(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導電性フィルムを10cm×10cmにカットし、前記導電層を上面にして160℃で60分間加熱した後の4隅部の平均カール値Aと中央部のカール値Bとの差(A−B)は、30mm以下である請求項1に記載の導電性フィルム。
前記第1の防錆層は、SiOx(x=1.0〜2.0)からなり、前記第2の防錆層は、ニッケルと銅とチタンとを含む合金からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
前記導電層の厚みは、10nm〜300nmであり、前記第1の防錆層の厚みは、1nm〜20nmであり、前記第2の防錆層の厚みは、1nm〜20nmである請求項1〜8のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、導電層の両側に防錆層を形成して、導電層を防錆層で挟みこむサンドイッチ構造とすることで、導電性フィルムのカールの発生を抑制できるとともに、導電性フィルムの表面抵抗値を安定化できる導電性フィルム及びそれを用いた電磁波シールドシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構成を採用することにより上記目的を達成し得ることを見出し本発明にいたった。
【0008】
すなわち、本発明の導電性フィルムは、樹脂フィルムの少なくとも一方の面側に第1の防錆層と、導電層と、第2の防錆層とがこの順に形成された導電性フィルムであって、前記導電性フィルムを160℃で60分間加熱した後の表面抵抗値が、10Ω/□以下であることを特徴とする。なお、本発明における各種の物性値は、実施例等において採用する方法により測定される値である。
【0009】
本発明では、前述のように導電層の両側に防錆層を形成して、導電層を防錆層で挟みこむサンドイッチ構造として、導電性フィルムを160℃で60分間加熱した後の表面抵抗値が、10Ω/□以下とコントロールすることによって、導電性フィルムのカールの発生を抑制できるとともに、導電性フィルムの表面抵抗値を安定化できる。加熱時のカール発生のメカニズムは、定かではないものの下記の通りと考えられる。従来のように、PETからなる樹脂フィルム上に、Cuからなる導電層と防錆層とをこの順に積層した導電性フィルムを160℃で60分間加熱した場合、導電層を上にして凹方向のカールが発生する。一方、PETからなる樹脂フィルム上に、Cuからなる導電層のみからなる導電性フィルムを160℃で60分間加熱した場合、カール量はごくわずかではあるが、導電層を上にして凸方向のカールが発生する。そのため、加熱により導電層や防錆層のような各層の応力バランスが変化することによって、カールが発生していると推測できる。
【0010】
また、加熱時の表面抵抗値の変動のメカニズムは、定かではないものの下記の通りと考えられる。従来のように、PETからなる樹脂フィルム上に、Cuからなる導電層と防錆層とをこの順に積層した導電性フィルムを160℃で60分間加熱した場合、防錆層側の導電層(Cu)は防錆層が形成されているため酸化されない。しかし、加熱後の導電性フィルムの表面抵抗値が大幅に上昇することから、導電層(Cu)のいずれかの部分が酸化されている可能性があると本願発明者は推測した。本願発明者が、160℃で60分間加熱した後の導電性フィルム中の酸素原子含有量の割合を確認したところ、PET側の導電層(Cu)にて酸素原子含有量が増加しており、酸化銅が形成されていることが確認できた。PET側の導電層(Cu)が酸化される理由は、加熱時のPETから発生するガスによる酸化であると考えられる。このPET側の導電層(Cu)の酸化により、加熱後の導電性フィルムの表面抵抗値は上昇すると推測される。
【0011】
本発明における前記第1の防錆層は、ニッケルと銅を含む合金、又はSiOx(x=1.0〜2.0)からなることが好ましい。本発明における第1の防錆層は、ニッケルと銅とチタンとを含む合金、又はSiOx(x=1.0〜2.0)からなることが好ましい。また、前記第1の防錆層は、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物からなることが好ましい。これにより、導電層の酸化を確実に防ぐことができる。即ち、加熱時のPETのような樹脂フィルムから発生するガスによる導電層の酸化を確実に防ぐことができるため、加熱後の導電性フィルムの表面抵抗値の上昇をより抑制することができる。また、第1の防錆層を前述のような構成とすることで、加熱時の各層の応力バランスを適度に調整することができるため、カールの発生をより抑制できる。
【0012】
