(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の小型飛行体は、無線操縦により飛行するかまたは自動操縦により自律飛行できる最大長が2m以下のものであり、一般にドローンと称されているものである。
最大長は、小型飛行機の最も長い部分の長さであり、
図1では二つのプロペラ6a、6b間の長さである。
小型飛行体は、コントローラとバッテリを含む本体部と、フレーム、プロペラ、モーターおよび送受信アンテナを有しているものであり、その他、機種によって異なる必要な部品を有しているものである。
送受信アンテナ(図示せず)は、受信アンテナのみでもよいし、受信アンテナと送信アンテナの両方でもよい。
【0009】
図1、
図2に示すものは小型飛行体1の一実施形態であり、コントローラとバッテリを含む本体部2、フレーム4a、4b、モーター5a、5b、プロペラ6a、6bを有している。
図1、
図2に示す小型飛行体1では、フレームは2本であるが、2〜10本の範囲、またはそれ以上を有していてもよいし、モーターやプロペラもフレームと同数を有していてもよい。
さらに
図1、
図2に示す小型飛行体1は、本体部2に取り付けられたスキッド式のランディングギア(降着装置)7a、7bを有しているが、他の形状のランディングギアでもよいし、ランディングギアがなくフレームで代替されているものでもよい。
【0010】
小型飛行体1は、本体部2またはフレーム4a、4bのいずれか一方または両方にまたがって、必要に応じて他の取り付け部品を使用して、ビデオカメラ、カメラなどの撮影装置が取り付けられていてもよい。
【0011】
エアバッグ装置が収容されたケース10は、本体部2の底面2aに取り付けられているが、4つの側面3のいずれかに取り付けられていてもよい。さらにそれら以外に天面2bにも取り付けられていてもよい。また、7a、7bの降着装置に他の取り付け部品を使用して取り付けられてもよい。
ケース10は、自動車に搭載されているエアバッグやインフレータが収容されたモジュールケースと同じものを使用することができる。
エアバッグ装置は、ガス供給手段、センサー、制御装置および折り畳まれたエアバッグを有しており、ガス供給手段、センサー、制御装置はそれぞれが導体を介して電気的に電源(バッテリ)に接続されている。
バッテリは、ケース10内に収容されたものを使用してもよいし、小型飛行体1の本体部2内のバッテリを使用してもよい。
なお、センサーと制御装置は、小型飛行体1の本体部2に取り付けられていてもよい。
【0012】
図3に示すガス供給手段は、特開2015−62545号公報の
図3に示すものと同じガス供給手段(第1ガス供給手段)35を使用することができる。
アルミニウムやステンレスからなる三又管40は、主管41と、主管41の周面から垂直方向に分岐した1本の枝管42からなる。
【0013】
主管41の一端開口部41a側には、ガスボンベ45の閉塞部材47を含む部分が接続されている。
主管41とガスボンベ45は、溶接することで接続されていてもよいが、主管41の一端開口部41aにガスボンベ45をねじ込むことで接続されていてもよい。
ガスボンベ45の内部空間46には、アルゴン、ヘリウム、窒素、二酸化炭素などの不燃性ガスが充填されている。ガスの充填量は、使用するエアバッグを全て膨張できる量である。
ガスボンベ45の開口部は円形の閉塞部材47で閉塞されている。閉塞部材47は、内部空間46の圧力を受けて椀状に変形している。
【0014】
主管41の他端開口部41bには破壊手段が接続されている。
破壊手段は、電気式点火器50と、電気式点火器50の作動による衝撃波を受けて直進し、閉塞部材47を破壊して開口するための飛翔体55からなるものである。
電気式点火器50は、公知のエアバッグ装置のガス発生器で使用している電気式点火器と同じものを使用することができる。点火薬としては、感度が高いことから、ZPP(ジルコニウムと過塩素酸カリウムを含む混合物)、THPP(水素化チタンと過塩素酸カリウムを含む混合物)を使用するものが好ましい。
電気式点火器50は、金属および樹脂からなる点火器保持部52と、点火器保持部52で包囲されて保持された点火器本体51からなるものである。
電気式点火器50は、主管41の他端開口部41bをかしめることで接続されていてもよいし、他端開口部41b内に点火器保持部52をねじ込むことで接続されていてもよい。
【0015】
飛翔体55は、円板部56、円板部56の中心から垂設された軸部57、軸部57の先端に形成された矢尻部(鋭角部)58からなるものである。鋭角部は、矢尻部のほか、棒先端部を軸方向に斜めに切断したようなもの(例えば、竹槍状のもの)でもよい。
円板部56は、電気式点火器50側に位置し、矢尻部58は閉塞部材47側に位置するように配置されており、矢尻部58の先端は、枝管42の開口部42aよりも閉塞部材47側に位置するように配置されている。
