特許第6813979号(P6813979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6813979
(24)【登録日】2020年12月22日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】構造部材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/26 20060101AFI20201228BHJP
【FI】
   E04B1/26 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-146455(P2016-146455)
(22)【出願日】2016年7月26日
(65)【公開番号】特開2018-16978(P2018-16978A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】福本 晃治
(72)【発明者】
【氏名】須賀 順子
(72)【発明者】
【氏名】興津 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】大野 正人
(72)【発明者】
【氏名】本弓 省吾
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 直行
(72)【発明者】
【氏名】江原 勇介
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 考文
(72)【発明者】
【氏名】諫山 開
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−143698(JP,A)
【文献】 特開2006−322160(JP,A)
【文献】 特開2007−046403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/26
E04B 1/58
E04C 2/40 − 2/42
E04G 23/02
B27M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X字形状の板材を積層して形成され、端部に形成された継手部同士が接合された複数の交差部材を備え、
前記板材は、
通しラミナ材と、
前記通しラミナ材と交差するように、該通しラミナ材の幅方向の両側に配置された一対の分割ラミナ材と、
を有し、
前記交差部材は、前記通しラミナ材が互い違いになるように前記板材を積層して形成される、
構造部材。
【請求項2】
複数の前記交差部材によって格子状の面材が形成されている、請求項1に記載の構造部材。
【請求項3】
前記面材の格子内に嵌込まれた補強部材を備える、請求項2に記載の構造部材。
【請求項4】
前記補強部材は、前記交差部材に沿わずに前記格子内に嵌め込まれ、端部が前記交差部材の交差部に当接される、請求項3に記載の構造部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交差する部材同士を接合して柱や梁等の構造部材を形成する際には、例えばプレートを介して交差する部材同士をボルトによって接合している。このため、構造部材の交差部(仕口部)の構造が複雑となっていた。
【0003】
この問題を解決するため、例えば特許文献1には、互いに直交する複数のラミナ材を積層することによって交差部を有する端部材を形成し、端部材に集成柱を接合することにより構造部材を形成する構成が開示されている。しかし、特許文献1では、集成柱が端部材の交差部にボルトで接合されているため、構造部材の交差部の構造が複雑となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−185115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実に鑑み、交差部の強度を高めつつ交差部の構造を単純化することができる構造部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る構造部材は、互いに交差するように積層された複数のラミナ材によって構成され、前記ラミナ材が交差する交差部と、前記ラミナ材の端部に形成された継手部と、を有する交差部材を備え、複数の前記交差部材の前記継手部同士が互いに接合されている。
【0007】
上記構成によれば、互いに交差するように積層されたラミナ材によって交差部材が構成されている。このため、ラミナ材の交差部分である交差部を剛接合とすることができ、交差部の強度を高めることができる。
【0008】
また、交差部材(ラミナ材)の端部に継手部が形成され、継手部同士が接合された交差部材によって構造部材が形成される。つまり、交差部以外の部分で交差部材同士が連結されるため、交差部の構造を単純化することができる。
【0009】
第2態様に係る構造部材は、第1態様に係る構造部材であって、複数の前記交差部材によって格子状の面材が形成されている。
【0010】
上記構成によれば、複数の交差部材を接合することによってラーメン構造やトラス構造等の面材を形成することができるため、面材の強度を高めることができる。また、交差部材をユニットとして共通化させることで、加工や施工の効率化を図ることができる。
【0011】
なお、本発明において「格子状」とは、交差部材によって区切られた複数の空間を有する形状を指し、交差部材のラミナ材が互いに直交している十字格子形状の他、交差部材のラミナ材が互いに斜めに交差している斜め格子形状等も含まれる。
【0012】
