特許第6813922号(P6813922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6813922
(24)【登録日】2020年12月22日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】メラトニン含有顆粒剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4045 20060101AFI20201228BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20201228BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20201228BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20201228BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   A61K31/4045ZMD
   A61K9/16
   A61K47/38
   A61K47/26
   A61P25/20
【請求項の数】19
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2020-96770(P2020-96770)
(22)【出願日】2020年6月3日
【審査請求日】2020年6月4日
(31)【優先権主張番号】特願2019-222712(P2019-222712)
(32)【優先日】2019年12月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2020-48487(P2020-48487)
(32)【優先日】2020年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504237832
【氏名又は名称】ノーベルファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100175075
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康子
(72)【発明者】
【氏名】四ツ谷 治
(72)【発明者】
【氏名】油田 宜子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅信
(72)【発明者】
【氏名】岡部 登司男
【審査官】 山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−159393(JP,A)
【文献】 特開昭63−267720(JP,A)
【文献】 特開2007−211005(JP,A)
【文献】 特表2001−510785(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/010930(WO,A1)
【文献】 Journal of Pharmaceutical Analysis,2017年,Volume 7, Issue 4,p.237-243
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4045
A61K 9/16
A61K 47/26
A61K 47/38
A61P 25/20
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラトニンを有効成分として含有する、水なしで服用可能な入眠困難改善用の顆粒剤であって、口内溶解性を有するコア粒子とメラトニンを、結合剤の存在下で混合してメラトニン素顆粒を得る造粒工程と、
造粒工程で得られたメラトニン素顆粒を乾燥させる乾燥工程を含む方法によって製造され、
結合剤が粘度6.0〜400mPa・sのヒドロキシプロピルセルロースの溶液であり、
小児期の神経発達症に伴う睡眠障害を対象とし、メラトニン1〜4mg相当を就寝前に1日1回経口投与して用いることを特徴とする顆粒剤。
【請求項2】
造粒工程が、口内溶解性を有するコア粒子に、コア粒子が完全溶解しない条件で、メラトニンをエタノールと水の混液に溶解した液及び結合剤を添加し、得られた調製物を混合しつつ乾燥させる工程である、請求項1に記載の顆粒剤。
【請求項3】
メラトニンを有効成分として含有する、水なしで服用可能な入眠困難改善用の顆粒剤であって、口内溶解性を有するコア粒子とメラトニンを、結合剤の存在下で混合しつつ調製物の乾燥を行う造粒乾燥工程を含む方法によって製造され、
結合剤が粘度6.0〜400mPa・sのヒドロキシプロピルセルロースの溶液であり、
小児期の神経発達症に伴う睡眠障害を対象とし、メラトニン1〜4mg相当を就寝前に1日1回経口投与して用いることを特徴とする顆粒剤。
【請求項4】
造粒乾燥工程が、口内溶解性を有するコア粒子に、コア粒子が完全溶解しない条件で、メラトニンをエタノールと水の混液に溶解した液及び結合剤を添加し、得られた調製物を混合しつつ乾燥させる工程である、請求項3に記載の顆粒剤。
【請求項5】
造粒乾燥工程を、流動層造粒法を用いて行う、請求項3又は4に記載の顆粒剤。
【請求項6】
造粒乾燥工程におけるメラトニンの添加が、流動層内において前記コア粒子に、メラトニンの懸濁液又は溶液を噴霧することによって行われるものである、請求項5に記載の顆粒剤。
【請求項7】
口内溶解性を有するコア粒子が、水溶性の糖又は糖アルコールを主成分とする粒子である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の顆粒剤。
【請求項8】
口内溶解性を有するコア粒子が、マンニトール、トレハロース、エリスリトール、ショ糖、又は粉糖から選択される少なくとも1種を主成分とする粒子である、請求項7に記載の顆粒剤。
【請求項9】
メラトニンを有効成分として含有する、水なしで服用可能な入眠困難改善用の顆粒剤であって、口内溶解性を有するコア粒子にメラトニンを、粘度6.0〜400mPa・sのヒドロキシプロピルセルロースを結合剤として用いて結合させた粒子を含み、日本薬局方溶出試験第2法(パドル法、溶媒:水、容量:900mL、回転数:50rpm)におけるメラトニンの溶出15分値が、80%以上であり、小児期の神経発達症に伴う睡眠障害を対象とし、メラトニン1〜4mg相当を就寝前に1日1回経口投与して用いることを特徴とする顆粒剤。
【請求項10】
Hausner比が1.00〜1.25である、請求項9に記載の顆粒剤。
【請求項11】
日本薬局方粒度測定法第2法ふるい分け法記載の方法における200号篩を通過する粉末の量が、11.6%以下である、請求項9又は10に記載の顆粒剤。
【請求項12】
小分けして用いるための顆粒剤である、請求項9〜11のいずれか一項に記載の顆粒剤。
【請求項13】
メラトニンを、0.05〜1.0重量%含有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の顆粒剤。
【請求項14】
口内溶解性を有するコア粒子が、水溶性の糖又は糖アルコールを主成分とする粒子である、請求項9〜13のいずれか一項に記載の顆粒剤。
【請求項15】
口内溶解性を有するコア粒子が、マンニトール、トレハロース、エリスリトール、ショ糖、又は粉糖から選択される少なくとも1種を主成分とする粒子である、請求項14に記載の顆粒剤。
【請求項16】
メラトニンの投与量を、その効果及び/又は副作用の発現状況を考慮して1mg〜4mg相当の範囲で増減させて用いる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の顆粒剤。
【請求項17】
メラトニンの投与量の増量を、少なくとも1週間の間隔をあけて行う、請求項16に記載の顆粒剤。
【請求項18】
メラトニンの投与量の増量を、1mg相当から1.0mg相当単位で行う、請求項17に記載の顆粒剤。
【請求項19】
メラトニンの投与量を、1mg相当から1.5mg相当へ増量する、又は1mg相当から2.0mgへ増量する、請求項17に記載の顆粒剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラトニンを含有する入眠困難改善用の顆粒剤に関する。詳しくは、本発明は、小児期の神経発達症に伴う睡眠障害を対象とし、メラトニン1〜4mg相当を、1日1回就寝前に経口投与して用いる入眠困難改善用の顆粒剤に関する。
【0002】