矢尻部58の先端が距離L
1だけ移動して閉塞部材47に衝突したとき、円板部56は同じ距離L
1だけ移動するが、L
1<L
2の関係であるため、円板部56は枝管42の開口部42aよりも電気式点火器50側に位置するように調整されている(即ち、円板部56が開口部42aに到達しない位置になるように調整されている)。
矢尻部58の先端が閉塞部材47に衝突する前に円板部56が枝管42の開口部に当接すると、矢尻部58の先端部が閉塞部材47の中心点に衝突しないおそれがあるが、L
1<L
2の関係であることから、前記のようなおそれはない。
【0016】
作動時において、閉塞部材47が飛翔体55で確実に破壊できるようにするためには、電気式点火器50の作動による衝撃波を受けて飛翔体55が主管41内を直進でき、かつ矢尻部58の先端が閉塞部材47の中心点に衝突できるようにすることが望ましいが、破壊できるのであれば中心点近傍に衝突できるようにしてもよい。
このような動作ができるようにするため、円板部56の外径は主管41の内径と近似するように(円板部56の外径<主管41の内径で、かつ近似するように)調整されることでガイド部材としての機能が付与されている。
さらに円板部56のガイド機能に加えて、上記したL
1<L
2の関係を満たすようにすることで、閉塞部材47が飛翔体55で破壊することが容易になる。
なお、作動しないときに飛翔体55が軸方向に移動しないようにするため、主管41の内周面に軸方向に間隔をおいて2つの凸部43、凸部44を形成し、それらの間に円板部56が位置するようにすることができる。
凸部43、凸部44は、突き出し高さの小さなものであるから、組立時には開口部41b側から小さな力で圧入して飛翔体55を挿入することができ、作動時には飛翔体55(円板部56)の移動が妨げられることはない。
その他、バネなどの弾性部材を用いて、作動前に飛翔体55を点火器50側に付勢しておき、作動後においてもバネの力で飛翔体を点火器50側に戻すようにしてもよい。
【0017】
枝管42には導入手段60が接続されている。
図3に示すとおり、導入手段60は、可撓性チューブ62と、可撓性チューブ62の端部に設けられた口金61からなるものである。
口金61は、枝管42にねじ込まれることで接続されている。
可撓性チューブ62は、樹脂またはゴムからなるチューブであり、エアバッグに接続されている。
【0018】
また
図3に示すガス供給手段35に替えて、
図4に示す第2ガス供給手段135を使用することもできる。
図4に示す第2ガス供給手段135は、アルミニウムやステンレスからなる三又管40は、主管41と、主管41の周面から垂直方向に分岐した第1枝管42aと第2枝管42bの2本の枝管からなる。
【0019】
第1枝管42aには第1導入手段60aが接続されている。
図4に示すとおり、第1導入手段60aは、第1可撓性チューブ62aと、第1可撓性チューブ62aの端部に設けられた第1口金61aからなるものである。
第1口金61aは、第1枝管42aにねじ込まれることで接続されている。
第1可撓性チューブ62aは、樹脂またはゴムからなるチューブであり、エアバッグに接続されている。
【0020】
第2枝管42bには第2導入手段60bが接続されている。
図4に示すとおり、第2導入手段60bは、第2可撓性チューブ62bと、第2可撓性チューブ62bの端部に設けられた第2口金61bからなるものである。
第2口金61bは、第2枝管42bにねじ込まれることで接続されている。
第2可撓性チューブ62bは、樹脂またはゴムからなるチューブであり、エアバッグに接続されている。
【0021】
図3に示す第1ガス供給手段35は、一つのエアバッグを膨張展開させるものであるが、
図4に示す第2ガス供給手段135は、二つのエアバッグを膨張展開させることができる。
また、第1ガス供給手段35、第2ガス供給手段135に替えて、3本の枝管(第1枝管、第2枝管および第3枝管)を含む複数の部材を有する、3つのエアバッグを膨張展開させることができる第3ガス供給手段を使用することもできる。
第2ガス供給手段135と第3ガス供給手段に替えて、第1ガス供給手段35の可撓性チューブ62を二叉または三つ叉にして、それぞれ二つのエアバッグまたは三つのエアバッグに接続したものを使用することもできる。
【0022】
図示していないセンサーは、制御装置と連動してエアバッグ装置を作動させるためのものであり、小型飛行体1が正常飛行できない状態になって落下するときの落下速度を検知する速度センサー、小型飛行体1の飛行時の角度を検知する角度センサーなどの公知のセンサーを使用することができる。
なお、センサーに加えて、操縦者の指示でエアバッグ装置を作動できるようにしてもよい。