第3態様に係る構造部材は、第2態様に係る構造部材であって、前記面材の格子内に嵌込まれた補強部材を備える。
【0013】
上記構成によれば、面材の格子内に補強部材を嵌込むことにより、面材を補強するとともに周囲の交差部材にプレストレスを与えることができる。このため、面材の強度をより高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、交差部の強度を高めつつ交差部の構造を単純化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の一例における構造部材を構成する交差部材を示す分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態の一例における構造部材である面材を示す平面図である。
図3】交差部材の継手部を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る構造部材の一例として、複数の交差部材によって形成される面材について、図1図3に従って説明する。
【0017】
(交差部材)
図1に示すように、交差部材としてのプレストラクチャユニット10は、複数のラミナ材12、14が積層された集成材であり、平面視でラミナ材12、14のなす角(鋭角)が約60°とされた略X字形状とされている。
【0018】
具体的には、一方向に延びる分割された一対のラミナ材12を他方向に延びる通しのラミナ材14の側面に交差するように突合せた板材16と、他方向に延びる分割された一対のラミナ材14を一方向に延びる通しのラミナ材12の側面に交差するように突合せた板材18と、を形成する。そして、板材16と板材18とを交互に積層して複数枚貼合わせていくことにより、プレストラクチャユニット10を形成する。
【0019】
なお、ラミナ材12、14は、繊維方向が交差するように積層されている。また、ラミナ材12、14同士が突合わされた交差部分が、プレストラクチャユニット10の交差部20とされる。
【0020】
さらに、後に詳述するが、ラミナ材12、14の長手方向両端部には、溝部22及び溝部22に設けられた拡幅部22Aが形成されており、溝部22及び拡幅部22Aが形成されたプレストラクチャユニット10の端部が継手部24とされている。なお、ラミナ材12、14を積層してプレストラクチャユニット10を形成した後、プレストラクチャユニット10の端部に溝部22及び拡幅部22Aを形成してもよい。
【0021】
(面材)
図2に示すように、複数のプレストラクチャユニット10の端部同士を平面上で連結することにより、格子状の面材26が形成されている。なお、面材26とは、例えば建物の床材や壁材である。
【0022】
本実施形態では、複数のプレストラクチャユニット10によって構成された格子によって、三角形状の空間28と六角形状の空間30A、30Bとが形成されており、面材26はトラス構造とハニカム構造とが組み合わされた構造とされている。
【0023】
また、空間30Aを形成する格子内には、補強部材の一例として複数(本実施形態では3つ)の組手32Aによって構成された組手ユニット32が嵌込まれている。組手32Aは、両端部が尖形(先端角度が平面視で約120°)とされた木片であり、一端部がプレストラクチャユニット10の交差部20にそれぞれ当接し、他端部が空間30Aの中央部で互いに当接している。
【0024】
ここで、組手ユニット32は寸法が僅かに大きく形成されているため、格子内(空間30A)に嵌込まれた際に、当接するプレストラクチャユニット10に反力が作用する。このため、組手ユニット32を嵌込むだけで格子内に固定することができる。
【0025】
また、空間30Bを形成する格子内には、補強部材のその他の例として、プレストラクチャユニット34と、プレストラクチャユニット34の継手部36にそれぞれ接合された組手38と、によって構成された補強ユニット40が嵌込まれている。
【0026】
なお、プレストラクチャユニット34は、面材26を構成するプレストラクチャユニット10と同一の構成とされている。また、プレストラクチャユニット10の交差部20とプレストラクチャユニット34の交差部42との間にも組手44が嵌込まれている。
【0027】
(継手部)
プレストラクチャユニット10の継手部24は、別部材である雇い材46を介して互いに接合されている。具体的には、図3に示すように、プレストラクチャユニット10(継手部24)の端面には、プレストラクチャユニット10の厚さ(高さ)方向に沿って溝部22が形成されている。
【0028】
溝部22の両端は、プレストラクチャユニット10の継手部24の上面及び下面にそれぞれ開放されており、溝部22の底部には、溝部22の幅より幅の大きい拡幅部22Aが設けられている。
【0029】
また、プレストラクチャユニット10(継手部24)の端面には、溝部22を挟んだ幅方向両端部に一対の嵌合溝48が形成されている。さらに、プレストラクチャユニット10の継手部24の側面(溝部22の側面)には、ピン50が挿入される2つの挿入孔52が貫通形成されている。
【0030】
一方、雇い材46は、複数のラミナ材54が積層された集成材であり、溝部22の拡幅部22Aに嵌込まれる厚肉部46Aが長手方向両端部に設けられている。また、雇い材46の側面には、ピン50が挿入される4つの挿入孔56が貫通形成されている。
【0031】
(作用及び効果)
面材26を形成する場合、まず、図1に示すように、複数のラミナ材12、14を積層することにより、プレストラクチャユニット10を形成する。
【0032】
その後、図3に示すように、一方のプレストラクチャユニット10の継手部24の嵌合溝48と他方のプレストラクチャユニット10の継手部24の嵌合溝48との間にダボ材58を嵌合させて、継手部24同士の位置を合わせる。