また本発明は、メラトニン含有顆粒剤及びその製造方法に関する。詳しくは、メラトニンを含有し、服用が容易で即放性を有する新規の顆粒剤並びに当該顆粒剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
調査結果によると、本邦において何らかの睡眠障害を習慣的に経験している児童の割合は、約3割に達すると言われている。特に、自閉スペクトラム症をはじめとする神経発達症を有する児童では、睡眠障害の頻度は50%以上に上るとも言われている。小児の睡眠障害は、小児の発達や集団生活としての就学に影響を与えるのみならず、養育者や家族の心身の負担やストレスの原因にもなる。そのため、小児の睡眠障害は、医療上の重要課題である。
【0004】
一方、脊椎動物の松果体から分泌される生体内ホルモンであるメラトニン(N−アセチル−5−メトキシトリプタミン)は、睡眠や生体内リズムの調節に関与していることが知られており、これまでも、睡眠障害の治療に用いられてきた。神経発達症を有する患者に対する睡眠障害治療におけるメラトニンの使用実態調査によると、メラトニンは幅広い年齢層に対して使用されており、その投与量も多岐にわたっている(非特許文献1、非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】中川栄二「小児自閉性障害の薬物治療の効果」最新精神医学,18巻1号,2013年,p.13〜21
【非特許文献2】福永道郎 他「Melatonin,remelteon小児使用例に関する全国調査」脳と発達,47巻,2015年,p.23〜27
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メラトニンは睡眠障害の治療に広く用いられているものの、その投与量は用いる医師等の違いにより大きく異なっており、十分な効果を得るための適切な条件は開示されていない。また、同じ量を投与しても、患者によっては効き目が十分でない、あるいは、ごくまれに傾眠などの副作用を発現する場合もある。特に小児に対して用いる際には、安全性が十分に担保されていることが要求される。
【0007】
また、これまでメラトニン製剤としては、錠剤及び口腔内崩壊錠のみが用いられていたが、メラトニン製剤は、幅広い年齢や症状を有する対象の睡眠障害の治療や緩和に用いられることが考えられる。そのため、高齢者や乳幼児、あるいは錠剤を嚥下しにくい症状を呈する対象の睡眠障害の治療や緩和に対しては、より服用しやすい顆粒剤が望まれる。特に小児の入眠困難に対しては、安全性と効果に十分に配慮した用法を伴う製剤が望まれる。しかしながら、これまでに、そのような薬剤は知られていなかった。
【0008】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、小児に対して安全かつ十分な効果を奏するような使用方法を伴う入眠困難改善用の顆粒剤を提供することを目的とするものである。さらに本発明は、幅広い年齢及び症状の対象が服用しやすいメラトニン含有顆粒剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、以下の[1]〜[43]である。
【0010】
[1]メラトニンを有効成分として含有する入眠困難改善用の顆粒剤であって、口内溶解性を有するコア粒子とメラトニンを、結合剤の存在下で混合してメラトニン素顆粒を得る造粒工程と、造粒工程で得られたメラトニン素顆粒を乾燥させる乾燥工程を含む方法によって製造され、小児期の神経発達症に伴う睡眠障害を対象とし、メラトニン1〜4mg相当を就寝前に1日1回経口投与して用いることを特徴とする顆粒剤。
[2]造粒工程が、口内溶解性を有するコア粒子に、コア粒子が完全溶解しない条件でメラトニンの懸濁液又は溶液を添加して混合する工程である、[1]に記載の顆粒剤。
[3]造粒工程において用いるメラトニンの懸濁液又は溶液が、メラトニンの懸濁液又はメラトニンをエタノール又はエタノールと水の混液に溶解した液である、[2]に記載の顆粒剤。
【0011】
[4]メラトニンを有効成分として含有する入眠困難改善用の顆粒剤であって、口内溶解性を有するコア粒子とメラトニンを、結合剤の存在下で混合しつつ調製物の乾燥を行う造粒乾燥工程を含む方法によって製造され、小児期の神経発達症に伴う睡眠障害を対象とし、メラトニン1〜4mg相当を就寝前に1日1回経口投与して用いることを特徴とする顆粒剤。
[5]造粒乾燥工程が、口内溶解性を有するコア粒子に、コア粒子が完全溶解しない条件でメラトニンの懸濁液又は溶液及び結合剤を添加し、得られた調製物を混合しつつ乾燥させる工程である、[4]に記載の顆粒剤。
[6]造粒乾燥工程において用いるメラトニンの懸濁液又は溶液が、メラトニンの懸濁液又はメラトニンをエタノール又はエタノールと水の混液に溶解した液である、[5]に記載の顆粒剤。
[7]造粒乾燥工程を、流動層造粒法を用いて行う、[4]〜[6]のいずれかに記載の顆粒剤。
[8]造粒乾燥工程におけるメラトニンの添加が、流動層内において前記コア粒子に、メラトニンの懸濁液又は溶液を噴霧することによって行われるものである、[7]に記載の顆粒剤。
[9]結合剤が、粘度6.0〜400mPa・sの溶液として供される、[1]〜[8]のいずれかに記載の顆粒剤。
[10]結合剤が、ヒドロキシプロピルセルロース溶液又はヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液である、[9]に記載の顆粒剤。
[11]口内溶解性を有するコア粒子が、水溶性の糖又は糖アルコールを主成分とする粒子である、[1]〜[10]のいずれかに記載の顆粒剤。
[12]口内溶解性を有するコア粒子が、マンニトール、トレハロース、エリスリトール、ショ糖、又は粉糖から選択される少なくとも1種を主成分とする粒子である、[11]に記載の顆粒剤。
【0012】
[13]メラトニンを有効成分として含有する入眠困難改善用の顆粒剤であって、口内溶解性を有するコア粒子にメラトニンを結合させた粒子を含み、日本薬局方溶出試験第2法(パドル法、溶媒:水、容量:900mL、回転数:50rpm)におけるメラトニンの溶出15分値が、80%以上であり、小児期の神経発達症に伴う睡眠障害を対象とし、メラトニン1〜4mg相当を就寝前に1日1回経口投与して用いることを特徴とする顆粒剤。
[14]Hausner比が1.00〜1.25である、[13]に記載の顆粒剤。
[15]コア粒子とメラトニンとの結合に用いる結合剤が、必要量を造粒に用いる際に、粘度6.0〜400mPa・sである、[13]又は[14]に記載の顆粒剤。
[16]結合剤が、ヒドロキシプロピルセルロース、又は、ヒドロキシプロビルメチルセルロースである、[15]に記載の顆粒剤。
[17]メラトニンを、0.05〜1.0重量%含有する、[1]〜[16]のいずれかに記載の顆粒剤。
[18]口内溶解性を有するコア粒子が、水溶性の糖又は糖アルコールを主成分とする粒子である、[13]〜[17]のいずれかに記載の顆粒剤。
[19]口内溶解性を有するコア粒子が、マンニトール、トレハロース、エリスリトール、ショ糖、又は粉糖から選択される少なくとも1種を主成分とする粒子である、[18]に記載の顆粒剤。
[20]メラトニンの投与量を、その効果及び/又は副作用の発現状況を考慮して1mg〜4mg相当の範囲で増減させて用いる、[1]〜[19]のいずれかに記載の顆粒剤。
[21]メラトニンの投与量の増量を、少なくとも1週間の間隔をあけて行う、[20]に記載の顆粒剤。
[22]メラトニンの投与量の増量を、1mg相当から1.0mg相当単位で行う、[21]に記載の顆粒剤。
[23]メラトニンの投与量を、1mg相当から1.5mg相当へ増量する、又は1mg相当から2.0mgへ増量する、[21]に記載の顆粒剤。
【0013】
[24]口内溶解性を有するコア粒子とメラトニンを、結合剤の存在下で混合してメラトニン素顆粒を得る造粒工程と、造粒工程で得られたメラトニン素顆粒を乾燥させる乾燥工程を含むことを特徴とする、メラトニン含有顆粒剤の製造方法。
[25]造粒工程が、口内溶解性を有するコア粒子に、コア粒子が完全溶解しない条件でメラトニンの懸濁液又は溶液を添加して混合する工程である、[24]に記載の製造方法。
[26]造粒工程において用いるメラトニンの懸濁液又は溶液が、メラトニンの懸濁液又はメラトニンをエタノール又はエタノールと水の混液に溶解した液である、[25]に記載の製造方法。
【0014】
[27]口内溶解性を有するコア粒子とメラトニンを、結合剤の存在下で混合しつつ調製物の乾燥を行う造粒乾燥工程を含むことを特徴とする、メラトニン含有顆粒剤の製造方法。