制御装置(CPU)は、自動車などに搭載されている公知のエアバッグ装置で使用しているものを使用することができる。
【0023】
エアバッグは、自動車などに搭載されている公知のエアバッグ装置で使用しているものを使用することができるが、前記エアバッグ装置のエアバッグとは異なり、ガスを排出するためのベント口は有していない。
エアバッグの膨張展開時の形状は特に制限されるものではなく、小型飛行体1の構造および形状に応じて適宜選択することができる。例えば、球状、円板状(平面形状が円形)、楕円板状(平面形状が楕円形)、多角板状態(平面形状が多角形)、なす形状、棒状、浮き輪状、舟形、前記した各形状の二つ以上のエアバッグが一箇所または2箇所以上で接続されている形状(例えば、ヨットの双胴艇や三胴艇のような形状)などにすることができる。
【0024】
本発明の小型飛行体1は、必要に応じて本体部またはフレームにパラシュート装置を取り付けることができる。
前記パラシュート装置は、エアバッグ装置の補助的な装置として使用するものであり、小型飛行体1が落下するときの落下速度を減速するためのものである。このため、作動時に展開するパラシュートの直径は、本体部2と同程度の大きさか、または本体部2と、本体部2からにフレーム4a、4bの1/3程度の長さ範囲のものが好ましい。
【0025】
次に
図5〜
図8により小型飛行体1においてエアバッグ装置が作動したときの動作を説明する。
図5は、3つのエアバッグ51、52、53を有するエアバッグ装置を使用した実施形態であるが、エアバッグはエアバッグ51のみでもよいし、エアバッグ52、53の二つでもよい。
ケース10内のエアバッグ装置は電源のスイッチを入れ、センサー、制御装置、加圧ガス供給手段(電気式点火器)が作動可能な状態にする。
エアバッグがエアバッグ51のみであるときは
図3に示すガス供給手段35を使用し、エアバッグがエアバッグ52、53の二つであるときは
図4に示すガス供給手段135を使用し、エアバッグがエアバッグ51〜53の三つであるときは第3ガス供給手段を使用する。
以下においては、エアバッグがエアバッグ51のみであるときを中心にして説明する。
【0026】
小型飛行体1が故障などの理由で墜落して地面などに衝突するとき、異常を検知したセンサーが作動して信号を制御装置に送り、制御装置の指令により第1ガス供給手段35(または第2ガス供給手段135、第3ガス供給手段)の電気式点火器50が作動する。
電気式点火器50の作動により燃焼生成物(火炎や衝撃波など)が発生して、飛翔体55の円板部56に衝突するため、飛翔体55は主管41内を直進して閉塞部材47の中心に衝突し、閉塞部材47が確実に破壊される。
閉塞部材47が破壊されて開口されると、ガスボンベ45内に充填されている加圧ガスが排出されて三又管40に入り、枝管42から保護層20内のエアバッグ51内に流入して膨張展開させる。
第2ガス供給手段135を使用したときはエアバッグ52、53を膨張展開させ、第3ガス供給手段を使用したときはエアバッグ51〜53を膨張展開させる。
なお、
図3、
図4では閉塞部材47の破壊に飛翔体55を用いているが、電気式点火器50のみでの破壊(例えば特開2003-25951公報の
図1に示すような)構造を有するガス供給手段であってもよい。
【0027】
センサーが異常を検知して、電気式点火器50が作動して、エアバッグ51が膨張するまでの時間は、数十ミリ秒〜数秒にすることができる。
しかし、小型飛行体1の形状や大きさに応じて、さらには主に衝撃を緩和した部位に応じてエアバッグ51の膨張時間を調整することが好ましく、例えば、好ましくは30ミリ秒以上、より好ましくは50ミリ秒以上、さらに好ましくは80ミリ秒以上、また、好ましくは2秒以下、より好ましくは1.5秒以下、さらに好ましくは1.2秒以下である。
よって、小型飛行体1が地面に衝突したときの衝撃が緩和されるため、小型飛行体1自体の損傷を軽減できるほか、撮影装置などの損傷も防止できる。また、海、湖、河川などに墜落したときは、小型飛行体1自体を浮かせた状態で保持できる。
第2ガス供給手段135や第3ガス供給手段を使用したときは、エアバッグ52、53またはエアバッグ51〜53を膨張展開させることができるため、衝撃緩和効果や浮力がより高められる。
なお、エアバッグが1つの場合と複数の場合におけるエアバッグの総容量は同じでもよいし、異ならせてもよい。
【0028】
図6、
図7に示す実施形態は、エアバッグとして、膨張展開したときの平面形状が円板になるようにしたエアバッグ54を使用している。
図8に示す実施形態は、エアバッグとして、膨張展開したときの平面形状が双胴艇の二つの胴体のような形状になるエアバッグ55a、55bが接続部56で接続されたものを使用している。
その他として、本体部2を包み込むように膨張展開するエアバッグも使用することもできる。