特許第6813984号(P6813984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6813984
(24)【登録日】2020年12月22日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】膜式ガスメータ
(51)【国際特許分類】
   G01F 3/22 20060101AFI20201228BHJP
   G01F 15/14 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   G01F3/22 A
   G01F15/14
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-156612(P2016-156612)
(22)【出願日】2016年8月9日
(65)【公開番号】特開2018-25443(P2018-25443A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2019年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】松本 安浩
【審査官】 羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−071785(JP,A)
【文献】 特開2011−002235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00− 9/02
G01F 15/00−15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測膜の往復運動を利用して燃料ガスの使用量を積算して表示する膜式ガスメータであって、
前記計測膜を内部に収納した計測室を有すると共に、上部に燃料ガスの流入口と流出口とが形成された筐体と、
前記筐体の前側に設けられたフロントカバーと、を備え、
前記筐体の上部は、前記フロントカバーの上端よりも所定高さ以上低まった段部を有し、
前記流入口と前記流出口との少なくとも一方の流路は、前記段部から前記フロントカバーの上端よりも上方へ延びており、
前記流路の高さ方向の中間位置であって、前記段部よりも上方且つ前記フロントカバーの上端よりも下方となる位置から、側方に張り出すホールド部をさらに備える
ことを特徴とする膜式ガスメータ。
【請求項2】
前記ホールド部は、メータ内側方向に張り出しており、
前記ホールド部の上面は、前方に向けて次第に高さが低くなる傾斜面となっている
ことを特徴とする請求項1に記載の膜式ガスメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜式ガスメータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、計測膜の往復運動を利用して燃料ガスの使用量を積算して表示する膜式ガスメータが知られている。この膜式ガスメータは、メータ前後方向へ往復運動可能な計測膜を計測室内に有しており、計測膜の往復動作に応じて例えば機械式のカウンタを動作させて、燃料ガスの使用量を積算表示する(特許文献1参照)。
【0003】
また、ガスメータの後面に凸状のグリップ部や引っかけ部を形成し、メータの前面と後面とを挟み込むような把持を可能としたガスメータが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−164589号公報
【特許文献2】特開2005−228613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載の膜式ガスメータは、計測膜が往復運動する構成であることから、計測室に往復運動のスペースが必要となって大型化し、ある程度の厚みを有した構成となっている。このため、特許文献1に記載の膜式ガスメータは、需要者側への設置の際にメータの前面と後面とを挟み込むように片手で持とうとしても、その厚みから挟み込んで持つことが容易な構造となっていない。ゆえに、片手でメータを持ち、残りの手で設置作業を行うことが容易ではなく、設置作業性が高いものとは言えなかった。
【0006】
そこで、特許文献2に記載のガスメータの構造を適用したとしても、特許文献2に記載のガスメータが前面と後面とを挟むように持つことを前提とするものであるため、依然として持ち易さが改善されるものではなく、設置作業性が向上するものとはいえない。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、設置作業性の向上を図ることが可能な膜式ガスメータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の膜式ガスメータは、計測膜の往復運動を利用して燃料ガスの使用量を積算して表示する膜式ガスメータであって、前記計測膜を内部に収納した計測室を有すると共に、上部に燃料ガスの流入口と流出口とが形成された筐体と、前記筐体の前側に設けられたフロントカバーと、を備え、前記筐体の上部は、前記フロントカバーの上端よりも所定高さ以上低まった段部を有し、前記流入口と前記流出口との少なくとも一方の流路は、前記段部から前記フロントカバーの上端よりも上方へ延びていることを特徴とする。
【0009】
この膜式ガスメータによれば、筐体の上部は、フロントカバーの上端よりも所定高さ以上低まった段部を有し、流入口と流出口との少なくとも一方の流路は、段部からフロントカバーの上端よりも上方へ延びている。このため、少なくとも一方の流路はある程度の長さを有することとなり、作業者が把持可能となることから、この部位を片手で持つことで、ガスメータの前面と後面とを挟持する必要が無くなり、設置作業性の向上を図ることができる。