[28]造粒乾燥工程が、口内溶解性を有するコア粒子に、コア粒子が完全溶解しない条件でメラトニンの懸濁液又は溶液及び結合剤を添加し、得られた調製物を混合しつつ乾燥させる工程である、[27]に記載の製造方法。
[29]造粒乾燥工程において用いるメラトニンの懸濁液又は溶液が、メラトニンの懸濁液又はメラトニンをエタノール又はエタノールと水の混液に溶解した液である、[28]に記載の製造方法。
[30]造粒乾燥工程を、流動層造粒法を用いて行う、[27]〜[29]のいずれかに記載の製造方法。
[31]造粒乾燥工程におけるメラトニンの添加が、流動層内において前記コア粒子に、メラトニンの懸濁液又は溶液を噴霧することによって行われるものである、[30]に記載の製造方法。
[32]結合剤が、粘度6.0〜400mPa・sの溶液として供される、[24]〜[31]のいずれかに記載の製造方法。
[33]結合剤が、ヒドロキシプロピルセルロース溶液又はヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液である、[32]に記載の製造方法。
[34]口内溶解性を有するコア粒子が、水溶性の糖又は糖アルコールを主成分とする粒子である、[24]〜[33]のいずれかに記載の製造方法。
[35]口内溶解性を有するコア粒子が、マンニトール、トレハロース、エリスリトール、ショ糖、又は粉糖から選択される少なくとも1種を主成分とする粒子である、[34]に記載の製造方法。
【0015】
[36][24]〜[35]のいずれかに記載の方法によって製造された、メラトニン含有顆粒剤。
【0016】
[37]口内溶解性を有するコア粒子にメラトニンを結合させた粒子を含み、日本薬局方溶出試験第2法(パドル法、溶媒:水、容量:900mL、回転数:50rpm)におけるメラトニンの溶出15分値が、80%以上である、メラトニン含有顆粒剤。
[38]Hausner比が1.00〜1.25である、[37]に記載の顆粒剤。
[39]コア粒子とメラトニンとの結合に用いる結合剤が、必要量を造粒に用いる際に、粘度6.0〜400mPa・sである、[37]又は[38]に記載の顆粒剤。
[40]前記結合剤が、ヒドロキシプロピルセルロース、又は、ヒドロキシプロビルメチルセルロースである、[39]に記載の顆粒剤。
[41]メラトニンを、0.05〜1.0重量%含有する、[36]〜[40]のいずれかに記載の顆粒剤。
[42]口内溶解性を有するコア粒子が、水溶性の糖又は糖アルコールを主成分とする粒子である、[36]〜[40]のいずれかに記載の顆粒剤。
[43]口内溶解性を有するコア粒子が、マンニトール、トレハロース、エリスリトール、ショ糖、又は粉糖から選択される少なくとも1種を主成分とする粒子である、[42]に記載の顆粒剤。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、小児に対する安全性を担保し、かつ十分な効果を得ることが可能な、小児期の神経発達症に伴う睡眠障害を対象とする入眠困難改善用の顆粒剤を提供することが可能となる。さらに本発明の入眠困難改善用の顆粒剤は、入眠前に小児が水なしで容易に、服用・嚥下できるため、本発明により、小児の夜尿症を防止することも可能となる。
【0018】
また本発明により、有効成分としてメラトニンを含有する顆粒剤を提供することが可能となる。また本発明により、流動性及び溶出性に優れたメラトニン含有顆粒剤を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】睡眠日誌のデータに基づいて算出された入眠潜時を示すグラフである。
図2】睡眠計測活動量計のデータに基づいて算出された入眠潜時を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
本発明の入眠困難改善用の顆粒剤は、メラトニンを有効成分として含有する。
【0022】
本発明の入眠困難改善用の顆粒剤は、小児期の神経発達症に伴う睡眠障害を対象とする。本明細書において、小児期とは、18歳未満の児童を指す。
【0023】
本発明の一態様は、口内溶解性を有するコア粒子とメラトニンを、結合剤の存在下で混合してメラトニン素顆粒を得る造粒工程と、造粒工程で得られたメラトニン素顆粒を乾燥させる乾燥工程を含む方法によって製造された入眠困難改善用の顆粒剤である。
【0024】
ここで造粒工程は、コア粒子にメラトニンを添加し、メラトニンと同時に又は別に添加された結合剤の存在下で、混合するといった方法により行うことができる。さらに造粒工程は、口内溶解性を有するコア粒子に、コア粒子が完全溶解しない条件でメラトニンの懸濁液又は溶液を添加して混合する工程とすることができる。
【0025】
また乾燥工程は、得られた素顆粒を攪拌しながら加温し、所望により陰圧を付加して試料を乾燥させるといった方法とすることができる。
【0026】
本発明の一態様は、口内溶解性を有するコア粒子とメラトニンを結合剤の存在下で混合しつつ乾燥させる造粒乾燥工程を含む製造方法によって製造された入眠困難改善用の顆粒剤である。
【0027】
ここで造粒乾燥工程は、コア粒子にメラトニンを添加し、メラトニンと同時に又は別に添加された結合剤の存在下で、所望により陰圧を付加しつつ温風等を用いて試料を混合させながら乾燥させるといった方法により行うことができる。さらに造粒乾燥工程は、口内溶解性を有するコア粒子に、コア粒子が完全溶解しない条件でメラトニンの懸濁液又は溶液及び結合剤を添加し、得られた調製物を混合しつつ乾燥させる工程とすることができる。
【0028】
造粒工程、乾燥工程、並びに造粒乾燥工程において、試料の温度は、同様の工程にて通常用いられる条件とすることができるが、各原料が変質(分解等)を起こさない条件とすることが好ましい。また、風量は、粉粒体が好ましい流動状態となるように流動層の差圧をコントロールすることにより、調整することができる。
【0029】
造粒工程、並びに造粒乾燥工程における、コア粒子へのメラトニンの添加は、種々の方法を用いることができる。例えば、メラトニンを固体のままコア粒子に添加する方法や、メラトニンの懸濁液又は溶液をコア粒子に添加する方法を用いることができる。これらの方法のうち、メラトニンの懸濁液又は溶液をコア粒子に添加する方法は、メラトニンとコア粒子をより均一に混合しやすくなるため、より好ましい。ここで、メラトニンの懸濁液は、メラトニンを分散させることができる限り特に限定する必要はないが、メラトニンの水懸濁液又はメラトニンを水とアルコールの混液(アルコール/水=0.5/1〜2/1、好ましくは1/1)に懸濁させた液を好ましく用いることができる。またメラトニンの溶液は、メラトニンを溶解させることができる限り特に限定する必要はないが、メラトニンのエタノール溶液又はメラトニンをエタノールと水の混液に溶解させた液を好ましく用いることができる。
【0030】
造粒工程、並びに造粒乾燥工程における、コア粒子への結合剤の添加も、メラトニンの添加と同様に、種々の方法を用いることができる。例えば、結合剤を固体のまま粒子に添加する方法や、溶液又は懸濁液の状態で添加することができる。溶液の場合は、好ましくは水溶液を用いることができる。
【0031】
造粒工程、並びに造粒乾燥工程において、結合剤を添加するタイミングは、コア粒子とメラトニンを混合させる際に系内に同時に存在させることができる限りにおいて、限定する必要はなく、すなわち「結合剤の存在下」であれば良く、メラトニンと同時にコア粒子に添加しても、メラトニンの添加とは別のタイミングでコア粒子に添加しても良い。例えば、メラトニンの添加に先立ってコア粒子に添加しても良く、メラトニンの添加後にコア粒子に添加しても良い。あるいは、メラトニン及び結合剤をエタノールと水の混液に溶解させた液をコア粒子に添加することにより、行っても良い。また、メラトニンと結合剤を共に固体のままコア粒子に添加して混合し、そこに溶媒を添加して造粒工程又は造粒乾燥工程に付すといった方法を用いても良い。
【0032】
結合剤は、例えばヒドロキシプロピルセルロースやヒプロメロースといった、顆粒剤の製造において通常用いられる種々の物質を用いることができる。好ましくは、造粒時において、粘度が60〜400mPa・s(日本薬局方 粘度測定法第2法、20℃)となるような物質を用いることができ、より好ましくは粘度が150〜400mPa・s(日本薬局方 粘度測定法第2法、20℃)となるような物質を用いることできる。この様な条件の結合剤を用いることにより、微末の発生が抑えられ、良好な流動性を有する顆粒剤を得ることできる。