本発明における前記第2の防錆層は、ニッケルと銅を含む合金、又はSiOx(x=1.0〜2.0)からなることが好ましい。本発明における第2の防錆層は、ニッケルと銅とチタンとを含む合金、又はSiOx(x=1.0〜2.0)からなることが好ましい。また、前記第2の防錆層は、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物からなることが好ましい。これにより、導電性フィルムの最表面からの導電層の酸化を確実に防ぐことができ、導電性フィルムの初期の表面抵抗値の上昇を抑制するだけでなく、加熱後の表面抵抗値の上昇を抑制することができる。また、第2の防錆層を前述のような構成とすることで、加熱時の各層の応力バランスを適度に調整することができるため、カールの発生をより抑制できる。
【0013】
本発明における前記第1の防錆層は、SiOx(x=1.0〜2.0)からなり、前記第2の防錆層は、ニッケルと銅とチタンとを含む合金からなることが好ましい。この構成により、加熱時の各層の応力バランスを最適に調整することができるため、カールの発生を確実に抑制できる。また、これにより、導電性フィルムの初期の表面抵抗値の上昇を抑制するだけでなく、加熱後の表面抵抗値の上昇を抑制することができ、表面抵抗値の安定化を最適にできる。
【0014】
本発明における導電層は、銅を含むことが好ましい。これにより、電気抵抗率が充分に小さく導電率が高いため、電磁波シールド特性を向上できる。
【0015】
本発明における導電層の厚みは、10nm〜300nmであることが好ましい。この厚みにすることで、充分な導電性が確保でき電磁波シールド特性を向上できる。また、加熱後の導電性フィルムのカール発生を抑制できるとともに、加熱後の導電性フィルムの表面抵抗値を低抵抗化できる。
【0016】
本発明における第1の防錆層の厚みは、1nm〜50nmであることが好ましい。この構成により、加熱時の各層の応力バランスを最適に調整することができるため、カールの発生を確実に抑制できる。また、これにより、効率的に導電層の酸化を防ぐことができるため、表面抵抗値の安定化を最適にできる。
【0017】
本発明における第2の防錆層の厚みは、1nm〜50nmであることが好ましい。この構成により、加熱時の各層の応力バランスを最適に調整することができるため、カールの発生を確実に抑制できる。また、これにより、効率的に導電層の酸化を防ぐことができるため、表面抵抗値の安定化を最適にできる。
【0018】
本発明の導電性フィルムは、電磁波シールドに用いることが好ましい。本発明の導電性フィルムを用いることにより、加熱前後での導電性フィルムの表面抵抗値が安定しており、導電性が充分に高く電磁波シールド特性を向上できる。また、加熱後の導電性フィルムのカール発生を抑制できるため、生産効率に優れ実用的である。
【0019】
本発明の電磁波シールドシートは、前記導電性フィルムを含むことが好ましい。本発明の導電性フィルムを含むことで、加熱前後での導電性フィルムの表面抵抗値が安定しており、導電性が充分に高く電磁波シールド特性を向上した電磁波シールドシートが得られる。また、加熱後の導電性フィルムのカール発生を抑制できるため、生産効率に優れ実用的である電磁波シールドシートが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の導電性フィルムの実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。ただし、図の一部又は全部において、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大または縮小等して図示した部分がある。上下等の位置関係を示す用語は、単に説明を容易にするために用いられており、本発明の構成を限定する意図は一切ない。
【0022】
<導電性フィルム>
図1は、本発明の一実施形態に係る導電性フィルムの模式的断面図である。
図1に示す導電性フィルムは、樹脂フィルム1の少なくとも一方の面側に第1の防錆層2と、導電層3と、第2の防錆層4とをこの順で含んでいる。なお、第1の防錆層2と、導電層3と、第2の防錆層4とは、それぞれ1層からなる構成を図示しているが、それぞれが2層以上の多層構成であってもよい。また、透明基材1の片面又は両面に硬化樹脂層を備えることができる。硬化樹脂層とは、ハードコート層、アンダーコート層、光学調整層、誘電体層、アンチブロッキング層等として機能するものを含む。透明基材1の片面又は両面は、粘着剤などの適宜の接着手段を用いて他の基材が貼り合わせたものや、他の基材と貼り合わせるための粘着剤層等にセパレータ等の保護層が仮着されたものであってもよい。
【0023】
本発明の導電性フィルムは、樹脂フィルムの少なくとも一方の面側に第1の防錆層と、導電層と、第2の防錆層とがこの順に形成されている。前記導電性フィルムは、初期の表面抵抗値R0が、0.001Ω/□〜10.0Ω/□であることが好ましく、0.01Ω/□〜3.5Ω/□であることがより好ましく、0.1Ω/□〜1.0Ω/□であることが更に好ましい。これにより生産効率に優れた実用的な導電性フィルムを提供できる。