【0010】
さらに、この膜式ガスメータ、前記流路の高さ方向の中間位置であって、前記段部よりも上方且つ前記フロントカバーの上端よりも下方となる位置から、側方に張り出すホールド部を備えることを特徴とする
【0011】
この膜式ガスメータによれば、流路の高さ方向の中間位置であって段部よりも上方且つフロントカバーの上端よりも下方となる位置から側方に張り出すホールド部をさらに備えるため、流路が細過ぎて力が入り難くなってしまうことを防止することで、よりメータを持ち易くして、一層の設置作業性の向上を図ることができる。
【0012】
また、本発明の膜式ガスメータにおいて、前記ホールド部は、メータ内側方向に張り出しており、前記ホールド部の上面は、前方に向けて次第に高さが低くなる傾斜面となっていることが好ましい。
【0013】
この膜式ガスメータによれば、ホールド部は、メータ内側方向に張り出しており、上面は前方に向けて次第に高さが低くなる傾斜面となっている。このため、作業者が、メータ外側から流路の内側に張り出すホールド部を持つことにより、指先方向に向けてホールド部の上面が低くなる。これにより、指先には、ホールド部の上面と側面との境界部分に当たり易くなり、境界部分と指とが線接触的に当たることによってホールド感の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、設置作業性の向上を図ることが可能な膜式ガスメータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る膜式ガスメータの構成を示す前方斜視図である。
図2図1に示した膜式ガスメータの後方斜視図である。
図3図1に示した膜式ガスメータの背面図である。
図4図1に示した膜式ガスメータのガス流出口の周辺部を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る膜式ガスメータの構成を示す前方斜視図である。図1に示すように、膜式ガスメータ100は、計測膜の前後方向への往復運動を利用して燃料ガスの使用量を積算表示するものであって、概略的に筐体10と、フロントカバー20とを備えている。
【0018】
筐体10は、上ケース10aと下ケース10bとからなる。上ケース10aには、その上部にガス流入口(流入口、流路)11と、ガス流出口(流出口、流路)12とが形成されており、燃料ガスはガス流入口11から膜式ガスメータ100内に至り、計量が行われた後にガス流出口12から、需要者側のガス機器に供給される。この上ケース10aには、例えば遮断弁や圧力センサなどが搭載される。
【0019】
下ケース10bは、計測膜を内部に収納するものである。膜式ガスメータ100は、計測膜の一方側と他方側とに燃料ガスを交互に供給することで、計測膜が往復運動する機構を利用し、例えば機械式カウンタを動作させる構成となっている。このため、下ケース10bは、計測膜の往復運動によって計量を行う計測室を有する。なお、計測膜の往復運動は、膜式ガスメータ100の前面と後面とを結ぶ前後方向に行われる。膜式ガスメータ100はこのような往復運動スペースを要し、一定の厚みを有したものとなる。
【0020】
フロントカバー20は、筐体10の前側に設けられた樹脂製のカバー部材である。このフロントカバー20と筐体10との間には、マイコンを搭載した基板や、機械式カウンタなどが搭載される。このうち機械式カウンタは、フロントカバー20の上部に設けられた表示窓21を通じて外部から視認可能となっている。
【0021】
なお、ガス流入口11及びガス流出口12は、その先端側が螺子切りされており、メータ設置時において工具による取り付けが容易となるように、フロントカバー20の上端20aよりも上方まで延びている(特に後述の図3参照)。
【0022】
図2は、図1に示した膜式ガスメータ100の後方斜視図であり、図3は、図1に示した膜式ガスメータ100の背面図である。図1図3に示すように、筐体10(上ケース10a)の上部は、フロントカバー20の上端20aよりも所定高さ(例えば2cmであって少なくとも1cm)以上低まった段部13を有している。また、ガス流出口12は、段部13からフロントカバー20の上端20aよりも上方へ延びている。このため、ガス流出口12は、所定以上の長さを有したものとなっており、作業者が把持し易い構成となっている。
【0023】
一方、上ケース10aの上部のうちガス流入口11側には、遮断弁等の構成を内部に収容し易くするために段部13から上方に突き出た膨出部14が形成されており、ガス流入口11は、膨出部14からフロントカバー20の上端20aよりも上方へ延びている。
【0024】
図4は、図1に示した膜式ガスメータ100のガス流出口12の周辺部を示す拡大斜視図である。なお、図4において破線は、作業者によるガス流出口12の把持の様子を示している。
【0025】
図1図4に示すように、ガス流出口12の周辺部には、ホールド部15が形成されている。ホールド部15は、ガス流出口12の高さ方向の中間位置、より詳細には段部13よりも上方且つフロントカバー20の上端20aよりも下方となる位置(例えば段部13から高さ0.5cm〜1.5cm程度の位置)から、側方に張り出す部位である。ここで、例えば家庭用のガスメータでは流路直径が数cmである場合など、作業者が把持する際に細過ぎて力が入り難くなってしまう可能性がある。このため、ホールド部15を備えることにより、作業者による保持力の向上を図ることとなる。