【0033】
具体的には、GPS法(Gel Permeation Chromatography;ゲル浸透クロマトグラフィー法)による平均分子量140,000〜700,000であるヒドロキシプロピルセルロース又は重量平均分子量30,000〜60,000 のヒドロキシプロピルセルロースを好ましく用いることができ、GPS法による平均分子量500,000〜700,000であるヒドロキシプロピルセルロースをより好ましく用いることができる。
【0034】
造粒工程、並びに造粒乾燥工程において、メラトニンの懸濁液又は溶液を用いる場合の液量は、コア粒子が完全溶解しない液量とする。この場合の液量は、用いる溶媒に対するコア粒子の溶解度に関するデータに基づき、適宜調整することができる。好ましい態様において、懸濁液又は溶液の液量は、上述した結合剤に関する好ましい態様における条件を満たすべく、結合剤の粘度が60〜400mPa・sとなるように調整しても良い。この様な条件とすることにより、より微末が少なく、良好な流動性を有する顆粒剤を得ることができる。
【0035】
本発明の入眠困難改善用の顆粒剤の製造において、顆粒を篩分する工程や、軽質無水ケイ酸等の流動化剤を混合する工程等を、さらに含んでいても良い。
【0036】
本発明の入眠困難改善用の顆粒剤の製造において、通常顆粒剤の製造に用いる種々の装置を使用することができる。例えば、流動層造粒法や攪拌造粒法といった、顆粒剤製造において一般的に利用される方法にて実施することができる。流動層造粒法を用いる場合、造粒乾燥工程におけるメラトニンの添加は、流動層内で、コア粒子に、メラトニンの懸濁液又は溶液を噴霧することにより行うことができる。
【0037】
入眠困難改善用の顆粒剤の投与のタイミングは、就寝時に有効量のメラトニンが血中に移行するタイミングとすることができる。例えば、入床前30〜60分とすることができる。
【0038】
本発明に係る入眠困難改善用の顆粒剤の投与量は、メラトニン1mg相当から4mg相当までの範囲で増減して用いることができる。例えば、メラトニン1mg相当で入眠潜時が十分に短縮されない場合、患者の睡眠状態に対応して、投与量を1.5mg相当あるいは2mg相当等に増量する。逆に、例えばメラトニン4mg相当を服用している患者において、入眠潜時が十分に短いが、傾眠や頭痛等の副作用が確認された場合は、投与量を3mg相当や2mg相当に減量する。
【0039】
ここで、メラトニン投与量を増量する場合、患者ごとの睡眠状態を観察の上、増量する間隔を、少なくとも1週間あけることが望ましい。有効成分であるメラトニンは、催眠作用とともに概日リズムの位相シフトの作用も有することが知られており、睡眠衛生指導下での入眠潜時の短縮とそれに伴う入眠の時間帯の安定には1週間程度の期間が必要であると考えられるからである。一方で、上述したような安全性の問題を認めた場合は、投与量変更後1週間経過前であっても、直ちに投与量を減量しても良い。
【0040】
投与量増減について具体例を挙げると、メラトニン1mg相当を投与している患者において、効果が不十分な場合(例えば、入眠潜時が、50分以上となっている場合、あるいは、入眠潜時の短縮時間が平均して20分未満の場合等)は、メラトニンの投与量が十分ではないと判断して、メラトニン2mg相当に増量する。そして、その投与量で1週間以上継続して投与し、効果が得られていると判断された場合は、その投与量での投与を継続する。一方、投与量を増量しても効果が十分に得られない場合は、メラトニン3mg相当に増量する。そして同様にその投与量で1週間以上継続して投与し、効果の有無を確認する。これを、効果が確認されるまで、最大投与量がメラトニン4mg相当になるまで増量する。ここで、どの程度の量を増量するかは、患者の状態に応じて適宜調整することが可能である。
【0041】
一方、ある投与量(例えば、メラトニン4mg相当)において、看過できないような傾眠や頭痛等の副作用が確認された場合は、投与量を減らして(例えば、メラトニン3mg相当等)、投与を継続する。そしてその投与量にて再度患者の状態を観察の上、必要に応じて投与量を増減する。
【0042】
本発明の一態様は、口内溶解性を有するコア粒子にメラトニンを結合させた粒子を含み、日本薬局方溶出試験第2法(パドル法、溶媒:水、容量:900mL、回転数:50rpm)におけるメラトニンの溶出15分値が、80%以上である、メラトニンを含有する入眠困難改善用の顆粒剤である。
【0043】
このような態様により、経口投与した際に、口内で素早く溶解させることができるため、入眠前に小児が水なしで容易に、服用・嚥下できる。そのため、夜尿症を防止しつつ、十分な効果を得ることが可能な、小児期の神経発達症に伴う睡眠障害を対象とする入眠困難改善用の顆粒剤を提供することが可能となる。
【0044】
好ましい態様において、本発明に係る顆粒剤は、Hausner比が1.00〜1.25とする。「Hausner比」とは、日本薬局方に規定される粉体の流動性の指標であり、1.00〜1.11の場合に流動性の程度は極めて良好と、1.12〜1.18の場合に良好と、1.19〜1.25の場合にやや良好とされる。よってHausner比を1.00〜1.25とすることにより、良好な流動性が得られるため、製造現場や薬局等における小分けや服用時において扱いが容易になるといった効果を奏する。
【0045】
本発明において、「コア粒子」という語は、本発明に係る顆粒製剤を構成する各々の粒子の略中心に位置して核となる粒子をいう。本発明において、コア粒子は、口内溶解性を有する粒子が用いられる。「口内溶解性を有する粒子」とは、口内で唾液により溶解する粒子であり、それにより顆粒剤の即放性、特にメラトニンの溶出15分値を80%以上とすることに貢献しうる粒子を意味する。
【0046】
好ましい態様において、口内溶解性を有するコア粒子としては、水溶性の糖又は糖アルコールを主成分とする粒子を用いることができ、マンニトール、トレハロース、エリスリトール、ショ糖、粉糖から選択される少なくとも1種の物質を主成分とした粒子(これらの物質単体も含む)を好ましく用いることができる。この中でも特に、マンニトール、トレハロース、又はエリスリトールから選択される1種が好ましく用いられ、マンニトールが特に好ましく用いられる。コア粒子として水溶性の糖又は糖アルコールを用いることにより、得られた顆粒剤が口内において素早く溶解するとともに、程よい甘味及び/又は清涼感を有していることから、特に高齢者や乳幼児においても、服用が容易になるといった優れた効果が得られる。
【0047】
またコア粒子の形状は、特に限定されないが、略球状の粒子を好ましいものとして用いることができる。粒子の形状が球形に近いほど、メラトニンを均一に結合させることができ、品質の安定に貢献する。
【0048】
結合剤は、例えばヒドロキシプロピルセルロースやヒプロメロースといった、顆粒剤の製造において通常用いられる種々の物質を用いることができる。好ましくは、造粒時において、粘度が60〜400mPa・s(日本薬局方 粘度測定法第2法、20℃)となるような物質を用いることができ、より好ましくは粘度が150〜400mPa・s(日本薬局方 粘度測定法第2法、20℃)となるような物質を用いることできる。この様な条件の結合剤を用いることにより、微末(200号篩(75μm)の篩を通過する粉末)の発生が抑えられ、良好な流動性を有する顆粒剤を得ることできる。
【0049】
具体的には、GPS法(Gel Permeation Chromatography;ゲル浸透クロマトグラフィー法)による平均分子量が140,000〜700,000であるヒドロキシプロピルセルロース、又は重量平均分子量が30,000〜60,000のヒドロキシプロピルセルロースを好ましく用いることができ、GPS法による平均分子量500,000〜700,000であるヒドロキシプロピルセルロースをより好ましく用いることができる。
【0050】
本発明の入眠障害改善用の顆粒剤において、メラトニンの含有量は、必要量を投与する際に、扱いやすい分量となるような濃度である限りにおいて、特に限定する必要はない。好ましくは、0.05〜1.0重量%のメラトニン含量とすることができる。
【0051】
本発明の入眠障害改善用の顆粒剤は、小児における有効性及び安全性が確認された投与量の範囲内で、かつ、患者の状態に応じて投与量を適宜増減して用いることが可能なため、安全かつ効果的に小児期の神経発達症に伴う睡眠障害を改善することができる。
【0052】