【0024】
また、導電性フィルムを160℃で60分間加熱した後の表面抵抗値Rhが、10Ω/□以下であることが好ましく、3.5Ω/□以下であることがより好ましく、1.0Ω/□以下であることが更に好ましい。導電性フィルムを160℃で60分間加熱した後の表面抵抗値Rhの下限値は、特に制限されないが、0.001Ω/□以上であることが好ましく、0.01Ω/□以上であることがより好ましく、0.1Ω/□以上であることが更に好ましい。また、これにより生産効率に優れた実用的な導電性フィルムを提供できる。
【0025】
導電性フィルムを160℃で60分間加熱した後の表面抵抗値Rhと初期の表面抵抗値R0との差ΔR(ΔR=Rh−R0)は、1.0Ω/□以下であることが好ましく、0.9Ω/□〜−0.1Ω/□であることがより好ましく、0.5Ω/□〜0Ω/□であることがさらに好ましく、0.3Ω/□〜0.1Ω/□であることが特に好ましい。これにより、加熱前後の表面抵抗値の安定化ができ、電磁波シールド特性を向上できる。
【0026】
導電性フィルムを160℃で60分間加熱した後の表面抵抗値Rhを初期の表面抵抗値R0で割った値であるRs(Rs=Rh/R0)は、0.7〜1.3であることが好ましく、0.8〜1.2であることがより好ましく、0.9〜1.1であることが更に好ましい。これにより、加熱前後の表面抵抗値の安定化ができ、電磁波シールド特性を向上できる。
【0027】
導電性フィルムを10cm×10cmにカットし、導電層を上面にして160℃で60分間加熱した後の4隅部の平均カール値Aと中央部のカール値Bとの差(A−B)は、50mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましく、10mm以下であることがさらに好ましい。下限値は、特に制限されないものの、0mm以上であることが好ましい。これにより、加熱後のカール発生を抑制でき、生産効率に優れた実用的な導電性フィルムを提供できる。
【0028】
第1の防錆層の厚みと、導電層の厚みと、第2の防錆層の厚みとの合計の厚みは、300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、10nm〜130nmであることがさらに好ましく、30nm〜90nmであることが特に好ましく、50nm〜75nmであることが最も好ましい。これにより、加熱後のカール発生を抑制でき、生産効率に優れた実用的な導電性フィルムを提供できるとともに、加熱前後の表面抵抗値の安定化ができ、電磁波シールド特性を向上できる。
【0029】
本発明の導電性フィルムは、例えば、電磁波シールド等の形態で好適に適用できる。
【0030】
(樹脂フィルム)
樹脂フィルムとしては、絶縁性を確保できるものであれば特に制限されず、各種のプラスチックフィルムが用いられる。樹脂フィルムの材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリイミド(PI)等のポリイミド系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性、耐久性、柔軟性、生産効率、コスト等の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)が好ましい。特に、コストパフォーマンスの観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
【0031】
樹脂フィルムには、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、樹脂フィルム上に形成される第1の防錆層等との密着性を向上させるようにしてもよい。また、第1の防錆層等を形成する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより、樹脂フィルム表面を除塵、清浄化してもよい。
【0032】
樹脂フィルムの厚みは、2〜200μmの範囲内であることが好ましく、10〜100μmの範囲内であることがより好ましく、30〜60μmの範囲内であることが更に好ましい。一般的には、カール発生を抑制する観点からは、樹脂フィルムの厚みが厚い方が、加熱時の熱収縮の影響を受けにくくなるため望ましい。しかし、本発明では、樹脂フィルム上に形成される導電層の両側に防錆層を形成して、導電層を防錆層で挟みこむサンドイッチ構造とすることで、樹脂フィルムの厚みを前記のように薄くしても、導電性フィルムのカール発生を抑制できる。また、樹脂フィルムの厚みを薄くすることで、導電性フィルムが薄くなり、電磁波シールドシートの厚みを抑えることが可能となる。そのため、電磁波シールドシートの薄型化に対応できる。さらに、樹脂フィルムの厚みが前記の範囲内であると、樹脂フィルムの柔軟性を確保できつつ機械的強度が十分であり、フィルムをロール状にして防錆層や導電層等を連続的に形成する操作が可能である。