【0026】
また、ホールド部15は、メータ内側方向に張り出している。このため、作業者が膜式ガスメータ100の前面からガス流出口12を把持した場合において、ホールド部15は破線に示すように作業者の掌側に位置せず指側に位置する。さらに、ホールド部15の上面15aは、膜式ガスメータ100の前方に向けて次第に高さが低くなる傾斜面となっている。このため、指先には、ホールド部15の上面15aと側面15bとの境界部分に当たり易くなり、境界部分と指とが線接触的に当たることによってホールド感の向上を図る構造となっている。
【0027】
なお、本実施形態においてホールド部15のうち最も高い部位は、膨出部14よりも上方に位置してもよいし、下方に位置していてもよい。さらに、本実施形態において膜式ガスメータ100は膨出部14を備えているが、これに限らず、膨出部14を備えなくともよい。
【0028】
加えて、上記ホールド部15は、持ち易さの向上を図る部位であることから、指が接触する側面15bは鉛直方向に延びるか、又は指が引っ掛かる方向に傾斜(すなわち上記境界部分が鋭角となり鈍角とはならない方向に傾斜)している必要がある。
【0029】
次に、本実施形態に係る膜式ガスメータ100の設置時の様子を説明する。まず、作業者は膜式ガスメータ100を片手持ちする。このとき、図4に示すように、作業者がガス流出口12側のホールド部15を把持することで、或る程度のホールド感と持ち易さを有したまま、片手持ちが実現される。
【0030】
次いで、作業者は、需要者側の配管にガス流出口12を合致させる。そして、作業者は、この状態で工具にてガス流出口12の配管接続を行う。また、この過程において、作業者は、ガス流入口11側についても同様に配管接続を行う。
【0031】
このようにして、本実施形態に係る膜式ガスメータ100によれば、筐体10の上部は、フロントカバー20の上端20aよりも所定高さ以上低まった段部13を有し、ガス流出口12は、段部13からフロントカバー20の上端20aよりも上方へ延びている。このため、ガス流出口12はある程度の長さを有することとなり、作業者が把持可能となることから、この部位を片手で持つことで、膜式ガスメータ100の前面と後面とを挟持する必要が無くなり、設置作業性の向上を図ることができる。
【0032】
特に、本実施形態のようにガス流出口12の周辺を把持できれば、ガス流出口12と需要者側の配管とを合致させ易い。すなわち、膜式ガスメータ100を片手持ちできたとしても、片手持ちする箇所が膜式ガスメータ100の下側等である場合、膜式ガスメータ100の下側を把持しながら需要者側の配管にガス流出口12を合致させる作業となり、決して作業性が高いとはいえない。しかし、本実施形態のようにガス流出口12の周辺を把持できれば、ガス流出口12と需要者側の配管との合致については容易化されることとなり、より作業性の向上が図られることとなる。
【0033】
また、ガス流出口12の高さ方向の中間位置であって段部13よりも上方且つフロントカバー20の上端20aよりも下方となる位置から側方に張り出すホールド部15をさらに備えるため、ガス流出口12が細過ぎて力が入り難くなってしまうことを防止することで、よりメータを持ち易くして、一層の設置作業性の向上を図ることができる。
【0034】
また、ホールド部15は、メータ内側方向に張り出しており、上面15aは前方に向けて次第に高さが低くなる傾斜面となっている。このため、作業者が、メータ外側からガス流出口12の内側に張り出すホールド部を持つことにより、指先方向に向けてホールド部15の上面15aが低くなる。これにより、指先には、ホールド部15の上面15aと側面15bとの境界部分に当たり易くなり、境界部分と指とが線接触的に当たることによってホールド感の向上を図ることができる。
【0035】
さらに、ガス流出口12のみが段部13から上方に延び、他方のガス流入口11は段部13から延びておらず膨出部14から延びているため、膨出部14の存在により筐体10の内部容積の減少を抑えて、内部部品を収納性の低下を抑制することができる。
【0036】
加えて、ガス流出口12のみが段部13から上方に延びることにより、通常ガスメータを正面から見て右側に位置するガス流出口12を作業者が持てるようにすることで、やや重量のある膜式ガスメータ100を右手で持つことができる。
【0037】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で適宜他の技術(公知技術や周知技術を含む)を組み合わせてもよい。
【0038】
例えば、上記において膜式ガスメータ100は、家庭用のものを図示して説明したが、これに限らず、業務用のガスメータであってもよい。さらに、膜式ガスメータ100は、都市ガス向けのものであってもよいし、LPガス向けのものであってもよい。加えて、膜式ガスメータ100は、マイコンを搭載するものであってもよいし、搭載しないものであってもよい。
【0039】
さらに、本実施形態ではガス流出口12のみが段部13より上方に延びているが、これに限らず、ガス流入口11のみが段部13より上方に延びていてもよいし、双方が段部13より上方に延びていてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 :筐体
10a :上ケース
10b :下ケース
11 :ガス流入口(流入口、流路)
12 :ガス流出口(流出口、流路)
13 :段部
14 :膨出部
15 :ホールド部
15a :上面
15b :側面
20 :フロントカバー
20a :上端
21 :表示窓
100 :膜式ガスメータ
図1
図2
図3
図4