(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸着剤と脱着剤を用いて、少なくとも2種の異性体を含む脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類の混合物からそれぞれの異性体を分離する方法であって、吸着剤がカリウムを含有するフォージャサイト型ゼオライトを含む吸着剤であり、脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類がイソプロピルベンズアルデヒドであることを特徴とする脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類の異性体の分離方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類>
本発明の方法で分離できる脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類としては、アルデヒド基に対して、芳香環に置換された脂肪族炭化水素基がオルト体、メタ体、パラ体に位置する化合物であり、一般的にそれぞれ化学式(1)、(2)、(3)で示される化合物である。化学式(1)〜(3)中のXは化学式(4)で示される脂肪族炭化水素基であり、nは炭素数、mは不飽和度を示す。前記脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基を挙げることができる。前記脂肪族炭化水素基は鎖状でも環状でもよい。前記脂肪族炭化水素基は炭素数nが1〜6のものが好ましい。脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類としては、メチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、イソプロピルベンズアルデヒド、イソブチルベンズアルデヒド、t−ブチルベンズアルデヒド等の置換基Xの炭素数nが1〜4、不飽和度mが0のものが好ましい。さらに、n=3、m=0のものが好ましく、特にイソプロピルベンズアルデヒドが好ましい。
【0015】
【化4】
化学式(1)〜(3)における、脂肪族炭化水素基以外の置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5については特に制限はないが、好ましくは、酸素や窒素などのヘテロ原子を含まないものが良く、さらに好ましくはR
1〜R
5が水素が良い。
【0016】
また脂肪族炭化水素基の置換基の数については特に制限はないが、好ましくは脂肪族炭化水素基が一つのものが良い。
本発明では、脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類のオルト体、メタ体、パラ体の異性体の内、2成分以上含む混合物を分離することができる。
【0017】
<吸着剤>
本発明の方法で用いる吸着剤は、フォージャサイト型ゼオライトである。フォージャサイト型ゼオライトにはX型とY型があり、カチオンがNa型の場合の単位組成はNa
nAl
nSi
192-nO
384であり、一般的にnが48〜76をY型、nが77〜96をX型と呼ぶ。ゼオライトのカチオンとしてはカリウムを含んでいれば良く、カリウム以外のカチオンとしてメンデレーエフの周期表に示される1族、2族の原子が1種以上含まれていても良い。
【0018】
本発明に係るフォージャサイト型ゼオライトを含む吸着剤の形状は特に制限はなく、粉末状や、ゼオライトを柱状、球状などに成形したものも使用できるが、形状は装置サイズによる圧壊や粉化の有無、原料や脱着剤を通液したときの圧損や偏流を考慮して適宜選択できる。また、成型されたゼオライトを使用する場合は、ゼオライトを成型する時に一般的に使用される粘土やアルミナを含んでいてもよく、バインダレスと呼ばれるゼオライト自体で成型したものを含んでいても良い。成型されたゼオライトを用いる場合、その粒径は特に制限はないが、原料や脱着剤の通液量により適宜決定するのが好ましい。例えば、原料や脱着剤を吸着剤が充填されたカラムに通液する際、通液速度に対して粒径が小さすぎると、液が流れにくくなり装置内の圧力が上昇する。逆に粒径が大きすぎる場合は、圧壊や粉化の懸念があり、また吸着剤を充填した際の空隙が大きくなり装置サイズ大きくなる傾向にあるため好ましくない。また粒径もできるだけ揃っていた方が好く、粒径分布が広すぎる場合は原料や脱着剤が編流する可能性があり、良好な分離が得られない。
【0019】
また、使用されるフォージャサイト型ゼオライトを含む吸着剤には水を含んでいてもよいが、水分は分離性能に影響を与えるため、分離処理中の水分量は常時把握しておいた方が好ましい。
【0020】
<脱着剤>
本発明の分離方法で用いる脱着剤に特に制限はないが、フォージャサイト型ゼオライトを含む吸着剤に吸着された脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類を液相へ溶解できる適度な極性を持つ溶媒が良い。
【0021】
脱着剤は特に制限されるものではないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン類、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2-ブタノール、t-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、