【0033】
また、樹脂フィルムの片面又は両面には、ハードコート層、アンダーコート層、光学調整層、誘電体層、アンチブロッキング層等の硬化樹脂層が形成されていてもよい。また、粘着剤などの適宜の接着手段を用いて他の基材が貼り合わせたものや、他の基材と貼り合わせるための粘着剤層等にセパレータ等の保護層が仮着されたものであってもよい。
【0034】
(硬化樹脂層)
樹脂フィルムの片面又は両面に硬化樹脂層を形成することができる。これにより、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)等の樹脂フィルムはそれ自体が非常に傷つきやすい傾向にあるが、導電層や防錆層の形成または電子機器への搭載などの各工程で樹脂フィルムに傷が入ることを防ぐことが可能である。
【0035】
硬化樹脂層の形成材料としては、硬化樹脂層形成後の皮膜として十分な強度を持つものを特に制限なく使用できる。用いる樹脂としては熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂などがあげられるが、これらのなかでも紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よく硬化樹脂層を形成することができる紫外線硬化型樹脂が好適である。
【0036】
紫外線硬化型樹脂としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂等の各種のものがあげられ、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。好ましく用いられる紫外線硬化型樹脂としては、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂が好ましい。
【0037】
硬化樹脂層には、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。このような添加剤として、微粒子、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤などの常用の添加剤が挙げられる。
【0038】
硬化樹脂層は、各硬化型樹脂と必要に応じて加える架橋剤、開始剤、増感剤などを含む樹脂組成物を樹脂フィルム上に塗布し、樹脂組成物が溶剤を含む場合には、溶剤の乾燥を行い、熱、活性エネルギー線またはその両方のいずれかの適用により硬化させることにより得られる。熱は空気循環式オーブンやIRヒーターなど公知の手段を用いることができるがこれらの方法に限定されない。活性エネルギー線の例としては紫外線、電子線、ガンマ線などがあるが特に限定されない。
【0039】
硬化樹脂層の厚みは特に限定されないが、好ましくは0.5μm〜5μmであり、より好ましくは0.7μm〜3μmであり、最も好ましくは0.8μm〜2μmである。硬化樹脂層の厚みが前記範囲にあると、プラスチックフィルムからのオリゴマー等の低分子量成分の析出を抑止できるとともに、カールの発生を防ぐことができる。
【0040】
(導電層)
導電層は、樹脂フィルムの少なくとも一方の面側に形成した第1の防錆層上に形成することができる。導電層は、電磁波シールド効果を充分に得るため、電気抵抗率が50μΩcm以下であることが好ましい。導電層の構成材料としては、このような電気抵抗率を満足し導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、Cu,Al,Fe,Cr,Ti,Si,Nb,In,Zn,Sn,Au,Ag,Co,Cr,Ni,Pb,Pd,Pt,W,Zr,Ta,Hf、Mo,Mn,Mg,V等の金属が好適に用いられる。また、これらの金属の2種以上を含有するものや、これらの金属を主成分とする合金等も用いることができる。これらの金属の中でも、電磁波シールド特性に寄与する導電率が高く、比較的低価格である観点から、Cu,Alを含むことが好ましい。特に、コストパフォーマンスと生産効率の観点から、Cuを含むことが好ましいが、Cu以外の元素が不純物程度含まれていても良い。これにより、電気抵抗率が充分に小さく導電率が高いため、電磁波シールド特性を向上できる。
【0041】