本発明の一態様は、口内溶解性を有するコア粒子にメラトニンを結合させた粒子を含み、日本薬局方溶出試験第2法(パドル法、溶媒:水、容量:900mL、回転数:50rpm)におけるメラトニンの溶出15分値が、80%以上である、メラトニン含有顆粒剤である。
【0053】
このような態様により、経口投与した際に口内で素早く溶解させることができるので、メラトニン含有顆粒剤を、有効な睡眠障害改善剤として用いることができる。
【0054】
好ましい態様において、本発明に係る顆粒剤は、Hausner比が1.00〜1.25とする。「Hausner比」とは、日本薬局方に規定される粉体の流動性の指標であり、1.00〜1.11の場合に流動性の程度は極めて良好と、1.12〜1.18の場合に良好と、1.19〜1.25の場合にやや良好とされる。よってHausner比を1.00〜1.25とすることにより、良好な流動性が得られるため、製造現場や薬局等における小分けや服用時において扱いが容易になるといった効果を奏する。
【0055】
本発明において、「コア粒子」という語は、本発明に係る顆粒製剤を構成する各々の粒子の略中心に位置して核となる粒子をいう。本発明において、コア粒子は、口内溶解性を有する粒子が用いられる。「口内溶解性を有する粒子」とは、口内で唾液により溶解する粒子であり、それにより顆粒剤の即放性、特にメラトニンの溶出15分値を80%以上とすることに貢献しうる粒子を意味する。
【0056】
好ましい態様において、口内溶解性を有するコア粒子としては、水溶性の糖又は糖アルコールを主成分とする粒子を用いることができ、マンニトール、トレハロース、エリスリトール、ショ糖、粉糖から選択される少なくとも1種の物質を主成分とした粒子(これらの物質単体も含む)を好ましく用いることができる。この中でも特に、マンニトール、トレハロース、又はエリスリトールから選択される1種が好ましく用いられ、マンニトールが特に好ましく用いられる。コア粒子として水溶性の糖又は糖アルコールを用いることにより、得られたメラトニン含有顆粒剤が口内において素早く溶解するとともに、程よい甘味及び/又は清涼感を有していることから、特に高齢者や乳幼児においても、服用が容易になるといった優れた効果が得られる。
【0057】
またコア粒子の形状は、特に限定されないが、略球状の粒子を好ましいものとして用いることができる。粒子の形状が球形に近いほど、メラトニンを均一に結合させることができ、品質の安定に貢献する。
【0058】
結合剤は、例えばヒドロキシプロピルセルロースやヒプロメロースといった、顆粒剤の製造において通常用いられる種々の物質を用いることができる。好ましくは、造粒時において、粘度が60〜400mPa・s(日本薬局方 粘度測定法第2法、20℃)となるような物質を用いることができ、より好ましくは粘度が150〜400mPa・s(日本薬局方 粘度測定法第2法、20℃)となるような物質を用いることできる。この様な条件の結合剤を用いることにより、微末(200号篩(75μm)の篩を通過する粉末)の発生が抑えられ、良好な流動性を有するメラトニン含有顆粒剤を得ることできる。
【0059】
具体的には、GPS法(Gel Permeation Chromatography;ゲル浸透クロマトグラフィー法)による平均分子量が140,000〜700,000であるヒドロキシプロピルセルロース、又は重量平均分子量が30,000〜60,000のヒドロキシプロピルセルロースを好ましく用いることができ、GPS法による平均分子量500,000〜700,000であるヒドロキシプロピルセルロースをより好ましく用いることができる。
【0060】
本発明に係る顆粒剤において、メラトニンの含有量は、必要量を投与する際に、扱いやすい分量となるような濃度である限りにおいて、特に限定する必要はない。好ましくは、0.05〜1.0重量%のメラトニン含量とすることができる。
【0061】
本発明に係るメラトニン含有顆粒剤は、安全かつ有効な入眠困難改善剤として、通常の顆粒剤やドライシロップと同様の方法により、経口投与にて用いることができ、例えば以下に示す製造方法により、製造することができる。
【0062】
本発明の一態様は、口内溶解性を有するコア粒子とメラトニンを、結合剤の存在下で混合してメラトニン素顆粒を得る造粒工程と、造粒工程で得られたメラトニン素顆粒を乾燥させる乾燥工程を含むことを特徴とする、メラトニン含有顆粒剤の製造方法である。
【0063】
ここで造粒工程は、コア粒子にメラトニンを添加し、メラトニンと同時に又は別に添加された結合剤の存在下で、混合するといった方法により行うことができる。さらに造粒工程は、口内溶解性を有するコア粒子に、コア粒子が完全溶解しない条件でメラトニンの懸濁液又は溶液を添加して混合する工程とすることができる。
【0064】
また乾燥工程は、得られた素顆粒を攪拌しながら加温し、所望により陰圧を付加して試料を乾燥させるといった方法とすることができる。
【0065】
本発明の一態様は、口内溶解性を有するコア粒子とメラトニンを結合剤の存在下で混合しつつ乾燥させる造粒乾燥工程を含むことを特徴とする、メラトニン含有顆粒剤の製造方法である。
【0066】
ここで造粒乾燥工程は、コア粒子にメラトニンを添加し、メラトニンと同時に又は別に添加された結合剤の存在下で、所望により陰圧を付加しつつ温風等を用いて試料を混合させながら乾燥させるといった方法により行うことができる。さらに造粒乾燥工程は、口内溶解性を有するコア粒子に、コア粒子が完全溶解しない条件でメラトニンの懸濁液又は溶液及び結合剤を添加し、得られた調製物を混合しつつ乾燥させる工程とすることができる。
【0067】
造粒工程、乾燥工程、並びに造粒乾燥工程において、試料の温度は、同様の工程にて通常用いられる条件とすることができるが、各原料が変質(分解等)を起こさない条件とすることが好ましい。また、風量は、粉粒体が好ましい流動状態となるように流動層の差圧をコントロールすることにより、調整することができる。
【0068】
造粒工程、並びに造粒乾燥工程における、コア粒子へのメラトニンの添加は、種々の方法を用いることができる。例えば、メラトニンを固体のままコア粒子に添加する方法や、メラトニンの懸濁液又は溶液をコア粒子に添加する方法を用いることができる。これらの方法のうち、メラトニンの懸濁液又は溶液をコア粒子に添加する方法は、メラトニンとコア粒子をより均一に混合しやすくなるため、より好ましい。ここで、メラトニンの懸濁液は、メラトニンを分散させることができる限り特に限定する必要はないが、メラトニンの水懸濁液又はメラトニンを水とアルコールの混液(アルコール/水=0.5/1〜2/1、好ましくは1/1)に懸濁させた液を好ましく用いることができる。またメラトニンの溶液は、メラトニンを溶解させることができる限り特に限定する必要はないが、メラトニンのエタノール溶液又はメラトニンをエタノールと水の混液に溶解させた液を好ましく用いることができる。
【0069】
造粒工程、並びに造粒乾燥工程における、コア粒子への結合剤の添加も、メラトニンの添加と同様に、種々の方法を用いることができる。例えば、結合剤を固体のまま粒子に添加する方法や、溶液又は懸濁液の状態で添加することができる。溶液の場合は、好ましくは水溶液を用いることができる。
【0070】
造粒工程、並びに造粒乾燥工程において、結合剤を添加するタイミングはコア粒子とメラトニンを混合させる際に系内に同時に存在させることができる限りにおいて、限定する必要はなく、すなわち「結合剤の存在下」であれば良く、メラトニンと同時にコア粒子に添加しても、メラトニンの添加とは別のタイミングでコア粒子に添加しても良い。例えば、メラトニンの添加に先立ってコア粒子に添加しても良く、メラトニンの添加後にコア粒子に添加しても良い。あるいは、メラトニン及び結合剤をエタノールと水の混液に溶解させた液をコア粒子に添加することにより、行っても良い。また、メラトニンと結合剤を共に固体のままコア粒子に添加して混合し、そこに溶媒を添加して造粒工程又は造粒乾燥工程に付すといった方法を用いても良い。
【0071】
結合剤は、前記同様、例えばヒドロキシプロピルセルロースやヒプロメロースといった、顆粒剤の製造において通常用いられる種々の物質を用いることができる。好ましくは、造粒時において、粘度が60〜400mPa・s(日本薬局方 粘度測定法第2法、20℃)となるような物質を用いることができ、より好ましくは粘度が150〜400mPa・s(日本薬局方 粘度測定法第2法、20℃)となるような物質を用いることできる。この様な条件の結合剤を用いることにより、微末の発生が抑えられ、良好な流動性を有するメラトニン含有顆粒剤を得ることできる。