1-オクタノール、2-オクタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、アニソール等のエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、酢酸エチル、エチレンカーボネート等のエステル類、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性高極性溶媒を挙げることができる。
【0022】
中でも、脂肪族アルコール類が含まれる溶媒が好ましく、より好ましくは炭素数が4から8の脂肪族アルコールであり、さらに好ましくは、1-ブタノールである。
溶媒の極性を表す指標として数式(1)で示されるハンセン溶解度パラメーターδがある。
【0023】
脱着剤としては、ハンセン溶解度パラメーターδが18以上、30以下の範囲が好ましく、より好ましくは19以上、27以下の範囲、さらに好ましくは19.6以上、23.6以下の範囲の値を示す溶媒である。またハンセン溶解度パラメーターが前述の範囲の値を示す、2成分あるいは3成分以上の混合溶媒も使用できる。
【0024】
なお、数式(1)中のδ
d、δ
pおよびδ
hは、ハンセン溶解度パラメーターにおける脱着剤の分散項、極性項および水素結合項をそれぞれ示し、単位はいずれもMPa
1/2である。
【0026】
<脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類の分離方法>
本発明の脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類の分離方法は、吸着剤と脱着剤を用いて、前記少なくとも2種の異性体を含む脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類の混合物からそれぞれの異性体を分離する方法であって、吸着剤がカリウムを含有するフォージャサイト型ゼオライトを含む吸着剤であることを特徴とする脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類の異性体の分離方法である。
【0027】
本発明の分離方法に用いる脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類(以下、「原料」と呼称する場合がある。)としては、上記異性体の混合物に限らず、脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類を合成した際の反応液や、製造の過程で蒸留、ろ過、晶析工程などから回収される液でもよい。また、製造工程から不要物として処理される廃液から脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類の異性体を回収する目的で使用することも可能である。
【0028】
上記異性体の混合物に、分離目的物である脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類の異性体以外の吸着剤に強く吸着される成分を含む場合は、その含量が多い場合、処理量に影響を与え、分離性能の低下、あるいはフォージャサイト型ゼオライトを含む吸着剤の早期の劣化を招くため、少ないほど良い。そのため、適宜、前処理を行いそれらの不純物を除去した原料を用いる方がよい。前処理の方法は不純物が除去できればなんでも良く、例えば、蒸留、ろ過、晶析、吸着、膜分離、電気透析などがあげられる。
【0029】
上記原料中の脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類の濃度が高すぎる場合やフォージャサイト型ゼオライトを含む吸着剤の使用量が少ない場合は、フォージャサイト型ゼオライトを含む吸着剤の飽和吸着量を超えてしまい、良好な分離性能が得られないことがある。その場合は原料を、フォージャサイト型ゼオライトを含む吸着剤に接触させる前に、適当な溶媒で希釈し濃度を調整することが好ましい。その際の希釈後の脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類の濃度は特に制限はないが、事前に破過試験などを行い、用いるフォージャサイト型ゼオライトを含む吸着剤の飽和吸着量を把握するか、または、実際に濃度を変えた原料を使用しクロマト分離試験を行い、分離性能を確認することで最適な濃度を把握することが好ましい。その際、目的の生産量を達成するために、希釈剤の使用量やフォージャサイト型ゼオライトを含む吸着剤量などから経済性を考慮して濃度を決定できる。また、希釈する溶媒は特に制限はないが、脱着剤と同じ溶媒を使用することが、分離成績や経済性、製造時の運転管理の面から好ましい。
【0030】
本発明におけるフォージャサイト型ゼオライトを含む吸着剤の使用量は、原料中に含まれる脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類の量に対して決定され、具体的には、脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類を十分吸着できる量であればよい。その量はあらかじめ実際に用いるフォージャサイト型ゼオライトを含む吸着剤を用いて破過試験を行うことで、吸着剤の飽和吸着量を測定するか、実際に濃度を変えた原料を使用しクロマト分離試験を行い、分離性能を確認することで最適な吸着剤の量を決めることができる。
【0031】