導電層の形成方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば、膜厚の均一性や成膜効率の観点から、スパッタリング法、化学気相成長法(CVD)や物理気相成長法(PVD)等の真空成膜法や、イオンプレーティング法、メッキ法(電解メッキ、無電解メッキ)、ホットスタンプ法、コーティング法等により成膜されることが好ましい。また、これらの製膜方法の複数を組み合わせてもよいし、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。中でも、スパッタリング法、真空成膜法が好ましく、スパッタリング法が特に好ましい。これにより、ロールトゥロール製法により連続生産でき生産効率を高めるとともに、成膜時の膜厚を制御することができるため、導電性フィルムのカール発生と表面抵抗値の上昇を抑制できる。また、薄くて膜厚が均一で、緻密な導電層を形成することができる。
【0042】
導電層の厚みは、10〜300nmであることが好ましく、10〜200nmであることがより好ましく、20〜80nmであることが更に好ましく、30〜60nmであることが特に好ましい。導電層の厚みが300nmを超えると、加熱後の導電性フィルムのカールが発生しやすくなり、20nmより小さいと、加熱後の導電性フィルムの表面抵抗値が高抵抗化しやすくなる。従って、上記範囲内であると、加熱後の導電性フィルムのカール発生が抑制できるとともに、導電性フィルムの初期の表面抵抗値を充分小さくしつつ、加熱後の表面抵抗値の上昇を抑制することができる。また、成膜時の生産効率が上がり、成膜時の積算熱量が小さくなり、フィルムに熱シワが生じにくくなる。
【0043】
(防錆層)
防錆層は、第1の防錆層と第2の防錆層とを含む。第1の防錆層と第2の防錆層とは、導電層を挟みこむサンドイッチ構造を有し、樹脂フィルムの少なくとも一方の面側に第1の防錆層、導電層、第2の防錆層の順に形成される。防錆層は、導電層が錆びることを防ぐための層である。なお、ここで「錆びる」とは、導電層に含まれる金属が酸化して腐食生成物が発生することを含む。具体的には、第1の防錆層は、例えば加熱時のPETのような樹脂フィルムから発生するガスによる導電層の酸化を防ぐために形成される。一方、第2の防錆層は、例えば大気中の酸素の影響を受けて導電層が自然に酸化することを防止するために形成される。
【0044】
第1の防錆層と第2の防錆層とを含む防錆層の材料としては、導電層の錆び防止効果を示すものである限り特に限定されないが、Ni,Cu,Ti,Si、Zn,Sn,Cr,Feの中から選ばれるいずれか1種類以上の金属又はこれらの酸化物が用いられる。Ni,Cu,Tiは,不動態層を形成するため腐食されにくく、Siは耐食性が向上するため腐食されにくく、Zn,Crは表面に緻密な酸化被膜を形成するため腐食されにくい金属であるため好ましい。防錆層の材料としては、導電層との密着性を向上させて確実に導電層の錆びを防止する観点から、2種の金属からなる合金を用いることはできるが、3種以上の金属からなる合金が好ましい。合金3種以上の金属からなる合金としては、Ni−Cu−Ti、Ni−Cu−Fe,Ni−Cu−Cr等が挙げられ、防錆機能と生産効率の観点から、Ni−Cu−Tiが好ましい。なお、導電層との密着性を向上させる観点から、導電層を含む合金であることが好ましい。これにより、導電層の酸化を確実に防ぐことができる。即ち、加熱時のPETのような樹脂フィルムから発生するガスによる導電層の酸化を確実に防ぐことができるとともに、導電性フィルムの最表面からの導電層の酸化を確実に防ぐことができ、導電性フィルムの初期の表面抵抗値の上昇を抑制するだけでなく、加熱後の表面抵抗値の上昇を抑制することができる。また、樹脂フィルムと導電層との密着性を向上できるとともに、加熱時の各層の応力バランスを適度に調整することができるため、カールの発生をより抑制できる。
【0045】
前記Ni−Cu−Tiを含む合金は、防錆機能の観点から、Ni含有量が30〜70wt%であることが好ましく、40〜65wt%であることがより好ましい。また、防錆機能の観点から、Cu含有量が25〜65wt%であることが好ましく、30〜60wt%であることがより好ましい。さらに、防錆機能の観点から、Ti含有量が2〜10wt%であることが好ましく、5〜10wt%であることがより好ましい。なお、これらの元素以外の元素が不純物程度に含まれていても良い。これにより、導電性フィルムのカール発生の抑制及び表面抵抗値の安定化が可能となる。
【0046】
前記金属の酸化物とは、SiOx(x=1.0〜2.0)、酸化銅、酸化銀、酸化チタン等の酸化物が好ましいが、導電性フィルムのカール発生の抑制及び表面抵抗値の安定化の観点から、SiOx(x=1.0〜2.0)が特に好ましい。これにより、導電層が腐食されにくくなる。なお、前述の金属、合金、酸化物等の代わりに、導電層上にアクリル系樹脂やエポキシ系樹脂のような樹脂層を形成することで防錆効果をもたらすことも可能である。
【0047】