【0033】
そして、一方及び他方のプレストラクチャユニット10の継手部24の溝部22に、上面側から雇い材46を嵌込み、継手部24の挿入孔52及び雇い材46の挿入孔56を貫通するようにピン50を挿入する。以上の工程により、複数のプレストラクチャユニット10の継手部24同士をそれぞれ固定していくことによって、図2に示す面材26を形成する。
【0034】
その後、面材26の両面に図示しない木製のプレートをそれぞれ接合することにより、トラス構造やハニカム構造を有する建物の壁面や床面を形成することができる。なお、プレートの材質は、鉄やアルミ等の金属とされていてもよい。また、プレートの面材26への接合方法も、接着剤で接着する方法やビスや釘で固定する方法等、様々な方法を用いることができる。
【0035】
本実施形態によれば、複数のラミナ材12、14を積層することによってプレストラクチャユニット10が構成されている。このため、プレストラクチャユニット10の交差部20を剛接合とすることができ、強度を高めることができる。
【0036】
さらに、複数のプレストラクチャユニット10を、端部に設けられた継手部24同士で連結するため、プレストラクチャユニット10の交差部20の構造を単純化することができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、同一形状の複数のプレストラクチャユニット10を平面上で連結することにより、面材26が形成されている。このため、面材26をトラス構造やハニカム構造とすることができ、強度を高めることができる。さらに、プレストラクチャユニット10を共通化させることで、加工や施工の効率化を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、面材26の空間30A、30Bに組手ユニット32及び補強ユニット40が嵌込まれている。このため、面材26の剛性を高めることができるとともに、組手ユニット32及び補強ユニット40を面材26に加わる応力の伝達経路とすることができる。
【0039】
なお、組手ユニット32及び補強ユニット40を空間30A、30Bに嵌込んだ際、反力によって組手ユニット32及び補強ユニット40に当接するプレストラクチャユニット10にプレストレスが加わる。このため、面材26の強度をより高めることができる。
【0040】
さらに、本実施形態によれば、空間30A、30Bに組手ユニット32及び補強ユニット40を嵌込むだけで固定することができ、また、溝部22に雇い材46を嵌込んで挿入孔52、56にピン50を挿入するだけで、継手部24同士を固定することができる。つまり、ボルト等の接合部材を用いることなく面材26を形成することができるため、面材26の接合構造を単純化することができる。
【0041】
(その他の実施形態)
以上、本発明について実施形態の一例を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能である。
【0042】
上記実施形態では、略X字形状のプレストラクチャユニット10によって面材26を形成していたが、プレストラクチャユニット10の形状や大きさは形成する構造部材によって適宜定めることができ、上記実施形態には限られない。
【0043】
例えば、柱を構成するラミナ材と、梁を構成するラミナ材とを直角に交差させて積層することで、プレストラクチャユニットによって柱と梁を形成することができる。この場合、柱と梁を構成する複数のプレストラクチャユニットを連結することにより、構造部材のその他の例として、ラーメン構造の構面を形成することができる。
【0044】
また、上記実施形態では、補強部材としての組手ユニット32及び補強ユニット40が面材26の格子内に嵌込まれて固定されていたが、補強部材の構成は上記実施形態には限られない。例えば、プレストレス(圧縮力)が導入された木製の補強部材を格子内に挿入した後、補強部材のプレストレス(圧縮力)を開放することにより、自己圧着力によって補強部材を格子内に固定する構成としてもよい。
【0045】
また、六角形形状の補強部材が、空間30A、30Bの全面を覆うように格子内に嵌込まれる構成とされていてもよい。さらに、面材26において補強部材を設ける位置も適宜定められる。このため、例えば加わる応力が大きい位置に補強部材を設けることで、面材26の強度を部分的に高めることができる。なお、補強部材は、後から移動させたり追加したりすることも可能である。
【0046】
また、上記実施形態では、プレストラクチャユニット10(継手部24)の端面に形成された溝部22の両端が、継手部24の上面及び下面にそれぞれ開放されていた。しかし、溝部22の端部のうち一方を開放端とし、他方を閉鎖端としてもよい。この場合、溝部22の閉鎖端は、溝部22の開放端から挿入された雇い材46を受けるガイドとなる。
【0047】
さらに、例えば、継手部24の一方に凸部、他方に凹部を形成し、凸部と凹部とを嵌合させることにより、雇い材46等の別部材を介さずに継手部24同士を直接接合させる構成としてもよい。
【0048】
また、プレストラクチャユニット10同士を直交させて連結することにより、壁材と床材等の2つの構面を構成することが可能であり、さらに、プレストラクチャユニット10同士の連結角度を調整することにより、アーチ状の構面を構成することも可能である。
【符号の説明】
【0049】
10、34 プレストラクチャユニット(交差部材)
12、14 ラミナ材
20、42 交差部
24、36 継手部
26 面材
32 組手ユニット(補強部材)
40 補強ユニット(補強部材)
図1
図2
図3