本発明におけるクロマト分離の条件の温度について制限はないが、脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類が熱で変性しない、分解しない、脱着剤が気化しない、脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類や脱着剤が凝固しない、脱着剤への溶解度が低下しすぎない範囲で適用可能である。具体的には10〜150℃の範囲で実施することが好ましく、30〜100℃の範囲で実施することがより好ましい。
【0032】
本発明の分離方法における圧力について特に制限はないが、脱着剤や脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類の沸点以上で行う場合は、気化しない蒸気圧以上の圧力で行う必要がある。
【0033】
本発明における脱着剤の流速は特に制限はないが、目的とする生産量および分離後の異性体の純度、収率を達成できるよう、原料の処理量や装置サイズを考慮して最適な流速を決定できる。
【0034】
本発明の分離方法の形式は、回分式、連続式でもよく、回分式の場合は分離時間の経過に合わせて脱着剤の組成を変えるグラジエント法と一般的に呼ばれる方法も使用できる。連続式の場合は擬似移動層式クロマト分離にも適用できる。
【0035】
フォージャサイト型ゼオライトを含む吸着剤を充填する装置の形状は、回分式および擬似移動層式においてはカラム型のものが好ましいが、吸着剤を固相として固定できる形状なら特に制限はない。
【0036】
フォージャサイト型ゼオライトを含む吸着剤を充填する装置の材質について制限はなく、分離の際の温度、圧力、使用する物質の薬品耐性を考慮して金属製、樹脂製、ガラス製、その他内面に特殊なコーティングを施した材質から適宜選択し使用できる。
【0037】
フォージャサイト型ゼオライトを含む吸着剤からの流出液中の脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類の異性体の純度を確認するために、適宜、サンプル採取し分析してもよいが、オンライン分析装置を設けることで、時間のロスなく組成を把握でき、目的の異性体の純度が高い流出液のみを回収することができる。この時の分析方法は目的の異性体の組成が分析できれば何でも良く、例えばガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィー、IR、UV吸収を利用した分析方法がある。
【0038】
分離された脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類の異性体を含む流出液から脱着剤を除去する方法は、一般的な方法でよく、蒸留、晶析、抽出、吸着、膜分離などがあり、異性体および脱着剤の沸点、融点などの物性から経済性に見合う方法を適宜選択し使用することが好ましい。
【0039】
流出液のうち目的の脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類の異性体が分離できず、両成分が含まれる液は回収し、蒸留などで濃縮するなどした後、原料として再利用することもできる。これにより、収率を損なうことなく、脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類の異性体の分離精製を行うことができる。
【0040】
流出液のうち脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類の異性体を含まない部分は、適宜回収し、蒸留などにより不純物の除去処理をしたのち、再び脱着剤として使用することができる。このとき、異性体を含む留出液から除去した脱着剤も合わせて使用することもできる。これにより脱着剤のロスを減らし、新たに使用する脱着剤の量を減らすことができ、経済的に有利になる。
【0041】
本発明の方法ではフォージャサイト型ゼオライトを含む吸着材を繰り返し利用が可能であるが、繰り返し使用によりフォージャサイト型ゼオライトを含む吸着剤の劣化により分離性能が低下した場合は、吸着剤の全量または一部を新しい吸着剤に入れ替えることができる。また劣化が原料に含まれる不純物や水分の吸着による場合は、焼成または窒素流通などにより、不純物や水分を除去したのち再び使用できる。焼成する場合の温度はゼオライトの結晶構造が壊れない程度で行い、100〜600℃の範囲が好ましく、300〜500℃の範囲がより好ましい。
【0042】
本発明分離方法で分離して得られた脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類の異性体の用途は特に制限はなく、医薬品や農薬、香料の合成原料あるいは香料、医薬品などにも使用できる。用途によっては純度をさらに上げる必要がある場合は、分離後得られた異性体をさらに蒸留、晶析、抽出、吸着、膜分離などを行ってもよく、再度別の異性体あるいは不純物を分離するためにクロマト分離を行ってもよい。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例によって説明するが、これらの実施例によって限定されるものではない。例中の%、濃度、量比は特にことわりがない限り、重量基準である。
また、以下の実施例において、脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類の異性体の分離性能を表す指標として、分離係数αを用いた。
【0044】
分離係数αは脂肪族炭化水素置換ベンズアルデヒド類の異性体であるメタ体、パラ体に対する分離選択性を示し、α>1であれば両成分の分離が可能となる。
本発明の分離方法で、実施例中のαは数式(2)にて計算した。なお以下の数式中の添え字m, p, 0はそれぞれ成分メタ体、パラ体、基準物質を示す。
【0045】
【数2】
数式(2)のk
'p、k