さらに、第1の防錆層と第2の防錆層とを含む防錆層の材料として、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物が用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。例えば、酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズ(ATO)、アルミドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)などが好ましく用いられる。中でも生産効率かつ防錆性を高める観点において、ITOが最も好適に用いられる。ITOとしては、酸化インジウム80〜99重量%及び酸化スズ1〜20重量%を含有することが好ましい。なお、前記群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物は、アモルファスであることが好ましい。なお、ITOを用いる場合は、アモルファスITOであることが好ましい。
【0048】
第1の防錆層と第2の防錆層とは、同種材料であっても異種材料であっても良い。前記同種材料としては、例えば、第1の防錆層と第2の防錆層とは、ニッケルと銅とチタンとを含む合金からなる場合やSiOx(x=1.0〜2.0)からなる場合が含まれる。前記異種材料としては、第1の防錆層は、SiOx(x=1.0〜2.0)からなり、前記第2の防錆層は、ニッケルと銅とチタンとを含む合金からなる場合や、第1の防錆層は、ニッケルと銅とチタンとを含む合金からなり、前記第2の防錆層は、SiOx(x=1.0〜2.0)からなる場合が含まれる。特に、第1の防錆層は、SiOx(x=1.0〜2.0)からなり、前記第2の防錆層は、ニッケルと銅とチタンとを含む合金からなる場合は、下記の観点から好ましい。即ち、樹脂フィルムと各層との密着性の向上を最適化できるとともに、加熱時の各層の応力バランスを最適に調整することができるため、カールの発生を確実に抑制できる。また、導電性フィルムの初期の表面抵抗値の上昇を抑制するだけでなく、加熱後の表面抵抗値の上昇を抑制することができ、表面抵抗値の安定化を最適にできるため、特に好ましい。
【0049】
また、第1の防錆層及び前記第2の防錆層ともに、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物からなる場合は、下記の観点から好ましい。即ち、樹脂フィルムと各層との密着性の向上を最適化できるとともに、加熱時の各層の応力バランスを最適に調整することができるため、カールの発生を確実に抑制できる。また、導電性フィルムの初期の表面抵抗値の上昇を抑制するだけでなく、加熱後の表面抵抗値の上昇を抑制することができ、表面抵抗値の安定化を最適にできるため、特に好ましい。
【0050】
防錆層の形成方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば、スパッタリング法、化学気相成長法(CVD)や物理気相成長法(PVD)等の真空成膜法や、イオンプレーティング法、メッキ法(電解メッキ、無電解メッキ)、ホットスタンプ法、コーティング法、導電層の表面酸化処理等を例示できる。ロールトゥロール製法により連続生産でき生産効率を高めるとともに、成膜時の膜厚を制御する観点から、スパッタリング法が好ましい。また、これらの製膜方法の複数を組み合わせてもよいし、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。中でも、スパッタリング法、真空成膜法が好ましく、スパッタリング法が特に好ましい。これにより、ロールトゥロール製法により連続生産でき生産効率を高めるとともに、成膜時の膜厚を制御することができるため、導電性フィルムのカール発生と表面抵抗値の上昇を抑制できる。また、薄くて膜厚が均一で、緻密な防錆層を形成することができる。
【0051】
第1の防錆層の膜厚は、1〜50nmが好ましく、2〜30nmがより好ましく、3〜20nmが好ましい。特に、第1の防錆層がITOのような金属酸化物からなる場合、第1の防錆層の膜厚は、1〜30nmが好ましく、2〜20nmがより好ましく、3〜10nmが好ましい。これにより、加熱時にPETのような樹脂フィルムから発生するガスによる導電層の酸化を防ぐことができるため、加熱後の表面抵抗値は上昇を抑制することができるとともに、カール発生を抑制できる。
【0052】
第2の防錆層の膜厚は、1〜50nmが好ましく、2〜30nmがより好ましく、3〜20nmが好ましい。特に、第2の防錆層がITOのような金属酸化物からなる場合、第2の防錆層の膜厚は、1〜30nmが好ましく、2〜20nmがより好ましく、3〜10nmが好ましい。これにより、耐久性が向上し表面層から酸化を防ぐことができるため、加熱後の表面抵抗値は上昇を抑制できるとともに、カール発生を抑制できる。
【0053】
(電磁波シールドシート)