【0072】
具体的には、GPS法(Gel Permeation Chromatography;ゲル浸透クロマトグラフィー法)による平均分子量140,000〜700,000であるヒドロキシプロピルセルロース又は重量平均分子量30,000〜60,000 のヒドロキシプロピルセルロースを好ましく用いることができ、GPS法による平均分子量500,000〜700,000であるヒドロキシプロピルセルロースをより好ましく用いることができる。
【0073】
造粒工程、並びに造粒乾燥工程において、メラトニンの懸濁液又は溶液を用いる場合の液量は、コア粒子が完全溶解しない液量とする。この場合の液量は、用いる溶媒に対するコア粒子の溶解度に関するデータに基づき、適宜調整することができる。好ましい態様において、懸濁液又は溶液の液量は、上述した結合剤に関する好ましい態様における条件を満たすべく、結合剤の粘度が60〜400mPa・sとなるように調整しても良い。この様な条件とすることにより、より微末が少なく、良好な流動性を有するメラトニン含有顆粒剤を得ることができる。
【0074】
本発明に係る製造方法は、得られた顆粒を篩分する工程や、得られた顆粒に軽質無水ケイ酸等の流動化剤を混合する工程等を、さらに含んでいても良い。
【0075】
本発明に係る製造方法は、顆粒剤の製造に用いる種々の装置を用いる方法にて実施することができる。例えば、流動層造粒法や攪拌造粒法といった、顆粒剤製造において一般的に利用される方法にて実施することができる。流動層造粒法を用いる場合、造粒乾燥工程におけるメラトニンの添加は、流動層内で、コア粒子に、メラトニンの懸濁液又は溶液を噴霧することにより行うことができる。
【実施例】
【0076】
以下に具体的な実施形態を挙げて本発明を説明するが、本発明はその実施形態に限定されるものではなく、それらにおける様々な変更及び改変が当業者によって、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく実行され得ることが理解される。
【0077】
試料の調製
(1)1%メラトニン顆粒
D−マンニトール19.4kg、メラトニン0.2kgを撹拌造粒混合装置に投入し、無水エタノール2.02kg、精製水2.02kg及びヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、HPC−L)0.202kgの混液を加えて3分間造粒した。得られた造粒品を通気乾燥機に入れ、60℃で90分乾燥し、乾燥顆粒とした。乾燥顆粒を倍散篩過機(目開き:425μm)で篩分し、整粒顆粒とした。得られた整粒顆粒10.0kgを分取し、軽質無水ケイ酸0.101kgを加えて混合後、再度、倍散篩過機(目開き:425μm)で篩分して1%メラトニン顆粒剤を得た。
【0078】
(2)0.2%メラトニン顆粒
メラトニン0.08kgを無水エタノール9.8kgに溶解した液に、精製水9.8kg及びヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、HPC−M)0.4kgを加えて溶解させ、メラトニン溶液とした。D−マンニトール39.12kgを流動層造粒乾燥機に入れ、これに、上記で調製したメラトニン溶液全量を噴霧した。さらに、50%エタノール1kgを噴霧し、恒量に達するまで乾燥させた。得られた粒子を30メッシュのふるいで篩分し、軽質無水ケイ酸0.4kgを加えて混合することにより、0.2%メラトニン顆粒剤を得た。
【0079】
(3)プラセボ顆粒
D−マンニトール19.6kgを撹拌造粒混合装置に投入し、無水エタノール2.02kg、精製水2.02kg及びヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、HPC−L)0.202kgの混液を加えて3分間造粒した。得られた造粒品を通気乾燥機に入れ、60℃で90分乾燥し、乾燥顆粒とした。乾燥顆粒を倍散篩過機(目開き:425μm)で篩分し、整粒顆粒とした。得られた整粒顆粒10.0kgを分取し、軽質無水ケイ酸0.101kgを加えて混合後、再度、倍散篩過機(目開き:425μm)で篩分してプラセボ顆粒を得た。
【0080】
比較例1
健康成人女性6名(20〜38才、平均28.7才)に対し、1%メラトニン顆粒0.5g(メラトニン5mg相当)を空腹時に経口投与した。その結果、4名の被験者において、頭痛の症状が確認された。
【0081】
実施例1−1:種々のメラトニン投与量における効果と安全性の確認
DSM−5 (Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition)の神経発達症(知的能力障害群、コミュニケーション症群、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、限局性学習症、運動症群、他の神経発達症群)を有し、かつ睡眠障害を有する小児(年齢9〜15才、平均12.7才)13名を、被験者とした。それぞれの被験者に、5週にわたり、1週間ずつ、1%メラトニン顆粒とプラセボ顆粒を表1に記載の分量で組み合わせた被験物質を、1日1回、入床30〜60分前に、経口投与した。
【0082】
【表1】
【0083】
被験者ごとに記載した睡眠日誌及び睡眠計測活動量計の測定値に基づき、入眠潜時を算出した。ここで、睡眠日誌は、被験者の睡眠時の状況を記録した日誌であり、観察開始時から終了時まで毎日、被験者の就寝時及び起床時の状況(服薬時刻、入床時刻、入眠時刻、夜間起床回数、夜間起床から睡眠までの時間、覚醒時刻、離床時刻、昼寝の時間、寝る時刻になった時の入床への抵抗感、目が覚めた時の機嫌、起床後の眠気の強さ)を記録した日誌である。また、睡眠計測活動量計は、無線通信活動量計(株式会社エステラ製、形式FS−750又はFS760)を使用し、観察開始時から終了時まで、被験者の服のウエスト部分(できれば正面)に継続して装着し、被験者の活動量を測定した。
【0084】
入眠潜時の算出結果を、図1及び図2に示す。睡眠日誌のデータに基づいて算出された入眠潜時は、メラトニンの投与により大きく減少し、さらに、投与量の増加に伴い、減少する傾向が示された(図1)。また、睡眠計測活動量計のデータに基づいて算出された入眠潜時も、同様に、メラトニンの投与によって大きく減少し、データのばらつきはあるものの、全体として投与量の増加に伴い減少する傾向が示された。
【0085】
また、全ての被験者において、メラトニン4mg相当までの投与量において投与継続の妨げとなるような安全性の問題は認められなかった。以上の結果により、メラトニン4mg相当までの投与により、神経発達症を伴う小児の入眠困難症状を安全かつ有効に改善し得ることが確認された。
【0086】
実施例1−2:自閉スペクトラム症を有する小児に対する効果の確認
(1)プラセボからの入眠潜時短縮量の確認
DSM−5 (Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition)の自閉スペクトラム症を有する小児(6〜15才、平均11.2才)196名を、被験者とした。被験者を3群(A群:66名、B群:65名、C群:65名)に分け、表2に記載した分量でプラセボ顆粒と0.2%メラトニン顆粒を組み合わせた被験物質を、表2に記載した期間連続して、入床30〜60分前に、1日1回経口投与した。睡眠日誌のデータに基づいて入眠潜時を算出し、投与期間終了前7日間の平均を求めて、プラセボ投与時(2週間目)からの入眠潜時の短縮時間を評価した。
【0087】
【表2】
【0088】
A群(プラセボ投与)、B群(メラトニン1mg相当投与)及びC群(メラトニン4mg相当投与)における入眠潜時の短縮時間は、それぞれ平均−7.2分、−28.3分、−32.6分であり、メラトニンの投与によって、入眠潜時が有意に短縮されることが確認された。また、メラトニンの投与量が多い方が、入眠潜時がより短縮されることが確認された。
【0089】
一方、継続投与の妨げとなり得る副作用としては、C群(メラトニン4mg相当投与)において傾眠が1例観察されたものの、B群(メラトニン1mg相当投与)ではそのような副作用は確認されなかった。
【0090】
(2)症状に応じて増加等を行った場合の入眠困難改善効果の確認