'mはキャパシティーファクターであり、分離対象成分の平均滞留時間tおよび基準物質の平均滞留時間t
0から数式(3a)、(3b)より算出した。なおtおよびt
0の単位はminである。
【0046】
【数3】
各成分の平均滞留時間t
m, t
p, t
0は数式(4a)、(4b)、(4c)で定義される規格化された1次絶対モーメントで与えられ、実施例で分画回収された流出液の組成分析値から台形公式により算出した。
【0047】
【数4】
なお、数式(4a)〜(4c)中のC(Z,t)は時間tにおける成分濃度であり、Zはカラム長を示す。
上記の数式(2)から(4)は、下記の文献に記載のものを参考にした。
「クロマト分離工学」、橋本健治 編著、培風館、2005年
【0048】
〔実施例1〕
〈カリウムY型ゼオライトの作製〉
市販のナトリウムY型ゼオライトの成型体を粉砕後、ふるいにて分級し、メッシュサイズが16〜26(JIS)の粉砕ゼオライトを得た。
【0049】
粉砕ゼオライト 47 gに1 mol/L塩化カリウム水溶液をゼオライト1 gに対して20 mLになるように加え、25℃で4時間攪拌した後、水溶液を取り除き、イオン交換水にて洗浄し過剰の塩を取り除いた。この操作を合計4回行った。水洗後ゼオライトを70℃で2時間真空乾燥した後、電気炉にて500℃で4時間乾燥を行いカリウムY型ゼオライト 40 gを得た。このゼオライトを元素分析にて分析した結果、処理前のナトリウムに対するカリウムのモル基準の交換率は94%であった。
【0050】
〈イソプロピルベンズアルデヒド異性体の分離〉
前記方法で作製したカリウムY型ゼオライトをステンレス製カラム(8mmφ×16cm)に乾式充填し、恒温槽内で60℃に加温しながら、1-ブタノールを0.8 mL/minにて通液し、カラムの脱気を行った。次にメタ体/パラ体の比が55 / 45であるイソプロピルベンズアルデヒドが20%含まれる1-ブタノール溶液を原料溶液としてカラム上部より0.8 mL/minで4分間通液した後、脱着剤として1-ブタノールを0.8 mL/minで通液しながら、カラム流出液を1分間隔で分画回収した。この間、恒温槽内の温度は60℃に保った。
【0051】
回収した流出液をガスクロマトグラフィーで分析し、通液倍率(BV、カラム容量に対する通液量の体積比)に対するイソプロピルベンズアルデヒド異性体の濃度をプロットして作成したクロマトグラムを
図1に示す。なお、原料溶液には基準物質としてノナンを6%添加しており、そのクロマトグラムも合わせて
図1に示す。
実施例1の方法で得られた分離性能を算出した結果、メタ体、パラ体の分離係数(α)は5.4であった。
【0052】
〔実施例2〕
実施例1の恒温槽内の温度を80℃に変更する以外は実施例1と同様に行い、イソプロピルベンズアルデヒド異性体をメタ体とパラ体に分離した。得られた分離係数(α)は5.4であった。
【0053】
〔実施例3〕
〈バリウム−カリウムY型ゼオライトの作製〉
実施例1で得られたカリウムY型ゼオライト12 gに0.5 mol/L塩化バリウム水溶液をゼオライト1 gに対して20 mLになるように加え、80℃で4時間攪拌した後、水溶液を取り除いた。その後、イオン交換水にて洗浄し過剰の塩を取り除き、70℃で2時間真空乾燥した後、電気炉にて500℃で4時間乾燥を行い、バリウム−カリウムY型ゼオライト 13 gを得た。このゼオライトを元素分析にて分析した結果、交換後のバリウム/カリウムのモル比は1.0であった。
【0054】
〈イソプロピルベンズアルデヒド異性体の分離〉
前記方法で得られたバリウム−カリウムY型ゼオライトを吸着材に用いる以外は実施例1と同様に行い、イソプロピルベンズアルデヒド異性体をメタ体とパラ体に分離した。得られた分離係数(α)は3.9であった。
【0055】
〔比較例1、2〕
実施例1で用いたカリウムY型ゼオライトからなる吸着剤に替えて、ナトリウムY型ゼオライト(Na-Y型)またはカリウムL型ゼオライト(K-L型)を用いた以外は実施例1と同様に行い、イソプロピルベンズアルデヒド異性体をメタ体とパラ体に分離した。
それぞれの分離係数(α)を表1に示す。なお吸着剤は市販のゼオライト成型体を粉砕後、分級しメッシュサイズ16〜26で回収された粉砕ゼオライトを用いた。
【0056】
【表1】
【0057】
〔実施例4〜7〕
実施例1で用いた1-ブタノールからなる脱着剤に替えて、表2に示す脱着剤を用いる以外は実施例1と同様に行い、イソプロピルベンズアルデヒド異性体をメタ体とパラ体に分離した。得られた分離係数(α)を表2に示す。
【0058】
なお表2中のハンセン溶解度パラメーターδは数式(1)より下記の数値を用い算出した。これらの計算元となった数値および計算方法は、下記に示す文献に記載のものを使用した。
1-ブタノール:(δ
d, δ
p、δ
h) = (16.0、5.7、15.8)
エタノール:(δ
d, δ
p、δ
h) = (15.8、8.8、19.4)
2-プロパノール:(δ
d, δ
p、δ
h) = (15.8、6.1、16.4)
シクロヘキサノン:(δ
d, δσ
p、δ
h) = (17.8、6.3、5.1)
トルエン:(δ
d, δ
p、δσ
h) = (18.0、1.4、2.0)
C. M. Hansen, "Hansen Solubility Parameters: a user handbook", CRC Press, 2000.
【0059】
【表2】
【0060】
図2に実施例1および実施例4〜7における、ハンセン溶解度パラメーターδと分離係数αの関係を示す。
図2から脱着剤のハンセン溶解度パラメーターのδの値は良好な分離を達成するために最適な範囲があることが分かる。