本発明の電磁波シールドシートは、以上で述べた導電性フィルムを用いたものであり、タッチパネル等の形態で使用することができる。前記電磁波シールドシートの厚みは、20μm〜300μmであることが好ましい。
【実施例】
【0054】
以下、本発明に関して実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
<実施例1>
(スパッタ成膜)
先ず、幅1.085m、長さ2000m、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、品名「TA−38T613N(MT474)」、以下、PETフィルムという)からなる長尺状樹脂フィルムを送り出しロールに巻いてスパッタ装置内に設置する。その後、スパッタ装置内を3.0×10
−3Torrの高真空にする。高真空にスパッタ装置内を真空引きした状態で、長尺状樹脂フィルムを送り出しロールから巻き取りロールへ送りながら、スパッタ成膜を行う。
【0056】
(第1の防錆層の形成)
まず、第1の防錆層をスパッタ製膜するにあたっては、フィルム送りスピードを2m/分として長尺状樹脂フィルムを搬送しつつ、Arガス体積75%およびO
2ガス25体積%とからなる3.0×10
−3Torrの雰囲気中で、Siのターゲット材料を用いて、焼結体DCマグネトロンスパッタ法により、樹脂フィルム上に第1の防錆層を5nmの厚みでスパッタ成膜して、巻き取りロールにフィルムを巻き取った。
【0057】
(導電層の形成)
次に、第1の防錆層を成膜してロール状に巻き取られたフィルムをフィルム送りスピードを2m/分で、Arガス100体積%からなる3.0×10
−3Torrの雰囲気中で、Cuターゲット材料を用いて、焼結体DCマグネトロンスパッタ法により、第1の防錆層上に導電層を48nmの厚みでスパッタ成膜して、送り出しロールにフィルムを巻き取った。
【0058】
(第2の防錆層の形成)
最後に、導電層を成膜してロール状に巻き取られたフィルムをフィルム送りスピードを2m/分で、Arガス100体積%からなる3.0×10
−3Torrの雰囲気中で、Ni−Cu−Ti(含有割合:Ni65wt%、Cu30wt%、Ti5wt%)からなるターゲット材料を用いて、焼結体DCマグネトロンスパッタ法により、導電層上に第2の防錆層を10nmの厚みでスパッタ成膜して、巻き取りロールにフィルムを巻き取って、導電性フィルムを作製した。
【0059】
<実施例2〜6>
実施例1において、スパッタリング時間を変更して、第1の防錆層及び導電層を表1に示すような厚みとなるように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性フィルムを作製した。
【0060】
<実施例7〜18>
実施例1において、第1の防錆層の構成をNi−Cu−Ti(含有割合:Ni65wt%、Cu30wt%、Ti5wt%)からなるターゲット材料へと変更したこと、及びスパッタリング時間を変更して各層の厚みを表1に示すような厚みとなるように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性フィルムを作製した。
【0061】
<実施例19〜21>
実施例1において、第2の防錆層の構成をSiからなるターゲット材料へと変更して反応性スパッタを行ったこと、及びスパッタリング時間を変更して各層の厚みを表1に示すような厚みとなるように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性フィルムを作製した。
【0062】
<実施例22〜27>
実施例1において、第1の防錆層及び第2の防錆層を下記の通り形成した。アルゴンガス100体積%からなる0.4Paの雰囲気中で、酸化インジウム90%−酸化スズ10%の焼結体材料を用いたマグネトロンスパッタリング法により、厚みが表1に記載される厚みとようになるように、インジウム・スズ複合酸化物からなるアモルファス透明導電性薄膜(α−ITO)を形成した。製膜に際しては、アルゴンガスを導入し、基材温度20℃にて製膜を行った。以上に記載したこと、及び表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性フィルムを作製した。
【0063】
<実施例28〜30>
実施例1において、スパッタリング時間等を変更して各層を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性フィルムを作製した。
【0064】
<比較例1〜17>
実施例1において、第1の防錆層を形成しなかったこと、及びスパッタリング時間を変更して各層の厚みを表2に示すような厚みとなるように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性フィルムを作製した。
【0065】
<比較例18>