上記(1)の試験に引き続き、症状に応じた投与量の変更を行った場合の、入眠困難改善効果の確認を行った。上記(1)の試験に参加した被験者に対し、0.2%メラトニン顆粒剤0.5g(メラトニン1mg相当)を開始用量として、被験物質を1日1回、入床30〜60分前に経口投与した。同一用量にて1週間以上継続して投与を行い、効果不十分で安全性が許容できる場合は、0.2%メラトニン顆粒剤1.0g(メラトニン2mg相当)、0.2%メラトニン顆粒剤2.0g(メラトニン4mg相当)へと順次増量することを可とした。ただし、増量の判断は、1週間以上の投与の後で行うこととした(1週間以内の増量の禁止)。また、増量後に安全性の問題を認めた場合は、元の投与量への減量を行った。試験期間は42日間とし、前半及び後半において、各被験者の入眠潜時の変化を評価した。
【0091】
その結果、試験前半及び後半における入眠潜時の短縮時間は、それぞれ平均−29.9分及び−31.9分であり、入眠困難を有意に改善できることが確認された。また、投薬に関連した副作用としては、傾眠が1例観察されたのみであった。
【0092】
以上の結果により、本発明に係る入眠困難改善用の顆粒剤により、安全かつ有効に自閉スペクトラム症を有する小児の入眠困難を改善させ得ることが確認された。
【0093】
実施例1−3:神経発達症を有する小児に対する効果の確認
DSM−5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition)の神経発達症(知的能力障害群、コミュニケーション症群、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、限局性学習症、運動症群、他の神経発達症群)を有し、かつ睡眠障害を有する小児(年齢6〜15才、平均10.4才)99名を、被験者とした。
【0094】
まず、初めの14日間は、プラセボ顆粒0.5gを、1日1回、入床15〜75分前に、各被験者に経口投与した。その後、0.2%メラトニン顆粒剤を被験物質として用い、0.5g(メラトニン1mg相当)を開始用量とし、効果不十分で安全性が許容できる場合は1.0g(メラトニン2mg相当)、2.0g(メラトニン4mg相当)へ順次増量できるといった投与量の条件にて、1日1回、入床15〜75分前に、被験者に経口投与した。増量の判断は、1週間以上の投与の後で行うこととした(1週間以内の増量の禁止)。また、増量後に安全性の問題を認めた場合は、元の用量への減量を行った。被験物質の投与期間は、182日とした。
【0095】
被験者における睡眠日誌のデータに基づいて入眠潜時を算出し、本発明に係る入眠困難改善用の顆粒剤の効果を評価した。被験物質の投与開始後における入眠潜時の短縮時間(プラセボ投与からの入眠潜時の短縮時間)の平均を、表3に示す。全ての観察時間点において、入眠潜時が30分以上短縮しており、プラセボ投与と比較して、有意な入眠潜時の短縮が認められた。また、長期にわたり、効果が持続することが確認された。
【0096】
【表3】
【0097】
さらに、本発明に係る入眠困難改善用の顆粒剤の有効性は入眠潜時短縮効果に限ったものではなく、睡眠日誌に記録された目が覚めた時の機嫌、起床後の眠気の強さ、及び寝る時間になった時の入床への抵抗感は、投与開始以降、後観察期まで継続して有意に改善していた。
【0098】
安全性に関しては、軽度の寝言及びいびきにより、被験者の申し出によって投薬を中止した例が1例あった他は、投与継続を妨げる直接の原因となる副作用は観察されなかった。
【0099】
以上の結果により、本発明に係る入眠困難改善用の顆粒剤は、長期の継続使用下においても、安全かつ効果的に神経発達症を有する小児に対する入眠困難を改善させ得ることが確認された。
【0100】
参考例1〜2:異なる結合剤を用いた製造検討
(1)顆粒試料の製造
粘度の異なる結合剤を用い、コア粒子をマンニトールとした場合における顆粒剤製造の基礎検討を行った。結合剤として、ヒプロメロース(信越化学工業株式会社製、TC−5E、参考例1)と、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、HPC−L、参考例2)を用いた実験を、それぞれ行った。
本実験は、粘度の異なる結合剤を用いて製造された顆粒剤における微末の発生有無の確認を目的としたため、メラトニンを用いずに行った。
【0101】
ヒプロメロース(信越化学工業株式会社製、TC−5E、参考例1)又はヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、HPC−L、参考例2)を精製水4.04kgに溶解した液をそれぞれ調整し、ヒプロメロース結合液及びヒロドキシプロピルセルロース結合液とした。
D−マンニトール19.4kgをバーチカルグラニュレーターに投入し、調整したヒプロメロース結合液全量を加え、5分間造粒した。得られた造粒品を倍散篩過機(スクリーン目開き:2575μm)で整粒し、湿式顆粒とした。
得られた湿式顆粒を60℃で60分間乾燥し、コーミルを用いて粉砕後、軽質無水ケイ酸0.2kgを添加して混合して顆粒試料を得た(参考例1)。
また、結合液としてヒドロキシプロピルセルロースを用いた以外は参考例1と同様の方法を用いて顆粒試料を調製し、参考例2とした。
【0102】
(2)微末量の測定
得られた各顆粒試料約50gを秤量し、日本薬局方 粒度測定法第2法ふるい分け法(機械的振とう法)記載の方法にて200号篩(75μm)の篩にかけ、200号篩を通過する粉末の量(微末の量)を測定した。その結果、微末の量はヒプロメロースを用いて製造した顆粒(参考例1)では33.9%、ヒドロキシプロピルセルロースを用いて製造した顆粒(参考例2)では13.9%であった。この結果から、何れの結合剤を用いた場合においても、微末の発生が抑えられた顆粒剤が製造でき、特にヒドロキシプロピルセルロースを用いた場合は、より微末の発生が抑えられることが確認された。
【0103】
実施例2−1〜2−4:種々のコア粒子を用いた製造検討
(1)メラトニン含有顆粒剤の製造
エタノール2.02kgと精製水2.02kgの混液にヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、HPC−L)0.202kgを溶解し、結合液とした。
表4に記載のコア粒子19.4kgとメラトニン0.2kgをバーチカルグラニュレーターに投入し、結合液全量を加えて5分間造粒した。得られた造粒品を倍散篩過機(スクリーン目開き:2575μm)で整粒し、湿式顆粒とした。
得られた湿式顆粒を60℃で60分間乾燥し、コーミルを用いて粉砕後、軽質無水ケイ酸0.2kgを添加して混合して各顆粒剤試料を得た。
【0104】
(2)微末量の測定
得られた各顆粒剤試料約50gを秤量し、日本薬局方 粒度測定法第2法ふるい分け法(機械的振とう法)記載の方法にて200号篩(75μm)の篩にかけ、200号篩を通過する粉末の量(微末の量)を測定した。
結果を、表4に示す。全てのコア粒子について、微末の発生が抑えられていることが確認された。
【0105】
【表4】
【0106】
実施例2−5:ヒドロキシプロピルセルロースを結合剤として用いて製造した顆粒剤の流動性評価
(1)メラトニン含有顆粒剤の製造
メラトニン0.08kgを無水エタノール9.8kgに溶解した液に、精製水9.8kg及びヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、HPC−M)0.4kgを加えて溶解させ、メラトニン溶液とした。D−マンニトール39.12kgを流動層造粒乾燥機に入れ、これに、上記で調製したメラトニン溶液全量を噴霧液量250mL/minの条件で噴霧した。さらに、50%エタノール1kgを同様の条件で噴霧し、流動層を稼働させて造粒しながら(吸気温度:80℃)、恒量に達するまで乾燥させた(乾燥終点:排気温度50℃)。得られた粒子を30メッシュのふるいで篩分し、軽質無水ケイ酸0.4kgを加えて混合することにより、0.2%メラトニン含有顆粒剤を得た。
【0107】
(2)微末量の測定
得られた顆粒剤約50gを秤量し、日本薬局方 粒度測定法第2法ふるい分け法(機械的振とう法)記載の方法にて200号篩(75μm)の篩にかけ、200号篩を通過する粉末の量(微末の量)を測定した。その結果、微末の量は3.76%であった。この結果から、本発明に係る製造方法により、微末の発生が十分に抑えられた顆粒剤が製造できることが確認された。
【0108】
(3)Hausner比の測定
得られた顆粒剤を100g秤量し、容量250mLのメスシリンダーに入れ、日本薬局方に記載された方法に従って、粗比容(かさ密度:mL/g)と密比容(タップ密度:mL/g)を求めた。得られた粗比容と密比容の値に基づき、Hausner比を算出した。求められたHausner比は1.06であり、極めて良好な流動性を有するものと判定された。
