、1時間減圧下で攪拌した。その後、常圧に戻し、濾過してそれらを除去し、組成物Bを得た。
【0083】
[実施例3]
攪拌器、温度計及び冷却管付きディーンスターク管を備えた1Lの4つ口フラスコに、オレイン酸含有脂肪酸混合物380g、2−ブチル−1−オクタノール300g(1.61モル)、C12/C13混合アルコール6.0g、及び触媒としての酸化スズを総量に対し0.1質量%仕込み、窒素雰囲気下で230℃まで昇温した。230℃到達後、減圧し、留出してくる生成水をディーンスターク管で除去しながら、エステル化反応を行った。酸価が1.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了した。反応終了後、過剰のアルコールと低沸点成分とを留去してエステル化粗物を得た。得られたエステル化粗物に対してそれぞれ0.2質量%の活性炭と活性白土を投入し、80℃で30分攪拌した後、1時間減圧下で攪拌した。その後、常圧に戻し、濾過してそれらを除去し、組成物Cを得た。
【0084】
実施例1〜3で組成物の製造に用いたアルコール全体(炭素数12及び炭素数13の混合物)について、アルコール(1)及びアルコール(2)の含有割合(GC%)をガスクロマトグラフィー分析により測定した。GC測定条件を以下に示す。また、測定結果を下記表1に示す。
【0085】
(GC測定条件)
装置:島津製作所社の「GC−2014」
カラム:アジレント・テクノロジー社の「DB−1HT」
カラム温度:70℃(2分)→昇温速度10℃/min→350℃(5分)
サンプル量:1μL
キャリアガス:ヘリウム(全流量57.8mL/min)
インジェクション条件:スプリット(スプリット比50)
インジェクション温度:350℃
検出器:FID
【0086】
【表1】
【0087】
[比較例1]
攪拌器、温度計及び冷却管付きディーンスターク管を備えた1Lの4つ口フラスコに、オレイン酸含有脂肪酸混合物380g、ブテン由来のイソトリデカノール(KHNC社の「トリデカノール」)330g、及び触媒としての酸化スズを総量に対し0.1質量%仕込み、窒素雰囲気下で230℃まで昇温した。230℃到達後、減圧し、留出してくる生成水をディーンスターク管で除去しながら、エステル化反応を行った。酸価が1.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了した。反応終了後、過剰のアルコールと低沸点成分とを留去してエステル化粗物を得た。得られたエステル化粗物に対してそれぞれ0.2質量%の活性炭と活性白土を投入し、80℃で30分攪拌した後、1時間減圧下で攪拌した。その後、常圧に戻し、濾過してそれらを除去し、組成物Dを得た。
【0088】
[比較例2]
比較例1で用いたブテン由来のイソトリデカノールを、プロピレン由来のイソトリデカノール(Exxon Mobil社の「Exxal13」)に変えた以外は比較例1と同様にして、組成物Eを得た。
【0089】
<評価>
実施例及び比較例で得られた組成物の各種分析は、以下の方法に従って行った。
【0090】
動粘度:JIS K−2283に準拠して測定した。
引火点:JIS K−2265に準拠し、クリーブランド式オープンカップ法にて測定した。
流動点:JIS K−2269に準拠して測定した。
【0091】
実施例1〜3並びに比較例1及び2で得られた組成物の動粘度(mm
2/s)、引火点(℃)及び流動点(℃)について、下記表2に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
表2の結果より明らかなように、実施例の組成物は、低動粘度、高引火点及び低流動点の全てを高いレベルで実現させることができる。
【解決手段】本発明は、下記式(1)で表されるアルコールとオレイン酸とのエステル(1)、又は下記式(2)で表されるアルコールとオレイン酸とのエステル(2)を含有する組成物である。下記式(1)中、m1は、0〜8の整数である。n1は、0〜8の整数である。p1は、1〜9の整数である。但し、m1+n1+p1は9である。下記式(2)中、m2は、0〜9の整数である。n2は、0〜9の整数である。p2は、1〜10の整数である。但し、m2+n2+p2は10である。上記エステル(1)又は上記エステル(2)の含有量が、組成物の総質量に対して30質量%以上であることが好ましい。