実施例1において、第1の防錆層を下記の通り形成した。アルゴンガス80体積%と酸素ガス20体積%とからなる0.4Paの雰囲気中で、酸化インジウム90%−酸化スズ10%の焼結体材料を用いた反応性スパッタリング法により、厚みが20nmのインジウム・スズ複合酸化物からなる透明導電性薄膜を形成した。製膜に際しては、スパッタ装置内を製膜時の水の分圧が、8.0×10
−5Paとなるまで排気した後、アルゴンガスおよび酸素ガスを導入し、基材温度140℃にて製膜を行った。この時の水の分圧は、アルゴンガスの分圧に対して0.05%であった。
【0066】
上記透明導電性薄膜上に、さらに酸化インジウム97%−酸化スズ3%の焼結体材料を用いた反応性スパッタリング法により、厚みが4nmのインジウム・スズ複合酸化物からなる透明導電性薄膜を形成した。製膜に際しては、スパッタ装置内を製膜時の水の分圧が、8.0×10
−5Paとなるまで排気した後、アルゴンガスおよび酸素ガスを導入し、基材温度20℃にて製膜を行った。
【0067】
次いで、このように形成した非晶質の透明導電性薄膜を、熱風循環式オーブンにて140℃で90分間の熱処理を施して結晶化させて、第一の防錆層を形成した。以上に記載したこと、及び第2の防錆層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性フィルムを作製した。
【0068】
<参考例1〜2>
実施例7において、スパッタリング時間を変更して各層の厚みを表2に示すような厚みとなるように変更したこと以外は、実施例7と同様の方法で導電性フィルムを作製した。
【0069】
<参考例3〜5>
実施例1において、第1の防錆層及び第2の防錆層の各構成をCu−Ni(含有割合:Cu60wt%、Ni40wt%)からなるターゲット材料へと変更したこと、及びスパッタリング時間を変更して各層の厚みを表2に示すような厚みとなるように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性フィルムを作製した。
【0070】
<参考例6〜7>
実施例1において、第1の防錆層については、アルゴンガス100体積%からなる0.4Paの雰囲気中で、酸化インジウム90%−酸化スズ10%の焼結体材料を用いた反応性スパッタリング法により、インジウム・スズ複合酸化物からなるアモルファス透明導電性薄膜(α−ITO)を形成した。製膜に際しては、アルゴンガスを導入し、基材温度20℃にて製膜を行った。
【0071】
次いで、このように形成した非晶質の透明導電性薄膜を、熱風循環式オーブンにて140℃で90分間の熱処理を施して結晶化させて、第一の防錆層(結晶化ITO)を形成した。以上の点、及びスパッタリング時間等を変更して各層を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性フィルムを作製した。なお、参考例7の第2の防錆層の構成は、参考例3と同様である。
【0072】
<評価>
(1)厚みの測定
1.0μm未満の厚みは、透過型電子顕微鏡(日立製作所製、製品名「H−7650」)を用いて、導電性フィルムの断面を観察して測定した。1.0μm以上の厚みは、膜厚計(Peacock社製、デジタルダイアルゲージDG−205)を用いて測定した。評価した結果を表1〜2に示す。
【0073】
(2)加熱前後での表面抵抗値の測定
初期及び160℃で60分間加熱後の導電性フィルムの表面抵抗値は、JIS K7194に準じて、4端子法により測定した。評価した結果を表1〜2に示す。
【0074】
(3)カールの測定
実施例、比較例及び参考例で得られた導電性フィルムを10cm×10cmサイズにカットした。導電層が上になる状態で160℃、60分間の加熱した後、室温(23℃)にて1時間放冷した。その後、導電層が上になる状態で水平な面上にサンプルを置き、4隅部の水平面からの高さをそれぞれ測定し、その平均値(カール値A)を算出した。また、中央部の水平面からの高さ(カール値B)を測定した。カール値Aからカール値Bを引いた値(A−B)をカール量として算出した。評価した結果を表1〜2に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
(結果及び考察)
実施例1〜30においては、160℃で60分間加熱した後でも、導電性フィルムの表面抵抗値が低く、カールの発生を抑制できた。一方、比較例1〜17のように、第1の防錆層が形成されていないと、160℃で60分間加熱した後に、導電性フィルムの表面抵抗値が上昇し、カールが発生した。比較例18のように、第1の防錆層を結晶化したITO膜で形成した場合、160℃で60分間加熱した後に、導電性フィルムの表面抵抗値が上昇した。また、導電層を防錆層で挟み込むサンドイッチ構造とした参考例1〜7においても、防錆層の構成成分や各層の厚みによっては、導電性フィルムの表面抵抗値が上昇し、カールが発生する場合があった。