【0109】
実施例2−6:40kgスケールで製造した場合における流動性及び溶出性評価
(1)メラトニン含有顆粒剤の製造
メラトニン0.08kgを無水エタノール9.8kgに溶解した液に、精製水9.8kg及びヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、HPC−M)0.4kgを加えて溶解させ、メラトニン溶液とした。D−マンニトール39.12kgを流動層造粒乾燥機に入れ、これに、上記で調製したメラトニン溶液全量を噴霧液量250mL/minの条件で噴霧した。さらに、50%エタノール1kgを同様の条件で噴霧し、流動層を稼働させて造粒しながら(吸気温度:80℃)、恒量に達するまで乾燥させた(乾燥終点:排気温度50℃)。得られた粒子を30メッシュのふるいで篩分し、軽質無水ケイ酸0.4kgを加えて混合することにより、0.2%メラトニン含有顆粒剤を得た。
製造は合計3ロット行った。
【0110】
(2)微末量の測定
得られた顆粒剤約50gを秤量し、実施例2−5と同様の要領にて微末の量を求めた。製造した各ロットにおける微末量は、5.64%、5.80%、4.68%であった。この結果から、実施例2−5と同様に、微末の発生が十分に抑えられた顆粒剤が製造できることが確認された。
【0111】
(3)Hausner比の測定
得られた顆粒剤につき、実施例2−5と同様の要領にて、Hausner比を測定した。製造した各ロットにおけるHausner比の値は、1.24、1.11、1.11であり、やや良好又は極めて良好な流動性を有するものと判定された。
【0112】
(4)溶出性の測定
得られた顆粒剤につき、日本薬局方 溶出試験法第2法 パドル法(試験液:水、試験液量:900mL、回転数:50rpm)を用い、メラトニンの溶出15分値を求めた。メラトニンの溶出量の測定は、下記の条件の逆相液体クロマトグラフィーを用い、メラトニン標準物質溶液における測定値との比較に基づいて行った。
【0113】
液体クロマトグラフィー試験条件
測定波長:223nm
カラム:直径3μmのオクタデシルシリル化シリカゲルを、内径4.6mm、長さ75mmのステンレス管に充填したもの。
カラム温度:25℃
移動相:pH3.0の18mmol/Lリン酸塩緩衝液/液体クロマトグラフィー用アセトニトリル混液(4:1)
流量:毎分1.5mL
【0114】
各ロットにおける溶出15分値(平均値)は、それぞれ101%、102%、103%であり、十分な即放性を有していることが確認された。
【0115】
(5)顆粒中のメラトニン含量の確認
得られた各顆粒剤3gをメタノール/水(7:3)混液に溶解して500mLとした液を試料とし、溶出性試験と同様の条件による高速液体クロマトグラフィーにて分析を行った。メラトニン標準物質における分析値との比較に基づき、顆粒剤試料中のメラトニン含量を求めた。その結果、全てのロットにおいて、メラトニン含量は0.2%であった。
【0116】
実施例2−7:120kgスケールで製造した場合における流動性及び溶出性評価
(1)メラトニン含有顆粒剤の製造
メラトニン0.24kgを無水エタノール29.4kgに溶解した液に、精製水29.4kg及びヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、HPC−M)1.2kgを加えて溶解させ、メラトニン溶液とした。D−マンニトール117.36kgを流動層造粒乾燥機に入れ、これに、上記で調製したメラトニン溶液全量を噴霧液量250mL/minの条件で噴霧した。さらに、同様の条件にて50%エタノール3kgを噴霧し、流動層を稼働させて造粒しながら(吸気温度:80℃)、恒量に達するまで乾燥させた(乾燥終点:排気温度50℃)。得られた粒子を30メッシュのふるいで篩分し、軽質無水ケイ酸1.2kgを加えて混合することにより、0.2%メラトニン含有顆粒剤を得た。
【0117】
(2)微末量の測定
得られた顆粒剤約50gを秤量し、実施例2−5と同様の要領にて微末の量を求めた。微末量は、1.82%であった。
【0118】
(3)Hausner比の測定
得られた顆粒剤につき、実施例2−5と同様の要領にて、Hausner比を測定した。Hausner比の値は、1.10であり、極めて良好な流動性を有するものと判定された。
【0119】
(4)溶出性の測定
得られた顆粒剤につき、実施例2−6と同様の方法にて、溶出15分値を求めた。溶出15分値(平均値)は99.8%であり、十分な即放性を有していることが確認された。
【0120】
(5)顆粒中のメラトニン含量の確認
得られた顆粒剤につき、実施例2−6と同様の方法を用いてメラトニン含量を求めた。その結果、顆粒剤中のメラトニン含量は0.2%であった。
【0121】
実施例2−8:流動層造粒乾燥機におけるメラトニン溶液の噴霧液量の違いによる影響の検討
(1)メラトニン含有顆粒剤の製造
流動層造粒乾燥機内におけるD−マンニトールへのメラトニン溶液の噴霧液量を200mL/minとした以外は、実施例2−6と同様の条件とし、0.2%メラトニン含有顆粒剤を製造した。
【0122】
(2)微末量の測定
得られた顆粒剤約50gを秤量し、実施例2−5と同様の要領にて微末の量を求めた。微末量は4.00%であった。
【0123】
(3)Hausner比の測定
得られた顆粒剤につき、実施例2−5と同様の要領にて、Hausner比を測定した。Hausner比の値は、1.07であり、極めて良好な流動性を有するものと判定された。
【0124】
(4)溶出性の測定
得られた顆粒剤につき、実施例2−6と同様の方法にて、溶出15分値を求めた。溶出15分値(平均値)は98.2%であり、十分な即放性を有していることが確認された。
以上の結果より、微末量、流動性、溶出性共に、メラトニン溶液の噴霧液量を200mL/minに減じても、ほとんど影響を受けることなく、良好な顆粒剤を製造し得ることが確認された。
【0125】
実施例2−9:流動層造粒乾燥機におけるメラトニン溶液の噴霧液量の違いによる影響の検討
(1)メラトニン含有顆粒剤の製造
流動層造粒乾燥機内におけるD−マンニトールへのメラトニン溶液の噴霧液量を300mL/minとした以外は、実施例2−6と同様の条件とし、0.2%メラトニン含有顆粒剤を製造した。
【0126】
(2)微末量の測定
得られた顆粒剤約50gを秤量し、実施例2−5と同様の要領にて微末の量を求めた。微末量は5.52%であった。
【0127】
(3)Hausner比の測定
得られた顆粒剤につき、実施例2−5と同様の要領にて、Hausner比を測定した。Hausner比の値は、1.15であり、良好な流動性を有するものと判定された。
【0128】
(4)溶出性の測定
得られた顆粒剤につき、実施例2−6と同様の方法にて、溶出15分値を求めた。溶出15分値(平均値)は98.1%であり、十分な即放性を有していることが確認された。
以上の結果より、微末量、流動性、溶出性共に、メラトニン溶液の噴霧液量を300mL/minに増加させても、ほとんど影響を受けることなく、良好な顆粒剤を製造し得ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明により、小児期の神経発達症に伴う睡眠障害を、安全性を担保しつつ治療することが可能な入眠困難改善用の顆粒剤を提供することが可能となる。さらに本発明の入眠困難改善用の顆粒剤は、入眠前に小児が水なしで容易に、服用・嚥下できるため、本発明により、小児の夜尿症を防止することも可能となる。
【0130】
また本発明により、流動性及び溶出性に優れ、錠剤を嚥下しにくい症状を呈する対象、高齢者、あるいは乳幼児においても服用しやすく、適時に入眠効果を発揮する、メラトニン含有顆粒剤を提供することが可能となる。
【要約】
【課題】小児に対する安全性を担保し、かつ十分な効果を得ることが可能な、小児期の神経発達症に伴う睡眠障害を対象とする入眠困難改善用の顆粒剤、並びに安全性と効果に十分に配慮した用法を伴い、かつ乳幼児や小児が嚥下しやすい顆粒剤を提供すること。
【解決手段】口内溶解性を有するコア粒子とメラトニンを、結合剤の存在下で混合してメラトニン素顆粒を得る造粒工程と、造粒工程で得られたメラトニン素顆粒を乾燥させる乾燥工程を含む方法によって製造された、メラトニンを有効成分として含有する入眠困難改善用の顆粒剤であって、小児期の神経発達症に伴う睡眠障害を対象とし、メラトニン1〜4mg相当を就寝前に1日1回経口投与して用いることを特徴とする顆粒剤。
【選択図】図1
図1
図2